(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】多層構造体の層間のオーバレイを測定する技法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/30 20170101AFI20230419BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G06T7/30
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2021130578
(22)【出願日】2021-08-10
(62)【分割の表示】P 2019168038の分割
【原出願日】2016-07-06
【審査請求日】2021-09-09
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504144253
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ラソア ダナンジャイ シン
(72)【発明者】
【氏名】ワインバーグ ヤコフ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツバンド イーシャイ
(72)【発明者】
【氏名】クリス ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー イタイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン ラン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク オルガ
(72)【発明者】
【氏名】アダン オファー
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ シモン
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-058166(JP,A)
【文献】特表2005-518107(JP,A)
【文献】特開2000-171230(JP,A)
【文献】特開2012-177961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体の層間のオーバレイを決定する方法であって、
前記多層構造体を表す所与画像を受け取ること、
前記多層構造体の層の予想画像を受け取ること、
前記予想画像に基づいて、前記多層構造体の結合予想画像を生成すること、
前記結合予想画像に対して前記所与画像を位置合せすること、
確からしい閉塞および前記予想画像と前記所与画像との間の歪みに基づいて、前記予想画像内のセーフエリアを識別すること、
前記識別されたセーフエリアに少なくとも部分的に基づいて、前記多層構造体の2つの層間のオーバレイ測定を計算すること
を含む方法。
【請求項2】
前記所与画像のセグメント化データを生成すること、
前記計算されたオーバレイ測定に少なくとも部分的に基づいて、前記セグメント化データを補正すること
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正されたセグメント化データを使用して前記オーバレイ測定を再計算することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多層構造体の前記2つの層間の前記オーバレイ測定を計算することが、
前記2つの層の特定の層
のマップと前記特定の層のそれぞれの予想画像との間の層ごとの位置合せを実行すること、
前記2つの層のそれぞれの層について、前記特定の層の前記それぞれのマップを前記特定の層の前記それぞれの予想画像と比較することによって前記特定の層のシフトを測定すること、
前記測定されたシフト間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記2つの層間の前記オーバレイ測定を決定すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記識別されたセーフエリアに少なくとも部分的に基づいて層ごとの位置合せを実行することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記層の前記予想画像または前記結合予想画像の1つまたは複数が、シミュレーションによって処理された設計画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多層構造体が3次元集積回路であり、前記所与画像が、前記3次元集積回路の走査電子顕微鏡写真である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
画像処理システムであって、
多層構造体を表す所与画像および前記多層構造体の層の予想画像を記憶する記憶装置と、
処理装置と
を含み、前記処理装置が、
前記多層構造体を表す前記所与画像を受け取り、
前記多層構造体の層の前記予想画像を受け取り、
前記予想画像に基づいて、前記多層構造体の結合予想画像を生成し、
前記結合予想画像に対して前記所与画像を位置合せし、
確からしい閉塞および前記予想画像と前記所与画像との間の歪みに基づいて、前記予想画像内のセーフエリアを識別し、
前記識別されたセーフエリアに少なくとも部分的に基づいて、前記多層構造体の2つの層間のオーバレイ測定を計算する
ように構成された
システム。
【請求項9】
前記処理装置が、
前記所与画像のセグメント化データを生成し、
前記計算されたオーバレイ測定に少なくとも部分的に基づいて、前記セグメント化データを補正する
ようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理装置が、
前記補正されたセグメント化データを使用して前記オーバレイ測定を再計算する
ようにさらに構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記多層構造体の前記2つの層間の前記オーバレイ測定を計算するために、前記処理装置が、
前記2つの層の特定の層
のマップと前記特定の層のそれぞれの予想画像との間の層ごとの位置合せを実行し、
前記2つの層のそれぞれの層について、前記特定の層の前記それぞれのマップを前記特定の層の前記それぞれの予想画像と比較することによって前記特定の層のシフトを測定し、
前記測定されたシフト間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記2つの層間の前記オーバレイ測定を決定する
ようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理装置が、
前記識別されたセーフエリアに少なくとも部分的に基づいて層ごとの位置合せを実行する
ようにさらに構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記層の前記予想画像または前記結合予想画像の1つまたは複数が、シミュレーションによって処理された設計画像である、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記多層構造体が3次元集積回路であり、前記所与画像が、前記3次元集積回路の走査電子顕微鏡写真である、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
命令が符号化された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令が、処理装置によって実行されたときに、前記処理装置に、
多層構造体を表す所与画像を受け取らせ、
前記多層構造体の層の予想画像を受け取らせ、
前記予想画像に基づいて、前記多層構造体の結合予想画像を生成させ、
前記結合予想画像に対して前記所与画像を位置合せさせ、
確からしい閉塞および前記予想画像と前記所与画像との間の歪みに基づいて、前記予想画像内のセーフエリアを識別させ、
前記識別されたセーフエリアに少なくとも部分的に基づいて、前記多層構造体の2つの層間のオーバレイ測定を計算させる
非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記処理装置がさらに、
前記所与画像のセグメント化データを生成し、
前記計算されたオーバレイ測定に少なくとも部分的に基づいて、前記セグメント化データを補正する、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記処理装置がさらに、
前記補正されたセグメント化データを使用して前記オーバレイ測定を再計算する、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記多層構造体の前記2つの層間の前記オーバレイ測定を計算するために、前記処理装置がさらに、
前記2つの層の特定の層
のマップと前記特定の層のそれぞれの予想画像との間の層ごとの位置合せを実行し、
前記2つの層のそれぞれの層について、前記特定の層の前記それぞれのマップを前記特定の層の前記それぞれの予想画像と比較することによって前記特定の層のシフトを測定し、
前記測定されたシフト間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記2つの層間の前記オーバレイ測定を決定する、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記処理装置がさらに、
前記識別されたセーフエリアに少なくとも部分的に基づいて層ごとの位置合せを実行する、請求項18に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記層の前記予想画像または前記結合予想画像の1つまたは複数が、シミュレーションによって処理された設計画像である、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造体を表す画像を解析することによって該構造体の層間のオーバレイ(overlay)を決定する技法に関する。例えば、本発明は、リソグラフィによって製造された多数の層を含む超小型の半導体構造体を構成する最新の集積回路の自動化された検査に関する。より詳細には、本発明は、多層構造体を表す画像を得るために走査電子顕微鏡(SEM)を利用する必要があるオーバレイ評価技法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術分野で、複雑な多層物体の例を挙げることができる。このような物体の内部構造は、物体の使用可能画像(available image)を解析することによって調べることができる。このような解析の例は例えば、最新の3D半導体構造体の検査、地球物理学、生物学、医学、コンピュータ断層撮影法などの医療機器技術等で見られる。解析する画像は、対応する分野で利用されているさまざまな技術によって得ることができる。
本特許出願は、最新の多層半導体構造体の検査の分野からの例を使用した上述の技法を説明する。
関心の最新の多層半導体構造体は、光学顕微鏡によって必要な正確さおよび分解能で構造体を検査することができないスケールまで(現時点では約7~10nmのノードスケールまで)小型化が進んでいる。光学顕微鏡によって検査することができないのは、光学顕微鏡によって提供される情報が視覚像の処理の結果であるためである。このような最新の構造体に対しては、視覚的測定によって得られたデータを処理するモデルベースの複雑な解析法を適用する理論上の選択肢もある。
より実際的な代替の選択肢は、光学顕微鏡の分解能よりも高い分解能を有するツールを含む技術を利用することである。
【0003】
このようなツール、例えば走査電子顕微鏡(SEM)は半導体ウエハの検査でしばしば使用されている。マイクロエレクトロニクスデバイスの製造における欠陥を検出および分類して、高度なプロセス制御を提供するためなどに、SEMが使用されることもある。しかしながら、SEM画像は多くの詳細を含む。それぞれの画像上に現れている構造体を識別し、それらの構造体を他の特徴から区別し、それらの構造体の相対的座標を推定するためには、それらの詳細を適切に解釈しなければならない。
説明を続けるために、いくつかの包括的な定義を以下に示す。これらの定義は、後述する課題および例示的な解決手段を理解する上で重要である。
【0004】
3次元集積回路(3D IC) - シリコンウエハおよび/またはダイを積み重ね、それらを、Si貫通電極(TSV)を使用して、単一のデバイスとして振る舞うように垂直に相互接続することによって製造された集積回路。この説明では、製造プロセスを使用して、多数の層(ダイ)を互いの上に段階的に付着させることによって製造された3D ICを対象とする。3D ICは、多層構造体の1つの好ましい例である。
SEM - 3D ICを1次電子ビームにさらし、3D ICの多数の層からの応答電子ビームまたは散乱電子に関するデータを集めるため、さらには、集めたデータにコンピュータ処理を適用することによって、それらの多数の層の結合(combined)SEM画像を再構成するために使用される走査電子顕微鏡。
使用可能画像または所与画像(given image) - 実際の多層構造体を表す画像。SEM画像 - 使用可能画像/所与画像の例。
CD SEM - 限界寸法走査電子顕微鏡。この走査電子顕微鏡は、約3000nmから約7nmの寸法を有する広範囲のノードに対して適用可能である。CD-SEMは、より高性能の電子光学部品および先進の画像処理を利用することにより、高い分解能、高いスループット、高い感度および高い再現性を達成する。
【0005】
予想画像(expected image) - 多層構造体の特定の層に構築され、かつ/または多層構造体の特定の層の中で見つかる特定の1つまたは複数の細部/特徴/構造の画像。予想画像は例えば、設計画像、例えば特定の層の特徴を設計するためにCAD(コンピュータ援用設計)ツールを利用することによって作成されたCAD画像とすることができる。予想画像を、設計に従って製造された後の実際の物体により似て見えるようにシミュレートされた設計画像とすることもできる。
結合予想画像 - 多層構造体の層の予想画像を、それらの層およびそれらの層の要素の可視性を考慮して結合することによって得られた画像。
オーバレイ(OVL) - 多層構造体の1つの層のパターンとその多層構造体の別の1つの層のパターンとの整列(alignment)を特徴づけるベクトル。
【0006】
最新のシリコンウエハは現在、それぞれの段階でウエハ上に材料のパターンを配する一連のステップで製造されている。このようにして、いずれもさまざまな材料でできたトランジスタ、コンタクトなどを配置する。最終的なデバイスが正確に機能するためには、層の別々のパターンが正確に整列していなければならない。オーバレイ制御は、上述のパターンとパターンの整列の制御である。
位置合せ(registration) - 2つ以上の画像の相互位置を認識することによって、それらの画像を最大限に可能な範囲で整列させること。位置合せは例えば、画像間の可能な最大の重なり(overlapping)を達成することによって実行することができる。さまざまな位置合せ技術が存在する。この説明では、先進の半導体ノード向けにカスタマイズされた位置合せのバージョン(version)が提案される。
【0007】
使用可能画像のセグメント化 - 使用可能画像のピクセルを異なる特徴(物体、要素)クラスに関連づけるために、それらのピクセルにラベル付けすること。特徴は、多層構造体の異なる層に位置していてもよい。画像セグメント化は通常、画像中の物体および境界(線、曲線など)の位置を検出するために使用される。より精確には、画像セグメント化は、同じラベルを有するピクセルがある特性を共有するような態様で、画像中の全てのピクセルにラベルを割り当てるプロセスである。例えば、特定の1つのラベルが、構造体の特定の1つの層を示すことがある。
【0008】
SEM画像のセグメント化 - セグメント化された画像(以後、セグメント化画像)Segm(x,y)を得るために、多層構造体のSEM画像のピクセルにラベル付けすること。セグメント化画像では、同様のラベルが付けられたピクセルがセグメントを形成する。セグメント化は、座標(x,y)を有する全てのピクセルに、そのピクセルが属する層の指数(index)である指数jを割り当てることによって、SEM画像のピクセルにラベル付けするプロセスである。指数jは、区間{1....N}からの値を受け入れることができる。Nは、多層構造体の層数である。
N層多層構造体の層のマップ - それぞれの画像が所与画像のサイズを有するN個の2値画像からなる一組の2値画像である。
特定の1つの層のマップは、所与画像上で(したがってセグメント化画像上で)可視であるその層の特徴だけを含む2値画像であり、それらの特徴は、その特定の層のラベルでラベル付けされたピクセルのエリア(セグメント)によってマップ上に表示される。これは、以下のように書くことができる。
マップ(x,y){j}={Segm(x,y)=jならば1;Segm(x,y)≠jならば0,1≦j≦N,Nは層数}
用語「ピクセルのエリア」および「セグメント」は、この説明の中で断続的に使用される。
多層構造体内のオーバレイ、例えば最新の超小型の多層半導体構造体内のオーバレイを効果的かつ正確に推定する解決手段が長く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、多層構造体の層間のオーバレイを決定するために実際の多層構造体を表す画像を解析する、より万能な技法を提供することである。
本発明のより具体的な目的は、多層半導体構造体内のオーバレイを測定する効果的で正確な技法を提供することである。本発明者は、この目的を、最新の半導体多層構造体内のオーバレイの集中化された大域的な測定(centralized,global measurement)に対する長い間のニーズと認識している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような効果的で正確な解決手段は、多層構造体内のオーバレイ/シフトの信頼性の高い推定を可能にし、製造プロセス中の所望のスループットに最小限の影響を及ぼし、製造プロセスのオンライン調整を可能にすると予想される。
本発明の第1の態様によれば、多層構造体の層間のオーバレイを決定する方法であって、
- 多層構造体を表す画像(いわゆる所与画像または使用可能画像)を提供すること、 - 多層構造体の対応するそれぞれの層の予想画像を得ること、
- 多層構造体の結合予想画像を(層の順序と互いに対する層の配置に起因する可視性/予想される閉塞(occlusion)とを考慮した前記層の予想画像の結合体(combination)として)提供すること、
- 結合予想画像に対する所与画像の位置合せを実行すること、
- 所与画像のセグメント化を提供し、それによって
○セグメント化画像(セグメント化画像では、セグメント化画像のそれぞれのピクセルが、そのピクセルが関係する多層構造体の層を示すラベルに関連づけられており、それによって同一のラベルを有するピクセルのエリア/セグメントが形成されている)、および
○前記多層構造体の層のマップとも呼ばれるセグメント化マップ(このようなマップは一組の2値画像であり、特定の層のマップは、所与画像上で(したがってセグメント化画像上で)可視であるその層の特徴だけを含む2値画像であり、それらの特徴は、その特定の層のラベルでラベル付けされたセグメントによってマップ上に表示される)
を生成すること、
- 多層構造体の選択された任意の2つの層間のオーバレイを、前記選択された2つの層の予想画像とともに選択された2つの層のマップを処理することによって決定(測定)すること
を含む方法が提供される。
有利には、提案の方法が、残りのどの層に関しても、多層構造体のそれぞれの層のオーバレイを決定することを可能にする。実際に、構造体の全ての層のオーバレイを、任意の組合せで決定することができる。
層の予想画像および/または結合予想画像を、設計画像を実際の多層構造体の所与画像に似せるための(すなわち結合画像/製造後の層の実際の外観を模倣するための)シミュレーションを経た設計画像と理解することができることに留意すべきである。このような予想画像を、シミュレートされた設計画像と呼ぶ。
【0011】
この方法の一バージョンによれば、この方法が、多層半導体構造体の層間のオーバヘッドを測定する方法であって、
- 多層構造体が、3D ICなどの半導体構造体、例えばウエハであり、
- 所与画像が、3D ICのSEM画像であり、
- 予想画像が、シミュレートされた設計画像(例えば製造後の層の実際の外観を模倣するようにシミュレートされた層のCAD画像)であり、
- 結合予想画像(例えば結合CAD画像)が、層の順序および予想される閉塞を考慮して層の上述の設計画像を結合することによって形成され、
- セグメント化が、SEM画像セグメント化であり、それによって構造体のセグメント化画像(SEM画像)、さらに層の別個のマップ(SEMマップ)が生成され、
- 3D ICの任意の2つの層間のオーバレイが、前記2つの層の予想画像、好ましくはシミュレートされた予想画像とともに2つの層のマップを処理することによって(例えば、これらの層のSEMマップを、同じ層のシミュレートされたCAD画像を使用して処理することによって)決定される
方法である。
このセグメント化は、層の予想画像を参照することができること、すなわち、この方法は、セグメント化を実行している間に予想画像を考慮することを含むことができることに留意すべきである。
異なる層上に位置する特徴または同じ層上に位置する特徴をより正確に区別するように、所与画像(SEM画像)のピクセルごとに、セグメント化を繰返し強化することによって、この提案の技法を改良することができる。
層の予想画像を調整することによって、セグメント化の結果を補正することができる。これは、測定されたオーバレイに基づいて実行することができる。
したがって、測定されたオーバレイに関するフィードバックを使用することによって、セグメント化の結果を強化することができる。
オーバレイ測定の結果に基づいてセグメント化を繰返し強化することによって、オーバレイを測定し、セグメント化を使用することが意図された異なる技法を改良することもできることに留意すべきである。
その結果として、セグメント化結果を補正すると、オーバレイ測定の結果も改良される。
【0012】
以上のことを考慮すれば、この方法は、
- 特定の層の予想画像を、その特定の層に対して測定されたオーバレイ値に基づいて(例えば予想画像の座標をシフト操作によって変化させることによって)補正し、
- 補正された予想画像を考慮することにより、例えば特定の層の補正された予想画像に基づいて前記特定の層の補正されたマップを得ることにより、セグメント化を補正する ことによってセグメント化結果を補正することを含むことができる。
次いで、補正されたセグメント化に基づいてオーバレイを再び測定することができ、この方法を繰返し続けることができる。
【0013】
上述のフィードバック、より詳細には層の予想画像(CAD画像)を補正するステップは例えば、測定されたオーバレイが、オーバレイの所定の限界を超えず、かつ/または、層のCAD画像をその層の対応するマップ(SEMマップ)のより近くにシフトさせ/調整し、したがってこのプロセスの次のステップにおけるセグメント化結果を改良することによって、測定されるオーバレイを改良することができる状況において実施することができる。
この方法は、一組の既存の/所定の限界が許容する分だけの繰返しを含むことができる。この限界は、オーバレイ測定手順の時間、品質およびコスト、オーバレイ値などに関係することがある。別のいくつかの限界については、後に、この説明の中で言及する。
オーバレイ測定をより効果的にするため、この方法は、受入れ可能なオフセットの1つまたは複数の所定の限界内で生じうる追加の確からしい(probable)閉塞を考慮することを含むことができる。
【0014】
このような限界は、特定の品質要件を満たす(半導体ウエハなどの)多層構造体を製造するために予め分かっていることがある。ここで論じる限界の1つの例は、層上の要素のサイズの受入れ可能な変化を制限する「CAD対SEM最大変動(CAD to SEM maximal variation)」である。この限界の別の例は、特定の層間の受入れ可能なオーバレイを制限する「CAD対SEM最大シフト(CAD to SEM maximal shift)」である。例えば、1つのトランジスタの要素であって、構造体の異なる層上に付着させた要素は、それらの異なる層間のオーバレイおよび/または要素のサイズが、受け入れられた一組の所定の限界を超えて変化する場合には、適正に動作するトランジスタを形成しない。オーバレイが1つまたは複数の所定の限界を超える構造体は普通、欠陥品とみなされる。いくつかの場合には、CAD補正を実行するとき(例えば、層のセグメント化画像により近くなるように層のCAD画像をシフトさせるとき)に、CAD情報をより高い信頼性で使用することによって、セグメント化を改良することができる。
【0015】
セグメント化ステップにおいて、およびセグメント化ステップの後に、追加の/確からしい閉塞を考慮して、層の予想画像上および対応するそれぞれの層のマップ上にいわゆるセーフエリア(safe area)を画定することができる。前記セーフエリアは、予想される閉塞および追加の(確からしい)閉塞ならびに予想画像と所与画像の間の歪みにも関わらず所与画像上で可視である前記層に属する要素のセグメントに関連するエリアである。このような歪みの例は、CAD-SEM画像の偏差でありうる。
【0016】
言い換えると、セーフエリアは、可視であり続ける要素のセグメント、すなわち、限定されたオフセットまたは歪み(最大可能オーバレイ、サイズの確からしい変動など)によっては閉塞されえない要素のセグメントに関係する。言うまでもなく、全く閉塞されない要素は、予想画像上および層のマップ上のセーフエリアを形成するとみなされる。
セーフエリアを参照するセグメント化結果の使用は、より効果的である/より信頼性が高いと考えられる。
多層構造体の任意の2つの層間のオーバレイを決定(測定)するステップは、例えば以下の2つのバージョンのうちの1つのバージョンに従って実行することができる。
【0017】
オーバレイを測定する第1のバージョンでは、この方法が、
- 選択された2つの層のそれぞれの層について、その特定の層のマップ(SEMマップ)とその同じ特定の層の予想画像(設計画像/CAD画像)との間の層ごとの位置合せ(per-layer registration)を、セーフエリアを参照することによって実行すること、
- 選択された2つの層のそれぞれの層について、その特定の層のマップ(SEMマップ)をその同じ特定の層の予想画像(設計画像/CAD画像)と比較することによって、その特定の層のシフト(または位置合せベクトル)を測定し、それによって選択された2つの層の対応するそれぞれの2つのシフトを得ること、
前記選択された2つの層間のオーバレイを、前記2つのシフトの差として得ること
を含むことができる。
【0018】
シフト(位置合せベクトル)の測定は、特定の層の予想画像(例えばCAD画像)に対する前記特定の層のマップ(例えばSEMマップ)の2軸XおよびYに沿ったX/Yシフトの測定として提供することができる。
例えば、
軸Xに沿った層「i」のシフトのX成分は、式1によって近似することができる。
ΔXi=XSEMi-XCADi [1]
層「j」に対する層「i」のオーバレイのX成分は、式2によって近似することができる。
ΔXi-ΔXj=XSEMi-XSEMj+(XCADj-XCADi)=XSEMi-XSEMj+オフセット [2]
上式で、(XCADj-XCADi)=オフセット=一定である。
同様の操作を軸Yについて実行して、オーバレイのY成分を得る。
位置合せが上述のセーフエリアに基づく場合には、前記層ごとの位置合せをより効果的に実行することができることに留意すべきである。
【0019】
オーバレイを測定する第2の選択肢によれば、この方法は、
- 選択された2つの層の選択された2つのマップの中にそれぞれ現れる2つのセーフエリア(MSA)を選択すること、
- 選択された2つの層の2つの予想画像の中にそれぞれ現れる2つのセグメント(ESA)であり、前記2つのセーフエリアMSAにそれぞれ対応する2つのセグメントESAを割り当てること、
- 選択された2つのセーフエリアMSAのオーバレイのベクトルV1(オーバレイベクトルSimg)を、選択された2つのセーフエリアMSAの重心(Center of Gravity:COG)の差を計算することによって決定すること、
- 2つのセグメントESAのベクトルV2(オーバレイベクトルSexp)を、2つのセグメントESAの重心(COG)の差を計算することによって決定すること、
- 選択された2つの層間のオーバレイを、V1とV2の差を計算することによって決定すること
を含むことができる。
半導体構造体の検査に関して、V1は、SEM画像上で推定されることが好ましく、V2は、CAD画像上で推定されることが好ましい。
【0020】
オーバレイ測定のこの第2の選択肢は、前記2つのエリアのうちの一方のエリアだけがMSAであり、かつ/または前記2つのセグメントのうちの一方のセグメントだけがESAであり、同時に、残りのエリア/セグメントがセーフエリアでないときに実行することができる。
繰返しになるが、この方法は、追加的に選択された任意の数の代替の層対に対して、言い換えると多層構造体の全ての層に対してオーバレイ測定を実行するように適合されているため、有利である。
【0021】
あるいは、本発明の方法を以下のように定義することもできる。
多層構造体の層間のオーバレイの決定を実行する方法であって、
- 多層構造体を表す所与画像を得ること、
- 多層構造体の対応するそれぞれの層の予想画像および多層構造体の結合予想画像を得ること、
- 結合予想画像に対する所与画像の位置合せを実行すること、
- 所与画像のセグメント化を実行すること、
- 多層構造体の選択された任意の2つの層間のオーバレイを決定すること、
- 決定されたオーバレイに関するフィードバックを使用してセグメント化の結果を補正すること
を含む方法。
この方法はさらに、補正されたセグメント化結果を使用してオーバレイを再決定することを含むことができる。
【0022】
本発明の方法の独立したさらに別の定義は以下のとおりとすることができる。
多層構造体の層間のオーバレイを決定する方法であって、
- 多層構造体を表す所与画像を得ること、
- 多層構造体の対応するそれぞれの層の予想画像および多層構造体の結合予想画像を得ること、
- 結合予想画像に対する所与画像の位置合せを実行すること、
- 所与画像のセグメント化を提供し、それによって
○セグメント化画像、および
○前記多層構造体の層のマップ
を生成すること、
- 予想画像上のセーフエリアおよび層のマップ上のセーフエリアであり、所定のオフセットによって閉塞されえない特定の層上の要素のセグメントを表すセーフエリアを決定すること、
- 選択された2つの層の予想画像とともに前記選択された2つの層のマップを、決定されたセーフエリアを利用して処理することによって、多層構造体の選択された任意の2つの層間のオーバレイを決定すること
を含む方法。
【0023】
上に記載された方法は、構造体のSEM画像化および層の予め設計された画像に基づいて最新の半導体ウエハまたは3D ICなどの多層構造体を検査するのに有利であることに留意すべきである。さらに、この方法は、構造体の全ての層に対してオーバレイ値を測定することを容易に可能にする。
【0024】
3D ICの上位層が重大なオーバレイを導入する場合には、3D集積回路の製造中にそれらの層を除去することができる。続いて、このプロセスは、おそらくは補正されたCAD画像を対応する層に対して使用して、除去された層を新たな層で置き換えることができる。CAD画像を補正することによってオーバレイ値を補正することができるときには、次のウエハを製造する前に高次ステッパ(スキャナ)補正を提供することによって、これを実行することができる。
このスキャナは、それぞれの軸に沿った高次補正、例えば(a+bx+cx2+dx3)を処理することができる。この式で、xは、特定の2つの層間のオーバレイである。CD-SEMオーバレイ結果およびあるオーバレイ数学モデルを使用して、ユーザ/顧客は、それらの係数a、b、c、dを見つけることができ、それらの係数をスキャナで使用して、収差を固定することができる。
【0025】
新たに提案されたこの方法は、任意の構造体に対して有効であり、SEMを使用した3C IC構造体の検査に対して特に有利である。これは、この方法が、
総称的(generic)であり、すなわち、検査する層の幾何形状に依存せず、
大域的であり、すなわち層間の測定を実行することは可能にするが、同じ層内の要素間の測定は可能にせず、
構造体の全ての層に対して同時に(並行して)情報が得られ、その情報が、任意の層対のオーバレイの計算を可能にするため、包括的(comprehensive)/万能(universal)であり、
使用可能画像のセグメント化を繰返し改良することによって正確さを向上させるフィードバックを可能にし、
雑音または低信号対雑音(SNR)比に対して安定であるためロバスト(robust)であり、
1nm未満の正確さを有する測定を提供することにより正確(accurate)である
ことによる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、多層構造体(例えば3D IC)の所与画像(例えばSEM画像)および層の予想画像を記憶するように構成された記憶装置を含む画像処理システムも提供される。一例では、予想画像が、3D ICを製造する際に使用される層の設計(CAD)画像であり、別の例では、予想画像が、所与画像に合うようにシミュレートされた設計画像である。このシステムはさらに、
結合予想画像(任意選択で設計画像を予めシミュレーションにかけた結合予想画像)を生成し、
所与画像を結合予想画像とともに処理して、所与画像と結合予想画像との間の位置合せを実行し、
構造体の対応する多数の層のマップへの所与画像のセグメント化を実行し、
構造体の任意の2つの層間のオーバレイ測定を、前記2つの層のマップおよび適当な予想画像に基づいて実行する
ように構成された処理装置を備える。
【0027】
さらに、本発明の一実施形態によれば、プログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、それらのプログラム命令が、コンピュータによって読み取られたときに、コンピュータに、上述の方法のステップを実行させる、コンピュータソフトウェア製品も提供される。
本発明は、以下の説明の中でさらに説明される。
次に、以下の非限定的な図面の助けを借りて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】多層構造体内のオーバレイを測定する本発明の方法を実行するように適合されたシステムの一実施形態を概略的に示す図である。
図1では、この構造体が半導体ウエハであり、最初の(所与)画像が、SEMによって得られ、コンピュータ処理装置によって処理される。
【
図2】提案の方法の一バージョンの略ブロック図である。
【
図3】提案の方法の別のバージョンのブロック図である。このバージョンは、層の予想画像上で閉塞されないセーフエリアおよび層のマップ上で閉塞されないセーフエリアを決定することを含み、これらのセーフエリアは、より効果的なセグメント化を可能にし、その結果としてオーバレイのより正確な測定を可能にする。
【
図4】提案の方法の別のバージョンのブロック図である。このバージョンは、追加の製造/検査ステップにおいてオーバレイを、得られた測定値に基づいて改良することを可能にするフィードバックを含む。
【
図5】多層構造体の選択された2つの層間のオーバレイを測定する(層ごとの位置合せを使用した)例示的な1つのプロセスのブロック図である。
【
図6】多層構造体の選択された2つの層間のオーバレイを測定する(セーフエリアに基づくCOG手法を使用した)例示的な別のプロセスのブロック図である。
【
図7】提案のプロセスの異なる段階を、構造体の結合予想画像および所与画像、1つの層の予想画像およびマップならびにいわゆるセーフエリアを画定する段階の絵図によって示す略図である。
【
図8】
図6に示された例示的なプロセスの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に基づくシステムSの一実施形態を実施する例示的な一組の装置を示す絵図である。
図1に示された例では、システムSが、走査電子顕微鏡SEMを使用して多層半導体構造体(3D IC、ウエハ)を検査することを目的としている。
システムSは、処理装置(図示せず)と記憶装置とを含むコンピュータCを備える。記憶装置は、外部ブロックMとして概略的に示されている。オペレータが検査プロセスを制御および調整することができるように、コンピュータはさらに、ディスプレイDおよびキーボードKを備える。コンピュータCは、線Lを介して走査電子顕微鏡SEMと通信する。走査電子顕微鏡SEMは、3次元多層構造体(半導体ウエハWが示されている)の画像を生成するように適合されている。
SEMで得られたSEM画像はコンピュータCに送られ、コンピュータCで処理され、記憶装置Mに記憶される。
コンピュータCの記憶装置Mはさらに、ウエハWの層の予め作成された一組の予想画像を記憶することができる。
システムSの動作は、所与画像(SEM画像)および予想画像の処理に基づいてウエハの層間のオーバレイを測定することに重点が置かれている。
予想画像は、層に関して設計されたCAD画像とすることができる。あるいは、予想画像が、関心の実際の構造体の層上の実際のパターンに最大限に似て見えるようにするため、シミュレーションにかけた設計画像から予想画像を形成することもできる。
【0030】
この例では、層を製造し、SEMによって層を走査することで得られる画像に最大限に近い予想画像に設計画像を変換するための設計画像のシミュレーションのための1つまたは複数のプログラムを、コンピュータソフトウェアが含むことができる。半導体ウエハ内のオーバレイを測定することを目的とする提案のシステムのこの特定の実施形態は、このようなシミュレーションを用いるとより効果的に機能する。このコンピュータは、システムの新規の機能を担う提案のソフトウェア製品(点線の輪郭線SPとして概略的に示されている)を含むいくつかのコンピュータ可読媒体を収容している。それらの機能のうちのいくつかの機能を、下記の図面に示された流れ図を参照して説明する。
図2は、提案の方法の一バージョンの流れ図を示す。バージョン10は、この方法のいくつかの変更のための根本法の役目を果たすことがある。
ブロック12:実際の多層構造体の所与画像を得る。本出願に記載された特定の例では、所与画像が、走査電子顕微鏡によって生成されたSEM画像である。
【0031】
ブロック14:多層構造体の層の予想画像を得る。
- ボックス14.1は、例示的な層「i」を含む構造体の多数の層に対して作成された複数の設計画像を示す。
- ブロック14は、以下のような設計画像のシミュレーションを含むことができる。
- ボックス14.2は、設計画像をシミュレーションにかけて、多数の層の対応するそれぞれの予想画像を形成することができることを示している。
- ボックス14.3は、それらの層のシミュレートされた画像から結合予想画像を得ることができることを示している。
予想画像は例えば、CAD画像またはシミュレートされたCAD画像とすることができる。
上述のさまざまな形態の予想画像は、コンピュータの記憶装置に記憶される。
さらに、以下の操作を使用して、所与画像を予想画像と比較することができる。
ブロック16は、所与画像(SEM画像)を結合予想画像に対して位置合せすることを示している。
ブロック18は、所与画像のセグメント化を担う。
【0032】
すなわち、ボックス18.1は、セグメント化画像を得ることを示している。このことは、所与画像のそれぞれのピクセルに、その特定のピクセルが関係する層を示すラベルによって「ラベル付けする」ことを意味する。セグメント化画像はコンピュータ記憶装置に記憶される。
ボックス18.2は、次いで、セグメント化画像から、(例示的な層「i」のマップを含む)複数の層マップを形成し、それらの層マップを記憶装置に記憶することを示している。本発明者の特定の例では、これらのマップが、対応するそれぞれの層のSEMマップである。
任意選択で、ブロック14で受け取った適当な予想画像を考慮することによって、ボックス18.1および18.2で実行されるセグメント化プロセスを支援し、容易にすることができる(任意選択のこれらの矢印は
図2には示されていない)。
【0033】
ブロック20は、オーバレイ(OVL)測定ブロックである。ブロック20によって提案されるオーバレイ測定の概念は、いわゆる大域的オーバレイ測定の基礎である。すなわち、多層構造体の任意の2つの層間のOVLを、それらの層の予想画像およびそれらの層のマップを一緒に処理することによって、測定することができる。本発明者の特定の例において、予想画像がCAD画像である場合には、選択された2つの層のCAD画像およびSEMマップを処理することによって、選択された任意の2つの層間のオーバレイを測定することができる。
流れ
図10に定義された概念のいくつかの特定の実施態様および結合を、以下の図面を参照して説明する。
図3は、どのようにして、追加の特徴、すなわちいわゆるセーフエリアを決定し、
図2に示された方法と結合するのかを示す、流れ図の一部分を示す。
しかしながら、セーフエリアの概念は、この特許出願に記載されたオーバレイ測定法で使用することができるだけでなく、半導体構造体を検査する他の方法で使用することもできることに留意すべきである。
セーフエリアは、新たなブロック15で画定される。
【0034】
ブロック15は、それぞれの層「i」のセーフエリアを、最初にその層の予想画像上で(本発明者の特定の例では、その層のシミュレートされたCAD画像上で)画定することを含む。セーフエリアは、その特定の層の要素/特徴のエリアであって、限定されたオフセットによっては閉塞されえないエリアであると理解すべきである。言い換えると、その特定の層の特徴のセーフエリアは、特徴のサイズの最大許容偏差および層間のX/Yオーバレイの最大許容偏差においても可視であり続けるはずである(すなわち他の層に属する特徴によって閉塞されないはずである)。それらの偏差には所定の限界がある。この偏差の限界が、ブロック15に供給されるデータの矢印によって概略的に示されている。画定されたセーフエリアは普通、特徴の予想される視覚的セグメントよりも小さい。すなわち、層の予想画像中で見ることができると考えられるセグメントよりも小さい。
(
図7および8がさらに、セーフエリアの意味を説明するいくつかの絵図を提供する。)
【0035】
ブロック15は、特定の層の予想画像(例えばCAD画像)上にこのようなセーフエリアを画定する。これらのセーフエリアをESA(予想セーフエリア)と呼ぶこととする。ESAをどのように画定するのか?可視ピクセルとして設計された予想画像の1つのピクセルであって、許容される偏差で依然として可視ピクセルであり続けるピクセルはESAに属するとみなす。構造体のそれぞれの層に対して同様の操作を実行する。
任意選択で、画定されたセーフエリアESAを含む層の予想画像を使用して、結合予想画像を得(ブロック14.3、
図3には示されていない)、次いで、ボックス16で適切な位置合せを実行することができる。
【0036】
本発明者の例では、次いで、ブロック15で画定されたセーフエリアESAを使用して、ブロック18でのセグメント化を改良する。すなわち、変更されたボックス18Aで層のマップ(例えばSEMマップ)を構築するときに、セーフエリアESAを考慮する。これによって得られる特定の層のマップは、その特定の層に対して画定されたESAに対応するマップセーフエリアMSAを含む。
それぞれのMSAは、特定のESAを関心の層のマップと比較することによって画定することができる。
次いで、予想画像上および層のマップ上で決定されたセーフエリア(ESAおよびMSA)を使用して、選択された2つの層間のオーバレイを正確に測定する。そのため、
図3では、汎用ブロック20が変更され、符号20Aで示されている(これは、OVL測定がセーフエリアに基づくためである)。
セーフエリアを使用してオーバレイを測定する例が、
図6の流れ図および
図8の絵図に示されている。
図4は、測定結果に基づくフィードバックを含む、変更されたオーバレイ測定法の流れ図を示す。フィードバックを含むこのような方法は例えば、
図2を参照して説明した流れ
図10から始めることができる。
図4の例では、流れ
図10が部分的に示されており、ブロック18および20だけが示されている。
【0037】
オーバレイ結果が(例えば流れ
図10のブロック20によって)計算されたら、その結果を、所定のOVL限界と比較する(ブロック22)。その限界を超えている場合、その(半導体ウエハなどの)製品は欠陥品とみなされる。欠陥のあるウエハは廃棄することができ、あるいは、構造体の上位層を除去し、次いで再び付着させることもできる。
OVL限界を超えていない場合、それを実行するのに使用可能な資源があるならば、OVLを改良することができる(これは、正確さを改良するための追加のラウンドには、追加の時間、エネルギー、材料などがかかるためである。ブロック24)。OVL限界を超えていない場合には、オーバレイを調べた2つの層のうちの一方または両方の層の予想(設計)画像を調整することによって(ブロック26)オーバレイを改良することを本発明者は提案する。例えば、予想画像のシミュレーションを調整することができ、かつ/または予想画像(CAD画像)を互いに対してシフトさせることができる、などである。
【0038】
次いで、特定の層の補正された予想画像を、セグメント化ブロック18にフィードバックして、セグメント化の結果を改良する。次いで、(少なくともボックス18.2で)その層の更新された予想画像に関してセグメント化を実行する。ボックス27は、層の予想画像に関する情報をブロック14およびブロック26から受け取り、それらの間の新しい方の情報を選択して、ブロック18に送る。
ブロック26からのこのような更新された情報は、OVLの測定を担うブロック20にも送られる。それにより、次の製造ラウンドで、その特定の層の補正された予想画像を参照してオーバヘッドが再計算される。
このプロセスの特定の段階において、ブロック24で、OVLをさらに改良しても無駄である、またはOVLをさらに改良するコストが高すぎるとの判断を下すことができる。
【0039】
図5は、ブロック20(
図2)に規定された汎用アルゴリズムに基づいて、任意選択ではブロック20A(
図3)に規定された変更されたバージョンを使用してオーバレイを測定する可能な一バージョンを示す。ブロック20の汎用アルゴリズムは、選択された任意の2つの層のマップと予想画像とを合わせて処理して、それらの層間のオーバレイを測定することを概略的に記述している。ブロック20Aは、いわゆるセーフエリアを使用してこの処理を実行する可能性をブロック20に追加する。
図5は、OVL計算の特定の流れ図を概略的に示す。この流れ図は以下のものを含む。
ボックス20.1。層間のOVLを測定する任意の2つの層(層1および層2と呼ぶ)を選択する。
【0040】
ボックス20.2。選択されたそれぞれの層について位置合せを実行する。このような層ごとの位置合せは、特定の層の予想画像(例えばCAD画像またはシミュレートされたCAD画像)をそのマップ(SEMマップ)に対して整列させることを含む。この操作は、層1および層2について、それらの層の対応するそれぞれのCADおよびSEM画像に基づいて実行される。その層の予想画像(シミュレートされたCAD画像)およびマップ(SEM画像)上の予め画定されたセーフエリアに基づいて実行される場合には、この層ごとの位置合せを容易にすることができる。
ボックス20.4は、層の予想画像からの層のマップのシフト(x/yベクトル)を測定することを含む。層1について測定されたベクトルを「シフト1」と呼ぶ。層2についてこのようなベクトルを測定して、「シフト2」を得る。
ボックス20.6は、ボックス20.4で得た2つのシフト間の差としてオーバレイ(OVL)を計算することを含む。
【0041】
図6は、多層構造体の任意の2つの層間のオーバレイ(OVL)を測定する別のバージョンを示す。このバージョンではセーフエリアの概念が利用され、したがってこのアルゴリズムは全体が20Aとして示されている。しかしながら、このバージョンは、
図5のそれとは異なり、セーフエリアを用いた新たないくつかの操作が実行される。
ボックス20.1 - OVLを測定する2つの層を選択する(これは
図5の場合と同じである)。
ボックス20.3 - コンピュータ記憶装置から、選択された2つの層のマップ(すなわち層のセグメント化マップ)を呼び出し、それらのマップが、(構造体内の)実際の相互位置に配置されていることを保証する。
ボックス20.5 - 層マップ上でセーフエリアを識別する。例えば、層1の層マップ上でセーフエリア1(MSA1)を識別し、層2のマップ上でセーフエリア2(MSA2)を識別する。
【0042】
ボックス20.7 - 識別されたセーフエリアの重心(COG)を決定し、2つのセーフエリアMSA1およびMSA2のCOG間のベクトルV1を測定する。ベクトルV1は、層のマップ間の「可視オーバレイ」を示す。本発明者の例では、層のセグメント化マップに対してベクトルV1を決定する。
ボックス20.9で、コンピュータ記憶装置から、層1、2の2つの予想画像を得、それらの予想画像を、それらの設計された相互位置に置く。
20.11 - 層1および2の予想画像上で、対応するそれぞれの層マップのセーフエリアMSA1、MSA2に対応するセグメントを識別する。これらのセグメントは実際に、予想画像のセーフエリアESA1、ESA2である。
20.13 - これらのセグメント(ESA1、ESA2)のCOGを見つけ、ESA1およびESA2のCOG間のベクトルV2を測定する。本発明者の例では、層のCAD画像である予想画像に対してV2を決定する。
20.15 - 層1と層2の間のオーバレイOVLを、ベクトルV1とV2の差として計算する。
図7は、6つの部分7a~7fを含む。
【0043】
部分7aは、4層構造体の結合予想画像であり、それぞれの層の特徴/要素が数字1~4によって示されている。それぞれの数字(1、2、3、4)は、設計によればその特徴が位置することになっている層の番号を示す。この例では、この予想画像が、シミュレートされた設計画像である。
部分7bは、実際の構造体の所与画像(この例ではSEM画像)の概略的な絵図を示す。次いで、部分7aの予想画像を参照することによって、所与画像のスポットをセグメント化することができる。
【0044】
部分7cは、層3の予想画像であり、暗影は、層3上に位置する斜めの要素に対応する。斜めの要素3の周囲の破線の輪郭線は、要素3の許容されるサイズ偏差(デルタ3)を示す。垂直の破線は、層4上に位置する垂直要素4のサイズ偏差の限界を示す。要素4のサイズ偏差はデルタ4として示されている。実際には、要素4が要素3を部分的に閉塞する。
層3と層4の間のオーバレイの限界を概略的に示す矢印「OVL lim」も示されている。
部分7dは、部分7bの所与画像のセグメント化によって得られた層3のセグメント化マップを示す。層3のマップ(部分7d)は、所与画像上に見られる層3のセグメントだけを示している。オーバレイ、例えば層3と層4の間のオーバレイをさらに測定するため、層3のこのマップを使用して、層3の予想画像(部分7c)との位置合せを実行することができる。
【0045】
部分7eは、層3と層4の間の相互位置(オーバレイ)を決定する場合に、層3の予想画像上で予想セーフエリアESAをどのように画定することができるのかを概略的に示す。層3のESAは、オフセットの最悪のケースでも、すなわち層3、4に関するサイズ偏差とオーバレイの両方が生じたときでも可視であり続けるエリアである。
部分7fは、層3のマップ上のセーフエリアMSAを概略的に示す。セーフエリアMSAは、最悪のケースでも、層3の予想画像上のセーフエリアESAに対応することができる。
図8は、セーフエリアの概念を使用して2つの例示的な層(層1および層2)間のオーバレイをどのように測定するのかを示す絵図である。関連アルゴリズムは、その全体が
図6を参照して説明されている。
図8の左側の部分「A」は、互いに対する予想位置にある層1および2の2つの予想画像(CAD画像)を示す。右側の部分「B」は、互いに対する実際の位置にある層1および2の2つのセグメント化マップを示す。
特定の層において閉塞されていないエリアは、その層のセーフエリアとみなされることに留意すべきである。
【0046】
層1は上位層、層2は下位層である。層1上には、符号L1で示された垂直要素があり、閉塞されていない要素として示されている。層2上には、符号L2で示された斜めの要素がある。設計(
図8の左図「A」)により、L2は、L1によって部分的に閉塞されている。層の実際のセグメント化マップ(
図8の右側部分「B」)上でも、L2は、L1によって部分的に閉塞されているが、サイズおよび/またはオーバレイのある偏差のために、L2の位置が視覚的にシフトされていることが分かる。
【0047】
陰影が付けられたセグメントを要素L2のセーフエリアとする。部分「B」では、L2の陰影が付けられたセグメントおよびL1の全体が、マップセーフエリア(MSA)である。部分「A」では、L2のうち「B」に相当する陰影が付けられたセグメントだけおよびL1の全体がESAである。
次に、全てのセーフエリアの重心(COG)を決定する。
次いで、「B」(層1、2のSEGMマップ)について、ベクトルV1を、2つの異なる層1および2に位置する2つのセーフエリアMSAのCOG間の差として決定する。
同様に、「A」(層1、2のCAD画像)について、ベクトルV2を、2つの異なる層1および2に位置する2つのセーフエリアESAのCOG間の差として決定する。
最後に、層1と層2の間のオーバレイを、ベクトルV1とV2の差として計算する:OVL=V1-V2。
【0048】
特定の例および図面を参照して本発明を説明したが、方法の変更された他のバージョンおよびシステムの異なる実施態様が提案されることがありうる。以下の特許請求の範囲によって定義されているとき、それらのバージョンおよび実施形態は、本発明の部分であるとみなされるべきである。