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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】フラン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/36 20060101AFI20230418BHJP
   C07D 307/42 20060101ALI20230418BHJP
   C07D 307/46 20060101ALI20230418BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
C07D307/36
C07D307/42
C07D307/46
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021152924
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2016233623の分割
【原出願日】2016-11-30
(65)【公開番号】P2022000446
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/研究開発項目2.木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/木質バイオマスから各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】川波 肇
(72)【発明者】
【氏名】小川 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】チャタジー マヤ
(72)【発明者】
【氏名】石坂 孝之
(72)【発明者】
【氏名】長尾 育弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】秋月 隆昌
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/054804(WO,A2)
【文献】特開2015-229657(JP,A)
【文献】特開2014-201542(JP,A)
【文献】Antonyraj, Churchil A. 他,Selective oxidation of HMF to DFF using Ru/γ-alumina catalyst in moderate boiling solvents toward i,Journal of Industrial and Engineering Chemistry (Amsterdam, Netherlands),2013年,19(3),1056-1059
【文献】Zhu, Yifeng 他,Efficient synthesis of 2,5-dihydroxymethylfuran and 2,5-dimethylfuran from 5-hydroxymethylfurfural u,Catalysis Science & Technology,2015年,5(8),4208-4217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)糖類から5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを合成する工程、
(2)前記(1)の工程で得られる5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを含む溶液を蒸留することなく、酸化マンガン、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、及びゼオライトから選ばれる少なくとも1つの吸着剤により不純物を除去する工程、及び
(3)前記(2)の工程で得られ溶液を用いて、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応又は還元反応によりフラン誘導体を製造する工程、
を含むフラン誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記糖類が、セルロース、でんぷん、グルコース及びフルクトースから選ばれる少なくも1つである、請求項1に記載のフラン誘導体の製造方法。
【請求項3】
5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応により、2,5-ジホルミルフランを生成させる、請求項1又は2に記載のフラン誘導体の製造方法。
【請求項4】
酸素を酸化剤とし、触媒としてルテニウム担持アルミナを用いる、請求項に記載のフラン誘導体の製造方法。
【請求項5】
二酸化マンガンを酸化剤として用いる、請求項に記載のフラン誘導体の製造方法。
【請求項6】
5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを生成させる、請求項1又は2に記載のフラン誘導体の製造方法。
【請求項7】
5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ジメチルフランを生成させる、請求項1又は2に記載のフラン誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類から得られた5-ヒドロキシ-2-メチルフルフラールを原料としたフラン誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が世界的な問題となっている中、カーボンニュートラル資源、再生可能資源としてバイオマスを活用する技術の開発が活発に進められている。
【0003】
フルフラール類は、バイオマス由来の物質の中でも、特にセルロース、ヘミセルロースやデンプンなどの多糖類、あるいはグルコース、キシロース、フルクトースなどの糖類から得られる化合物であり、特にグルコースやフルクトースからは、下記の式(1)で表される5-ヒドロキシ-2-メチルフルフラール(以下、「HMF」ということもある。)が得られることは既に多くの文献等で報告されている(特許文献1)。
【0004】
【化1】
【0005】
バイオマス由来のフルフラール類は、樹脂、化成品、燃料などの中間体原料として利用することができる石油代替物質の一つの重要な候補となる化合物の一つである。
例えば、HMFにおいては、酸化して得られる2,5-ジホルミルフランや5-ホルミルフラン-2-カルボン酸を、長鎖アミン類と反応させて界面活性剤とする方法、或いは、酸化して得られるフラン-2,5-ジカルボン酸や選択的水素化により得られる2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の原料とする方法、或いは、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを水素化分解して得られる2,5-ジメチルフランあるいはHMFから直接水素化および水素化分解をして得られる2,5-ジメチルフランをガソリンの代替物とする方法等が知られている。
【0006】
こうしたバイオマスから得られるHMFは、合成する際に発生するギ酸、酢酸などの有機酸、不溶のフミン質、未反応の糖類等が不純物として共存しているために、そのままでは、水素化、水素化分解、エステル化等々の種々の反応による有用な化合物への転換には使えないうえ、保存中に分解又は重合する等の理由で長期保存が難しく、精製してから用いることが必要である。
【0007】
しかしながら、HMFの精製は、特にHMFの合成反応時に水を溶媒として用いた場合、反応液中からHMFを取り出して精製することが難しく、精製時に生成したHMFを多くロスすることが少なくない。
また、HMFの精製方法は、複数の手法が報告されているが、HMFは水酸基とホルミル基が分子内に置換されているため、加熱等によって容易に重合するなどの反応が起こりやすい。そのため不純物があると蒸留などの手法が使えない。
【0008】
そこで、特許文献2では、反応液をそのまま無水酢酸を加えて水酸基をアシル化した後、減圧下での蒸留で分離精製したアシル体をイオン交換樹脂(Amberlyst A26)で脱アセチル化させ、更にメチルターシャリーブチルエーテルで再結晶させるか、脱アセチル化後に減圧下90℃で単蒸留する多数の工程を経ることによって、綺麗なHMFを得ている。そのため、HMFの純度は99%以上であるが、出発原料のD-フルクトースからの収率は28%と低い。
また、特許文献3では、抽出によって精製する手法が記載されている。即ち、反応液を濾過して水に不溶の不純物が生成するが、これらは糖の分子間脱水による無水物や糖縮合物、更に生成したHMF同士の縮重合体、更にはHMF、糖、反応中間体、およびHMFが更に反応した生成物から得られると考えられる総称フミン質と思われ、これらを除去した後、HMFが両親媒性であることを利用して反応液に疎水性の溶媒を添加して、HMF純度が60%以上の比較的高選択的に得られたHMFの反応液からHMFを抽出して溶媒を留去後、HMFを含む抽出液に蒸留水またはイオン交換水または純水を加えて、更に疎水性溶媒を再度加えて抽出精製をする。この手法は、溶媒留去に減圧したり時間がかかったりすること、HMFがもともと比較的高い純度の反応液からでしか適応できず、更に最終的なHMFの純度は90%程度にまでしか向上できない。そのため純粋なHMFを得るには再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィーでの精製などの更なる操作が必要であることなど、一般的な有機化合物の精製法との差は無い。
【0009】
更に、特許文献4では、合成したHMFを水で抽出し溶媒置換した後の溶液を用いて酸化を行っているが、HMFの純度が90%以上の高いものであるため適応できる手法であり、フミン質を含む純度の低いHMFや、長期間保存するなどして不純物が発生してしまったHMFなどの場合は、次の酸化工程においてフミン質などによる触媒被毒などで酸化反応阻害が起こるため、これらを用いることは難しい。
【0010】
更に、特許文献5では、糖類の脱水反応によって得られた5-ヒドロキシ-2-メチルフルフラール混合物を分離・精製せずに、アルカリ性環境下、過マンガン酸塩で酸化させフラン-2,5-ジカルボン酸を製造しているが、多量のアルカリを加えて非常に強力な酸化剤で酸化しており、過マンガン酸塩は酸化反応後に二酸化マンガンとなるため、廃棄物が多量に出てしまう。また、フラン-2,5-ジカルボン酸以外の製造には適しているが、2,5-ジホルミルフランや5-ホルミルフラン-2-カルボン酸などの製造には適していない。
【0011】
この精製したHMFを用いて様々な化合物が合成されるが、例えば、特許文献6では、触媒存在下で酸素を酸化剤に用いて、HMFから2,5-ジホルミルフランが製造され、特許文献7では、触媒存在下で酸化剤を用いて、HMFから2,5-ジホルミルフランが製造されるが、いずれも精製したHMFを用いているため、工業的にはHMFの精製工程がコスト向上の要因となっていた。
【0012】
また、一般的には、非特許文献1に示されるように、二酸化マンガンまたは三酸化クロムを酸化剤とした、HMFから2,5-ジホルミルフランを製造する方法が開示されている。
しかし精製されたHMFを用いているため、原料となるHMFの価格からコスト的に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第2008/0103318号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0200698号明細書
【文献】特開2013-203665号公報
【文献】特開2013-203666号公報
【文献】特開2007-261990号公報
【文献】特表2003-528868号公報
【文献】特願2015-246219号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Journal of the American Chemical Society,1984,vol.106,p.7112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記のような問題点を解決するため、精製したHMFを用いずとも、未精製状態のHMFを用いて各種合成反応を行い、2,5-ジホルミルフランなどの対応するフラン誘導体を高収率かつ高選択的で容易に得る製造方法であり、更に生成物の容易な精製方法を提供し、これまでのフルフラール類を用いた様々な化合物への合成のコストの大幅に縮小する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、セルロース、でんぷん、グルコース、フルクトースから合成した直後のHMFには、有機酸及びフミン質が多く含まれており、これらが次の酸化反応や還元反応に影響し、複雑な生成物を与えることを見いだし、その結果、合成後の溶液にアルミナなどの吸着剤を添加してこれら反応に影響する不純物のみを吸着・濾過等するだけで、それ以上HMFを精製せずとも次の反応を行うことが可能となることが判明した。更に、アルミナの吸着剤などが次の反応に影響しない場合は、反応時にこれらの吸着剤を共存させることで、容易に純度の高い目的物を合成することができることを見出し、上記目的を達成できることが判明した。
【0017】
本発明は、これらの知見に基づいて完成させるに至ったものであり、以下のとおりである。
[1]糖類から5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを合成した後に得られる、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを含む溶液を用いてフラン誘導体を製造する方法であって、
前記5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを含む溶液を蒸留することなく、吸着剤により不純物を除去して得られた溶液を用いて、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応又は還元反応によりフラン誘導体を製造する、フラン誘導体の製造方法。
[2]前記糖類が、セルロース、でんぷん、グルコース及びフルクトースから選ばれる少なくも1つである、[1]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[3]前記吸着剤が、酸化マンガン、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、及びゼオライトから選ばれる少なくとも1つである、[1]又は[2]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[4]5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応により、2,5-ジホルミルフランを生成させる、[1]~[3]のいずれかに記載のフラン誘導体の製造方法。
[5]酸素を酸化剤とし、触媒としてルテニウム担持アルミナを用いる、[4]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[6]二酸化マンガンを酸化剤として用いる、[4]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[7]5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを生成させる、[1]~[3]のいずれかに記載のフラン誘導体の製造方法。
[8]5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ジメチルフランを生成させる、[1]~[3]のいずれかに記載のフラン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフラン誘導体の製造法によれば、合成して精製をしていない粗HMFにアルミナなどの吸着剤を用いることで、合成時の不純物として生成する有機酸やフミン質を除去することが可能となり、これによって次の反応への影響を極力抑えることが可能となるため、精製したHMFを用いた場合と同じ様に粗HMFを用いても反応を行うことがで、ほぼ同等の選択率と収率でフラン誘導体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明に用いられるHMFは、セルロース、ヘミセルロースやデンプンなどの多糖類、あるいはグルコース、キシロース、フルクトースなどの糖類を原料とするバイオマス由来の化合物である。
【0021】
なお、バイオマスで合成したHMF中には、フルフラールが含まれている。これは、フルフラールが、バイオマスのセルロールの単糖であるグルコースを同じ部類である、ヘミセルロースの成分であるキシランからの単糖であるキシロースに由来するものであるためである。
フルフラールは、水酸基を有しないので、酸化反応には進まないが、本発明の方法によれば、フミン質などの不純物が除去されるため、粗HMF中に含まれる粗フルフラールも、精製されたフルフラールと同じように還元反応に用いることができる。
【0022】
本発明に用いられる吸着剤は、アルミナなどの濾別が容易な固体の吸着剤であることを特徴とする。
【0023】
本発明に用いられる吸着剤としては、炭素、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化亜鉛、ゼオライト、モンモリロナイト、モレキューラーシーブ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられるが、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化マンガン、ゼオライトが好ましく、更には、アルミナ、ゼオライト、酸化マンガンが最も好ましい。
【0024】
本発明に用いられる吸着剤の量は特に限定されず、粗HMF溶液に含まれる不純物が十分吸着される量を適宜決めることができる。
【0025】
吸着剤を入れた後、吸着媒は濾過により容易に系中から分離することができ、洗浄・乾燥・焼成後、再び吸着剤として用いることができる。
【0026】
本発明に用いられる吸着剤で不純物を除いた粗HMF溶液は、酸化反応によって下記の式(3)で表される2,5-ジホルミルフランを製造する方法、更に酸化することによって下記の式(4)で表されるフラン-2,5-ジカルボン酸を製造するする方法、又は還元反応によって下記の式(5)で表される2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを製造する方法、更に還元することにより下記の式(6)で表される2,5-ジメチルフランを製造する方法などに用いることができる。
【0027】
【化2】
【0028】
本発明に用いられる吸着剤は、粗HMFから不純物を除く際に用いることもできるが、反応に影響しなければ、先の反応系に添加して反応を行うこともできる。
【実施例
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、反応の転化率および収率の決定は以下の方法で行った。
【0030】
〈転化率〉
転化率は、下記の通りの手法で求めた。
合成した反応液で各粗HMF液に含まれるHMFを、液体クロマトグラフィーを用いてそのピーク面積から予め作成していた検量線を用いてHMFの濃度を求めた後、溶液に含まれる全HMFのモル数を求めた。次に反応後の溶液から、同様に液体クロマトグラフィーを用いてHMFの濃度を求め、反応後の溶液に残ったHMFのモル数を求め、用いたHMFのモル数に対する残ったHMFのモル数の百分率を回収率とした。最後に100%から回収率の差を転化率とした。
転化率(%)=100(%)-回収率(%)
【0031】
〈収率〉
収率は、下記の通りの手法で求めた。
反応液に残った目的物のモル数を液体クロマトグラフィーから求め、用いたHMFのモル数に対する得られた目的物のモル数の百分率を収率とした。
収率(%)=目的物のモル数/用いたHMFのモル数×100(%)
【0032】
〈選択率〉
選択率は、HMFの転化率に対する目的物の収率の百分率とした。
選択率(%)=目的物の収率/HMFの転化率×100(%)
【0033】
(実施例1)
グルコース(0.5mol/L)の水-ブタノール混合液(ブタノール5%含有)を流通式で反応させて粗HMF溶液(HMF選択率30%、HMF含有濃度0.1~0.2M、400mL)を得た。得られた溶液に食塩で塩析を行い濾別でフミン質を除去した。濾液に酢酸エチルを400mL加えHMFを抽出した。抽出率は90%であった。また、この抽出液のガスクロマトグラフィーで測定したHMF純度は、30%であった。
【0034】
この抽出液(1mL)に、各吸着剤(100mg)を入れ、目視で抽出液の脱色度によって不純物の除去の度合いを評価した。脱色度が高いものは、〇で特に良かったものは◎、脱色が殆どなかったものを×とした。
ガスクロマトグラフィーで測定したHMF純度は、活性炭又はセライトを用いた場合を除き、60~80%程度に向上した。その結果、二酸化マンガン、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ゼオライトが良好な結果を示すことが分かった。
以下の表に、結果を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
(実施例2)
アルミナで不純物を除去した粗HMFを含む酢酸エチル溶液から溶媒を留去した後に得られた粗HMF(2.0g)を反応容器に入れ、酸化剤として二酸化マンガンを加えて、ジクロロメタン溶液中、酸化反応を行った。反応後、反応溶液を濾過した。淡黄色の濾液を溶媒留去したところ、淡黄色の固体が得られた。得られた固体は2,5-ジホルミルフランで純度は93%であった。更に再結晶を行うことで、白色の2,5-ジホルミルフラン(純度99%以上)が得られた。HMFから2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上で、不純物を除去することによって、その後の反応が精製したHMFと同等であることが分かった。
【0037】
(実施例3)
アルミナで不純物を除去した粗HMFを含む酢酸エチル溶液から溶媒を留去した後に得られた粗HMF(0.28g)を反応容器に入れ、トルエン(5mL)を加え、触媒として5wt%ルテニウム担持アルミナを加えて懸濁させた。該反応容器に、酸素ガスを充填したガス採集袋を取り付け、アスピレーターを用いて反応容器内部を酸素置換した。反応液を強く撹拌しながら80℃で42時間反応させた後、ろ過により触媒を除去し、母液を減圧留去したところ、淡黄色の固体が得られた。得られた生成物を分析した結果、原料は完全に消失し目的の2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上であった。
なお、アルミナに代えて、酸化マンガン、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、活性炭、又はゼオライトで不純物を除去した粗HMFを用いて、同じ条件で酸化反応を試みたところ、活性炭とゼオライトで除去した場合以外は、全て目的の2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上であった(上記[表1]参照)。
【0038】
(実施例4)
アルミナで不純物を除去した粗HMFを含む酢酸エチル溶液から溶媒を留去した後に得られた粗HMF100mgを反応容器に入れ、水2mLを加え、触媒として5wt%白金担持メソポーラスシリカを加えて懸濁させた。水素ガスで反応容器内を0.8MPaまで加圧した後、35℃で2時間反応させた。反応後、濾過により触媒を除去し、濾液を減圧留去し、クロマトグラフィーで得られた成分を分析したところ、転化率99%以上で、下記の式で表される2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランが選択率98%、収率98%で得られることが分かった。
【0039】
また、フルフラールを原料に同様の条件で反応を行ったところ、転化率99%以上で、下記の式で表されるフルフリルアルコ-ル(2-ヒドロキシメチルフラン)の選択率はいずれも95%であった。
【0040】
(実施例5)
実施例4と同様の条件で、アルミナを用いて不純物を除去した粗HMF100mgを用いて、触媒として5wt%パラジウム担持カーボンを反応容器に入れ、水1mLを加えた後、水素ガスで反応容器内を1MPaまで加圧した後、二酸化炭素を10MPa加えて、80℃で2時間反応させた。反応後、濾過により触媒を除去し、濾液をそのままクロマトグラフィーで得られた成分を分析したところ、転化率99%以上で、2,5-ジメチルフランが99%以上得られた。
【0041】
(比較例1)
試薬会社から購入したHMF(アルドリッチ社、純度98%、100mg)に、酸化剤として二酸化マンガンを加えてジクロロメタン溶液中、酸化反応を行った。反応後、反応液を濾別して濾液を溶媒留去した結果、淡黄色の固体が得られた。得られた固体は2,5-ジホルミルフランで、純度は95%であった。HMFから2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上であった。
【0042】
(比較例2)
試薬会社から購入したHMF(アルドリッチ社、純度98%、98mg)にトルエン(5mL)を加え、触媒として5wt%ルテニウム担持アルミナを加え懸濁させた。酸素ガスを充填したガス採集袋を取り付け、アスピレーターを用いて反応容器内部を酸素置換した。反応液を強く撹拌しながら80℃で24時間反応させた後、ろ過により触媒を除去し、母液を減圧留去した。得られた生成物を分析した結果、原料は完全に消失し目的の2,5-ジホルミルフランの収率は98%であった。
【0043】
(比較例3)
アルミナ等の吸着剤を入れずに得たHMF溶液を濃縮して冷蔵庫(10℃)で保管していたところ、時間経過に従ってHMFが消失し、1ヶ月後は30%程度あったHMFはほぼ消失したため、酸化反応を行うことができなかった。なお、室温(28℃)では、45%あったHMFは2日後に消失した。