(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】有機性排水の生物処理システム及び生物処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20230101AFI20230426BHJP
【FI】
C02F3/34 Z
(21)【出願番号】P 2019068250
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小松 和也
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/037261(WO,A1)
【文献】特開2012-239929(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0105302(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28- 3/34
H01M 8/00- 8/0297
8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の易分解性有機物と少なくとも1種の遅分解性有機物を含有する有機性排水が順次に通水されるように設置された、生物膜を有する第1ないし第n(nは2以上)の生物処理装置を備えた有機性排水の生物処理システムであって、
各生物処理装置は、前記有機性排水が通水される複数のアノード室を備えた微生物発電装置であり、該微生物発電装置の負極表面に前記生物膜が付着しており、
各生物処理装置は、被処理水が直列又は並列に通水される複数の室を備えており、
前記第1生物処理装置からの流出水の一部を該第1生物処理装置の流入側に返送する返送手段を設けた有機性排水の生物処理システム。
【請求項2】
前記第2以降の生物処理装置に、各生物処理装置からの流出水の一部を当該生物処理装置の流入側に返送する返送手段を設けた請求項1に記載の有機性排水の生物処理システム。
【請求項3】
前記微生物発電装置は、
槽体(1)と、
該槽体(1)内に複数枚のイオン透過性非導電性膜(2)が平行に配置されることによって交互に区画されている、カソード室(3)とアノード室(4)と、
該カソード室(3)内において、該イオン透過性非導電性膜(2)に接するように配置された正極5と、
該アノード室(4)内に配置された、導電性材料で構成された前記負極(6)と
を有する請求項1又は2に記載の有機性排水の生物処理システム。
【請求項4】
前記カソード室(3)は空室であり、酸素含有ガスが通気される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機性排水の生物処理システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの有機性排水の生物処理システムを用いた
、少なくとも1種の易分解性有機物と少なくとも1種の遅分解性有機物を含有する有機性排水の生物処理方法であって、
少なくとも前記第1生物処理装置からの流出水の一部を該第1生物処理装置の流入側に返送する有機性排水の生物処理方法。
【請求項6】
前記第2以降の生物処理装置への流入水に含まれる遅分解性有機物の全有機物に占める比率が30wt%以上である場合、各生物処理装置の流出水の一部を当該生物処理装置の流入側に返送する請求項5に記載の有機性排水の生物処理方法。
【請求項7】
前記易分解性有機物が炭素数4以下の低級脂肪酸及び/又は炭素数4以下の低級アルコールである請求項5又は6に記載の有機性排水の生物処理方法。
【請求項8】
各生物処理装置内の通水LVを10~50m/hrとする請求項5~7のいずれか1項に記載の有機性排水の生物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の生物処理システム及び生物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固定床式の嫌気性生物処理装置は、後段での固液分離および汚泥返送なしで槽内に菌体を保持し、安定した処理を行うことができる。しかし、生物処理槽が微生物発電装置のような、生物処理槽内で曝気を行わず、かつ、メタン発酵のように処理に伴うガス発生がない生物処理槽では、槽内はプラグフローに近い形になる。その場合、生物処理に伴い生成するCO2やNH3などにより槽内で局所的にpHが変化して、生物処理に適したpH条件を外れ、処理性能が低下してしまう。そのため、生物処理装置の処理水の一部を循環することで、槽内を完全混合に近づけ、pHを均一化させることが行われている。
【0003】
一方、分解速度の異なる易分解性有機物と遅分解性有機物とを含有する有機性排水を生物膜を用いた生物処理槽で処理する場合、易分解性有機物を分解する微生物が担体表面に優占的に付着増殖して、遅分解性有機物を分解するような微生物は保持されないため、遅分解性有機物の処理が一向に進まないことがある。そこで、生物処理槽を直列に複数設け、易分解性有機物が除去された被処理水が流入する後段の生物処理槽で遅分解性有機物の除去を行うようにすることがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、微生物発電装置のような、生物処理槽内で曝気を行わず、かつ、メタン発酵のように処理に伴い発生するガスもない生物処理槽で、上記理由から最後段の流出水の一部を最前段に循環して装置全体を完全混合に近づけようとすると、各槽で易分解性有機物を分解する微生物が増殖してしまい、遅分解性有機物の分解が進まなくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機物が、易分解性有機物及び遅分解性有機物など生物による分解速度が異なる有機物を含有する場合であっても、安定して生物処理することができる有機性排水の生物処理システム及び生物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有機性排水の生物処理システムは、被処理水が順次に通水されるように設置された、生物膜を有する第1ないし第n(nは2以上)の生物処理装置を備えた有機性排水の生物処理システムであって、各生物処理装置は、被処理水が直列又は並列に通水される複数の室を備えおり、前記第1生物処理装置からの流出水の一部を該第1生物処理装置の流入側に返送する返送手段を設けたものである。
【0008】
本発明の有機性排水の生物処理方法は、かかる本発明の有機性排水の生物処理システムを用いた有機性排水の生物処理方法であって、少なくとも前記第1生物処理装置からの流出水の一部を該第1生物処理装置の流入側に返送する。
【0009】
本発明の一態様では、第2以降の生物処理装置においても、各生物処理装置からの流出水の一部を当該生物処理装置の流入側に返送する。好ましくは第2以降の生物処理装置への流入水に含まれる遅分解性有機物の全有機物に占める比率が30wt%以上である場合、各生物処理装置の流出水の一部を当該生物処理装置の流入側に返送する。
【0010】
本発明の一態様では、前記生物処理装置は、プラグフロー通水方式の嫌気性生物処理装置である。
【0011】
本発明の一態様では、前記生物処理装置は、複数のアノード室を備えた微生物発電装置である。
【0012】
本発明の一態様では、各生物処理装置内の通水LVを10~50m/hrとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機性排水の生物処理システム及び方法によると、少なくとも第1生物処理装置の流出水の一部を該第1生物処理装置の流入側に返送するので、原水が易分解性有機物を多く含んでいる場合でも、第1生物処理装置で易分解性有機物が十分に生物処理される。そのため、第2生物処理装置以降への流入水中の易分解性有機物濃度が低くなり、遅分解性有機物を分解する微生物が十分に増殖し、遅分解性有機物も十分に分解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る生物処理システムの構成図である。
【
図2】実施の形態に係る微生物発電装置の模式的な縦断面図である。
【
図3】実施の形態に係る微生物発電装置の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の有機性排水の生物処理システム及び生物処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明の生物処理システム及び生物処理方法が処理対象とする原水としては、少なくとも1種の易分解性有機物と少なくとも1種の遅分解性有機物を含有する有機性排水が好適である。
【0017】
易分解性有機物としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの炭素数4以下の低級脂肪酸のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数4以下の低級アルコールが例示される。
【0018】
遅分解性有機物としては、TMAH、DMSO、フェノール、テレフタル酸、ベンゼン、デンプンなどが例示される。
【0019】
このような易分解性有機物及び遅分解性有機物を含む有機性排水としては、電子産業排水、化学工場排水、製薬排水などが例示されるが、これらに限定されない。
【0020】
図1は本発明の有機性排水の生物処理システムの概略的な構成を示すフロー図である。
【0021】
この実施の形態では、生物処理装置として第1,第2及び第3の微生物発電装置11,12,13が設置されている。ただし、微生物発電装置の設置段数はこれに限定されるものではなく、2又は4以上(好ましくは5以下)であってもよい。また、微生物発電装置以外のプラグフロー通水方式の嫌気性生物処理装置を用いてもよい。
【0022】
図1において、原水は、中和槽30に供給される。該中和槽30内の被処理水は、配管31、ポンプ32、配管33を介して第1微生物発電装置11のアノード室に供給され、微生物発電反応に供される。微生物発電反応後のアノード室内の液は、配管34へ流出し、その一部は配管35を介して流入配管31に返送される。
【0023】
配管34へ流出した液の残部は、配管41、ポンプ42、配管43を介して第2微生物発電装置12のアノード室に供給され、微生物発電反応に供される。微生物発電反応後のアノード室内の液は、配管44へ流出し、その一部は配管45を介して流入配管41に返送される。
【0024】
配管44へ流出した液の残部は、配管51、ポンプ52、配管53を介して第3微生物発電装置13のアノード室に供給され、微生物発電反応に供される。微生物発電反応後のアノード室内の液は、配管54へ流出し、その一部は配管55を介して流入配管51に返送される。
【0025】
配管54へ流出した液の残部が、配管61を介して処理水として取り出される。配管61へ流出した処理水の一部は、配管56を介して中和槽30へ返送されてもよい。ただし、各アノード室内の流量に対して1/10以下であることが好ましい。
【0026】
この実施の形態では、後述の
図2,3の通り、各微生物発電装置11~13はカソード室を備えており、各カソード室に空気や純酸素、酸素富化空気などの酸素含有ガスが供給される。各微生物発電装置のカソードを連通して酸素含有ガスを直列または並列に供給してもよい。
【0027】
図1では、第2,第3微生物発電装置12,13においてもアノード室流出液の一部を流入配管41,51に返送しているが、流入水に含まれる遅分解性有機物の全有機物に占める比率が30wt%以上である微生物発電装置12及び/又は13においてのみ、アノード室流出液を当該微生物発電装置の流入配管41又は51へ返送するようにしてもよい。
【0028】
次に、各微生物発電装置11,12,13の構成について
図2を参照して説明する。
【0029】
各微生物発電装置11~13においては、槽体1内に複数枚のイオン透過性非導電性膜2が平行に配置されることによってカソード室3とアノード室4とが交互に区画されている。各カソード室3内にあっては、イオン透過性非導電性膜2に接するように正極5が配置されている。
【0030】
正極(カソード)5は、導電性材料(グラファイト、チタン、ステンレスなど)で構成された立体よりなる。正極を構成する素材は、電子受容体の種類によって適宜、選択すればよい。酸素を電子受容体とする場合は白金などの酸素還元触媒を用いることが好ましく、例えばグラファイトフェルトを基材として白金を担持させるとよい。
【0031】
カソード室3内には酸素含有ガスの代りに、例えばヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(フェリシアン化カリウム)を含む液を供給してもよい。この場合、正極5として、安価なグラファイト電極をそのまま(白金を担持させずに)使用してもよい。
【0032】
各アノード室4内には、導電性材料(グラファイト、チタン、ステンレスなど)で構成された立体の負極6が配置されている。アノード室4内に発電微生物が保持されている。
【0033】
この実施の形態では、カソード室3内は、空室であり、ガス流入管7を介して空気などの酸素含有ガスが導入され、ガス流出管8を経て排ガスが流出する。
【0034】
カソード室3とアノード室4とを仕切るイオン透過性非導電性膜2としては、非導電性、かつイオン透過性を有するものであれば殆どのものが使用できる。イオン交換膜、紙、織布、不織布、いわゆる有機膜(精密濾過膜)、ハニカム成形体、格子状成形体等が使用できる。イオンを透過させ易くするために、厚さは10μm~1mm、特に30~100μm程度の薄いものが好ましい。
【0035】
アノード室4には有機物含有液を前記ポンプ32,42又は52及び配管33,43又は53を介して導入し、流出配管34,44又は54から反応廃液を排出させる。なお、アノード室4内は密閉され嫌気性とされる。
【0036】
最終段の微生物発電装置13から流出配管54へ流出し、さらに配管61を介して取り出される処理水の一部は、前述の通り、配管56を介して中和槽30に循環され、原水が希釈される。この中和槽30には水酸化ナトリウム水溶液などのpH調整剤が添加され、pHが7~9に調整される。各微生物発電装置のアノード室4の温度条件は常温から中高温、具体的には10~70℃程度とすることが好ましい。
【0037】
アノード室流出水の循環比率は、アノード室4内が完全混合に近くなるように、有機物含有液流入量:循環水量(流量比)として1:10以上、特に1:50以上、原水のBOD濃度が10,000mg/Lを超えるような高濃度の場合には1:200以上とするのが好ましい。
【0038】
本発明では、アノード室4内の通水LVを10m/hr以上、例えば10~50m/hrとすることで、アノード室内を完全混合に近づけるとともに、負極表面の生物膜と原水中の基質との接触効率を高めることができる。
【0039】
アノード室4に窒素ガスなどの酸素を含有しないガスを連続的、または、間欠的に通気してもよい。負極表面にガスによる剪断力が与えられ、生物膜の過度な付着による閉塞を防ぐ効果が高まるのに加え、特にカソード室3で酸素を電子受容体とする場合などには、好気性スライムの増殖などにより性能低下に繋がる、カソード室3からアノード室4に浸透する酸素を除去する効果もある。
【0040】
正極5と負極6との間に生じた起電力により、端子20,21を介して外部抵抗(図示略)に電流が流れる。
【0041】
カソード室3に酸素含有ガスを通気すると共に、アノード室4に負極溶液を流通させることにより、アノード室4内では、
(有機物)+H2O→CO2+H++e-
なる反応が進行する。この電子e-が負極6、端子21、外部抵抗、端子20を経て正極5へ流れる。
【0042】
イオン透過性非導電性膜2がカチオン交換膜である場合、上記反応で生じたプロトンH+は、カチオン交換膜を通って正極5に移動する。正極5では、
O2+4H++4e-→2H2O
なる反応が進行する。この正極反応で生成したH2Oはカソード排ガスと共に排出される。
【0043】
イオン透過性非導電性膜2としてアニオン交換膜を用いた場合、正極5では、
O2+2H2O+4e-→4OH-
なる反応が進行する。この正極反応で生成したOH-がイオン透過性非導電性膜2としてのアニオン交換膜を透過する。
【0044】
アノード室4では、微生物による水の分解反応によりCO2が生成することにより、pHが低下しようとする。そこで、pHが好ましくは7~9となるようにアルカリが中和槽30に添加される。
【0045】
図3は本発明の別の実施の形態に係る微生物発電装置を示している。上記
図2に示す微生物発電装置では、各アノード室4に対し負極溶液が並列に通水されている。これに対し、
図3では、各アノード室4は直列に接続されており、負極溶液は直列に通水される。
図3のその他の構成は
図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0046】
本発明では、アノード室内に保持され、電気エネルギーを産生させる微生物は、電子供与体としての機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、Saccharomyces、Hansenula、Candida、Micrococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Leuconostoa、Lactobacillus、Corynebacterium、Arthrobacter、Bacillus、Clostridium、Neisseria、Escherichia、Enterobacter、Serratia、Achromobacter、Alcaligenes、Flavobacterium、Acetobacter、Moraxella、Nitrosomonas、Nitorobacter、Thiobacillus、Gluconobacter、Pseudomonas、Xanthomonas、Vibrio、Comamonas、Proteus(Proteus vulgaris)、Shewannell及びGeobacterの各属に属する細菌、糸状菌、酵母などを挙げることができる。このような微生物を含む汚泥として下水等の有機物含有水を処理する生物処理槽から得られる活性汚泥、下水の最初沈澱池からの流出水に含まれる微生物、嫌気性消化汚泥等を植種としてアノード室に供給し、微生物を負極に保持させることができる。発電効率を高くするためには、アノード室内に保持される微生物量は高濃度であることが好ましく、例えば微生物濃度は1~50g/Lであることが好ましい。
【実施例】
【0047】
[比較例1]
7cm×25cm×0.5cm(厚さ)のアノード室(容積87.5mL)に、厚さ0.5cmのグラファイトフェルトにステンレス線を導電性ペーストで接着して電気引出し線としたものを導電性材料として充填して負極を形成した。このアノード室の厚さ方向に対して、厚さ30μmのポリオレフィン製の不織布を介してカソード室を形成した。カソード室も7cm×25cm×0.5cm(厚さ)であり、厚さ0.5cmのグラファイトフェルトにステンレス線を導電性ペーストで接着して電気引出し線としたものを導電性材料として充填して正極を形成した。3Ωの抵抗で接続して、微生物発電装置(セル)を作製した。
【0048】
この微生物発電セルを
図1のように3セル直列に接続して有機性排水の生物処理システムを作製した。3セル目のアノード室流出水(処理水)を処理水槽に受け、処理水槽にて、2NHClまたは2NNaOHでpH7.5に調整したアノード室流出水を152mL/min(9.1L/hr)の流量で中和槽に循環し、原水と混合させつつ第1微生物発電セルのアノード室に上向流で通水した。
【0049】
中和槽から第1微生物発電セルへは、イソプロピルアルコール(IPA)1,000mgC/L、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)1,000mgC/Lと50mMリン酸バッファおよび酵母エキスとを含む原水を160mL/hrの流量にて供給した。
【0050】
この生物処理システムを、35℃に制御された室内に設置した。なお、原水の通水に先立って、稼働中の微生物発電装置からの流出水を植菌として通液した。各微生物発電セルのカソード室には50mMのフェリシアン化カリウムとリン酸バッファとを含む正極溶液を70mL/minの流量で供給した。
【0051】
第1、第2微生物発電セルのアノード室の流出水は、それぞれ全量を第2、第3微生物発電セルに送水した。第3微生物発電セルのアノード室流出水は、上記の通り、152mL/minを第1微生物発電セルに返送し、残部を処理水として取り出した。
【0052】
[実施例1]
比較例1と同じ装置構成で、各微生物発電セルのアノード室流出水を152mL/min(9.1L/hr)の流量で各セルの流入配管に循環させた。つまり、第1、第2微生物発電セルのアノード室の流出液は、それぞれ分岐して152mL/min(9.1L/hr)の流量で各セルのアノード室流入液に混合させ、第3微生物発電セルのアノード室流出液は、処理水槽の上流側で分岐して152mL/min(9.1L/hr)の流量で第3微生物発電セルのアノード室流入液に混合させた。これにより各セルのアノード室流入水及びアノード室流出水の流量は312mL/minとなった。その他は比較例1と同一条件にて運転を行った。
【0053】
<結果>
比較例1、実施例1の処理水TOC濃度の推移を
図4に示す。比較例1では、立上げから3週間経過した頃から処理水TOC濃度は1,000~1,100mgC/Lでほぼ横這いとなり、また水質分析したところ処理水にはTMAHが残存していた。一方、実施例1では、立上げ当初は処理水TOC濃度が比較例1より高かったが、3週間経過後も低下し続け、約2ヶ月後には200mg/L前後で安定するようになり、水質分析したところTMAHも除去されていた。
【0054】
この実施例及び比較例により、アノード室流出水の一部を当該セルの流入水に循環させることにより、有機物除去効果が向上することが実証された。
【符号の説明】
【0055】
1 槽体
2 イオン透過性非導電性膜
3 カソード室
4 アノード室
5 正極
6 負極
11,12,13 微生物発電装置
10 原水槽