(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】エピハロヒドリンゴム組成物およびゴム積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 71/03 20060101AFI20230418BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20230418BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20230418BHJP
C08K 5/39 20060101ALI20230418BHJP
C08K 5/45 20060101ALI20230418BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20230418BHJP
C08G 65/323 20060101ALI20230418BHJP
C08L 15/02 20060101ALI20230418BHJP
B32B 25/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C08L71/03
C08K5/18
C08K5/3445
C08K5/39
C08K5/45
C08K3/11
C08G65/323
C08L15/02
B32B25/00
(21)【出願番号】P 2019546652
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035718
(87)【国際公開番号】W WO2019069766
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2017193538
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】召田 郁哉
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104059348(CN,A)
【文献】国際公開第2008/050859(WO,A1)
【文献】特開2012-061644(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056593(WO,A1)
【文献】特開2003-253112(JP,A)
【文献】特開2008-266558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、B32B25、C08K5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)を含有するエピハロヒドリンゴム組成物であって、
ジフェニルアミン系化合物(a2)と、
イミダゾール系化合物(a3)と、
チオイミド系化合物(a4)と、
ニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)とを含有し、
前記遷移金属化合物(a5)中の金属の量が、前記ジフェニルアミン系化合物(a2)及び前記イミダゾール系化合物(a3)の合計100重量部に対して、1~50重量部であ
り、
前記遷移金属化合物(a5)がステアリン酸銅である、エピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項2】
前記遷移金属化合物(a5)中の金属の量が、前記チオイミド系化合物(a4)100重量部に対して、1~50重量部である、請求項1に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項3】
前記遷移金属化合物(a5)中の金属の量が、前記ジフェニルアミン系化合物(a2)、前記イミダゾール系化合物(a3)、前記チオイミド系化合物(a4)の合計100重量部に対して、1~30重量部である、請求項1または2に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項4】
前記イミダゾール系化合物(a3)の含有量が、前記ジフェニルアミン系化合物(a2)100重量部に対して、5~200重量部である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエピハロヒドリンゴム組成物からなるエピハロヒドリンゴム層(A)と、
フッ素ゴムを少なくとも含有するフッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とが、架橋接着されてなる、ゴム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピハロヒドリンゴム組成物およびゴム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エピクロロヒドリン単独重合体(CO)、エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド共重合体(ECO)、エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重体(GECO)を主成分とするエピハロヒドリンゴム組成物が知られている。エピハロヒドリンゴム組成物は、耐熱性、耐油性に優れていることから、自動車用の燃料ホース等に用いられている。
【0003】
エピハロヒドリンゴム組成物には、耐熱老化性等を付与する観点から、老化防止剤としてニッケル化合物等が用いられている。ところが近年、環境負荷の観点から、ニッケルの使用が制限されており、ニッケル化合物を含有しないエピハロヒドリンゴム組成物の要求が高まっている。例えば、特許文献1には、ヒドリンゴム、アミン系老化防止剤、ジチオカルバミン酸金属塩(但し、ニッケルを除く)を含有するヒドリンゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエピハロヒドリンゴム組成物では、ニッケルを含まない老化防止剤を用いても耐熱老化性を付与することができる一方で、ニッケル化合物を含有しないヒドリンゴム組成物ではスコーチが速くなる(スコーチ時間が短くなる)ことが、発明者の研究で判った。
【0006】
本発明の目的は、環境負荷が少なく、スコーチ時間を短くせずに耐熱老化性を付与することができるエピハロヒドリンゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)を含有するエピハロヒドリンゴム組成物であって、ジフェニルアミン系化合物(a2)と、イミダゾール系化合物(a3)と、チオイミド系化合物(a4)と、ニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)とを含有し、前記遷移金属化合物(a5)中の金属の量が、前記ジフェニルアミン系化合物(a2)及び前記イミダゾール系化合物(a3)の合計100重量部に対して、1~50重量部であり、前記遷移金属化合物(a5)がステアリン酸銅である、エピハロヒドリンゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、環境負荷が少なく、スコーチ時間を短くせずに耐熱老化性を付与することができるエピハロヒドリンゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
<エピハロヒドリンゴム組成物>
本発明の実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)に、ジフェニルアミン系化合物(a2)、イミダゾール系化合物(a3)、チオイミド系化合物(a4)、およびニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)を含有する。
【0011】
<エピハロヒドリン系ゴム(a1)>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物に含まれるエピハロヒドリン系ゴム(a1)は、少なくともエピハロヒドリン単量体単位を必須の構成単量体単位として含有するゴム重合体である。エピハロヒドリン系ゴム(a1)として、具体的には、1種のエピハロヒドリン単量体の単独重合体、もしくは2種以上のエピハロヒドリン単量体の共重合体、またはエピハロヒドリン単量体およびこれと共重合可能な単量体との共重合体である。
【0012】
エピハロヒドリン単量体単位を形成するエピハロヒドリン単量体としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、2-メチルエピクロロヒドリン、2-メチルエピブロモヒドリン、2-エチルエピクロロヒドリン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、エピクロロヒドリンが好ましい。
【0013】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)中における、エピハロヒドリン単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは20~90モル%、より好ましくは30~80モル%、さらに好ましくは35~75モル%である。エピハロヒドリン単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム加硫物の引張強さ、伸びおよび耐圧縮永久歪み性が悪化する場合がある。一方、含有割合が高すぎると、低温でのゴム加硫物の柔軟性が損なわれる場合がある。
【0014】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)には、耐オゾン性の向上および低温での柔軟性の向上等の観点から、エピハロヒドリン単量体と、エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体との共重合体を用いるのが好ましい。このようなエピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体の単位としては、低温での柔軟性の向上等の観点から、アルキレンオキサイド単量体単位が好ましい。
【0015】
アルキレンオキサイド単量体単位を形成するアルキレンオキサイド単量体としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシ-4-クロロペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシエイコサン、1,2-エポキシイソブタン、2,3-エポキシイソブタン等の直鎖状または分岐鎖状アルキレンオキサイド;1,2-エポキシクロロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロドデカン等の環状アルキレンオキサイド;ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテルなどのアルキル長鎖または分岐鎖を有するグリシジルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのオキシエチレン側鎖を有するグリシジルエーテル;等が挙げられ、これらは、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。これらアルキレンオキサイド単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、直鎖状のアルキレンオキサイドが好ましく、低温におけるゴム加硫物の柔軟性を向上させる観点から、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドがより好ましく、エチレンオキサイドが特に好ましい。
【0016】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)中にアルキレンオキサイド単量体単位を含有させる場合における、アルキレンオキサイド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは9.9~60モル%、より好ましくは19~55モル%、さらに好ましくは23~50モル%である。アルキレンオキサイド単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム加硫物の低温での柔軟性が劣る傾向にある。一方、含有割合が高すぎると、耐熱老化性が劣る傾向にある。
【0017】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)は、エピハロヒドリン単量体と、上述のアルキレンオキサイド単量体と、アルキレンオキサイド単量体以外のエピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体を含有していてもよい。このようなアルキレンオキサイド単量体以外のエピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体の単位としては、耐熱性の向上および耐オゾン性の向上等の観点から、不飽和エポキシド単量体単位が好ましい。
【0018】
不飽和エポキシド単量体単位を形成する不飽和エポキシド単量体としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、o-アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンエポキシド、クロロプレンエポキシド、4,5-エポキシ-2-ペンテン、エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン等のジエンモノエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル-4-ヘプテネート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、3-シクロヘキセンカルボン酸グリシジルエステル、4-メチル-3-シクロヘキセンカルボン酸グリシジルエステル、グリシジル-4-メチル-3-ペンテネート等のエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;等が挙げられ、これらは、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。これら不飽和エポキシド単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、耐オゾン性向上の観点から、不飽和グリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルがより好ましい。
【0019】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)中に不飽和エポキシド単量体単位を含有させる場合における、不飽和エポキシド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは0.1~20モル%、より好ましくは1~15モル%、さらに好ましくは2~10モル%である。不飽和エポキシド単量体単位の含有割合が少なすぎると、得られるゴム加硫物の耐オゾン性が低下する場合がある。一方、含有割合が高すぎると、得られるゴム加硫物の破断伸びが小さくなるおそれがある。
【0020】
エピハロヒドリン系ゴム(a1)のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、特に限定されないが、ゴム加硫物の良好な加工性を確保する観点から、好ましくは10~200、より好ましくは20~150、さらに好ましくは30~100である。ムーニー粘度は、例えば、JIS K6300に従って測定することができる。
【0021】
本実施形態で用いるエピハロヒドリン系ゴム(a1)の製造方法は、特に限定されず、公知の重合方法に従って所定の単量体を共重合して製造すればよい。具体的には、有機アルミニウム化合物を触媒として用いた溶液重合法により製造することが好ましく、上記触媒としては、有機アルミニウム化合物に、リン酸化合物および第三成分を反応させて得られる触媒がより好ましい。第三成分としては、アミン類、ジアザビアシクロウンデセンの塩などが挙げられる。また、ムーニー粘度は単量体の配合を適宜調整することにより所望の値とすることができる。
【0022】
<ジフェニルアミン系化合物(a2)>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物には、上述したエピハロヒドリン系ゴム(a1)に加え、ジフェニルアミン系化合物(a2)が含まれる。本実施形態で用いられるジフェニルアミン系化合物(a2)は、エピハロヒドリンゴム組成物において老化防止剤として働き、架橋されたエピハロヒドリンゴム組成物に耐熱老化性を付与することができる。
【0023】
ジフェニルアミン系化合物(a2)は、特に限定されないが、例えば、ジアリール第2級モノアミン、芳香族第2級アミン等が挙げられる。
【0024】
ジアリール第2級モノアミンの具体例としては、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(p,p’-ジクミルジフェニルアミンともいう。)、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン等のオクチル化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン等が挙げられる。
【0025】
芳香族第2級アミンの具体例としては、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-NC-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(メタクリロイル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンなどのp-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0026】
これらのジフェニルアミン系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態で用いられるジフェニルアミン系化合物(a2)としては、耐熱老化性を高める観点から、ジフェニルアミン、p-フェニレンジアミンが好ましく、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンがより好ましい。
【0027】
本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物におけるジフェニルアミン系化合物(a2)の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)100重量部に対して、好ましくは0.01~3重量部であり、より好ましくは0.1~2重量部、さらに好ましくは0.2~1.5重量部、特に好ましくは0.5~1.2重量部である。ジフェニルアミン系化合物(a2)の含有量が少なすぎるとエピハロヒドリンゴム組成物から得られるゴム架橋物の耐熱老化性が低下し、多すぎるとエピハロヒドリンゴム組成物から得られるゴム架橋物の機械的強度が低下する可能性がある。
【0028】
<イミダゾール系化合物(a3)>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物には、さらにイミダゾール系化合物(a3)が含まれる。本実施形態で用いられるイミダゾール系化合物(a3)は、エピハロヒドリンゴム組成物において老化防止剤として働き、架橋されたエピハロヒドリンゴム組成物に耐熱老化性を付与することができる。
【0029】
イミダゾール系化合物(a3)は、特に限定されないが、例えば、ベンズイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0030】
ベンズイミダゾール化合物の具体例としては、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールとフェノール縮合物の混合品、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、4-メルカプトメチルベンズイミダゾール、5-メルカプトメチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
これらのイミダゾール系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態で用いられるイミダゾール系化合物としては、耐熱老化性を高める観点から、ベンズイミダゾール化合物が好ましく、なかでも2-メルカプトベンズイミダゾールがより好ましい。
【0032】
本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物におけるイミダゾール系化合物(a3)の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)100重量部に対して、好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.1~1.5重量部、さらに好ましくは0.2~1重量部、特に好ましくは0.3~0.7重量部である。イミダゾール系化合物(a3)の含有量が少なすぎるとエピハロヒドリンゴム組成物から得られるゴム架橋物の耐熱老化性が低下し、多すぎるとエピハロヒドリンゴム組成物から得られるゴム架橋物の機械的強度が低下する可能性がある。
【0033】
また、イミダゾール系化合物(a3)の含有量は、耐熱老化性を向上させる観点から、上述のジフェニルアミン系化合物(a2)100重量部に対して、好ましくは5~200重量部とし、より好ましくは10~150重量部である。ジフェニルアミン系化合物(a2)に対するイミダゾール系化合物の含有量を、このような範囲にすることにより、エピハロヒドリンゴム組成物の耐熱老化性を向上させることができる。
【0034】
<チオイミド系化合物(a4)>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物には、さらにチオイミド系化合物(a4)が含まれる。本実施形態で用いられるチオイミド系化合物(a4)は、エピハロヒドリンゴム組成物において架橋遅延剤として働き、エピハロヒドリンゴム組成物の加硫速度を低下させる(加硫速度の増加を抑制する)ことができる。
【0035】
チオイミド系化合物(a4)としては、特に限定されないが、例えば、N-2-エチルヘキシルチオフタルイミド、N-シクロヘキシルチオフタルイミド、N-シクロヘキシルチオマレイミド、N-4-t-ブチルフェニルチオスクシンイミド等が挙げられる。
【0036】
これらのチオイミド系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態で用いられるチオイミド系化合物としては、スコーチ時間が短くなることを抑制する観点から、N-シクロヘキシルチオフタルイミドが好ましい。
【0037】
本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物におけるチオイミド系化合物(a4)の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)100重量部に対して0.01~4重量部であり、好ましくは0.1~3重量部、より好ましくは0.5~2重量部、さらに好ましくは0.7~1.5である。チオイミド系化合物(a4)の含有量が少なすぎるとエピハロヒドリンゴム組成物のスコーチ時間が短くなり、多すぎるとエピハロヒドリンゴム組成物が十分に架橋されない可能性がある。
【0038】
<遷移金属化合物(a5)>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物には、さらに遷移金属化合物(a5)が含まれる。本実施形態で用いられる遷移金属化合物(a5)は、ニッケルを含まない遷移金属化合物である。遷移金属化合物(a5)は、エピハロヒドリンゴム組成物において架橋促進剤および/または架橋遅延剤として働き、エピハロヒドリンゴム組成物の架橋速度を制御することができる。
【0039】
ニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)は、特に限定されないが、例えば、ジチオカルバミン酸遷移金属塩(ニッケル塩を除く)、脂肪酸遷移金属塩(ニッケル塩を除く)、その他の第二鉄化合物、その他の銅化合物等が挙げられる。
【0040】
ジチオカルバミン酸遷移金属塩(ニッケル塩を除く)の具体例としては、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-オクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-デシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジエチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジメチルジチオカルバミン酸テルル、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
【0041】
脂肪酸遷移金属塩(ニッケル塩を除く)の具体例としては、ラウリン酸銅、ラウリン酸第二鉄、ラウリン酸亜鉛等のラウリン酸遷移金属塩;ミリスチン酸銅、ミリスチン酸第二鉄、ミリスチン酸亜鉛等のミリスチン酸遷移金属塩;パルミチン酸銅、パルミチン酸第二鉄、パルミチン酸亜鉛等のパルミチン酸遷移金属塩;ステアリン酸銅、ステアリン酸第二鉄、及びステアリン酸亜鉛等のステアリン酸遷移金属塩等が挙げられる。
【0042】
その他の第二鉄化合物の具体例としては、酢酸第二鉄、塩化第二鉄、ギ酸第二鉄、安息香酸第二鉄、エチルアセト酢酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄、ナフテン酸第二鉄、クエン酸第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、炭酸第二鉄等の無水物または水和物が挙げられる。
【0043】
その他の銅化合物の具体例としては、酢酸銅、塩化銅、ギ酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅等の無水物または水和物が挙げられる。
【0044】
これらのニッケルを含まない遷移金属化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態で用いられるニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)としては、架橋速度を確実に制御する観点から、脂肪酸遷移金属塩(ニッケル塩を除く)、ジチオカルバミン酸遷移金属塩(ニッケル塩を除く)が好ましく、なかでもジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ステアリン酸銅がより好ましい。また、遷移金属化合物(a5)中の金属としては、ニッケル以外の遷移金属であれば特に制限されないが、架橋速度を確実に制御する観点から、銅であることが好ましい。
【0045】
本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物における遷移金属化合物(a5)の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)100重量部に対して0.01~3重量部であり、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.2~1.5重量部、さらに好ましくは0.5~1.2重量部である。遷移金属化合物(a5)の含有量が少なすぎるとエピハロヒドリンゴム組成物のスコーチ時間が短くなり、多すぎるとエピハロヒドリンゴム組成物が十分に架橋されない可能性がある。
【0046】
また、本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物では、遷移金属化合物(a5)中の金属の量を、ジフェニルアミン系化合物(a2)及びイミダゾール系化合物(a3)の合計100重量部に対して、1~50重量部であり、好ましくは2~30重量部、より好ましくは3~20重量部、さらに好ましくは5~15重量部である。ジフェニルアミン系化合物(a2)及びイミダゾール系化合物(a3)に対する遷移金属化合物(a5)中の金属の量を、このような範囲にすることにより、エピハロヒドリンゴム組成物のスコーチ時間が短くなることを抑制しながら耐熱老化性を付与することができる。
【0047】
さらに、遷移金属化合物(a5)中の金属の量は、チオイミド系化合物(a4)100重量部に対して、好ましくは1~50重量部とし、より好ましくは3~47重量部とし、さらに好ましくは5~45重量部である。チオイミド系化合物(a4)に対する遷移金属化合物(a5)中の金属の量を、このような範囲にすることにより、エピハロヒドリンゴム組成物のスコーチ時間を確保しながら耐熱老化性を付与することができる。
【0048】
さらに、遷移金属化合物(a5)中の金属の量は、ジフェニルアミン系化合物(a2)、イミダゾール系化合物(a3)、チオイミド系化合物(a4)の合計100重量部に対して、好ましくは1~30重量部とし、より好ましくは1.5~25重量部とし、さらに好ましくは1.7~21重量部である。ジフェニルアミン系化合物(a2)、イミダゾール系化合物(a3)及びチオイミド系化合物(a4)に対する遷移金属化合物(a5)中の金属の量を、このような範囲にすることにより、エピハロヒドリンゴム組成物のスコーチ時間を確保しながら耐熱老化性を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物は、本発明の所望の効果の発現を阻害しない範囲において、エピハロヒドリン系ゴム以外のゴム、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン系ゴム、クロロプレンゴムなどの不飽和型ゴム;ブチルゴム、エチレン-プロピレン系ゴム、エチレン-アクリル系ゴム、アクリル系ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、水素化ニトリル系ゴム、シリコン系ゴム、フッ素系ゴムなどの高飽和型ゴムを含有してもよい。これらのゴムの含有量は所望により適宜調整すればよい。
【0050】
また、本発明で用いるエピハロヒドリンゴム組成物には、上記各成分に加えて、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填剤;クレーなどの非補強性充填剤;架橋剤;ジフェニルアミン系化合物、イミダゾール系化合物、遷移金属化合物以外の架橋促進剤;ジフェニルアミン系化合物、イミダゾール系化合物以外の老化防止剤;光安定剤;可塑剤;加工助剤;滑剤;粘着剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;シランカップリング剤;チオイミド系化合物、遷移金属化合物以外の架橋遅延剤、受酸剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0051】
充填剤としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)等の炭素系材料を用いることができる。中でもカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、MAF、FEF等が挙げられ、特にFEF、MAF、HAF、HAF-HSが好ましい。
【0052】
黒鉛の具体例は、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。なお、上述した炭素系材料は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。充填剤の添加量は、エピハロヒドリンゴム組成物中のエピハロヒドリン系ゴム(a1)100重量部に対し、40~90重量部が好ましい。
【0053】
炭素系材料以外の充填剤としては、例えば、アルミニウム粉末等の金属粉;ハードクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機粉末;デンプンやポリスチレン粉末等の有機粉末等の粉体;ガラス繊維(ミルドファイバー)、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の短繊維;シリカ、マイカ;等が挙げられる。これらの充填剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
また、架橋剤は、特に限定はなく、エピハロヒドリン系ゴムの加硫剤として通常使用される化合物が挙げられる。このような架橋剤としては、例えば、チオウレア類、トリアジン類、キノキサリン類、アミン類などが挙げられる。
【0055】
チオウレア類の例としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア、ジラウリルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジフェニルチオウレアなどが挙げられ、エチレンチオウレアが好ましい。
【0056】
トリアジン類の例としては、少なくとも2つのメルカプト基を有するトリアジン化合物群であり、炭素数1~10よりなるアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基などの置換基を有していてもよい。トリアジン類の例としては、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-エチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンなどが挙げられ、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンが好ましい。
【0057】
キノキサリン類の例としては、無置換またはアルキル基置換の、2,3-ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどが挙げられる。アルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましい。具体的には2,3-ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどが挙げられる。
【0058】
アミン類の例としては、多価アミン化合物、好ましくは炭素数2~20の多価アミン化合物が挙げられる。具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カーバメイトなどが挙げられる。
【0059】
上記の加硫剤の中でも、架橋特性の向上と環境面への配慮から、キノキサリン類が好ましく、なかでも6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートが特に好ましい。
【0060】
本実施形態のエピハロヒドリンゴム組成物における架橋剤の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム(a1)100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.2~3重量部である。該含有量が少なすぎると加硫速度が遅すぎたり加硫密度が小さくなりすぎる可能性があり、多すぎると加硫密度が高くなってゴム加硫物の伸びが小さくなる可能性がある。
【0061】
架橋促進剤は、架橋剤との組み合わせで架橋を促進するものであれば、特に限定されない。架橋促進剤としては、例えば、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、グアニジン化合物、第4級オニウム塩、第3級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩、およびジアザビシクロアルケン化合物などが用いられる。これらの中でも、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、グアニジン化合物、およびジアザビシクロアルケン化合物が好ましい。これらの架橋促進剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0062】
老化防止剤としては、フェノール系、ジフェニルアミン系化合物以外のアミン系、リン酸系、イミダゾール系化合物以外のイオウ系などの老化防止剤を使用することができる。これらの老化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
滑材としては、例えば、硬化油のような脂肪酸系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス、脂肪酸エステルワックス、脂肪アルコール系ワックス、脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル系ワックスなどが挙げられる。これらの滑材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明で用いるエピクロロヒドリンゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、常法に従って各成分を混練すればよく、例えば、架橋剤など熱に不安定な成分を除く成分とエピハロヒドリンゴム成分とその他の成分を混練した後、その混練物に架橋剤などの熱に不安定な成分を短時間に混合して目的の組成物を得ることができる。
【0065】
<ゴム積層体>
本実施形態に係るゴム積層体は、エピハロヒドリンゴム組成物からなるエピハロヒドリンゴム層(A)と、フッ素ゴムを少なくとも含有するフッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とが架橋接着されて構成されている。
【0066】
<フッ素ゴム組成物>
本実施形態発明で用いるフッ素ゴム組成物は、少なくともフッ素ゴムを含有する。
【0067】
フッ素ゴムとしては、含フッ素不飽和単量体の単独重合体ゴム、含フッ素不飽和単量体の共重合体ゴムまたは含フッ素不飽和単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体ゴムが挙げられる。フッ素ゴムを形成するための含フッ素不飽和単量体としては、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ビニルフルオライド、パーフルオロメチルビニルエーテル、およびパーフルオロエチルビニルエーテル、ならびに臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素などの架橋性単量体、などが挙げられる。また、含フッ素不飽和単量体と共重合可能な他の単量体としては、エチレン、およびプロピレンなどが挙げられる。
【0068】
本実施形態では、フッ素ゴムとして、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体などの二元系共重合体ゴム、およびビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体の三元系共重合体ゴム、さらには、このような三元系共重合体ゴムに、架橋性単量体を共重合してなるゴムを用いてもよく、なかでも、接着性の観点から二元系共重合体が好ましい。
【0069】
また、本発明で用いるフッ素ゴム組成物には、上記各成分に加えて、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填剤;架橋剤、架橋促進剤;老化防止剤;光安定剤;可塑剤;加工助剤;滑剤;粘着剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;シランカップリング剤;架橋遅延剤;受酸剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0070】
なお、架橋剤は、ポリオール系架橋剤、有機過酸化物架橋剤、アミン系架橋剤など、上述のフッ素ゴムに使用される架橋剤であれば特に限定されないが、本実施形態で用いるフッ素ゴム組成物において、エピハロヒドリンゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)との架橋接着性の向上効果がより高いという点より、フッ素ゴムをポリオール架橋するためのポリオール系架橋剤を含有することができる。このようなポリオール系架橋剤は、フッ素ゴムをポリオール架橋するために従来から知られている架橋剤を使用することができる。
【0071】
このようなポリオール系架橋剤は、フッ素ゴムと反応して架橋するものであれば、特に制限されない。ポリオール系架橋剤としては、具体的には、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン[ビスフェノールAF]、1,3-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン等のポリヒドロキシ芳香族化合物や、これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、ビスフェノールA、ビスフェノールAF等のビスフェノール類や、これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましい。これらの中でもビスフェノールAFが、耐酸性、接着性を向上させる観点から好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0072】
また、本実施形態で用いるフッ素ゴム組成物中における、ポリオール系架橋剤の含有割合は、フッ素ゴム100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部であり、より好ましくは0.05~5重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。ポリオール系架橋剤の含有割合が低すぎると、フッ素ゴムの架橋が不十分となり耐酸性および接着性が低下するおそれがある。一方、含有割合が高すぎると、架橋後のフッ素ゴム層(B)の伸びが低下したりするおそれがある。
【0073】
本発明で用いるフッ素ゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、常法に従って各成分を混練すればよく、例えば、フッ素ゴムと各配合剤とを混練して目的の組成物を得ることができる。
【0074】
<ゴム積層体の製造方法>
本実施形態のゴム積層体の製造方法は限定されないが、例えば、次の方法により製造することができる。すなわち、まず、上述したエピハロヒドリンゴム組成物およびフッ素ゴム組成物を、それぞれ別々に、プレス成形、ロール成形、押出成形など公知の方法で、厚さが好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~3mmで任意の面積のシート(エピハロヒドリンゴム層(A)のシート、フッ素ゴム層(B)のシート)に未架橋状態で成形する。次いで、得られた各シートを互いに接触させ、ホットプレスまたは加硫缶を用いて加圧加熱架橋して接着させることにより、本実施形態のゴム積層体を得ることができる。
【0075】
あるいは、層押出法により、上記エピハロヒドリンゴム組成物およびフッ素ゴム組成物を、それぞれ別々に未架橋の状態で、積層チューブに成形した後、加硫缶を用いて加圧加熱架橋させて接着させる方法を採用してもよい。ホットプレスは、通常、140~200℃の温度で0.2~15MPaの圧力下、5~60分間行なわれる。また、加硫缶による場合は、通常、130~160°Cの温度で、30~120分間行われる。
【0076】
また、得られたゴム積層体をさらに熱処理(ポストキュア)することにより、架橋(一次架橋)するための架橋時間の短縮や、ゴム積層体の圧縮永久歪みの改良を図ることも可能である。
【0077】
なお、本実施形態のゴム積層体は、エピハロヒドリンゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)とが一層ずつ積層された形態に限定されず、これらが交互に積層された部分を備えるものであれば、これらの一方または両方が、複数層形成されたものであってもよい。また、本実施形態のゴム積層体は、他の材料からなるその他の層を有していてもよく、このような他の材料としては、要求される特性、予定される用途などに応じて適切なものを選択すればよいが、例えば、エピクロロヒドリンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどを挙げることができる。
【0078】
<ゴム積層体の製造方法>
このようにして得られる本実施形態のゴム積層体は、耐熱性、耐油性に優れたゴムであるエピハロヒドリン系ゴムを用いたエピハロヒドリンゴム層(A)を備えるため、優れた耐熱性、耐油性を有し、かつ、ゴム積層体を構成するエピハロヒドリンゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)の架橋接着性に優れたものである。そのため、本実施形態のゴム積層体は、これらの特性を活かして、例えば、自動車等の輸送機械、一般機器、電気機器等の幅広い分野において、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール等のシール材;オイルチューブ、燃料ホース、エアーホース、ターボエアーホース、PCVホース、インレットホースなどのホース類;伝達ベルト、エンドレスベルトなどの工業用ベルト類;緩衝材、防振材;電線被覆材;シート類;ブーツ類;ダストカバー類;等として有用である。なかでも、本実施形態のゴム積層体は、ホース用途に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0080】
<ムーニー粘度(ML1+4、100℃)>
エピハロヒドリンゴム組成物のムーニー粘度(配合物ムーニー粘度、100℃)をJIS K6300-1に従って測定した。単位は(ML1+4、100℃)で示す。
【0081】
<ムーニースコーチ試験>
未架橋のエピハロヒドリンゴム組成物について、JIS K6300-1に準じて、125℃のムーニー粘度-時間曲線を測定し、最低ムーニー粘度(125℃)を測定した。ムーニー粘度-時間曲線の測定において、最低粘度から5ポイント粘度が上昇した時間をt5(min)、35ポイント上昇した点をt35(min)として測定し、ムーニースコーチ時間を評価した。
【0082】
<常態物性試験(引張強さ、伸び、引張応力、硬さ)>
エピハロヒドリンゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら160℃で30分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。得られたシート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて、試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ(MPa)、伸び(%)、100%引張応力(MPa)、200%引張応力(MPa)、300%引張応力(MPa)を測定した。また、JIS K6253-3に従い、ゴム架橋物の硬さ(Duro A)を測定した。
【0083】
<空気加熱老化試験(引張強さ、伸び、引張応力、硬さ)>
上述の常態物性試験で作製した試験片を、JIS K6257に準じて、150℃で168時間空気中に放置し、得られた試験片について、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ(MPa)、伸び(%)、100%引張応力(MPa)を測定し、JIS K6253-3に従い、硬さ(Duro A)を測定した。
【0084】
<剥離試験>
得られたゴム積層体を用いて、JIS K6854-3に従って剥離試験を行うことで、ゴム積層体を構成する両層間の架橋接着性の評価を行った。具体的には、得られたゴム積層体を、幅25.4mm、長さ100mmの短冊状に打ち抜き、ゴム積層体の端部のつかみ部を引張試験機のつかみ具に取り付け、50mm/分の速さで、180°剥離試験を行い、剥離時の荷重を引張り試験機のロードセルで読み取り、剥離強度(N/mm)を求めた。
【0085】
<エピクロロヒドリン系ゴムの製造>
[製造例1]
密栓した耐圧ガラスボトルを窒素置換して、トルエン184.8部およびトリイソブチルアルミニウム55.2部を仕込み、耐圧ガラスボトルを氷水に浸漬することにより冷却させた後、ジエチルエーテル103.1部を耐圧ガラスボトルに添加し、攪拌した。次いで、耐圧ガラスボトルに、氷水で冷却を継続しながら、リン酸8.18部を添加し、さらに攪拌した。この際、トリイソブチルアルミニウムとリン酸との反応により、ガラスボトルの内圧が上昇するので適時脱圧を実施した。次いで、ガラスボトルに1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7のギ酸塩8.27部を添加し、最後に、60℃の温水浴内で1時間熟成反応させることにより触媒溶液を得た。上記とは別に、反応器に、エピクロロヒドリン50部、エチレンオキサイド7部、およびトルエン560部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら内溶液を70℃に昇温し、上記にて調製した触媒溶液を10部添加して、反応を開始した。次いで、反応開始直後から、エチレンオキサイド43部をトルエン110部に溶解した溶液を5時間かけて等速度で連続添加した。同時に、上記にて調製した触媒溶液を、30分毎に7部ずつ、5時間にわたり添加した。そして、反応器に水15部を添加し、攪拌することにより反応を終了させ、次いで、スチームストリッピングを実施し、上澄み水を除去後、60℃にて真空乾燥することにより、エピクロロヒドリン系ゴムとしてエピクロロヒドリンゴム(a1)を得た。得られたエピクロロヒドリンゴム(a1)は、1H-NMR分析の結果、エピクロロヒドリン単位50モル%、エチレンオキサイド単位50モル%を含有するものであり、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は60であった。
【0086】
[実施例1]
<エピハロヒドリンゴム組成物の調製>
バンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られたエピクロロヒドリンゴム(a1)100部に、カーボンブラック(商品名「シースト3」、東海カーボン社製、HAFカーボン、「シースト」は登録商標)50部、可塑剤(商品名「アデカサイザーRS735」、ADEKA社製、「アデカサイザー」は登録商標)5部、ソルビタンモノステアレート(商品名「スプレンダーR300」、花王社製、加工助剤、「スプレンダー」は登録商標)3部、ハイドロタルサイト(商品名「DHT-4A」、協和化学工業社製、平均粒子径2μm、「DHT-4A」は登録商標)10部を添加して、50℃で5分間混練した。次いで、得られた混練物を50℃のオープンロールに移して、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートとジアザビシクロウンデセンの塩(商品名「U-CAT SA831」、サンアプロ社製、架橋剤、ジアザビシクロウンデセン/フェノール樹脂塩、「U-CAT」は登録商標)1部、ジメチルジチオカルバミン酸銅(商品名「ノクセラーTTCU」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤、「ノクセラー」は登録商標)1部、2-メルカプトベンズイミダゾール(商品名「ノクラックMB」、大内新興化学工業社製、老化防止剤、「ノクラック」は登録商標)0.5部、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤、「ノクラック」は登録商標)1部、N-シクロヘキシルチオフタルイミド(商品名「リターダーCTP」、大内新興化学工業社製、架橋遅延剤、「CTP」は登録商標)1部、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート1.8部を添加して、50℃で混練することにより、エピハロヒドリンゴム組成物としてエピクロロヒドリンゴム組成物(1)を得た。
【0087】
<フッ素ゴム組成物の調製>
オープンロールを用いて、フッ素ゴム(商品名「Viton A401C」、デュポン社製、ビスフェノールAFと架橋促進剤を含む、「VITON」は登録商標)100部に、カーボンブラック(商品名「サーマックスMT」、カンカーブ社製、充填剤、「THERMAX」は登録商標)20部、商品名「Viton VC#50」、デュポン社製)2.5部、酸化マグネシウム(商品名「キョーワマグ#150」、協和化学工業社製、受酸剤)3部及び水酸化カルシウム(商品名「Caldic #1000」、近江化学工業社製、受酸剤)6部を添加し、50℃で混練することで、フッ素ゴム組成物(10)を得た。
【0088】
<ゴム積層体の製造>
上記にてエピハロヒドリンゴム組成物として得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(1)と、フッ素ゴム組成物として得られたフッ素ゴム組成物(10)とを、それぞれ別々にオープンロールで混練して、約2mmの均一な厚みのシートに分出し、6cm×10cm角に成形することで、各シート状の成形体を得た。次いで、得られたシート状の各成形体を張り合わせ、縦6cm、横10cm、深さ0.4cmの金型に入れ、プレス圧10mPaで加圧しながら、160℃で30分間架橋接着させ、ゴム積層体を作製した。なお、この際において、上述した剥離試験を行うために、剥離試験時のつかみ部分に予めセロファン紙を挟むことで、両シートが接着していない部分を形成しておいた。そして、このようにして得られたゴム積層体を用いて、剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅1部の代わりにジメチルジチオカルバミン酸二鉄(商品名「ノクセラーTTFE」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤、「ノクセラー」は登録商標)1部を添加した以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(2)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(2)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅1部の代わりにステアリン酸銅(三共化学薬品社製)1部を添加した以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(3)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(3)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅の添加量を0.5部にした以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(4)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(4)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅の添加量を0.5部にし、N-シクロヘキシルチオフタルイミドの添加量を1.5部にした以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(5)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(5)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例6]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、N-シクロヘキシルチオフタルイミドの添加量を0.5部にした以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(6)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(6)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(7)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(7)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表2に示す。
【0095】
[比較例2]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅、2-メルカプトベンズイミダゾール、及び4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(8)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(8)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表2に示す。
【0096】
[比較例3]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅、及び2-メルカプトベンズイミダゾールを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(9)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(9)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表2に示す。
【0097】
[比較例4]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅を添加せず、2-メルカプトベンズイミダゾールの添加量を1部とした以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(10)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(10)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表2に示す。
【0098】
[比較例5]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅、及びN-シクロヘキシルチオフタルイミドを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(11)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(11)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表2に示す。
【0099】
[比較例6]
エピハロヒドリンゴム組成物を調製する際に、ジメチルジチオカルバミン酸銅1部の代わりにジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名「ノクラックNBC」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤、「ノクラック」は登録商標)1部を添加した以外は、実施例1と同様にしてエピクロロヒドリンゴム組成物(12)を調製し、得られたエピクロロヒドリンゴム組成物(12)とフッ素ゴム組成物(10)とからゴム積層体を作製した。結果を表2に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
表1より、エピハロヒドリン系ゴム(a1)、ジフェニルアミン系化合物(a2)、イミダゾール系化合物(a3)、チオイミド系化合物(a4)、およびニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)を含有し、遷移金属化合物(a5)中の金属の量を、ジフェニルアミン系化合物(a2)及びイミダゾール系化合物(a3)の合計100重量部に対して、1~50重量部とすることにより得られるエピハロヒドリンゴム組成物(エピハロヒドリンゴム組成物(1)~(6))は、スコーチ時間が長く、耐熱老化性に優れるものであった。しかも、これらのエピハロヒドリンゴム組成物は、組成物全体として実質的にニッケルを含まないことから、環境負荷が少ないものである(実施例1~6)。
【0103】
一方、表2より、エピハロヒドリン系ゴム(a1)、ジフェニルアミン系化合物(a2)、イミダゾール系化合物(a3)、チオイミド系化合物(a4)、およびニッケルを含まない遷移金属化合物(a5)を含有し、遷移金属化合物(a5)中の金属の量を、ジフェニルアミン系化合物(a2)及びイミダゾール系化合物(a3)の合計100重量部に対して、1~50重量部とする条件を満たさないエピハロヒドリンゴム組成物(エピハロヒドリンゴム組成物(4)~(9))は、スコーチ時間が短いもの、耐熱老化性に劣るもの、及び環境負荷が大きいものの、少なくともいずれかであった(比較例1~6)。
【0104】
また、表1より、上述のエピハロヒドリンゴム組成物と、フッ素ゴムを少なくとも含有するフッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とを架橋接着することにより得られるゴム積層体は、接着性に優れるものであった(実施例1~6)。したがって、このようなエピハロヒドリンゴム組成物を使用したゴム積層体は、ゴム積層体としての耐熱老化性も高いことが期待できる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について実施例を挙げて説明したが、本発明は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0106】
本国際出願は、2017年10月3日に出願された日本国特許出願2017-193538号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容をここに援用する。