(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】トンネル掘削機及び計測方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/11 20060101AFI20230421BHJP
E21D 9/10 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
E21D9/11 Z
E21D9/10 K
(21)【出願番号】P 2019102082
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 栄一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 紳一
(72)【発明者】
【氏名】福井 類
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206848(JP,A)
【文献】特開2003-082986(JP,A)
【文献】特開2005-207090(JP,A)
【文献】特開平04-110642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04- 9/13
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタリングを有するディスクカッタと、
三次元形状計測装置による前記
カッタリングの摩耗量の計測に使用され
、前記カッタリングとの相対位置が一定の部位に設置される部材と、
前記三次元形状計測装置によって取得される基準状態における前記カッタリング及び前記部材の三次元形状データである基準三次元データと、前記三次元形状計測装置によって取得される稼動状態における前記カッタリング及び前記部材の三次元形状データである計測三次元データとに基づき、前記カッタリングの摩耗量を算出するコントローラと、
を備え
たトンネル掘削機。
【請求項2】
前記部材は、異なる方向を向く複数の面を有する、
請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記部材は、前記トンネル掘削機のカッタチャンバ側に設置される、
請求項1又は2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記部材は、前記三次元形状計測装置の検出領域に前記カッタリングとともに設置される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記ディスクカッタが装着されるケースをさらに備え、
前記部材は、前記ディスクカッタをケースに装着する際に、前記ディスクカッタの動きを拘束する位置決め部に設置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
前記ディスクカッタが装着されるケースをさらに備え、
前記部材は前記ケースに設置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記部材は、前記カッタリングを軸方向に挟んで保持する保持部に設置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項8】
前記部材は、前記ディスクカッタの周囲に複数設置される、
請求項1から7のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項9】
前記部材は、前記カッタリングの軸方向の一方側と他方側とに設置される、
請求項1から8のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項10】
前記部材は、設置されたときにカッタチャンバ側に突出する凸形状を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項11】
前記部材は、交換可能に設置される、
請求項1から10のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項12】
ディスクカッタを有するトンネル掘削機において、三次元形状計測装置による前記ディスクカッタのカッタリングの摩耗量の計測方法であって、
基準状態における前記カッタリング、及び、前記カッタリングとの相対位置が一定の部位に設置される部材の三次元形状データである基準三次元データを、前記三次元形状計測装置から取得するステップと、
稼動状態における前記カッタリング及び前記部材の三次元形状データである計測三次元データを、前記三次元形状計測装置から取得するステップと、
前記基準三次元データと前記計測三次元データとを照合して、前記カッタリングの摩耗量を算出するステップと、
を含む計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削機においては、カッタヘッドに装着されたディスクカッタの摩耗量を定期的に計測する。イメージセンサを使用して、トンネル掘削機の先端部の状況を画像表示装置に映し出す技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、非接触で対象物の形状を計測する技術として、三次元形状計測装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元形状計測装置を使用してディスクカッタの摩耗量を計測する場合、例えば、取付直後又は稼動前のような基準状態におけるディスクカッタの三次元データと、稼動状態におけるディスクカッタの三次元データとを、ディスクカッタの形状の特徴部分を基準に重ね合わせて摩耗量を計測する。ところが、ディスクカッタが摩耗して形状が変化すると、三次元データの重ね合わせ時の誤差が大きくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、ディスクカッタの摩耗量を高精度に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、ディスクカッタと、三次元形状計測装置による前記ディスクカッタのカッタリングの摩耗量の計測に使用される部材と、を備え、前記部材は、前記カッタリングとの相対位置が一定の部位に設置されるトンネル掘削機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ディスクカッタの摩耗量を高精度に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るトンネル掘削機の構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るトンネル掘削機のカッタヘッドの概略を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ディスクカッタがケースに装着された状態を示す側面図である。
【
図4】
図4は、ディスクカッタがケースに装着された状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、ディスクカッタの取り外しを説明する模式図である。
【
図6】
図6は、計測装置の構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、計測装置がディスクカッタを計測する状態を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、コントローラの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、部材が溶接されたキーブロックに設置した部材の正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、部材が設置されたキーブロックを用いてディスクカッタがケースに装着された状態を示す側面図である。
【
図15】
図15は、基準状態におけるディスクカッタのカッタリングの計測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、稼働状態におけるディスクカッタのカッタリングの計測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、計測時における位置合わせを説明する模式図である。
【
図24】
図24は、従来手法との計測精度の違いを説明する図である。
【
図25】
図25は、計測角度による計測精度への影響を説明する図である。
【
図26】
図26は、計測角度による計測精度への影響を説明する図である。
【
図27】
図27は、従来方法における位置合わせを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[トンネル掘削機]
図1は、本実施形態に係るトンネル掘削機1の構成を示す側面図である。
図2は、本実施形態に係るトンネル掘削機1のカッタヘッド30の概略を示す斜視図である。トンネル掘削機1は、例えば、トンネルや水道などの地下構造物の建設において、岩盤を掘削する。トンネル掘削機1は、本体10と、本体10の前側に設置され、岩盤を掘削するカッタヘッド30とを備える。
図1、
図2に示すように、カッタヘッド30はドーム状の形状であり、その内部に、掘削によって発生する掘削ズリが取り込まれる空間であるカッタチャンバ30Cが形成される。
【0011】
本体10は、前後方向に延びるメインビーム14と、メインビーム14の前端に設けられたカッタヘッドサポート22とを有する。カッタヘッド30はベアリング23を介してカッタヘッドサポート22に回転可能に結合される。本体10のカッタヘッドサポート22には、その上部にルーフサポート11が、その側部にサイドサポート12が、その下部にバーチカルサポート13が、それぞれ設置される。ルーフサポート11と、サイドサポート12と、バーチカルサポート13とは、
図2に示すように、その外周が掘削断面形状に沿うように円筒形状に設置される。
【0012】
本体10の内部には、トンネルの坑壁に押し付けられるグリッパ15と、メインビーム14に沿って伸縮可能なスラストジャッキ16とが設置される。スラストジャッキ16は、軸方向の前側の端部がメインビーム14の前側に取り付けられ、後側の端部がグリッパ15に取り付けられる。スラストジャッキ16は、前後方向に伸縮可能に設置される。トンネル掘削機1は、スラストジャッキ16が伸縮することによって、推進力を発生させる。トンネル掘削機1は、グリッパ15をトンネルの坑壁に押し付けることによって、推進反力を得る。
【0013】
本体10の内部には、前後方向に延びるベルトコンベヤ20と、ベルトコンベヤ20の前側の上部に設置されたホッパシュート21と、メインビーム14の前側の端部に設置されたカッタヘッドサポート22と、駆動モータ29とを有する。ベルトコンベヤ20は、掘削によって生じた掘削ズリを後方へ運搬する。ベルトコンベヤ20は、筒形状に形成されたメインビーム14の内側に設置され、先端側はカッタヘッドサポート22を貫通してカッタチャンバ30C内まで伸びる。ホッパシュート21は、カッタチャンバ30C内に開口し、カッタヘッド30のバケット39がすくい込んだ掘削ズリをベルトコンベヤ20へ案内する。カッタヘッドサポート22は、カッタヘッド30をその回転軸AX1を中心に回転可能に支持する。カッタヘッドサポート22には、カッタヘッド30を回転させるための駆動モータ29が設置される。駆動モータ29は、油圧モータ又は電動モータである。
【0014】
カッタヘッド30がベアリング23を介して接続されるカッタヘッドサポート22には駆動モータ29が設置される。カッタヘッド30は、駆動モータ29によって、回転軸AX1を中心に回転する。カッタヘッド30は、スラストジャッキ16が伸縮することによって、グリッパ15に対して前後方向に移動する。カッタヘッド30には、複数のディスクカッタ40が装着される。カッタヘッド30は、本体10の前方に設置される。カッタヘッド30には、ディスクカッタ40を収容して保持する円筒状のケース32が複数設置される。すなわち、ケース32は、カッタヘッド30に設置するディスクカッタ40の位置に合わせてカッタヘッド30に設置される。
【0015】
[ディスクカッタ]
図3、
図4を用いて、ディスクカッタ40について説明する。
図3は、ディスクカッタ40の側面図である。
図4は、ディスクカッタ40の正面図である。ディスクカッタ40は、カッタヘッド30に対して回転可能に支持される。ディスクカッタ40は、その回転軸(後述する固定軸AX2)がカッタヘッド30の回転軸AX1と交わる向きとなるように、前記カッタヘッド30に設置される。ディスクカッタ40がトンネルの掘削面に押し付けられながら回転することによって、岩盤を破砕する。より詳しくは、カッタヘッド30が回転した状態で、本体10及びカッタヘッド30に対して前方への推進力をかけることによって、ディスクカッタ40が岩盤に圧着しながら回転する。ディスクカッタ40が岩盤に圧着した状態で回転することによって、ディスクカッタ40の刃先部44と岩盤との接触部では、岩盤が粉砕されるとともに、岩盤に亀裂が生じる。岩盤に生じた亀裂が隣接する他の亀裂とつながって隣接破砕が生じて岩盤が掘削される。岩盤の掘削時に生じた掘削ズリは、カッタヘッド30に設置されたバケット39によってカッタチャンバ30C内に開口するホッパシュート21にすくい込まれて、ベルトコンベヤ17によって後方へ運搬される。
【0016】
ディスクカッタ40は、カッタリング41と、カッタリング41を回転不能に支持するハブ42と、ハブ42を軸受(図示せず)を介して回転可能に支持するシャフト(図示せず)と、ハブ42を軸方向の両側から挟む位置に設けられて前記シャフトを保持する一対のリテーナ43とを有する。一対のリテーナ43によって保持されるシャフトの中心線は、
図3では固定軸AX2として示される。すなわち、固定軸AX2には、図示しない軸受を介して、カッタリング41及びハブ42が回転可能に支持される。カッタリング41及びハブ42は、一体に回転可能である。一対のリテーナ43は、カッタリングを軸方向に挟んで回転可能に保持する保持部である。カッタリング41は、トンネルの掘削面に押し付けられながら回転することによって、掘削面を掘削する。
【0017】
カッタリング41は、刃先部44を有する。刃先部44は、ケース32より前方及び後方に突出している(
図3、
図11参照)。刃先部44は、ケース32の前面及び背面に露出している。刃先部44は、カッタヘッド30の前面部31より前方に突出している。
【0018】
図3、
図4に示すように、ディスクカッタ40は、カッタヘッド30に設置されたケース32に着脱可能に収容される。ケース32の内側には、カッタリング41の掘削面への押し付け反力を受ける座面が形成され、この座面にディスクカッタ40の一対のリテーナ43が固定される。キーブロック33は、ケース32に対するディスクカッタ40の位置決め、換言すれば、カッタヘッド30に対するディスクカッタ40の位置決めのために用いられる。キーブロック33は、ケース32に対しカッタチャンバ側から着脱可能に設置される。
図3に示すように、ディスクカッタ40のリテーナ43をケース32に座面に当接させた状態で、カッタチャンバ側からキーブロック33を設置し、ボルト34を用いてキーブロック33とリテーナ43とでケース32を挟み込むように締めこむことにより、ディスクカッタ40はカッタヘッド30に固定される。前述したとおり、ケース32の座面はディスクカッタ40の掘削面への押し付け反力を支持するという機能を有し、キーブロック33はボルト34と協働してカッタヘッド30に対してディスクカッタ40を位置決めしてその動きを拘束する位置決め部としての機能を有する。
【0019】
[ディスクカッタの交換方法]
図5を用いて、ディスクカッタ40の交換方法について詳しく説明する。
図5は、ディスクカッタ40の取り外しを説明する模式図である。ディスクカッタ40は、キーブロック33によって、ケース32からの取り外し、及び、ケース32の周方向に沿った動きが拘束されている。
図5(a)に示すように、ケース32にキーブロック33を固定するボルト34を取り外す。
図5(b)に示すように、ケース32から、キーブロック33を取り外す。キーブロック33が取り外されると、ディスクカッタ40の拘束が解除される。
図5(c)に示すように、ケース32に収容されたディスクカッタ40を、ケース32の周方向に90°回転させる。
図5(d)に示すように、ケース32からディスクカッタ40を取り外す。
【0020】
新しいディスクカッタ40をケース32に収容する場合、
図5(d)とは逆に、ケース32へディスクカッタ40を挿入する。
図5(c)とは逆に、ケース32に挿入されたディスクカッタ40を、ケース32の周方向に取外し時とは反対に90°回転させる。
図5(b)とは逆に、ケース32に、キーブロック33を取り付ける。
図5(a)とは逆に、ボルト34でケース32にキーブロック33を固定する。このようにして、ディスクカッタ40は、キーブロック33によって、ケース32からの取り外し、及び、ケース32の周方向に沿った動きが拘束された状態で固定される。
【0021】
[トンネル掘削機による掘削方法]
このように構成されたトンネル掘削機1による掘削方法について説明する。トンネル掘削機1は、駆動モータ29によって、カッタヘッド30が本体10に対して回転する。カッタヘッド30に取り付けられたディスクカッタ40がトンネルの掘削面に押し付けられながら回転することによって、岩盤が破砕される。岩盤の掘削時に生じた掘削ズリは、バケット39によって本体10の内部にすくい込まれて、ベルトコンベヤ17によって後方へ運搬される。掘削によってディスクカッタ40が摩耗するので、例えば、毎日の作業の開始前、又は、所定期間ごとなどに、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を計測する。
【0022】
[計測装置]
図6、
図7を用いて、トンネル掘削機1が備える、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を計測するための計測装置60について説明する。
図6は、計測装置60の構成を示す模式図である。
図7は、計測装置60がディスクカッタ40を計測する状態を説明する模式図である。計測装置60は、トンネル掘削機1のカッタチャンバ30C(
図1参照)側に設置される。計測装置60は、前後に伸縮可能な前後スライダ61と、前後スライダ61に沿ってスキャナ65をスライドさせる前後アクチュエータ62と、上下に伸縮可能な上下スライダ63と、上下スライダ63に沿ってスキャナ65をスライドさせる上下アクチュエータ64と、スキャナ65と、これらを収容するケース69とを有する。前後アクチュエータ62は、前後スライダ61を伸縮させて、スキャナ65を前後にスライドさせる。上下アクチュエータ64は、上下スライダ63を伸縮させて、スキャナ65を上下にスライドさせる。
【0023】
スキャナ65は、3Dスキャナであり、対象を検出して対象の三次元形状を示す三次元データを計測コントローラ110のデータ取得部115へ出力する。より詳しくは、スキャナ65は、ディスクカッタ40のカッタリング41と、後述する部材50(
図10参照)との三次元形状を検出可能である。スキャナ65は、例えば、新品のカッタリング41が装着されたディスクカッタ40取付直後又は稼動前のような基準状態(すなわち、カッタリング41がいまだ摩耗していない状態)におけるカッタリング41及び部材50の三次元形状を示す基準三次元データと、稼動状態(すなわち、カッタリング41の摩耗がある程度進行したと想定される状態)におけるカッタリング41及び部材50との三次元形状を示す計測三次元データとを検出する。スキャナ65は、検出した基準三次元データ及び計測三次元データを、計測コントローラ110のデータ取得部115へ出力する。
【0024】
スキャナ65は、前後スライダ61及び前後アクチュエータ62によって前後に移動可能であり、上下スライダ63及び上下アクチュエータ64によって上下方向に移動可能である。
【0025】
スキャナ65は、チルト角を調節可能に上下スライダ63に設置される。スキャナ65は、ディスクカッタ40のカッタリング41に対する計測角度を調節可能である。計測角度は、カッタリング41の刃先部44の中心線C1と、スキャナ65の光軸の中心線C2とのなす角度である。
【0026】
ケース69は、例えば、カッタヘッドサポート22に設置される。計測装置60が計測を行っていないとき、前後スライダ61、前後アクチュエータ62、上下スライダ63、上下アクチュエータ64、及び、スキャナ65が、ケース69に収容される。計測装置60が計測を行うとき、前後スライダ61、前後アクチュエータ62、上下スライダ63、上下アクチュエータ64、及び、スキャナ65が、ケース69から展開される。
【0027】
[トンネル掘削機の制御系]
図8を用いて、コントローラ100について説明する。
図8は、コントローラ100の構成を示すブロック図である。トンネル掘削機1は、例えば、コントローラ100によって制御される。コントローラ100は、例えば、図示しない操作盤などを介して入力された操作情報、又は、図示しない掘削管理システムを介して入力された運転情報に基づいて、トンネル掘削機1を作動させる。コントローラ100は、駆動モータ制御部101によって、駆動モータ29の回転と停止とを制御する。
【0028】
[計測装置の制御系]
図8に示すように、計測装置60の前後アクチュエータ62と上下アクチュエータ64とスキャナ65とは、例えば、計測コントローラ110によって制御される。計測コントローラ110は、計測対象設定部111によって、計測対象のディスクカッタ40がスキャナ65で計測可能になるように駆動モータ29を制御してカッタヘッド30を回転させる。計測コントローラ110は、前後移動制御部112によって前後アクチュエータ62を制御して、計測対象のディスクカッタ40に合わせて、スキャナ65の前後方向の位置を調節する。計測コントローラ110は、上下移動制御部113によって上下アクチュエータ64を制御して、計測対象のディスクカッタ40に合わせて、スキャナ65の上下方向の位置を調節する。計測コントローラ110は、スキャナ制御部114によってスキャナ65を制御して三次元計測を行う。計測コントローラ110は、データ取得部115によって、スキャナ65から三次元データを取得する。計測コントローラ110は、摩耗量算出部116によって、取得した三次元データに基づいて、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を算出する。
【0029】
[コンピュータシステム]
図9を用いて、コンピュータシステム1000について説明する。
図9は、本実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述のコントローラ100は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述のコントローラ100及び計測コントローラ110の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶される。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0030】
[付加する部材の第1の実施形態]
図10、
図11を用いて、部材50について説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、部材50が溶接されたキーブロックに設置した部材の正面図である。
図11は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、部材50が設置されたキーブロック33を用いてディスクカッタ40がケース32に装着された状態を示す側面図である。部材50は、三次元形状計測装置(以下、「計測装置」という。)60によるディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量の計測に使用される。より詳しくは、部材50は、計測装置60による計測時における位置合わせに使用される。部材50は、計測装置60の検出領域にカッタリング41とともに検出可能な位置に設置される。これにより、計測装置60による計測時、カッタリング41とともに部材50が検出される。
【0031】
部材50は、トンネル掘削機1による掘削に伴う摩耗が生じにくい位置であって、掘削及びディスクカッタ40の交換を妨げない位置に設置される。部材50は、ディスクカッタ40のカッタリング41との相対位置が一定の部位に設置される。相対位置が一定であるとは、ディスクカッタ40の取付直後又は稼動前から稼動中において、カッタリング41と部材50との位置関係が変化しないことをいう。部材50は、カッタリング41の近傍に設置される。本実施形態においては、部材50は、ディスクカッタ40のケース32の周方向に沿った動きを拘束するキーブロック33に設置される。
【0032】
部材50は、トンネル掘削機1のカッタチャンバ30C側に設置される。
【0033】
図12ないし
図14を用いて、部材50の形状の一例について説明する。
図12は、部材50の一例を示す正面図である。
図13は、
図12に示す部材50の側面図である。
図14は、
図12に示す部材50の平面図である。部材50は、平面状の壁部51、壁部52、壁部53、壁部54及び壁部55を組み合わせて形成される。壁部51は、矩形状に形成される。壁部51は、キーブロック33の表面33aと平行に設置される。壁部52と壁部53とは、台形状に形成される。壁部52と壁部53とは、壁部51の中間部に斜めに立設される。壁部52と壁部53とは、キーブロック33の表面33aと交差する平面内に設置される。壁部52の周縁部52aと壁部53の周縁部53aとが、壁部51の中間部にそれぞれ接合されて曲げ部を形成する。壁部52の周縁部52bと壁部53の周縁部53bとが接合されて曲げ部を形成する。壁部54と壁部55とは、三角形状に形成される。壁部54は、壁部51の上部と壁部52の上部と壁部53の上部とで囲まれた開口を覆って設置される。壁部55は、壁部51の下部と壁部52の下部と壁部53の下部とで囲まれた開口を覆って設置される。壁部52、壁部53、壁部54及び壁部55は、キーブロック33の表面33bからケース32の径方向の内側に突出する凸形状を形成する。壁部52、壁部53、壁部54及び壁部55は、三角柱形状を形成する。
【0034】
壁部51、壁部52、壁部53、壁部54及び壁部55の各法線は、それぞれ異なる方向に延びていて交差する。
【0035】
壁部51の長さd11は、キーブロック33の幅dk1と同程度である。壁部51の長さd12は、キーブロック33からカッタリング41までの距離dk2より短い。壁部51から壁部52と壁部53との接合部までの距離d13は、キーブロック33の厚さdk3(
図11参照)と同程度である。壁部51は、壁部52及び壁部53より外側に突出している。
【0036】
このように構成された部材50は、ディスクカッタ40の周囲に複数設置されることが好ましい。本実施形態では、部材50は、ディスクカッタ40の周囲に2つ設置される。
【0037】
部材50は、本実施形態のように、カッタリング41の軸方向(固定軸AX2の方向)の一方側と他方側とに設置されることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、部材50は、キーブロック33に溶接により取り付けられる。
【0039】
部材50は、異なる方向を向く複数の面を有する。部材50は、非連続に変化する複数の面を有する。
【0040】
部材50は、設置されたときにカッタチャンバ30C側に突出する凸形状を含む。本実施形態では、部材50は、キーブロック33の表面33bから突出する凸形状を含む。
【0041】
[ディスクカッタのカッタリングの摩耗量の計測方法]
次に、ディスクカッタ40を有するトンネル掘削機1において、計測装置60によるディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量の計測方法・計測処理について説明する。
図15は、基準状態におけるディスクカッタ40のカッタリング41の計測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図16は、稼働状態におけるディスクカッタ40のカッタリング41の計測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。トンネル掘削機1の、稼働状態におけるディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を計測する前に、
図15に示す処理が少なくとも1回実行されて、ディスクカッタ40の基準三次元データが取得される。基準三次元データは、新しいディスクカッタ40、あるいは新しいカッタリングを装着されたディスクカッタ40を装着した際に取得することが好ましい。
【0042】
計測コントローラ110は、計測対象設定部111によって計測対象のディスクカッタ40を設定する(ステップS11)。例えば、カッタヘッド30に装着された、すべてのディスクカッタ40を計測する順番が図示しない記憶部に記憶されているものとする。計測対象設定部111は、記憶された順番に従って、ディスクカッタ40を計測対象として設定する。計測コントローラ110は、計測対象設定部111によって計測対象のディスクカッタ40がスキャナ65で計測可能になるように駆動モータ29を制御してカッタヘッド30を回転させる。計測コントローラ110は、ステップS12へ進む。
【0043】
計測コントローラ110は、計測対象のディスクカッタ40に合わせてスキャナ65を移動させる(ステップS12)。より詳しくは、計測コントローラ110は、前後移動制御部112によって前後アクチュエータ62を制御して、計測対象のディスクカッタ40に合わせて、スキャナ65の前後方向の位置を調節する。計測コントローラ110は、上下移動制御部113によって上下アクチュエータ64を制御して、計測対象のディスクカッタ40に合わせて、スキャナ65の上下方向の位置を調節する。計測コントローラ110は、ステップS13へ進む。
【0044】
計測コントローラ110は、スキャナ制御部114によって、スキャナ65を制御して計測対象のディスクカッタ40の三次元計測を行う(ステップS13)。スキャナ制御部114は、計測対象のディスクカッタ40の三次元形状をスキャナ65によってスキャンする。スキャナ制御部114は、基準状態におけるカッタリング41の三次元形状を部材50の三次元形状とともに計測する。計測コントローラ110は、ステップS14へ進む。
【0045】
計測コントローラ110は、データ取得部115によって、計測装置60のスキャナ65が計測したデータ取得する(ステップS14)。計測コントローラ110は、ステップS15へ進む。
【0046】
計測コントローラ110は、データ取得部115によって、取得したデータをディスクカッタ40の基準三次元データとして記憶部120に記憶する(ステップS15)。ディスクカッタ40の基準三次元データは、基準状態におけるカッタリング41の三次元形状データと部材50の三次元形状データとを含む。データ取得部115は、取得した基準三次元データを計測対象のディスクカッタ40を識別する情報と関連付けて記憶する。計測コントローラ110は、ステップS16へ進む。
【0047】
計測コントローラ110は、次の計測対象のディスクカッタ40があるか否かを判定する(ステップS16)。計測コントローラ110は、計測していないディスクカッタ40がある場合、次の計測対象のディスクカッタ40があると判定して(ステップS16でYes)、ステップS11の処理を再度実行する。計測コントローラ110は、すべてのディスクカッタ40が計測済みである場合、次の計測対象のディスクカッタ40がないと判定して(ステップS16でNo)、処理を終了する。
【0048】
このようにして、計測コントローラ110は、基準状態におけるすべてのディスクカッタ40について、カッタリング41、及び、カッタリング41との相対位置が一定の部位に設置される部材50の基準三次元データを、計測装置60を用いて取得し、記憶する。
【0049】
基準三次元データを取得した後であって、例えば、毎日の作業の開始前、又は、所定期間ごとなどに、
図16に示す処理が実行されて、トンネル掘削機1のディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量が計測される。ステップS21、ステップS22、ステップS28の処理は、前述のステップS11、ステップS12、ステップS16と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0050】
ステップS23において、計測コントローラ110は、スキャナ制御部114によって、スキャナ65を制御して計測対象のディスクカッタ40の三次元計測を行う。スキャナ制御部114は、稼動状態におけるカッタリング41の三次元形状を部材50の三次元形状とともに計測する。計測コントローラ110は、ステップS24へ進む。
【0051】
計測コントローラ110は、データ取得部115によって、計測装置60のスキャナ65が計測したデータを取得する(ステップS24)。計測コントローラ110は、ステップS25へ進む。
【0052】
計測コントローラ110は、データ取得部115によって、取得したデータをディスクカッタ40の計測三次元データとして記憶部120に記憶する(ステップS25)。ディスクカッタ40の計測三次元データは、稼働状態におけるカッタリング41の三次元形状データと部材50の三次元形状データとを含む。計測コントローラ110は、ステップS26へ進む。
【0053】
計測コントローラ110は、摩耗量算出部116によって、ディスクカッタ40を識別する情報を参照して当該ディスクカッタ40の基準三次元データを読み出し、当該基準三次元データと計測三次元データとに基づいて、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を算出する(ステップS26)。計測コントローラ110は、基準三次元データと計測三次元データとを照合して、カッタリング41の摩耗量を算出する。
図17は、計測時における位置合わせを説明する模式図である。
図17(a)に示すように、摩耗量算出部116は、破線で示す基準三次元データと、実線で示す計測三次元データとを、部材50を基準として、言い換えると、部材50が重なるように位置を合わせる。
図17(b)に示すように、位置を合せた基準三次元データの刃先部44と計測三次元データの刃先部44との差異が、カッタリング41の摩耗量Wである。計測コントローラ110は、ステップS27へ進む。
【0054】
計測コントローラ110は、摩耗量算出部116によって、算出したディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を、当該ディスクカッタ40を識別する情報と関連付けて記憶部120に記憶する(ステップS27)。計測コントローラ110は、ステップS28へ進む。
【0055】
計測コントローラ110は、計測していないディスクカッタ40がある場合、次の計測対象のディスクカッタ40があると判定して(ステップS28でYes)、ステップS21の処理を再度実行する。計測コントローラ110は、すべてのディスクカッタ40が計測済みである場合、次の計測対象のディスクカッタ40がないと判定して(ステップS28でNo)、処理を終了する。
【0056】
このような処理によって、稼動状態におけるトンネル掘削機1のすべてのディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量が算出される。
【0057】
[効果]
本実施形態では、ディスクカッタ40のカッタリング41との相対位置が一定の部位に設置された部材50を使用して、計測装置60が計測した基準三次元データと計測三次元データとの位置合わせを行う。部材50は摩耗しない位置に設置されるので、基準三次元データと計測三次元データとにおける形状の変化が抑えられる。本実施形態によれば、基準三次元データと計測三次元データとの位置合わせを高精度に行うことができる。このようにして、本実施形態は、カッタリング41の摩耗量を高精度に計測することができる。
【0058】
本実施形態によれば、部材50を使用して位置合わせを行うことによって、部材50の形状によらず、目標計測精度を達成することができる。本実施形態によれば、部材50を使用して位置合わせを行うことによって、カッタリング41の摩耗量によらず、目標計測精度を達成することができる。本実施形態によれば、部材50を使用して位置合わせを行うことによって、計測角度によらず、目標計測精度を達成することができる。
【0059】
本実施形態では、部材50を使用して、基準三次元データと計測三次元データとの位置合わせを行うので、計測装置60のスキャナ65の座標位置及び姿勢を高精度に取得しなくてもよい。本実施形態によれば、カッタリング41の摩耗量を容易に計測することができる。
【0060】
本実施形態では、部材50は、異なる方向を向く複数の面を有する。本実施形態によれば、計測装置60と、部材50及びディスクカッタ40のカッタリング41との相対位置によらず、部材50の幾何学的な特徴部分を検出することができ、より精度の良い検出が可能となる。本実施形態によれば、計測装置60と、部材50及びディスクカッタ40のカッタリング41との相対位置によらず、カッタリング41の摩耗量を高精度に計測することができる。
【0061】
本実施形態では、部材50は、トンネル掘削機1のカッタチャンバ30C側に設置される。本実施形態によれば、トンネル掘削機1による掘削時に、掘削が妨げられることを抑制し、かつ、部材50が摩耗することを抑制することができる。
【0062】
本実施形態では、部材50は、計測装置60の検出領域にカッタリング41とともに検出可能な位置に設置される。本実施形態によれば、カッタリング41及び部材50の三次元形状を示す、基準三次元データと計測三次元データとを容易に取得することができる。
【0063】
本実施形態では、部材50は、キーブロック33に設置される。本実施形態によれば、ディスクカッタ40の交換を妨げない位置に設置することができる。
【0064】
本実施形態では、部材50は、キーブロック33に溶接により取り付けられ、仮に破損や変形等が生じたとしても、キーブロック33とともに容易に交換することができる。
【0065】
本実施形態では、部材50は、ディスクカッタ40の周囲に複数設置される。本実施形態によれば、計測装置60の計測時、位置合わせの精度を向上することができる。
【0066】
本実施形態では、部材50は、カッタリング41の軸方向の一方側と他方側とに設置される。本実施形態によれば、計測装置60と、部材50及びディスクカッタ40のカッタリング41との相対位置によらず、部材50を検出することができる。これにより、本実施形態は、基準三次元データと計測三次元データとの位置合わせを高精度に行うことができる。本実施形態によれば、計測装置60と、部材50及びディスクカッタ40のカッタリング41との相対位置によらず、より精度の良い検出が可能となる。
【0067】
本実施形態では、部材50は、設置されたときにカッタチャンバ30C側に突出する凸形状を含む。本実施形態によれば、掘削時、掘削ズリなどによる部材50の目詰まりの影響で検出精度が低下することが抑制される。
【0068】
本実施形態では、部材50は、キーブロック33に交換可能に設置される。本実施形態によれば、例えば、部材50が損傷したような場合、部材50のみを容易に交換することができる。また、本実施形態によれば、部材50を、従来のカッタヘッド30に容易に装着することができる。
【0069】
[付加する部材の設置位置の変形例]
部材50は、キーブロック33ではなく、ケース32や、リテーナ43(保持部)、あるいはハブ42に溶接などによって固定されてもよい。この場合は、部材50を交換するときには、切断して取外すことが必要となる。
【0070】
[付加する部材の形状の変形例1]
図18ないし
図20を用いて、部材50Aの形状の他の例について説明する。
図18は、部材50Aの他の例を示す正面図である。
図19は、
図18に示す部材50Aの側面図である。
図20は、
図18に示す部材50Aの平面図である。部材50Aは、壁部51Aの形状が部材50の壁部51と異なり、部材50より小型である。壁部51Aの長さd21は、部材50の壁部51の長さd11より短い。壁部51Aの長さd22は、部材50の壁部51の長さd12と同じである。壁部51Aから壁部52Aと壁部53Aとの接合部までの距離d23は、部材50の距離d13と同じである。壁部52の周縁部52aと壁部53の周縁部53aとは、壁部51Aの端部に接合される。壁部51Aは、壁部52及び壁部53より外側に突出していない。このような形状の部材50Aは、部材50に比べて小型化することができる。
【0071】
[付加する部材の形状の変形例2]
図21ないし
図23を用いて、部材50Bの形状の他の例について説明する。
図21は、部材50Bの他の例を示す正面図である。
図22は、
図21に示す部材50Bの側面図である。
図23は、
図21に示す部材50Bの平面図である。部材50Bは、部材50Aより小型である。壁部51Bの長さd31は、部材50Aの壁部51Aの長さd21と同じである。壁部51Bの長さd32は、部材50Aの壁部51Aの長さd22より短い。壁部51Bから壁部52Bと壁部53Bとの接合部までの距離d33は、部材50Aの距離d23と同じである。このような形状の部材50Bは、部材50及び部材50Aに比べて小型化することができる。
【0072】
[従来手法との比較]
ここで、計測装置60を使用した計測と、従来手法による計測との計測精度を評価する。
図24は、従来手法との計測精度の違いを説明する図である。
図25は、計測角度による計測精度への影響を説明する図である。
図26は、計測角度による計測精度への影響を説明する図である。以下の3つの条件を組み合わせて、各条件において10回ずつ計測を行った。
【0073】
(条件1)位置合わせにする部材50の形状を変えて計測する。より詳しくは、位置合わせに、上述の、部材50、部材50A、部材50Bを使用した計測装置60による計測と、従来手法の計測とを行う。「形状1」は、部材50を使用した計測を示し、「形状2」は部材50Aを使用した計測を示し、「形状3」は部材50Bを使用した計測を示し、「従来手法」は従来手法による計測を示す。
【0074】
ここで、
図27を用いて、従来手法による計測について説明する。
図27は、従来方法における位置合わせを説明する模式図である。従来手法とは、位置合わせの部材を使用せず、例えば、ディスクカッタ40のカッタリング41の肩部41aの形状を基準にして位置合わせをして摩耗量を計測する手法である。破線は基準状態で取得した三次元データであり、実線は稼動状態で取得した三次元データであり、一点鎖線はさらに摩耗が進んだ稼動状態で取得した三次元データを示す。
図27からも、カッタリング41の肩部41aの形状を基準にして位置合わせをするので、摩耗が進んで肩部41aが摩耗した場合には、正しく位置合わせすることが困難になることがわかる。
【0075】
(条件2)ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を、8mm、10mm、12mmと変えて計測する。
【0076】
(条件3)計測角度を、0°、30°の2つの角度で計測する。
【0077】
評価は、以下の数式1によって算出される、n個の計測点の各点における計測装置60を使用した計測値fkと、ゲージを使用したゲージ計測値ykとの平方平均二乗誤差(RMSE:Root Mean Square Error)を比較して行う。ここでは、ディスクカッタ40の円周上におけるスキャナ65の正面の計測点を0°として、-40°から40°までが計測されるものとする。このうち、2°ずつ約40点で摩耗量の計測を行う。なお、目標とするRMSEは、1mmとする。
【0078】
【0079】
図24から、形状1、形状2及び形状3ともに、従来手法に比べてRMSEが小さいことがわかる。形状1、形状2及び形状3ともに、摩耗量の違いによるRMSEの差が小さいことがわかる。形状1、形状2及び形状3ともに、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量によらず、RMSEは目標以下であり、目標計測精度が達成される。
【0080】
図25、
図26から、計測角度によらず、形状1、形状2及び形状3ともに、従来手法に比べてRMSEが小さいことがわかる。従来手法は、計測角度30°の場合は、計測角度0°の場合に比べてRMSEが増加することがわかる。形状1、形状2及び形状3ともに、計測角度30°の場合は、計測角度0°の場合に比べてRMSEがわずかに増加するが、RMSEは目標以下である。形状1、形状2及び形状3ともに、計測角度によらず、RMSEは目標以下であり、目標計測精度が達成される。
【0081】
上記では、部材50、部材50A及び部材50Bは、平面状の壁部51、壁部52、壁部53、壁部54及び壁部55を組み合わせて形成されるのものとしたがこれに限定されない。部材50、部材50A及び部材50Bは、複数の曲面を組み合わせて形成されてもよく、平面と曲面とを組み合わせて形成されてもよい。
【0082】
上記では、コントローラ100と計測コントローラ110とは別々のものとして記載されているが、本発明はこれに限定されない。コントローラ100、計測コントローラ110が一体であってもよい。
【0083】
上記では、スキャナ65が、前後スライダ61及び前後アクチュエータ62によって前後に移動可能であり、上下スライダ63及び上下アクチュエータ64によって上下方向に移動可能であるものとして説明したが、移動させる手段はこれに限定されない。例えば、スキャナ65は、ドローンのような無人飛行体に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…トンネル掘削機、10…本体、20…ベルトコンベヤ、29…駆動モータ、30…カッタヘッド、32…ケース、33…キーブロック、40…ディスクカッタ、41…カッタリング、42…ハブ、43…リテーナ(保持部)、44…刃先部、50…部材、60…三次元形状計測装置(計測装置)、61…前後スライダ、62…前後アクチュエータ、63…上下スライダ、64…上下アクチュエータ、65…スキャナ、69…ケース、100…コントローラ、110…計測コントローラ、111…計測対象設定部、112…前後移動制御部、113…上下移動制御部、114…スキャナ制御部、115…データ取得部、116…摩耗量算出部。