(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用非水電解液、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230418BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230418BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230418BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20230418BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20230418BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01G11/64
H01G11/62
(21)【出願番号】P 2020522117
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2019020162
(87)【国際公開番号】W WO2019230506
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018104498
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】321003290
【氏名又は名称】МUアイオニックソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】島本 圭
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0271715(US,A1)
【文献】特開2008-108586(JP,A)
【文献】特開2004-185931(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137571(WO,A1)
【文献】特開2014-170689(JP,A)
【文献】特開2017-037808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01G 11/62-11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と、
前記非水溶媒に溶解している電解質塩と、
下記式(1)で表されるスルホラン化合物からなる第1の添加剤と、
下記式(2a)で表される環状硫酸エステル化合
物である第2の添加剤と、
を含有する、蓄電デバイス用非水電解液。
【化1】
[式(1)中、R
1は、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、又はトリル基を示す。]
【化2】
[式(2a)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又は水素原子を
示す。]
【請求項2】
下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)又は(3e)で表される少なくとも1種のリチウム塩からなる第3の添加剤を更に含有する、請求項1に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【化3】
【請求項3】
前記電解質塩が、LiPF
6、LiBF
4、及びLiN(SO
2F)
2からなる群より選ばれる少なくとも1種のリチウム塩を含む、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項4】
前記第1の添加剤の含有量が、前記非水電解液の質量を基準として、0.1質量%以上5質量%以下であり、
前記第2の添加剤の含有量が、前記非水電解液の質量を基準として、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用非水電解液と、
正極及び負極と、を備える蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用非水電解液、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池に代表される、非水電解液を用いた蓄電デバイスは、小型電子機器の電源、及び電気自動車又は電力貯蔵用の電源等として広く使用されている。蓄電デバイス用非水電解液には、蓄電デバイスの耐久性向上等を目的として、スルホン酸エステル化合物等の各種の添加剤が添加されることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0271715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電デバイスの容量及び抵抗等の電池特性が、高温環境下で大きく低下することがある。また、密封された非水電解液から高温環境下でガスが発生することにより、蓄電デバイスが膨張してその使用に支障をきたすこともある。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、高温環境下で、容量の安定性に優れるとともに抵抗の上昇及びガス発生が抑制された蓄電デバイスを与えることのできる非水電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解している電解質塩と、下記式(1)で表されるスルホラン化合物からなる第1の添加剤と、下記式(2a)で表される環状硫酸エステル化合物及び下記式(2b)で表されるジニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である第2の添加剤(下記式(2a)で表される環状硫酸エステル化合物又は下記式(2b)で表されるジニトリル化合物のうち少なくとも一方からなる第2の添加剤)と、を含有する、蓄電デバイス用非水電解液に関する。
【0007】
【0008】
式(1)中、R1は、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、又はトリル基を示す。式(2a)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又は水素原子を示し、式(2b)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示す。
【0009】
本発明の別の一側面は、上記蓄電デバイス用非水電解液と、正極及び負極と、を備える蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温環境下で、容量の安定性に優れるとともに抵抗の上昇及びガス発生が抑制された蓄電デバイスを与えることのできる非水電解液が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
一実施形態に係る非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解している電解質塩と、下記式(1)で表されるスルホラン化合物からなる第1の添加剤と、下記式(2a)で表される環状硫酸エステル化合物及び下記式(2b)で表されるジニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である第2の添加剤とを含有する。
【化3】
【化4】
【0014】
(第1の添加剤)
第1の添加剤は、式(1)で表される1種又は2種以上のスルホラン化合物からなる。式(1)中、R1は、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、又はトリル基を示す。
【0015】
非水電解液における第1の添加剤の含有量は、非水電解液の質量を基準として、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよく、5質量%以下、又は2質量%以下であってもよい。第1の添加剤の含有量がこれら範囲内にあると、高温環境下での保存安定性がより一層優れた蓄電デバイスが得られ易い。
【0016】
(第2の添加剤)
第2の添加剤は、式(2a)で表される環状硫酸エステル化合物又は式(2b)で表されるジニトリル化合物のうち少なくとも一方からなる。式(2a)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又は水素原子を示す。式(2b)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示す。R4は、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、及びヘキサンジイル基のような直鎖のアルキレン基であってもよい。
【0017】
非水電解液における第2の添加剤の含有量は、非水電解液の質量を基準として、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよく、5質量%以下、又は2質量%以下であってもよい。第2の添加剤の含有量がこれら範囲内にあると、高温環境下での保存安定性がより一層優れた蓄電デバイスが得られ易い。同様の観点から、第1の添加剤の含有量と第2の添加剤の含有量との質量比が、50:50~95:5であってもよい。
【0018】
(電解質塩)
一実施形態に係る非水電解液に含まれる電解質塩は、典型的にはリチウム塩である。電解質塩として用いられ得るリチウム塩の例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)等の無機リチウム塩、並びにLiN(SO2F)2(LiFSI)、及びLiN(SO2CF3)2等のイミド塩が挙げられる。これらのうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この電解質塩としては、後述の第3の添加剤としてのリチウム塩とは異なる化合物が用いられる。
【0019】
電解質塩の濃度は、非水電解液の体積を基準として、0.3M以上、0.7M以上、又は1.1M以上であってもよく、2.5M以下、2M以下、又は1.6M以下であってもよい。
【0020】
(非水溶媒)
一実施形態に係る非水電解液に含まれる非水溶媒は、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、ラクトン、エーテル、及びアミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0021】
環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、トランス又はシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)が挙げられる。
【0022】
鎖状カーボネートの例としては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート;並びに、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネートが挙げられる。
【0023】
鎖状カルボン酸エステルの例としては、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル、酢酸メチル、及び酢酸エチル(EA)が挙げられる。
【0024】
ラクトンの例としては、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、及びα-アンゲリカラクトンが挙げられる。
【0025】
エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び1,4-ジオキサン等の環状エーテル、並びに、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等の鎖状エーテルが挙げられる。
【0026】
スルホンの例としてはスルホランが挙げられる。
【0027】
非水溶媒が、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、及び1,3-プロパンスルトンから選ばれる少なくとも1種の特定の溶媒と、その他の溶媒とを含んでいてもよい。この場合、上記から選ばれるビニレンカーボネート等の特定の溶媒の含有量が、非水電解液の全質量に対して、0.1~5質量%であってもよい。
【0028】
(その他の成分)
一実施形態に係る非水電解液は、下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)又は(3e)で表される少なくとも1種のリチウム塩からなる第3の添加剤を更に含有してもよい。これにより、高温環境下での保存安定性がより一層優れた蓄電デバイスが得られ易い。
【0029】
【0030】
非水電解液における第3の添加剤の含有量は、非水電解液の質量を基準として、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってもよく、2質量%以下、又は1.5質量%以下であってもよい。第3の添加剤の含有量がこれら範囲内にあると、高温環境下での保存安定性がより一層優れた蓄電デバイスが得られ易い。
【0031】
一実施形態に係る非水電解液は、以上例示したもの以外の添加剤等の他の成分を、必要に応じて更に含有することができる。非水電解液は、各成分を混合することにより調製できる。
【0032】
(蓄電デバイス)
図1は、蓄電デバイスの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示す蓄電デバイス1は、非水電解液二次電池である。蓄電デバイス1は、板状の正極4と、正極4と対向する板状の負極7と、正極4と負極7との間に配置された非水電解液8と、非水電解液8中に設けられたセパレータ9と、を備える。正極4は、正極集電体2とその非水電解液8側に設けられた正極活物質層3とを有する。負極7は、負極集電体5と非水電解液8側に設けられた負極活物質層6とを有する。非水電解液8として、上述の実施形態に係る非水電解液を用いることができる。
図1では、蓄電デバイスとして非水電解液二次電池を示したが、当該非水電解液が適用され得る蓄電デバイスはこれに限定されることはなく、電気二重層キャパシタ等のその他の蓄電デバイスであってもよい。
【0033】
正極集電体2及び負極集電体5は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、及びステンレス等の金属からなる金属箔であってもよい。
【0034】
正極活物質層3は正極活物質を含む。正極活物質は、例えば、リチウムと、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上とを含有するリチウム複合金属酸化物であってもよい。正極活物質として、1種又は2種以上のリチウム複合金属酸化物を用いることができる。リチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiCo1-xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Li2MnO3とLiMO2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2O4か挙げられる。
【0035】
正極活物質の他の例として、リチウム含有オリビン型リン酸塩が挙げられる。リチウム含有オリビン型リン酸塩は、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有していてもよい。リチウム含有オリビン型リン酸塩の具体例としては、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4、及びLiFe1-xMnxPO4(0.1<x<0.9)が挙げられる。これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩は他元素で部分的に置換されていてもよい。
【0036】
正極活物質層3は、導電剤を更に含んでいてもよい。導電剤の例としては、天然黒鉛及び人造黒鉛等のグラファイト、並びに、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラック等のカーボンブラックが挙げられる。
【0037】
正極活物質層3は、結着剤を更に含んでいてもよい。結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びエチレンプロピレンジエンターポリマーが挙げられる。
【0038】
負極活物質層6は負極活物質を含む。負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金又はリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料であればよく、例えば、炭素材料(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛)、金属単体(合金も含む)、又は金属化合物であってもよい。負極活物質は、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属の単体、又はこれらから選ばれる少なくとも1種の金属を含有する金属化合物であってもよい。これら金属とリチウムとの合金を負極活物質として用いてもよい。金属化合物は、例えば、酸化物、窒化物、硫化物、又は硼化物であってもよい。
【0039】
セパレータ9は、単層又は複層のフィルムであることができる。セパレータは、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンの単層又は積層体からなる微多孔性フィルム、織布、不織布等であってもよい。セパレータは、ポリエチレンとポリプロピレンとの積層体であってもよく、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造の積層体であってもよい。
【0040】
セパレータ9の厚みは、特に制限されないが、2μm以上、3μm以上、又は4μm以上であってもよく、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であってもよい。
【0041】
蓄電デバイスの構成は、
図1の実施形態に限られない。蓄電デバイスを構成する各部材の形状、厚み等の具体的な形態は、当業者であれば適宜設定することができる。例えば、蓄電デバイスが、コイン型電池、円筒型電池、角型電池、又はラミネート電池であってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
1.非水電解液の調製
第1の添加剤として下記の化合物1-1を、第2の添加剤として下記の2a-1を準備した。
【化6】
【0044】
実施例1
エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)及びジメチルカーボネート(DMC)をEC/MEC/DMC=3/3/4の体積比で含む非水溶媒と、電解質塩としてのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6、濃度1.2M)と、化合物1-1(含有量:1質量%)と、化合物2a-1(含有量:1質量%)とを含む非水電解液を調製した。
【0045】
実施例2
化合物1及び化合物2a-1の含有量を0.5質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解液を得た。
【0046】
比較例1~3
各成分の種類及び濃度を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解液を得た。
【0047】
【0048】
2.リチウム二次電池の作製
94質量%のLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(正極活物質)、及び3質量%のアセチレンブラック(導電剤)を混合し、混合物を、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)が濃度3質量%で1-メチル-2-ピロリドンに溶解している溶液に加えて、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔の両面に塗布し、塗膜を乾燥して、正極活物質層を形成させた。アルミニウム箔及び正極活物質層からなる積層シートを加圧処理した。次いで、積層シートを所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。
【0049】
95質量%の黒鉛(負極活物質)を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)が濃度5質量%で1-メチル-2-ピロリドンに溶解している溶液に加えて、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔の両面に塗布し、塗膜を乾燥して、負極活物質層を形成させた。銅箔及び負極活物質層からなる積層シートを加圧処理した。次いで、積層シートを所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。
【0050】
正極シート、セパレータ及び負極シートの順に重ねた状態でこれらを渦巻き状に巻回した。セパレータとしてポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/ポリプロピレンフィルムの3層構成の微多孔シートを用いた。得られた巻回体を、外装体としての袋状のアルミラミネートフィルムに収納した。次いで外装体に各実施例及び比較例の非水電解液を更に注入し、外装体を密封して、評価用のリチウム二次電池を得た。
【0051】
3.評価
リチウム二次電池を、25℃において、0.2Cに相当する電流で2.7V~4.3Vの電圧範囲で1サイクル充放電し、次いで再度4.3Vまで充電してから、60℃で48時間保持することにより、安定化させた。その後、リチウム二次電池を2.7Vまで放電させた。放電後のリチウム二次電池を25℃で0.2に相当する電流で4.3Vまで充電し、60℃の環境下で20日間保持する保存試験に供した。保存試験後の放電容量、直流抵抗(DCIR)及びガス発生量を、以下の方法により測定した。
【0052】
放電容量
保存試験後のリチウム二次電池を、25℃において、0.2Cに相当する電流で2.7Vまで放電し、次いで2.7V~4.3Vの電圧範囲で1サイクル充放電したときの放電容量を測定した。比較例1の放電容量に対する放電容量の割合を、放電容量の相対値(%)として算出した。
【0053】
直流抵抗(DCIR)
保存試験後のリチウム二次電池を、25℃において50%の充電率まで充電し、次いで、0.5C、1C、2C又は3Cに相当する電流で放電を開始してから10秒後の電圧を測定した。得られた10秒後の電圧値を電流値に対してプロットしたときの回帰直線の傾きを、直流抵抗として記録した。比較例1の直流抵抗に対する直流抵抗の割合を、直流抵抗(DCIR)の相対値(%)として算出した。
【0054】
ガス発生量
保存試験前及び保存試験後のリチウム二次電池の体積を、アルキメデス法により測定した。保存試験前後の体積の差からガス発生量を求めた。
【0055】
表1に示されるように、第1の添加剤及び第2の添加剤を含有する非水電解液を用いることにより、高温環境下で保存されたときに、容量の安定性に優れるとともに、抵抗の上昇及びガス発生が抑制された蓄電デバイスが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1…蓄電デバイス、2…正極集電体、3…正極活物質層、4…正極、5…負極集電体、6…負極活物質層、7…負極、8…非水電解液、9…セパレータ。