(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】半導体ウエハ、放射線検出素子、放射線検出器、及び化合物半導体単結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/144 20060101AFI20230418BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20230418BHJP
H01L 31/0264 20060101ALI20230418BHJP
C30B 29/48 20060101ALI20230418BHJP
C30B 11/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H01L27/144 K
G01T1/24
H01L31/08 N
C30B29/48
C30B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021520038
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047672
(87)【国際公開番号】W WO2020235124
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019094051
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸司
(72)【発明者】
【氏名】野田 朗
(72)【発明者】
【氏名】平野 立一
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018972(JP,A)
【文献】特表2015-504513(JP,A)
【文献】特開2017-197413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/144
G01T 1/24
H01L 31/0264
C30B 29/48
C30B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、塩素濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶からなり、
0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×10
7Ωcm以上7.0×10
8Ωcm以下であり、
0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下であることを特徴とする半導体ウエハ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ウエハから主面が矩形となるように切り出された基板と、
前記基板の一方の主面に形成された共通電極と、
前記基板の他方の主面に行列状に複数形成されたピクセル電極と、を備えたことを特徴とする放射線検出素子。
【請求項3】
0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×10
7Ωcm以上7.0×10
8Ωcm以下であり、
0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下であることを特徴とする請求項2に記載の放射線検出素子。
【請求項4】
請求項2または3に記載の放射線検出素子と、
前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子にバイアス電圧を印加する電源と、
前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子から出力された電気信号を増幅する増幅部と、
を備えたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
亜鉛濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、塩素濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶からなり、
0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×10
7Ωcm以上7.0×10
8Ωcm以下であり、
0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下である化合物半導体単結晶基板の製造方法であり、
炉内での単結晶の結晶成長工程と、
前記単結晶の結晶成長工程が終了した後、炉内単結晶の設置位置の温度を385~400℃とし、炉内でアンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、50~90時間の熱処理をし、熱処理後の単結晶インゴットをウエハ状にスライスして基板とする工程と、
を含むことを特徴とする化合物半導体単結晶基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、放射線検出素子、放射線検出器、及び化合物半導体単結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線検出素子の基板をなす各種の化合物半導体の開発が行われてきたが、その中でもテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)が、近年の結晶開発における技術革新により有力な材料として注目されている。
CdZnTeは、原子番号が比較的大きい元素からなるので、放射線(硬X線やγ線)の検出効率が高い。このため、CdZnTeを用いた放射線検出器(以下CdZnTe系検出器)は、他の化合物半導体を用いたものよりも小型かつ高性能なものとすることができる。
また、CdZnTe系検出器は、放射線を直接電流に変換する仕組みなので、ヨウ化ナトリウム(NaI)に代表されるルミネッセンスを介した間接的な動作機構のシンチレータ検出器に比べ、検出効率及びエネルギー分解能において優れている。
また、CdZnTeは、バンドギャップが大きいので、熱の影響を受けにくく、動作時の漏れ電流が小さい。このため、CdZnTe系検出器は、室温で動作可能となり、動作させるために冷却装置が必要なシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)を用いた検出器に比べ、装置を小型化でき、更に、高いバイアス電流を印加することで高いエネルギー分解能を発揮することができる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2011/0186788号明細書
【文献】特開昭63-185898号公報
【文献】特開2004-238268号公報
【文献】特開2013-241289号公報
【文献】特許6018532号公報
【文献】特開2008-100900号公報
【文献】特開平05-155699号公報
【文献】特開平09-124310号公報
【文献】特開2017-197413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CdTe系単結晶の高抵抗率化に関しては、特許文献3~9のような先行技術が存在する。特許文献3は、塩素(Cl)ドープまたはインジウム(In)ドープにより、CdTe単結晶を108~109Ωcmとする技術を開示している。特許文献4は、100Vのバイアス電圧印加時におけるInドープCdZnTe単結晶について、単結晶成長後に2段階のインゴットアニールを行うことで、抵抗率として1011Ωcm台の値が達成できる技術を開示している。しかし、これらには、低線量環境下において放射線検出器として使用する際等のように、高バイアス電圧印加時の抵抗率という観点での課題の認識は無く、そのような状況においても十分な抵抗率値が達成されるか否かについての言及はない。特許文献5は、特許文献4と同様のInをドープしたCdZnTe単結晶に対して、単結晶成長後に、Cd蒸気圧を維持した状態でインゴットアニールを行うことで、インゴットから切り出したCdTeまたはCdZnTe基板に0V、700V及び900Vのバイアス電圧を印加した時の抵抗率として107Ωcm台、0V時の基板面内の抵抗率の相対標準偏差が20%以下であるものを開示している。
【0005】
特許文献6~8は、特許文献4や特許文献5とは異なり、CdTe単結晶インゴットから基板を切り出し、該基板に対してアニールを行う技術(ウエハアニール)を開示している。このうち、特許文献6はAr雰囲気中でCdTeの融点に近い高温でアニールを行うもので、それによって沈殿物の除去を行うというものである。特許文献7は、CdTe基板に対して700℃程度の高温アニールと400℃程度の2段階のウエハアニールを真空中で行うものである。特許文献8は、CdTe基板に対して400℃程度の2段階の低温アニールを真空中で行うものである。特許文献9はInをドープしたCdZnTe基板に対して、不活性ガス雰囲気中で300℃程度のウエハアニールを行い、アニール後のCdZnTeに対して700Vのバイアスを印加した時の抵抗率として1011Ωcm台であることを開示している。しかし、これらのウエハアニール技術では、いずれにも900Vという高電圧を印加した時の抵抗率が107Ωcm以上の高抵抗率である基板の開示はない。
【0006】
ところで、CdZnTe系検出器は、高バイアス電圧印加時においてもリーク電流を抑制する等の目的で、高バイアス電圧印加時の抵抗率を十分に高くすることが望まれている。従来技術において、たとえば、特許文献5によれば、上述したように、InをドープしたCdZnTe単結晶に対して、単結晶成長後に、Cd蒸気圧を維持した状態でインゴットアニールを行うことで、インゴットから切り出したCdZnTe基板に0V、700V及び900Vのバイアス電圧を印加した時の抵抗率として107Ωcm台であることが開示されている。ここで、CdZnTe基板に高バイアス電圧を印加していくと、CdZnTe基板中に発生するリーク電流値が大きくなる傾向があり、印加電圧に対するリーク電流値の変化によって、抵抗率が大きく変動することが見出された。特許文献5に開示されたCdZnTe基板の場合、900V電圧印加時の抵抗率に対する、0V印加時の抵抗率の割合(変動比)(0V時抵抗率/900V時抵抗率)を算出すると、350~800程度となり、電圧を印加しない状態から900Vという高電圧を印加した場合に、抵抗率が大きく変動する課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、低電圧から高電圧印加した場合においても、リーク電流が少なく、0~900Vの印加電圧の変化に対して、抵抗率の変動が小さく、安定した抵抗率値を維持できるCdZnTe単結晶基板を提供することを目的とする。また、本発明は、上述したCdTe系単結晶基板を効果的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、CdZnTeをベースとする化合物単結晶において、化合物組成と、添加するドーパント材と、結晶内のキャリア活性化に関与するアニールの条件について検討し、適切な制御を行うことにより、電圧印加していない状態から高バイアス電圧を印加した時にも十分に高い抵抗率を有し、かつその変動幅を小さくできる基板を得ることができるとの見識に至った。そして、素子化した場合に放射線検出素子の性能を安定したものとして作製できるとの見識に至り、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は一実施形態において、亜鉛濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、塩素濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶からなり、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下であることを特徴とする半導体ウエハである。ここで、本発明における抵抗率とは、電極構造を形成したCdZnTe単結晶基板の素子構造に徐々に電圧を印加していくことでI-V特性を調べ、I-V特性曲線を描画し、I-V特性曲線から微小電圧(0.1V程度)を印加したときの抵抗率を0V抵抗率(以下0V抵抗率)、及び100V印加したときの抵抗率を100V抵抗率、同様にして、250V、500V、700V、900Vの電圧を印加したときの各抵抗率を算出して得た値を意味する。
【0010】
本発明は別の一実施形態において、本発明の実施形態に係る半導体ウエハから主面が矩形となるように切り出された基板と、前記基板の一方の主面に形成された共通電極と、前記基板の他方の主面に行列状に複数形成されたピクセル電極と、を備えたことを特徴とする放射線検出素子である。
【0011】
本発明の放射線検出素子は別の一実施形態において、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下である放射線検出素子である。
【0012】
本発明は更に別の一実施形態において、本発明の実施形態に係る放射線検出素子と、前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子にバイアス電圧を印加する電源と、前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子から出力された電気信号を増幅する増幅部とを備えたことを特徴とする放射線検出器である。
【0013】
本発明は更に別の一実施形態において、亜鉛濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、塩素濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶からなり、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下である化合物半導体単結晶基板の製造方法であり、炉内での単結晶の結晶成長工程と、前記単結晶の結晶成長工程が終了した後、炉内単結晶の設置位置の温度を385~400℃とし、炉内でアンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、50~90時間の熱処理をし、熱処理後の単結晶インゴットをウエハ状にスライスして基板とする工程とを含むことを特徴とする化合物半導体単結晶基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、単結晶中において濃度が所定範囲に収まるよう添加量が調節された原料の一部(Zn及びCl)の作用と、前記単結晶の結晶成長工程が終了した後、炉内単結晶の設置位置の温度を385~400℃とし、炉内でアンプルを開封することなく、一連の工程でCdリザーバー部の温度は室温として、50~90時間の熱処理を行うことの作用により、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率の平均値が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下と小さい半導体ウエハを得ることができる。このため、このウエハから切り出された基板を備える放射線検出素子を用いれば、低いバイアスから高いバイアス電圧を印加しても、多量のリーク電流の発生を抑制でき、印加電圧の変化に対して安定した素子特性を得ることができる。
従って、CdZnTe単結晶を基板とする放射線検出素子を備えた放射線検出器において、放射線の検出性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線検出器の構成図である。
【
図2】
図1の放射線検出素子の基板となる化合物半導体単結晶を製造するための単結晶成長炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔放射線検出器及び放射線検出素子の構成〕
まず、本実施形態の放射線検出器及び放射線検出素子の概略構成について説明する。
本実施形態の放射線検出器1は、
図1に示すように、放射線検出素子2、コンデンサ3、増幅部4等で構成されている。
【0017】
放射線検出素子2を構成する基板21は、II-VI族化合物半導体単結晶であるテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)単結晶で、主面が矩形の薄い板状に形成されている。また、基板21の主面は、所定の結晶面(例えば(111)面)と平行になっている。
共通電極22は、金属(例えば白金(Pt))の薄膜で、基板21の一方の主面(以下B面21b)全体を覆うように形成されている。ピクセル電極23は、金属の薄膜で基板21の他方の主面(以下A面21a)に複数設けられるとともに、マトリクス(行列)状に配列されている。以下、共通電極22とピクセル電極23を区別しない場合は、両電極を合わせて電極22、23と表記する。
【0018】
放射線検出素子2は、共通電極22がグランドに接続(接地)され、各ピクセル電極23が電源(制御部)5に接続されることにより所定のバイアス電圧が印加されるようになっている。また、ピクセル電極23は、コンデンサ3及び増幅部4に接続されている。なお、
図1では、右端のピクセル電極のみコンデンサ3、増幅部4に接続されている様子が示されているが、他のピクセル電極23も同様にコンデンサ3及び増幅部4に接続されている。
放射線検出器1は、このような構成により、放射線検出素子2に放射線(硬X線やγ線)を受けると、基板21内に電子正孔対を生成し、これを放射線検出素子2に印加されているバイアス電圧により電離電流としてピクセル電極23から出力する。そして、この電離電流を、コンデンサ3、増幅部4を経て電気信号に変換し、データ生成部6に出力する。
【0019】
〔単結晶成長炉の構成〕
次に、上記基板21を形成するCd(Zn)Te単結晶を製造するための単結晶成長炉9の構成について説明する。
本実施形態の単結晶成長炉9は、縦型温度勾配凝固(VGF:Vertical Gradient Freezing)法に用いられるもので、
図2に示すように、外側の単結晶成長炉本体、蒸気圧印加用のカドミウム充填部91、ヒーター92、石英アンプル93等で構成されている。
ヒーター92a、92bは、本体の内部に縦列し、それぞれが複数段の発熱部を有する構成で配置されている。各ヒーター92a、92bはそれぞれ独立して加熱温度を設定可能となっている。
【0020】
石英アンプル93は、円筒状のるつぼ収納部93aとるつぼ収納部93aの下部から下方に向かって延びるカドミウム蒸気圧制御用の管状のCdリザーバー部93bからなる。石英アンプル93は、炉本体内に配置され、るつぼ収納部93aが上部ヒーター92aに囲まれ、Cdリザーバー部93bが下部ヒーター92bに囲まれるようになっている。
【0021】
〔化合物半導体単結晶及び半導体ウエハの製造方法〕
次に、上記単結晶成長炉9を用いて本実施形態の化合物半導体単結晶であるCd(Zn)Te単結晶を製造する方法と、Cd(Zn)Te単結晶から本実施形態の半導体ウエハであるCd(Zn)Teウエハを製造する方法について説明する。
本実施形態のCd(Zn)Te単結晶の製造方法は、準備工程、結晶成長工程、熱処理工程からなり、Cd(Zn)Teウエハの製造方法は、切断工程、ラッピング工程、鏡面研磨工程からなる。
【0022】
初めの準備工程では、まず、るつぼ内に原料として、純度6N(99.9999%)のCd、6NのTe、Zn及びドーパント材(不純物)であるClを所定量充填する。なお、ZnとClは、単結晶中におけるZn濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、Cl濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下となるように、それぞれ量を調節して加える。
【0023】
そして、石英アンプル93のCdリザーバー部93bにCdを入れ、原料が充填されたるつぼを石英アンプル93内に載置する。そして、石英アンプルを真空封止し、ヒーター92a、92bで炉内を加熱して、るつぼに入った原料を合成する。その後、炉内を更に加熱して原料を融解させて融液にするとともに、ドーパントを融液中に拡散させる。このとき、下部ヒーター92bの温度を調節することによりCdの蒸気圧を0.12~0.14MPa程度に調整し、融液からのCdの蒸発を抑制する。
【0024】
るつぼ内の原料が融液となり安定化した後は、結晶成長工程に移る。結晶成長工程では、上部ヒーター92aの縦列に複数段で構成された各発熱部の出力を調整して、融液の下端から上端に向かって低くなるような温度勾配が生じるようにする。なお、温度勾配は、融液の上部においては0.05~1.0℃/cmとなるように、また、融液の下部においては、単結晶の成長時の降温工程で、るつぼ内の原料融液が一気に固化することを避けるために1.0~5.0℃/cm程度と上部よりも大きな温度勾配となるように各ヒーターの出力を調節する。
【0025】
そして、融液に温度勾配を持たせたまま炉内の温度を徐々に下げていくと、最も温度が低くなる融液の表面に単結晶が生成し、それが下方に向かって成長していく。
【0026】
単結晶を所定長まで成長させた後は、熱処理工程に移る。熱処理工程では、まず、成長したCdZnTe単結晶を石英アンプル内に保持したまま、上部ヒーター92aの複数段からなる各発熱部の温度を調節することにより、また下部ヒーター92bの温度を制御することでCdの蒸気圧を所定圧力に維持したまま、炉内温度を上記単結晶の成長終了時の温度から385℃~400℃まで低下させる。そして、その状態でCdZnTe単結晶を50~90時間、炉内でアンプル(石英アンプル93)を開封することなく、Cdリザーバー部93bの温度は室温として、熱処理(インゴットアニール)する。ここで、特許文献9の熱処理の場合には、単結晶成長した後、スライスしたウエハ状の基板を275~325℃、10~25時間、不活性雰囲気下で熱処理(ウエハアニール)を行っており、当該ウエハアニール後のCdZnTe単結晶基板に電極を形成して、900Vの電圧印加時における抵抗率が1×1011Ωcm以上という高い値を実現しているが、本発明の実施形態では印加電圧の変動に対する抵抗率の変動が小さく、印加電圧の変動に対して安定した抵抗率が維持でき、特に900Vという、より高電圧を印加した場合においても、抵抗率の変動比が小さく、放射線検出素子に用いた時に、微量の放射線を検出するための高バイアス動作時においての抵抗率の変動が小さく、且つリーク電流によるノイズの発生を抑制できる技術に関していえるものである。
【0027】
単結晶を熱処理した後は、切断工程に移る。切断工程では、CdZnTe単結晶のインゴットを所定の結晶面に沿ってウエハ状にスライスし、複数のウエハを切り出す。
ウエハを切り出した後は、ラッピング工程に移る。ラッピング工程では、切り出したウエハの切断面をラッピング用の研磨材で研磨して凹凸を取り除く。
切断面を平坦化した後は、鏡面研磨工程に移る。鏡面研磨工程では、ウエハの研磨面を鏡面研磨用の研磨材で研磨して鏡面に仕上げる。
以上の工程を経ることにより、本実施形態の亜鉛濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、塩素濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶からなるCdZnTeウエハが製造される。
【0028】
このCdZnTeウエハは、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下と低いものとすることができる。
【0029】
〔放射線検出素子の製造方法〕
次に、上記CdZnTeウエハを基板とする放射線検出素子2の製造方法について説明する。本実施形態の放射線検出素子2は、電極形成工程、ダイシング工程、素子抵抗率測定工程を経て製造される。
初めの電極形成工程では、まず、上記のCdZnTeウエハを洗浄し、表面に付着していた異物を除去する。そして、CdZnTeウエハの研磨面にフォトレジストを塗布し、ピクセル電極パターンが描かれたフォトマスクを用いてフォトレジストを露光する。そして、現像することにより感光したフォトレジストを除去する。そして、CdZnTeウエハをめっき液に浸漬し、CdZnTeウエハの研磨面21a、21bのうちフォトレジストの除去された箇所に金属を析出させ薄膜層を形成する。この薄膜層が所定の膜厚まで成長したものが電極22、23となる。電極22、23が形成された後は、不要になったフォトレジストを除去し、CdZnTeウエハを洗浄し、乾燥させる。
【0030】
電極22、23を形成した後はダイシング工程に移る。ダイシング工程では、研磨面21a、21bに電極22、23が形成されたCdZnTeウエハを切断して複数の基板21に分割するとともに、個々の放射線検出素子2をCdZnTeウエハから切り出す。
素子抵抗率測定工程では、切り出した素子の中から評価用のサンプルを取得し、そのサンプルに電圧を印加してその素子抵抗率を測定する。
以上の各工程を経ることにより、本実施形態の放射線検出素子2が複数製造される。
【0031】
前述したように、CdZnTeウエハは、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下と低いものが得られるので、この放射線検出素子2の検出性能は良好なものとなる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0033】
〔本発明と従来技術との比較〕
次に、本実施形態の基板及び放射線検出素子2と、比較例の基板及び放射線検出素子との特性の差異について説明する。
説明に際し、まず、上記単結晶の製造方法で6本のCdZnTe単結晶のインゴット(実施例1~3、比較例1~3)を製造し、実施例1~3の条件によるインゴットアニールと比較例1~3によるインゴットアニールを行い、インゴットアニール後のCdZnTe単結晶を石英アンプル内から取り出した。そして、各インゴットを(111)面に沿って切断して円盤状のウエハを切り出し、更に各ウエハから正方形の基板を切り出し、各基板に電極を作製するため、この各基板の一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成し、各基板をダイシングしてオーミック型の放射線検出素子を製造した。そして、各素子に徐々に電圧を印加していくことで各素子のI-V特性を調べ、I-V特性曲線を描画した。そして、I-V特性曲線から微小電圧(0.1V程度)を印加したときの抵抗率(以下0V抵抗率)、及び100V、250V、500V、700V、900Vの電圧を印加したときの抵抗率を算出した。表1は、各インゴットの製造条件及び各インゴットから得られたウエハの特性と、各ウエハから切り出した基板及び各基板から製造した放射線検出素子の特性を纏めたものである。具体的には、各基板の抵抗率の測定は、SEMIMAP SCIENTIFIC INSTRUMENTS社製のCOREMA-WT(contactless resistivity mapping)という測定装置で、基板を、主面に沿って行列状に配列される複数の細かい部分(ピクセル)に分け、部分毎の抵抗率(以下局所抵抗率)を測定し、局所抵抗率の平均値(以下基板の抵抗率)を得る手法で、各印加電圧時の抵抗率を得た。
【0034】
(実施例1)
実施例1では、Zn濃度5at%、Cl濃度が100wtppmのCdZnTe融液からVGF法によってCdZnTe単結晶インゴットを育成した。単結晶育成終了後に、炉内温度について単結晶育成時の終了温度から単結晶設置位置温度を385℃とし、炉内で石英アンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、90時間のインゴットアニールを実施した。インゴットアニール後、室温まで冷却して、CdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例1のインゴットの上部(固化率0.19)から、主面が4.0mm×4.0mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が6.1at%、Cl濃度が1.2wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。
次に、この実施例1の基板から、一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成してオーミック型の放射線検出素子を製造し、この放射線検出素子のI-V特性曲線を描画して計算したところ、0V印加時の抵抗率は2.9×108Ωcm、100V印加時の抵抗率は1.4×108Ωcm、250V印加時の抵抗率は8.7×107Ωcm、500V印加時の抵抗率は4.3×107Ωcm、700V印加時の抵抗率は2.9×107Ωcm、900V印加時の抵抗率は2.0×107Ωcmであり、各印加電圧に対する抵抗率の相対変動係数は92%であった。
【0035】
(実施例2)
実施例2では、Zn濃度5at%、Cl濃度が100wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを育成した。単結晶育成終了後に、炉内温度について単結晶育成時の終了温度から単結晶設置位置温度を390℃とし、炉内で石英アンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、90時間のインゴットアニールを実施した。インゴットアニール後、室温まで冷却して、CdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例2のインゴットの上部(固化率0.75)から、主面が4.0mm×4.0mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が4.3at%、Cl濃度が3.9wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。
次に、この実施例2の基板から、一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成してオーミック型の放射線検出素子を製造し、この放射線検出素子のI-V特性曲線を描画して計算したところ、0V印加時の抵抗率は6.4×108Ωcm、100V印加時の抵抗率は4.9×108Ωcm、250V印加時の抵抗率は3.1×108Ωcm、500V印加時の抵抗率は1.5×108Ωcm、700V印加時の抵抗率は8.9×107Ωcm、900V印加時の抵抗率は5.5×107Ωcmであり、各印加電圧に対する抵抗率の相対変動係数は75%であった。
【0036】
(実施例3)
実施例3では、Zn濃度5at%、Cl濃度が200wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを製造した。単結晶育成終了後に、炉内温度について単結晶育成時の終了温度から単結晶設置位置温度を400℃とし、炉内で石英アンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、50時間のインゴットアニールを実施した。インゴットアニール後、室温まで冷却して、CdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例3のインゴットの下部(固化率0.20)から、主面が4.0mm×4.0mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が6.1at%、Cl濃度が2.5wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。
次に、この実施例3の基板から、一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成してオーミック型の放射線検出素子を製造し、この放射線検出素子のI-V特性曲線を描画して計算したところ、0V印加時の抵抗率は5.8×108Ωcm、100V印加時の抵抗率は4.0×108Ωcm、250V印加時の抵抗率は2.4×108Ωcm、500V印加時の抵抗率は1.0×108Ωcm、700V印加時の抵抗率は6.2×107Ωcm、900V印加時の抵抗率は3.9×107Ωcmであり、各印加電圧に対する抵抗率の相対変動係数は83%であった。
【0037】
(比較例1)
比較例1では、Zn濃度5at%、Cl濃度が100wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを育成した。単結晶育成終了後に、炉内温度について単結晶育成時の終了温度から単結晶設置位置温度を950℃とし、炉内で石英アンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、20時間のインゴットアニールを実施した。インゴットアニール後、室温まで冷却して、CdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、比較例1のインゴットの上部(固化率0.22)から、主面が4.0mm×4.0mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が6.0at%、Cl濃度が1.3wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。
次に、この比較例1の基板から、一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成してオーミック型の放射線検出素子を製造し、この放射線検出素子のI-V特性曲線を描画して計算したところ、0V印加時の抵抗率は1.1×109Ωcmであり、100V印加時の抵抗率は1.1×108Ωcm、250V印加時の抵抗率は1.9×107Ωcm、500V印加時の抵抗率は1.6×106Ωcm、700V印加時の抵抗率は2.6×107Ωcm、900V印加時の抵抗率は3.5×105Ωcmであり、各印加電圧に対する抵抗率の相対変動係数は191%であった。
比較例1では、インゴットアニールのアニール温度を950℃と高めの温度で実施したが、製造されたCdZnTe単結晶基板の0~900V印加時の抵抗率の相対変動係数は大きいものとなった。
【0038】
(比較例2)
比較例2では、Zn濃度5at%、Cl濃度が100wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを育成した。単結晶育成終了後に、炉内温度について単結晶育成時の終了温度から単結晶設置位置温度を410℃とし、炉内で石英アンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、90時間のインゴットアニールを実施した。インゴットアニール後、室温まで冷却して、CdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、比較例1のインゴットの上部(固化率0.17)から、主面が4.0mm×4.0mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が6.1at%、Cl濃度が1.2wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。
次に、この比較例2の基板から、一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成してオーミック型の放射線検出素子を製造し、この放射線検出素子のI-V特性曲線を描画して計算したところ、0V印加時の抵抗率は5.7×108Ωcm、100V印加時の抵抗率は3.0×108Ωcm、250V印加時の抵抗率は1.5×108Ωcm、500V印加時の抵抗率は6.4×107Ωcm、700V印加時の抵抗率は3.8×107Ωcm、900V印加時の抵抗率は2.3×107Ωcmであり、各印加電圧に対する抵抗率の相対変動係数は102%であった。
比較例2では、インゴットアニールの温度を実施例1~3より高めの410℃で実施したが、製造されたCdZnTe単結晶基板の0~900V印加時の抵抗率の相対変動係数はわずかに大きく、電気特性の安定性の点で許容できる範囲を越脱していた。
【0039】
(比較例3)
比較例3では、Zn濃度5at%、Cl濃度が100wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを育成した。単結晶育成終了後に、炉内温度について単結晶育成時の終了温度から単結晶設置位置温度を378℃とし、炉内で石英アンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、90時間のインゴットアニールを実施した。インゴットアニール後、室温まで冷却して、CdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、比較例1のインゴットの上部(固化率0.74)から、主面が4.0mm×4.0mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が4.3at%、Cl濃度が3.8wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。
次に、この比較例3の基板から、一方の主表面(B面)にPtで共通電極を形成するとともに、他方の主表面(A面)にPtでピクセル電極を形成してオーミック型の放射線検出素子を製造し、この放射線検出素子のI-V特性曲線を描画して計算したところ、0V印加時の抵抗率は1.6×109Ωcm、100V印加時の抵抗率は5.8×108Ωcm、250V印加時の抵抗率は2.4×108Ωcm、500V印加時の抵抗率は9.3×107Ωcm、700V印加時の抵抗率は5.6×107Ωcm、900V印加時の抵抗率は3.6×107Ωcmであり、各印加電圧に対する抵抗率の相対変動係数は126%であった。
比較例3では、インゴットアニールの温度を実施例1~3より低めの378℃で実施したが、製造されたCdZnTe単結晶基板の0~900V印加時の抵抗率の相対変動係数は、わずかに大きく、印加電圧に対する変動幅として、電気特性の安定性の点で許容できる範囲を越脱していた。
【0040】
上記実施例1~3、比較例1~3の基板における抵抗率の相対変動係数を比較してみると、比較例1~3の基板は102~191%であるのに対し、実施例1~3の基板は、75~92%と、いずれも100%以下の低い値となった。このことは、本実施形態の製造方法で製造した基板は、低電圧から高電圧に至る0~900Vの印加電圧の範囲において、抵抗率の相対変動係数が100%以下と小さいことを示している。このように実施例1~3の放射線検出素子は、0~900Vの印加電圧範囲において、抵抗率が高く、いずれの電圧においても安定した電離電流を流すのに適した特性を有している。
【0041】
各実施例及び各比較例の製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
以上、説明してきたように、るつぼに原料を充填する際、原料の一部(Zn及びCl)を、単結晶中における濃度が所定範囲(亜鉛濃度が4.0原子%以上6.5原子%以下で、塩素濃度が0.1重量ppm以上5.0重量ppm以下)となるように量を調節してCdZnTe単結晶を成長させ、前記単結晶の結晶成長工程が終了した後、炉内単結晶の設置位置の温度を385~400℃とし、炉内でアンプルを開封することなく、Cdリザーバー部の温度は室温として、50~90時間の範囲で熱処理することで、0~900Vの範囲内で電圧を印加したときの各印加電圧値に対する抵抗率が1.0×107Ωcm以上7.0×108Ωcm以下であり、0~900Vの範囲内の印加電圧に対する各抵抗率の相対変動係数が100%以下と小さく、印加電圧の変動に対して抵抗率の値が安定したCdZnTeウエハを得ることができる。このため、このCdZnTeウエハから切り出された基板21を備える放射線検出素子2を用いれば、高いバイアス電圧を印加しても、各電圧印加値に対して、安定した抵抗率を維持でき、多量のリーク電流が発生するのを抑制することができる。
従って、CdZnTe単結晶を基板とする放射線検出素子2を備えた放射線検出器1において、放射線の検出性能を向上させることができる。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、基板21の主面形状を正方形としたが、長方形やその他の形状としてもよく、ピクセル電極23の数や配置は、主面21aの大きさや形状に合わせて決定すればよい。
また、本実施形態では、基板の主面21a、21bを(111)面としたが、これ以外の結晶面としてもよい。
また、本実施形態では、共通電極22、ピクセル電極23をいずれもPtで形成したが、金(Au)やその他の金属でも良いし、これらの金属を含む合金でもよい。更に、共通電極22とピクセル電極23のうち一方を他方と異なる金属で形成する(例えば、共通電極22をインジウム(In)で形成し、ピクセル電極23をPtで形成する)ようにしてもよい。
また、放射線検出素子2とデータ生成部6との間に設けられる回路は、所定の電気信号を得られさえすればその構成は任意である。
【符号の説明】
【0045】
1 放射線検出器
2 放射線検出素子
21 基板(半導体ウエハ、化合物半導体単結晶)
21a、21b 主面
22 共通電極
23 ピクセル電極
4 増幅部
5 電源
6 データ生成部
9 単結晶成長炉
91 カドミウム充填部
92 ヒーター
92a 上部ヒーター
92b 下部ヒーター
93 石英アンプル
93a るつぼ収納部の石英アンプル部
93b Cdリザーバー部