(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】吸着材、並びにそれを用いた成形体および浄水器
(51)【国際特許分類】
B01J 20/28 20060101AFI20230418BHJP
B01J 20/16 20060101ALI20230418BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20230418BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230418BHJP
【FI】
B01J20/28 Z
B01J20/16
B01J20/20 D
C02F1/28 D
C02F1/28 E
C02F1/28 G
(21)【出願番号】P 2019065653
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修治
(72)【発明者】
【氏名】松永 修始
(72)【発明者】
【氏名】花本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉延 寛枝
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019980(JP,A)
【文献】特開2015-112518(JP,A)
【文献】特開2009-208076(JP,A)
【文献】国際公開第2004/039494(WO,A1)
【文献】特開2014-193454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28;20/30-20/34
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物と活性炭粒子とを含む吸着材であって、
前記吸着材100質量%に対する前記アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物の割合が1質量%以上20質量%以下であり、
前記アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物は、比表面積が300m
2/g以上であり、平均粒子径D50が3~200μmであり、かつ、体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子が10体積%以下であること、並びに、
前記活性炭粒子のモード径が0.06~0.6mmであることを特徴とする、吸着材。
【請求項2】
前記アルミノシリケート化合物において、二酸化ケイ素/酸化アルミニウム(SiO
2/Al
2O
3)が3以下である、請求項1に記載の吸着材。
【請求項3】
前記活性炭がヤシ殻活性炭である、請求項1または2に記載の吸着材。
【請求項4】
空間速度(SV)2300hr
-1で通液した場合の、1分後のアルミニウム溶出量が100ppb未満である、請求項1~
3のいずれかに記載の吸着材。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の吸着材を含有する、成形体。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれかに記載の吸着材を備える、浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材、並びにそれを用いた成形体および浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は各種汚染物質の吸着能に優れているので、浄水用に多く使用されている。近年、飲料水、とくに水道水の水質に関する安全衛生上の関心が高まってきており、飲料水中に含まれる遊離残留塩素、トリハロメタン類(THM)、カビ臭などの有害物質を除去することが望まれている。
【0003】
さらに、水道配管に使用されている鉛含有材から溶出し、イオンの状態で水道水などに含まれている鉛などの重金属類も有害物質であるため、水から除去することが望まれている。よって、最近では飲料水の味については勿論、遊離残留塩素、カビ臭の除去性能に加え、重金属イオンの除去性能にも優れる浄水器が要望されている。
【0004】
このような重金属類を除去する方法として、アルミノケイ酸塩系無機イオン交換体を用いることが提案されている(特許文献1~3)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明において、アルミノケイ酸塩系無機イオン交換体として使用されるモレキュラーシーブは、活性炭中の分散性が低く、性能の安定性に欠ける場合がある。
【0006】
一方で、浄水の分野においては、アルミニウムの溶出量について厳格な規制があり、アルミノシリケート系無機化合物を用いる場合、アルミニウムの溶出が問題となる場合がある。その点、特許文献2や3に記載のように、比較的粒子径の小さなアルミノケイ酸塩系無機イオン交換体を用いると、特にフィルター使用初期にアルミニウムの溶出が大きいことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-334543公報
【文献】特開平11-347547号公報
【文献】特開2002-66312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、優れた重金属除去性能を備えつつ、さらにアルミニウムの溶出を抑制できる吸着材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討の結果、下記構成の吸着材によって上記課題が解消されることを見出し、当該知見に基づきさらに研究を重ねて本発明を完成した。
【0010】
本発明の一局面に係る吸着材は、アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物と活性炭粒子とを含む吸着材であって、前記アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物は、比表面積が300m2/g以上であり、平均粒子径D50が3~200μmであり、かつ、体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子が10体積%以下であること、並びに、前記活性炭粒子のモード径が0.06~0.6mmであることを特徴とする。
【0011】
このような構成により優れた重金属除去性能を備えつつ、さらにアルミニウムの溶出を抑制できる吸着材を提供することができる。
【0012】
また、前記吸着材において、前記アルミノシリケート化合物において、二酸化ケイ素/酸化アルミニウム(SiO2/Al2O3)が3以下であることが好ましい。それにより、アルミニウムの溶出をより確実に抑制することができると考えられる。
【0013】
前記吸着材において、前記活性炭がヤシ殻活性炭であることが好ましい。それにより、塩素臭、カビ臭に加え、THMについても吸着除去できるという利点がある。
【0014】
さらに前記吸着材において、吸着材に対する前記微粒子化合物の割合が1~50質量%であることが好ましい。それにより、バランスよく、重金属の吸着除去と塩素臭、カビ臭に加え、THMの吸着除去ができるという利点がある。
【0015】
また、前記吸着材において、空間速度(SV)2300hr-1で通液した場合の、1分後のアルミニウム溶出量が100ppb未満であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明には、上記吸着材を含有する成形体、並びに、前記吸着材を備える浄水器も包含される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた重金属除去性能を備えつつ、さらにアルミニウムの溶出を抑制できる吸着材、並びにそれを用いた成形体および浄水器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、鉛イオンなどの重金属除去能と、アルミニウムの溶出に関して、アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物の状態について鋭意検討し、研究を重ねた結果、微粒子化合物のサイズ及び粒子径が10μm以下の割合(比率)と、アルミニウム溶出量に相関性があることを見出し、当該知見に基づいて、さらに研究を行い本発明に至った。
【0019】
以下、本発明の実施形態について具体例などを参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
<微粒子化合物>
本実施形態の吸着材は、アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物と活性炭粒子とを含む。前記アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物は、比表面積が300m2/g以上であり、平均粒子径D50が3~200μmであり、かつ、体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子が10体積%以下であることを特徴とする。また、前記活性炭粒子はそのモード径が0.06~0.6mmであることを特徴とする。
【0021】
このような構成を有する吸着材によって、優れた重金属除去性能を備えつつ、さらにアルミニウムの溶出を抑制できる浄水器等を提供することが可能となる。
【0022】
本実施形態の微粒子化合物は、イオン交換容量が大きく、重金属に対して選択性が高いアルミノシリケート化合物である。
【0023】
アルミノシリケート化合物としては、イオン交換容量が大きい点でA型又はX型アルミノシリケート化合物が好適である。株式会社シナネンゼオミック社から市販されている商品名「ゼオミック」等が知られている。
【0024】
本実施形態におけるアルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物は、比表面積が300m2/g以上である。このような比表面積であれば、優れた重金属除去性能が得られる。より好ましい比表面積は、600m2/g以上である。比表面積の上限値については特に設ける必要はないが、入手性・汎用性の観点から2000m2/g以下が好ましく、1200m2/g以下がより好ましい。なお、本実施形態において、比表面積は窒素吸着等温線からBET法によって求められる。
【0025】
また、本実施形態の微粒子化合物は、平均粒子径D50が10~200μmである。このような平均粒子径D50を有することにより、後述する活性炭との分散性に優れ、各種性能の安定性が得られる。より好ましい平均粒子径は10~100μmである。なお、本実施形態において、平均粒子径D50とは、体積基準の累積分布の50%粒子径を意味し、この平均粒子径D50の数値はレーザー回折・散乱法により測定される粒度分布(累積分布)より算出される値であり、例えば、後述するマイクロトラック・ベル社製の湿式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II)などにより測定できる。
【0026】
さらに、本実施形態の微粒子化合物は、体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子が10体積%以下であることを特徴とする。本実施形態において、「粒子径」とは粒子の直径を意味し、「体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子が10体積%以下である」とは、体積基準の粒度分布における直径が10μm以下の粒子が10体積%以下であることを意味する。粒子径10μm以下の粒子の比率は、粒度分布測定により測定した値であり、例えば、後述するレーザー回折測定法などにより測定できる。
【0027】
本実施形態の微粒子化合物は、体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子が10体積%以下であり、7体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましい。
【0028】
上述したような構成の微粒子化合物を用いることにより、重金属除去性能とアルミニウム溶出抑制のバランスの良好な吸着材を得ることができる。
【0029】
本実施形態では、サイクロン装置等を用いて微粉末を除去すること等によって、粒度分布(体積粒度分布)において、粒子径10μm以下の粒子の割合が10体積%以下となる、アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物を得ることができる。
【0030】
なお、本実施形態におけるD50および体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子量(体積%)を求めるための粒子径の体積基準の粒度分布(累積分布)は、以下のようにレーザー回折測定方法により測定できる。
【0031】
測定物(例:微粒子化合物)、界面活性剤、およびイオン交換水とを混合した分散液を、レーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)社製「MT3300 II」)を用いて透過法にて測定した。なお分散液濃度は同装置で表示される測定濃度範囲に収まるように調整した。また、分散液調製時の界面活性剤には、和光純薬工業(株)社製「ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル」を用い、測定に影響する気泡などが発生しない適当量添加した。分析条件を以下に示す。
【0032】
(分析条件)
測定回数;1回
測定時間;30秒
分布表示;体積
粒径区分;標準
計算モード;MT3000 II
溶媒名;WATER
測定上限;2000μm、測定下限;0.021μm
残分比;0.00
通過分比;0.00
残分比設定;無効
粒子透過性;透過
粒子屈折率;1.81
粒子形状;非球形
溶媒屈折率;1.333
DV値;0.0150~0.0700
透過率(TR);0.700~0.950。
【0033】
(平均粒子径D50)
粒度分布測定で得られた体積基準の累積分布が50%となる粒子径を平均粒子径D50とした。
【0034】
(粒子径10μm以下の粒子の割合)
粒度分布測定で得られた体積基準の累積分布から求めた。
【0035】
さらに、本実施形態では、前記アルミノシリケート化合物において、二酸化ケイ素/酸化アルミニウム(SiO2/Al2O3)が3以下であることが好ましい。それにより、アルミニウムの溶出をより抑えることができると考えられる。蛍光X線分析装置を用いて金属分析を行い、ケイ素とアルミニウムの酸化物としての比を求めた。具体的な金属分析については、Malvern Panalytical社製の高出力蛍光X線分析装置(Axios mAX)を用いて、ケイ素とアルミニウムの酸化物としての比を求めた。
【0036】
本実施形態の吸着材に使用される活性炭としては、炭素質材料を炭化、賦活することによって活性炭となるものであればよく、数100m2/g以上の比表面積を有するものが好ましい。
【0037】
前記炭素質材料としては、例えば、木材、鋸屑、木炭、ヤシ殻、クルミ殻などの果実殻、果実種子、パルプ製造副生物、リグニン、廃糖蜜などの植物系、泥炭、草炭、亜炭、褐炭、レキ青炭、無煙炭、コークス、コールタール、石炭ピッチ、石油蒸留残渣、石油ピッチなどの鉱物系、フェノール、サラン、アクリル樹脂などの合成素材、再生繊維(レーヨン)などの天然素材を例示することができる。なかでも、植物系のヤシ殻活性炭を使用することが好ましい。
【0038】
粉状および粒状の活性炭を使用する場合、そのサイズは、有害物質の除去性能、圧力損失、微粒子化合物と活性炭との分級の抑制等の観点から、モード径で0.06~0.6mmである。本実施形態において、「モード径」とは、粒子径分布における最頻値のことを意味する。本実施形態では、上述したようにレーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置を用いて測定したモード径が0.5mm以下の場合はその値を採用した。レーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置を用いて測定したモード径0.5mm超の場合には、JIS K1474(2007年)を基に測定した値である。具体的には、最頻値となったメッシュの目開きの平均値をモード径とした。例えば後述する実施例で使用している活性炭(GW10/32)では、最頻値は14メッシュと18メッシュの間であり、0.85mmと1.18mmの平均値から、モード径は1.0mmとした。
【0039】
活性炭として、繊維状の活性炭を使用する場合、成形性の点から1~5mm程度に切断して使用するのがよく、さらに、遊離塩素の除去性の点からヨウ素吸着量が1200~3000mg/gのものを使用するのが好ましい。
【0040】
<吸着材および成形体>
本実施形態における吸着材は、吸着材中、アルミノシリケート化合物からなる微粒子化合物の割合が1質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
吸着材は、上述の微粒子化合物と活性炭を混合することによって得られる。混合方法はとくに限定されず、公知の方法を採用することができる。この混合物(吸着材)は浄水材としてそのまま自動充填して使用することができるが、さらに加圧して成形し、カートリッジ形態の成形体として使用することも可能である。成形体とする際には、適宜成形のためのバインダや成形体の形状維持のための不織布を用いてもよい。また、微粒子化合物と活性炭との混合物に、抗菌性を与えるために、銀添着活性炭あるいは銀ゼオライトを添加することもできる。
【0042】
本実施形態の吸着材は、優れた重金属除去性能を有する一方で、アルミニウムの溶出も抑制できる。本実施形態の吸着材を使用することにより、空間速度(SV)2300hr-1で1分間通水したときの、アルミニウム溶出量を100ppb未満にできるという優れた利点がある。
【0043】
<浄水器>
吸着材を容器(カラム)に充填して浄水器として使用する場合の通水条件はとくに限定されないが、圧力損失があまり大きくならないように、例えば50~4000hr-1の空間速度(SV)で実施される。本実施形態の吸着材は、吸着速度が速いので、SVを100hr-1以上、さらに1000hr-1以上の流速でも性能を発揮するので、浄水器カラムを大幅に小型化することができる。
【0044】
本実施形態の成形体および浄水器は、優れた重金属除去性能を備え、かつアルミニウムの溶出量も抑制できるため、産業利用上、極めて有用である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0046】
(実施例1)
微粒子化合物として、アルミノシリケート化合物(株式会社シナネンゼオミック製「ゼオミック」LH210N、平均粒子径32μm)0.64gと、活性炭(株式会社クラレ製「クラレコール」GW60/150(モード径0.23mm、比表面積800m2/g)32.3gとを均一に混合し実施例1の吸着材(アルミノシリケート化合物の割合:約2質量%)とした。
【0047】
(比較例1および2)
微粒子化合物として、アルミノシリケート系化合物(株式会社シナネンゼオミック製「ゼオミック」LGK10T、平均粒子径9μm)、および、アルミノシリケート系化合物(株式会社シナネンゼオミック製「ゼオミック」「LGK210T」平均粒子径45μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例の吸着材を得た。
【0048】
<評価試験>
アルミノシリケート化合物の比表面積は上述した方法により測定した。また、アルミノシリケート化合物の平均粒子径D50、アルミノシリケート化合物中の体積粒度分布における粒子径10μm以下の粒子の割合(体積%)については、上述した粒度分布の測定を行い、その結果から算出した。また、活性炭のモード径についても上述した方法により測定を行った。
【0049】
通水試験は、実施例および比較例それぞれの吸着材を60mlのカラムに充填し、原水を2.3リットル(L)/分(SV2300hr-1)の流速で通水することにより行った。
【0050】
鉛イオンの除去率は、吸着材を60mlのカラムに充填し、50ppbの溶解性鉛(硝酸鉛を加えて鉛イオン濃度が50ppbになるように調整した)を含む原水を2.3リットル(L)/分(SV2300hr-1)の流速で通水し、鉛イオン濃度から除去率を計算した。鉛イオン除去性能は、鉛イオン除去率80%となる通液量(L)を求め、吸着材の単位体積あたり(カラムの単位体積あたり)の通液量(L/ml)で評価した。
【0051】
また、アルミニウム溶出量については、上記条件で通水し、通液1分後のアルミニウム濃度と原水のアルミニウム濃度の差分から求めた。
【0052】
結果を、それぞれ表1に示す。
【0053】
【0054】
(考察)
表1の結果より、実施例の吸着材では、優れた鉛除去性能を発揮しつつ、アルミニウムの溶出を抑制できることが確認できた。
【0055】
一方、粒子径10μm以下の粒子の割合(体積%)が多いアルミノシリケート系化合物を用いた比較例1の吸着材では、アルミニウムの溶出が十分に抑制できないことがわかった。また、比表面積が小さいアルミノシリケート系化合物を用いた比較例2の吸着材では、十分な鉛除去性能が得られなかった。
【0056】
(実施例2および比較例3~5)
微粒子化合物として、アルミノシリケート化合物(株式会社シナネンゼオミック製「ゼオミック」LH210N)を、ボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径D50及び粒子径10μm以下の粒子の割合(体積%)が表2に示す値となるアルミノシリケート系化合物の粉砕物(1)~(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2及び比較例3~5の吸着材を得た。
【0057】
そして、得られた各吸着材について、実施例1と同じ方法で評価を行った。その結果をそれぞれ表2に示す。
【0058】
【0059】
(考察)
表2の結果より、微粒子化合物の平均粒子径が小さくなると、アルミニウム溶出量も増えることがわかった。そして、体積粒度分布において、粒子径10μm以下の粒子が10%以下であれば、アルミニウム溶出量抑制とのバランスに優れることも確認された。
【0060】
(比較例6)
活性炭を、株式会社クラレ製「クラレコール」GW10/32(モード径:1.0mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例6の吸着材を得た。
【0061】
(比較例7)
活性炭として、株式会社クラレ製「クラレコール」GW60/150を平均粒子径(D50)が約20μmになるまで粉砕したもの(モード径:0.044mm)を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例7の吸着材を得た。
【0062】
そして、得られた各吸着材について、実施例1と同じ方法で評価を行った。その結果をそれぞれ表3に示す。
【0063】
【0064】
(考察)
表3の結果より、使用する活性炭のモード径が大きいと、微粒子化合物と混合した際や、通水中に分級が生じてしまい、鉛除去性能が低下することがわかった。また、モード径が小さすぎると、通水中に昇圧して、設定した2.3リットル(L)/分(SV2300hr-1)の流速まで水を流すことができなかった。