IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.の特許一覧

特許7265646マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法
<>
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図1
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図2
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図3A
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図3B
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図3C
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図4A
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図4B
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図4C
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図5A
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図5B
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図6
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図7
  • 特許-マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】マルチビーム検査装置における二次ビームのアライメントのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/05 20060101AFI20230419BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H01J37/05
H01J37/147 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021556286
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020055959
(87)【国際公開番号】W WO2020193102
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】62/824,954
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シー,シンポ
(72)【発明者】
【氏名】フー,シュエラン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シュエドン
(72)【発明者】
【氏名】レン,ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ゾン-ウェイ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-513460(JP,A)
【文献】特開2011-192498(JP,A)
【文献】特開2012-003902(JP,A)
【文献】特開2013-178880(JP,A)
【文献】特開2015-216075(JP,A)
【文献】米国特許第06797955(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0268096(US,A1)
【文献】国際公開第2014/002734(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/05
H01J 37/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次粒子ビームの経路を変更するように構成された調節可能荷電粒子ビームセパレータであって、
一次光軸と位置合わせされた第1のウィーンフィルタであって、第1の励起入力を介して個別に制御可能な、第1のウィーンフィルタと、
前記一次光軸と位置合わせされた第2のウィーンフィルタであって、第2の励起入力を介して個別に制御可能な、第2のウィーンフィルタと、を含み、
前記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、前記調節可能荷電粒子ビームセパレータに対する二次投影系のアライメント特徴に基づいて前記第1の励起入力及び前記第2の励起入力を調節することにより、前記調節可能荷電粒子ビームセパレータの有効屈曲点を移動させることができるように構成される、調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項2】
前記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、前記有効屈曲点を前記一次光軸に沿って移動させることができるように構成される、請求項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項3】
前記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、前記第1の励起入力が前記第2の励起入力よりも高い場合、前記有効屈曲点を前記一次光軸に沿って前記第1のウィーンフィルタの近くに、また前記第2のウィーンフィルタから離れて配置することができるように構成される、請求項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項4】
前記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、前記第2の励起入力が前記第1の励起入力よりも高い場合、前記有効屈曲点を前記一次光軸に沿って前記第2のウィーンフィルタの近くに、また前記第1のウィーンフィルタから離れて配置することができるように構成される、請求項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項5】
前記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、前記第1の励起入力及び前記第2の励起入力が調節された場合に、前記有効屈曲点を移動させることができるように構成される、請求項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項6】
前記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、前記二次投影系のアライメント誤差を補償するように構成される、請求項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項7】
前記二次投影系の前記アライメント特徴は、前記二次投影系内の主ズームレンズのアライメント特徴を含む、請求項6に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項8】
前記第1のウィーンフィルタは、一次粒子ビームを偏向させてサンプルを走査するように更に構成される、請求項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項9】
前記第1のウィーンフィルタは、磁気偏向器及び静電偏向器を含み、前記静電偏向器は、第3の励起入力に基づいて、静電場を生成して、前記一次粒子ビームを偏向させて前記サンプルを走査する、請求項8に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
【請求項10】
複数の二次電子ビームを検出表面に投影するための二次投影系を備えたマルチビームシステムを使用してウェーハを検査する方法であって、
前記二次投影系のアライメント特徴に基づいて、調節可能ビームセパレータの所望の屈曲点の位置を決定することと、
1つ又は複数の制御信号を前記調節可能ビームセパレータに送信して、前記調節可能ビームセパレータの有効屈曲点を、前記所望の屈曲点の前記位置に向けて一次光軸に沿って移動させることと、を含む方法。
【請求項11】
有効屈曲点の調節が行われた後で、前記所望の屈曲点の前記位置と前記有効屈曲点の位置との間の差を決定することと、
前記有効屈曲点の前記位置が、前記所望の屈曲点の前記位置に実質的に近くなるまで、前記所望の屈曲点の前記位置と前記有効屈曲点の前記位置との間の前記差を決定するのに続いて、前記有効屈曲点の調節を繰り返すことと、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記調節可能ビームセパレータは第1のウィーンフィルタ及び第2のウィーンフィルタを含み、1つ又は複数の制御信号を調節することは、前記第1のウィーンフィルタへの第1の励起入力及び前記第2のウィーンフィルタへの第2の励起入力を個別に調節することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
1つ又は複数の制御信号を調節することは、前記第1の励起入力を前記第2の励起入力よりも高くするように構成して、前記有効屈曲点を前記第1のウィーンフィルタに向けて移動できるようにすることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数の制御信号を調節することは、前記第2の励起入力を前記第1の励起入力よりも高くするように構成して、前記有効屈曲点を前記第2のウィーンフィルタに向けて移動できるようにすることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記二次投影系の前記アライメント特徴は、二次電子ビーム像ビューアーによって生成された前記複数の二次電子ビームの1つ又は複数の像に基づいて特定される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2019年3月27日に出願された米国特許出願第62/824,954号の優先権を主張するものであり、この特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本明細書で提供される実施形態は、一般的に、マルチビーム検査装置に関し、より具体的には、調節可能ビームセパレータを含むマルチビーム検査装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体集積回路(IC)チップを製造する際、製造プロセスの間にウェーハ又はマスク上にパターン欠陥又は招かれざる粒子(残留物)が不可避的に発生し、それによって歩留まりが低下する。例えば、招かれざる粒子は、ICチップの一段とより高度化した性能要件を満たすために採用されてきた、重要フィーチャ寸法がより小さなパターンにとって、問題となり得る。
【0004】
[0004] 荷電粒子ビームを用いたパターン検査ツールを使用して、欠陥又は招かれざる粒子を検出してきた。これらのツールは通常、走査電子顕微鏡(SEM)を採用している。SEMでは、比較的高いエネルギーを有する一次電子のビームを減速させて、比較的に低いランディングエネルギーでサンプルに入射させ、集束させてサンプル上にプローブスポットを形成する。一次電子のこの集束したプローブスポットに起因して、表面から二次電子が生成される。二次電子には、一次電子とサンプルとの相互作用から生じる、後方散乱電子、二次電子、又はオージェ電子が含まれることがある。サンプル表面に渡ってプローブスポットをスキャンさせ二次電子を収集することにより、パターン検査ツールはサンプル表面の画像を取得することができる。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本明細書で提供される実施形態は、粒子ビーム検査装置について開示しており、より具体的には、調節可能ビームセパレータを含むマルチビーム検査装置について開示する。
【0006】
[0006] 実施形態によっては、調節可能ビームセパレータは、二次粒子ビームの経路を変更するように構成される。調節可能ビームセパレータは、第1のウィーンフィルタ(Wien filter)及び第2のウィーンフィルタを含む。両方のウィーンフィルタとも、一次光軸と位置合わせされている。第1のウィーンフィルタ及び第2のウィーンフィルタは、それぞれ第1の励起入力及び第2の励起入力を介して、個別に制御可能である。調節可能ビームセパレータは、第1の励起入力及び第2の励起入力に基づいて、調節可能ビームセパレータの有効屈曲点を一次光軸に沿って移動させるように構成される。
【0007】
[0007] 実施形態によっては、調節可能ビームセパレータを備えた一次投影系が開示される。一次投影系は、サンプル上に一次電子ビームを集束させるように構成された対物レンズを含み、一次電子ビームに応答してサンプルから二次電子ビームが放射される。一次投影系は、有効屈曲点において二次電子ビームの経路を二次投影系に向けて変更するように構成された調節可能ビームセパレータも含む。調節可能ビームセパレータは、一次光軸と位置合わせされた第1のウィーンフィルタ及び一次光軸と位置合わせされた第2のウィーンフィルタを含み、第1のウィーンフィルタは第1の励起入力を介して個別に制御可能であり、第2のウィーンフィルタは第2の励起入力を介して個別に制御可能である。調節可能ビームセパレータは、第1の励起入力及び第2の励起入力に基づいて、調節可能ビームセパレータの有効屈曲点を一次光軸に沿って移動させるように構成される。
【0008】
[0008] 本発明の他の利点が、添付の図面と併せて解釈される以下の説明から明らかになるであろう。添付の図面には、図示及び例示の目的で、本発明の特定の実施形態が記載されている。
【0009】
[0009] 本開示の上記の及び他の態様が、添付の図面と併せて解釈される例示的な実施形態の説明により、一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]本開示の実施形態と一致した、例示的な荷電粒子ビーム検査システムを示す概略図である。
図2】[0011]本開示の実施形態と一致した、図1の例示的な荷電粒子ビーム検査システムの一部である例示的なマルチビーム装置を示す概略図である。
図3A】[0012]二次粒子ビームのためのビームセパレータの例示的な構成を示すマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図3B】[0012]二次粒子ビームのためのビームセパレータの例示的な構成を示すマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図3C】[0012]二次粒子ビームのためのビームセパレータの例示的な構成を示すマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図4A】[0013]本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータの概略図である。
図4B】[0013]本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータの概略図である。
図4C】[0013]本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータの概略図である。
図5A】[0014]本開示の実施形態と一致した、図4A図4B、及び図4Cの調節可能ビームセパレータを備えたマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図5B】[0014]本開示の実施形態と一致した、図4A図4B、及び図4Cの調節可能ビームセパレータを備えたマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図6】[0015]従来のビームセパレータを備えた一次投影系の例示的な構成を示すマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図7】[0016]本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータを備えた一次投影系を示すマルチビーム電子ビームツールの概略図である。
図8】[0017]本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータを制御する例示的な方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例が、添付の図面に示されている。以下の説明は添付の図面を参照し、異なる図面中の同じ番号は、特に断りの無い限り、同じ又は同様の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明文中に記載される実装は、本発明と一致する全ての実装を表すものではない。その代わり、それらは、添付の特許請求の範囲に列挙されるような本発明に関連する態様と一致する装置及び方法の単なる例にすぎない。
【0012】
[0019] 電子デバイスは、基板と呼ばれるシリコン片上に形成された回路から構成される。多数の回路が、同じシリコン片上に一緒に形成されることがあり、集積回路又はICと呼ばれる。多数のより多くの回路を基板上に収めることができるように、これらの回路の寸法は劇的に減少された。例えば、スマートフォン内のICチップは、親指の爪程小さいことがありながら、20億個を超えるトランジスタを含むことができ、各トランジスタの寸法は、人間の髪の毛の寸法の1/1000よりも小さい。
【0013】
[0020] これらの極端に小さなICを製造することは、複雑で時間がかかり高価なプロセスであり、しばしば数百にのぼる個別ステップを含む。たった1つのステップでのエラーが、完成したICにおける欠陥をもたらし、そのICを使い物にならなくする可能性がある。従って、製造プロセスの1つのゴールは、そのような欠陥を回避して、プロセスにおいて作製される機能的ICの数を最大化すること、即ち、プロセスの全体的歩留まりを向上させることである。
【0014】
[0021] 歩留まりを向上させる1つの構成要素は、チップ作製プロセスを監視して、十分な数の機能的集積回路が製造されていることを確認することである。プロセスを監視する1つの方法は、チップ回路構造を形成する様々な段階において、チップ回路構造を検査することである。検査は、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して実行することができる。SEMを使用すると、これらの非常に小さな構造を撮像する、要するに、これらの構造の「写真」を撮ることができる。この画像を使用して、構造が適切に形成されたかどうか、及び構造が適切な位置に形成されたかどうかを判断することができる。構造に欠陥がある場合、欠陥が再び発生する可能性が低くなるようにプロセスを調節することができる。
【0015】
[0022] 高いスループットで検査するために、幾つかの検査システムは、一次電子の複数の集束ビームを使用する。複数の集束ビームがウェーハの異なる部分を同時に走査できるので、マルチビーム検査システムはシングルビーム検査システムよりも、はるかに高速でウェーハを検査することができる。しかしながら、従来のマルチビーム検査システムは、電子ビームが進行する経路に対する検査システムの異なる部分間のアライメント誤差に起因して、検査精度が低くなることがある。例えば、二次電子ビーム用の光学コンポーネントの全てが、場合によっては、人間の髪の毛の太さよりも小さな約100μmオフセット以内で、一次電子ビーム用の光学コンポーネントと適切に位置合わせされなくてはならず、さもなければ、二次電子ビームは、隣接する二次電子ビームの検出に干渉する可能性があり、検査像の品質は、収差及び誤差により低下する可能性がある。本開示の一態様は、改良された二次ビームセパレータを含み、この二次ビームセパレータは、調節可能であり、且つ、二次電子ビームのルーティング経路を調節することによりミスアライメントを補償する機能を提供する。
【0016】
[0023] 図面における構成要素の相対的な寸法は、理解しやすいように誇張されていることがある。以下の図面の説明では、同じ又は同様の参照番号は、同じ又は同様の構成要素又はエンティティを指しており、個々の実施形態に関して異なる点のみが説明されている。本明細書で使用する場合、特段の断りが無い限り、「又は」という用語は、実行不可能である場合を除いて、全ての可能な組み合わせを包含する。例えば、構成要素がA又はBを含むことがあると記載されている場合、特段の断りが無い限り又は実行不可能で無い限り、構成要素はA、又はB、又はA及びBを含むことがある。第2の例として、構成要素がA、B、又はCを含むことがあると記載されている場合、特段の断りが無い限り又は実行不可能で無い限り、構成要素はA、又はB、又はC、又はA及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA及びB及びCを含むことがある。
【0017】
[0024] ここで図1を参照すると、図1は本開示の実施形態と一致した、例示的な荷電粒子ビーム検査システム100を示す概略図である。図1に示すように、荷電粒子ビーム検査システム100は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20、電子ビームツール40、及び機器フロントエンドモジュール(EFEM)30を含む。電子ビームツール40は、メインチャンバ10内部に配置されている。説明及び図面は電子ビームに関係しているが、実施形態は、本開示を特定の荷電粒子に制限するために使用されるのではないことが、理解されよう。
【0018】
[0025] EFEM30は、第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bを含む。EFEM30は、追加の装填ポートを含むことがある。第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bは、例えば、検査されるべきウェーハ(例えば、半導体ウェーハ、又は他の材料で作られたウェーハ)又はサンプル(ウェーハ及びサンプルは、以降ではまとめて「ウェーハ」と呼ばれる)を収容するウェーハFOUP(front opening unified pod)を受け取ることがある。EFEM30内の1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)が、ウェーハを装填ロックチャンバ20に運ぶ。
【0019】
[0026] 装填ロックチャンバ20は、装填ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続されることがあり、このポンプシステムは、大気圧よりも低い第1の圧力に達するように、装填ロックチャンバ20内のガス分子を除去する。第1の圧力に達した後、1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)がウェーハを装填ロックチャンバ20からメインチャンバ10に運ぶ。メインチャンバ10は、メインチャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続され、このポンプシステムは、第1の圧力よりも低い第2の圧力に達するように、メインチャンバ10内のガス分子を除去する。第2の圧力に達した後、ウェーハは電子ビームツール40による検査にかけられる。実施形態によっては、電子ビームツール40は、シングルビーム検査ツールを含むことがある。他の実施形態では、電子ビームツール40は、マルチビーム検査ツールを含むことがある。
【0020】
[0027] コントローラ50は、電子ビームツール40に電子的に接続されている。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査システム100の様々な制御を行うように構成されたコンピュータであり得る。コントローラ50は、様々な信号及び画像の処理機能を実行するように構成された処理回路も含むことがある。図1では、コントローラ50は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20、及びEFEM30を含む構造の外部にあるものとして示されているが、コントローラ50はこの構造の一部とすることもできることが理解されよう。
【0021】
[0028] 本開示は、電子ビーム検査ツールを収容するメインチャンバ10の例を提供しているが、最も広い意味での本開示の態様は、電子ビーム検査ツールを収容するチャンバに限定されないことに、留意されたい。むしろ、前述の原理は、第2の圧力下で動作する他のツールにも適用され得ることが理解されよう。
【0022】
[0029] ここで図2を参照すると、図2は、本開示の実施形態と一致した、図1の例示的な荷電粒子ビーム検査システム100の一部であるマルチビーム検査ツールを含む例示的な電子ビームツール40を示す概略図である。マルチビーム電子ビームツール40(本明細書では装置40とも呼ばれる)は、電子源201、銃アパーチャプレート271、集光レンズ210、放射源変換ユニット220、一次投影系230、電動ステージ209、及び検査されるべきサンプル208(例えば、ウェーハ又はフォトマスク)を保持するために電動ステージ209によって支持されるサンプルホルダー207を含む。マルチビーム電子ビームツール40は更に、二次投影系250及び電子検出デバイス240を含むことがある。一次投影系230は、対物レンズ231を含むことがある。ビームセパレータ233及び偏向走査ユニット232が、一次投影系230の内部に配置されることがある。電子検出デバイス240は、複数の検出素子241、242、及び243を含むことがある。
【0023】
[0030] 電子源201、銃アパーチャプレート271、集光レンズ210、放射源変換ユニット220、ビームセパレータ233、偏向走査ユニット232、及び一次投影系230は、装置40の一次光軸204と位置合わせされていることがある。二次投影系250及び電子検出デバイス240は、装置40の二次光軸251と位置合わせされていることがある。
【0024】
[0031] 電子源201は、カソード(図示せず)及び抽出器又はアノード(図示せず)を含むことがあり、動作中、電子源201は、カソードから一次電子を放出するように構成され、この一次電子は抽出器及び/又はアノードによって抽出されるか又は加速されて、一次電子ビーム202を形成し、これは、(仮想の又は現実の)一次ビームクロスオーバー203を形成する。一次電子ビーム202は、一次ビームクロスオーバー203から放出されるものとして視覚化されることがある。
【0025】
[0032] 放射源変換ユニット220は、像形成素子アレイ(図示せず)、収差補償器アレイ(図示せず)、ビーム制限アパーチャアレイ(図示せず)、及びプレベンディングマイクロ偏向器アレイ(図示せず)を含むことがある。実施形態によっては、プレベンディングマイクロ偏向器アレイは、一次電子ビーム202の複数の一次ビームレット211、212、213を、ビーム制限アパーチャアレイ、像形成素子アレイ、及び収差補償器アレイに垂直に入るように偏向させる。実施形態によっては、集光レンズ210は、一次電子ビーム202を集束させて平行ビームにし、放射源変換ユニット220に垂直に入射するように、設計される。像形成素子アレイは、複数のマイクロ偏向器又はマイクロレンズを含んで、一次電子ビーム202の複数の一次ビームレット211、212、213に影響を与え、且つ、一次ビームレット211、212、及び213のそれぞれに対して1つずつ、一次ビームクロスオーバー203の複数の(仮想の又は現実の)平行像を形成することがある。実施形態によっては、収差補償器アレイは、像面湾曲補償器アレイ(図示せず)及び非点収差補償器アレイ(図示せず)を含むことがある。フィールド湾曲補償器アレイは、複数のマイクロレンズを含んで、一次ビームレット211、212、及び213のフィールド湾曲収差を補償することがある。非点収差補償器アレイは、複数のマイクロ非点収差補正器を含んで、一次ビームレット211、212、及び213の非点収差を補償することがある。ビーム制限開口部アレイは、個々の一次ビームレット211、212、及び213の直径を制限するように構成されることがある。図2は、例として3つの一次ビームレット211、212、及び213を示しており、放射源変換ユニット220は、任意の数の一次ビームレットを形成するように構成されてもよいことが理解されよう。コントローラ50は、放射源変換ユニット220、電子検出デバイス240、一次投影系230、又は電動ステージ209などの、図1の荷電粒子ビーム検査システム100の様々な部分に接続されることがある。実施形態によっては、以下で更に詳細に説明するように、コントローラ50は、様々な画像及び信号の処理機能を実行することがある。コントローラ50は、様々な制御信号を生成して、荷電粒子ビーム検査システムの動作を制御することもある。
【0026】
[0033] 集光レンズ210は、一次電子ビーム202を集束させるように構成される。集光レンズ210は更に、集光レンズ210の集束力を変化させることにより、放射源変換ユニット220の下流の一次ビームレット211、212、及び213の電流を調節するように構成されることがある。或いは、個々の一次ビームレットに対応するビーム制限開口部アレイ内部のビーム制限開口部の半径のサイズを変えることによって、電流を変化させることがある。電流は、ビーム制限開口部の半径のサイズ及び集光レンズ210の集束力の両方を変えることによって、変化させることがある。集光レンズ210は、第1の主平面の位置が移動可能であるように構成され得る調節可能な集光レンズであり得る。調節可能な集光レンズは磁気性であるように構成されることがあり、これにより、オフアクシスのビームレット212及び213が回転角度を有して放射源変換ユニット220に入射することになり得る。回転角度は、集束力、又は調節可能集光レンズの第1の主平面の位置と共に変化する。従って、集光レンズ210は、集光レンズ210の集束力が変化している間に、回転角度を不変に保つように構成されることがある、回転防止集光レンズであり得る。実施形態によっては、集光レンズ210は、調節可能な回転防止集光レンズであることがあり、このレンズでは、集束力及び第1の主平面の位置が変化したときに回転角度は変化しない。
【0027】
[0034] 対物レンズ231は、検査のために、ビームレット211、212、及び213をサンプル208上に集束させるように構成されることがあり、また、現在の実施形態では、サンプル208の表面上に3つのプローブスポット221、222、及び223を形成することがある。動作時には、偏向走査ユニット232は、一次ビームレット211、212、及び213を偏向させて、サンプル208の表面のセクション内の個々の走査エリア全体に渡ってプローブスポット221、222、及び223を走査するように構成される。銃アパーチャプレート271は、動作時に、一次電子ビーム202の周辺電子を遮断して、クーロン効果を低減するように構成される。クーロン効果は、一次ビームレット211、212、213のプローブスポット221、222、及び223の各々のサイズを拡大し、従って検査解像度を低下させることがある。
【0028】
[0035] サンプル208上への一次ビームレット211、212、及び213又はプローブスポット221、222、及び223の入射に応答して、サンプル208から電子が出現し、3つの二次電子ビーム261、262、及び263が生成される。二次電子ビーム261、262、及び263の各々は、通常、二次電子(50eV以下の電子エネルギーを有する)及び後方散乱電子(50eVと一次ビームレット211、212、及び213のランディングエネルギーとの間の電子エネルギーを有する)を含む。
【0029】
[0036] ビームセパレータ233は、静電双極子場を生成する静電偏向器及び磁気双極子場を生成する磁気偏向器を含むウィーンフィルタ(図示せず)であり得る。動作時には、ビームセパレータ233は、静電偏向器を使用して静電双極子場を生成して、一次ビームレット211、212、及び213の個々の電子に静電力を作用させるように構成されることがある。ビームセパレータ233は、磁気双極子場を生成して電子に磁力を作用させるように構成されることもある。静電力は、磁力と大きさは等しいが方向が逆になる。従って、一次ビームレット211、212、及び213は、少なくとも実質的にゼロの偏向角で、ビームセパレータ233を少なくとも実質的に真っ直ぐに通過することがある。
【0030】
[0037] しかしながら、二次電子ビーム261、262、及び263は、二次投影系250に向けて偏向されることがあり、この二次投影系250は、その後、二次電子ビーム261、262、及び263を電子検出デバイス240の検出素子241、242、及び243に集束させる。検出素子241、242、及び243は、対応する二次電子ビーム261、262、及び263を検出し、例えば、サンプル208の対応する走査エリアの像を構築するために、コントローラ50又は信号処理システム(図示せず)に送信される対応する信号を生成するように構成される。
【0031】
[0038] 実施形態によっては、検出素子241、242、及び243は、対応する二次電子ビーム261、262、及び263をそれぞれ検出し、画像処理システム(例えば、コントローラ50)に向けて対応する強度信号出力(図示せず)を生成する。実施形態によっては、各検出素子241、242、及び243は、1つ又は複数のピクセルを含むことがある。検出素子の強度信号出力は、検出素子内の全てのピクセルによって生成される信号の合計であり得る。
【0032】
[0039] 実施形態によっては、コントローラ50は、画像取得器(図示せず)及びストレージ(図示せず)を含む画像処理システムを含むことがある。画像取得器は、1つ又は複数のプロセッサを含むことがある。例えば、画像取得器は、コンピュータ、サーバ、メインフレームホスト、端末、個人用コンピュータ、任意の種類の携帯コンピュータ装置など、又はそれらの組み合わせを含むことがある。画像取得器は、媒体、中でもとりわけ導電体、光ファイバーケーブル、携帯型記憶媒体、IR、Bluetooth、インターネット、無線ネットワーク、無線通信、又はそれらの組み合わせなどを介して、装置40の電子検出デバイス240に通信可能に結合されることがある。実施形態によっては、画像取得器は、電子検出デバイス240から信号を受け取ることがあり、画像を構築することがある。画像取得器は、このようにサンプル208の画像を取得することができる。画像取得器は、輪郭線を生成すること、インジケータを取得画像に重ね合わせることなど、様々な後処理機能も実施することがある。画像取得器は、取得画像の輝度及びコントラスト等の調節を実施するように構成されることがある。実施形態によっては、ストレージは、ハードディスク、フラッシュドライブ、クラウドストレージ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他の種類のコンピュータ可読メモリなどの記憶媒体であり得る。ストレージは、画像取得器に結合されることがあり、スキャンされた生の画像データを元画像として保存し、且つ処理後の画像を保存するために使用されることがある。
【0033】
[0040] 実施形態によっては、画像取得器は、電子検出デバイス240から受け取った撮像信号に基づいて、サンプルの1つ又は複数の画像を取得することがある。撮像信号は、荷電粒子撮像を実施するためのスキャン動作に対応していることがある。取得画像は、複数の撮像エリアを含む単一の画像であり得る。この単一の画像は、ストレージ内に記憶されることがある。この単一の画像は、複数の領域に分割することができる元画像であり得る。これらの領域の各々は、サンプル208のフィーチャを包含する1つの撮像エリアを含むことがある。取得画像は、時系列に複数回サンプリングされた、サンプル208の単一の撮像エリアの複数の画像を含むことがある。この複数の画像は、ストレージ内に記憶されることがある。実施形態によっては、コントローラ50は、サンプル208の同じ場所の複数の画像を用いて画像処理ステップを実行するように構成されることがある。
【0034】
[0041] 実施形態によっては、コントローラ50は、測定回路(例えば、アナログ/デジタル変換器)を含んで、検出された二次電子の分布を取得することがある。検出時間ウィンドウ中に収集された電子の分布データを、ウェーハ表面に入射する一次ビームレット211、212、213のそれぞれの対応するスキャンパスデータと組み合わせて使用して、検査中のウェーハ構造の画像を再構成することができる。再構成された画像を使用して、サンプル208の内部構造又は外部構造の様々な特徴を明らかにすることができ、それによって、再構成された画像を使用して、ウェーハ内に存在する可能性がある欠陥を明らかにすることができる。
【0035】
[0042] 実施形態によっては、コントローラ50は、サンプル208の検査中にサンプル208を移動させるように、電動ステージ209を制御することがある。実施形態によっては、コントローラ50は、電動ステージ209がある方向に連続的に一定の速度でサンプル208を移動できるようにすることがある。他の実施形態では、コントローラ50は、電動ステージ209が、スキャンプロセスのステップに応じて、経時的にサンプル208の移動速度を変えられるようにすることがある。実施形態によっては、コントローラ50は、二次電子ビーム261、262、及び263の像に基づいて、一次投影系230又は二次投影系250の構成を調節することがある。
【0036】
[0043] 図2は、電子ビームツール40が3つの一次電子ビームを使用することを示しているが、電子ビームツール40は、2つ以上の一次電子ビームを使用してもよいことが理解されよう。本開示は、装置40で使用される一次電子ビームの数を制限するものではない。
【0037】
[0044] ここで図3Aを参照すると、図3Aは、二次粒子ビーム用のビームセパレータ333の例示的な構成を示す、マルチビーム電子ビームツール300Aの概略図である。マルチビーム電子ビームツール300Aは、マルチビーム装置(図1のマルチビーム装置100など)の一部であり得る。マルチビーム電子ビームツールでは、一次電子ビーム(例えば、一次電子ビーム311)の入射に応答して、サンプル308から、複数の二次電子ビーム(例えば、二次電子ビーム361)が生成される。二次電子ビーム361は、ビームセパレータ333によって二次投影系350に向けて偏向され、この二次投影系350は、二次電子ビーム361を電子検出デバイス340に集束させる。ビームセパレータ333は、一次投影系330の一部であり得る。
【0038】
[0045] 実施形態によっては、ビームセパレータ333は、静電双極子場を生成する静電偏向器及び磁気双極子場を生成する磁気偏向器を含むウィーンフィルタ(図示せず)であり得る。動作時には、ビームセパレータ333は、磁気双極子場に直交する静電双極子場を生成するように構成されることがあり、その結果、一次光軸304に沿って下向きに進行している一次電子に関して、静電双極子場によって誘起される静電力は、磁気双極子場によって誘起される磁力に対して大きさは等しいが向きが逆になる。従って、一次電子ビーム311は、少なくとも実質的にゼロの偏向角で、ビームセパレータ333を少なくとも実質的に真っ直ぐに通過することができる。他方、一次光軸304に沿って上向きに進行している二次電子に関しては、静電力及び磁力は同じ方向に作用し、その結果、二次ビーム361は屈曲点336で二次投影系350に向けて偏向される。
【0039】
[0046] 実施形態によっては、二次投影系350は、主ズームレンズ352、第2のズームレンズ353、及び投影レンズ354などの1つ又は複数のレンズを含むことがあり、これらのレンズは、二次電子ビーム361を電子検出デバイス340に集束させるように構成される。二次投影系350は、1つ又は複数の偏向器、355、356、及び357も含んで、二次電子ビーム361を偏向させることがある。図3Aに示すように、ビームセパレータ333によって偏向された後、二次電子ビーム361は、主ズームレンズ352の中心を通過する。実施形態によっては、主ズームレンズ352は、二次投影系における主要なレンズであり、強い集束力を有することがあり、その結果、主ズームレンズ352は、二次投影系350の光学性能を左右することがある。従って、適切に位置合わせされた主ズームレンズ352は、より優れた性能をもたらす。
【0040】
[0047] 図3Aは例示を簡単にするために、1つの一次電子ビーム311及び1つの二次電子ビーム361のみを示しているが、マルチビーム電子ビームツール300Aは、任意の数の電子ビームを使用できることを理解されたい。
【0041】
[0048] ここで図3Bを参照すると、図3Bは、二次投影系350のミスアライメントの影響を示す、マルチビーム電子ビームツール300Bの概略図である。マルチビーム電子ビームツール300Bは、マルチビーム装置(図1のマルチビーム装置100など)の一部であり得る。ミスアライメントは、一次投影系330及び二次投影系350の様々なコンポーネントの製造誤差及び機械加工誤差によって引き起こされることがある。更に、一次投影系330及び二次投影系350内に組み込まれた非常に多くのコンポーネントが存在するので、各コンポーネントが、組み込み後に許容範囲内に較正されたとしても、累積したオフセットにより、一次投影系330と二次投影系350との間で、相当なミスアライメントが生じることがある。
【0042】
[0049] 二次投影系350が、一次投影系330と適切に位置合わせされていない場合、二次投影系350内のレンズ(例えば、主ズームレンズ352、第2のズームレンズ353、及び投影レンズ354)及び偏向モジュール(例えば、偏向器355、356、及び357)が、二次ビーム361の形状、強度、及びレイアウトの変形を引き起こすことがある収差を持ち込むことがある。この変形により、二次電子収集の効率が低下し、クロストークのレベルが増加し、それによって、検出デバイス340によって生成される情報の品質が低下することがある。
【0043】
[0050] 例えば、図3Bは、マルチビーム電子ビームツール300Bを示しており、このマルチビーム電子ビームツール300Bでは、主ズームレンズ352が適切に位置合わせされておらず、それによって、実際の屈曲点337(これは、ビームセパレータ333の位置によって決まる)と所望の屈曲点338(一次光軸304が二次光軸351と交わる点)との間で不一致が生じている。実施形態によっては、所望の屈曲点338は、二次投影系350の全体的なアライメント特徴によって決定されることがある。実施形態によっては、所望の屈曲点338は、主ズームレンズ352のアライメント特徴によって決まることがある、というのも、(大きな集束力を有する)主ズームレンズ352は、二次投影系350の光学性能の支配的要素であり得るからである。図3Bでは、二次投影系350がビームセパレータ333の中心と適切に位置合わせされていないので、所望の屈曲点338は、実際の屈曲点337よりも低くなっている。上記で説明したように、この不一致は、二次ビーム361の形状、強度、及びレイアウトの変形を引き起こす可能性がある収差を持ち込む場合があり、これにより、検出デバイス340によって収集される情報の品質が低下することがある。
【0044】
[0051] 図3Bは例示を簡単にするために、1つの一次電子ビーム311及び1つの二次電子ビーム361のみを示しているが、マルチビーム電子ビームツール300Bは、任意の数の電子ビームを使用できることを理解されたい。
【0045】
[0052] ここで図3Cを参照すると、図3Cは、マルチビーム電子ビームツール300Cの概略図であり、このツールには、図3Bに関して前述したミスアライメント問題を緩和するために、プレレンズ偏向器390が導入されている。マルチビーム電子ビームツール300Cは、マルチビーム装置(図1のマルチビーム装置100など)の一部であり得る。実施形態によっては、プレレンズ偏向器390を二次電子ビーム361の経路に追加して、ミスアライメントの影響を補償することがある。例えば、プレレンズ偏向器390をビームセパレータ333と主ズームレンズ352との間に配置することがあり、その結果、プレレンズ偏向器390は、二次電子ビーム361を曲げて、主ズームレンズ352に垂直に入るようにすることができる。しかしながら、主ズームレンズ352の前にプレレンズ偏向器390を追加するには、主ズームレンズ352を、サンプル308からより遠くに離れて配置する必要があることがある。サンプル308と主ズームレンズ352との間のこの距離の増加は、二次投影系350の全体的な光学性能を著しく低下させることがある。マルチビーム装置では、サンプル308と主ズームレンズ352との間の距離が増加すると、二次電子ビームの収差及び誤差が非線形に(例えば、指数関数的に)増加する。従って、サンプル308と主ズームレンズ352との間の距離を増加させることなく、ミスアライメントの問題に対処する、別の方式を模索することが望ましい。
【0046】
[0053] 図3Cは例示を簡単にするために、1つの一次電子ビーム311及び1つの二次電子ビーム361のみを示しているが、マルチビーム電子ビームツール300Cは、任意の数の電子ビームを使用できることを理解されたい。
【0047】
[0054] ここで図4A図4B、及び図4Cを参照すると、これらの図は、本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータ433の動作を示す概略図である。実施形態によっては、ビームセパレータは、2つ以上のウィーンフィルタを用いて実装されることがある。個々のウィーンフィルタのそれぞれの偏向力を調節することにより、ビームセパレータの有効屈曲点を光軸404に沿って上下に移動させることができる。有効屈曲点は、偏向された二次ビーム451の投影が、一次光軸404と一致する点である。
【0048】
[0055] 実施形態によっては、調節可能ビームセパレータ433は上側ウィーンフィルタ433a及び下側ウィーンフィルタ433bを含むことがあり、ウィーンフィルタ433aと433bは両方とも、別々の励起入力を受け取ることができる。励起入力を個別に調節することにより、調節可能ビームセパレータ433の有効屈曲点を光軸404に沿って上下に移動させることができる。図4A図4B、及び図4Cは、例示を簡単にするために1つの二次電子ビーム461のみを示しているが、調節可能ビームセパレータ433は、任意の数の二次電子ビームで機能することができることが理解されよう。
【0049】
[0056] 例えば、図4Aに示すように、所望の屈曲点437が調節可能ビームセパレータ433の中心面436に近い場合、上側ウィーンフィルタ433a及び下側ウィーンフィルタ433bは、実質的に同じ量だけ二次電子ビーム461を偏向させるように構成されることがあり、その結果、調節可能ビームセパレータ433の有効屈曲点は、所望の屈曲点437と一致する。
【0050】
[0057] 図4Bに示すように、所望の屈曲点438が中心面436の上方に存在する場合、調節可能ビームセパレータ433は、有効屈曲点が所望の屈曲点438に向かって上方に移動することができるように、構成されることがある。これは、調節可能ビームセパレータ433の有効屈曲点が所望の屈曲点438と一致するように、上側ウィーンフィルタ433aへの励起入力を相対的に増加させながら、下側ウィーンフィルタ433bへの励起入力を相対的に減少させることにより、下側ウィーンフィルタ433bよりもより大きく偏向させるように上側ウィーンフィルタ433aを構成することにより、実現することができる。
【0051】
[0058] 他方、図4Cに示すように、所望の屈曲点439が中心面436の下方に存在する場合、調節可能ビームセパレータ433は、有効屈曲点が所望の屈曲点439に向かって下方に移動することができるように、構成されることがある。これは、調節可能ビームセパレータ433の有効屈曲点が所望の屈曲点439と一致するように、上側ウィーンフィルタ433aへの励起入力を相対的に減少させながら、下側ウィーンフィルタ433bへの励起入力を相対的に増加させることにより、下側ウィーンフィルタ433bよりもより小さく偏向させるように上側ウィーンフィルタ433aを構成することにより、実現することができる。
【0052】
[0059] 実施形態によっては、調節可能ビームセパレータ433の全体的な高さ(即ち、上側ウィーンフィルタ433aの高さと下側ウィーンフィルタ433bの高さとの合計)は、単一のウィーンフィルタを備えた従来のビームセパレータ(図3Aのビームセパレータ333など)の高さと実質的に同じであり得る。前の章で説明したように、サンプル(図3Aのサンプル308など)と主ズームレンズ(図3Aの主ズームレンズ352など)との間で短い距離を維持することが望まれる、というのも、二次電子ビームの収差及び誤差は、サンプルと主ズームレンズとの間の距離が増加するにつれて、指数関数的に増加するからである。実施形態によっては、調節可能ビームセパレータ433は、従来のビームセパレータと同じ位強力に電子を偏向させることができながら、更に、調節可能ビームセパレータ433は、屈曲点の調節可能性を提供する。例えば、各ウィーンフィルタ(例えば、上側ウィーンフィルタ433a及び下側ウィーンフィルタ433b)が従来のワンピースのウィーンフィルタよりも小さく、従ってより小さな偏向力しか提供できないとしても、上側ウィーンフィルタ433aと下側ウィーンフィルタ433bの合計偏向力は、従来のウィーンフィルタの偏向力と実質的に同じであり得る。調節可能ビームセパレータ433は、従来のビームセパレータ(図3Aのビームセパレータ333など)と同様の力を電子ビームに加え、電子ビームを同等の量だけ偏向させることができる。
【0053】
[0060] ここで図5A及び図5Bを参照すると、これらの図は、本開示の実施形態と一致した、図4A図4B、及び図4Cの調節可能ビームセパレータを備えたマルチビーム電子ビームツール(例えば、500A及び500B)の概略図である。マルチビーム電子ビームツール500A又は500Bは、マルチビーム装置(図1のマルチビーム装置100など)の一部であり得る。
【0054】
[0061] 実施形態によっては、マルチビーム電子ビームツール500A及び500Bは、一次投影系530及び二次投影系550を含むことがある。一次投影系は、調節可能ビームセパレータ533を含むことがある。二次投影系550は、主ズームレンズ552、第2のズームレンズ553、及び投影レンズ554などの1つ又は複数のレンズを含むことがあり、これらのレンズは、二次電子ビーム561を電子検出デバイス540に集束させるように構成される。二次投影系550は、1つ又は複数の偏向器、555、556、及び557も含んで、二次電子ビーム561を偏向させることがある。
【0055】
[0062] 図5Aの所望の屈曲点538は、調節可能ビームセパレータ533の中心面536の上方にある、というのも、二次投影系550が、調節可能ビームセパレータ533の位置と適切に位置合わせされていないからである。そのような場合、図4Bに関して前述したように、調節可能ビームセパレータ533は、上側ウィーンフィルタ533aを下側ウィーンフィルタ533bよりも大きく偏向させるように構成することにより、有効屈曲点を、所望の屈曲点538に向けて(矢印598によって示すように)上方に移動させることができるように、構成されることがある。これは、上側ウィーンフィルタ533aへの励起入力を相対的に増加させながら、下側ウィーンフィルタ533bへの励起入力を相対的に減少させることにより、実施することができる。
【0056】
[0063] 図5Bでは、対照的に、所望の屈曲点537は、二次投影系550のミスアライメントに起因して中心面536の下にある。そのような場合、図4Cに関して前述したように、調節可能ビームセパレータ533は、上側ウィーンフィルタ533aを下側ウィーンフィルタ533bよりも小さく偏向させるように構成することにより、有効屈曲点を、所望の屈曲点537に向けて(矢印597によって示すように)下方に移動させることができるように、構成されることがある。これは、上側ウィーンフィルタ533aへの励起入力を相対的に減少させながら、下側ウィーンフィルタ533bへの励起入力を相対的に増加させることにより、実施することができる。
【0057】
[0064] 実施形態によっては、上側ウィーンフィルタ533a及び下側ウィーンフィルタ533bは、コントローラ(図2のコントローラ50など)によって個別に制御することができる。例えば、コントローラは、第1の励起制御信号を上側ウィーンフィルタ533aに提供し、第2の励起制御信号を下側ウィーンフィルタ533bに提供することができる。励起制御信号に基づいて、各ウィーンフィルタは、調節可能ビームセパレータ533の有効屈曲点を呼応して上又は下に移動させることができるように、偏向の量を増加又は減少させることができる。
【0058】
[0065] 実施形態によっては、コントローラは、有効屈曲の調節に関係した1つ又は複数の入力を受け取ることがあり、ここで、コントローラは、その1つ又は複数の入力を処理し、ミスアライメントの量を検出し、どの方向にどれ位屈曲点を移動させる必要があるのかを決定し、個々の励起制御信号をウィーンフィルタに提供することがある。この1つ又は複数の入力は、調節可能ビームセパレータ533に対する二次投影系550のアライメント特徴に関係していることがある。実施形態によっては、1つ又は複数の入力は、マルチビーム電子ビームツール500A及び500Bのオペレータによって入力されることがある。実施形態によっては、1つ又は複数の入力は、マルチビーム装置内の電子光学素子(レンズ、ビームセパレータ、偏向器、及び検出器など)がどれ位適切に位置合わせされているかを判断するために使用することができる、二次電子ビーム像ビューアーによって、生成されることがある。二次電子ビーム像ビューアーの例が、米国特許出願第62/748,251号に見られ、この特許出願は、その全体が参照により組み込まれる。
【0059】
[0066] 実施形態によっては、調節可能ビームセパレータ533は、マルチビーム電子ビームツールのオペレータによって、手動で制御されることがある。例えば、制御インターフェース(例えば、ノブ、スイッチ、コンピュータインターフェース、等)を介して、オペレータは有効屈曲点を徐々に上下に調節して、最適な位置を見つけることができる。実施形態によっては、オペレータの制御は、フィードバック機構によって強化されることがある。例えば、オペレータは、二次電子ビーム像ビューアーによって生成された二次ビーム像を監視しながら、有効屈曲点の位置を最適な位置に調節することができる。
【0060】
[0067] 実施形態によっては、調節可能ビームセパレータ533は、コントローラ(図2のコントローラ50など)によって自動的に制御されることがある。例えば、二次電子ビーム像ビューアーによって生成された情報がコントローラに提供されることがあり、ここで、コントローラは、二次電子ビーム像ビューアーからの情報を処理し、ミスアライメントの量を検出し、どの方向にどれ位屈曲点を移動させる必要があるかを決定し、個々の励起制御信号をウィーンフィルタに提供することがある。
【0061】
[0068] 図5A及び図5Bは例示を簡単にするために、1つの一次電子ビーム511及び1つの二次電子ビーム561のみを示しているが、マルチビーム電子ビームツール500A及び500Bは、任意の数の電子ビームを使用できることを理解されたい。
【0062】
[0069] ここで図6を参照すると、図6は、ビームセパレータ633を備えた一次投影系630の例示的な構成を示す、マルチビーム電子ビームツール600の概略図である。マルチビーム電子ビームツール600は、マルチビーム装置(図1のマルチビーム装置100など)の一部であり得る。実施形態によっては、マルチビーム電子ビームツール600は、一次投影系630及び二次投影系650を含むことがある。二次投影系650は、主ズームレンズ652、第2のズームレンズ653、及び投影レンズ654などの1つ又は複数のレンズを含むことがあり、これらのレンズは、二次電子ビーム661を電子検出デバイス640に集束させるように構成される。二次投影系650は、1つ又は複数の偏向器、655、656、及び657も含んで、二次電子ビーム661を偏向させることがある。一次投影系は、ビームセパレータ633と、一次電子ビーム611を偏向させてサンプル608の表面を走査する1つ又は複数の偏向器(例えば、No.1偏向器691及びプレ対物レンズ偏向器692)と、を含むことがある。
【0063】
[0070] No.1偏向器691及びプレ対物レンズ偏向器692は、電磁場を生成して、走査のために一次電子ビーム611を偏向させることができる。更に、図3Aに関して前述したように、ビームセパレータ633は、静電偏向器(静電双極子場を生成する)と、磁気レンズ(静電双極子場に直交する磁気双極子場を生成する)とを含むウィーンフィルタを含むことがある。従って、一次投影系630によって通過中の電子(一次又は二次)に加えられる力の合計(静電力及び磁気力を含む)は、以下の式(1)のように表すことができる:
合計630=FNo.1偏向器を走査する+Fプレ対物レンズ偏向器を走査する+Fウィーンフィルタ静電気の+Fウィーンフィルタ磁気の・・・・・(1)
【0064】
[0071] 図3Bに関して前述したように、サンプル608と主ズームレンズ652との間の距離を低減することが望ましい、というのも、二次電子ビーム661の収差及び誤差は、この距離が増加するにつれて、指数関数的に増加するからである。しかしながら、この距離を低減する際の制限要因の1つは、No.1偏向器691の存在であり、この偏向器は、通常、ビームセパレータ633と主ズームレンズ652との間に配置される。実施形態によっては、ビームセパレータ633を調節可能ビームセパレータ(図5A及び図5Bの調節可能ビームセパレータ533など)と置き換えると、図7に示すように、サンプル608と主ズームレンズ652との間の距離を更に低減する機会がもたらされることがある。
【0065】
[0072] ここで図7を参照すると、図7は、本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータ733を備えた一次投影系730を示すマルチビーム電子ビームツール700の概略図である。マルチビーム電子ビームツール700は、マルチビーム装置(図1のマルチビーム装置100など)の一部であり得る。マルチビーム電子ビームツール700も、図6の電子ビームツール600と同様の、一次投影系730及び二次投影系750を含むことがある。しかしながら、実施形態によっては、一次投影系730は、図6のビームセパレータ633などの従来のワンピースのビームセパレータの代わりに、調節可能ビームセパレータ733を含むことがある。
【0066】
[0073] 調節可能ビームセパレータ733を使用すると、従来のシステム(図6の電子ビームツール600など)に勝る幾つかの利点がもたらされることがある。第一に、前の章で説明したように、調節可能ビームセパレータ733は、二次投影系750のミスアライメントによって引き起こされる収差を低減する能力を提供し、これは、一次光軸704に沿って二次電子ビーム761の有効屈曲点を上又は下に移動させて、それによって、二次電子ビームが主ズームレンズ752の中心の実質的に近くを移動できるようにすることにより、実現される。
【0067】
[0074] 第二に、実施形態によっては、No.1偏向器(図6のNo.1偏向器691など)を省くことができ、その結果、主ズームレンズ752をサンプル708のより近くに配置することができ、それによって、二次投影系750の光学性能を更に改善することができる。実施形態によっては、省かれたNo.1偏向器の代わりに、ウィーンフィルタ(例えば、上側ウィーンフィルタ733a又は下側ウィーンフィルタ733b)内部の静電偏向器が、一次電子ビーム走査のためのNo.1偏向器として機能することもある。そのような実施形態では、No.1偏向器に適用される走査制御入力は、ウィーンフィルタの静電偏向器への励起入力を上書きすることがある。
【0068】
[0075] 上記の式(1)と同様に、一次投影系によって通過中の電子(一次又は二次)に加わる力の合計は、以下の式(2)に基づいて表されることがある:
合計730=Fプレ対物レンズ偏向器+F上書きされたウィーンフィルタ静電気の+Fウィーンフィルタ磁気の・・・・・(2)
ウィーンフィルタ内部の静電偏向器によって生成される静電力は、元のウィーンフィルタ機能の力と(以下の式(3)に示すような)上書きされた走査機能の力との合計になるので、一次投影系730による力の合計(F合計730)は、一次投影系630による力の合計(F合計630)と実質的に同じになる。
上書きされたウィーンフィルタ静電気の=Fウィーンフィルタ静電気の+FNo.1偏向器を走査する・・・・・(3)
【0069】
[0076] 実施形態によっては、複数のウィーンフィルタに走査制御入力を分配することによって、2つ以上のウィーンフィルタ(例えば、上側ウィーンフィルタ733aと下側ウィーンフィルタ733bとの両方)が上書きされて、No.1偏向器として機能することができる。更に、実施形態によっては、サンプル708と主ズームレンズ752との間の距離を更に低減するために、プレ対物レンズ偏向器792も省かれることがある。そのような実施形態では、省かれたプレ対物レンズ偏向器792の走査機能は、No.1偏向器の上書きと同様に、1つ又は複数のウィーンフィルタを上書きすることがある。例えば、実施形態によっては、上側ウィーンフィルタ733aはNo.1偏向器(図6のNo.1偏向器691など)として機能することがあり、下側ウィーンフィルタ733bはプレ対物レンズ偏向器792として機能することがある。
【0070】
[0077] ここで図8を参照すると、図8は、本開示の実施形態と一致した、調節可能ビームセパレータを制御する例示的な方法を示す流れ図である。
【0071】
[0078] 実施形態によっては、マルチビーム電子ビームツール(図5Aのマルチビーム電子ビームツール500Aなど)は、一次投影系(図5Aの一次投影系530など)及び二次投影系(図5Aの二次投影系550など)を含むことがある。二次投影系は、主ズームレンズ、第2のズームレンズ、及び投影レンズ(それぞれ、図5Aの552、553、及び554など)などの1つ又は複数のレンズを含むことがあり、これらのレンズは、二次電子ビーム(図5Aの二次電子ビーム561など)を電子検出デバイス(図5Aの電子ビームデバイス540など)に集束させるように構成される。二次投影系は、1つ又は複数の偏向器(図5Aの偏向器555、556、及び557など)も含んで、二次電子ビームを偏向させることがある。一次投影系は、調節可能ビームセパレータ(図5Aの調節可能ビームセパレータ533など)を更に含むことがある。調節可能ビームセパレータは、複数のウィーンフィルタ、例えば、上側ウィーンフィルタ(図5Aの533aなど)及び下側ウィーンフィルタ(図5Aの533bなど)、を含むことがある。
【0072】
[0079] 二次投影系が一次投影系と適切に位置合わせされていない場合、二次投影系の光学コンポーネントは、二次ビーム像の形状、強度、及びレイアウトの変形を引き起こすことがある収差を持ち込むことがある。この変形により、二次電子収集の効率が低下し、クロストークのレベルが増加し、それによって、電子検出デバイスによって生成される情報の品質が低下することがある。そのようなシナリオでは、図5A及び図5Bに関して前述したように、収差及び誤差を低減するために、調節可能ビームセパレータは、ビームセパレータの有効屈曲点を所望の屈曲点に向けて上方又は下方に移動させることができるように構成されることがあり、その結果、二次電子ビームが、二次投影系の主ズームレンズの中心の実質的に近くを通過することができるようになる。
【0073】
[0080] ステップ810では、マルチビーム電子ビームツールは、一次投影系に対する、特にビームセパレータに対する、二次投影系のアライメント特徴を特定する。実施形態によっては、この情報は、マルチビーム電子ビームツールのオペレータによって測定され提供されることがある。実施形態によっては、マルチビーム電子ビームツールは、アライメント特徴を決定するために使用することができる、二次電子ビーム像ビューアーを含むことがある。
【0074】
[0081] ステップ820では、マルチビーム電子ビームツールは、二次投影系の特定されたアライメント特徴に基づいて、所望の屈曲点の位置を決定する。
【0075】
[0082] ステップ830では、マルチビーム電子ビームツールは、調節可能ビームセパレータの1つ又は複数の制御入力を調節して、有効屈曲点を所望の屈曲点の位置に向けて上方又は下方に移動させる。実施形態によっては、調節可能ビームセパレータの複数のウィーンフィルタを個別に制御して、有効屈曲点を移動させることができる。例えば、上側ウィーンフィルタ及び下側ウィーンフィルタ(図5Aの533a及び533bなど)を、コントローラ(図2のコントローラ50など)によって個別に制御することができる。コントローラは、第1の励起制御信号を上側ウィーンフィルタに提供し、第2の励起制御信号を下側ウィーンフィルタに提供することができる。励起制御信号に基づいて、各ウィーンフィルタは、調節可能ビームセパレータの有効屈曲点を呼応して上又は下に移動させることができるように、偏向の量を増加又は減少させることができる。
【0076】
[0083] ステップ840では、マルチビーム電子ビームツールは、ステップ830で行われた調節の後の、所望の屈曲点の位置と実際の屈曲点の位置との間の差を決定する。次いで、ステップ850では、マルチビーム電子ビームツールは、調節された有効屈曲点が所望の屈曲点の位置に実質的に近いかどうかを判断する。実施形態によっては、この判断は、検出された二次電子の特徴に基づいていることがある。実施形態によっては、この判断は、サンプルの生成された像の特徴に基づいていることがある。答えが「いいえ」である場合、マルチビーム電子ビームツールは、調節された屈曲点が所望の屈曲点と一致するまで、ステップ830及び840を繰り返し実施する。調節された屈曲点が所望の屈曲点の位置に実質的に近くなると、ステップ860で調節プロセスは完了する。
【0077】
[0084] 実施形態については、以下の条項を使用して更に説明することができる。
1.二次粒子ビームの経路を変更するように構成された調節可能荷電粒子ビームセパレータであって、
一次光軸と位置合わせされた第1のウィーンフィルタであって、第1の励起入力を介して個別に制御可能な、第1のウィーンフィルタと、
上記一次光軸と位置合わせされた第2のウィーンフィルタであって、第2の励起入力を介して個別に制御可能な、第2のウィーンフィルタと、を含み、
上記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、上記第1の励起入力及び上記第2の励起入力に基づいて、上記調節可能荷電粒子ビームセパレータの有効屈曲点を移動させることができるように構成される、調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
2.上記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、上記有効屈曲点を上記一次光軸に沿って移動させることができるように構成される、条項1に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
3.上記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、上記第1の励起入力が上記第2の励起入力よりも高い場合、上記有効屈曲点を上記一次光軸に沿って上記第1のウィーンフィルタの近くに、また上記第2のウィーンフィルタから離れて配置することができるように構成される、条項1及び2の何れか一項に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
4.上記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、上記第2の励起入力が上記第1の励起入力よりも高い場合、上記有効屈曲点を上記一次光軸に沿って上記第2のウィーンフィルタの近くに、また上記第1のウィーンフィルタから離れて配置することができるように構成される、条項1及び2の何れか一項に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
5.上記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、上記第1の励起入力及び上記第2の励起入力が調節された場合に、上記有効屈曲点を移動させることができるように構成される、条項1~4の何れか一項に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
6.上記調節可能荷電粒子ビームセパレータは、上記調節可能荷電粒子ビームセパレータに対する二次投影系のアライメント特徴に基づいて、上記有効屈曲点を移動させて、上記二次投影系のアライメント誤差を補償するように構成される、条項1~5の何れか一項に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
7.上記二次投影系の上記アライメント特徴は、上記二次投影系内の主ズームレンズのアライメント特徴を含む、条項6に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
8.上記第1のウィーンフィルタは、一次粒子ビームを偏向させてサンプルを走査するように更に構成される、条項1~7の何れか一項に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
9.上記第1のウィーンフィルタは、磁気偏向器及び静電偏向器を含み、上記静電偏向器は、第3の励起入力に基づいて、静電場を生成して、上記一次粒子ビームを偏向させて上記サンプルを走査する、条項8に記載の調節可能荷電粒子ビームセパレータ。
10.一次投影系であって、
サンプル上に一次電子ビームを集束させるように構成された対物レンズであって、上記一次電子ビームに応答して上記サンプルから二次電子ビームが放射される、対物レンズ、及び、
上記二次電子ビームの経路を変更するように構成された調節可能ビームセパレータであって、
一次光軸と位置合わせされた第1のウィーンフィルタであって、第1の励起入力を介して個別に制御可能な、第1のウィーンフィルタと、
上記一次光軸と位置合わせされた第2のウィーンフィルタであって、第2の励起入力を介して個別に制御可能な、第2のウィーンフィルタと、を含み、
上記調節可能ビームセパレータは、上記第1の励起入力及び上記第2の励起入力に基づいて、上記調節可能ビームセパレータの有効屈曲点を移動させることができるように構成される、調節可能ビームセパレータ、を含む、一次投影系。
11.上記調節可能ビームセパレータは、上記有効屈曲点を上記一次光軸に沿って移動させることができるように構成される、条項10に記載の一次投影系。
12.上記調節可能ビームセパレータは、上記第1の励起入力が上記第2の励起入力よりも高い場合、上記有効屈曲点を上記一次光軸に沿って上記第1のウィーンフィルタの近くに、また上記第2のウィーンフィルタから離れて配置することができるように構成される、条項10及び11の何れか一項に記載の一次投影系。
13.上記調節可能ビームセパレータは、上記第2の励起入力が上記第1の励起入力よりも高い場合、上記有効屈曲点を上記一次光軸に沿って上記第2のウィーンフィルタの近くに、また上記第1のウィーンフィルタから離れて配置することができるように構成される、条項10及び11の何れか一項に記載の一次投影系。
14.上記調節可能ビームセパレータは、上記第1の励起入力及び上記第2の励起入力が調節された場合に、上記有効屈曲点を移動させることができるように構成される、条項10~13の何れか一項に記載の一次投影系。
15.上記調節可能ビームセパレータは、上記調節可能ビームセパレータに対する二次投影系の上記アライメント特徴に基づいて、上記有効屈曲点を移動させて、上記二次投影系のアライメント誤差を補償するように構成される、条項10~13の何れか一項に記載の一次投影系。
16.上記二次投影系の上記アライメント特徴は、上記二次投影系内の主ズームレンズのアライメント特徴を含む、条項15に記載の一次投影系。
17.上記第1のウィーンフィルタは、一次粒子ビームを偏向させて上記サンプルを走査するように更に構成される、条項10~16の何れか一項に記載の一次投影系。
18.上記第1のウィーンフィルタは、磁気偏向器及び静電レンズを含み、静電偏向器は、第3の励起入力に基づいて、静電場を生成して、上記一次粒子ビームを偏向させて上記サンプルを走査する、条項17に記載の一次投影系。
19.サンプルを検査するためのマルチビーム装置であって、
条項10~18の何れか一項に記載の一次投影系と、
二次電子ビームを電子検出デバイスに集束させるように構成された二次投影系と、
上記一次投影系を制御するための回路を含むコントローラと、を含む、マルチビーム装置。
20.上記コントローラは、上記一次投影系の上記調節可能ビームセパレータに対する上記二次投影系の上記アライメント特徴に基づいて、上記第1の励起入力及び上記第2の励起入力を調節して、上記有効屈曲点を移動させて、上記二次投影系の上記アライメント誤差を補償するための、回路を含む、条項19に記載のマルチビーム装置。
21.上記コントローラは、上記第3の励起入力を調節して一次電子ビームを偏向させて上記サンプルを走査するための回路を含む、条項20に記載のマルチビーム装置。
22.上記第1の励起入力及び上記第2の励起入力を調節するための情報を上記コントローラに提供するように構成された像ビューアーを更に含む、条項19~21の何れか一項に記載のマルチビーム装置。
23.複数の二次電子ビームを検出表面に投影するための二次投影系を備えたマルチビームシステムを使用してウェーハを検査する方法であって、
上記二次投影系のアライメント特徴に基づいて、調節可能ビームセパレータの所望の屈曲点の位置を決定することと、
1つ又は複数の制御信号を上記調節可能ビームセパレータに送信して、上記調節可能ビームセパレータの有効屈曲点を、上記所望の屈曲点の上記位置に向けて一次光軸に沿って移動させることと、を含む方法。
24.有効屈曲点の調節が行われた後で、上記所望の屈曲点の上記位置と上記有効屈曲点の位置との間の差を決定することと、
上記有効屈曲点の上記位置が、上記所望の屈曲点の上記位置に実質的に近くなるまで、上記所望の屈曲点の上記位置と上記有効屈曲点の上記位置との間の上記差を決定するのに続いて、上記有効屈曲点の調節を繰り返すことと、を更に含む、条項23に記載の方法。
25.上記調節可能ビームセパレータは第1のウィーンフィルタ及び第2のウィーンフィルタを含み、1つ又は複数の制御信号を調節することは、上記第1のウィーンフィルタへの第1の励起入力及び上記第2のウィーンフィルタへの第2の励起入力を個別に調節することを含む、条項23及び24の何れか一項に記載の方法。
26.1つ又は複数の制御信号を調節することは、上記第1の励起入力を上記第2の励起入力よりも高くするように構成して、上記有効屈曲点を上記第1のウィーンフィルタに向けて移動させることを更に含む、条項25に記載の方法。
27.1つ又は複数の制御信号を調節することは、上記第2の励起入力を上記第1の励起入力よりも高くするように構成して、上記有効屈曲点を上記第2のウィーンフィルタに向けて移動させることを更に含む、条項25に記載の方法。
28.上記二次投影系の上記アライメント特徴は、二次電子ビーム像ビューアーによって生成された上記複数の二次電子ビームの1つ又は複数の像に基づいて特定される、条項23~27の何れか一項に記載の方法。
【0078】
[0085] ビームセパレータの調節(例えば、図8の調節可能ビームセパレータを制御すること)を実行するために、コントローラ(例えば、図1のコントローラ50)のプロセッサ用の命令を記憶する、非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することができる。非一時的な媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、又は他の任意の磁気データ記録媒体、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、他の任意の光学データ記録媒体、穴のパターンを有する任意の物理的媒体、RAM(Random Access Memory)、PROM(Programmable Read Only Memory)、及びEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、FLASH-EPROM若しくは他の任意のフラッシュメモリ、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)、キャッシュ、レジスタ、他の任意のメモリチップ若しくはカートリッジ、及び前述のもののネットワーク化されたもの、が挙げられる。
【0079】
[0086] 本開示の実施形態は、上記で説明し、添付の図面に図示した通りの構成に限定されるものではなく、また、本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を加えることができることを、理解されたい。本開示は、様々な実施形態に関連して説明されてきたが、本明細書に開示する本発明の仕様及び実施を考慮すると、本発明の他の実施形態が、当業者には明らかになるであろう。本明細書及び例は単なる例示としてみなされることが意図されており、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0080】
[0087] 上記の説明は、例示することを意図しており、限定するものではない。従って、以下に記載する特許請求の範囲から逸脱することなく、前述のように、修正を加えることができることが、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8