(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】非水系電解液、非水系電解液二次電池、及びエネルギーデバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230419BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20230419BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20230419BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230419BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230419BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01G11/62
H01G11/64
H01M10/0568
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022133271
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2019543736の分割
【原出願日】2018-09-21
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017182923
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017182936
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017182962
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡會 篤
(72)【発明者】
【氏名】中澤 英司
(72)【発明者】
【氏名】澤 脩平
【審査官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017404(WO,A1)
【文献】特開2016-035820(JP,A)
【文献】特開2018-037388(JP,A)
【文献】特開2016-197508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/056-10/0569
H01G 11/58-11/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び(B)を含有する非水系電解液。
(A)下記一般式(21)で示される化合物
(B)(i)~(iv)のいずれかであるアニオンを含有する塩
【化1】
(一般式(21)において、R
211、R
212およびR
213は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基である。Z
1は水素または炭素数5以下のアルケニル基である。)
【化2】
【請求項2】
前記一般式(21)で示される化合物が、下記一般式(22)で示される化合物である、請求項1に記載の非水系電解液。
【化3】
(一般式(22)において、R
221、R
222およびR
223はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基である。Z
2は水素、ビニル基またはアリル基である。)
【請求項3】
前記(A)の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記(B)の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量
%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記非水系電解液中における、前記(B)の含有物質量が、前記(A)の含有物質量よりも多い、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の非水系電解液を含有するエネルギーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液、非水系電解液二次電池、及びエネルギーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の小型機器用の電源や、電気自動車用等の駆動用車載電源等の広範な用途において、リチウム一次電池やリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のエネルギーデバイスが実用化されている。しかしながら、近年のエネルギーデバイスに対する高性能化の要求はますます高くなっている。
【0003】
中でも、非水系電解液二次電池の電池特性を改善する手段として、正極や負極の活物質、非水系電解液の添加剤分野において数多くの検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、非水系電解液に不飽和結合を少なくとも2つ以上含む特定ケイ素化合物とフッ素含有特定塩を含有させることにより、サイクル容量維持率を向上させる検討が開示されている。
特許文献2には、正極にCo及びNiより選択される少なくとも1種の元素と、Al及びMgより選択される少なくとも1種の元素を含む2種以上の元素を有する遷移金属酸化物、不飽和結合を有する特定ケイ素化合物が含有する非水系電解液を組み合わせることで、サイクル特性及び、高温保存時のガス発生を抑制する検討が開示されている。
特許文献3には、非水系電解液に特定ケイ素化合物を含有させることにより、低温特性を向上させ、内部抵抗増加率を改善する検討が開示されている。
特許文献4には、負極にケイ素活物質、特定シラン化合物を含有する非水系電解液を組み合わせることにより、サイクル特性を改善する検討が開示されている。
特許文献5には、非水系電解液に特定シラン化合物を含有させることにより、非水電解液の遊離酸量を抑制する検討が開示されている。
【0005】
また、例えば、リチウム非水系電解液二次電池においては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートやエチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ-ブチロラクトンやγ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル類、酢酸メチルや酢酸エチルやプロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル類の非水系溶媒と、LiPF6やLiBF4等の溶質(電解質)とを含有する非水系電解液が用いられる。
【0006】
このような非水系電解液二次電池をはじめとする非水系電解液を用いたエネルギーデバイスでは、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるため、非水系電解液により特性が大きく変わることになる。エネルギーデバイスの負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めたりするために、非水系電解液中の非水系溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
【0007】
例えば、特許文献6には、ジフルオロリン酸リチウム塩を含む電解液を用いることで、非水系電解液の分解を抑制し保存試験後容量維持率の改善を得る技術が開示されている。
特許文献7には、出力性能向上のためにビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム塩を用いる技術が開示されている。
特許文献8には、フルオロ硫酸リチウムを電解質として用いることで、電解液の分解反応を抑制し、サイクル特性の改善が報告されている。
特許文献9には、特定の塩類を添加剤として用いることで、電気化学デバイス用部材、
特にアルミラミネートの腐食を抑制できる旨が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-157679号公報
【文献】特開2009-245922号公報
【文献】特開2002-134169号公報
【文献】特開2007-123098号公報
【文献】特開2001-167792号公報
【文献】特開平11-67270号公報
【文献】特開2009-129797号公報
【文献】特開平7-296849号公報
【文献】特開2003-331917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、電気自動車の車載用途電源や、スマートフォン等の携帯電話用電源等に非水系電解液二次電池の高容量化が加速しており、負極には炭素と比較して活物質重量当たりの容量が大きいケイ素系活物質を導入することが検討されている。負極活物質に炭素とケイ素化合物とを組み合わせて用いた時、充放電を繰り返すことで負極の厚みが膨化することにより、電池が膨れてしまうという問題点があった。このため、充放電に伴う負極の膨化を抑制することが重要である。
【0010】
しかし、本発明者等の検討によれば、特許文献1に開示された不飽和結合を少なくとも2つ以上含む特定ケイ素化合物を含む電解液を用いると、金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極の充放電時の電池の厚み抑制には課題があった。
【0011】
上記特許文献2~5には、不飽和結合を有する特定ケイ素化合物、特定シラン化合物を非水系電解液に添加することにより、サイクル特性改善や高温保存時のガス発生を抑制する検討がなされているが、金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極の充放電時の電池の厚み抑制に関することは何ら開示されておらず、電極の膨れに関しては依然として課題があった。
本発明では、これらの課題を解決することのできる非水系電解液を提供することを第1の課題とする。
【0012】
また、近年、電気自動車の車載用途電源や、スマートフォン等の携帯電話用電源等に非水系電解液二次電池の高容量化が加速されており、正極には遷移金属のNi比率が高い遷移金属酸化物の導入が検討されている。遷移金属のNi比率が高い遷移金属酸化物はアルカリ不純物を多く含んでいるため、高温保存時にアルカリ不純物と電解液成分である環状、鎖状カーボネートが反応することでCO2等のガスが発生する。そのため、電池が膨れてしまうという問題点があった。このため、ガス発生を抑制するためにはアルカリ不純物を効率的に失活させることが重要であると考える。
【0013】
しかし、本発明者等の検討によれば、上記特許文献1~3では、特定ケイ素化合物と遷移金属のNi比率が高い遷移金属酸化物を組み合わせた効果に関しては何ら明らかとされておらず、高温保存時のガス発生抑制には課題があった。
【0014】
上記特許文献4には、不飽和結合を有する特定ケイ素化合物とコバルト酸リチウムに代表される遷移金属酸化物を組み合わせた効果に関しては開示されているが、特定ケイ素化
合物と遷移金属のNi比率が高い遷移金属酸化物を組み合わせた効果に関しては何ら明らかとされておらず、高温保存時のガス発生抑制に関しては依然として課題があった。
本発明では、これらの課題を解決することのできる非水系電解液二次電池を提供することを第2の課題とする。
【0015】
さらに、近年のエネルギーデバイスの特性改善への要求はますます高まっており、各種性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、上記特許文献に開示の技術を含めて、そのようなエネルギーデバイスは未だ達成されていない。中でも、実用上の上限温度と考えられる60℃での放置後のエネルギーデバイスのインピーダンスを低く抑えておくことが難しいという問題があった。
【0016】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち本発明は、高温での放置後のインピーダンスの小さいエネルギーデバイスを提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記第1の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のケイ素化合物を含有する非水系電解液を用いることにより、金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極の充放電時の電極膨れを抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0018】
すなわち、本発明の第1の態様は、以下[A1]~[A12]に示す具体的態様等を提供する。
[A1] 金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、
金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と、黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極と、
非水系溶媒と該非水系溶媒に溶解される電解質とを含む非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、
下記一般式(A)又は(B)で表される化合物の内少なくとも1種の化合物を含有する、非水系電解液。
【化1】
(前記一般式(A)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基を示し、Xは、水素、炭素数1~10のアルケニル基又は、アルキニル基を示す。
前記一般式(B)中、R
4~R
6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を示し、Yは、S、NH又はNR
7を示す。R
7は、炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
[A2] 前記Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料が、Si、Sn、As、
Sb、Al、Zn及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む、[A1]に記載の非水系電解液。
[A3] 前記Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料が、Si又はSi金属酸化物である、[A1]または[A2]に記載の非水系電解液。
[A4] 前記Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と黒鉛と、を含有する負極活物質が、金属化合物系材料と黒鉛との複合体及び/又は混合体である、[A1]から[A3]のいずれかに記載の非水系電解液。
[A5] 前記Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と黒鉛と、を含有する負極活物質の合計に対する、前記Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料の含有量が、0.1~25質量%である、[A1]から[A4]のいずれかに記載の非水系電解液。
[A6] 前記一般式(A)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、又はter-ブチル基であり、Xは、水素、ビニル基、アリル基であり、
前記一般式(B)中、R
4~R
6は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Yは、Sである、[A1]~[A5]のいずれかに記載の非水系電解液。[A7] 前記非水系電解液に更に、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩及びビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、[A1]~[A6]のいずれかに記載の非水系電解液。
[A8] 前記ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩及びビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下である、[A7]に記載の非水系電解液。
[A9] 前記正極が、金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち50モル%以上がNiとCoである遷移金属酸化物を含有する正極である、[A1]から[A8]のいずれかに記載の非水系電解液。
[A10] 前記遷移金属酸化物が、下記組成式(5)で示される、[A9]に記載の非水系電解液。
Li
a1Ni
b1Co
c1M
d1O
2・・・(5)
(式(5)中、0.9≦a1≦1.1、0.3≦b1≦0.9、0.1≦c1≦0.5、0.0≦d1≦0.5の数値を示し、0.5≦b1+c1かつb1+c1+d1=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
[A11] 前記遷移金属酸化物が下記組成式(6)で示される、[A9]または[A10]に記載の非水系電解液。
Li
a2Ni
b2Co
c2M
d2O
2・・・(6)
(式(6)中、0.9≦a2≦1.1、0.5≦b2≦0.9、0.1≦c2≦0.2、0.0≦d2≦0.3の数値を示し、c2≦b2かつ0.7≦b2+c2かつb2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
[A12] 少なくとも、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、
金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と、黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極と、
非水系溶媒と該非水系溶媒に溶解される電解質と、を含む非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池において、該非水系電解液が、[A1]~[A11]のいずれかに記載の非水系電解液である、非水系電解液二次電池。
【0019】
本発明者は、上記第2の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のケイ素化合物を含有する非水系電解液を用いることにより、遷移金属にNiを含む特定遷移金属酸化物の高
温保存時のガス発生を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
すなわち、本発明の第2の態様は、以下[B1]~[B7]に示す具体的態様等を提供する。
[B1] 正極、負極及び非水系電解液を備える非水系電解液二次電池であって、該正極が下記組成式(14)で表される金属酸化物を含有し、
Li
a101Ni
b101Co
c101M
d101O
2・・・(14)
(上記式(14)中、a101、b101、c101及びd101は、0.90≦a101≦1.10、0.50≦b101≦0.98、0.01≦c101<0.50、0.01≦d101<0.50の数値を示し、b101+c101+d101=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
前記非水系電解液が下記一般式(C)で表される化合物を含有する非水系電解液二次電池。
【化2】
(式(C)中、R
101~R
103は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基を示し、Xは、水素、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。)
[B2] 前記正極が下記組成式(15)で表される金属酸化物を含有する、[B1]に記載の非水系電解液二次電池。
Li
a102Ni
b102Co
c102M
d102O
2・・・(15)
(上記式(15)中、a102、b102、c102及びd102は、0.90≦a102≦1.10、0.50≦b102≦0.90、0.05≦c102≦0.30、0.05≦d102≦0.30の数値を示し、b102+c102+d102=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
[B3] 前記一般式(C)で表される化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下である、[B1]又は[B2]に記載の非水系電解液二次電池。
[B4] 前記一般式(C)中のXが、ビニル基、アリル基又はメタリル基である、[B1]~[B3]のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
[B5] 前記一般式(C)中のXが、ビニル基である、[B4]に記載の非水系電解液二次電池。
[B6] 前記非水系電解液が更に、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩及びビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、[B1]~[B5]のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
[B7] 前記ジフルオロリン酸塩、前記フルオロスルホン酸塩及び前記ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群に属する化合物の含有量がいずれも、前記非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下である、[B6]に記載の非水系電解液二次電池。
【0021】
また、本発明者らは、上記第3の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、非水系
電解液に後述する特定の化合物と特定の塩を同時に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0022】
すなわち、本発明の第3の態様は、以下[C1]~[C8]に示す具体的態様等を提供する。
[C1] 以下の(A)及び(B)を含有する非水系電解液。
(A)下記一般式(21)で示される化合物
(B)F-P-O結合、F-S-O結合またはF-S=O結合から選ばれる少なくとも一種の結合を有するアニオンを含有する塩
【化3】
(一般式(21)において、R
211、R
212およびR
213は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基である。Z
1は水素または炭素数5以下のアルケニル基である。)
[C2] 前記アニオンが、(i)~(vi)のいずれかである、[C1]に記載の非水系電解液。
【化4】
[C3] 前記一般式(21)で示される化合物が、下記一般式(22)で示される化合物である、[C1]又は[C2]に記載の非水系電解液。
【化5】
(一般式(22)において、R
221、R
222およびR
223はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基である。Z
2は水素、ビニル基またはアリル基である。)
[C4] 前記(A)の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、[C1]~[C3]のいずれかに記載の非水系電解液。
[C5] 前記(B)の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、[C1]~[C4]のいずれかに記載の非水系電解液。
[C6] 前記非水系電解液中における、前記(B)の含有物質量が、前記(A)の含有物質量よりも多い、[C1]~[C5]のいずれかに記載の非水系電解液。
[C7] さらにフッ素原子を有する環状カーボネート、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及び環状スルホン酸エステルを含有する、[C1]~[C6]のいずれかに記載の非水系電解液。
[C8] [C1]~[C7]のいずれかに記載の非水系電解液を含有するエネルギーデバイス。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1の態様により、充放電に伴う電池の膨化抑制に優れる非水系電解液二次電池を得ることが出来る。
中でも、金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極と特定ケイ素化合物を含有する非水系電解液を組み合わせることにより、繰り返し充放電における電池膨れの少ない非水系電解液二次電池を得ることが出来る。
【0024】
本発明の第2の態様により、高温保存時のガス発生抑制に優れる非水系電解液二次電池を得ることが出来る。
中でも、遷移金属にNiを含む特定遷移金属酸化物からなる正極と特定ケイ素化合物を含有する非水系電解液を組み合わせることにより、高温保存時のガス発生抑制に優れる非水系電解液二次電池を得ることが出来る。
【0025】
本発明の第3の態様により、高温放置後インピーダンスの小さいエネルギーデバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<A.第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本実施態様の一例(代表例)であり、本実施形態はこれらに限定されるものではない。また、本実施形態は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0027】
本実施形態である非水系電解液は、
金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、
金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と、黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極と、
非水系溶媒と該非水系溶媒に溶解される電解質とを含む非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、
下記一般式(A)、(B)で表される化合物の内少なくとも1種の化合物を含有する、非水系電解液である。
【化6】
(前記一般式(A)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基を示し、Xは、水素、炭素数1~10のアルケニル基又は、アルキニル基を示す。
前記一般式(B)中、R
4~R
6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を示し、Yは、S、NH又はNR
7を示す。R
7は、炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
【0028】
<A1.非水系電解液>
<A1-1.一般式(A)、(B)で表される化合物>
本発明の非水系電解液は、下記一般式(A)、(B)で表される化合物の内少なくとも1種の化合物を含有することを特徴としている。
【化7】
【0029】
本発明において、「置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基」における「炭素数1~10のアルキル基」とは、R1~R3と結合するSiとの結合及び置換基との結合を除き、水素及び/又は炭素とのみ結合する炭素鎖を主骨格とし、かつ、その主骨格を構成する炭素の数が最大となるように構成されるアルキル基であり、「置換基」とは、当該アルキル基に結合する基である。
つまり、例えば、-Si-R1に相当する構造が、-Si-(CH2)5-CH2-C≡Nで表される場合、-(CH2)5-CH2がR1における「炭素数1~10のアルキル基」に相当する部分であり、-C≡Nが「置換基」に相当する部分であるとされ、-Si-(CH2)5が、「炭素数1~10のアルキル基」に相当する部分であり、-CH2-C≡Nが「置換基」に相当する部分であるとはされない。また、-Si-R1に相当する構造が、-Si-(CH2)5-CH(-C≡N)2-CH3で表される場合、-(CH2)5-CH-CH3がR1における「炭素数1~10のアルキル基」に相当する部分であり、-C≡Nが「置換基」に相当する部分である。
また、本発明における「置換基を有していてもよい」を含む記載、例えば「置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基」及び「置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基」等の記載についても、上記の「置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基」の記載の定義と同様の方法で定義される。
【0030】
式(A)中、R1~R3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基を示し、Xは、水素、炭素数1~10のアルケニル基又は、アルキニル基を示す。
式(B)中、R4~R6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を示し、Yは、S、NH又はNR7を示す。R7は、炭素数1~20の炭化水素基を示す。
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Ra)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)、スルホニル基(-SO2-Ra)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Ra)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Ra)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Ra)、エーテル基(-O-Ra)、アクリル基、メタクリル基、ハロゲン(好ましくは、フッ素)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Raは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数2~10のアルキニル基を示す。なお、これら置換基における炭素数は、R1~R3における炭素数にカウントしない。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Ra)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)であり、更に好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Ra)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)であり、特に好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)であり、最も好ましくはシアノ基である。
【0031】
R1~R3に係るアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、より好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、tert-ブチル基が挙げられる。化合物(A)、(B)の負極活物質表面への濃縮が進行しやすくなることからメチル基、エチル基が好ましい。
【0032】
Xに係るアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-メチル2-ブテニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、特に好ましくは、ビニル基が挙げられる。上述のアルケニル基であると、負極活物質改質反応が好適に制御できるためである。
【0033】
Xに係るアルキニル基の具体例としては、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、さらに好ましくは、2-プロピニル基、3-ブチニル基、特に好ましくは、2-プロピニル基が挙げられる。上述のアルキニル基であると、負極活物質改質反応が好適に制御できるためである。
【0034】
R1~R3に係るアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。中でも、化合物(A)、(B)の負極活物質への濃縮が進行しやすくなることからフェニル基が好ましい。
【0035】
R4~R6、及びR7に係る炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの基の具体例、特に炭素数1~10の基としては、例えば、上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の具体例を適用することができる。
【0036】
一般式(A)、(B)で表される化合物の負極活物質表面への濃縮が進行しやすくなることから、一般式(A)、(B)中、R1~R3は、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましく、R4~R6はメチル基であることが好ましい。また、R1~R3の何れか1つがメチル基であるならば、R1~R3がすべてメチル基である必要はない。例えば以下のような組み合わせが好ましい。(R1、R2、R3):(メチル基、メチル基、エチル基)、(メチル基、メチル基、n-ブチル基)、(メチル基、メチル基、tert-ブチル基)、(メチル基、メチル基、フェニル基)、(メチル基、エチル基、エチル基)、(メチル基、フェニル基、フェニル基)。
【0037】
一般式(A)中、Xは水素原子、ビニル基、アリル基が好ましい。化合物(A)の負極活物質との反応活性が高まり、負極表面を好適に改質可能となる。また、一般式(B)中、YはS(硫黄原子)が好ましい。化合物(B)の負極活物質との反応活性が高まり、負極表面を好適に改質可能となる。
【0038】
本実施形態で用いる化合物は、一般式(A)、(B)で表される化合物が使用されるが、具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
中でも好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。
【化12】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
さらに好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物は化合物の分子サイズが好適であり、化合物の負極表面濃縮率が高まる。
【化16】
【0048】
【0049】
【0050】
特に好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物は負極との反応が好適に進行し、表面改質が効果的に進行する。
【化19】
【0051】
【0052】
【0053】
最も好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物は負極との反応が好適に進行し、表面改質が最も効果的に進行する。
【化22】
【0054】
【0055】
【0056】
非水系電解液全量に対する、一般式(A)、(B)で表される化合物の含有量の合計は、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常4.5質量%以下であり、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下、最も好ましくは2.0質量%以下である。
非水系電解液全量に対する一般式(A)、(B)で表される化合物の含有量の合計が、上記の範囲であれば、負極活物質の改質反応が好適に進行し、充放電時の負極膨化が抑制され、膨れにくい電池の作成が可能となる。
【0057】
非水系電解液には、一般式(A)、(B)で表される化合物の他に、後述のジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩及びビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を併用することで、充放電に伴う負極の膨化がさらに抑制され、膨れにくい電池が得られる点で好ましい。
【0058】
一般式(A)、(B)の化合物を含有することで、充放電時の負極膨化が抑制されるメカニズムについて、以下の様に推測する。
【0059】
炭素活物質とSi系活物質(例えばSi)の満充電時の体積変化はそれぞれ10%、300%である。炭素とSiをブレンドした負極は満充電時に、Si負極の膨化により、隣接している炭素が押し出され、炭素、Si単体を活物質として用いた場合よりも電極の膨化が顕著に表れ、電池自体の厚みが増加してしまう課題があった。また、Si系活物質は繰り返し充放電により粒子が微粉化することにより、活性の高い新生面(ダングリングボ
ンド)が露出する。この露出した表面と電解液が反応することにより、活物質表面の変質が起こり、Si粒子が繰り返し充放電により、繰り返し前よりも活物質が膨化するといった課題も同時に存在する。
この問題に対し、本実施形態では一般式(A)、(B)で表される化合物を電解液中に含有させる。一般式(A)、(B)で表される化合物は構造内に、Si系活物質との反応活性が高い、X、Yといった部位を有するため、Si系活物質表面と反応をすることで表面を好適に改質する。
一方で、X、Yといった活性部位が構造内に2つ以上存在する場合は、活物質表面と反応しきれなかった部位が電解液や電解液の還元分解物と反応してしまうため、活物質の膨化が抑制できない。
以上より、一般式(A)、(B)で表される化合物は繰り返し充放電に伴う負極活物質の膨化が抑制されるため、電池の厚み変化抑制に資すると考える。
【0060】
なお、電解液に、一般式(A)、(B)で表される化合物を含有する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。
【0061】
一般式(A)、(B)で表される化合物の含有量とは、非水系電解液製造時、非水系電解液の電池への注液時点又は電池として出荷された何れかの時点での含有量を意味する。
【0062】
<A1-2.ジフルオロリン酸塩>
ジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13R14R15R16(式中、R13~R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0063】
上記アンモニウムのR13~R16で表わされる炭素数1~12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR13~R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
【0064】
ジフルオロリン酸塩の具体例としては、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、ジフルオロリン酸リチウムが好ましい。
【0065】
ジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ジフルオロリン酸塩の配合量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0066】
ジフルオロリン酸塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
【0067】
この範囲内であれば、充放電に伴う非水系電解液二次電池の膨れを好適に抑制できる。
【0068】
<A1-3.フルオロスルホン酸塩>
前記フルオロスルホン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13R14R15R16(式中、R13~R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0069】
フルオロスルホン酸塩の具体例としては、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスルホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。
【0070】
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フルオロスルホン酸塩の配合量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0071】
フルオロスルホン酸塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
【0072】
この範囲内であれば、充放電に伴う非水系電解液二次電池の膨れを好適に抑制できる。
【0073】
<A1-4.ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩>
ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13R14R15R16(式中、R13~R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0074】
ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩としては、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド等が挙げられ、リチウムビスフルオロスルホニルイミドが好ましい。
【0075】
ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。
この範囲内であれば、充放電に伴う非水系電解液二次電池の膨れを好適に抑制できる。
【0076】
<A1-5.電解質>
<リチウム塩>
非水系電解液における電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0077】
例えば、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7等の無機リチウム塩;LiPF6等のフルオロリン酸リチウム塩類;LiWOF5等のタングステン酸リチウム塩類;HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2CF2CF2CO2Li等のカルボン酸リチウム塩類;CH3SO3Li等のスルホン酸リチウム塩類;LiN(FC
O2)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のリチウムイミド塩類;LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等のリチウムメチド塩類;リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラート塩類;その他、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
【0078】
高温保存時のガス抑制効果に加え、充放電レート特性、インピーダンス特性の向上効果を更に高める点から、無機リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムオキサラート塩類、の中から選ばれるものが好ましい。
【0079】
中でも、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiTaF6、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が、低温出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。また、上記電解質塩は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0080】
非水系電解液中のこれらの電解質の総濃度は、特に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上であり、また、通常18質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の総濃度が上記範囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となるため、十分な出力特性が得られる傾向にある。
【0081】
<A1-6.非水系溶媒>
非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質を溶解する非水系溶媒を含有する。ここで用いる非水系溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、エーテル系化合物、スルホン系化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
<A1-6-1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、通常炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から炭素数2~3の飽和環状カーボネートが好ましく用いられる。
【0083】
飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブ
チレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネートがより好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0084】
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなり、また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の酸化・還元耐性が向上し、高温保存時の安定性が向上する傾向にある。
なお、本実施形態における体積%とは25℃、1気圧における体積を意味する。
【0085】
<A1-6-2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、通常炭素数3~7のものが用いられ、電解液の粘度を適切な範囲に調整するために、炭素数3~5の鎖状カーボネートが好ましく用いられる。
【0086】
具体的には、鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0087】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
【0088】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0089】
フッ素化ジメチルカーボネート誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
【0090】
フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体としては、2-フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0091】
フッ素化ジエチルカーボネート誘導体としては、エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’,2’-ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0092】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0093】
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の出力特性を良好な範囲としやすくなる。
【0094】
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
【0095】
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上、好ましくは20体積%以上、また、通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、高温安定性に優れ、ガス発生が抑制される傾向がある。
【0096】
<A1-6-3.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフ
ルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンで
ある。
【0097】
炭素数3~6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
【0098】
エーテル系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系溶媒100体積%中、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が前記好ましい範囲内であれば、エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性を適正な範囲とすることができる。
【0099】
<A1-6-4.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、環状スルホン、鎖状スルホンであっても特に制限されないが、環状スルホンの場合、通常炭素数が3~6、好ましくは炭素数が3~5であり、鎖状スルホンの場合、通常炭素数が2~6、好ましくは炭素数が2~5である化合物が好ましい。また、スルホン系化合物1分子中のスルホニル基の数は、特に制限されないが、通常1又は2である。
【0100】
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0101】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0102】
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジフルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチルスルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロメチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0103】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルス
ルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0104】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-t-ブチルスルホン等が電解液の高温保存安定性が向上する点で好ましい。
【0105】
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が前記範囲内であれば、高温保存安定性に優れた電解液が得られる傾向にある。
【0106】
<A1-7.助剤>
非水系電解液において、本実施形態に係る発明の効果を奏する範囲で以下の助剤を含有してもよい。
<A1-7-1.不飽和結合を有する環状カーボネート化合物>
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)としては、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0107】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環または炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコール
カーボネート類等が挙げられる。
【0108】
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、4,5-ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルビニレンカーボネート、4-アリル-5-フルオロビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0109】
芳香環または炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフェニルエチレンカーボネート、4-フェニル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0110】
中でも、好ましい不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネートが挙げられる。
【0111】
また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートはさらに安定な界面保護皮膜を形成するので、特に好ましい。
【0112】
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、80以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本実施形態に係る発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは85以上であり、また、より好ましくは150以下である。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0113】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分
なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0114】
<A1-7-2.ハロゲン化環状カーボネート>
ハロゲン原子を有する環状カーボネート化合物の例として、主にフッ素原子で置換された酸無水物の例を以下に挙げるが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子に置換して得られる酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
【0115】
ハロゲン原子を有する環状カーボネート化合物としては、炭素原子数2~6のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素原子数1~4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素原子を1~8個有するエチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
【0116】
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0117】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護皮膜を形成する点でより好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0118】
非水系電解液全体に対するハロゲン化環状カーボネートの配合量に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。ただし、モノフルオロエチレンカーボネートは溶媒として用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。
【0119】
<A1-7-3.シアノ基を有する化合物>
非水系電解液において、用いることができるシアノ基を有する化合物としては、分子内にシアノ基を有している化合物であれば特にその種類は限定されないが、下記一般式(11)で表される化合物がより好ましい。シアノ基を有する化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0120】
【0121】
(一般式(11)中、Tは、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびリン原子からなる群から選ばれる原子で構成された有機基を表し、Uは置換基を有してもよい炭素数1から10のV価の有機基である。Vは1以上の整数であり、Vが2以上の場合は、Tは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0122】
シアノ基を有する化合物の分子量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。シアノ基を有する化合物の分子量は、通常40以上であり、好ましくは45以上、より好ましくは50以上であり、また、通常200以下、好ましくは180以下、より好ましくは170以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するシアノ基を有する化合物の溶解性を確保しやすく、本実施形態に係る発明の効果が発現されやすい。
【0123】
一般式(11)で表される化合物の具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2-メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテン二トリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル、2-ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2-フルオロプロピオニトリル、3-フルオロプロピオニトリル、2,2-ジフルオロプロピオニトリル、2,3-ジフルオロプロピオニトリル、3,3-ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3’-オキシジプロピオニトリル、3,3’-チオジプロピオニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のシアノ基を1つ有する化合物;
【0124】
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物;
【0125】
1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、トリス(2-シアノエチル)アミン等のシアノ基を3つ有する化合物;
【0126】
メチルシアネート、エチルシアネート、プロピルシアネート、ブチルシアネート、ペンチルシアネート、ヘキシルシアネート、ヘプチルシアネートなどのシアネート化合物;
【0127】
メチルチオシアネート、エチルチオシアネート、プロピルチオシアネート、ブチルチオシアネート、ペンチルチオシアネート、ヘキシルチオシアネート、ヘプチルチオシアネー
ト、メタンスルホニルシアニド、エタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニド、ブタンスルホニルシアニド、ペンタンスルホニルシアニド、ヘキサンスルホニルシアニド、ヘプタンスルホニルシアニド、メチルスルフロシアニダート、エチルスルフロシアニダート、プロピルスルフロシアニダート、ブチルスルフロシアニダート、ペンチルスルフロシアニダート、ヘキシルスルフロシアニダート、ヘプチルスルフロシアニダートなどの含硫黄化合物;
【0128】
シアノジメチルホスフィン、シアノジメチルホスフィンオキシド、シアノメチルホスフィン酸メチル、シアノメチル亜ホスフィン酸メチル、ジメチルホスフィン酸シアニド、ジメチル亜ホスフィン酸シアニド、シアノホスホン酸ジメチル、シアノ亜ホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸シアノメチル、メチル亜ホスホン酸シアノメチル、リン酸シアノジメチル亜リン酸シアノジメチルなどの含リン化合物;等が挙げられる。
【0129】
これらのうち、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリルが保存特性向上の点から好ましく、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物がより好ましい。
【0130】
シアノ基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。非水系電解液全体に対するシアノ基を有する化合物の含有量に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、低温出力特性や充放電レート特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0131】
<A1-7-4.ジイソシアネート化合物>
非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物としては、分子内に、窒素原子をイソシアナト基にのみ有し、また、イソシアナト基を2つ有していて、下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
【0132】
【0133】
上記一般式(12)において、Yは環状構造を含み、かつ炭素数1以上15以下の有機基である。Yの炭素数は、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、また、通常14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
【0134】
上記一般式(12)中、Yは、炭素数4~6のシクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基を1つ以上有する、炭素数4~15の有機基であることが特に好ましい。このとき、シクロアルキレン基上の水素原子はメチル基またはエチル基で置換されていてもよい。上記環状構造を有するジイソシアネート化合物は、立体的に嵩高い分子であるため、正極上での副反応が起こりにくく、その結果、サイクル特性ならびに高温保存特性が向上する
。
【0135】
シクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基に結合する基の結合部位は特段限定されず、メタ位、パラ位、オルト位のいずれであってもよいが、メタ位又はパラ位が、皮膜間架橋距離が適切となることでリチウムイオン伝導性に有利となり、抵抗を低下させやすいために好ましい。また、シクロアルキレン基はシクロペンチレン基又はシクロへキシレン基であることが、ジイソシアネート化合物自体が副反応を起こしにくい観点で好ましく、シクロへキシレン基であることが、分子運動性の影響により抵抗を低下させやすいことからより好ましい。
【0136】
また、シクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基とイソシアナト基との間には炭素数1~3のアルキレン基を有していることが好ましい。アルキレン基を有することで立体的に嵩高くなるため、正極上での副反応が起こりにくくなる。さらにアルキレン基が炭素数1~3であれば全分子量に対するイソシアナト基の占める割合が大きく変化しないため、本実施形態に係る発明の効果が顕著に発現しやすくなる。
【0137】
上記一般式(12)で表されるジイソシアネート化合物の分子量は特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、通常80以上であり、好ましくは115以上、より好ましくは170以上であり、また、通常300以下であり、好ましくは230以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するジイソシアネート化合物の溶解性を確保しやすく、本実施形態に係る発明の効果が発現されやすい。
【0138】
ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、1,2-ジイソシアナトシクロペンタン、1,3-ジイソシアナトシクロペンタン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、等のシクロアルカン環含有ジイソシアネート類;
【0139】
1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,3-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,5-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、トリレン-3,4-ジイソシアネート、トリレン-3,5-ジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4-ジイソシアナトビフェニル、2,6-ジイソシアナトビフェニル、2,2’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジイソシアナトビフェニル、4,4’-ジイソシアナト-2-メチルビフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-メチルビフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-2-メチルジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1,8-ジイソシアナトナフタレン、2,3-ジイソシアナトナフタレン、1,5-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、1,8-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、2,3-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン等の芳香環含有ジイソシアネート類;などが挙げられる。
【0140】
これらの中でも、1,2-ジイソシアナトシクロペンタン、1,3-ジイソシアナトシクロペンタン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4-ジイソシアナトビフェニル、2,6-ジイソシアナトビフェニルが、負極上により緻密な複合的な皮膜が形成され、その結果、電池耐久性が向上するため、好ましい。
【0141】
これらの中でも、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンが、その分子の対称性から負極上にリチウムイオン伝導性に有利な皮膜が形成され、その結果、低温出力特性及びサイクル特性等の電池特性がさらに向上するため、より好ましい。
【0142】
また上述したジイソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0143】
非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。含有量が上記範囲内であると、低温出力及びサイクル特性等の電池特性がさらに向上する傾向にある。
【0144】
なお、ジイソシアネート化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
【0145】
<A1-7-5.カルボン酸無水物>
非水系電解液において、用いることができるカルボン酸無水物としては、下記一般式(13)で表される化合物が好ましい。カルボン酸無水物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0146】
【化27】
(一般式(13)中、R
8,R
9はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1以上15以下の炭化水素基を表す。R
8,R
9が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。
【0147】
R8,R9は、一価の炭化水素基であれば、その種類は特に制限されない。例えば、脂
肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合したものであってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合(炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合)を含んでいてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。さらには、鎖状と環状とが結合したものであってもよい。なお、R8及びR9は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0148】
また、R8,R9が互いに結合して環状構造を形成する場合、R8及びR9が互いに結合して構成された炭化水素基は二価である。二価の炭化水素基の種類は特に制限されない。即ち、脂肪族基でも芳香族基でもよく、脂肪族基と芳香族基とが結合したものでもよい。脂肪族基の場合、飽和基でも不飽和基でもよい。また、鎖状基でも環状基でもよく、鎖状基の場合は直鎖状基でも分岐鎖状基でもよい。さらには鎖状基と環状基とが結合したものでもよい。
【0149】
また、R8,R9の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の種類は、本実施形態に係る発明の趣旨に反するものでない限り特に制限されないが、例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。また、ハロゲン原子以外の置換基として、エステル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基等の官能基を有する置換基なども挙げられ、好ましくはシアノ基、カルボニル基である。R3,R4の炭化水素基は、これらの置換基を一つのみ有していてもよく、二つ以上有していてもよい。二つ以上の置換基を有する場合、それらの置換基は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0150】
R8,R9の各々の炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。R8とR9とが互いに結合して二価の炭化水素基を形成している場合は、その二価の炭化水素基の炭素数が、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。なお、R8,R9の炭化水素基が炭素原子を含有する置換基を有する場合は、その置換基も含めたR8,R9全体の炭素数が上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0151】
次いで、上記一般式(13)で表わされる酸無水物の具体例について説明する。なお、以下の例示において「類縁体」とは、例示される酸無水物の構造の一部を、本実施形態に係る発明の趣旨に反しない範囲で、別の構造に置き換えることにより得られる酸無水物を指すもので、例えば複数の酸無水物からなる二量体、三量体及び四量体など、または、置換基の炭素数が同じではあるが、分岐鎖を有するなど構造異性のもの、置換基が酸無水物に結合する部位が異なるものなどが挙げられる。
【0152】
まず、R8,R9が同一である酸無水物の具体例を以下に挙げる。
【0153】
R8,R9が鎖状アルキル基である酸無水物の例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物、2-メチルプロピオン酸無水物、2,2-ジメチルプロピオン酸無水物、2-メチルブタン酸無水物、3-メチルブタン酸無水物、2,2-ジメチルブタン酸無水物、2,3-ジメチルブタン酸無水物、3,3-ジメチルブタン酸無水物、2,2,3-トリメチルブタン酸無水物、2,3,3-トリメチルブタン酸無水物、2,2,3,3-テトラメチルブタン酸無水物、2-エチルブタン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0154】
R8,R9が環状アルキル基である酸無水物の例としては、シクロプロパンカルボン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、及びそ
れらの類縁体などが挙げられる。
【0155】
R8,R9がアルケニル基である酸無水物の例としては、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、2,3-ジメチルアクリル酸無水物、3,3-ジメチルアクリル酸無水物、2,3,3-トリメチルアクリル酸無水物、2-フェニルアクリル酸無水物、3-フェニルアクリル酸無水物、2,3-ジフェニルアクリル酸無水物、3,3-ジフェニルアクリル酸無水物、3-ブテン酸無水物、2-メチル-3-ブテン酸無水物、2,2-ジメチル-3-ブテン酸無水物、3-メチル-3-ブテン酸無水物、2-メチル-3-メチル-3-ブテン酸無水物、2,2-ジメチル-3-メチル-3-ブテン酸無水物、3-ペンテン酸無水物、4-ペンテン酸無水物、2-シクロペンテンカルボン酸無水物、3-シクロペンテンカルボン酸無水物、4-シクロペンテンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0156】
R8,R9がアルキニル基である酸無水物の例としては、プロピン酸無水物、3-フェニルプロピン酸無水物、2-ブチン酸無水物、2-ペンチン酸無水物、3-ブチン酸無水物、3-ペンチン酸無水物、4-ペンチン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0157】
R8,R9がアリール基である酸無水物の具体例としては、安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-エチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、2,4,6-トリメチル安息香酸無水物、1-ナフタレンカルボン酸無水物、2-ナフタレンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0158】
また、R8,R9がハロゲン原子で置換された酸無水物の例として、主にフッ素原子で置換された酸無水物の例を以下に挙げるが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子に置換して得られる酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
【0159】
R8,R9がハロゲン原子で置換された鎖状アルキル基である酸無水物の例としては、フルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、2-フルオロプロピオン酸無水物、2,2-ジフルオロプロピオン酸無水物、2,3-ジフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、2,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3,3-テトラプロピオン酸無水物、2,3,3,3-テトラプロピオン酸無水物、3-フルオロプロピオン酸無水物、3,3-ジフルオロプロピオン酸無水物、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、パーフルオロプロピオン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0160】
R8,R9がハロゲン原子で置換された環状アルキル基である酸無水物の例としては、2-フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、3-フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、4-フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0161】
R8,R9がハロゲン原子で置換されたアルケニル基である酸無水物の例としては、2-フルオロアクリル酸無水物、3-フルオロアクリル酸無水物、2,3-ジフルオロアクリル酸無水物、3,3-ジフルオロアクリル酸無水物、2,3,3-トリフルオロアクリル酸無水物、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、3-( トリフルオロメチ
ル)アクリル酸無水物、2,3-ビス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2,3,3-トリス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2-(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3-(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2,3-ビス(4
-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3,3-ビス(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2-フルオロ-3-ブテン酸無水物、2,2-ジフルオロ-3-ブテン酸無水物、3-フルオロ-2-ブテン酸無水物、4-フルオロ-3-ブテン酸無水物、3,4-ジフルオロ-3-ブテン酸無水物、3,3,4-トリフルオロ-3-ブテン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0162】
R8,R9がハロゲン原子で置換されたアルキニル基である酸無水物の例としては、3-フルオロ-2-プロピン酸無水物、3-(4-フルオロフェニル)-2-プロピン酸無水物、3-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-2-プロピン酸無水物、4-フルオロ-2-ブチン酸無水物、4,4-ジフルオロ-2-ブチン酸無水物、4,4,4-トリフルオロ-2-ブチン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0163】
R8,R9がハロゲン原子で置換されたアリール基である酸無水物の例としては、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、4-トリフルオロメチル安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0164】
R8,R9がエステル、ニトリル、ケトン、エーテルなどの官能基を有する置換基を有している酸無水物の例としては、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、メチルシュウ酸無水物、エチルシュウ酸無水物、2-シアノ酢酸無水物、2-オキソプロピオン酸無水物、3-オキソブタン酸無水物、4-アセチル安息香酸無水物、メトキシ酢酸無水物、4-メトキシ安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0165】
続いて、R8,R9が互いに異なる酸無水物の具体例を以下に挙げる。
【0166】
R8,R9としては上に挙げた例、及びそれらの類縁体の全ての組み合わせが考えられるが、以下に代表的な例を挙げる。
【0167】
鎖状アルキル基同士の組み合わせの例としては、酢酸プロピオン酸無水物、酢酸ブタン酸無水物、ブタン酸プロピオン酸無水物、酢酸2-メチルプロピオン酸無水物、などが挙げられる。
【0168】
鎖状アルキル基と環状アルキル基の組み合わせの例としては、酢酸シクロペンタン酸無水物、酢酸シクロヘキサン酸無水物、シクロペンタン酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
【0169】
鎖状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、酢酸アクリル酸無水物、酢酸3-メチルアクリル酸無水物、酢酸3-ブテン酸無水物、アクリル酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
【0170】
鎖状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、酢酸プロピン酸無水物、酢酸2-ブチン酸無水物、酢酸3-ブチン酸無水物、酢酸3-フェニルプロピン酸無水物、プロピオン酸プロピン酸無水物、などが挙げられる。
【0171】
鎖状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、酢酸安息香酸無水物、酢酸4-メチル安息香酸無水物、酢酸1-ナフタレンカルボン酸無水物、安息香酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
【0172】
鎖状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、酢酸フルオロ酢酸無水物、酢酸トリフルオロ酢酸無水物、酢酸4-フルオロ安息香酸無水物、フルオロ酢酸プロピオン酸無水物、酢酸アルキルシュウ酸無水物、酢酸2-シアノ酢酸無水物、酢
酸2-オキソプロピオン酸無水物、酢酸メトキシ酢酸無水物、メトキシ酢酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
【0173】
環状アルキル基同士の組み合わせの例としては、シクロペンタン酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
【0174】
環状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸シクロペンタン酸無水物、3-メチルアクリル酸シクロペンタン酸無水物、3-ブテン酸シクロペンタン酸無水物、アクリル酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
【0175】
環状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、プロピン酸シクロペンタン酸無水物、2-ブチン酸シクロペンタン酸無水物、プロピン酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
【0176】
環状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸シクロペンタン酸無水物、4-メチル安息香酸シクロペンタン酸無水物、安息香酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
【0177】
環状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸シクロペンタン酸無水物、シクロペンタン酸トリフルオロ酢酸無水物、シクロペンタン酸2-シアノ酢酸無水物、シクロペンタン酸メトキシ酢酸無水物、シクロヘキサン酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0178】
アルケニル基同士の組み合わせの例としては、アクリル酸2-メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3-メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3-ブテン酸無水物、2-メチルアクリル酸3-メチルアクリル酸無水物、などが挙げられる。
【0179】
アルケニル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸プロピン酸無水物、アクリル酸2-ブチン酸無水物、2-メチルアクリル酸プロピン酸無水物、などが挙げられる。
【0180】
アルケニル基とアリール基の組み合わせの例としては、アクリル酸安息香酸無水物、アクリル酸4-メチル安息香酸無水物、2-メチルアクリル酸安息香酸無水物、などが挙げられる。
【0181】
アルケニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、アクリル酸フルオロ酢酸無水物、アクリル酸トリフルオロ酢酸無水物、アクリル酸2-シアノ酢酸無水物、アクリル酸メトキシ酢酸無水物、2-メチルアクリル酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0182】
アルキニル基同士の組み合わせの例としては、プロピン酸2-ブチン酸無水物、プロピン酸3-ブチン酸無水物、2-ブチン酸3-ブチン酸無水物、などが挙げられる。
【0183】
アルキニル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸プロピン酸無水物、4-メチル安息香酸プロピン酸無水物、安息香酸2-ブチン酸無水物、などが挙げられる。
【0184】
アルキニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、プロピン酸フルオロ酢酸無水物、プロピン酸トリフルオロ酢酸無水物、プロピン酸2-シアノ酢酸無水物、プロピン酸メトキシ酢酸無水物、2-ブチン酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0185】
アリール基同士の組み合わせの例としては、安息香酸4-メチル安息香酸無水物、安息香酸1-ナフタレンカルボン酸無水物、4-メチル安息香酸1-ナフタレンカルボン酸無水物、などが挙げられる。
【0186】
アリール基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、安息香酸フルオロ酢酸無水物、安息香酸トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸2-シアノ酢酸無水物、安息香酸メトキシ酢酸無水物、4-メチル安息香酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0187】
官能基を有する炭化水素基同士の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸トリフルオロ酢酸無水物、フルオロ酢酸2-シアノ酢酸無水物、フルオロ酢酸メトキシ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸2-シアノ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0188】
上記の鎖状構造を形成している酸無水物のうち好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、2-メチルプロピオン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、2,3-ジメチルアクリル酸無水物、3,3-ジメチルアクリル酸無水物、3-ブテン酸無水物、2-メチル-3-ブテン酸無水物、プロピン酸無水物、2-ブチン酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2-(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、であり、より好ましくは、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物である。
【0189】
これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる皮膜を形成することで、特に耐久試験後の充放電レート特性、低温出力特性、インピーダンス特性を向上させることができる観点で好ましい。
【0190】
続いて、R8とR9とが互いに結合して環状構造を形成している酸無水物の具体例を以下に挙げる。
【0191】
まず、R8とR9とが互いに結合して5員環構造を形成している酸無水物の例としては、無水コハク酸、4-メチルコハク酸無水物、4,4-ジメチルコハク酸無水物、4,5-ジメチルコハク酸無水物、4,4,5-トリメチルコハク酸無水物、4,4,5,5-テトラメチルコハク酸無水物、4-ビニルコハク酸無水物、4,5-ジビニルコハク酸無水物、4-フェニルコハク酸無水物、4,5-ジフェニルコハク酸無水物、4,4-ジフェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4-メチルマレイン酸無水物、4,5-ジメチルマレイン酸無水物、4-フェニルマレイン酸無水物、4,5-ジフェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチルイタコン酸無水物、5,5-ジメチルイタコン酸無水物、無水フタル酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0192】
R8とR9とが互いに結合して6員環構造を形成している酸無水物の例としては、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0193】
R8とR9とが互いに結合してその他の環状構造を形成している酸無水物の例としては、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、ジグリコール酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0194】
R8とR9とが互いに結合して環状構造を形成するとともに、ハロゲン原子で置換された酸無水物の例としては、4-フルオロコハク酸無水物、4,4-ジフルオロコハク酸無水物、4,5-ジフルオロコハク酸無水物、4,4,5-トリフルオロコハク酸無水物、4,4,5,5-テトラフルオロコハク酸無水物、4-フルオロマレイン酸無水物、4,5-ジフルオロマレイン酸無水物、5-フルオロイタコン酸無水物、5,5-ジフルオロイタコン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
上記のハロゲン原子で置換された酸無水物の例では、主にフッ素原子で置換された酸無水物の例を挙げたが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子に置換して得られる酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
【0195】
上記のR8とR9とが結合している酸無水物のうち好ましくは、無水コハク酸、4-メチルコハク酸無水物、4-ビニルコハク酸無水物、4-フェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4-メチルマレイン酸無水物、4-フェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチルイタコン酸無水物、グルタル酸無水物、無水フタル酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4-フルオロコハク酸無水物、4-フルオロマレイン酸無水物、5-フルオロイタコン酸無水物、であり、より好ましくは、無水コハク酸、4-メチルコハク酸無水物、4-ビニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4-フルオロコハク酸無水物である。これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる皮膜を形成することで、特に耐久試験後の容量維持率が向上するために好ましい。
【0196】
なお、カルボン酸無水物の分子量に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常90以上、好ましくは95以上であり、また、通常300以下、好ましくは200以下である。カルボン酸無水物の分子量が上記範囲内であると、電解液の粘度上昇を抑制でき、かつ皮膜密度が適正化されるために低温出力を低下させずに、耐久性を適切に向上することができる。
【0197】
また、前記カルボン酸無水物の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。以上説明したカルボン酸無水物は、非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
【0198】
また、非水系電解液に対するカルボン酸無水物の含有量に特に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下の濃度で含有させることが望ましい。カルボン酸無水物の含有量が上記範囲内であると、サイクル特性向上効果が発現しやすくなり、また反応性が好適であるため電池特性が向上しやすくなる。
<A1-7-6.過充電防止剤>
非水系電解液において、非水系電解液二次電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
【0199】
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等;3-プロピルフェニルアセテート、2-エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート等の芳香族アセテート類;ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の芳香族カーボネート類が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン、3-プロピルフェニルアセテート、2-エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt-ブチルベンゼン又はt-アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが、過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0200】
過充電防止剤の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。過充電防止剤の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4.8質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。この範囲であれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が向上する。
【0201】
<A1-7-7.その他の助剤>
非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート、メトキシエチル-メチルカーボネート等のカーボネート化合物;メチル-2-プロピニルオギザレート、エチル-2-プロピニルオギザレート、ビス(2-プロピニル)オギザレート、2-プロピニルアセテート、2-プロピニルホルメート、2-プロピニルメタクリレート、ジ(2-プロピニル)グルタレート、メチル-2-プロピニルカーボネート、エチル-2-プロピニルカーボネート、ビス(2-プロピニル)カーボネート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジメタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジエタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジホルメート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジプロピオネート、4-ヘキサジイン-1,6-ジイル-ジメタンスルホネート、2-プロピニル-メタンスルホネート、1-メチル-2-プロピニル-メタンスルホネート、1,1-ジメチル-2-プロピニル-メタンスルホネート、2-プロピニル-エタンスルホネート、2-プロピニル-ビニルスルホネート、2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、1-メチル-2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、1,1-ジメチル-2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート等の三重結合含有化合物;2,4,8,10-テトラオキサ
スピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、硫酸エチレン、硫酸ビニレン、ジフェニルスルホン、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、メチル硫酸トリメチルシリル、エチル硫酸トリメチルシリル、2-プロピニル-トリメチルシリルスルフェート等の含硫黄化合物;2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルクロトネート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルクロトネート等のイソシアネート化合物;1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、オルトフルオロトルエン、メタフルオロトルエン、パラフルオロトルエン、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-2-ジフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-3-ジフルオロメチルベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-ジフルオロメチルベンゼン、1,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート等の含フッ素芳香族化合物;ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、ジメトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジエトキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジプロポキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、チタンテトラキス(トリメチルシロキシド)、チタンテトラキス(トリエチルシロキシド)、等のシラン化合物;2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-メチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-プロピニル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-エチル等のエステル化合物;リチウムエチルメチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチルエチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル-1-メチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル-1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート等のリチウム塩;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0202】
その他の助剤の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高温保存安定性が向上する傾向にある。
【0203】
<A2.非水系電解液二次電池>
本発明の別の実施形態である非水系二次電池は、少なくとも、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、
金属イオンを吸蔵及び放出可能な、Liと合金化可能な金属を含む金属化合物系材料と
、黒鉛と、を含有する負極活物質を含む負極と、
非水系溶媒と該非水系溶媒に溶解される電解質と、を含む非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池において、該非水系電解液が、上述した非水系電解液である、非水系電解液二次電池である。
【0204】
<A2-1.電池構成>
非水系電解液二次電池は、上述した非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様である。通常は、非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0205】
<A2-2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の非水系電解液を用いる。なお、本実施形態に係る発明の趣旨を逸脱しない範囲において、非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を配合して用いることも可能である。
【0206】
<A2-3.負極>
負極は、集電体上に負極活物質層を有するものであり、負極活物質層は電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有するために、金属イオンの吸蔵及び放出を可能とする。以下、負極活物質について述べる。
負極活物質としては、電気化学的に金属イオン、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが用いられる。その具体例としては、炭素質材料、金属化合物系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられ、炭素質材料として黒鉛を含むことが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0207】
<A2-3-1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400~3200℃の範囲で一回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。また、(1)~(4)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい
【0208】
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n-へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
【0209】
<A2-3-2.炭素質負極の構成、物性、調製方法>
炭素質材料についての性質や炭素質材料を含有する負極電極及び電極化手法、集電体、
非水系電解液二次電池については、次に示す(1)~(13)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。
【0210】
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335~0.340nmであり、特に0.335~0.338nm、とりわけ0.335~0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上、好ましくは1.5nm以上、特に好ましくは2nm以上である。
【0211】
(2)体積基準平均粒子径
炭素質材料の体積基準平均粒子径(メジアン径d50)は、特に限定されないが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
なお、平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる。
【0212】
体積基準平均粒子径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA-700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径d50を、本実施形態の炭素質材料の体積基準平均粒子径と定義する。
【0213】
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値が、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0214】
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0215】
また、炭素質材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm-1以上であり、15cm-1以上が好ましく、また、通常100cm-1以下であり、80cm-1以下が好ましく、60cm-1以下がさらに好ましく、40cm-1以下が特に好ましい。
【0216】
ラマン半値幅が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0217】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用
いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm-1付近のピークPAの強度IAと、1360cm-1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本実施形態における炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm-1付近のピークPAの半値幅を測定し、これを本実施形態における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
【0218】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15~25mW
・分解能 :10~20cm-1
・測定範囲 :1100cm-1~1730cm-1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0219】
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m2・g-1以上であり、0.7m2・g-1以上が好ましく、1.0m2・g-1以上がさらに好ましく、1.5m2・g-1以上が特に好ましく、また、通常100m2・g-1以下であり、25m2・g-1以下が好ましく、15m2・g-1以下がさらに好ましく、10m2・g-1以下が特に好ましい。
【0220】
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
【0221】
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本実施形態における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
【0222】
(5)円形度
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
【0223】
炭素質材料の粒子径が3~40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.85以上が特に好ましく、0.9以上が最も好ましい。
【0224】
高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0225】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用
いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6~400μmに指定し、粒子径が3~40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本実施形態における炭素質材料の円形度と定義する。
【0226】
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0227】
(6)タップ密度
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm-3以上であり、0.5g・cm-3以上が好ましく、0.7g・cm-3以上がさらに好ましく、1g・cm-3以上が特に好ましく、また、通常2g・cm-3以下が好ましく、1.8g・cm-3以下がさらに好ましく、1.6g・cm-3以下が特に好ましい。
【0228】
タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
【0229】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本実施形態における炭素質材料のタップ密度として定義する。
【0230】
(7)配向比
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がより好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
【0231】
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m-2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本実施形態における炭素質材料の配向比と定義する。
【0232】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0233】
(8)アスペクト比(粉)
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0234】
アスペクト比の測定は、炭素質材料粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Pと、それと直交する最短となる径Qを測定し、P/Qの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P/Q)を、本実施形態における炭素質材料のアスペクト比と定義する。
【0235】
(9)電極作製
負極の製造は、本実施形態に係る発明の効果を著しく制限しない限り、公知の何れの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0236】
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、また、通常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合があるためである。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合があるためである。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
【0237】
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0238】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
【0239】
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu-Cr-Zr合金等)を用いることができる。
【0240】
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。金属皮膜の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、1mmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、集電体は、メッシュ状でもよい。
【0241】
(11)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値は、通常150以下、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上、0.4以上が好ましく、1以上がより好ましい。
【0242】
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0243】
(12)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がより好ましく、1.3g・cm-3以上がさらに好ましく、また、通常2.2g・cm-3以下が好ましく、2.1g・cm-3以下がより好ましく、2.0g・cm-3以下がさらに好ましく、1.9g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0244】
(13)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0245】
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0246】
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0247】
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキ
サン等が挙げられる。
【0248】
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0249】
負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダーの含有量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
【0250】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0251】
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合、負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0252】
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0253】
さらに、増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0254】
<A2-3-3.金属化合物系材料、及び金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質に用いられる金属化合物系材料としては、リチウムと合金化可能な金属が含まれていれば特に限定はされず、その形態としては、金属イオン、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であれば、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物の何れであっても特に限定はされない。このような金属化合物系材料としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する金属化合物系材料が挙げられる。なかでも、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、13族又は14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く)を含む材料あることがより好ましく、さらには、ケイ素(Si)、スズ(Sn)又は鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「特定金属元素」という場合がある。)の単体金属若し
くはこれら原子を含む合金、又は、それらの金属(特定金属元素)の化合物であることが好ましく、Siの単体金属、合金及び化合物、並びにSnの単体金属、合金及び化合物がより好ましく、Si単体金属又はSi金属酸化物が特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0255】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、又は、その化合物の酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0256】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また、例えばスズでは、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5~6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0257】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0258】
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位質量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、ケイ素及び/又はスズを含有する以下の化合物も好ましい。
・ケイ素及び/又はスズの酸素に対する元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの酸化物」。
・ケイ素及び/又はスズの窒素に対する元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの窒化物」。
・ケイ素及び/又はスズの炭素に対する元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの炭化物」。
【0259】
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0260】
非水系電解液二次電池における負極は、公知の何れの方法を用いて製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0261】
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙
げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
【0262】
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
【0263】
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
【0264】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
【0265】
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上が好ましく、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下が好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に結着剤等の含有量が不足することにより、得られる負極の強度が不足する傾向にあるためである。なお、2以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0266】
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、特に5質量%以上が好ましく、また、通常30質量%以下、特に25質量%以下が好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となるためである。なお、2以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0267】
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、特に1質量部以上が好ましく、また、通常10質量部以下、特に8質量部以下が好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となるためである。なお、2以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0268】
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2
種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0269】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や結着剤、増粘剤を混合し、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常は水が用いられるが、エタノール等のアルコール類やN-メチルピロリドン等の環状アミド類等の水以外の溶媒を、水に対して30質量%以下程度の割合で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N-メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N-メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0270】
スラリーの粘度は、集電体上に塗布することが可能な粘度であれば、特に制限されない。塗布が可能な粘度となるように、スラリーの調製時に溶媒の使用量等を変えて、適宜調製すればよい。
【0271】
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【0272】
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がさらに好ましく、1.3g・cm-3以上が特に好ましく、また、通常2.2g・cm-3以下が好ましく、2.1g・cm-3以下がより好ましく、2.0g・cm-3以下がさらに好ましく、1.9g・cm-3以下が特に好ましい。
【0273】
集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0274】
<A2-3-4.炭素質材料と金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
本実施形態では、負極活物質として、金属化合物系材料と前記炭素質材料である黒鉛とを含有する。ここで、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質とは、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物の何れかと、炭素質材料が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合体でもよいし、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物が炭素質材料の表面又は内部に存在している複合体でもよい。本明細書において、複合体とは、特に、金属化合物系材料および炭素質材料が含まれていれば特に制限はないが、好ましくは、金属化合物系材料および炭素質材料が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化している。より好ましい形態としては、金属化合物系材料および炭素質材料が、少なくとも複合体表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各々の固体成分が分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、炭素質材料が存在しているような形態である。
【0275】
このような形態は、走査型電子顕微鏡による粒子表面観察、粒子を樹脂に包埋させて樹脂の薄片を作製し粒子断面を切り出す、あるいは粒子からなる塗布膜をクロスセクションポリッシャーによる塗布膜断面を作製し粒子断面を切り出した後、走査型電子顕微鏡による粒子断面観察等々の観察方法にて、観察が可能である。
【0276】
金属化合物系材料と炭素質材料とを含有する負極活物質の合計に対する、金属化合物系材料の含有量は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下、最も好ましくは15質量%以下である。この範囲であると、十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
【0277】
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる炭素質材料については、前記<A2-3-2>に記載の要件を満たすことが好ましい。また、金属化合物系材料については、下記を満たすことが望ましい。
【0278】
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金としては、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命との点から、リチウム合金を形成する単体金属は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。また、リチウム合金を形成する金属化合物系材料としては、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物系材料が好ましい。
【0279】
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物とは、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属珪化物、金属硫化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良い。この中でも、Si又はSi化合物が高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、一般式で表すと、SiOx1,SiNx1,SiCx1、SiZx1Oy1(Zは、C又はNである。)などが挙げられ、好ましくはSiOx1である。なお、上記一般式中のx1の値は特に限定されないが、通常、0≦x1<2である。上記SiOx1は、二酸化ケイ素(SiO2)と金属ケイ素(Si)とを原料として得られる。SiOx1は、黒鉛と比較して理論容量が大きく、さらに非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
【0280】
SiOx1中のx1の値は特に限定されないが、通常、x1は0≦x1<2であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上であり、また、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。この範囲であれば、高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
【0281】
なお、金属化合物系材料が、リチウムと合金化可能な金属を含む材料であることを確認するための手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察および元素分析、蛍光X線による元素分析などが挙げられる。
【0282】
金属化合物系材料の体積基準平均粒子径(メジアン径d50)は、特に限定されないが、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より
好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性の得ることができる。
なお、平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる。
【0283】
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料のBET法により比表面積は、特に限定されないが、通常0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、また、通常、60m2/g以下、好ましくは40m2/gである。Liと合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
【0284】
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、また、通常8質量%以下、好ましくは5質量%以下である。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在していてもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。金属化合物系材料の含有酸素量が前記範囲内であると、SiとOの強い結合により、充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
【0285】
また、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の負極作成については、前記<A2-3-1>炭素質材料に記載のものを用いることができる。
【0286】
<A2-3-5.リチウム含有金属複合酸化物材料、及びリチウム含有金属複合酸化物材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する。)が特に好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0287】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
【0288】
上記金属酸化物が、組成式(4)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、組成式(4)中、0.7≦x1≦1.5、1.5≦y1≦2.3、0≦z1≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0289】
Lix1Tiy1Mz1O4 (4)
(組成式(4)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。)
【0290】
上記の組成式(4)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x1≦1.4、1.5≦y1≦1.7、z1=0
(b)0.9≦x1≦1.1、1.9≦y1≦2.1、z1=0
(c)0.7≦x1≦0.9、2.1≦y1≦2.3、z1=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
【0291】
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3O4、(b)ではLi1Ti2O4、(c)ではLi4/5Ti11/5O4である。また、z1≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3O4が好ましいものとして挙げられる。
【0292】
負極活物質としてのリチウムチタン複合酸化物は、上記した要件に加えて、さらに、下記の(1)~(13)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1種を満たしていることが好ましく、2種以上を同時に満たすことが特に好ましい。
【0293】
(1)BET比表面積
負極活物質として用いられるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、0.5m2・g-1以上が好ましく、0.7m2・g-1以上がより好ましく、1.0m2・g-1以上がさらに好ましく、1.5m2・g-1以上が特に好ましく、また、通常200m2・g-1以下が好ましく、100m2・g-1以下がより好ましく、50m2・g-1以下がさらに好ましく、25m2・g-1以下が特に好ましい。
【0294】
BET比表面積が、上記範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の非水系電解液と接する反応面積が減少し、出力抵抗が増加する場合がある。一方、上記範囲を上回ると、チタンを含有する金属酸化物の結晶の表面や端面の部分が増加し、また、これに起因して、結晶の歪も生じるため、不可逆容量が無視できなくなり、好ましい電池が得られにくい場合がある。
【0295】
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本実施形態におけるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積と定義する。
【0296】
(2)体積基準平均粒子径
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒子径(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒子径(メジアン径d50)で定義される。
【0297】
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒子径は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。
【0298】
体積基準平均粒子径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA-700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径d50を、本実施形態における炭素質材料の体積基準平均粒子径と定義する。
【0299】
リチウムチタン複合酸化物の体積平均粒子径が、上記範囲を下回ると、電極作製時に多
量の結着剤が必要となり、結果的に電池容量が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
【0300】
(3)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合においては、リチウムチタン複合酸化物の平均一次粒子径が、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、また、通常2μm以下であり、1.6μm以下が好ましく、1.3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。体積基準平均一次粒子径が、上記範囲を上回ると、球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下したりするために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達になるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合がある。
【0301】
なお、一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000~100000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0302】
(4)形状
リチウムチタン複合酸化物の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。
【0303】
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子の活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
【0304】
また、板状等軸配向性の粒子であるよりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
【0305】
(5)タップ密度
リチウムチタン複合酸化物のタップ密度は、0.05g・cm-3以上が好ましく、0.1g・cm-3以上がより好ましく、0.2g・cm-3以上がさらに好ましく、0.4g・cm-3以上が特に好ましく、また、通常2.8g・cm-3以下がより好ましく、2.4g・cm-3以下がさらに好ましく、2g・cm-3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、また粒子間の接触面積が減少するため、粒子間の抵抗が増加し、出力抵抗が増加する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、非水系電解液の流路が減少することで、出力抵抗が増加する場合がある。
【0306】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本実施形態におけるリチウムチタン複合酸化物のタップ密度として定義する。
【0307】
(6)円形度
リチウムチタン複合酸化物の球形の程度として、円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
【0308】
リチウムチタン複合酸化物の円形度は、1に近いほど好ましく、通常0.10以上であり、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0309】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用いて行なう。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6~400μmに指定し、粒子径が3~40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本実施形態におけるリチウムチタン複合酸化物の円形度と定義する。
【0310】
(7)アスペクト比
リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比は、通常1以上、また、通常5以下であり、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比の理論下限値である。
【0311】
アスペクト比の測定は、リチウムチタン複合酸化物の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行なう。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の粒子の最長となる径P’と、それと直交する最短となる径Q’を測定し、P’/Q’の平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P’/Q’)を、本実施形態におけるリチウムチタン複合酸化物のアスペクト比と定義する。
【0312】
(8)負極活物質の製造法
リチウムチタン複合酸化物の製造法としては、本実施形態に係る発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
【0313】
例えば、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質とLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を均一に混合し、高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0314】
特に、球状又は楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられる。一例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0315】
また、別の例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型し
て球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0316】
さらに別の方法として、酸化チタン等のチタン原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0317】
また、これらの工程中に、Ti以外の元素、例えば、Al、Mn、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、C、Si、Sn、Agを、チタンを含有する金属酸化物構造中及び/又はチタンを含有する酸化物に接する形で存在していることも可能である。これらの元素を含有することで、電池の作動電圧、容量を制御することが可能となる。
【0318】
(9)電極作製
電極の製造は、公知の何れの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0319】
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、また、通常150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下が望ましい。
【0320】
この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
【0321】
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0322】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは銅(Cu)及び/又はアルミニウム(Al)を含有する金属箔膜であり、より好ましくは銅箔、アルミニウム箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
【0323】
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu-Cr-Zr合金等)を用いることができる。またアルミニウム箔は、その比重が軽いことから、集電体として用いた場合に、電池の質量を減少させることが可能となり、好ましく用いることができる。
【0324】
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
【0325】
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し
、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていてもよい。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm~1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていてもよい。
【0326】
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0327】
集電体の厚さが、上記範囲内であると、強度が向上し塗布が容易となったり、電極の形が安定したりといった点で好ましい。
【0328】
(11)集電体と活物質層の厚さの比
集電体と活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、通常150以下であり、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上であり、0.4以上が好ましく、1以上がより好ましい。
【0329】
集電体と負極活性物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0330】
(12)電極密度
負極活物質の電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がより好ましく、1.3g・cm-3以上がさらに好ましく、1.5g・cm-3以上が特に好ましく、また、3g・cm-3以下が好ましく、2.5g・cm-3以下がより好ましく、2.2g・cm-3以下がさらに好ましく、2g・cm-3以下が特に好ましい。
【0331】
集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、集電体と負極活物質の結着が弱くなり、電極と活物質が乖離する場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
【0332】
(13)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0333】
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の
組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0334】
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を、溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0335】
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメリルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、上述の増粘剤に併せて分散剤等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0336】
負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0337】
負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であるとバインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が低下し電池容量が増加し、また負極電極の強度が保たれるので、電池作製工程上好ましい。
【0338】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0339】
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0340】
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0341】
さらに、増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内であると、粘着剤の塗布性の点で好ましく、また、負極活性物質層に占める活物質の割合が好適であり、電池の容量や負極活性物質間の抵抗の点で好ましい。
【0342】
<A2-4.正極>
以下に非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
【0343】
<A2-4-1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
【0344】
(1)組成
正極活物質としては、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち50モル%以上がNiとCoである遷移金属酸化物であり、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが好ましく、リチウムと少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち50モル%以上がNiとCoである遷移金属酸化物が好ましい。Ni及びCoは、酸化還元の電位が二次電池の正極材として用いるのに好適であり、高容量用途に適しているためである。
【0345】
リチウム遷移金属酸化物の遷移金属成分としては、必須元素として、NiとCoが含まれるが、その他の金属としてMn、V、Ti、Cr、Fe、Cu、Al、Mg、Zr、Er等が挙げられ、Mn、Ti、Fe、Al、Mg、Zr等が好ましい。リチウム遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等が挙げられる。
【0346】
中でも、下記組成式(5)で示される遷移金属酸化物であることが好ましい。
Lia1Nib1Coc1Md1O2・・・(5)
(組成式(5)中、0.9≦a1≦1.1、0.3≦b1≦0.9、0.1≦c1≦0.5、0.0≦d1≦0.5の数値を示し、0.5≦b1+c1かつb1+c1+d1=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(5)中、0.1≦d1≦0.5の数値を示すことが好ましい。
NiやCoの組成比およびその他の金属種の組成比が所定の通りであることで、正極から遷移金属が溶出しにくく、かつ、たとえ溶出したとしてもNiやCoは非水系二次電池内での悪影響が小さいためである。
【0347】
中でも、下記組成式(6)で示される遷移金属酸化物であることがより好ましい。
Lia2Nib2Coc2Md2O2・・・(6)
(組成式(6)中、0.9≦a2≦1.1、0.5≦b2≦0.9、0.1≦c2≦0.2、0.0≦d2≦0.3の数値を示し、c2≦b2かつ0.7≦b2+c2かつb2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(6)中、0.1≦d2≦0.5の数値を示すことが好ましい。
NiおよびCoが主成分であり、かつNiの組成比がCoの組成比と同じか、もしくはより大きいことで、非水系二次電池正極として用いた際に、安定であり、かつ高容量を取り出すことが可能となるからである。
【0348】
中でも、下記組成式(7)で示される遷移金属酸化物であることがさらに好ましい。
Lia3Nib3Coc3Md3O2・・・(7)
(組成式(7)中、0.9≦a3≦1.1、0.35≦b3≦0.9、0.1≦c3≦0.5、0.0≦d3≦0.5の数値を示し、c3<b3かつ0.6≦b3+c3かつb3+c3+d3=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(7)中、0.1≦d3≦0.5の数値を示すことが好ましい。
【0349】
中でも、下記組成式(8)で示される遷移金属酸化物であることが特に好ましい。
Lia4Nib4Coc4Md4O2・・・(8)
(組成式(8)中、0.9≦a4≦1.1、0.5≦b4≦0.9、0.1≦c4≦0.2、0.0≦d4≦0.3の数値を示し、c4<b4かつ0.7≦b4+c4かつb4+c4+d4=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(8)中、0.1≦d4≦0.3の数値を示すことが好ましい。
上記の組成であることで、非水系二次電池正極として用いた際に、特に高容量を取り出すことが可能となるからである。
【0350】
また、上記の正極活物質のうち2種類以上を混合して使用してもよい。同様に、上記の正極活物質のうち少なくとも1種以上と他の正極活物質とを混合して使用してもよい。他の正極活物質の例としては、上記に挙げられていない遷移金属酸化物、遷移金属燐酸化合物、遷移金属ケイ酸化合物、遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
中でも、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物やオリビン型構造を有するリチウム含有遷移金属燐酸化合物が好ましい。具体的にはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物として、LiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。中でも最も構造が安定であり、非水系電解液二次電池の異常時にも酸素放出しにくく、安全性に優れるためである。
また、リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等の燐酸鉄類、LiCoPO4等の燐酸コバルト類、LiMnPO4等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0351】
中でも、リチウム鉄燐酸化合物が好ましい、鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であり、かつ有害性も少ないためである。すなわち、上記の具体例のうち、LiFePO4をより好ましい具体例として挙げることができる。
【0352】
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質(以後、適宜「表面付着物質」という)が付着したものを用いることもできる。表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0353】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることができる。
【0354】
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量に対して、
好ましくは0.1ppm以上であり、1ppm以上がより好ましく、10ppm以上が更に好ましい。また、好ましくは20%以下であり、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。また、付着量が上記範囲内にあると、その効果を十分に発現することができ、リチウムイオンの出入りを阻害することなく抵抗も増加し難くなる。
【0355】
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であってもよい。
【0356】
(4)タップ密度
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g・cm-3以上であり、1.0g・cm-3以上がより好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましい。また、好ましくは4.0g・cm-3以下であり、3.7g・cm-3以下がより好ましい。
【0357】
タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。正極活物質のタップ密度が上記範囲内にあると、正極活物質層形成時に必要な分散媒の量が適度なものとなるため、導電材やバインダーの量も適量となるため、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約されることなく、電池容量への影響も少なくなる。
【0358】
正極活物質のタップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本実施形態における正極活物質のタップ密度として定義する。
【0359】
(5)メジアン径d50
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
メジアン径d50は、好ましくは0.1μm以上であり、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましく、3μm以上が特に好ましく、また、好ましくは30μm以下であり、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましく、15μm以下が特に好ましい。メジアン径d50が上記範囲内であると、高嵩密度品を得易くなり、さらに、粒子内のリチウムの拡散に時間がかからないため、電池特性が低下し難くなる。また、電池の正極作製すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際には、スジ引き等も生じ難くなる。
【0360】
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合することで、正極作製時の充填性を更に向上させることもできる。
正極活物質のメジアン径d50の測定は、0.1質量%ヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液を分散媒として用い、粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA-920)を用いて、正極活物質の分散液に対して5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24に設定して測定する。
【0361】
(6)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、0.05μm以上がより好ましく、0.08μm以上が更に好ましく、0.1μm以上が特に好ましく、また、好ましくは3μm以下であり、2μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.6μm以下が特に好ましい。上記範囲内であると、球状の二次粒子を形成し易くなり、粉体充填性が適度なものとなり、比表面積を十分確保できるため、出力特性等の電池性能の低下を抑制することができる。
なお、正極活物質の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0362】
(7)BET比表面積
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、好ましくは0.2m2・g-1以上であり、0.3m2・g-1以上がより好ましく、0.4m2・g-1以上が更に好ましく、また、好ましくは4.0m2・g-1以下であり、2.5m2・g-1以下がより好ましく、1.5m2・g-1以下が更に好ましい。BET比表面積の値が、上記範囲内であると、電池性能の低下を防ぎ易い。さらに、十分なタップ密度を確保でき、正極活物質形成時の塗布性が良好となる。
【0363】
正極活物質のBET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて測定する。具体的には、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定する。該測定で求められる比表面積を、本実施形態における正極活物質のBET比表面積と定義する。
【0364】
(8)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本実施形態に係る発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0365】
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0366】
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0367】
<A2-4-2.正極構造と作製法>
以下に、正極の構成及びその作製法について説明する。
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子とバインダーとを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法でも作製することができる。例えば、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
【0368】
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であると、電気容量を十分確保できる。さらに、正極の強度も十分なものとなる。なお、正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上の活物質を組み合わせて用いる際は、前記リチウムとマンガンを含有する複合酸化物を粉体の成分として用いることが好ましい。コバルト又はニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることが望ましいためである。
【0369】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0370】
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、導電性を十分確保できる。さらに、電池容量の低下も防ぎやすい。
【0371】
(バインダー)
正極活物質層の製造に用いるバインダーは、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法で正極を作製する場合は、バインダーは電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば特に限定されないが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。な
お、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0372】
正極活物質層中のバインダーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。バインダーの割合が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持でき、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。さらに、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
【0373】
(液体媒体)
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質、導電材、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒体等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0374】
(増粘剤)
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、本実施形態に係る発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0375】
増粘剤を使用する場合には、正極活物質と増粘剤の合計に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。増粘剤の割合が、上記範囲内であると、塗布性が良好となり、さらに、正極活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
【0376】
(圧密化)
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下が更に好ましく、3g・cm-3以下が特に好ましい。正極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の
浸透性が低下することなく、特に高電流密度での充放電特性が良好となる。さらに、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
【0377】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0378】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は、適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができる。さらに、取り扱い性も良好となる。
【0379】
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。さらに、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐことができる。
【0380】
(電極面積)
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0381】
(放電容量)
非水系電解液を用いる場合、非水系電解液二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ahであり、より好ましくは4Ah以上、また、好ましくは100Ah以下であり、より好ましくは70Ah以下であり、特に好ましくは50Ah以下になるように設計する。非水系電解液二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量が、上記範囲内であると、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり過ぎず、電力効率の悪化を防ぐことができる。さらに、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
【0382】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0383】
<A2-5.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0384】
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0385】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0386】
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0387】
セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0388】
セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
【0389】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0390】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、フッ素樹脂を結着剤として用いて、90%粒子径が1μm未満のアルミナ粒子
を含有する複合多孔層を、正極の両面の表層に形成させることが挙げられる。
【0391】
<A2-6.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する。)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0392】
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0393】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0394】
[外装ケース]
外装ケースの材質は、用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば、特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0395】
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変性樹脂が好適に用いられる。
【0396】
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0397】
[外装体]
非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
【0398】
具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
【0399】
外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0400】
<B.第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本実施形態に係る発明はこれらに限定されるものではない。また、本実施形態に係る発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0401】
本実施形態である非水系電解液は、正極、負極及び非水系電解液を備える非水系電解液二次電池であって、該正極が下記組成式(14)で表される金属酸化物を含有し、
Li
a101Ni
b101Co
c101M
d101O
2・・・(14)
(上記式(14)中、a101、b101、c101及びd101は、0.90≦a101≦1.10、0.50≦b101≦0.98、0.01≦c101<0.50、0.01≦d101<0.50の数値を示し、b101+c101+d101=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
前記非水系電解液が下記一般式(C)で表される化合物を含有する、非水系電解液二次電池である。
【化28】
(式(C)中、R
101~R
103は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基を示し、Xは、水素、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。)
【0402】
<B1.非水系電解液>
<B1-1.一般式(C)で表される化合物>
非水系電解液は、下記一般式(C)で表される化合物を含有することを特徴としている。
【化29】
式(C)中、R
101~R
103は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリール基を示し、Xは、水素、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。
【0403】
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rb)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rb)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rb)、スルホニル基(-SO2-Rb)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Rb)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Rb)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Rb)、エーテル基(-O-Rb)、アクリル基、メタクリル基、ハロゲン(好ましくは、フッ素)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Rbは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数2~10のアルキニル基を示す。なお、これら置換基における炭素数は、R101~R103における炭素数にカウントしない。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rb)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rb)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rb)であり、更に好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rb)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rb)であり、特に好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rb)であり、最も好ましくはシアノ基である。
【0404】
R101~R103に係る炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基又はヘキシル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基又はn-ペンチル基、好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基又はtert-ブチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基又はtert-ブチル基である。
【0405】
R101~R103に係る炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。中でも、正極活物質への濃縮が進行しやすくなることからフェニル基が好ましい。
【0406】
Xに係る炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-メチル2-ブテニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基又は2-ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基又はメタリル基、特に好ましくはビニル基又はアリル基である。上述のアルケニル基であると、アルカリ不純物との反応が好適に制御できるためである。
【0407】
Xに係る炭素数2~10のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基又は3-ブチニル基、さらに好ましくはエチニル基、2-プロピニル基又は3-ブチニル基、特に好ましくはエチニル基又は2-プロピニル基である。上述のアルキニル基であると、アルカリ不純物との反応が好適に制御できるためである。
【0408】
一般式(C)で表される化合物の正極活物質表面への濃縮が進行しやすくなることから、一般式(C)中、R101~R103はメチル基又はエチル基であることが最も好ましい。また、R101~R103の何れか1つがメチル基であるならば、R101~R103がすべてメチル基である必要はない。例えば以下のような組み合わせが好ましい。(R101、R102、R103):(メチル基、メチル基、エチル基)、(メチル基、メチル基、n-ブチル基)、(メチル基、メチル基、tert‐ブチル基)、(メチル基、メチル基、フェニル基)、(メチル基、エチル基、エチル基)、(メチル基、フェニル基、フェニル基)。
【0409】
一般式(C)中、Xは、好ましくは水素原子、ビニル基、アリル基又はメタリル基であり、より好ましくはビニル基、アリル基又はメタリル基であり、さらに好ましくはビニル基である。一般式(C)で表される化合物のアルカリ不純物との反応活性が高まり、好適に不純物を失活させる。
【0410】
本実施形態で用いる化合物は、一般式(C)で表される化合物が使用されるが、具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
【化30】
【0411】
【0412】
【0413】
さらに好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物は化合物の分子サイズが好適であり、化合物の正極表面濃縮率が高まる。
【化33】
【0414】
【0415】
特に好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物はアルカリ不純物との反応が好適に進行する。
【化35】
【0416】
【0417】
最も好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物はアルカリ不純物との反応が最も効果的に進行する。
【化37】
【0418】
【0419】
非水系電解液全量に対する、一般式(C)で表される化合物の含有量の合計は、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下、最も好ましくは2.0質量%以下である。
非水系電解液全量に対する一般式(C)で表される化合物の含有量の合計が、上記の範囲であれば、アルカリ不純物との反応が好適に進行し、高温保存時のガス発生が抑制される。
【0420】
非水系電解液には、一般式(C)で表される化合物の他に、後述のジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩及びビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群から選択される一種以上を併用することで、アルカリ不純物起因の反応がさらに抑制され、膨れにくい電池が得られる点で好ましい。
【0421】
一般式(C)の化合物を含有することで、高温保存時のガス発生抑制効果が得られるメカニズムについて、以下の様に推測する。
遷移金属にNiを含む遷移金属酸化物は、大気中での安定性が低く、表面に炭酸リチウムに代表されるアルカリ不純物が存在する。遷移金属のNi比率が高くなると不純物の量は増加していく。この不純物が電池内に存在すると高温保存時に電解液中の環状、鎖状カーボネートとアルカリ不純物が反応し、開環反応やエステル交換反応が進行する。この反応により、CO2ガスが発生するため、高温保存時に電池が膨れる問題があった。
この問題に対し、本実施形態では一般式(C)で表される化合物を電解液中に含有させる。一般式(C)で表される化合物は、構造内にアルカリ不純物との反応活性が高いXの部位を有する。これにより、高温保存時に一般式(C)で表される化合物とアルカリ不純物が優先的に反応することで、アルカリ不純物と電解液の反応を抑制し、高温保存時のガス発生抑制に資すると考える。
【0422】
なお、一般式(C)で表される化合物の酸化電位は電解液成分の酸化電位と比較して非常に低いため、遷移金属にNiを含まない場合は一般式(C)で表される化合物の酸化分解反応が優先的に進行してしまい、高温保存時のガス発生は増大してしまう。
【0423】
なお、電解液に、一般式(C)で表される化合物を含有する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。
【0424】
一般式(C)で表される化合物の含有量とは、非水系電解液製造時、非水系電解液の電池への注液時点又は電池として出荷された何れかの時点での含有量を意味する。
【0425】
<B1-2.ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩>
非水系電解液は更に、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩及びビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してもよい。
これらの塩からなる群に属する化合物の含有量がいずれも、前記非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
これらの塩についてのより具体的な実施態様は、第1の実施形態ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、ビスフルオロスルホニルイミド構造を有する塩は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0426】
<B1-3.電解質>
電解質としては、通常、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩は、第1の実施形態と同様とすることができ、特にLiPF6が好ましい。
【0427】
<B1-4.非水系溶媒>
非水系溶媒は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0428】
<B1-5.助剤>
助剤は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0429】
<B2.非水系電解液二次電池>
非水系電解液二次電池は、集電体及び該集電体上に設けられた正極活物質層を有する正極と、集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有しかつイオンを吸蔵及び放出し得る負極と、上述した非水系電解液とを備えるものである。
【0430】
<B2-1.電池構成>
電池構成は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0431】
<B2-2.非水系電解液>
非水系電解液は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0432】
<B2-3.負極>
負極は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0433】
<B2-4.正極>
正極は、正極活物質の組成を除き、第1の実施形態と同様とすることができる。
以下に非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
【0434】
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
【0435】
(1)組成
非水系電解液二次電に用いる正極は、組成式(14)で表されるリチウム遷移金属酸化物が使用される。
Lia101Nib101Coc101Md101O2・・・(14)
(式(14)中、0.90≦a101≦1.10、0.50≦b101≦0.98、0.01≦c101<0.50、0.01≦d101<0.50の数値を示し、b101+c101+d101=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErから
なる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0436】
組成式(14)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等が挙げられる。
【0437】
組成式(14)である遷移金属酸化物が下記組成式(15)で示されることが好ましい。アルカリ不純物と一般式(C)で表される化合物が好適に反応し、高温保存時のガス抑制効果がより高まるからである。
Lia102Nib102Coc102Md102O2・・・(15)
(式(15)中、0.90≦a102≦1.10、0.50≦b102≦0.90、0.05≦c102≦0.30、0.05≦d102≦0.30の数値を示し、かつb102+c102+d102=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0438】
組成式(14)である遷移金属酸化物が下記組成式(16)で示されることがさらに好ましい。アルカリ不純物と一般式(C)で表される化合物が好適に反応し、高温保存時のガス抑制効果がさらに高まるからである。
Lia103Nib103Coc103Md103O2・・・(16)
(式(16)中、0.90≦a103≦1.10、0.50≦b103≦0.80、0.10≦c103≦0.30、0.10≦d103≦0.30の数値を示し、かつb103+c103+d103=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0439】
組成式(16)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等が挙げられる。
【0440】
組成式中、MはMn、Alが好ましい。遷移金属酸化物の構造安定性が高まり、繰り返し充放電した際の構造劣化が抑制される。中でも、Mnがさらに好ましい。
【0441】
また、上記の正極活物質のうち2種類以上を混合して使用してもよい。同様に、上記の正極活物質のうち少なくとも1種以上と他の正極活物質とを混合して使用してもよい。他の正極活物質の例としては、上記に挙げられていない遷移金属酸化物、遷移金属燐酸化合物、遷移金属ケイ酸化合物、遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
【0442】
中でも、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物やオリビン型構造を有するリチウム含有遷移金属燐酸化合物が好ましい。具体的にはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物として、LiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。中でも最も構造が安定であり、非水系電解液二次電池の異常時にも酸素放出しにくく、安全性に優れるためである。
【0443】
また、リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等の燐酸鉄類、LiCoPO4等の燐酸コバルト類、LiMnPO4等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、C
u、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0444】
中でも、リチウム鉄燐酸化合物が好ましい、鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であり、かつ有害性も少ないためである。すなわち、上記の具体例のうち、LiFePO4をより好ましい具体例として挙げることができる。
【0445】
<B2-5.セパレータ>
セパレータは、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0446】
<B2-6.電池設計>
電池設計は、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0447】
<C.第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本実施形態は、これらの具体的内容に限定はされず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0448】
本実施形態である非水系電解液は、エネルギーデバイスに用いる非水系電解液であって、
以下の(A)及び(B)を含有する非水系電解液である。
(A)下記一般式(21)で示される化合物
(B)F―P―O結合、F―S―O結合またはF―S=O結合から選ばれる少なくとも一種の結合を有するアニオンを含有する塩
【化39】
(一般式(21)において、R
211、R
212およびR
213はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基である。Z
1は水素または炭素数5以下のアルケニル基である。)
【0449】
ここで、前記アニオンが、下記(i)~(vi)のいずれかであることが好ましい。
【化40】
【0450】
<C1.非水系電解液>
非水系電解液は、(A)上記一般式(21)で示される化合物と、(B)アニオンがF-P-O結合、F-S-O結合またはF-S=O結合から選ばれる少なくとも一種の結合を有するアニオンを含有する塩、とを同時に含有する。非水系電解液は電解質を非水系溶媒に溶解させたものであるので、以下、電解質、非水系溶媒、(A)、(B)、の順に説明する。
【0451】
<C1-1.電解質>
非水系電解液に用いる電解質は、特に限定されず、目的とするエネルギーデバイスの特性に応じて、任意に採用することができる。
前記電解質の具体例としては、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、Li
BF4、LiAlF4等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、L
iN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C2F5SO2)、LiN(CF3SO2)
(C3F7SO2)、リチウム環状1,2-エタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,
3-プロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,4-パーフルオロブタンジスルホニルイミド、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5S
O2)2、LiBF3(CF3)、LiBF3(C2F5)、LiBF2(CF3)2、LiBF2
(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩;
KPF6、NaPF6、NaBF4、CF3SO3Na等のナトリウム塩またはカリウム塩;
等が挙げられる。
これらのうち、リチウム塩が好ましいが、なかでもLiPF6、LiBF4、LiCF3
SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミドが好ましく、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2がより好ましく、特にLiPF6が好ましい。
【0452】
また、非水系電解液は、電解質としてヘキサフルオロリン酸塩を含有していることが好ましい。ヘキサフルオロリン酸塩は、ヘキサフルオロリン酸アニオンが電気化学的に安定であるため好ましく、これにより、非水系電解液を使用して得られるエネルギーデバイスの充放電効率を向上させることができる。また、当該塩は塩の解離度を非常に高くすることができ、電解液中での電荷担体となるイオン濃度を高くすることができる。
【0453】
以上説明した電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも、無機リチウム塩の2種の併用、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩の併用が、エネルギーデバイスの連続充電時のガス発生または高温保存後の劣化が効果的に抑制されるので好ましい。
特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩
とLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩との併用が好ましい。
【0454】
LiPF6とLiBF4とを併用する場合、電解質全体に占めるLiBF4の割合が、0.001質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、LiBF4の解離度の低さのために、非水系電解液の抵抗が高くなることが抑制されうる。
一方、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩とLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、電解質全体に占める無機リチウム塩の割合は、70質量%以上、99.9質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、一般にヘキサフルオロリン酸塩と比較して分子量が大きい含フッ素有機リチウム塩の割合が高くなりすぎて、非水系電解液全体に占める非水系溶媒の比率が低下し、非水系電解液の抵抗が高くなることが抑制されうる。
【0455】
非水系電解液の最終的なエネルギーデバイスにおける組成中でのリチウム塩等の電解質の濃度は、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.5mol/L以上、3mol/L以下である。電解質濃度がこの下限以上であると、十分な非水系電解液のイオン伝導率が得られやすく、上限以下であると、粘度が上昇しすぎることが避けられる。以上により、良好なイオン伝導率と、エネルギーデバイスの性能を確保しやすい。リチウム塩等の電解質の濃度は、より好ましくは0.6mol/L以上、更に好ましくは0.8mol/L以上、また、より好ましくは2mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。
【0456】
<C1-2.非水系溶媒>
非水系電解液が含有する非水系溶媒は、エネルギーデバイスとした時に電池特性に対して悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に制限されないが、以下に掲げる非水系溶媒の内の1種以上であることが好ましい。
非水系溶媒の例としては、鎖状カーボネート及び環状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び環状カルボン酸エステル、鎖状エーテル及び環状エーテル、含燐有機溶媒、含硫黄有機溶媒、含硼素有機溶媒等が挙げられる。
【0457】
前記鎖状カーボネートの種類は、特に限定されず、例えば、ジアルキルカーボネートが挙げられる。これらのなかでも、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が、それぞれ1~5のものが好ましく、1~4のものがより好ましく、1~3のものが特に好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチル
カーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、等が好ましいジアルキルカーボネートとして挙げられる。
これらの中でも、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点でより好ましい。
【0458】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート、フッ素化エチルメチルカーボネート、フッ素化ジエチルカーボネート等が挙げられる。
【0459】
前記フッ素化ジメチルカーボネートとしては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
【0460】
前記フッ素化エチルメチルカーボネートとしては、2-フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0461】
前記フッ素化ジエチルカーボネートとしては、エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチル-2'-フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエ
チル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2'-フルオロエチルカーボネ
ート、2,2,2-トリフルオロエチル-2',2'-ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0462】
尚、フッ素化鎖状カーボネートは、非水系溶媒のみならず下記<C1-5.添加剤>に記載の添加剤としても有効な機能を発現する。フッ素化鎖状カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、本明細書において、非水系溶媒としての配合量及び添加剤の配合量として記載した配合量をそのまま踏襲できる。
【0463】
前記環状カーボネートの種類は、特に限定されず、例えば、アルキレンカーボネートが挙げられ、なかでもアルキレンカーボネートの構成するアルキレン基の炭素数は2~6が好ましく、特に好ましくは2~4である。環状カーボネートとして具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート(2-エチルエチレンカーボネート、シス及びトランス2,3-ジメチルエチレンカーボネート)等が挙げられる。
これらの中でも、誘電率が高いために非水系電解液エネルギーデバイスの抵抗を低減させることができることから、環状カーボネートとしてエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートが好ましく、特にエチレンカーボネートが好ましい。
【0464】
前記鎖状カルボン酸エステルの種類も特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸-i-ブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸-i-プロピル、プロピオン酸-n-ブチル、プロピオン酸-i-ブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチルが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましい。
【0465】
前記環状カルボン酸エステルの種類も特に限定されず、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられる。
これらのなかでも、γ-ブチロラクトンが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましい。
【0466】
前記鎖状エーテルの種類も特に限定されず、例えば、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
これらのなかでも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましい。
【0467】
前記環状エーテルの種類も特に限定はされず、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0468】
前記含燐有機溶媒の種類も特に限定されず、例えば、燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、亜燐酸トリメチル、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリフェニル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0469】
前記含硫黄有機溶媒の種類の種類も特に限定されず、例えば、エチレンサルファイト、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド等を挙げることができる。
【0470】
前記含硼素有機溶媒の種類も特に限定されず、例えば、2,4,6-トリメチルボロキシン、2,4,6-トリエチルボロキシン等のボロキシンなどが挙げられる。
【0471】
以上説明した非水系溶媒のなかでも、鎖状カーボネート及び環状カーボネートまたは鎖状カルボン酸エステル及び環状カルボン酸エステルが、エネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましく、それらのなかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトンがより好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチルがより好ましい。
【0472】
これらの非水系溶媒は1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の併用が好ましい。例えば、環状カーボネート類の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
非水系溶媒の好ましい組合せの1つは、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を主体とする組合せである。なかでも、非水系溶媒全体に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、好ましくは80容量%以上、より好ましくは85容量%以上、特に好ましくは90容量%以上であり、かつ環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との体積比(環状カーボネート類の総体積:鎖状カーボネート類の総体積)が、好ましくは0.5:9.5~7:3、より好ましくは1:9~5:5、更に好ましくは1.5:8.5~4:6、特に好ましくは2:8~3.5:6.5の組合せである。これらの非水系溶媒の組み合わせを用いて作製されたエネルギーデバイスでは、サイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスがよくなるので好ましい。
【0473】
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の好ましい組み合わせの例としては、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類の組み合わせが挙げられ、例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0474】
これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも好ましい。プロピレンカーボネートを含有する場合、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、前述の通り99:1~40:60とする必要があり、また、前記容量比は、好ましくは95:5~45:55であり、より好ましくは85:15~50:50である。更に、非水系溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量を、0.1容量%以上、10容量%以下とすると、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせの特性を維持したまま、更に、優れた放電負荷特性が得られるので好ましい。非水系溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量は、より好ましくは1容量%、特に好ましくは2容量%以上であり、また、より好ましくは8容量%以下、特に好ましくは5容量%以下である。
これらの中で、鎖状カーボネート類として非対称鎖状カーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有するもの、或いはこれらに加えて更にプロピレンカーボネートを含有するものが、エネルギーデバイスのサイクル特性と放電負荷特性とのバランスがよいので好ましい。特に、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が1~2であるものが好ましい。
【0475】
好ましい非水系溶媒の他の例は、鎖状カルボン酸エステル類を含有するものである。特に、上記、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の混合溶媒に、鎖状カルボン酸エステル類を含有するものが、エネルギーデバイスの放電負荷特性向上の観点から好ましく、この場合、鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチルが、特に好ましい。非水系溶媒に占める鎖状カルボン酸エステル類の容量は、好ましくは5容量%以上、より好ましくは8容量%以上、特に好ましくは10容量%以上であり、好ましくは50容量%以下、より好
ましくは35容量%以下、特に好ましくは30容量%以下、とりわけ好ましくは25容量%以下である。
【0476】
<C1-3.一般式(21)で示される化合物>
非水系電解液は、下記一般式(21)で示される化合物(以下、「特定シラン」と称する場合がある)を必須成分として含有する。非水系電解液においては、特定シランのうち1種を用いても、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
【化41】
一般式(21)において、R
211、R
212およびR
213はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基である。Z
1は水素または炭素数5以下のアルケニル基である。
【0477】
(A)特定シランと、後述する(B)F―P―O結合、F―S―O結合またはF―S=O結合から選ばれる少なくとも一種の結合を有するアニオンを含有する塩(以下「特定塩」と称する場合がある)とを同時に含有する非水系電解液を使用することで、エネルギーデバイスの高温放置後インピーダンスを低く保つことが可能となる。この作用・原理は明確ではないが、本発明者らは以下のように考える。ただし、本実施形態に係る発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0478】
特定シランは、陰イオンとの反応性の高い部位(一般式(21)で示すZ1-Si部)を1つのみ持っており、反応性が適切であることが特徴である。また、そもそもシリコン元素の特徴として、フッ素と結合をつくりやすく、Si-F結合は安定であるという特徴がある。
【0479】
一方、特定塩は、電気陰性度の大きいフッ素原子および酸素原子と、リン原子が同時に結合した構造、またはフッ素原子および酸素原子と、硫黄原子が同時に結合した構造を有しており、リン原子または硫黄原子が非常に電子不足になっているため、P-F結合またはS-F結合が切断されやすい化合物であると推定している。つまり、特定塩は、電極上で分解した際にフッ素イオンが生成しやすく、非水系電解液中の電解質の陽イオンと絶縁性のフッ化物塩を形成してしまいやすいと考えられる。
【0480】
ここで、特定シランと、特定塩とを同時に使用した場合では、先に記した特定塩が分解して生成したフッ素イオンが、特定シランと反応するものと考えられる。フッ素イオンが特定シランと反応しない場合は、電解質の陽イオンと絶縁性のフッ化物塩を形成してしまい、電極上にイオン伝導性の低い堆積層を形成してしまうが、その堆積層の形成を抑制できているものと推定している。また、フッ素イオンと特定シランとの反応生成物は界面活性作用があると考えられ、電極が多孔質である場合の実効表面積の増加にも寄与しているものと推定している。
【0481】
上記一般式(21)で示される特定シランにおいて、Z1は水素または炭素数5以下のアルケニル基であるが、水素、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基または4-ペンテニル基であることが好ましく、中でも、水素、ビニル基、アリル基または3-ブテニル基であることがより好ましく、水素、ビニル基またはアリル基であることが特に好ましく、水
素であることが最も好ましい。電解液の粘度を低く保ちやすく、悪影響を最低限にとどめ置くことができるためである。
【0482】
また、R211、R212およびR213はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基であるが、炭素数6以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基またはi-プロピル基であることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。電極上にて皮膜状の構造物となった場合に、立体障害になりにくく、絶縁性に寄与するためである。
【0483】
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rc)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rc)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rc)、スルホニル基(-SO
2-Rc)、スルホニルオキシ基(-O(SO
2)-Rc)、アルコキシスルホニル基(-(SO
2)-O-Rc)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Rc)、エーテル基(-O-Rc)、アクリル基、メタクリル基、ハロゲン(好ましくは、フッ素)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Rcは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数2~10のアルキニル基を示す。なお、これら置換基における炭素数は、R
211~R
213における炭素数にカウントしない。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rc)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rc)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rc)であり、更に好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rc)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rc)であり、特に好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rc)であり、最も好ましくはシアノ基である。
上記一般式(21)で示される特定シランは、下記一般式(22)で示される特定シランであることが好ましい。
【化42】
(一般式(22)において、R
221、R
222およびR
223はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基である。Z
2は水素、ビニル基またはアリル基である。)
【0484】
以上説明した特定シランの分子量は好ましくは300以下、より好ましくは280以下、特に好ましくは250以下、最も好ましくは200以下である。上記分子量の範囲内にあると、特定活性シランが非水系電解液を構成する非水系溶媒に対する溶解性に優れ、より効果的に優れた効果を奏しやすくなる。
【0485】
一般式(21)で示される特定シランの好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定シランの中でも非水系電解液中での溶解性に優れ、非水系電解液の生産性を高めやすいためである。
【化43】
【0486】
【0487】
さらに好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定シランの中でも分子サ
イズが好適であり、所望の作用を効率的に起こすことができると推定できるためである。
【化45】
【0488】
【0489】
より好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定シランの中でも電解液中での安定性に優れると推定できるためである。
【化47】
【0490】
【0491】
特に好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定シランの中でも立体障害が好適であり、所望の反応を速やかに起こすことが可能と推定できるためである。
【化49】
【0492】
【0493】
非水系電解液全体に対する特定シランの合計の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.2質量%以上であることが特に好ましく、0.3質量%以上であることが最も好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましく、1.5質量%以下であることが最も好ましい。特定シランの濃度が過剰であると、効果が飽和してしまい、非水系電解液のコストばかりが増加してしまう。
なお、特定シランは市販のものを用いてもよく、また、製造する場合にはその製造方法は限定されず、公知の方法により製造したものを用いることができる。
【0494】
<C1-4.F-P-O結合、F-S-O結合またrはF-S=O結合から選ばれる少なくとも一種の結合を有するアニオンを含有する塩>
非水系電解液は、F-P-O結合、F-S-O結合またはF-S=O結合から選ばれる少なくとも一種の結合を有するアニオンを含有する塩(特定塩)を必須成分として含有する。非水系電解液においては、特定塩のうち1種を用いても、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
【0495】
非水系電解液全体に対する特定塩の合計の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.2質量%以上であることが特に好ましく、0.3質量%以上であることが最も好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましく、1.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0496】
また、特定塩の含有物質量として、特定シランの含有物質量よりも多いことが好ましい。特定塩の含有物質量が特定シランの物質量よりも1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。特定シランが全部消費されきることで、長期使用後のデバイス中にて想定外の副反応を招かずに済むと考えられるためである。
【0497】
また、特定塩の有するアニオンは、F-P-O結合、F-S-O結合またはF-S=O結合から選ばれる少なくとも一種を有するアニオンであるが、F-P-O結合またはF-S=O結合を有するアニオンであることが好ましく、F-P-O結合を持つアニオンであることがより好ましい。リン原子または硫黄原子がより適切に電子不足になることで、先述の作用が起こりやすくなるためである。
【0498】
また、特定塩のアニオンの価数については特段限定されないが、非水系電解液への溶解性の観点から1価、2価または3価であることが好ましく、1価または2価であることが
より好ましく、1価のアニオンであることが特に好ましい。
【0499】
特定塩のアニオンの好ましい具体例としては以下に示すアニオンが挙げられる。
【化51】
【0500】
中でも、より好ましいアニオンの具体例としては以下に示すアニオンが挙げられる。
【化52】
【0501】
中でも、更に好ましいアニオンの具体例としては以下に示すアニオンが挙げられる。
【化53】
【0502】
中でも、特に好ましいアニオンの具体例としては以下に示すアニオンが挙げられる。アニオンの立体障害が小さいため、先述の作用が起こりやすいためである。
【化54】
【0503】
また、特定塩のカチオンの価数については特段限定されないが、非水系電解液への溶解性の観点から1価、2価または3価であることが好ましく、1価または2価であることがより好ましく、1価のカチオンであることが特に好ましい。
【0504】
具体的には、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンまたは4級アンモニウムカチオンであることが好ましく、アルカリ金属カチオンまたは4級アンモニウムカチオンであることがより好ましく、アルカリ金属カチオンであることが特に好ましい。中でもリチウムイオンまたはナトリウムイオンであることが好ましく、リチウムイオンであることが最も好ましい。4級アンモニウムカチオンの内では、テトラメチルアンモニウムイオンまたはテトラエチルアンモニウムイオンまたはテトラブチルアンモニウムイオンまたは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオンが好ましく、テトラエチルアンモニウムイオンであることが特に好ましい。
【0505】
特定塩の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【化55】
【0506】
特定塩のより好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【化56】
【0507】
特定塩の特に好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【化57】
【0508】
特定塩の最も好ましい例としては、以下のものが挙げられる。アニオンの安定性に優れ、上述の作用を効率よく起こすことができるためである。
【化58】
【0509】
なお、特定塩は市販のものを用いても良く、また、製造する場合にはその製造方法は限定されず、公知の方法により製造したものを用いることができる。
【0510】
<C1-5.添加剤>
非水系電解液は、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤は、従来公知のものを任意に用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0511】
添加剤の例としては、過充電防止剤や、エネルギーデバイスの高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。これらの中でも、高温保存後の容量維持特性や抵抗増加を抑制するための助剤として、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、環状スルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「特定添加剤」と略記する場合がある)を含有することが好ましい。以下、特定添加剤とその他添加剤に分けて説明する。
【0512】
<C1-5-1.特定添加剤>
特定添加剤はいずれも、負極上にて還元されて皮膜状構造物を形成する化合物であり、電極反応に好適な皮膜状構造物を特定シランや特定塩と協奏的に形成するものと考えられる。
【0513】
特定添加剤の分子量は、特に限定されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、50以上、250以下であるものが好ましい。この範囲であると、非水系電解液中での特定添加剤の溶解性が良好で、添加の効果を十分に発現することができる。
【0514】
また、特定添加剤の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販のものを用いてもよい。
【0515】
また、特定添加剤は、非水系電解液中に、いずれか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
【0516】
<C1-5-1-1.フッ素原子を有する環状カーボネート>
特定添加剤のうち、フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「F化カーボネート」と略記する場合がある)としては、フッ素原子を有するものであれば、特に限定されず、任意のF化カーボネートを用いることができる。
F化カーボネートが有するフッ素原子の数も、1個以上であれば特に限定されず、2個以下が特に好ましい。
F化カーボネートの例としては、フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
【0517】
フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体の具体例としては、フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのF化カーボネートの中でも、フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネートが好ましく、特にフルオロエチレンカーボネートは、安定な皮膜状の構造物の形成に寄与することができ、最も好適に用いられる。
【0518】
F化カーボネートの含有量は、特に限定されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、10.0質量%以下である。
F化カーボネートの含有量がこの下限以上であると、エネルギーデバイスに、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、エネルギーデバイスの製造コストの増加を避けることができる。F化カーボネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは8.0質量%以下、特に好ましくは6.0質量%以下である。
【0519】
尚、F化カーボネートは、添加剤のみならず、上記1-2に記載の溶媒としても有効な機能を発現する。F化カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、記載した配合量をそのまま踏襲できる。
【0520】
<C1-5-1-2.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート>
特定添加剤のうち、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和カーボネート」と略記する場合がある)としては、炭素-炭素二重結合や炭素-炭素三重結合等の炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネートであれば、特に限定されず、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。
不飽和カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート類、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類等が挙げられる。
【0521】
ビニレンカーボネート類の具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0522】
炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートは、安定な皮膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
【0523】
不飽和カーボネートの含有量は、特に限定されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、5.0質量%以下である。
不飽和カーボネートの含有量がこの下限以上であると、エネルギーデバイスに、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、エネルギーデバイスの初期の抵抗増加を避けることができる。不飽和カーボネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
【0524】
<C1-5-1-3.環状スルホン酸エステル>
特定添加剤のうち、環状スルホン酸エステルとしては、特に限定されず、任意の環状スルホン酸エステルを用いることができる。
環状スルホン酸エステルの例としては、飽和環状スルホン酸エステル、不飽和環状スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0525】
前記飽和環状スルホン酸エステルの具体例としては、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、2-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、3-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、4-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、1-メチル-1,4-ブタンスルトン、2-メチル-1,4-ブタンスルトン、3-メチル-1,4-ブタンスルトン、4-メチル-1,4-ブタンスルトン等が挙げられる。
【0526】
前記不飽和環状スルホン酸エステルの具体例としては、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1-ブテン-1,4-スルトン、2-ブテン-1,4-スルトン、3-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、4
-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン等が挙げられる。
【0527】
以上挙げた中でも、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトンが、入手の容易さや安定な皮膜状の構造物の形成に寄与することができる点から、より好適に用いられる。
【0528】
環状スルホン酸エステルの含有量は、特に限定されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、3.0質量%以下である。
環状スルホン酸エステルの含有量がこの下限以上であると、エネルギーデバイスに、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、エネルギーデバイスの製造コストの増加を避けることができる。環状スルホン酸エステルの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.8質量%以下である。
【0529】
<C1-5-1-4.好ましい特定添加剤>
上記特定添加剤としては、フッ素原子を有する環状カーボネートまたは炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートを含有することが好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネート及び炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートを含有することがさらに好ましい。
【0530】
<C1-5-2.その他添加剤>
特定添加剤以外の添加剤としては、過充電防止剤、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。
【0531】
<C1-5-2-1.過充電防止剤>
過充電防止剤の具体例としては、トルエン、キシレン、2-フルオロトルエン、3-フルオロトルエン、4-フルオロトルエン等のトルエン誘導体;
ビフェニル、2-メチルビフェニル、3-メチルビフェニル、4-メチルビフェニル等の無置換またはアルキル基で置換されたビフェニル誘導体;
o-ターフェニル、m-ターフェニル、p-ターフェニル等の無置換またはアルキル基で置換されたターフェニル誘導体;
無置換またはアルキル基で置換されたターフェニル誘導体の部分水素化物;
シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等のシクロアルキルベンゼン誘導体;クメン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン等のベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、t-ヘキシルベンゼン、1,1,3-トリメ
チル-3-フェニルインダン等のベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の酸素原子を有する芳香族化合物;
等の芳香族化合物が挙げられる。
【0532】
更に、他の過充電防止剤の具体例としては、フルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、1,6-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物;
等の芳香族化合物も挙げられる。
【0533】
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、任意の組合せで併用する場合にも上記に例示した同一の分類の化合物で併用してもよく、異なる分類の化合物で併用してもよい。
【0534】
過充電防止剤を配合する場合、過充電防止剤の配合量は、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%以上、10質量%以下の範囲である。
非水系電解液に過充電防止剤を、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない範囲で含有させることで、万が一、誤った使用法や充電装置の異常等の過充電保護回路が正常に動作しない状況になり過充電されたとしても問題のないように、エネルギーデバイスの安全性を向上させることができるので好ましい。
【0535】
<C1-5-2-2.助剤>
一方、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート等の不飽和結合を有するカーボネートに該当するもの以外のカーボネート化合物;
エチレンサルファイト等の環状サルファイト;
メタンスルホン酸メチル、ブスルファン等の鎖状スルホン酸エステル;
スルホラン、スルホレン等の環状スルホン;
ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン等の鎖状スルホン;
ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド類;
N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド等のスルホンアミド類等の含硫黄化合物;
1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
2-(ジエトキシホスホリル)酢酸プロパルギル、2-(ジエトキシホスホリル)酢酸2-ブチニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸プロパルギル、メタンスルホニルオキシ酢酸プロパルギル、リチウム エチル-プロパルギルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル-2-ブチニルオキシカルボニルホスホネート、硫酸プロパルギルリチウム、硫酸2-ブチニルリチウム、硫酸プロパルギルトリメチルシリル、2-ブチン-1,4-ジイル ジメシラート、2-ブチン-1,4-ジイル ジエタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメート、2-ブチン-1,4-ジイル ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジイル ジプロピオネート、4-ヘキサジイン-1,6-ジイル ジメタンスルホネート、メタンスルホン酸プロパルギル、メタンスルホン酸2-ブチニル、エタンスルホン酸プロパルギル、ビニルスルホン酸プロパルギル、プロパル
ギルメチルカーボネート、プロパルギルエチルカーボネート、ジプロパルギルカーボネート、ぎ酸プロパルギル、酢酸プロパルギル、メタクリル酸プロパルギル、シュウ酸メチルプロパルギル、シュウ酸エチルプロパルギル、シュウ酸ジプロパルギル等の三重結合化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のジニトリル化合物;
1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキサ-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等の多価イソシアネート化合物;
メタンスルホン酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロメタンスルホン酸ペンタフルオロフェニル、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート等のペンタフルオロフェニル化合物;
メチル硫酸リチウム、エチル硫酸リチウム、メチル硫酸ナトリウム、エチル硫酸ナトリウム等の硫酸ハーフエステル等。
なお、これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0536】
また、非水系電解液がこれらの助剤を含有する場合、その含有量は本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%以上、10質量%以下の範囲である。
【0537】
<C1-6.非水系電解液の製造方法>
非水系電解液は、前述の非水系溶媒に、電解質と、特定シランと、特定塩と、必要に応じて前述の「特定添加剤」や「その他添加剤」などを溶解することにより調製することができる。
【0538】
非水系電解液を調製するに際しては、非水系電解液の各原料、すなわち、リチウム塩等の電解質、特定シラン、非水系溶媒、特定添加剤、その他添加剤等は、予め脱水しておくことが好ましい。脱水の程度としては、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下となるまで脱水することが望ましい。
【0539】
非水系電解液中の水分を除去することで、水の電気分解、水とリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解等が生じ難くなる。脱水の手段としては特に制限はないが、例えば、脱水する対象が非水系溶媒等の液体の場合は、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いればよい。また脱水する対象が電解質等の固体の場合は、分解が起きる温度未満で加熱して乾燥させればよい。
【0540】
[C2.非水系電解液を用いたエネルギーデバイス]
非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、金属イオンを吸蔵または放出可能な複数の電極と、以上説明した非水系電解液とを備えるものである。エネルギーデバイスの種類としては、一次電池、二次電池、リチウムイオンキャパシタをはじめとする金属イオンキャパシタが具体例として挙げられる。中でも、一次電池または二次電池が好ましく、二次電池が特に好ましい。なお、これらのエネルギーデバイスに用いられる非水系電解液は、高分子やフィラー等で疑似的に固体化された、所謂ゲル電解質であることも好ましい。以下、当該エネルギーデバイスについて説明する。
【0541】
<C2-1.非水系電解液二次電池>
<C2-1-1.電池構成>
非水系電解液二次電池は、非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0542】
<C2-1-2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の非水系電解液を用いる。なお、本実施形態に係る発明の趣旨を逸脱しない範囲において、非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
【0543】
<C2-1-3.負極>
負極に使用される負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属化合物系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これら1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
なかでも、炭素質材料および金属化合物系材料が好ましい。金属化合物系材料の中では、ケイ素を含む材料が好ましく、したがって負極活物質としては、炭素質材料およびケイ素を含む材料が特に好ましい。
また、第一の実施形態と同様の負極とすることも好ましい。
【0544】
<C2-1-3-1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、特に限定されないが、下記(ア)~(エ)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよい二次電池を与えるので好ましい。
(ア)天然黒鉛
(イ)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400℃~3200℃の範囲で1回以上熱処理して得られた炭素質材料
(ウ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ち、かつ/またはその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(エ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち、かつ/またはその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(ア)~(エ)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0545】
上記(イ)における人造炭素質物質または人造黒鉛質物質の具体例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの;
ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材;
ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物;
炭化可能な有機物及びこれらの炭化物;並びに、
炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n-へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液状の炭化物などが挙げられる。
【0546】
その他、上記(ア)~(エ)の炭素質材料はいずれも従来公知であり、その製造方法は当業者によく知られており、またこれらの市販品を購入することもできる。
【0547】
<C2-1-3-2.金属化合物系材料>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムと合金化可能な金属が含まれていれば特に限定されず、その形態としては、金属イオン、例えば、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に限定されず、リチウムと合金を形成する単体金属若しくは合金、またはそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物が使用できる。このような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。なかでも、リチウムと合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、周期表13族または14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く。また以降では、金属及び半金属をまとめて「金属」と呼ぶ。)を含む材料であることがより好ましく、更には、ケイ素(Si)、スズ(Sn)または鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「SSP金属元素」という場合がある)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、または、それらの金属(SSP金属元素)の化合物であることが好ましい。最も好ましいのはケイ素である。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0548】
<C2-1-3-3.リチウム含有金属複合酸化物材料>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある。)が特に好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、リチウムイオン非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、二次電池の出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0549】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
【0550】
負極活物質として好ましいリチウムチタン複合酸化物としては、下記一般式(23)で表されるリチウムチタン複合酸化物が挙げられる。
LixTiyMzO4 (23)
(一般式(23)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。また、一般式(23)中、0.7≦x200≦1.5、1.5≦y200≦2.3、0≦z200≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。)
【0551】
<C2-1-3-4.負極の構成、物性、調製方法>
上記活物質材料を含有する負極及び電極化手法、集電体については、公知の技術構成を採用することができるが、次に示す(I)~(VI)のいずれか1項目または複数の項目を同時に満たしていることが望ましい。
【0552】
(I)負極作製
負極の製造は、本実施形態に係る発明の効果を著しく制限しない限り、公知のいずれの方法をも用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリー状の負極形成材料とし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって、負極活物質層を形成することができる。
【0553】
(II)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負
極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔である。
【0554】
(III)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液の注液工程の直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、二次電池の容量が減少する場合がある。
【0555】
(IV)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は、特には限定されず、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がより好ましく、1.3g・cm-3以上が更に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3g・cm-3以下がより好ましく、2.5g・cm-3以下が更に好ましく、1.7g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊されにくく、二次電池の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を防ぎ易くなる。さらに、負極活物質間の導電性を確保することができ、電池抵抗が増大することなく、単位容積当たりの容量を稼ぐことができる。
【0556】
(V)バインダー・溶媒等
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常、負極活物質に対して、溶媒にバインダー(結着剤)、増粘剤等を混合したものを加えて調製される。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0557】
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物;
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても
よい。
【0558】
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0559】
前記水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、前記有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。
なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0560】
負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、8質量部以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であると、電池容量に寄与しないバインダーの割合が多くならないので、電池容量の低下を招き難くなる。さらに、負極の強度低下も招き難くなる。
【0561】
特に、負極形成材料であるスラリーがSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
【0562】
また、スラリーがポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、また、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましい。
【0563】
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0564】
増粘剤を用いる場合、負極活物質100質量部に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましい。また、前記割合は通常5質量部以下であり、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内にあると、スラリーの塗布性が良好となる。さらに、負極活物質層に占める負極活物質の割合も適度なものとなり、電池容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する問題が生じ難くなる。
【0565】
(VI)負極板の面積
負極板の面積は、特に限定されないが、対向する正極板よりもわずかに大きくして、正極板が負極板から外にはみ出すことがないように設計することが好ましい。また、二次電池の充放電を繰り返したときのサイクル寿命や高温保存による劣化を抑制する観点から、できる限り正極に等しい面積に近づけることが、より均一かつ有効に働く電極割合を高めて特性が向上するので好ましい。特に、二次電池が大電流で使用される場合には、この負極板の面積の設計が重要である。
【0566】
<C2-1-4.正極>
以下に非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
【0567】
<C2-1-4-1.正極活物質>
以下に前記正極に使用される正極活物質について説明する。
【0568】
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが好ましく、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属燐酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
【0569】
前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記複合酸化物の具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO4等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0570】
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、Li1.1Mn1.9Al0.1O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
中でも、リチウムとニッケルとコバルトを含有する複合酸化物がより好ましい。コバルトとニッケルを含有する複合酸化物は、同じ電位で使用した際の容量を大きくとることが可能となるためである。
【0571】
一方でコバルトは資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることも望ましい。すなわち、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物が特に好ましい。
【0572】
また、化合物としての安定性や、製造の容易さによる調達コストも鑑みると、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物も好ましい。すなわち、上記の具体例のうちLiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、Li1.1Mn1.9Al0.1O4、LiMn1.5Ni0.5O4等も好ましい具体例として挙げることができる。
【0573】
前記リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記燐酸化合物の具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等の燐酸鉄類、LiCoPO4等の燐酸コバルト類、LiMnPO4等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐
酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0574】
前記リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ケイ酸化合物の具体例としては、例えば、Li2FeSiO4等のケイ酸鉄類、Li2CoSiO4等のケイ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ケイ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0575】
前記リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ホウ酸化合物の具体例としては、例えば、LiFeBO3等のホウ酸鉄類、LiCoBO3等のホウ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ホウ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
また、第二の実施形態と同様の正極活物質とすることも好ましい。
【0576】
(2)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本実施形態に係る発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0577】
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0578】
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0579】
<C2-1-4-2.正極構造と作製法>
以下に、正極の構成及びその作製法について説明する。
【0580】
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子とバインダーとを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法でも作製することができる。例えば、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、またはこれらの材料を液体媒体に溶解または分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥するこ
とにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
【0581】
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であると、電気容量を十分確保できる。さらに、正極の強度も十分なものとなる。なお、正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成または異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上の活物質を組み合わせて用いる際は、前記リチウムとマンガンとを含有する複合酸化物を粉体の成分として用いることが好ましい。前記の通り、コバルトまたはニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることが望ましいためである。
【0582】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0583】
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、導電性を十分確保できる。さらに、電池容量の低下も防ぎやすい。
【0584】
(バインダー)
正極活物質層の製造に用いるバインダーは、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
【0585】
塗布法で正極を作製する場合は、バインダーは電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解または分散される材料であれば特に限定されないが、その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。
なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0586】
正極活物質層中のバインダーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。バインダーの割合が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持でき、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。さらに、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
【0587】
(液体媒体)
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質、導電材、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0588】
前記水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。前記有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;
キノリン、ピリジン等の複素環化合物;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;
ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;
N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。
なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0589】
(増粘剤)
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスとを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
【0590】
増粘剤としては、本実施形態に係る発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0591】
増粘剤を使用する場合には、正極活物質と増粘剤の質量の合計に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、スラリーの塗布性が良好となり、さらに、正極活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、二次電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
【0592】
(圧密化)
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上
が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下が更に好ましく、3g・cm-3以下が特に好ましい。
正極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下することなく、特に二次電池の高電流密度での充放電特性が良好となる。さらに、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
【0593】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0594】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0595】
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができる。さらに、取り扱い性も良好となる。
【0596】
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。さらに、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐことができる。
【0597】
(電極面積)
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく、40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0598】
(放電容量)
非水系電解液を用いる場合、非水系電解液二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ah(アンペアアワー)であり、より好ましくは4Ah以上、また、好ましくは20Ah以下であり、より好ましくは10Ah以下になるように設計する。
上記範囲内であると、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり
過ぎず、電力効率の悪化を防ぐことができる。さらに、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
【0599】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0600】
<C2-1-5.セパレータ>
非水系電解液二次電池において、正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0601】
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シートまたは不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0602】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはポリオレフィン、ガラスフィルターであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0603】
上記セパレータの厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、好ましくは50μm以下であり、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータの厚さが、上記範囲内であると、絶縁性や機械的強度が良好なものとなる。さらに、レート特性等の電池性能の低下を防ぐことができ、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度の低下も防ぐことができる。
【0604】
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、好ましくは20%以上であり、35%以上がより好ましく、45%以上が更に好ましく、また、好ましくは90%以下であり、85%以下がより好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲内であると、膜抵抗が大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の悪化を抑制できる。さらに、セパレータの機械的強度も適度なものとなり、絶縁性の低下も抑制できる。
【0605】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、好ましくは0.5μm以下であり、0.2μm以下がより好ましく、また、好ましくは0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲内であると、短絡が生じ難くなる。さらに、膜抵抗も大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の低下を防ぐことができる。
【0606】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0607】
セパレータの形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状のセパレータでは、平均孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製のバインダーを用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/または負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を使用し、かつフッ素樹脂をバインダーとして使用して多孔層を形成させることが挙げられる。
【0608】
<C2-1-6.電池設計>
(電極群)
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、好ましくは40%以上であり、50%以上がより好ましく、また、好ましくは95%以下であり、90%以下がより好ましい。電極群占有率が、上記範囲内であると、電池容量が小さくなり難くなる。また、適度な空隙スペースを確保できるため、電池が高温になることによって部材が膨張したり非水系電解液の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、二次電池としての充放電繰り返し性能や高温保存特性等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合を回避することができる。
【0609】
(集電構造)
集電構造は特に限定されるものではないが、非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0610】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0611】
(保護素子)
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター、温度ヒューズ、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない電池設計にすることがより好ましい。
【0612】
(外装体)
非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
【0613】
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、または、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミ
ニウムまたはアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、または、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0614】
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0615】
<C2-2.非水系電解液一次電池>
正極に金属イオンを吸蔵可能な材料を用い、負極に金属イオンを放出可能な材料を用いる。正極材料としてはフッ化黒鉛、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物が好ましい。負極材料としては亜鉛やリチウムなどの金属単体が好ましい。非水系電解液には、上述の非水系電解液を用いる。
【0616】
<C2-3.金属イオンキャパシタ>
正極に電気二重層を形成できる材料を用い、負極に金属イオンを吸蔵・放出可能な材料を用いる。正極材料としては活性炭が好ましい。また負極材料としては、炭素質材料が好ましい。非水系電解液には、上述の非水系電解液を用いる。
【0617】
<C2-4.電気二重層キャパシタ>
電極には電気二重層を形成できる材料を用いる。電極材料としては活性炭が好ましい。非水系電解液には、上述の非水系電解液を用いる。
【実施例】
【0618】
[実験A]
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0619】
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
【0620】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【0621】
<実施例A1-1~A1-22、比較例A1-1~A1-4>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(NMC)85質量%と、導電材としてアセチレンブラック10質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥
した後、プレスして正極とした。
【0622】
[負極の作製]
平均粒子径0.2μmのSi微粒子50gを平均粒子径35μmの鱗片状黒鉛2000g中に分散させ、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)に投入し、ローター回転数7000rpm、180秒間、装置内を循環又は滞留させて処理し、Siと黒鉛粒子との複合体を得た。得られた複合体を、焼成後の被覆率が、7.5%になるように炭素質物となる有機化合物としてコールタールピッチを混合し、2軸混練機により混練・分散させた。得られた分散物を、焼成炉に導入し、窒素雰囲気下で1000℃、3時間、焼成した。得られた焼成物は、更にハンマーミルで粉砕後、篩(45μm)を実施し、負極活物質を作製した。前記測定法で測定した、珪素元素の含有量、平均粒子径d50、タップ密度、比表面積はそれぞれ、2.0質量%、20μm、1.0g/cm3、7.2m2/gであった。
上述の負極活物質と同様の方法によって、表1に表される種々のSi含有量の負極活物質1~3を作製した。負極活物質1は上述負極活物質そのものである。Si含有量は、Si微粒子と黒鉛粒子との合計(100質量%)に対するSi微粒子の質量濃度(質量%)である。
【0623】
【0624】
負極活物質に対して、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、負極活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン-ブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作製した。
【0625】
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(体積容量比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させたものに対して、さらに、ビニレンカーボネート(VC)を2.0質量%添加した(これを基準電解液1と呼ぶ)。実施例A1-1~A1-22、比較例A1-1~A1-4は基準電解液1全体に対して、下記表2に記載の割合で化合物1~24を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例A1-1は基準電解液1そのものである。基準電解液1全体に対して、下記表2に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。なお、表中の「含有量(質量%)」は、非水系電解液100質量%中の濃度である。
【0626】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら
挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、ラミネート型電池を作製した。
【0627】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流-定電圧(CC-CV)充電した。その後、0.05Cで2.5Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0VまでCC-CV充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電し、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電し非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0628】
初期コンディショニングを行った電池の厚みを測定したのち、セルを45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、100サイクル実施した。その後、初期コンディショニング後と同様に電池の厚み変化を測定し、サイクル充放電に伴う電池の電極厚み変化を「電池膨れ」とした。下記表2に、比較例A1-1の電池膨れを、100とした際の電池膨れを示す。
【0629】
【0630】
表2から明らかなように、実施例A1-1~実施例A1-18で製造した電池は、比較例A1-1で製造した電池に対して、電池の膨れを好適に抑制していることがわかる。さらに、化合物2または10と特定塩を組み合わせることで、電池の膨れはさらに抑制されることから組み合わせによる相乗効果が顕著に確認される(実施例A1-19~実施例A1-22)。
また、一般式(A)、(B)で表される化合物以外の化合物(比較例A1-2~比較例A1-4)は電池膨れの抑制効果が確認されないことから、一般式(A)、(B)で表される化合物と、Liと合金化可能な金属粒子と、黒鉛粒子と、を含有する負極活物質とを組み合わせることで、充放電に伴う電池の膨れを好適に抑制できる。
【0631】
<実施例A2-1~A2-3、比較例A2-1>
[正極の作製]
実施例A1と同様に正極を作製した。
【0632】
[負極の作製]
負極活物質(黒鉛:SiO=90:10;質量比)に対して、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン-ブタジエンゴムの水
性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、負極活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン-ブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作製した。
【0633】
[非水系電解液の調製]
実施例A1で使用した基準電解液1を使用した。実施例A2-1~A2-3は基準電解液1全体に対して、下記表3に記載の割合で化合物を加えて非水系電解液を調製した。比較例A2-1は、基準電解液1そのものである。
【0634】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、上記の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0635】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流-定電圧(CC-CV)充電した。その後、0.05Cで2.5Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0VまでCC-CV充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電し、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電し非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0636】
初期コンディショニングを行った電池の厚みを測定したのち、セルを45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、100サイクル実施した。その後、初期コンディショニング後と同様に電池の厚み変化を測定し、サイクル充放電に伴う電池の電極厚み変化を「電池膨れ」とした。下記表3に、比較例A2-1の電池膨れを、100とした際の電池膨れを示す。
【0637】
【表3】
表3から明らかなように、実施例A2-1~実施例A2-3で製造した電池は、比較例A2-1で製造した電池に対して、電池の膨れを好適に抑制していることがわかる。これより、一般式(A)、(B)で表される化合物と、Liと合金化可能な金属粒子と、黒鉛粒子と、を含有する負極活物質と、を組み合わせることで、充放電に伴う電池の膨れを好適に抑制できる。
【0638】
<比較例A3-1~A3-4>
[正極の作製]
実施例A1と同様の正極を使用した。
【0639】
[負極の作製]
Si微粒子と黒鉛粒子との合計(100質量%)に対するSi微粒子の質量濃度が0質量%である負極。
負極活物質を97.5質量部、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作製した。
Si微粒子と黒鉛粒子との合計(100質量%)に対するSi微粒子の質量濃度が100質量%である負極。
負極活物質として、ケイ素粉末とバインダーを混合し、これらにN-メチルピロリドン溶液を加え、ディスパーザーで混合してスラリー状とした。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ20μmの銅箔上に均一に塗布して負極とし、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して負極とした。なお、この負極は摂氏60度で12時間減圧乾燥して用いた。
【0640】
[非水系電解液の調製]
実施例A1で使用した基準電解液1を使用した。比較例A3-1~A3-4は基準電解液1全体に対して、下記表4に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例A3-4は、基準電解液1そのものである。
【0641】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0642】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流-定電圧(CC-CV)充電した。その後、0.05Cで2.5Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0VまでCC-CV充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電し、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電し非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0643】
初期コンディショニングを行った電池の厚みを測定したのち、セルを45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、100サイクル実施した。その後、初期コンディショニング後と同様に電池の厚み変化を測定し、サイクル充放電に伴う電池の電極厚み変化を「電池膨れ」とした。下記表4に、比較例A3-4の電池膨れを、100とした際の電池膨れを示す。
【0644】
【0645】
表4から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を含有する電解液を使用し、製造した電池(比較例A3-1~A3-3)は、比較例A3-4と電池の膨れの抑制効果が確認されないことが分かる。これより、一般式(A)、(B)で表される化合物と、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子と、を含有する負極活物質以外と、の組み合わせは、充放電に伴う電池の膨れの抑制ができないといえる。
【0646】
[実験B]
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0647】
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
【0648】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【化87】
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【化97】
【0649】
<実施例B1-1~B1-10、比較例B1-1~B1-6>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.0Ni0.5Co0.2Mn0.3O2)90質量部と、導電材としてアセチレンブラック7質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0650】
[負極の作製]
天然黒鉛98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した
。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥した後、プレスして負極とした。
【0651】
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)との混合物(容量比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2mol/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させた(これを基準電解液1と呼ぶ)。基準電解液1に対して、さらに、ビニレンカーボネート(VC)とモノフルオロエチレンカーボネート(FEC)とをそれぞれ2.0質量%ずつ(非水系電解液中の濃度として)添加した(これを基準電解液2と呼ぶ)。基準電解液1、2に対して、下記表5に記載の化合物を添加剤として加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例B1-1及びB1-2は、それぞれ基準電解液1及び2そのものである。なお、表中の「含有量(質量%)」は、基準電解液1を100質量%とした時の含有量である。
【0652】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の正極、負極及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、上記調製後の非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、ラミネート型の非水系電解液二次電池を作製した。
【0653】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、上記の方法で作製した非水系電解液二次電池を、0.05C(1Cとは、充電または放電に1時間かかる電流値のことを示す。以下同様。)に相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。続いて0.2Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電(以下、CC-CV充電と記載)を行った。その後、45℃に72時間保持しエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、初期コンディショニングを行った。
【0654】
[充電保存試験]
初期コンディショニング後の非水系電解液二次電池を再度、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電を行った後、60℃、2週間の条件で高温保存を行った。その後、非水系電解液二次電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「充電保存ガス量」とした。下記表5に、比較例B1-1、B1-2の充電保存ガス量を100とした際の充電保存ガス量の比を示す。
【0655】
【表5】
表5から明らかなように、実施例B1-1~B1-10で製造した非水系電解液二次電池は、比較例B1-1~B1-6で製造した非水系電解液二次電池に対して、高温保存時の発生ガス量が減少していることがわかる。
すなわち、化合物B4~B6のケイ素化合物に比べ、一般式(C)で表される化合物B1~B3、B8のケイ素化合物を含む非水系電解液は、非水系電解液二次電池の高温保存時の発生ガス量を大幅に低減できることがわかる。
【0656】
<実施例B2-1~B2-6、比較例B2-1~B2-3>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.0Ni0.6Co0.2Mn0.2O2)94質量部と、導電材としてアセチレンブラック3質量部と、結着剤としてPVDF3質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0657】
[負極の作製]
実施例B1-1と同様にして、負極を作製した。
【0658】
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、EMC、ジメチルカーボネート(DMC)との混合物(容量比2:4:4)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2mol/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、VCと化合物B7とをそれぞれ1.0質量%ずつ(非水系電解液中の濃度として)添加した(これを基準電解液3と呼ぶ)。基準電解液3に対して、下記表6に記載の化合物を添加剤として加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例2-1は基準電解液3そのものである。なお、表中の「含有量(質量%)」は、基準電解液3を100質量%とした時の含有量である。
【0659】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、上記調製後の非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、ラミネート型の非水系電解液二次電池を作製した。
【0660】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、、上記の方法で作製した非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、45℃に72時間保持しエージングを実施した。その後、0.2Cで2.8Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.8Vまで放電し、初期コンディショニングを行った。
【0661】
[充電保存試験]
初期コンディショニング後の非水系電解液二次電池を再度、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電を行った後、60℃、2週間の条件で高温保存を行った。その後、非水系電解液二次電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「充電保存ガス量」とした。下記表6に、比較例B2-1の充電保存ガス量を100とした際の充電保存ガス量の比を示す。
【0662】
【0663】
表6から明らかなように、一般式(C)で表されるケイ素化合物及びジフルオロリン酸塩(化合物B7)を含む非水系電解液は、実施例B1の結果と同様、非水系電解液二次電池の高温保存時の発生ガス量を大幅に低減できていることが分かる。また、一般式(C)で表される化合物以外の化合物B13、B14に対しても、良好なガス抑制効果を有することが分かる。
【0664】
<比較例B3-1~B3-2>
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)97質量部と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)1.5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化し
た。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0665】
[負極の作製]
実施例B1-1と同様の負極を作製した。
【0666】
[非水系電解液の調製]
実施例B1-1で調製した基準電解液2に対して、下記表7に記載の化合物を添加剤として加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例C3-1は基準電解液2そのものである。なお、表中の「含有量(質量%)」は、基準電解液1を100質量%とした時の含有量である。
【0667】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の非水系電解液及び正極を用いたこと以外は、実施例B1-1と同様にラミネート型の非水系電解液二次電池を作製した。
【0668】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
実施例B1-1と同様に、非水系電解液二次電池の初期コンディショニングを行った。
【0669】
[充電保存試験]
実施例B1-1と同様にして充電保存試験を行った。下記表7に、比較例B3-1の充電保存ガス量を100とした際の充電保存ガス量の比を示す。
【0670】
【0671】
表7から明らかなように、組成式(14)で表される活物質以外の正極と一般式(C)で表される化合物を組み合わせると高温保存時の発生ガス量は増大することが分かる。
すなわち、組成式(14)で表されるNi含有活物質と一般式(C)で表される化合物を組み合わせた時のみ、非水系電解液二次電池の高温保存時の発生ガス量を大幅に低減できることがわかる。
【0672】
<比較例B4-1~4-3>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.0Ni0.33Co0.33Mn0.33O2)85質量部と、導電材としてアセチレンブラック10質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
[負極の作製]
実施例B1-1と同様の負極を作製した。
[非水系電解液の調製]
実施例B1-1で調製した基準電解液2に対して、下記表8に記載の化合物を添加剤と
して加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例B4-1は基準電解液2そのものである。なお、表中の「含有量(質量%)」は、基準電解液2を100質量%とした時の含有量である。
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の非水系電解液及び正極を用いたこと以外は、実施例B1-1と同様にラミネート型の非水系電解液二次電池を作製した。
【0673】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
実施例B1-1と同様に、非水系電解液二次電池の初期コンディショニングを行った。[充電保存試験]
実施例B1-1と同様にして充電保存試験を行った。下記表8に、比較例B4-1の充電保存ガス量を100とした際の充電保存ガス量の比を示す。
【0674】
【表8】
表8から明らかなように、組成式(14)で表される活物質以外の正極と一般式(C)で表される化合物を組み合わせると高温保存時の発生ガス量はむしろ増大することが分かる。
【0675】
[実験C]
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0676】
なお、実施例及び比較例にて非水系電解液の構成成分として使用した化合物を表9に示す。以下、LiDFP、FOPL、LiFS、FSIL、HBS、TES、TMVSの呼称を用いて記載する。
【表9】
【0677】
<<実施例C1-1~C1-5、比較例C1-1~C1-7>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例C1-1]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:3:4)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中の濃度として)の濃度で溶解させ、更にLiDFPを0.72質量%、HBSを0.46質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。この非水系電解液を用いて下記の方法で非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0678】
[実施例C1-2]
HBSを溶解させず、代わりにTESを0.72質量%の量で溶解させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0679】
[実施例C1-3]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにFOPLを0.72質量%、さらにT
ESを0.72質量%の量で溶解させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0680】
[実施例C1-4]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにLiFSを0.72質量%、さらにT
ESを0.72質量%の量で溶解させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0681】
[実施例C1-5]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにFSILを0.36質量%、さらにT
ESを0.72質量%の量で溶解させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0682】
[比較例C1-1]
LiDFPおよびHBSを溶解させなかった以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0683】
[比較例C1-2]
HBSを溶解させなかった以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0684】
[比較例C1-3]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにFOPLを0.72質量%の量で溶解させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0685】
[比較例C1-4]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにLiFSを0.72質量%の量で溶解
させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0686】
[比較例C1-5]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにFSILを0.36質量%の量で溶解
させた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0687】
[比較例1-6]
LiDFPを溶解させなかった以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0688】
[比較例1-7]
LiDFPおよびHBSを溶解させず、代わりにTESを0.72質量%の量で溶解さ
せた以外は実施例C1-1と同様に非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した
。
【0689】
<正極の作製>
正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33O2)85質量部、導電材としてのカーボンブラックを10質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部とを、N-メチル-2-ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
【0690】
<負極の作製>
グラファイト粉末98質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100質量部と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
【0691】
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の各実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0692】
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
上記の方法で作製した二次電池を25℃の恒温槽中において0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電した。この時の放電容量を仮初期容量とした。続いて0.2Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電した後、電池を60℃に12時間保持しエージングを実施した。その後、25℃において0.2Cで2.5Vまで放電した。続いて、0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.2Cで2.5Vまで放電した。この時の放電容量を初期容量とした。このようにして非水系電解液二次電池を安定させた。
【0693】
・交流インピーダンス測定
安定させた非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において0.2Cで3.7Vまで定電流-定電圧充電した後、25℃において交流インピーダンス測定を行った。2Hzの時のインピーダンスの絶対値を電池の前インピーダンスとした。その後、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電し、満充電状態とした。
【0694】
・4週間放置試験
満充電状態の非水系電解液二次電池を60℃の恒温槽にて1週間放置した。その後、25℃において0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電し、満充電状態とした後再度60℃の恒温槽にて1週間放置した。その後さらに25℃において0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電し、満充電状態とした後再度60℃の恒温槽にて2週間放置し、計4週間60℃に放置した。
【0695】
・交流インピーダンス測定
放置試験後の非水系電解液二次電池を25℃において0.3Cで2.5Vまで放電を行った後、4.2Vまで定電流-定電圧充電し、0.3Cで2.5Vまで放電を行い、さら
に0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電し、0.3Cで2.5Vまで放電を行い、放置試験後の非水系電解液二次電池を安定させた。
安定化後の非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において0.2Cで3.7Vまで定電流-定電圧充電した後、25℃において交流インピーダンス測定を行った。2Hzの時のインピーダンスの絶対値を電池の4週後インピーダンスとした。
【0696】
下記表10に、
{(4週後インピーダンス)-(前インピーダンス)}/(前インピーダンス)}で算出される4週放置時インピーダンス増分の値を、比較例C1-1の値で規格化して示す。
【0697】
【0698】
表10から明らかなように、単独で使用した場合は4週放置時インピーダンス増分を増加させてしまう特定シランであるが、特定塩と同時使用した場合では特定塩の単独使用時よりも4週放置時インピーダンス増分を減少させる驚くべき効果が示されている。
【0699】
下記表11に、
((仮初期容量)-(初期容量))で算出される形成不可逆容量の値を、比較例C1-1の値で規格化して示す。
【0700】
【0701】
形成不可逆容量に関しても、単独で使用した場合は形成不可逆容量を増加させてしまう特定シランであるが、LiDFPやLiFSと同時使用した際に形成不可逆容量を減少させる驚くべき効果が示されている。
【0702】
<<実施例C2-1~C2-6、比較例C2-1~C2-7>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2mol/L(非水系電解液中の濃度として)の濃度で溶解させ、更にビニレンカーボネート(VC)を2.0質量%、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を2.0質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した(これを基準電解液1と呼ぶ)。基準電解液1全体に対して、下記表12に記載の割合で化合物を含有させて電解液を調製した。ただし、比較例1-1は基準電解液1そのものである。なお、表中の「含有量(質量%)」は、非水系電解液100質量%中の濃度である。この非水系電解液を用いて下記の方法で非水系電解液二次電池を作成し、下記評価を実施した。
【0703】
<正極の作製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)97質量部、導電材としてのアセチレンブラックを1.5質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を1.5質量部とを、N-メチル-2-ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
【0704】
<負極の作製>
グラファイト粉末98質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100質量部と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
【0705】
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の各実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0706】
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
上記の方法で作製した二次電池を25℃の恒温槽中において0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。続いて、4.1Vまで定電流-定電圧充電した後、電池を45℃に72時間保持しエージングを実施した。その後0.2Cで3.0Vまで放電した。この時の不可逆容量{(エージング前充電容量)-(エージング後放電容量)}をエージングロスとした。このようにして非水系電解液二次電池を安定させた。
【0707】
・交流インピーダンス測定
安定させた非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において0.2Cで3.75Vまで定電流-定電圧充電した後、0℃において交流インピーダンス測定を行った。50mHzの時のインピーダンスの絶対値を電池の前インピーダンスとした。
続いて0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.2Cおよび1.0Cで3.0Vまで放電した。この時の0.2C容量と1.0C容量の比{(1.0C容量)/(0.2C容量)}を高率放電能力とした。
【0708】
・高温放置試験
0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した満充電状態の非水系電解液二次電池を60℃の恒温槽にて14日間放置した。その後、25℃において0.2Cで3.0Vまで放電を行った。
【0709】
・交流インピーダンス測定
放置試験後の非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において0.2Cで3.75Vまで定電流-定電圧充電した後、0℃において交流インピーダンス測定を行った。50mHzの時のインピーダンスの絶対値を電池の2週後インピーダンスとした。
【0710】
下記表12に、
エージングロス、高率放電能力、
および{(2週後インピーダンス)-(前インピーダンス)}/(前インピーダンス)}で算出される2週放置時インピーダンス増分の値を、比較例2-1の値で規格化して示す。
【0711】
【0712】
表12から明らかなように、VCとFECを含有する非水系電解液において、特定シランと特定塩とを同時使用した場合では、それぞれの単独使用の場合の挙動からは推定できない程度で、2週放置後インピーダンス増分を減少させる驚くべき効果が示されている。
また、エージングロスに関しても、単独で使用した場合はエージングロスを増加させてしまう特定シランであるが、特定塩と同時使用した際にエージングロスを減少させる驚くべき効果が示されている。
加えて、高率放電能力についても、単独で使用した場合は高率放電能力を減少させてしまう特定塩を、特定シランと同時使用すると高率放電能力を増加させる驚くべき効果が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0713】
本発明の第1、2の態様による非水系電解液によれば、非水系電解液二次電池の高温保存時の発生ガス量を抑制し、繰り返し充放電に伴う電池の膨化を改善でき、ラミネート型電池用の非水系電解液として有用である。また、第3の態様による非水系電解液によれば、特性劣化の少ないエネルギーデバイスを提供することができるので、前記電解液はエネルギーデバイスが用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。
また、非水系電解液及びこれを用いた非水系電解液二次電池は、非水系電解液二次電池を用いる公知の各種用途に用いることが可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、携帯オーディオプレーヤー、小型ビデオカメラ、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。