(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】研磨ヘッド、化学的機械的研磨装置、および、化学的機械的研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/015 20120101AFI20230418BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230418BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20230418BHJP
【FI】
B24B37/015
H01L21/304 622H
H01L21/304 622R
B24B37/30 Z
(21)【出願番号】P 2019229378
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝利
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-005317(JP,A)
【文献】特開2006-332520(JP,A)
【文献】特開昭61-265262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的機械的研磨装置に用いられる研磨ヘッドであって、
ウェーハを保持するウェーハ保持部材と、
前記ウェーハ保持部材における前記ウェーハ側
の面に固定されたバッキングパッドと、
前記ウェーハ保持部材と前記バッキングパッドとの間に設けられ、前記バッキングパッドを介した前記ウェーハの温度を測定する温度測定手段とを備えていることを特徴する研磨ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨ヘッドにおいて、
前記温度測定手段は、前記ウェーハの径方向に異なる位置に配置された複数の熱電対を備えていることを特徴とする研磨ヘッド。
【請求項3】
研磨パッドが設けられた定盤と、
請求項1または請求項2に記載の研磨ヘッドと、
前記定盤と前記研磨ヘッドとを相対的に回転させる回転駆動手段とを備えていることを特徴とする化学的機械的研磨装置。
【請求項4】
請求項3に記載の化学的機械的研磨装置において、
前記温度測定手段の温度測定結果に基づいて、前記ウェーハの面内温度分布が均一に近づくように研磨条件を制御する研磨制御手段を備えていることを特徴とする化学的機械的研磨装置。
【請求項5】
請求項4に記載の化学的機械的研磨装置において、
前記研磨制御手段は、前記温度測定手段の温度測定結果に基づいて、前記研磨パッドに供給される研磨スラリーの温度、前記研磨ヘッドと前記定盤との相対的な回転速度、前記研磨ヘッドによる前記ウェーハの押圧力、および、前記定盤の温度のうち少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする化学的機械的研磨装置。
【請求項6】
研磨パッドが設けられた定盤と、ウェーハを保持するウェーハ保持部材、および、前記ウェーハ保持部材における前記ウェーハ側
の面に固定されたバッキングパッドを有する研磨ヘッドとを相対的に回転させ、前記研磨パッドに供給された研磨スラリーを用いて前記ウェーハを研磨する化学的機械的研磨方法であって、
前記ウェーハ保持部材と前記バッキングパッドとの間に設けられた温度測定手段で前記バッキングパッドを介した前記ウェーハの温度を測定する温度測定工程と、
前記温度測定工程での温度測定結果に基づいて、前記ウェーハの面内温度分布が均一に近づくように研磨条件を制御する研磨制御工程とを備えていることを特徴とする化学的機械的研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨ヘッド、化学的機械的研磨装置、および、化学的機械的研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの表面を研磨する方法としては、シリカ粒子などの砥粒をアルカリ性水溶液中に含有させた研磨スラリーを供給しながら、ウェーハと、定盤上の研磨パッドとを相対的に回転させて行うCMP(化学的機械的研磨)が知られている。CMPは、砥粒による機械的研磨作用と、アルカリ性水溶液による化学的研磨作用とを複合させた技術である。これら2つの研磨作用を複合させることで、ウェーハ表面の平坦度を高めることができる。
【0003】
CMPにおいて、化学的研磨作用が温度に依存するため、研磨レートは、研磨パッドの表面温度に依存する。研磨レートは、ウェーハ表面の品質に影響を与える。そこで、所望の研磨レートでウェーハを研磨するための検討がなされている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、研磨パッドの上方に位置するパッド温度測定器で表面温度分布を測定し、この測定結果に基づいて、研磨パッドの温度を調整することで、所望の研磨レートでウェーハを研磨できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、研磨パッドにおけるウェーハと接触していない部分を測定しているため、研磨スラリーや外気で冷却された研磨パッドの温度や、研磨パッド自体ではなく研磨スラリーの温度を測定しているおそれがある。このような温度の測定結果に基づき研磨パッドの温度を調整しても、実際に研磨されているウェーハの研磨レートを所望のレートに制御できないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、ウェーハの研磨レートを適切に制御できる研磨ヘッド、化学的機械的研磨装置、および、化学的機械的研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の研磨ヘッドは、化学的機械的研磨装置に用いられる研磨ヘッドであって、ウェーハを保持するウェーハ保持部材と、前記ウェーハ保持部材における前記ウェーハ側に設けられたバッキングパッドと、前記ウェーハ保持部材と前記バッキングパッドとの間に設けられ、前記バッキングパッドを介した前記ウェーハの温度を測定する温度測定手段とを備えていることを特徴する。
【0008】
本発明によれば、ウェーハ保持部材とバッキングパッドとの間に設けられた温度測定手段で、バッキングパッドを介したウェーハの温度を測定する。バッキングパッドは、ウェーハに接触しているため、温度測定手段の測定結果は、特許文献1の構成と比べて、実際に研磨されているウェーハの温度に近くなる。したがって、この温度測定手段の測定結果に基づいて、ウェーハの面内温度分布が均一に近づくように、研磨条件を制御することで、実際に研磨されているウェーハの研磨レートが適切に制御される。
【0009】
本発明の研磨ヘッドにおいて、前記温度測定手段は、前記ウェーハの径方向に異なる位置に配置された複数の熱電対を備えていることが好ましい。
本発明によれば、一般的に入手が容易な複数の熱電対を配置するだけの簡単な方法で、ウェーハの研磨レートを適切に制御できる。
【0010】
本発明の化学的機械的研磨装置は、研磨パッドが設けられた定盤と、上述の研磨ヘッドと、前記定盤と前記研磨ヘッドとを相対的に回転させる回転駆動手段とを備えていることを特徴とする。
本発明の化学的機械的研磨装置において、前記温度測定手段の温度測定結果に基づいて、前記ウェーハの面内温度分布が均一に近づくように研磨条件を制御する研磨制御手段を備えていることが好ましい。
本発明の化学的機械的研磨装置において、前記研磨制御手段は、前記温度測定手段の温度測定結果に基づいて、前記研磨パッドに供給される研磨スラリーの温度、前記研磨ヘッドと前記定盤との相対的な回転速度、前記研磨ヘッドによる前記ウェーハの押圧力、および、前記定盤の温度のうち少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。
【0011】
本発明の化学的機械的研磨方法は、研磨パッドが設けられた定盤と、ウェーハを保持するウェーハ保持部材、および、前記ウェーハ保持部材における前記ウェーハ側に設けられたバッキングパッドを有する研磨ヘッドとを相対的に回転させ、前記研磨パッドに供給された研磨スラリーを用いて前記ウェーハを研磨する化学的機械的研磨方法であって、前記ウェーハ保持部材と前記バッキングパッドとの間に設けられた温度測定手段で前記バッキングパッドを介した前記ウェーハの温度を測定する温度測定工程と、前記温度測定工程での温度測定結果に基づいて、前記ウェーハの面内温度分布が均一に近づくように研磨条件を制御する研磨制御工程とを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る化学的機械的研磨装置(CMP研磨装置)の概略構成を示す模式図。
【
図2】前記化学的機械的研磨装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】前記化学的機械的研磨装置を構成する研磨ヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について説明する。
〔化学的機械的研磨装置(CMP研磨装置)の構成〕
図1および
図2に示すように、CMP研磨装置1は、1個の定盤10と、定盤駆動手段20と、定盤温度調整手段30と、複数の研磨ヘッド40と、複数のヘッド駆動手段50と、スラリー供給手段60と、ウェーハ加圧力調整手段70と、研磨制御手段80とを備えている。定盤駆動手段20とヘッド駆動手段50とは、回転駆動手段90を構成している。
【0014】
定盤10は、円板状に形成されている。定盤10の上面には、研磨パッド11が設けられている。
【0015】
定盤駆動手段20は、定盤10の下面に接続された定盤回転軸部材21を回転させる。
【0016】
定盤温度調整手段30は、流体供給手段31と、定盤10内部に形成された流体流路32と、流体流路32の一端と流体供給手段31とを接続する供給管33と、流体流路32の他端と流体供給手段31とを接続する排出管34とを備えている。流体流路32は、定盤10内で屈曲しており、定盤10のほぼ全体に流体を流すように構成されている。流体供給手段31は、所望の温度に調整された流体を供給管33と、流体流路32と排出管34とで循環させることで、定盤10の温度を調整する。流体は、水などの液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0017】
研磨ヘッド40は、
図3に示すように、シャフト41と、回転フレーム42と、リテーナリング43と、ウェーハ保持部材44と、ダイヤフラム45と、バッキングパッド46と、温度測定手段47とを備えている。
【0018】
回転フレーム42は、略円板状に形成されている。回転フレーム42の上面の中心は、シャフト41の下端に接続されている。
【0019】
リテーナリング43は、リング状に形成されている。リテーナリング43の軸方向の上端は、回転フレーム42の下面の外周部に接続されている。
【0020】
ウェーハ保持部材44は、外径がリテーナリング43の内径と等しい略円板状に形成されている。ウェーハ保持部材44は、リテーナリング43の内部に配置されている。ウェーハ保持部材44は、その下面に設けられたバッキングパッド46を介して、ウェーハWを保持する。ウェーハ保持部材44によるウェーハWの保持は、ウェーハ保持部材44に吸引孔を設けて吸引吸着で行ってもよいし、バッキングパッド46に水を含ませて水吸着で行ってもよい。
【0021】
ダイヤフラム45は、リング板状に形成されている。ダイヤフラム45の外縁は、回転フレーム42とリテーナリング43との接続部分に固定されている。ダイヤフラム45の内縁は、ウェーハ保持部材44の上面に固定されている。このような構成によって、回転フレーム42と、ウェーハ保持部材44と、ダイヤフラム45とで区画される加圧空間48が形成される。
【0022】
バッキングパッド46は、例えば多孔質の材料によって、直径がウェーハ保持部材44の下面の直径と略等しい円板状に形成されている。バッキングパッド46は、ウェーハ保持部材44の下面に固定されている。
【0023】
温度測定手段47は、ウェーハ保持部材44とバッキングパッド46との間に設けられた複数の熱電対471を備えている。熱電対471は、ウェーハWの径方向の異なる位置に配置されている。熱電対471の個数は、特に限定されないが、研磨中のバッキングパッド46の面内温度分布を精度よく測定する観点から、径方向に並ぶ個数が多い方が好ましい。本実施形態では、複数の熱電対471がバッキングパッド46の中心と外縁とを結ぶ直線上に等間隔で設けられている。そのうち1個はバッキングパッド46の中心に配置され、他の1個はバッキングパッド46の外縁近傍に配置されている。なお、熱電対471は、さらに、バッキングパッド46の周方向に並んで設けられていてもよいし、直線上に並ばずに周方向にずれていてもよい。熱電対471は、無線または有線で、測定結果を研磨制御手段80に送信可能に構成されている。
【0024】
複数のヘッド駆動手段50は、それぞれ1体の研磨ヘッド40のシャフト41をそれぞれ回転させる。複数のヘッド駆動手段50は、1個の支持体51で支持されている。支持体51は、図示しない支持体移動手段の駆動によって昇降する。
【0025】
スラリー供給手段60は、研磨パッド11の上方に配置されたノズル61に接続されている。スラリー供給手段60は、シリカ砥粒を含むアルカリ性の研磨スラリーPSの温度と供給量を調整し、ノズル61を介して研磨パッド11に供給する。
【0026】
ウェーハ加圧力調整手段70は、シャフト41および回転フレーム42を貫通する圧力調整管71を備えている。圧力調整管71の一端は、ウェーハ加圧力調整手段70に接続されている。圧力調整管71の他端の開口は、加圧空間48に露出している。ウェーハ加圧力調整手段70は、圧力調整管71を介して気体を加圧空間48に導入したり、加圧空間48から排出したりすることで、ウェーハWを研磨パッド11に押圧する圧力を調整する。
【0027】
研磨制御手段80は、
図2に示すように、温度測定手段47の熱電対471からの温度測定結果を取得し、定盤駆動手段20、定盤温度調整手段30、ヘッド駆動手段50、スラリー供給手段60およびウェーハ加圧力調整手段70のうち少なくとも1つを制御して、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づくように研磨条件を制御する。
【0028】
〔化学的機械的研磨方法〕
次に、CMP研磨装置1を用いた化学的機械的研磨方法について説明する。
まず、CMP研磨装置1の研磨制御手段80は、ウェーハWの研磨を開始する旨の指令が設定入力されると、あらかじめ設定された条件で定盤駆動手段20、定盤温度調整手段30、ヘッド駆動手段50、スラリー供給手段60、ウェーハ加圧力調整手段70を制御して、ウェーハWの研磨を開始する。
【0029】
すなわち、定盤温度調整手段30の流体供給手段31によって、流体流路32に供給する流体の温度と流体の流量とを調整して、定盤10の温度を制御する。さらに、スラリー供給手段60によって、研磨スラリーPSの温度を調整して、所定量を定盤10の研磨パッド11上に供給する。
そして、ウェーハWを保持した研磨ヘッド40をヘッド駆動手段50の駆動によって回転させながら下降させ、定盤駆動手段20の駆動によって回転している定盤10の研磨パッド11上にウェーハWを接触させる。その後、ウェーハ加圧力調整手段70がウェーハWを研磨パッド11に押圧する圧力を調整して、ウェーハWの研磨が開始される。
【0030】
このウェーハWの研磨中、まず、研磨スラリーPSの砥粒による機械的研磨作用によって、W表面に形成された自然酸化膜の除去が行われる。このとき、ウェーハWと研磨パッド11との摩擦抵抗が増加し、その結果、ウェーハWの温度は、急峻に上昇する。
自然酸化膜の除去が終了すると、ウェーハWのベア面が露出する。ベア面が露出すると、研磨スラリーPSのアルカリ成分による化学的研磨作用によって、エッチングが行われる。このエッチングによってW表面が滑らかになり、ウェーハWと研磨パッド11との摩擦抵抗が減少するが、研磨が継続されているため、ウェーハWの温度は、滑らかだが上昇し続ける。
【0031】
ウェーハWの研磨中、ウェーハ中心部の温度がウェーハ外周部の温度よりも早く上昇し、ウェーハWの面内温度分布が不均一になる。化学的研磨作用が温度に依存するため、ウェーハ中心部の研磨レートがウェーハ外周部よりも高くなってしまう。
そこで、ウェーハWの研磨中、温度測定手段47の熱電対471は、バッキングパッド46を介したウェーハWの温度を定期的に測定する(温度測定工程)。そして、研磨制御手段80は、熱電対471の測定結果に基づきウェーハの面内温度分布を検出して、この面内温度分布における最大温度と最小温度との温度差が閾値以上か否かを判断する。この後、研磨制御手段80は、温度差が閾値以上であると判断した場合、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づくように、以下の回転速度制御、定盤温度制御、スラリー温度制御、スラリー供給量制御、および押圧力制御のうち、少なくとも1つの制御を行う(研磨制御工程)。閾値としては、特に限定されないが、研磨スラリーPSの粘度などの物性を安定させるという観点から10℃以上であることが好ましい。
【0032】
例えば、研磨制御手段80は、定盤駆動手段20およびヘッド駆動手段50を制御して、研磨ヘッド40と定盤10との相対的な回転速度を速くする(回転速度制御)。この回転速度制御によって、ウェーハWと研磨パッド11の研磨面との間に、研磨スラリーPSが介在しやすくなる。その結果、ウェーハ中心部の温度が下がり、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づく。
【0033】
また、例えば、研磨制御手段80は、定盤温度調整手段30を制御して、定盤10の温度を下げる(定盤温度制御)。この定盤温度制御によって、ウェーハWと研磨パッド11の研磨面の摩擦熱が抜熱される。その結果、ウェーハ中心部の温度が上がりにくくなり、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づく。
【0034】
また、例えば、研磨制御手段80は、スラリー供給手段60を制御して、研磨スラリーPSの温度を下げたり(スラリー温度制御)供給量を多くしたり(スラリー供給量制御)することによって、研磨パッド11上の研磨スラリーPSの温度を下げる。このスラリー温度制御によって、定盤温度制御と同様に、ウェーハWと研磨パッド11の研磨面の摩擦熱が抜熱される結果、ウェーハ中心部の温度が上がりにくくなり、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づく。
【0035】
また、例えば、研磨制御手段80は、ウェーハ加圧力調整手段70を制御して、研磨ヘッド40によるウェーハWの押圧力を小さくする(押圧力制御)。この押圧力制御によって、ウェーハWの摩擦による発熱が抑制される。その結果、ウェーハ中心部の温度が上がりにくくなり、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づく。
【0036】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態によれば、ウェーハ保持部材44とバッキングパッド46との間に設けられた温度測定手段47で、バッキングパッド46を介したウェーハWの面内温度分布を測定する。このため、特許文献1の構成と比べて、ウェーハWの面内温度分布に近い測定結果を得ることができる。したがって、この測定結果に基づいて、ウェーハWの面内温度分布が均一に近づくように研磨条件を制御することで、実際に研磨されているウェーハWの研磨レートを適切に制御できる。また、温度測定手段47をウェーハ保持部材44とバッキングパッド46との間に設けることによって、温度測定手段47が研磨されてしまうことがないため、ウェーハW、研磨スラリーPS、研磨パッド11の状態で時々刻々と変わる研磨パッド11の研磨面の状態に合わせて、タイムリーに研磨条件が制御できるようになる。
【0037】
[変形例]
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
例えば、温度測定手段47としては、熱電対471に代えてまたは併用して、面状温度センサを適用してもよい。面状温度センサは、バッキングパッド46と同じ大きさのものを1個配置してもよいし、バッキングパッド46より小さいものを複数配置してもよい。
ウェーハWの中心部および外周部の温度の相関があらかじめわかっている場合には、温度測定手段47で中心部または外周部のみの温度を測定し、研磨制御手段80が温度測定手段47の測定結果と上記相関とに基づいて、ウェーハWの面内温度分布を推定して、研磨条件を制御してもよい。
ウェーハ加圧力調整手段70として、加圧空間48の気体の量を調整する構成を例示したが、このような構成に限定されない。例えば、ウェーハ保持部材44が回転フレーム42に固定された研磨ヘッドを用い、ウェーハ加圧力調整手段70で研磨ヘッド全体あるいは回転フレーム42を昇降させることで、ウェーハWの加圧力を調整してもよい。
研磨制御手段80を設けずに、作業者が温度測定手段47の測定結果に基づいて、研磨条件を制御してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…CMP研磨装置(化学的機械的研磨装置)、10…定盤、11…研磨パッド、40…研磨ヘッド、44…ウェーハ保持部材、46…バッキングパッド、47…温度測定手段、471…熱電対、80…研磨制御手段、90…回転駆動手段、W…ウェーハ。