(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】搬送装置、成膜装置、有機EL素子の製造システム、および有機EL素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230419BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20230419BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230419BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230419BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230419BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20230419BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/08 A
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/02
C23C14/56 G
C23C16/54
(21)【出願番号】P 2018202623
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100158388
【氏名又は名称】鱸 英俊
(72)【発明者】
【氏名】石川 明
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208451(JP,A)
【文献】特開2002-016127(JP,A)
【文献】特開2015-199569(JP,A)
【文献】特表2018-529236(JP,A)
【文献】特開2009-274813(JP,A)
【文献】特開2004-253756(JP,A)
【文献】実開平02-150185(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/08
H10K 50/00
H05B 33/10
H05B 33/02
C23C 14/56
C23C 16/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドに板状の対象物を載置して搬送する搬送装置において、
前記ハンドの構成部材の上面に固定的に装着された保持部と、
前記保持部に対して移動可能に配置された可動保持部と、
前記可動保持部を、前記保持部の上方位置と、前記保持部よりも前記ハンドの外側の退避位置と、の間で移動させるよう駆動する第1の駆動機構と、
前記可動保持部を、前記保持部の上方位置から前記保持部に向かう方向に下降、または、前記保持部から離れ前記保持部の上方位置に向かう方向に上昇させるよう駆動する第2の駆動機構と、を備え、
前記ハンドは、その手首側から手先側に伸びるメインフレームと、前記メインフレームに装着され前記メインフレームに対して交差する方向に伸びるサブフレームと、を前記構成部材として備え、前記保持部と、前記可動保持部を駆動する前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構と、が前記サブフレームに装着されており、
前記第1の駆動機構により前記可動保持部を前記退避位置から前記保持部の上に載置された前記対象物の上方位置に
前記サブフレームに沿って移動させた後、前記第2の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置から、前記対象物に向かって下降させて、前記可動保持部と前記保持部とにより前記対象物を保持する保持動作と、
前記第2の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置へ上昇させた後、前記第1の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置から前記退避位置に
前記サブフレームに沿って移動させる解放動作と、を行う搬送装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の搬送装置において、前記メインフレームに対して複数の前記サブフレームが装着され、前記複数のサブフレームの上面に前記保持部が固定的に装着され、前記ハンドの手首側に装着された前記サブフレームに対して、前記保持部に加えて、前記可動保持部が配置されている搬送装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の搬送装置において、前記ハンドの手先側の前記サブフレームに対して、前記保持部に加えて、前記可動保持部が配置されている搬送装置。
【請求項4】
請求項
1から
3のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記メインフレームに回転可能に支持されて回転駆動されるメインシャフトと、前記メインシャフトの回転駆動力により前記サブフレームに沿って往復移動し、前記第1の駆動機構または前記第2の駆動機構を駆動するサブシャフトと、を備える搬送装置。
【請求項5】
ハンドに板状の対象物を載置して搬送する搬送装置において、
前記ハンドの構成部材の上面に固定的に装着された保持部と、
前記保持部に対して移動可能に配置された可動保持部と、
前記可動保持部を、前記保持部の上方位置と、前記保持部よりも前記ハンドの外側の退避位置と、の間で移動させるよう駆動する第1の駆動機構と、
前記可動保持部を、前記保持部の上方位置から前記保持部に向かう方向に下降、または、前記保持部から離れ前記保持部の上方位置に向かう方向に上昇させるよう駆動する第2の駆動機構と、を備え、
前記第1の駆動機構により前記可動保持部を前記退避位置から前記保持部の上に載置された前記対象物の上方位置に移動させた後、前記第2の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置から、前記対象物に向かって下降させて、前記可動保持部と前記保持部とにより前記対象物を保持する保持動作と、
前記第2の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置へ上昇させた後、前記第1の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置から前記退避位置に移動させる解放動作と、を行い、
前記ハンドは、その手首側から手先側に伸びるメインフレームと、前記メインフレームに装着され前記メインフレームに対して交差する方向に伸びるサブフレームと、を前記構成部材として備え、前記保持部と、前記可動保持部を駆動する前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構と、が前記サブフレームに装着されており、
前記メインフレームに回転可能に支持されて回転駆動されるメインシャフトと、前記メインシャフトの回転駆動力により前記サブフレームに沿って往復移動し、前記第1の駆動機構または前記第2の駆動機構を駆動するサブシャフトと、を備える搬送装置。
【請求項6】
請求項
4または5に記載の搬送装置において、前記メインシャフトに装着されたカムと、前記サブシャフトの後端部と、が当接し、前記メインシャフトが回転駆動され、前記カムを介して前記サブシャフトに伝達される駆動力により、前記サブシャフトが前記サブフレームに沿って往復移動し、前記サブシャフトの前端を介して前記第1の駆動機構または前記第2の駆動機構が駆動される搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送装置において、
前記第1の駆動機構は、往復運動する前記サブシャフトの先端に当接可能な位置に第1のリニアガイドに支持されたベースと、前記ベースに装着された、傾斜面を有する板カムと、前記第1のリニアガイドを前記サブシャフトの先端に当接する方向に付勢する第1の付勢手段と、前記可動保持部が前記保持部の上方位置にある際、前記ベースを停止させる係止手段と、を有し、
前記第2の駆動機構は、前記可動保持部を支持するブラケットと、前記ブラケットを支持する、前記第1のリニアガイドと平行に配置された第2のリニアガイドと、前記ベースと係合可能な係合爪と、前記係合爪と前記ベースとが係止する方向に前記第2のリニアガイドを付勢する第2の付勢手段と、前記板カムと当接して前記可動保持部の昇降位置を決定するカムフォロワを有し、
前記保持動作においては、前記サブシャフトが後退して、前記ベースが移動し、前記係合爪を介して前記ブラケットを前記可動保持部が前記保持部の上方位置に達するまで移動させた後、前記カムフォロワが前記板カムの前記傾斜面に沿って下降して前記可動保持部を前記対象物に当接させ、
前記解放動作においては、前記サブシャフトが前進して、前記ベースが移動し、前記カムフォロワが前記板カムの前記傾斜面に沿って上昇して前記可動保持部を前記対象物から離間させた後、さらに前記可動保持部が前記保持部の上方位置から前記退避位置に移動するまで前記係合爪を介して前記ブラケットを移動させる搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記保持部が弾性部材により構成されている搬送装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記可動保持部が弾性部材により構成されている搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記ハンドの前記対象物に対する相対的な位置および/または姿勢を制御するロボットアームを備えた搬送装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の搬送装置と、前記対象物としてのガラス基板に対して成膜を行う成膜チャンバと、を備えた成膜装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置により前記対象物として搬送されるガラス基板に対して有機薄膜を成膜する成膜チャンバと、を備え、
前記成膜チャンバにより有機薄膜が成膜された前記ガラス基板を用いて有機EL素子を製造する有機EL素子の製造システム。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の搬送装置によって、有機薄膜を成膜する成膜チャンバに対して、前記対象物としてのガラス基板を搬入または搬出する搬送工程と、
前記ガラス基板に対して、前記成膜チャンバにより有機薄膜を成膜する成膜工程と、
を含み、前記ガラス基板を用いて有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の成膜装置を複数台備えたことを特徴とする製造システム。
【請求項15】
請求項11に記載の成膜装置を複数台備え、そのうち少なくとも一台の前記成膜装置は前記対象物として搬送されるガラス基板に有機薄膜を成膜することを特徴とする有機ELパネルの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、成膜装置、有機EL素子の製造システム、および有機EL素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸着装置、例えば、ガラス基板上に下部金属電極、有機薄膜、上部透明電極などを順次積層することにより有機EL素子を製造する有機EL素子の製造システムにおいて、ガラス基板の搬送を行う搬送装置が用いられている。この種の搬送装置は、例えば基板を保持するハンドを備えた水平多関節ロボットによって構成され、例えばそれぞれ工程の異なる複数の成膜チャンバ間で基板を搬送する。
【0003】
この種の基板は、例えば厚みの非常に薄いガラス基板などであって、ハンドやグリッパなどにより大きな把持力を加えて保持、搬送することができない。そのため、搬送装置は、破損や変形なく基板を搬送するため、基板を掬い上げるようにハンドを動作させ、ハンド上に載置した基板を搬送する。このような、掬い上げ保持の形態から、搬送装置のハンドは例えば、フォークなどと呼ばれる場合もある。
【0004】
この掬い上げ保持による搬送形態では、搬送中に基板の位置がずれて、落下させたり、基板割れのような破損を生じたりする可能性がある。また、カメラなどを介して保持部上で大きな基板の位置ずれを検出した場合には、基板の持ち直し操作などを行わなければならない場合もある。
【0005】
そこで、掬い上げ保持を行う保持部では、フォーク個々の先端部を傾斜部として構成し、このフォーク先端の傾斜部に滑り止めのパッドを配置する、あるいはさらにフォークの先端に変形可能な突出片を設ける構成が提案されている(下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成は、パッドや突出片が基板の縁部と接触して生じる変形応力や摩擦力を利用しており、能動的に把持力を印加して基板の位置を規制するものではない。このような構成は、基板サイズや重量がそれ程大きくなければ良好に機能する場合もある。しかしながら、昨今のように基板が大型化し、しかも高速搬送が求められる環境においては、基板搬送に伴う慣性力や遠心力が大きくなる傾向があり、数ミクロンオーダで基板が位置ずれを生じる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、成膜システムなどで用いられる搬送装置において、位置ずれを生じることなく、また、破損や変形を生じることなくガラス基板のような板状の対象物を搬送できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明においては、ハンドに板状の対象物を載置して搬送する搬送装置において、前記ハンドの構成部材の上面に固定的に装着された保持部と、前記保持部に対して移動可能に配置された可動保持部と、前記可動保持部を、前記保持部の上方位置と、前記保持部よりも前記ハンドの外側の退避位置と、の間で移動させるよう駆動する第1の駆動機構と、前記可動保持部を、前記保持部の上方位置から前記保持部に向かう方向に下降、または、前記保持部から離れ前記保持部の上方位置に向かう方向に上昇させるよう駆動する第2の駆動機構と、を備え、前記ハンドは、その手首側から手先側に伸びるメインフレームと、前記メインフレームに装着され前記メインフレームに対して交差する方向に伸びるサブフレームと、を前記構成部材として備え、前記保持部と、前記可動保持部を駆動する前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構と、が前記サブフレームに装着されており、前記第1の駆動機構により前記可動保持部を前記退避位置から前記保持部の上に載置された前記対象物の上方位置に前記サブフレームに沿って移動させた後、前記第2の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置から、前記対象物に向かって下降させて、前記可動保持部と前記保持部とにより前記対象物を保持する保持動作と、前記第2の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置へ上昇させた後、前記第1の駆動機構により前記可動保持部を前記対象物の上方位置から前記退避位置に前記サブフレームに沿って移動させる解放動作と、を行う構成を採用した。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、成膜システムなどで用いられる搬送装置において、位置ずれを生じることなく、また、破損や変形を生じることなくガラス基板のような板状の対象物を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送装置のハンドの上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る搬送装置のメインシャフトとサブシャフトの要部を示した正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る搬送装置の可動保持部を昇降させる駆動機構を示した正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る搬送装置の可動保持部を水平に移動させる駆動機構を示した正面図である。
【
図6】
図3、
図4に示した駆動機構の側方から見た状態を紙面上の高さの異なる位置に並べて図示する様式を用いて、可動保持部を水平に移動させる動作を示した説明図である。
【
図7】
図3、
図4に示した駆動機構の側方から見た状態を紙面上の高さの異なる位置に並べて図示する様式を用いて、可動保持部を昇降させる動作を示した説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る搬送装置のハンドの上方から示した斜視図である。
【
図9】
図3、
図4に示した駆動機構の要部を上方から示した斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る搬送装置のハンドにおける力学的な作用を示した説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る搬送装置と、この搬送装置を用いた成膜システムの上面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る搬送装置と、この搬送装置を用いた成膜システムの全体構成の一例を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態につき説明する。なお、以下に示す構成はあくまでも一例であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更することができる。また、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
【0013】
以下では、有機薄膜形成を行う成膜システムにおいて搬送装置として用いられるロボットアームとそのハンドの構成を例示する。ここでは、まず、
図11に本実施形態の搬送装置を含む成膜システムの構成例を示す。この成膜システムは、例えばガラス基板に有機薄膜を成膜する成膜システムであって、同基板を用いて有機EL素子を製造する有機EL素子の製造システムの一部を構成する。
図11の成膜システムでは、成膜チャンバ100、成膜チャンバ101、成膜チャンバ102、搬送室235、搬送経路103が、ゲートバルブ234を介して互いに接続されている。
【0014】
図11の成膜システム(成膜装置)において、成膜チャンバ100、成膜チャンバ101、成膜チャンバ102は、その内部が所定の真空度に保たれた状態で有機材料を基板31に蒸着して有機薄膜を成膜する成膜手段であり、各チャンバの基本構成は同一である。なお、各成膜チャンバが同一種の有機材料を成膜するように成膜システムを構成してもよいし、成膜チャンバ毎に異種の有機材料を成膜するように構成してもよい。
【0015】
搬送室235はロボットアーム104を備え、このロボットアーム104により各成膜チャンバに搬送経路103から基板31を搬入したり、各成膜チャンバから搬送経路103に基板31を搬出したりすることができる。ロボットアーム104は、基板31を保持するためのハンド233を備え、各成膜チャンバで成膜が行われる蒸着エリア232に基板31を搬入したり搬出したりする動作を行う。そのため、ロボットアーム104は、ハンド233の基板に対する相対的な位置および/または姿勢を制御できるよう構成される。ロボットアーム104のリンク、関節の構成は、真空装置内で安定して基板31をハンドリングできるものであれば、どのような形式の機構でもよい。ハンド233の構成例については以下で詳細に説明する。
【0016】
なお、
図11は、成膜チャンバ100の蒸着エリア232と搬送室235とを接続するゲートバルブ234が開かれ、ロボットアームが輪郭を破線で示した基板31をハンド233に載置した状態で搬送(搬入または搬出)している状態を模式的に示している。また、図中のX、Y、Zは、3次元座標軸の方向を示している(後述の図も同様)。
【0017】
搬送経路103は、大気中に基板31を出し入れ可能なロードロック室や、別の成膜システムに基板31を搬送するための搬送路である。なお、
図11では、搬送室235の周囲の4面に成膜チャンバや搬送経路を配置したが、成膜システムの形態はこの構成に限定される必要はなく、例えば搬送室を中心に周囲の6面あるいは8面に成膜チャンバや搬送経路を配置してもよい。また、基板31の搬送装置としてのロボットアームにはシングルアームに限らず、マルチアーム構成の配置を用いてもよい。
【0018】
図1、
図8は、
図11に示した上述のロボットアーム104のハンド233の構成例を示している。
図1、
図8に示すように、このハンド233は、ハンド233の手首側から手先側へと伸びる2本のメインフレーム37を備えている。メインフレーム37には、メインフレーム37と交差する方向に、それぞれ左右7本ずつのサブフレーム1が突設されている。
【0019】
各々のサブフレーム1の先端には、基板受け3が配置される。さらに、ハンド233の基板載置領域の四隅に相当するサブフレーム1の先端には、保持機構としての基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)が配置されている。基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、基板受け3に対して移動可能に配置された可動保持部としての基板把持爪15(
図3)を備える。基板受け3は、ハンドの構成部材の上面に固定的に装着された保持部であって、基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、後述するように、可動保持部としての基板把持爪15を基板受け3に対して接近、離間させることができる。この基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、ハンド233に載置した基板31の四隅付近を上下方向から基板受け3、基板把持爪15によって把持する。
【0020】
また、手首側、手先側のサブフレーム1には、それぞれメインフレーム37と平行に伸びるサブフレーム311、311…が装着されており、その先端にも基板受け3が配置され、これらの基板受け3、3…によって基板31の後縁、前縁が支持される。
【0021】
基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、基板把持爪15を水平動作させる第1の駆動機構と、基板把持爪15を昇降(上下駆動)させる第2の駆動機構と、を備える。これらの駆動機構は、メインフレーム37、37上にそれぞれ配置された2本のメインシャフト33、33(
図1、
図2、
図4)と、基板把持ユニット35が設けられたサブフレーム1上に配置された4本のサブシャフト17によって駆動される。
【0022】
図2に示すように、メインシャフト33、33は、軸受32、32(…)を介してメインフレーム37、37上に回転可能に支持されている。これらメインシャフト33、33は、ハンド233の例えば手首側に配置されたステッピングモータやサーボモータなどの駆動源(不図示)によりそれぞれ回転駆動される。これにより、例えば図示のような楕円のカム面を備えた偏心カム34の回動位置を選択することができる。
【0023】
軸受36、36(…)に軸支されたサブシャフト17の後端は、偏心カム34に当接し、サブフレーム1上で往復移動し、これによりサブシャフト17の先端が後述の機構を操作することによって、基板把持爪15を水平および上下方向に動作させる。本実施形態の基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、サブシャフト17の水平直線運動によって、基板把持爪15を水平方向および上下方向の2方向に動作させる。基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、下記のように、リニアガイド、板カム、バネ、係合爪、などによって構成することができる。
【0024】
基板把持動作では、基板把持ユニット35は、まず、基板把持爪15を、基板受け3上に載置されている基板31の上方位置であって、かつ基板31の外側の位置から水平に侵入するよう水平に移動させる。続いて、設定したストローク位置で、基板把持爪15に基板面に対してほぼ垂直に下降させ、基板把持爪15が基板31に当接し、基板把持爪15および基板受け3で基板31を把持する。基板開放動作では、基板把持ユニット35は、まず、基板把持爪15を基板面から上昇、離間させ、続いて、基板31の上空を基板輪郭の外側の退避位置まで水平に移動させる。
【0025】
以下、
図1~
図10を参照して、基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)の構成および動作につき詳細に説明する。これらの図のうち、まだ言及していない
図4は、上述した可動保持部としての基板把持爪15を水平に移動させる第1の駆動機構351を、また、
図3は、可動保持部としての基板把持爪15を昇降させる第2の駆動機構352を示している。また、
図5は、基板把持爪15を、水平移動、ないし昇降させる第1、第2の駆動機構を上面から示している。また、
図6、
図7は、機構の動作の理解を容易にするため、本来ほぼ同じ高さに配置される
図3、
図4の第1、第2の駆動機構を、紙面上の高さの異なる位置に側方から見た状態で並べて図示する様式を用いて図示したもので、
図6は基板31の解放状態を、
図7は基板31の把持状態に相当する。また、
図9は、基板把持爪15を駆動する上記の第1、第2の駆動機構を斜視状態で示したものである。また、
図10は、基板把持ユニット35の作用と配置の要件に係るもので、基板受け3と基板の相互作用を基板の側面方向から示したものである。
【0026】
上述のように、2本のメインフレーム37にそれぞれ複数(この例では左右7本ずつ)のサブフレーム1が配置されている。各サブフレーム1の先端には、少なくとも基板受け3が配置される。基板受け3は、例えばフッ素ゴムなどの材質から、例えばサブフレーム311の先端側の方が高くなった形状などにその上面が形成されている(
図10の基板受け310参照)。基板把持ユニット35が配置されていないサブフレーム1では、基板31は単に基板受け3の上に載置された状態で下方から支持する。ハンド233の四隅に相当するサブフレーム1の先端には、ベース2によって支持された基板受け3が設けられる(
図3)。さらに可動保持部としての基板把持爪15を上記のように上下、水平に移動させる基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)が配置される。
【0027】
本実施形態では、基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)はハンド233の四隅に相当するサブフレーム1の先端に配置されているが、より多数の基板把持ユニット35が任意のサブフレーム1に配置されていてもよい。基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)は、後述のように共通のメインシャフト33、33の回転駆動力によって動作するものであり、ハンド233の四隅以外にさらに基板把持ユニット35を増設するのは容易である。
【0028】
以下、
図3~
図5、
図9を参照して、本実施形態の基板把持ユニット35の第1、第2の駆動機構351、352の構成例につき説明する。第1の駆動機構351は、
図4のように、第1のリニアガイド21によって、サブシャフト17と平行な方向に直線移動できるよう支持されたL字型のベース20を備える。即ち、このL字型のベース20は、往復運動するサブシャフト17の先端に当接可能な位置に第1のリニアガイド21に支持されている。
【0029】
図4、
図5、
図9において、L字型のベース20の後端部のブラケット22は、ブラケット26との間で圧縮バネガイド25に弾装された圧縮バネ24(第1の付勢手段)によって、ベース20の前端がサブシャフト17の先端と当接するように付勢されている。
【0030】
図4の状態は、偏心カム34の最も高いカム面がサブシャフト17の後端に当接している。この状態では、基板把持爪15は基板31よりも外側の退避位置に水平移動されている。
図4の実線の状態から、鎖線の状態に偏心カム34を回転させると、矢印のようにL字型のベース20、ないし板カム18に対してサブシャフト17が後退する。これにより、基板把持爪15は基板31上空に進入するように水平移動する。
【0031】
即ち、メインシャフト33が回転駆動され、偏心カム34を介してサブシャフト17に伝達される駆動力により、サブシャフト17がサブフレーム1に沿って往復移動し、サブシャフト17の前端部を介して第1の駆動機構351または前記第2の駆動機構352が駆動される。
【0032】
サブシャフト17が後退すると、L字型のベース20、ないし板カム18は圧縮バネ24に付勢されて偏心カム34に当接した状態で同じ矢印方向に水平移動する。このベース20、ないし板カム18の、基板31上空への進入する方向への水平移動の限界位置は、ストッパ調整ネジ29と、L字型のベース20に設けられたストッパ19とが当接することによって規制される。ストッパ調整ネジ29の係止位置は、サブフレーム1上に配置されたブラケット30に対するねじ込み量によって調節できる。ストッパ調整ネジ29によるベース20の係止位置は、基板把持爪15を昇降させる基板31の縁部の内側の所定位置に調節される。
【0033】
図5、
図9に示すようにL字型のベース20の側面には、板カム18が固定されている。この板カム18は、第2の駆動機構352のカムフォロワ7と協働して、基板把持爪15の昇降を制御するためのものである。板カム18のカム面は、サブシャフト17の側が高く、カム面のこの部分によって基板把持爪15の上昇高さ(退避高さ)が決定される。板カム18のカム面のL字型のベース20後方に相当する部分は、基板把持爪15を下降させる傾斜面となっている。本実施形態では、上記の板カム18のカム面の形状はいずれも直線状であり、板カム18は全体として台形形状であるが、これらカム面は基板把持爪15の任意の昇降タイミングや昇降の軌道を得られるよう考慮された任意の形状であってよい。
【0034】
一方、第2の駆動機構352は、第2のリニアガイド11によって、サブシャフト17と平行な方向に直線移動できるようベース10により支持されたブラケット9を備える。基板把持爪15は、
図3、
図9に示すようにブラケット6の先端に固定されている。なお、
図3、
図9では、ブラケット6の形状や、カムフォロワ7廻りの形状が一部異なるものとなっているが、これらの構造の機械的な機能は同等である。特にカムフォロワ7はこれらの図に示すように、例えばローラ形式のカムフォロワで、小さな摩擦抵抗で板カム18のカム面に従動できるよう配慮されている。
【0035】
ブラケット6は、ブラケット9に対して、上下方向に移動できるようリニアガイド8を介して装着されている。ブラケット6は、ブラケット9との間に弾装された引張バネ16によって、下方に付勢されている。ブラケット6および基板把持爪15の昇降高さは、ブラケット6に装着されたカムフォロワ7と当接する板カム18のカム面の高さによって決定される。
【0036】
第1、第2の駆動機構351、352のサブシャフト17と平行な水平方向の連動は、引張バネ13と、互いに係合可能な係合爪として構成されたストッパ27、28(
図5)によって制御される。引張バネ13(第2の付勢手段)は、ブラケット9の後端に突設されたアーム14と、L字型のベース20のブラケット23の間に弾装され、これらを近接させる方向に付勢する。なお、引張バネ13と圧縮バネ24の力関係は、例えば(圧縮バネ24の復元力)>(引張バネ13)の引張力、のように設定しておく。
【0037】
図5のように、第2の駆動機構352のブラケット9ないし6には、ストッパ27が、第1の駆動機構352のL字型のベース20にはストッパ28が突設されている。
図5に示した状態では、ストッパ27、28が係止し、水平方向に関しては、引張バネ13の付勢力によって第1の駆動機構352のL字型のベース20と、第2の駆動機構352のブラケット9ないし6が一体となって移動できる。
【0038】
ただし、第2の駆動機構352のブラケット9がサブシャフト17に向かう方向への水平移動位置は、サブフレーム1に配置されたブラケット5により支持されたストッパ調整ネジ4とストッパ12(
図3)とが当接することによって規制される。このブラケット9の規制位置は、ストッパ調整ネジ4によって調整可能である。そして、
図5~
図7に示すように、サブシャフト17の先端を基準とすると、このストッパ調整ネジ4のサブフレーム1上における配置位置は、上述のストッパ調整ネジ29の位置よりも遠い。
【0039】
上記構成において、
図5、
図6に示すようにブラケット9がストッパ調整ネジ4と当接した後は、第2の駆動機構352のブラケット9、6、基板把持爪15はこの基板31の外縁内側の所定の昇降位置よりも右方へは水平移動できない。この状態から、さらにサブシャフト17を後退させると、第1の駆動機構351のL字型のベース20のみが圧縮バネ24の付勢力によって右方へ移動する。この時、ストッパ27、28は離間して、ブラケット9の水平位置(基板把持爪15の昇降位置)は、引張バネ13によってストッパ調整ネジ4と当接するよう付勢されることによって維持される。
図5、
図6の状態では、カムフォロワ7が板カム18の水平な高いカム面の位置に当接しており、基板把持爪15は、まだ基板受け3上に載置された基板31の縁部には下降していない。
【0040】
図5、
図6の状態からさらにサブシャフト17を後退させると、第1の駆動機構351のL字型のベース20のみが圧縮バネ24の付勢力によって停止しているブラケット9よりも右方へ移動する。その結果、
図7に示すように、引張バネ16により付勢されたカムフォロワ7が板カム18のカム面の斜面に沿って下降して、これにより基板把持爪15が下降し、基板受け3上に載置された基板31の縁部上面に当接する。
【0041】
以上のようにして、四隅の基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)において、基板把持爪15、および基板受け3によって、基板31の縁部が上下方向から把持する保持動作が行われる。なお、この保持状態において、基板把持爪15と基板受け3(例えば共にフッ素ゴムなどから製作する)の寸法、基板31の厚みなどを選択することによって、カムフォロワ7と板カム18の間に適当な間隙ができるよう設定しておく。これにより、基板把持爪15に加わる適宜選んでおいた引張バネ16の付勢力と、基板把持爪15と基板受け3を構成するフッ素ゴムなどの弾性部材の反発力などに起因する軽い保持力で基板31を保持できる。これにより、基板31を破損、変形させることなく、また、ハンド233への載置位置ずれを起すことなく確実に基板31を保持できる。
【0042】
一方、この基板31の把持状態から、基板把持爪15を上昇させ、さらに基板31の縁部より外側の退避位置に移動させる解放動作は次のようにして行われる。この解放動作は、
図7の状態から、
図6の状態への上記と逆の方向、逆の順序の動作である。
図7の状態から、サブシャフト17の前端を図中左方に前進させて、板カム18の前縁などを介してL字型のベース20を押圧すると、カムフォロワ7が板カム18のカム面の斜面に沿って上昇する。これにより、基板把持爪15が基板受け3上に載置された基板31の縁部上面から離間する。ストッパ27、28は、
図5に示すようにカムフォロワ7が板カム18のカム面の斜面を昇り切ると、ようやく当接するような位置関係となっている。そのため、ストッパ27、28が当接するまでは、第2の駆動機構352のブラケット9ないし6は、引張バネ13の付勢力を介してストッパ調整ネジ4と当接した状態を保つ。そして、その間にカムフォロワ7が板カム18のカム面の斜面を昇り切り、
図6のように基板把持爪15が基板31の縁部上面から離間する。
【0043】
さらに、サブシャフト17の前端を図中左方に移動させると、ストッパ27、28が当接し、これらストッパの係止を介して、第1の駆動機構351のL字型のベース20が第2の駆動機構352のブラケット9ないし6を左方に移動させる。これにより、基板把持爪15が基板受け3上に載置された基板31の縁部上面よりも外側の退避位置に移動させる。
【0044】
以上のようにして、L字型のハンドの四隅の基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)において、上記の基板31の把持状態から、基板把持爪15を上昇させ、さらに基板31の縁部より外側の退避位置に移動させる解放動作が行われる。上述の基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)の保持動作と、解放動作は、メインシャフト33、33を駆動することにより、同期的に、連動して実行することができる。
【0045】
なお、以上では、
図1、
図8などに示すように、ハンド233の手首、手先側の四隅に基板把持ユニット35(35A、35B、35C、35D)を配置する構成を示した。上述のように、基板把持ユニット35の配置数はこれよりも多くても良いが、逆に、ハンドのより少ない個所に配置する構成も考えられる。
【0046】
その場合、この種の基本構成を有するハンドでは、ハンドの手首側の例えば2個所、例えば基板把持ユニット35A、35Bのみを設ける構成が好ましい。この構成は、基板把持ユニット35A、35Bを省略して、手先側の基板把持ユニット35C、35Dのみを設ける構成よりも、以下のような理由で利点が大きい(
図10)。
【0047】
図10は、
図1のA-A’線に沿った断面を示しており、
図10において上方が
図1の上方の手先側、下方が
図1の下方の手首側に対応する。また、同図において、311は、サブフレーム1に対して直角に配置されたサブフレーム311を、また310は、それらサブフレーム311の先端に配置されたフッ素ゴムなどの弾性部材から成る基板受けを示している。この基板受け310は、上述の基板受け3と同等の構成で、その上面は例えばサブフレーム311の先端側の方が高くなった形状に形成されている。
【0048】
また、
図10において、CFは、
図1のハンドをロボットアーム104で操作した時に生じるハンド233や載置、保持している基板31に加わる遠心力の方向を示している。複数リンク、関節から成るロボットアーム104の構成では、多くの場合、ハンドの部分を旋回させると、CFのような方向に遠心力が作用する。また、遠心力CFの大きさは、多くの場合、図上側の手先側の方が、手首側よりも大きい。
【0049】
そして、ロボットアーム104のリンクが揺動され、遠心力CFが作用すると、基板31は例えば図中の鎖線~実線のように変形し、その前端縁は、図上側(手先側)の基板受け310の斜面に喰い込むように働く。一方、基板31の後端縁は、図下側(手首側)の基板受け310の斜面から滑落するように働く。上記のような事情で、ロボットアーム104のリンクが揺動された場合、基板31の保持力は図上側(手先側)の基板受け310では比較的高く、図下側(手首側)の基板受け310ではそれよりも低くなる傾向を生じる。
【0050】
以上のような理由で、基板把持ユニット35の配置を2個所に限定するのであれば、ハンド233の手首側の2個所、例えば
図1の基板把持ユニット35C、35Dを省略し、基板把持ユニット35A、35Bのみを設ける構成が好ましい。これにより、図下側(手首側)の基板受け310の弱い保持力を補い、また、遠心力CFの小さい側で効率よく、小さな保持力でも確実に基板を保持することができる。以上のようにして、手首側の基板把持ユニット35A、35Bのみを設ける構成によれば、効果的に基板31の位置ずれを防ぎ、確実な基板保持が可能となる。
【0051】
以上の実施形態によれば、成膜システムなどで用いられる搬送装置において、位置ずれを生じることなく、また、破損や変形を生じることなくガラス基板のような板状の対象物を搬送することができる。なお、以上では板状の対象物として、成膜システムなどで取り扱われる薄板のガラス基板のような対象物を例示したが、上述の基本構成は他の板状の対象物を搬送する搬送装置においても上述同様に有用であるのはいうまでもない。
【0052】
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
【0053】
例えば、
図12は、本発明を実施した、有機ELパネルを製造する製造システム300の全体構成の一例を示している。製造システム300は、複数の成膜チャンバ100、搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103、基板供給室1105、マスクストック室1106、受渡室1107、ガラス供給室1108、貼合室1109、取出室1110等を備えている。各々の成膜チャンバ100は、成膜材料の違いやマスクの違いなど細かい点で相違する部分はあるものの、基本的な構成(特に基板の搬送やアライメントに関わる構成)はほぼ共通している。なお、一つの成膜チャンバは、複数の蒸着エリアを備えていてもよい。このような構成では、一方の蒸着エリアにおける蒸着が完了するまでの間に、他方の蒸着エリアではマスク支持部を蒸着済の基板の搬出と未蒸着の基板の搬入を行う、といった並列的な成膜処理が可能である。
【0054】
搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103には、搬送機構であるロボットアーム1120が配置されている。このロボットアーム1120には、上述のハンド233を設けることができ、上述の構成によって、例えば成膜チャンバ100間で正確かつ確実に搬送することができる。
【0055】
製造システム300に含まれる複数の成膜チャンバ100は、お互いが同一材料を成膜する装置であってもよいし、異なる材料を成膜する装置であってもよい。例えば、各成膜チャンバが互いに異なる発光色の有機材料を蒸着する製造システムでもよい。製造システム300では、ロボットアーム1120によって搬送された基板に有機材料を蒸着する、あるいは金属材料等の無機材料の薄膜を例えば蒸着により形成する。
【0056】
基板供給室1105には、外部から基板が供給される。マスクストック室1106には、各成膜チャンバ100にて用いられ、膜が堆積したマスクが、ロボットアーム1120によって搬送される。マスクストック室1106に搬送されたマスクを回収することで、マスクを洗浄することができる。また、マスクストック室1106に洗浄済みのマスクを収納しておき、ロボットアーム1120によって成膜チャンバ100にセットすることもできる。
【0057】
ガラス供給室1108には、外部から封止用のガラス材が供給される。貼合室1109において、成膜された基板に封止用のガラス材を貼り合わせることで、有機ELパネルが製造される。製造された有機ELパネルは、取出室1110から取り出される。
【0058】
以上のように、本発明を採用した搬送装置としてのハンド233を備えたロボットアーム1120は、有機EL素子を製造する製造システムないし製造方法に好適に実施することができる。ただし、本発明を採用した搬送装置は、有機膜に限らず種々の成膜を行う成膜システムにおいて、基板などの対象物の搬送に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…サブフレーム、2…ベース、5、6、9、22、23、30…ブラケット、3、310…基板受け、4…ストッパ調整ネジ、7…カムフォロワ、8、11、21…リニアガイド、13、16…引張バネ、15…基板把持爪、17…サブシャフト、18…板カム、20…L字型のベース、24…圧縮バネ、25…圧縮バネガイド、27、28…ストッパ、29…ストッパ調整ネジ、31…基板、33…メインシャフト、34…偏心カム、35…基板把持ユニット、37…メインフレーム、100、101、102…成膜チャンバ、103…搬送経路、104…ロボットアーム、233…ハンド、300…製造システム、351…第1の駆動機構、352…第2の駆動機構、1101、1102、1103…搬送室、1105…基板供給室、1106…マスクストック室、1107…受渡室、1108…ガラス供給室、1109…貼合室、1110…取出室、1120…ロボットアーム。