(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】硫化物系固体電解質を含む組成物、大気中で硫化物系固体電解質を保管する方法及び硫化物系固体電解質の再生方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20230424BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20230424BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230424BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230424BHJP
C01G 17/00 20060101ALI20230424BHJP
C01G 19/00 20060101ALI20230424BHJP
C01D 15/04 20060101ALI20230424BHJP
C01D 15/00 20060101ALI20230424BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230424BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B1/10
H01B13/00 Z
H01M10/0562
C01G17/00
C01G19/00 Z
C01D15/04
C01D15/00
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2018175289
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-033732(JP,A)
【文献】特開2012-138346(JP,A)
【文献】特開昭48-030026(JP,A)
【文献】特開2009-032539(JP,A)
【文献】特開2009-117168(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164724(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/001623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01B 1/10
H01B 13/00
H01M 10/0562
C01G 17/00
C01G 19/00
C01D 15/04
C01D 15/00
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の硫化物系固体電解質と、前記硫化物系固体電解質の周囲に存在する固体の水分不透過性マトリックスとを有し、
前記水分不透過性マトリックスは
パラフィンであり、
前記硫化物系固体電解質が、前記水分不透過性マトリックスに埋没している硫化物系固体電解質を含む組成物。
【請求項2】
前記硫化物系固体電解質がLiを含み、前記硫化物系固体電解質中のLi原子数が前記硫化物系固体電解質中の全原子数の30~50%である請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硫化物系固体電解質が、Li
10GeP
2S
12、Li
10.35[Sn
0.27Si
1.08]P
1.65S
12、Li
6PS
5Cl、及び、75Li
2S・25P
2S
5から選択される少なくとも1種で構成される請求項
2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物を得た後、前記組成物を大気中に移す工程を含む、大気中で硫化物系固体電解質を保管する方法。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物
を炭化水素系溶媒に浸漬し、前記炭化水素系溶媒中に前記水分不透過性マトリックスを溶解させる工程を含む、硫化物系固体電解質の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化物系固体電解質を含む組成物、大気中で硫化物系固体電解質を保管する方法及び硫化物系固体電解質の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。該電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウムイオン電池が注目を浴びている。また、車載用等の動力源やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウム二次電池についても、高エネルギー密度、電池特性向上が求められている。
【0003】
ただ、リチウムイオン電池の場合は、電解液は有機化合物が大半であり、たとえ難燃性の化合物を用いたとしても火災に至る危険性が全くなくなるとは言いきれない。こうした液系リチウムイオン電池の代替候補として、電解質を固体とした全固体リチウムイオン電池が近年注目を集めている。その中でも、固体電解質としてLi2S-P2S5などの硫化物やそれにハロゲン化リチウムを添加した全固体リチウムイオン電池が主流となりつつある。
【0004】
しかしながら、硫化物系固体電解質は、大気中の水分と反応して硫化水素を発生するとともに、潮解性を示し、固体電解質におけるイオン伝導度の急激な劣化が生じる。
【0005】
このような問題に対し、例えば、非特許文献1では、75Li2S・25P2S5組成の固体電解質ガラスにFeSなどを添加することで、大気中での水分との反応を低減し、硫化水素の発生量を減少させる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献1及び2には、それぞれ固体電解質の組成を制御することで大気安定性を高め、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5458740号公報
【文献】特開2018-41671号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Suppression of H2S gas generation from the 75Li2S・25P2S5 glass electrolyte by additives, J. Mater. Sci., 48 (2013) 4137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、どのような組成の固体電解質であってもFeSを添加することで大気中での水分との反応を低減することができるわけではない。また、75Li2S・25P2S5組成の固体電解質ガラスにおいても、大気安定性を上げるために固体電解質に添加物を加えると、イオン伝導度の低下や電子伝導性の増加といった固体電解質の特性上の劣化を引き起こしてしまうおそれがある。
【0010】
また、特許文献1及び2に記載の技術についても、決まった組成の固体電解質のみに対して大気安定性を高めるものであり、組成が変わると、そのような効果を得ることができない。
【0011】
本発明の実施形態では、硫化物系固体電解質がどのような組成であっても、大気中での劣化を良好に抑制することができる硫化物系固体電解質を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、種々の検討を行った結果、硫化物系固体電解質と、硫化物系固体電解質の周囲に存在する水分不透過性マトリックスとを有し、水分不透過性マトリックスが硫化物系固体電解質と反応性を示さず、炭化水素系溶媒に可溶である硫化物系固体電解質を含む組成物によれば、上述の課題が解決されることを見出した。
【0013】
上記知見を基礎にして完成した本発明は実施形態において、粉末の硫化物系固体電解質と、前記硫化物系固体電解質の周囲に存在する固体の水分不透過性マトリックスとを有し、前記水分不透過性マトリックスはパラフィンであり、前記水分不透過性マトリックスが、前記硫化物系固体電解質の表面を被覆する被覆層を構成している硫化物系固体電解質を含む組成物である。
【0015】
本発明は別の実施形態において、粉末の硫化物系固体電解質と、前記硫化物系固体電解質の周囲に存在する固体の水分不透過性マトリックスとを有し、前記水分不透過性マトリックスはパラフィンであり、前記硫化物系固体電解質が、前記水分不透過性マトリックスに埋没している硫化物系固体電解質を含む組成物である。
【0016】
本発明の硫化物系固体電解質を含む組成物は更に別の実施形態において、前記硫化物系固体電解質がLiを含み、前記硫化物系固体電解質中のLi原子数が前記硫化物系固体電解質中の全原子数の30~50%である。
【0017】
本発明の硫化物系固体電解質を含む組成物は更に別の実施形態において、前記硫化物系固体電解質が、Li10GeP2S12、Li10.35[Sn0.27Si1.08]P1.65S12、Li6PS5Cl、及び、75Li2S・25P2S5から選択される少なくとも1種で構成される。
【0021】
本発明は別の実施形態において、本発明の実施形態に係る組成物を得た後、前記組成物を大気中に移す工程を含む、大気中で硫化物系固体電解質を保管する方法である。
【0022】
本発明は更に別の実施形態において、本発明の実施形態に係る組成物を炭化水素系溶媒に浸漬し、前記炭化水素系溶媒中に前記水分不透過性マトリックスを溶解させる工程を含む、硫化物系固体電解質の再生方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、硫化物系固体電解質がどのような組成であっても、大気中での劣化を良好に抑制することができる硫化物系固体電解質を含む組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】水分不透過性マトリックスが硫化物系固体電解質の表面を被覆する被覆層を構成している本発明の実施形態に係る組成物の断面模式図である。
【
図2】硫化物系固体電解質が水分不透過性マトリックスに埋没している本発明の実施形態に係る組成物の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(硫化物系固体電解質を含む組成物)
本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物は、硫化物系固体電解質と、硫化物系固体電解質の周囲に存在する水分不透過性マトリックスとを有する。
【0026】
硫化物系固体電解質としては特に限定されないが、Li10GeP2S12、Li10.35[Sn0.27Si1.08]P1.65S12、Li6PS5Cl、及び、75Li2S・25P2S5から選択される少なくとも1種で構成されてもよい。硫化物系固体電解質は、Liを含み、硫化物系固体電解質中のLi原子数が硫化物系固体電解質中の全原子数の30~50%であるのが好ましい。硫化物系固体電解質中のLi原子数が硫化物系固体電解質中の全原子数の30%未満であると、イオン伝導度の低下という問題が生じるおそれがある。硫化物系固体電解質中のLi原子数が硫化物系固体電解質中の全原子数の50%を超えると、分解電圧の低下という問題が生じるおそれがある。硫化物系固体電解質中のLi原子数が硫化物系固体電解質中の全原子数の35~48%であるのがより好ましく、37.5~46.2%であるのが更により好ましい。
【0027】
硫化物系固体電解質の周囲には水分不透過性マトリックスが存在し、当該水分不透過性マトリックスは硫化物系固体電解質と反応性を示さず、炭化水素系溶媒に可溶である。このような構成によれば、本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物が大気に暴露したときでも、硫化物系固体電解質の周囲に存在する水分不透過性マトリックスが大気中の水分を透過させず、硫化物系固体電解質の大気中の水分と反応することによる劣化を良好に抑制することができる。また、水分不透過性マトリックスは硫化物系固体電解質と反応性を示さないため、硫化物系固体電解質の劣化をより良好に抑制することができる。さらに、水分不透過性マトリックスは炭化水素系溶媒に可溶であるため、本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物の大気中での管理が終了した後、硫化物系固体電解質を使用する際に、当該組成物に対し、炭化水素系溶媒を用いて水分不透過性マトリックスを除去することができる。また、水分不透過性マトリックスと硫化物系固体電解質との間には大気が存在せず、水分不透過性マトリックス表面から硫化物系固体電解質が露出していない構成とすることで硫化物系固体電解質の劣化をより良好に抑制することができる。
【0028】
水分不透過性マトリックスは、
図1に示すように硫化物系固体電解質の表面を被覆する被覆層を構成していてもよい。硫化物系固体電解質の表面を被覆する水分不透過性マトリックスの被覆層の厚さは、例えば0.1~100μmであってもよく、0.5~20μmであってもよく、1~10μmであってもよい。
【0029】
硫化物系固体電解質は、
図2に示すように、水分不透過性マトリックスに埋没していてもよい。硫化物系固体電解質を水分不透過性マトリックスに埋没させることで、水分不透過性マトリックスと硫化物系固体電解質との間に大気が存在せず、水分不透過性マトリックス表面から硫化物系固体電解質が露出していない構成とすることがより容易となり、硫化物系固体電解質の劣化をさらに良好に抑制することができる。
【0030】
水分不透過性マトリックスは、炭化水素系重合体で構成するのが好ましい。炭化水素系重合体で構成することにより、硫化物系固体電解質と簡便に複合化できるという効果が得られる。水分不透過性マトリックスの炭化水素系重合体としては、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族炭化水素等のうち室温で固体であるものを用いることができる。
【0031】
炭化水素系溶媒は硫化物系固体電解質と反応性が乏しいか全く反応しないものを用いる。炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、及び、ドデカンから選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【0032】
(硫化物系固体電解質を含む組成物の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物の製造方法について説明する。まず、所定の組成の硫化物系固体電解質の粉末を準備する。次に、ArやN
2等の不活性ガス雰囲気下で水分不透過性マトリックスを融解し、この融液に当該硫化物系固体電解質の粉末を加えて撹拌し、スラリーを得る。次に、当該スラリーを室温まで冷却することで、
図2に示すような硫化物系固体電解質が水分不透過性マトリックスに埋没した組成物が得られる。
【0033】
また、本発明の別の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物の製造方法について説明する。まず、所定の組成の硫化物系固体電解質の粉末を準備する。次に、ArやN
2等の不活性ガス雰囲気下で水分不透過性マトリックスを融解し、この融液に当該硫化物系固体電解質の粉末を加えて撹拌し、スラリーを得る。次に、当該スラリーを濾過した後、室温まで冷却することで、
図1に示すような水分不透過性マトリックスが硫化物系固体電解質の表面を被覆する被覆層を構成している組成物が得られる。スラリーを濾過してから室温まで冷却することで、水分不透過性マトリックスが硫化物系固体電解質の表面を被覆する被覆層を構成するが、このような構成であれば、当該組成物のハンドリング性が良好となる。
【0034】
(大気中で硫化物系固体電解質を保管する方法)
次に、本発明の実施形態に係る大気中で硫化物系固体電解質を保管する方法について説明する。まず、上述のようにして硫化物系固体電解質を、水分不透過性マトリックス中に浸漬させて本発明の実施形態に係る組成物を得た後、当該組成物を大気中に移して、大気中で当該組成物を所定期間保管する。このように本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物は大気中でそのまま保管しても、大気中の水分が硫化物系固体電解質と反応しないため大気安定性が良好であり、硫化物系固体電解質の劣化を良好に抑制することができる。
【0035】
(硫化物系固体電解質の再生方法)
次に、本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質の再生方法について説明する。まず、本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質を含む組成物を炭化水素系溶媒に浸漬し、炭化水素系溶媒中に水分不透過性マトリックスを溶解させる。その後、硫化物系固体電解質を乾燥させる。これにより硫化物系固体電解質の周囲に存在していた水分不透過性マトリックスを除去することができ、硫化物系固体電解質が再生する。
【0036】
(リチウムイオン電池)
本発明の実施形態に係る硫化物系固体電解質の再生方法によって再生された硫化物系固体電解質によって固体電解質層を形成し、当該固体電解質層、正極層及び負極層を備えた全固体リチウムイオン電池を作製することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1)
Ar雰囲気のグローブボックス内でパラフィン(融点44~46℃)を120℃に加熱して融解し、この融液10mLにLi10GeP2S12の粉末1gを加えて撹拌してスラリーを得た。次に、当該スラリーを濾過した後、室温まで冷却することでLi10GeP2S12粉末をパラフィンで覆った組成物を作製した。得られた組成物を大気中に取り出して3時間暴露した。その後、当該組成物を再びAr雰囲気のグローブボックス内に導入し、10mLのヘプタンで3回洗浄を行い、真空乾燥することでLi10GeP2S12粉末を覆っていたパラフィンを取り除いた。このLi10GeP2S12粉末0.2gに550MPaで印加して両面に金電極を取り付けた直径10mmのペレットを作製し、25℃において1Hz~1MHzまでの交流インピーダンス測定を行い、イオン伝導度(表1の「大気暴露試験後の固体電解質のイオン伝導度」)を求めた。このように、試料を大気に暴露するとき以外は、Ar雰囲気のグローブボックス内で試料を取り扱った。なお、上記パラフィンで覆う前の原料となるLi10GeP2S12の粉末についても、同様の条件でイオン伝導度(表1の「試験に使用する前の固体電解質のイオン伝導度」)を求めておいた。
【0038】
(実施例2)
Li10GeP2S12粉末の代わりにLi10.35[Sn0.27Si1.08]P1.65S12粉末を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0039】
(実施例3)
Li10GeP2S12粉末の代わりにLi6PS5Cl粉末を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0040】
(実施例4)
Li10GeP2S12粉末の代わりに75Li2S・25P2S5ガラス粉末を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0041】
(実施例5)
Ar雰囲気のグローブボックス内でパラフィン(融点44~46℃)を120℃に加熱して融解し、この融液10mLにLi10GeP2S12の粉末1gを加えて撹拌してスラリーを得た。次に、当該スラリーを濾過せずに、室温まで冷却することでLi10GeP2S12粉末をパラフィンで覆った組成物を作製した。得られた組成物を大気中に取り出して3時間暴露した。その後、当該組成物を再びAr雰囲気のグローブボックス内に導入し、10mLのヘプタンで3回洗浄を行い、真空乾燥することでLi10GeP2S12粉末を覆っていたパラフィンを取り除いた。このLi10GeP2S12粉末0.2gに550MPaで印加して両面に金電極を取り付けた直径10mmのペレットを作製し、25℃において1Hz~1MHzまでの交流インピーダンス測定を行い、イオン伝導度を求めた。このように、試料を大気に暴露するとき以外は、Ar雰囲気のグローブボックス内で試料を取り扱った。なお、上記パラフィンで覆う前の原料となるLi10GeP2S12の粉末についても、同様の条件でイオン伝導度を求めておいた。
【0042】
(比較例1)
Li10GeP2S12粉末を大気中に3時間暴露した。その結果、潮解により粉末を得ることができなかった。
【0043】
(比較例2)
Li10.35[Sn0.27Si1.08]P1.65S12粉末を大気中に3時間暴露した。その結果、潮解により粉末を得ることができなかった。
【0044】
(比較例3)
Li6PS5Cl粉末を大気中に3時間暴露した。このLi6PS5Cl粉末0.2gに550MPaで印加して両面に金電極を取り付けた直径10mmのペレットを作製し、25℃において1Hz~1MHzまでの交流インピーダンス測定を行いイオン伝導度を求めた。試料を大気に暴露するとき以外は、Ar雰囲気のグローブボックス内で試料を取り扱った。
【0045】
(比較例4)
Li6PS5Cl粉末の代わりに75Li2S・25P2S5ガラス粉末を用いた以外は、比較例3と同様に行った。
上記各実施例及び各比較例について、評価結果を表1に示す。また、表2は、実施例及び比較例で用いた各硫化物系固体電解質中のLi原子数の、硫化物系固体電解質中の全原子数に対する割合(%)を示す。
【0046】
【0047】
【0048】
(評価結果)
実施例1~5については、大気暴露試験後のイオン伝導度の劣化が良好に抑制されていた。
比較例1及び2については、大気暴露試験によって固体電解質の潮解が発生し、イオン伝導度を測定することができなかった。
比較例3及び4については、大気暴露試験後のイオン伝導度の劣化が非常に大きかった。