(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】3次元形状の結晶化ガラス、3次元形状の化学強化ガラスおよびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 10/12 20060101AFI20230426BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C03C10/12
C03C21/00 101
(21)【出願番号】P 2020503477
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2019006907
(87)【国際公開番号】W WO2019167850
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2018033693
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019021896
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 清
(72)【発明者】
【氏名】今北 健二
(72)【発明者】
【氏名】小池 章夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 枝里子
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/154235(WO,A1)
【文献】特開2001-048582(JP,A)
【文献】特開2005-053711(JP,A)
【文献】特表2017-518947(JP,A)
【文献】特表2017-515779(JP,A)
【文献】特表2007-527354(JP,A)
【文献】特表2016-529201(JP,A)
【文献】特開昭61-101434(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 10/12
C03C 21/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶を含有する3次元形状の結晶化ガラスであって、
厚さ0.8mm換算の光透過率が80%以上であり、
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を45~74%、
Al
2O
3を1~30%、
Li
2Oを1~25%、
Na
2Oを
0.5~10%、
K
2Oを0~5%、
MgOを0~5%、
BaOを0~1%、
Sb
2
O
3
を0~0.3%、
B
2
O
3
を0~5%、
SnO
2およびZrO
2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及び
P
2O
5を0~12%含有
し、
Na
2
O+K
2
Oが1.6%以上である、3次元形状結晶化ガラス。
【請求項2】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を58~74%、
Al
2O
3を5~30%、
Li
2Oを1~14%、
Na
2Oを
0.5~5%、
K
2Oを0~2%、
SnO
2およびZrO
2のいずれか一種以上を合計で0.5~12%、及び
P
2O
5を0~6%含有する、請求項1に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項3】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を58~70%、
Al
2O
3を15~30%、
Li
2Oを2~10%、
Na
2Oを
0.5~5%、
K
2Oを0~2%、
SnO
2を0.5~6%、
ZrO
2を0.5~6%、及び
P
2O
5を0~6%含有し、
Na
2O+K
2Oが
1.6~5%である請求項2に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項4】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を45~70%、
Al
2O
3を1~20%、
Li
2Oを10~25%、
Na
2Oを
0.5~10%、
K
2Oを0~5%、
ZrO
2を0~15%、及び
P
2O
5を0~12%含有する請求項1に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項5】
結晶を含有する3次元形状の結晶化ガラスであって、
厚さ0.8mm換算の光透過率が80%以上であり、
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2
を45~70%、
Al
2
O
3
を1~20%、
Li
2
Oを10~25%、
Na
2
Oを0~10%、
K
2
Oを0~5%、
SnO
2
およびZrO
2
のいずれか一種以上を合計で0~15%、
ZrO
2
を0~15%、及び
P
2
O
5
を0~12%含有する、3次元形状結晶化ガラス。
【請求項6】
β-スポジュメン結晶を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項7】
ペタライト結晶を含有する請求項1または2に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項8】
メタケイ酸リチウム結晶を含有する請求項
1、4、または5に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項9】
ビッカース硬度が780以上である請求項1~
8のいずれか一項に記載の3次元形状結晶化ガラス。
【請求項10】
表面に圧縮応力層を有する3次元形状の化学強化ガラスであって、
結晶を含有する結晶化ガラスであり、
厚さ0.8mm換算の透過率が80%以上であり、
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を45~74%、
Al
2O
3を1~30%、
Li
2Oを1~25%、
Na
2Oを
0.5~10%、
K
2Oを0~5%、
MgOを0~5%、
BaOを0~1%、
Sb
2
O
3
を0~0.3%、
B
2
O
3
を0~5%、
SnO
2およびZrO
2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及び
P
2O
5を0~12%含有
し、
Na
2
O+K
2
Oが1.6%以上である、3次元形状化学強化ガラス。
【請求項11】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を58~74%、
Al
2O
3を5~30%、
Li
2Oを1~14%、
Na
2Oを
0.5~5%、
K
2Oを0~2%、
SnO
2およびZrO
2のいずれか一種以上を合計で0.5~12%、及び
P
2O
5を0~6%含有する、請求項
10に記載の3次元形状化学強化ガラス。
【請求項12】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を45~70%、
Al
2O
3を1~20%、
Li
2Oを10~25%、
Na
2Oを
0.5~10%、
K
2Oを0~5%、
ZrO
2を0~15%、及び
P
2O
5を0~12%含有する請求項
10に記載の3次元形状化学強化ガラス。
【請求項13】
表面に圧縮応力層を有する3次元形状の化学強化ガラスであって、
結晶を含有する結晶化ガラスであり、
厚さ0.8mm換算の透過率が80%以上であり、
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2
を45~70%、
Al
2
O
3
を1~20%、
Li
2
Oを10~25%、
Na
2
Oを0~10%、
K
2
Oを0~5%、
SnO
2
およびZrO
2
のいずれか一種以上を合計で0~15%、
ZrO
2
を0~15%、及び
P
2
O
5
を0~12%含有する、3次元形状化学強化ガラス。
【請求項14】
β-スポジュメン結晶を含有する請求項
10または11に記載の3次元形状化学強化ガラス。
【請求項15】
メタケイ酸リチウムを含有する請求項
10、12または13に記載の3次元形状化学強化ガラス。
【請求項16】
ビッカース硬度が800以上である、請求項
10~15のいずれか一項に記載の3次元形状化学強化ガラス。
【請求項17】
表面圧縮応力が600MPa以上かつ圧縮応力深さが80μm以上である請求項
10~16のいずれか一項に記載の3次元形状化学強化ガラス。
【請求項18】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を45~74%、
Al
2O
3を1~30%、
Li
2Oを1~25%、
Na
2Oを
0.5~10%、
K
2Oを0~5%、
MgOを0~5%、
BaOを0~1%、
Sb
2
O
3
を0~0.3%、
B
2
O
3
を0~5%、
SnO
2およびZrO
2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及び
P
2O
5を0~12%含有
し、
Na
2
O+K
2
Oが1.6%以上であるガラスを加熱して結晶化し、
得られた結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形することを含み、
得られる化学強化用ガラスにおいて、厚さ0.8mm換算の光透過率が80%以上である、化学強化用ガラスの製造方法。
【請求項19】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を58~74%、
Al
2O
3を5~30%、
Li
2Oを1~14%、
Na
2Oを
0.5~5%、
K
2Oを0~2%、
SnO
2およびZrO
2のいずれか一種以上を合計で0.5~12%、及び
P
2O
5を0~6%含有し、
Na
2O+K
2Oが1~5%であるガラスを加熱して結晶化し、
得られた結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形する請求項
18に記載の化学強化用ガラスの製造方法。
【請求項20】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2を45~70%、
Al
2O
3を1~20%、
Li
2Oを10~25%、
Na
2Oを
0.5~10%、
K
2Oを0~5%、
ZrO
2を0~15%、及び
P
2O
5を0~12%含有するガラスを加熱して結晶化し、
得られた結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形する請求項
18に記載の化学強化用ガラスの製造方法。
【請求項21】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO
2
を45~70%、
Al
2
O
3
を1~20%、
Li
2
Oを10~25%、
Na
2
Oを0~10%、
K
2
Oを0~5%、
SnO
2
およびZrO
2
のいずれか一種以上を合計で0~15%、
ZrO
2
を0~15%、及び
P
2
O
5
を0~12%含有するガラスを加熱して結晶化し、
得られた結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形することを含み、
得られる化学強化用ガラスにおいて、厚さ0.8mm換算の光透過率が80%以上である、化学強化用ガラスの製造方法。
【請求項22】
請求項
18~21のいずれか一項に記載の方法で得られた化学強化用ガラスを化学強化する、化学強化ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、化学強化特性に優れた3次元形状の結晶化ガラスおよびその製造方法に関する。また、3次元形状の化学強化ガラスおよびその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン等のモバイル機器のディスプレイ装置のカバーガラス、インストルメントパネルやヘッドアップディスプレイ(HUD)等の車載表示部材のカバーガラスとして、薄くて強度の高い化学強化ガラスが用いられている。これらの表示装置では、操作性や視認性を高めるために、3次元形状(曲面状)のカバーガラスが求められることがある。3次元形状のカバーガラスは、平らなガラス板を加熱し、成形型を用いて曲げ成形(3次元成形ともよばれる)する方法で製造される(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2には、3次元成形と化学強化が可能なリチウムアルミノシリケートガラスが開示されている。
特許文献3には、化学強化された結晶化ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/167894号
【文献】日本国特表2013-520385号公報
【文献】日本国特表2016-529201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結晶化ガラスの化学強化特性は、ガラス組成や析出結晶の影響を強く受ける。結晶化ガラスの傷付きにくさや透明性も、ガラス組成や析出結晶の影響を強く受ける。そこで、化学強化特性と透明性の両方が優れる結晶化ガラスを得るためには、ガラス組成や析出結晶の微妙な調整が必要である。
【0006】
3次元形状の結晶化ガラスを得る方法としては、非晶質ガラスを曲げ成形してから結晶化する方法、非晶質ガラスを結晶化してから研削等の方法で3次元形状に加工する方法、非晶質ガラスを結晶化してから曲げ成形する方法が考えられる。
非晶質ガラスを曲げ成形してから結晶化する方法は、成形後に加熱処理するために、変形しやすいだけでなく、非晶質ガラスが結晶化する際に、寸法変化が生じるので、所望の形状を得ることが困難である。非晶質ガラスを結晶化してから、研削等の方法で3次元形状に加工する方法は、切削加工に長時間を要するので生産効率がよくない。
【0007】
そこで非晶質ガラスを結晶化してから曲げ成形することが好ましい。しかし、結晶化ガラスは一般に、非晶質ガラスと比較して軟化温度が高く、曲げ成形が困難である。また、透明な結晶化ガラスを曲げ成形しようとして高温に加熱すると、結晶化ガラス中の結晶が成長しすぎて透明性が低下する等の問題が生じやすい。
【0008】
上記に鑑みて、本発明は、傷つきにくく、透明性に優れる3次元形状の化学強化ガラスを容易に製造するための3次元形状結晶化ガラスを提供することを目的とする。
また、本発明は当該3次元形状結晶化ガラスを化学強化して得られる、傷つきにくく、透明性に優れる3次元形状の化学強化ガラスを提供することを目的とする。
また、本発明は当該3次元形状結晶化ガラスである化学強化ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結晶を含有する3次元形状の結晶化ガラスであって、厚さ0.8mm換算の光透過率が80%以上であり、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を45~74%、Al2O3を1~30%、Li2Oを1~25%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及びP2O5を0~12%含有する、3次元形状結晶化ガラスを提供する。
また、表面に圧縮応力層を有する3次元形状の化学強化ガラスであって、結晶を含有する結晶化ガラスであり、厚さ0.8mm換算の透過率が80%以上であり、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を45~74%、Al2O3を1~30%、Li2Oを1~25%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及びP2O5を0~12%含有する、3次元形状化学強化ガラスを提供する。
また、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を45~74%、Al2O3を1~30%、Li2Oを2~25%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及びP2O5を0~12%含有するガラスを加熱して結晶化し、得られた結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形する化学強化用ガラスの製造方法を提供する。
また、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を45~74%、Al2O3を1~30%、Li2Oを2~25%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及びP2O5を0~12%含有するガラスを加熱して結晶化し、得られた結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形し、その後に化学強化する、化学強化ガラスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傷つきにくく、透明性に優れる3次元形状の化学強化ガラスを容易に製造するための3次元形状結晶化ガラスが得られる。
また、本発明の化学強化ガラスは、傷つきにくく、透明性に優れ、また、本発明の3次元形状結晶化ガラスを化学強化することで容易に製造することができる。
また、本発明の化学強化ガラスの製造方法によれば、上記の本発明の3次元形状結晶化ガラスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の3次元形状ガラスの形状の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の3次元形状ガラスの形状の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の3次元形状ガラスの形状の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、結晶化ガラスのX線回折パターンの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、結晶化ガラスのX線回折パターンの一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、結晶化ガラスの曲げ成形性試験方法を示す模式図であり、
図6(a)は曲げる前の状態を示し、
図6(b)は加熱して曲げている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0013】
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
本明細書においては、「非晶質ガラス」と「結晶化ガラス」とを合わせて「ガラス」という。
本明細書において「非晶質ガラス」とは、粉末X線回折法によって、結晶を示す回折ピークが認められないガラスを意味する。
本明細書において「結晶化ガラス」とは、「非晶質ガラス」を加熱処理して、結晶を析出させたものであり、結晶を含有するガラスを意味する。
粉末X線回折測定は、CuKα線を用いて2θが10°~80°の範囲を測定し、回折ピークが現れた場合には、例えば、3強線法によって析出結晶を同定する。
【0015】
本明細書において「化学強化ガラス」は化学強化処理を施した後のガラスを意味し、「化学強化用ガラス」は化学強化処理を施す前のガラスを意味する。
また、本明細書において「化学強化ガラスの母組成」は、化学強化用ガラスのガラス組成を意味する。極端なイオン交換処理がされた場合を除いて、化学強化ガラスの圧縮応力深さ(DOL)より深い部分のガラス組成は化学強化ガラスの母組成と同じである。
【0016】
本明細書において、ガラス組成は特に断らない限り酸化物基準の質量%表示で表し、質量%を単に「%」と表記する。
また、本明細書において「実質的に含有しない」とは、原材料等に含まれる不純物レベル以下である、つまり意図的に加えたものではないことを意味する。本明細書において、ある成分を実質的に含有しないと記載されている場合、当該成分の含有量は、具体的には、たとえば0.1%未満である。
【0017】
本明細書において「応力プロファイル」はガラス表面からの深さを変数として圧縮応力値を表したものを意味する。応力プロファイルにおいて、引張応力は負の圧縮応力として表される。
「圧縮応力値(CS)」は、ガラスの断面を薄片化し、該薄片化したサンプルを複屈折イメージングシステムで解析することによって測定できる。複屈折イメージングシステムとしては、例えば、株式会社東京インスツルメンツ製複屈折イメージングシステムAbrio-IMがある。また、散乱光光弾性を利用しても測定できる。この方法では、ガラスの表面から光を入射し、その散乱光の偏光を解析してCSを測定できる。散乱光光弾性を利用した応力測定器としては、例えば、折原製作所製散乱光光弾性応力計SLP-1000がある。
「圧縮応力層深さ(DOL)」は、圧縮応力値(CS)がゼロとなる深さである。
以下では深さがDOL/4における圧縮応力をCS1、深さがDOL/2における圧縮応力をCS2と記載することがある。
また、圧縮応力値がCS/2となる深さをDOL1とし、次の式で表されるm1をガラス表面から深さDOL1における応力プロファイルの傾きとする。
m1=(CS-CS/2)/(0-DOL1)
次の式で表されるm2を深さDOL/4から深さDOL/2における応力プロファイルの傾きとする。
m2=(CS1-CS2)/(DOL/4-DOL/2)
次の式で表されるm3を深さDOL/2から深さDOLにおける応力プロファイルの傾きとする。
m3=(CS2-0)/(DOL/2-DOL)
【0018】
本明細書において「内部引張応力(CT)」は、板厚tの1/2の深さにおける引張応力値を意味する。
【0019】
本明細書において「光透過率」は、波長380nm~780nmの光の平均透過率を意味する。
本明細書において「ヘーズ値」はC光源を使用し、JIS K3761:2000に従って測定されたヘーズ値を意味する。
【0020】
本明細書において「ビッカース硬度」は、JIS R1610:2003に規定されるビッカース硬さ(HV0.1)である。
また、「破壊靭性値」は、JIS R1607:2010に規定される圧子圧入法(IF法)破壊靭性値を意味する。
【0021】
本明細書において「3次元形状」は平板を曲げて得られる形状を意味する。なお、3次元形状は全体の厚さが均一な形状に限定されず、厚さの異なる部分を有する形状であってもよい。
【0022】
<3次元形状結晶化ガラス>
図1は、本実施形態の3次元形状結晶化ガラス(以下、「本3次元形状ガラス」とも記載する)の一例を示す斜視図である。
図1は、凹形状に描かれているが、本3次元形状ガラスは凸形状でもよい。
図1は、中央部が平板状のガラスを示しているが、本3次元形状ガラスは全体が曲面状でもよい。また、本3次元形状ガラスは、
図2や
図3に示すように複数のR形状から構成される3次元形状であってもよい。
【0023】
本3次元形状ガラスは、透明性が高いので携帯端末等の表示部のカバーガラス等に好適である。本3次元形状ガラスの厚さ0.8mm換算の光透過率は、80%以上であると携帯ディスプレイのカバーガラスに用いた場合に、画面が見えやすいので好ましく、85%以上がより好ましく、86%以上がさらに好ましく、88%以上が特に好ましい。本3次元形状ガラスの厚さ0.8mm換算の光透過率は、高い程好ましいが、通常は91%以下、又は90%以下である。90%は一般的な非晶質ガラスと同等の光透過率である。
また、本3次元形状ガラスの厚さ0.8mm換算のヘーズ値は、1.5%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.8%以下が極めて好ましく、0.5%以下が最も好ましい。一方、結晶化率を下げなければヘーズを下げ難い場合には、機械的強度を高くする等のために、本3次元形状ガラスの厚さ0.8mmの場合のヘーズ値は、0.05%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましい。
【0024】
本3次元形状ガラスは、結晶化ガラスなので、非晶質ガラスと比較して強度が高い。また、ビッカース硬度が大きく、傷つきにくい。
本3次元形状ガラスのビッカース硬度は、耐摩耗性向上のために680以上が好ましく、700以上がより好ましく、740以上がさらに好ましく、780以上がよりさらに好ましく、800以上が特に好ましい。
しかし、ビッカース硬度が大きすぎると加工しにくくなる場合があるため、本3次元形状ガラスのビッカース硬度は、1100以下が好ましく、1050以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。
【0025】
本3次元形状ガラスを構成する結晶化ガラス(以下、「本結晶化ガラス」ということがある。)は結晶を含有するが、リチウムアルミノシリケート結晶または、リチウムシリケート結晶を含有することが好ましい。リチウムアルミノシリケート結晶またはリチウムシリケート結晶を含有する場合、化学強化処理によって、これらの結晶もイオン交換されるので、高い強度が得られる。リチウムアルミノシリケート結晶としては、たとえばβ-スポジュメン結晶、ペタライト結晶が挙げられる。リチウムシリケート結晶としては、メタケイ酸リチウム結晶、二ケイ酸リチウム結晶が挙げられる。
化学強化後の強度を高くしたい場合は、本結晶化ガラスは、β-スポジュメン結晶を含有することが好ましい。化学強化特性を保持しつつ、透明性および成形性をよくしたい場合には、本結晶化ガラスは、メタケイ酸リチウム結晶を含有することが好ましい。
【0026】
β-スポジュメン結晶は、LiAlSi
2O
6と表され、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ)が25.55°±0.05°、22.71°±0.05°、及び28.20°±0.05°に回折ピークを示す結晶である。
図2にβ-スポジュメン結晶を含有する結晶化ガラス(化学強化用ガラス)と、当該結晶化ガラスを化学強化した結晶化ガラス(化学強化ガラス)とのX線回折パターンの例を示す。
図2において、実線は強化前の結晶化ガラス板について測定されたX線回折パターンであり、
図2中に黒丸で示したβ-スポジュメン結晶の回折線が認められる。点線で示したのは、化学強化後の結晶化ガラス(化学強化ガラス)板について測定されたX線回折パターンである。化学強化によって回折ピークの位置が低角度側にシフトしているのは、結晶中の小さいイオンと溶融塩中の大きいイオンとのイオン交換が生じて、格子面間隔が大きくなったためと考えられる。
しかし、本発明者等が化学強化前後の粉末X線回折パターンを比較したところ、このような回折線のシフトは認められなかった。これは、化学強化処理による格子面間隔の変化が、ガラス板の表面付近でのみ生じ、内部の結晶については化学強化処理による変化が生じないためと考えられる。
β-スポジュメン結晶を含有する結晶化ガラスは、他の結晶を含有する結晶化ガラスよりも化学強化によって表面圧縮応力(CS)が大きくなる傾向がある。β-スポジュメン結晶は結晶構造が緻密なので、化学強化のためのイオン交換処理によって析出結晶中のイオンがより大きいイオンに置換されたときの結晶構造変化に伴って発生する圧縮応力が大きくなるためであると考えられる。
【0027】
β-スポジュメン結晶は、結晶成長速度が大きいことが知られている。そこで、β-スポジュメン結晶を含有する結晶化ガラスは含有する結晶が大きくなりやすく、そのために透明性が低く、ヘーズ値が大きいことが多い。しかし、本3次元形状ガラスは、微小な結晶を多数含有しているので、透明性が高く、ヘーズ値が小さい。
【0028】
メタケイ酸リチウム結晶は、Li
2SiO
3と表され、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ)が26.98±0.2、18.88±0.2、33.05±0.2に回折ピークを示す結晶である。
図3にメタケイ酸リチウム結晶を含有する結晶化ガラスのX線回折パターンの例を示す。
メタケイ酸リチウム結晶を含有する結晶化ガラスは、非晶質ガラスに比べて破壊靱性値が高く、化学強化によって大きな圧縮応力を形成しても激しい破壊が生じにくい。メタケイ酸リチウム結晶が析出し得る非晶質ガラスは、熱処理条件等によって二ケイ酸リチウム結晶を析出する場合があるが、メタケイ酸リチウム結晶と二ケイ酸リチウム結晶を同時に含有すると透明性が低下する。そこで、透明性を高くするためには、メタケイ酸リチウムを含有する結晶化ガラスは、二ケイ酸リチウムを含有しないことが好ましい。ここで「二ケイ酸リチウムを含有しない」とは前述のX線回折測定において二ケイ酸リチウム結晶の回折ピークが認められないことを意味する。
【0029】
本結晶化ガラスは、曲げ成形温度を下げたい場合等は、ペタライト結晶またはメタケイ酸リチウム結晶を含有することが好ましい。これらの結晶を含有する結晶化ガラスは、結晶化処理温度が低く、軟化温度が低いので成形温度を下げやすい傾向がある。
【0030】
本結晶化ガラスの結晶化率は、機械的強度を高くするために10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。一方、本結晶化ガラスの結晶化率は、透明性を高くするために70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が特に好ましい。結晶化率が小さいことは、加熱して曲げ成形等しやすい点でも好ましい。
結晶化率は、X線回折強度からリートベルト法で算出できる。リートベルト法については、日本結晶学会「結晶解析ハンドブック」編集委員会編、「結晶解析ハンドブック」(協立出版 1999年刊、p492~499)に記載されている。
【0031】
本結晶化ガラスの析出結晶の平均粒径は、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましく、100nm以下が特に好ましい。析出結晶の平均粒径は、粉末X線回折強度からリートベルト法を用いて計算できる。
【0032】
β-スポジュメン結晶を含有する結晶化ガラスは、熱膨張係数が小さいことでも知られている。本結晶化ガラスがβ-スポジュメンを含有する場合の50℃~350℃における平均熱膨張係数は、好ましくは30×10-7/℃以下、より好ましくは25×10-7/℃以下、さらに好ましくは20×10-7/℃以下、特に好ましくは15×10-7/℃以下である。50℃~350℃における平均熱膨張係数は、通常は、10×10-7/℃以上である。
一方、本結晶化ガラスがメタケイ酸リチウム結晶を含有する場合、本結晶化ガラスの50℃~350℃における平均熱膨張係数は、10×10-7℃以上が好ましく、11×10-7℃以上がより好ましく、12×10-7℃以上がさらに好ましく、13×10-7℃以上が特に好ましい。熱膨張係数が大き過ぎると加熱処理時に割れやすいため、本結晶化ガラスがメタケイ酸リチウム結晶を含有する場合、50℃~350℃における平均熱膨張係数は好ましくは160×10-7℃以下、より好ましくは150×10-7℃以下、さらに好ましくは140×10-7℃以下である。
【0033】
本結晶化ガラスの破壊靱性値は、好ましくは0.8MPa・m1/2以上、より好ましくは1MPa・m1/2以上であり、かかる範囲であると、強化ガラスが破壊した際に破片が飛散しにくくなる。
本結晶化ガラスのヤング率は、好ましくは80GPa以上、より好ましくは86GPa以上であり、さらに好ましくは90GPa以上、特に好ましくは100GPa以上である。ヤング率を高くすることにより、強化ガラスが破壊した際に破片が飛散しにくくなる。
【0034】
本結晶化ガラスがリチウムアルミノシリケート結晶を含有する場合は、酸化物基準の質量%表示でSiO2を58~74%、Al2O3を5~30%、Li2Oを1~14%、Na2Oを0~5%、K2Oを0~2%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0.5~12%、及びP2O5を0~6%含有することが好ましく、上記組成の中でもLi2Oを2~14%含有することがより好ましく、また、Na2OとK2Oの含有量の合計(Na2O+K2O)が1~5%であることがより好ましい。
また、SiO2を58~70%、Al2O3を15~30%、Li2Oを2~10%、Na2Oを0~5%、K2Oを0~2%、SnO2を0.5~6%、ZrO2を0.5~6%、及びP2O5を0~6%含有し、Na2O+K2Oが1~5%であることがさらに好ましい。
すなわち、本3次元形状ガラスは、該組成の非晶質ガラスを結晶化したものであることが好ましい。
本結晶化ガラスがリチウムシリケート結晶を含有する場合は、酸化物基準の質量%表示で、酸化物基準の質量%表示でSiO2を45~75%、Al2O3を1~20%、Li2Oを10~25%、P2O5を0~12%、ZrO2を0~15%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%含有することが好ましい。
【0035】
<化学強化ガラス>
本3次元形状ガラスは化学強化されることが好ましい。本3次元形状ガラスを化学強化した本実施形態の3次元形状化学強化ガラス(以下において、「本強化ガラス」ということがある)について説明する。
本強化ガラスの表面圧縮応力(CS)は、600MPa以上であると、撓み等の変形によって割れにくく、好ましい。本強化ガラスの表面圧縮応力は、800MPa以上がより好ましい。
【0036】
本強化ガラスの圧縮応力深さ(DOL)は、80μm以上であると表面に傷が生じた時も割れにくく、好ましい。本強化ガラスのDOLは、好ましくは100μm以上である。
また、圧縮応力値が50MPa以上となる最大深さ(以下において「50MPa深さ」ということがある。)が80μm以上であると、アスファルト等の硬い面上に落下したときにも割れにくくなるのでより好ましい。50MPa深さは、さらに好ましくは90μm以上であり、特に好ましくは100μm以上である。
【0037】
本強化ガラスにおいて、ガラス表面から深さDOL1における応力プロファイルの傾きm1は-50MPa/μm以下が好ましく、-55MPa/μm以下がより好ましく、-60MPa/μm以下がさらに好ましい。化学強化ガラスは、表面に圧縮応力層を形成したガラスであり、表面から遠い部分には引張応力が発生することから、その応力プロファイルは、深さがゼロの表面から内部に向かって負の傾きを有している。そこでm1は負の値であり、その絶対値が大きいことで、表面圧縮応力CSが大きく、かつ内部引張応力CTが小さい応力プロファイルが得られる。
【0038】
深さDOL/4から深さDOL/2における応力プロファイルの傾きm2は負の値である。傾きm2は、強化ガラスが破壊した際に破片が飛散することを抑制するために-5MPa/μm以上が好ましく、-3MPa/μm以上がより好ましく、-2MPa/μm以上がさらに好ましい。m2は大きすぎると50MPa深さが小さくなり、アスファルト落下強度が不足するおそれがある。50MPa深さを大きくするために、m2は-0.3MPa/μm以下が好ましく、-0.5MPa/μm以下がより好ましく、-0.7MPa/μm以下がさらに好ましい。
【0039】
本強化ガラスにおいて、深さDOL/2からDOLにおける応力プロファイルの傾きm3は、負の値である。強化ガラスが破壊した際に破片が飛散することを抑制するために、m3は、-5MPa/μm以上が好ましく、-4MPa/μm以上がより好ましく、-3.5MPa/μm以上がさらに好ましく、-2MPa/μm以上が特に好ましい。m3の絶対値は小さすぎると50MPa深さが小さくなり、傷付いた際に割れやすくなる。50MPa深さを大きくするために、m3は-0.3MPa/μm以下が好ましく、-0.5MPa/μm以下がより好ましく、-0.7MPa/μm以下がさらに好ましい。
【0040】
傾きm2と傾きm3の比m2/m3は2以下であると、深いDOLとともに小さいCTが得られるので好ましい。m2/m3は1.5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。強化ガラスの端面にクラックが発生することを防止するためには、m2/m3は0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。
【0041】
本強化ガラスの内部引張応力(CT)は110MPa以下であると、強化ガラスが破壊した際に破片が飛散しにくくなるので好ましい。CTは、より好ましくは100MPa以下、さらに好ましくは90MPa以下である。一方でCTを小さくするとCSが小さくなり、充分な強度が得られ難くなる傾向がある。そのため、CTは50MPa以上が好ましく、55MPa以上がより好ましく、60MPa以上がさらに好ましい。
【0042】
本強化ガラスの4点曲げ強度は、900MPa以上が好ましい。
ここで4点曲げ強度は、40mm×5mm×0.8mmの試験片を用いて、下スパン30mm、上スパン10mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分で測定する。10試験片の平均値を4点曲げ強度とする。
【0043】
本強化ガラスの光透過率およびヘーズ値は、化学強化前の3次元形状ガラスとほぼ同じであるから、説明を省略する。また、本強化ガラスは化学強化前の3次元形状ガラスと同様、β-スポジュメン結晶を含有することが好ましい。
本強化ガラスのビッカース硬度は、強化前の3次元形状ガラスより大きい傾向がある。
本強化ガラスのビッカース硬度は、720以上が好ましく、740以上がより好ましく、780以上がさらに好ましく、800以上がよりさらに好ましい。また、本強化ガラスのビッカース硬度は、通常は950以下である。
【0044】
<ガラス組成>
ここで、本結晶化ガラスのガラス組成について説明する。なお、本結晶化ガラスの組成は、全体としては結晶化処理前の非晶質ガラスの組成と同じである。
また、本強化ガラスは本結晶化ガラスからなる本3次元形状ガラスを化学強化したものであり、極端なイオン交換処理がされた場合を除いて、本強化ガラスの組成は全体として以下に説明する本結晶化ガラスの組成と同じである。
【0045】
本結晶化ガラスは、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を45~74%、Al2O3を1~30%、Li2Oを1~25%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0~15%、及びP2O5を0~12%含有する。
本結晶化ガラスがリチウムアルミノシリケート結晶を含有する場合は、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を58~74%、Al2O3を5~30%、Li2Oを1~14%、Na2Oを0~5%、K2Oを0~2%、SnO2およびZrO2のいずれか一種以上を合計で0.5~12%、及びP2O5を0~6%含有することが好ましく、上記組成の中でもLi2Oを2~14%含有することがより好ましく、また、Na2OとK2Oの含有量の合計(Na2O+K2O)が1~5%であることがより好ましい。
また、酸化物基準の質量%表示で、SiO2を58~70%、Al2O3を15~30%、Li2Oを2~10%、Na2Oを0~5%、K2Oを0~2%、SnO2を0.5~6%、ZrO2を0.5~6%、及びP2O5を0~6%含有し、Na2O+K2Oが1~5%であることがさらに好ましい。
本結晶化ガラスがリチウムシリケート結晶を含有する場合は、酸化物基準の質量%表示で、酸化物基準の質量%表示でSiO2を45~75%、Al2O3を1~20%、Li2Oを10~25%、P2O5を0~12%、ZrO2を0~15%、Na2Oを0~10%、K2Oを0~5%含有することが好ましい。
【0046】
以下、これらの好ましいガラス組成を説明する。
SiO2はガラスのネットワーク構造を形成する成分である。また、化学的耐久性を上げる成分であり、リチウムアルミノシリケート結晶の構成成分であり、リチウムシリケート結晶の構成成分でもある。SiO2の含有量は45%以上であり、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。特に強度を高くしたい場合は、SiO2の含有量は58%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは64%以上である。一方、SiO2の含有量が多すぎると溶融性が著しく低下するのでSiO2の含有量は74%以下であり、70%以下が好ましく、68%以下がより好ましく、66%以下がさらに好ましい。
【0047】
Al2O3は化学強化による表面圧縮応力を大きくするために有効な成分であり、必須である。また、リチウムアルミノシリケート結晶の構成成分である。Al2O3の含有量は1%以上であり、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましい。β-スポジュメン結晶を析出させたい場合は、Al2O3の含有量は15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、Al2O3の含有量が多すぎるとガラスの失透温度が高くなる。Al2O3の含有量は、30%以下であり、25%以下が好ましい。成形温度を低くするためには、Al2O3の含有量は20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
【0048】
Li2Oは、イオン交換により表面圧縮応力を形成させる成分であり、リチウムアルミノシリケート結晶およびリチウムシリケート結晶の構成成分であり、必須である。
Li2Oの含有量は、1%以上であり、好ましくは2%以上であり、より好ましくは4%以上である。メタケイ酸リチウム結晶の析出量を増やすためには、Li2Oの含有量は10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。メタケイ酸リチウムを場合のLi2Oの含有量は、好ましくは25%以下、より好ましくは22%以下、さらに好ましくは20%以下である。一方、リチウムアルミノシリケート結晶を析出させるためには、Li2Oの含有量は14%以下が好ましく、β-スポジュメン結晶を析出させたい場合は10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。
【0049】
本結晶化ガラスがβ-スポジュメン結晶を含有する場合、Li2OとAl2O3の含有量比Li2O/Al2O3は0.3以下であると透明性が高くなるために好ましい。
【0050】
Na2Oは、ガラスの溶融性を向上させる成分である。
Na2Oは必須ではないが、本結晶化ガラスのNa2Oの含有量は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。Na2Oは多すぎるとリチウムアルミノシリケート結晶またはリチウムシリケート結晶が析出しにくくなり、または化学強化特性が低下するため、本結晶化ガラスのNa2Oの含有量は、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。βスポジュメン結晶を析出させるためには、Na2Oの含有量は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0051】
K2Oは、Na2Oと同じくガラスの溶融温度を下げる成分であり、含有してもよい。本結晶化ガラスがK2Oを含有する場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。成形温度を低くするためには、K2Oの含有量は1.5%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましい。
またNa2OとK2Oとの合計の含有量Na2O+K2Oは1%以上が好ましく、2%以上がより好ましい。
K2Oは多すぎると化学強化特性が低下するので、本結晶化ガラスがK2Oを含有する場合の含有量は好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは5%以下である。またリチウムアルミノシリケート結晶を析出しやすくするためには、K2Oの含有量は2%以下が好ましい。この場合に、Na2OとK2Oとの合計の含有量Na2O+K2Oが過剰であると熱処理時に透明性が低下するおそれがある。透明性を高くするためには、当該合計の含有量は5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
メタケイ酸リチウムを含有する結晶化ガラスにおいては、化学強化特性とメタケイ酸リチウム結晶の析出を両立させるためにK2Oの含有量は4%以下が好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。
【0052】
ZrO2およびSnO2は、いずれも必須ではないが結晶化処理に際して、結晶核を構成する成分であり、いずれか一種以上を含有することが好ましい。SnO2とZrO2との含有量の合計SnO2+ZrO2は、結晶核を生成するために0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。結晶核を多数形成して透明性を高めるためには3%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましく、7%以上が最も好ましい。メタケイ酸リチウムを析出させるためにはZrO2を含有することが好ましい。その場合のZrO2含有量は1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましく、7%以上がもっとも好ましい。また、ガラス溶融時の失透を抑制するために、SnO2+ZrO2は15%以下が好ましく、14%以下がより好ましい。ガラス中に未融物による欠点を生じにくくするためには、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、9%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。
【0053】
β-スポジュメン結晶を析出させたい場合は、SnO2の含有量は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましい。SnO2の含有量は6%以下であると、ガラス中に未融物による欠点が生じにくいので好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下である。
SnO2は、ソラリゼーション耐性を高める成分でもある。SnO2の含有量は、ソラリゼーションを抑制するために1%以上が好ましく、1.5%以上がより好ましい。
【0054】
β-スポジュメン結晶を析出させたい場合におけるZrO2の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。この場合に、ZrO2の含有量が6%超であると溶融時に失透しやすくなり、化学強化ガラスの品質が低下する恐れがある。ZrO2の含有量は6%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、さらに好ましくは4%以下である。
メタケイ酸リチウムを含有する結晶化ガラスにおいては、メタケイ酸リチウム結晶析出のためにZrO2含有量は1%以上が好ましく、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上、特に好ましくは6%以上、もっとも好ましくは7%以上である。ただし、溶融時の失透を抑制するためにZrO2の含有量は15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、12%以下がさらに好ましく、11%以下が特に好ましい。
【0055】
β-スポジュメン結晶を析出させたい場合においてSnO2とZrO2とをともに含有する場合、その合計量に対するSnO2量の比SnO2/(SnO2+ZrO2)は透明性を高くするために0.3以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。
またSnO2/(SnO2+ZrO2)は、強度を高くするために0.7以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましい。
【0056】
TiO2は、結晶化ガラスの結晶核形成成分となるので、含有してもよい。β-スポジュメン結晶を析出させたい場合においてTiO2を含有する場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.2%以上である。一方、TiO2の含有量が5%超であると溶融時に失透しやすくなり、化学強化ガラスの品質が低下する恐れがあるため5%以下が好ましい。より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
メタケイ酸リチウム結晶を析出させたい場合においてTiO2を含有する場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは2%以上、特に好ましくは3%以上、もっとも好ましくは4%以上である。一方、TiO2の含有量が10%超であると溶融時に失透しやすくなり、化学強化ガラスの品質が低下する恐れがあるため10%以下が好ましい。より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。
また、ガラス中にFe2O3が含まれる場合に、ガラスがTiO2を含有するとイルメナイト複合体とよばれる複合体が形成され、黄色または褐色の着色を生じやすい。Fe2O3はガラス中に不純物として普通に含まれるので、着色を防止するためにはTiO2の含有量は1%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.25%以下であり、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0057】
P2O5は、必須ではないが、ガラスの分相を促して結晶化を促進する効果があり、含有してもよい。P2O5を含有する場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上、特に好ましくは2%以上である。メタケイ酸リチウム結晶を析出させたい場合にはP2O5の含有量は4%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましい。一方、P2O5の含有量が多すぎると、耐酸性が低下する。そのためP2O5の含有量は15%以下であり、14%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、11%以下がさらに好ましく、10%以下が一段と好ましく、8%以下が特に好ましく、7%以下がもっとも好ましい。特にβ-スポジュメン結晶を含有する化学強化ガラスの場合、破壊した際に破片が飛散しにくくなるためには、P2O5の含有量は、好ましくは6%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下、極めて好ましくは2%以下である。耐酸性を重視する場合にはP2O5を実質的に含有しないことが好ましい。
【0058】
B2O3は、化学強化用ガラスまたは化学強化ガラスのチッピング耐性を向上させ、また溶融性を向上させる成分であり、含有してもよい。B2O3は必須ではないが、B2O3を含有する場合の含有量は、溶融性を向上するために好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。一方、B2O3の含有量が5%を超えると溶融時に脈理が発生し化学強化用ガラスの品質が低下しやすいため、B2O3の含有量5%以下が好ましく、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。耐酸性を高くするためにはB2O3を実質的に含有しないことが好ましい。
【0059】
MgOは、化学強化ガラスの表面圧縮応力を増大させる成分であり、強化ガラスが破壊した際に破片の飛散を抑制する成分であり、含有してもよい。MgOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。一方、溶融時の失透を抑制するためにはMgOの含有量は5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0060】
CaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、溶融時の失透を防止し、かつ熱膨張係数の上昇を抑制しながら溶解性を向上させるため含有してもよい。CaOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。一方、イオン交換特性を高くするために、CaOの含有量は4%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0061】
SrOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、またガラスの屈折率を向上させて、結晶化後の残留ガラス相の屈折率と析出結晶の屈折率を近づけることにより結晶化ガラスの光透過率を向上させる成分でもあるため含有してもよい。SrOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは1%以上である。一方、SrO含有量が多すぎるとイオン交換速度が低下するためSrOの含有量は3%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0062】
BaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、またガラスの屈折率を向上させて、結晶化後の残留ガラス相の屈折率とリチウムアルミノシリケート結晶相の屈折率を近づけることにより結晶化ガラスの光透過率を向上させる成分でもあるため含有してもよい。BaOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは1%以上である。一方、BaO含有量が多すぎるとイオン交換速度が低下するためBaOの含有量は3%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0063】
ZnOは、ガラスの熱膨張係数を低下させ、化学的耐久性を増大させる成分であり、またガラスの屈折率を向上させて、結晶化後の残留ガラス相の屈折率とリチウムアルミノシリケート結晶相の屈折率を近づけることによって結晶化ガラスの光透過率を向上させる成分でもあるため含有させてもよい。ZnOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、特に好ましくは2%以上である。一方、溶融時の失透を抑制するためにはZnOの含有量は4%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
【0064】
Y2O3、La2O3、Nb2O5およびTa2O5は、いずれもガラスが破壊した際に破片が飛散することを抑制する効果があり、屈折率を高くするために、含有させてもよい。これらの成分を含有させる場合、Y2O3、La2O3、Nb2O5の含有量の合計Y2O3+La2O3+Nb2O5は好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、特に好ましくは2%以上である。また、溶融時にガラスが失透しにくくなるために、Y2O3+La2O3+Nb2O5は4%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
Y2O3、La2O3、Nb2O5およびTa2O5の合計の含有量Y2O3+La2O3+Nb2O5+Ta2O5は好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。また、溶融時にガラスが失透しにくくなるために、Y2O3+La2O3+Nb2O5+Ta2O5は4%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
【0065】
また、CeO2を含有してもよい。CeO2はガラスを酸化する効果があり、SnO2を多く含有する場合に、SnO2が還元されて着色成分のSnOになることを抑制して着色を抑える場合がある。CeO2を含有する場合の含有量は0.03%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.07%以上がさらに好ましい。CeO2を酸化剤として用いる場合には、CeO2の含有量は、多すぎるとガラスが着色しやすくなるため、透明性を高くするためには1.5%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。
【0066】
さらに、所望の化学強化特性の達成を阻害しない範囲において着色成分を添加してもよい。着色成分としては、例えば、Co3O4、MnO2、Fe2O3、NiO、CuO、Cr2O3、V2O5、Bi2O3、SeO2、Er2O3、Nd2O3が好適なものとして挙げられる。
着色成分の含有量は、合計で1%以下の範囲が好ましい。ガラスの光透過率をより高くしたい場合は、これらの成分は実質的に含有しないことが好ましい。
また、ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO3、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。As2O3は含有しないことが好ましい。Sb2O3を含有する場合は、0.3%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0067】
<化学強化用ガラスの製造方法>
本実施形態の化学強化用ガラスの製造方法は、非晶質ガラスを加熱して結晶化し、得られた本結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形する化学強化用ガラスの製造方法である。本3次元形状ガラスは、本発明の化学強化用ガラスの製造方法で製造できる。
また、本実施形態の化学強化ガラスの製造方法は、非晶質ガラスを加熱して結晶化し、得られた本結晶化ガラスを加熱しながら曲げ成形し、その後に化学強化する、化学強化ガラスの製造方法である。本実施形態の3次元形状化学強化ガラスは、本実施形態の化学強化ガラスの製造方法で得られる。
【0068】
(非晶質ガラスの製造)
非晶質ガラスは、例えば、以下の方法で製造できる。なお、以下に記す製造方法は、板状の化学強化ガラスを製造する場合の例である。
所望の組成のガラスが得られるようにガラス原料を調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。その後、バブリング、撹拌、清澄剤の添加等により溶融ガラスを均質化し、公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。または、溶融ガラスをブロック状に成形して、徐冷した後に切断する方法で板状に成形してもよい。
【0069】
板状ガラスの成形法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法及びダウンドロー法が挙げられる。特に、大型のガラス板を製造する場合は、フロート法が好ましい。また、フロート法以外の連続成形法、たとえば、フュージョン法及びダウンドロー法も好ましい。
【0070】
(結晶化処理)
上記の手順で得られた非晶質ガラスを加熱処理することで結晶化ガラスが得られる。
加熱処理は、室温から第一の処理温度まで昇温して一定時間保持した後、第一の処理温度より高温である第二の処理温度にて一定時間保持する2段階の加熱処理によることが好ましい。また、加熱処理は、室温から第一の処理温度まで昇温して一定時間保持した後、第一の処理温度より高温である第二の処理温度にて一定時間保持し、さらに第二の処理温度より高温である第三の処理温度にて一定時間保持する3段階の加熱処理によることも好ましい。
【0071】
二段階の加熱処理による場合、第一の処理温度は、そのガラス組成において結晶核生成速度が大きくなる温度域が好ましく、第二の処理温度は、そのガラス組成において結晶成長速度が大きくなる温度域が好ましい。また、第一の処理温度での保持時間は、充分な数の結晶核が生成するように長く保持することが好ましい。多数の結晶核が生成することで、各結晶の大きさが小さくなり、透明性の高い結晶化ガラスが得られる。
第一の処理温度は、たとえば550℃~800℃であり、第二の処理温度は、たとえば850℃~1000℃であり、第一処理温度で2時間~10時間保持した後、第二処理温度で2時間~10時間保持する。
【0072】
上記手順で得られた結晶化ガラスを必要に応じて研削及び研磨処理して、結晶化ガラス板を形成する。結晶化ガラス板を所定の形状及びサイズに切断したり、面取り加工を行ったりする場合、化学強化処理を施す前に、切断や面取り加工を行えば、その後の化学強化処理によって端面にも圧縮応力層が形成されるため、好ましい。
【0073】
(曲げ成形)
曲げ成形法としては、自重成形法、真空成形法、プレス成形法等の既存の曲げ成形法から、任意の方法を選択できる。また、2種以上の曲げ成形法を併用してもよい。
自重成形法は、成形型上にガラス板を設置した後、該ガラス板を加熱し、重力により成形型になじませて、所定の形状に曲げ成形する方法である。
真空成形法は、成形型上にガラス板を設置し、該ガラス板の周辺をシールした後、成形型とガラス板との空間を減圧して、ガラス板の表裏面に差圧を与えて曲げ成形する方法である。この際に、補助的に、ガラス板の上面側を加圧してもよい。
プレス成形は、成形型(下型と上型)間にガラス板を設置し、ガラス板を加熱して、上下の成形型間にプレス荷重を加えて、所定の形状に曲げ成形する方法である。
いずれにしても、ガラスを加熱した状態で力を加えて変形させる。
【0074】
曲げ成形(熱曲げ)温度は、たとえば700℃~1100℃であり、好ましくは750℃~1050℃である。また、結晶化処理の最高温度に対して熱曲げ温度が高いと、熱変形が容易に生じるので寸法精度の観点で好ましい。結晶化処理の最高温度と熱曲げ温度の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは30℃以上である。一方、結晶化処理温度に対して、熱曲げ温度が高すぎる場合には、曲げ成形によって光透過率が低下する場合がある。したがって、結晶化処理の最高温度と熱曲げ温度の差は、120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは60℃以下である。
曲げ成形による光透過率低下は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
また、最終的なガラスの透明性を高く維持するためには、熱曲げ前の光透過率が高い方が有利であり、厚さ0.8mm換算の光透過率は85%以上であることが好ましい。より好ましくは87%以上、特に好ましくは89%以上である。
【0075】
(化学強化処理)
化学強化処理は、大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、NaイオンまたはKイオン)を含む金属塩(例えば、硝酸カリウム)の融液に浸漬する等の方法で、ガラスを金属塩に接触させることにより、ガラス中の小さなイオン半径の金属イオン(典型的には、NaイオンまたはLiイオン)を大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)で置換する処理である。
化学強化処理の速度を速くするためには、ガラス中のLiイオンをNaイオンと交換する「Li-Na交換」を利用することが好ましい。またイオン交換により大きな圧縮応力を形成するためには、ガラス中のNaイオンをKイオンと交換する「Na-K交換」を利用することが好ましい。
【0076】
化学強化処理を行うための溶融塩としては、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物などが挙げられる。このうち硝酸塩としては、例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸銀などが挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硫酸銀などが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、などが挙げられる。塩化物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化銀などが挙げられる。これらの溶融塩は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
化学強化処理の時間や温度等の処理条件は、ガラス組成や溶融塩の種類などを考慮して適切に選択すればよい。
【0078】
本強化ガラスは、たとえば以下の2段階の化学強化処理によって得ることが好ましい。
まず、本3次元形状ガラスを350~500℃程度のNaイオンを含む金属塩(たとえば硝酸ナトリウム)に0.1~10時間程度浸漬する。これによって本3次元形状ガラス中のLiイオンと金属塩中のNaイオンとのイオン交換が生じ、たとえば表面圧縮応力が200MPa以上で圧縮応力深さが80μm以上の圧縮応力層が形成できる。当該処理で導入される表面圧縮応力が1000MPaを超えると、最終的に得られる本強化ガラスにおいてCTを低く保ちつつ、DOLを大きくすることが困難になる。したがって、当該処理で導入される表面圧縮応力は好ましくは900MPa以下であり、より好ましくは700MPa以下、さらに好ましくは600MPa以下である。
次に、上記処理後のガラスを350~500℃程度のKイオンを含む金属塩(たとえば硝酸カリウム)に0.1~10時間程度浸漬する。これによって、前の処理で形成された圧縮応力層の、たとえば深さ10μm程度以下の部分に、大きな圧縮応力が生じる。
このような2段階の処理によれば、表面圧縮応力が600MPa以上の、好ましい応力プロファイルが得られやすい。
【0079】
はじめにNaイオンを含む金属塩に浸漬した後、大気中で350~500℃に1~5時間保持してから、Kイオンを含む金属塩に浸漬してもよい。保持温度は好ましくは425℃~475℃、さらに好ましくは440℃~460℃である。
大気中で高温に保持することで、はじめの処理によって金属塩からガラス内部に導入されたNaイオンがガラス中で熱拡散し、より好ましい応力プロファイルが形成される。
【0080】
または、Naイオンを含む金属塩に浸漬した後、大気中で保持するかわりに、350~500℃の、NaイオンとLiイオンとを含む金属塩(たとえば硝酸ナトリウムと硝酸リチウムとの混合塩)に0.1~20時間浸漬してもよい。
NaイオンとLiイオンとを含む金属塩に浸漬することで、ガラス中のNaイオンと金属塩中のLiイオンとのイオン交換が生じ、より好ましい応力プロファイルが形成され、それによってアスファルト落下強度が高められる。
【0081】
このような2段階または3段階の強化処理を行う場合には、生産効率の点から、処理時間は合計で10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。一方、所望の応力プロファイルを得るためには、処理時間は合計で0.5時間以上必要であり、より好ましくは1時間以上である。
【0082】
以上のようにして得られる本実施形態の3次元形状化学強化ガラスは、携帯電話、スマートフォン等のモバイル機器等に用いられるカバーガラスとして、特に有用である。さらに、携帯を目的としない、テレビ、パーソナルコンピュータ、タッチパネル等のディスプレイ装置のカバーガラスにも有用である。自動車や飛行機等の内装等のカバーガラスとしても有用である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれによって限定されない。
【0084】
表1に酸化物基準の質量%表示で示したガラス組成となるようにガラス1~8のガラス原料を調合し、800gのガラスが得られるように秤量した。ついで、混合したガラス原料を白金るつぼに入れ、1500~1700℃の電気炉に投入して5時間程度溶融し、脱泡し、均質化した。
得られた溶融ガラスを型に流し込み、ガラス転移点より30℃高い温度において1時間保持した後、0.5℃/分の速度で室温まで冷却してガラスブロックを得た。
【0085】
(ガラス転移点)
JIS R1618:2002に基づき、熱膨張計(ブルカー・エイエックスエス社製;TD5000SA)を用いて、昇温速度を10℃/分として熱膨張曲線を得た。また、得られた熱膨張曲線からガラス転移点Tg[単位:℃]を求めた。結果を表1に示す。なお、表の空欄は未評価を示す。
【0086】
【0087】
<例1~14、例16~19>
得られたガラスブロックを約60mm×60mm×1.5mmの板状に加工した後、表2または3に記載した条件で熱処理して結晶化ガラス(例1~例14、例16~例19)を得た。表の結晶化処理欄は、2段の処理条件が記載されている場合は、上段に記載の温度及び時間で保持した後、下段に記載の温度及び時間で保持したことを意味する。たとえば上段に750℃4h、下段に920℃4hと記載した場合は、750℃で4時間保持した後、920℃に4時間保持したことを意味する。また、3段の処理条件が記載されている場合は、上段に記載の温度及び時間で保持した後、中段に記載の温度及び時間で保持し、更に下段に記載の温度及び時間で保持したことを意味する。
【0088】
得られた結晶化ガラスについて、密度、ヤング率、熱膨張係数、析出結晶、ビッカース硬度、破壊靱性値、光透過率、曲げ成形性を以下のように評価した。また化学強化処理して、強化特性を評価した。結果を表2または3に示すが、表中の空欄は未測定であることを示す。(密度)
厚さ0.8mmに鏡面研磨加工後、アルキメデス法にて、密度[単位:g/cm3]を測定した。
【0089】
(ヤング率)
厚さ0.8mmに鏡面研磨加工後、超音波法にて、ヤング率[単位:GPa]を測定した。
【0090】
(熱膨張係数)
熱膨張計(ブルカー・エイエックスエス社製;TD5000SA)を用いて、昇温速度を10℃/分として熱膨張曲線を得た。また、得られた熱膨張曲線から、50℃~350℃の平均線熱膨張係数[単位:×10-7/℃]を測定した。
【0091】
(析出結晶)
以下の条件で粉末X線回折を測定し、析出結晶(主結晶)を同定した。また、リートベルト法を用いて、結晶化率(結晶化度)[単位:%]と結晶粒径(結晶サイズ)[単位:nm]を計算した。表中βSPはβ-スポジュメン結晶、Pはペタライト結晶、LDは二ケイ酸リチウム、LSはメタケイ酸リチウム、βQはβ-石英を意味する。
測定装置:リガク社製 SmartLab
使用X線:CuKα線
測定範囲:2θ=10°~80°
スピード:10°/分
ステップ:0.02°
【0092】
(光透過率)
厚さ0.8mmに鏡面研磨加工後、分光光度計(PerkinElmer社製;LAMBDA950)に検出器として積分球ユニットを用いた構成で、後述の曲げ成型性試験前及び試験後の波長380~780nmにおける光の平均透過率(成形前透過率、成形後透過率)[単位:%]を各々測定し、それらの差も算出した。
【0093】
(ビッカース硬度)
島津マイクロビッカース硬度計(島津製作所製;HMV-2)を用い、荷重100gfで15秒間圧子を圧入してビッカース硬度を測定した。なお、ビッカース硬度は、後述の化学強化処理後にも、同様にして測定した(強化前ビッカース硬度、強化後ビッカース硬度)。
【0094】
(破壊靭性値)
JIS R1607:2010に基づき、ビッカース硬度計(フューチュアテック社製;FLC-50V)を用いて、圧子圧入法(IF法)により化学強化処理後の破壊靭性値(強化後破壊靱性値)を求めた。温度22℃、相対湿度40%の雰囲気において、荷重3kgfにてインデンテーションを行った。圧痕長さの測定は、同一雰囲気にてインデンテーションから20分後に測定した。各試料につき、10点の測定を行い、平均値を算出して、破壊靭性値[単位:MPa・m1/2]とした。
【0095】
(曲げ成形性)
超高アルミナ質耐火断熱レンガ(イソライト工業(株)社製BAL-99)を加工して、いずれも20mm×20mm×120mmの棒状の支持用煉瓦1を2個および荷重用煉瓦3を1個作製した。電気炉内に、支持用煉瓦1を40mmの間隔で平行に設置し、荷重用煉瓦3も同じ電気炉内に置いて予備加熱した。
得られた結晶化ガラスを60mm×10mm×0.8mmに加工し、60mm×10mmの両面を鏡面研磨した。表2または3に記載の曲げ温度に保たれた電気炉内にて、2本の支持用煉瓦1上に、
図4(a)に示すように、結晶化ガラス板2を載せ、結晶化ガラス板2の上に、荷重用煉瓦3(重量85g)を載せて、10分間保持した。10分経過後、荷重用煉瓦3を結晶化ガラス板2の上から取り除き、結晶化ガラス板2を電気炉から取り出して、冷却した。その後、
図4(b)に示したような、結晶化ガラスの変形量h(曲げ変形量)を測定した。表中の「-」は、ほとんど変形しなかったために変形量を測定できなかったことを意味する。
【0096】
(曲げ成型性2)
また、例16~19については、別途以下に示すような曲げ成型試験も行った。
まず、曲率半径6.0mm、曲げ角度70.5°、曲げ深さ4.0mmの屈曲面を成形できるように設計されたカーボン製の凹型及び凸型を準備し、凹型のガラス接触面中央付近に、結晶化ガラス板を載置した。
次いで、成形装置を用いてで予熱、変形および冷却した。なお、余熱は、結晶化ガラスの平衡粘性が1018Pa・s程度となる温度で行った。変形は、結晶化ガラスの平衡粘性が1011.5Pa・s程度となる温度にて凸型を下方に移動して最大2000Nで押圧することにより行った。
上記処理により、例16~19のいずれの結晶化ガラスも、曲率半径2000mmの3次元形状に成形された。
上記試験により、例16~19の結晶化ガラスは、所望の形状に成形できることが確認された。
【0097】
<化学強化処理>
得られた結晶化ガラスに対して、以下に示す条件で化学強化処理を施した。
例1~8は、450℃の硝酸ナトリウム溶融塩に30分浸漬した後、450℃の硝酸カリウム溶融塩に30分浸漬して化学強化した。
例9~11は、740℃の硫酸リチウム-硫酸カリウム混合塩(硫酸リチウムと硫酸カリウムの質量比が90:10のもの)に240分浸漬して化学強化した。
例12~14は、430℃の硝酸ナトリウムに2時間浸漬した後、430℃の硝酸カリウムに2時間浸漬して化学強化した。
例16~19は、450℃の硝酸ナトリウムに3時間浸漬した後、450℃の硝酸カリウムに1時間浸漬して化学強化した。
【0098】
(化学強化特性)
折原製作所社製の表面応力計FSM-6000及び散乱光光弾性を応用した折原製作所社製の測定機SLP1000を用いて応力値を測定し、ガラス表面の圧縮応力値(CS)[単位:MPa]と、圧縮応力値がゼロになる深さ(DOL)[単位:μm]、内部引張応力(CT)[単位:MPa]および圧縮応力値が50MPa以上となる最大の深さ(50MPa深さ)[単位:μm]を読み取った。また、圧縮応力値がCS/2となる深さDOL1から、次の式で表されるm1を求めた。
m1=(CS-CS/2)/(0-DOL1)
深さがDOL/4における圧縮応力CS1、及び深さがDOL/2における圧縮応力CS2から、次の式で表されるm2を求めた。
m2=(CS1-CS2)/(DOL/4-DOL/2)
深さがDOL/2における圧縮応力CS2から、次の式で表されるm3を求めた。
m3=(CS2-0)/(DOL/2-DOL)
これらの結果を表2または3に示す。なお、表中の空欄は未測定を意味する。
【0099】
【0100】
<例15>
ガラス1からなるガラス板について、例1と同様に1000℃で曲げた後、例1と同様の結晶化条件で結晶化したところ、再度変形が生じ、結晶化処理に用いた棚板と同一の平らな板形状に戻ってしまった。この結果から、結晶化後に曲げ成形する方法は、所望の形状を保持しやすいことがわかった。
【0101】
例1~3はガラス1からなるガラス板を同じ結晶化条件で結晶化した結晶化ガラスであり、β-スポジュメン結晶が主結晶である。
例1は、化学強化後に十分高いCSとDOLが得られた。
例2は曲げ温度が十分高くないため、曲げ変形量が小さくなった。
例3は曲げ温度が高すぎたため、透過率が低下してしまった。
そこで、本発明に係る結晶化ガラスを製造する場合には、曲げ成形温度を適宜調整すべきであることがわかった。
例4、5は、二段階の加熱処理(結晶化処理)のうち第二の処理温度が低いこと以外は例1と同様であり、例1と比べると曲げ処理による、透明性の変化が大きくなった。曲げ処理前の結晶化が不十分だったために、曲げ処理時の透過率変化が大きくなったと考えられる。
例6~8はガラス2からなるガラス板を同じ結晶化条件で結晶化した結晶化ガラスであり、β-スポジュメン結晶が主結晶である。
例6は、化学強化後に十分高いCSとDOLが得られただけでなく、熱曲げ前の透過率が89%以上と高かった。そのため、結晶化処理の最高温度と熱曲げ温度の差を小さくして、熱曲げすることにより、最終的に88%以上の高い透過率が達成された。また、十分な曲げ変形量が得られた。
例7も同様に熱曲げ前の透過率が89%以上と高いため、結晶化処理の最高温度と熱曲げ温度の差を大きくしてより大きな曲げ変形量を得ても、最終的に86%以上の高い透過率が達成された。
例8は曲げ温度が高すぎたため、透過率が低下した。
【0102】
例9~11はガラス3からなるガラス板を同じ結晶化条件で結晶化した結晶化ガラスであり、β-石英が主結晶である。
例9と例1及び例6を比較すると、例9は曲げ成形処理による透過率変化がやや大きかった。
【0103】
例12~14はガラス4からなるガラス板を同じ結晶化条件で結晶化した結晶化ガラスであり、ペタライト結晶を含む結晶化ガラスである。
例12と例13、14とを比較すると、例13は曲げ温度が十分高くないため、曲げ変形量が小さくなった。
例14は曲げ温度が高すぎたため、透過率が低下した。
そこで、この結晶化ガラスを加工する場合には、曲げ成形温度を適宜調整すべきことがわかる。
例12は曲げ温度が適切であったため、結晶化後の曲げ成形によって、充分な変形量が得られ、しかも透明性の変化が小さかった。
例12と例1及び例6とを比較すると、ペタライト結晶を含有する結晶化ガラスである例12は曲げ成形による変化量が大きく、曲げやすいことがわかった。
しかし、例12は圧縮応力値(CS)が低く、また強化後のKcが小さいので、強度の点ではβ-スポジュメン結晶を含有する結晶化ガラスである例1及び例6が優れている。
【0104】
例16~例19はそれぞれガラス5~8からなるガラス板を結晶化した結晶化ガラスであり、いずれもメタケイ酸リチウム結晶を含む結晶化ガラスである。
メタケイ酸リチウム結晶を含む結晶化ガラスは、化学強化後に十分高いCSとDOLが得られるだけでなく、熱曲げ前の透過率が高いことが特徴であり、例16に示すように適切な曲げ温度で成形することで、十分な変形量を得られると同時に透明性の変化を抑制できることがわかる。
【0105】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2018年2月27付けで出願された日本特許出願(特願2018-33693)及び2019年2月8付けで出願された日本特許出願(特願2019-21896)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 支持用煉瓦
2 結晶化ガラス板
3 荷重用煉瓦