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特許7268675非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230426BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230426BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230426BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20230426BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230426BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/0566
H01M10/058
H01M50/449
H01M50/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020509919
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011885
(87)【国際公開番号】W WO2019188719
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018058887
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田中 慶一朗
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 康尋
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073022(WO,A1)
【文献】特開2017-50215(JP,A)
【文献】特開2015-162337(JP,A)
【文献】国際公開第2014/081035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 10/0566
H01M 10/058
H01M 50/449
H01M 50/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、セパレータとを貼り合わせてなる非水系二次電池用積層体の製造方法であって、
前記電極および前記セパレータの少なくとも一方は、貼り合わせ面側の表層部に重合体を有し、
前記電極の貼り合わせ面および前記セパレータの貼り合わせ面の少なくとも一方に前記重合体を可塑化可能な物質を供給する工程(A)と、
前記工程(A)の後、前記電極と前記セパレータとを貼り合わせる工程(B)と、
を含む、非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項2】
前記重合体の前記物質に対する膨潤度が、110%以上2000%以下である、請求項1に記載の非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)において、前記物質を0.005g/m以上5g/m以下の供給量で供給する、請求項1または2に記載の非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項4】
前記セパレータは、貼り合わせ面側の表層部に重合体を有し、前記工程(A)で前記物質を供給する前の前記貼り合わせ面同士の接着力が8N/m以下である、請求項1~3の何れかに記載の非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)で前記物質を供給した後の前記電極と前記セパレータとの接着力が、前記工程(A)で前記物質を供給する前の前記電極と前記セパレータとの接着力の1.2倍以上である、請求項1~4の何れかに記載の非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の非水系二次電池用積層体の製造方法を用いて非水系二次電池用積層体を製造する工程と、
前記非水系二次電池用積層体と、電解液とを用いて非水系二次電池を組み立てる工程と、
を含む、非水系二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そして、非水系二次電池は、一般に、正極、負極、および、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータなどの電池部材を備えている。
【0003】
ここで、近年では、非水系二次電池の更なる高性能化を目的として、電極とセパレータとを接着層により接着して一体化し、充放電の繰り返しに伴うセルの膨らみ及び極板間距離の拡大を抑制することにより、非水系二次電池の電気的特性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、例えば特許文献3では、電極とセパレータとを良好に密着させた二次電池用積層体を電極間の抵抗を増大させずに製造する方法として、接着性樹脂をN-メチルピロリドンなどの第1の溶剤に溶解させてなる接着性樹脂溶液をセパレータに塗着した後、接着性樹脂の溶解性が第1の溶剤よりも低い第2の溶剤(例えば、水など)をセパレータ上の接着性樹脂溶液に供給し、その後、正極および負極をセパレータに貼り合わせて乾燥させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-84985号公報
【文献】国際公開第2015/198530号
【文献】国際公開第99/31749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、二次電池の製造プロセスにおいては、電極とセパレータとを積層・一体化して二次電池用積層体を得る際、並びに、得られた二次電池用積層体を切断または運搬する際に、電極とセパレータとが位置ズレなどを起こし、不良の発生、生産性の低下といった問題を生じることがある。従って、非水系二次電池用積層体には、電解液に浸漬する前の状態においても、電極とセパレータとが良好に接着している(即ち、プロセス接着性に優れている)ことが求められている。
【0007】
しかし、上記従来の非水系二次電池用積層体には、プロセス接着性を更に向上させるという点において改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を用いた非水系二次電池の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、電極とセパレータとを貼り合わせる際に電極とセパレータとの接着に用いられる重合体を可塑化させることでプロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体が効率的に得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、電極と、セパレータとを貼り合わせてなる非水系二次電池用積層体の製造方法であって、前記電極および前記セパレータの少なくとも一方は、貼り合わせ面側の表層部に重合体を有し、前記電極の貼り合わせ面および前記セパレータの貼り合わせ面の少なくとも一方に前記重合体を可塑化可能な物質を供給する工程(A)と、前記工程(A)の後、前記電極と前記セパレータとを貼り合わせる工程(B)とを含むことを特徴とする。このように、重合体を可塑化可能な物質(以下、単に「物質」と称することがある。)を貼り合わせ面の少なくとも一方に供給した後に貼り合わせを行えば、可塑化させた重合体を利用して電極とセパレータとを接着させることができるので、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体が効率的に得られる。
【0011】
ここで、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、前記重合体の前記物質に対する膨潤度が、110%以上2000%以下であることが好ましい。重合体を可塑化可能な物質に対する重合体の膨潤度が上記範囲内であれば、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を十分に高めることができる。
なお、本発明において、「重合体の膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0012】
また、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、前記工程(A)において、前記物質を0.005g/m以上5g/m以下の供給量で供給することが好ましい。物質の供給量が上記範囲内であれば、非水系二次電池用積層体を用いた非水系二次電池の電池特性が低下するのを抑制しつつ、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を十分に高めることができる。
【0013】
更に、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、前記セパレータは、貼り合わせ面側の表層部に重合体を有し、前記工程(A)で前記物質を供給する前の前記貼り合わせ面同士の接着力が8N/m以下であることが好ましい。貼り合わせ面側の表層部に重合体を有するセパレータを使用するに当たり、重合体を可塑化可能な物質を供給する前の貼り合わせ面同士の接着力が8N/m以下であれば、セパレータが保存中や運搬中に貼り合わせ面を介して膠着(ブロッキング)するのを抑制することができる。
なお、本発明において、「物質を供給する前の貼り合わせ面同士の接着力」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0014】
また、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、前記工程(A)で前記物質を供給した後の前記電極と前記セパレータとの接着力が、前記工程(A)で前記物質を供給する前の前記電極と前記セパレータとの接着力の1.2倍以上であることが好ましい。重合体を可塑化可能な物質を供給する前後の接着力の比(供給後の接着力/供給前の接着力)が上記下限値以上であれば、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を十分に高めることができる。
なお、本発明において、「物質を供給する前の電極とセパレータとの接着力」および「物質を供給した後の電極とセパレータとの接着力」は、それぞれ、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池の製造方法は、上述した非水系二次電池用積層体の製造方法の何れかを用いて非水系二次電池用積層体を製造する工程と、前記非水系二次電池用積層体と、電解液とを用いて非水系二次電池を組み立てる工程とを含むことを特徴とする。このように、上述した非水系二次電池用積層体の製造方法の何れかを用いて製造した、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を使用すれば、優れた性能を発揮し得る非水系二次電池が効率的に得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法によれば、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を効率的に得ることができる。
また、本発明の非水系二次電池の製造方法によれば、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を使用し、優れた性能を発揮し得る非水系二次電池が効率的に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、電極(正極および/または負極)と、セパレータとを貼り合わせてなる非水系二次電池用積層体を製造する際に用いられる。そして、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法を用いて製造した非水系二次電池用積層体は、例えば、本発明の非水系二次電池の製造方法を用いて非水系二次電池を製造する際に用いることができる。
【0018】
(非水系二次電池用積層体の製造方法)
本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、少なくとも一方が貼り合わせ面側の表層部に重合体を有する電極およびセパレータを貼り合わせて非水系二次電池用積層体を製造する方法である。そして、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法では、電極の貼り合わせ面およびセパレータの貼り合わせ面の少なくとも一方に重合体を可塑化可能な物質を供給した後(工程(A))、電極とセパレータとを貼り合わせて(工程(B))、非水系二次電池用積層体を得る。このように、物質を供給した後で電極とセパレータとを貼り合わせることにより、例えば貼り合わせの際のプレス時間を長くする等の操作なしに、可塑化させた重合体に十分な接着力を発揮させ、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を効率的に得ることができる。
【0019】
<非水系二次電池用積層体>
非水系二次電池用積層体は、電極とセパレータとが貼り合わせ面を介して貼り合わされたものである。ここで、セパレータと貼り合わされて非水系二次電池用積層体を構成する電極は、正極のみであってもよいし、負極のみであってもよいし、正極および負極の双方であってもよい。また、正極および負極の双方をセパレータと貼り合わせて非水系二次電池用積層体とする場合、非水系二次電池用積層体が有する正極、負極およびセパレータの数は、それぞれ、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
即ち、本発明の製造方法を用いて製造する非水系二次電池用積層体の構造は、下記(1)~(4)の何れであってもよい。
(1)正極/セパレータ
(2)負極/セパレータ
(3)正極/セパレータ/負極
(4)複数の正極および負極がセパレータを介して交互に積層された構造(例えば、正極/セパレータ/負極/セパレータ/正極・・・・・/セパレータ/負極など)
【0020】
<電極>
ここで、電極としては、特に限定されることなく、例えば、集電体の片面または両面に電極合材層を形成してなる電極基材からなる電極、或いは、電極基材の電極合材層上に多孔膜層および/または接着層を更に形成してなる電極を用いることができる。因みに、上記(4)の構造の積層体を製造する場合、積層方向両端に位置する正極および負極以外の電極としては、通常、集電体の両面に電極合材層が形成されているものを用いる。
なお、集電体、電極合材層、多孔膜層および接着層としては、特に限定されることなく、例えば特開2013-145763号公報に記載のもの等、非水系二次電池の分野において使用され得る任意の集電体、電極合材層、多孔膜層および接着層を使用し得る。
【0021】
<セパレータ>
また、セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、セパレータ基材からなるセパレータ、或いは、セパレータ基材の片面または両面に多孔膜層および/または接着層を形成してなるセパレータを用いることができる。
なお、セパレータ基材、多孔膜層および接着層としては、特に限定されることなく、例えば特開2012-204303号公報や特開2013-145763号公報に記載のもの等、非水系二次電池の分野において使用され得る任意のセパレータ基材、多孔膜層および接着層を使用し得る。
【0022】
<重合体>
重合体は、後に詳細に説明する工程(A)において供給される物質によって可塑化されるものであり、電極の貼り合わせ面側の表層部と、セパレータの貼り合わせ面側の表層部との少なくとも一方に存在する。
なお、表層部に存在する重合体は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。また、重合体が存在する表層部には、物質によって可塑化される重合体以外の重合体(以下、「その他の重合体」と称することがある。)が含まれていてもよい。
【0023】
ここで、電極の貼り合わせ面側の表層部に重合体が存在する場合、当該重合体は、通常、電極基材からなる電極の場合には電極合材層内に存在し、電極基材の電極合材層上に多孔膜層および/または接着層を更に形成してなる電極の場合には電極の最表面に位置する多孔膜層または接着層内に存在する。
また、セパレータの貼り合わせ面側の表層部に重合体が存在する場合、当該重合体は、セパレータ基材上に多孔膜層および/または接着層を形成してなるセパレータの場合にはセパレータの最表面に位置する多孔膜層または接着層内に存在する。
【0024】
そして、重合体としては、物質によって可塑化させることが可能であれば特に限定されることなく、例えばアクリル系重合体((メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を主として含む重合体);ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)共重合体等のフッ素系重合体(フッ素含有単量体単位を主として含む重合体);スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)等の脂肪族共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体(脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を主として含む重合体)およびその水素化物;ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(NBR)等の脂肪族共役ジエン/アクリロニトリル系共重合体およびその水素化物;並びに、ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系重合体;などの二次電池の分野において使用し得る任意の重合体を用いることができる。
ここで、上述した単量体単位を形成し得る各種単量体としては、既知のものを使用することができる。なお、本発明において、1種または複数種の単量体単位を「主として含む」とは、「重合体に含有される全単量体単位の量を100質量%とした場合に、当該1種の単量体単位の含有割合または当該複数種の単量体単位の含有割合の合計が50質量%を超える」ことを意味する。また、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
そして、上述した重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
中でも、重合体としては、ガラス転移温度が30℃以上の重合体(以下、「高Tg重合体」と称することがある。)を含むことが好ましく、ガラス転移温度が30℃以上の重合体と、ガラス転移温度が30℃未満の重合体(以下、「低Tg重合体」と称することがある。)との双方を含むことがより好ましい。重合体として高Tg重合体を含んでいれば、電池部材(電極および/またはセパレータ)の表層部に存在する重合体が常温(23℃)下において過度な接着力を発揮するのを抑制して、表層部に重合体を有する電池部材同士が保存中や運搬中にブロッキングするのを抑制することができる。また、高Tg重合体と低Tg重合体との双方を含有していれば、表層部に重合体を有する電池部材がブロッキングするのを抑制しつつ、表層部から重合体等が脱落するのを抑制することができる。
なお、電池部材の耐ブロッキング性を更に高める観点からは、高Tg重合体のガラス転移温度は、35℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。更に、電解液中においても重合体に優れた接着性を発揮させる観点からは、高Tg重合体のガラス転移温度は、110℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。また、電池部材の耐ブロッキング性を確保する観点からは、低Tg重合体のガラス転移温度は、-75℃以上であることが好ましく、-55℃以上であることがより好ましく、-35℃以上であることが更に好ましい。更に、電池部材から重合体等の成分が脱落するのを抑制する観点からは、低Tg重合体のガラス転移温度は、20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましい。
そして、本発明において、「ガラス転移温度」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0026】
ここで、重合体として高Tg重合体と低Tg重合体との双方を含む場合、表層部における低Tg重合体の含有量は、高Tg重合体100質量部当たり、10質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが更に好ましく、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。低Tg重合体の含有量が上記下限値以上であれば、電池部材から重合体等の成分が脱落するのを十分に抑制することができる。また、低Tg重合体の含有量が上記上限値以下であれば、電池部材の耐ブロッキング性を十分に確保することができる。
【0027】
なお、セパレータの最表面に位置して例えば特開2013-145763号公報に記載されているような非導電性粒子を含む多孔膜層内に高Tg重合体を含む重合体が存在する場合には、上述した高Tg重合体の含有量は、非導電性粒子100質量部当たり、1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、1質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。高Tg重合体の含有量が上記範囲内であれば、多孔膜に所期の機能を発揮させつつ、接着力を十分に高めることができる。
また、同様の理由により、高Tg重合体の含有割合は、非導電性粒子(100体積%)当たり、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましく、100体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましい。
更に、非導電性粒子を含む多孔膜層内に高Tg重合体と低Tg重合体との双方を含む重合体が存在する場合には、上述した低Tg重合体の含有量は、非導電性粒子と高Tg重合体との合計(100質量%)に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
そして、上述した重合体は、粒子状であってもよいし、非粒子状であってもよい。また、重合体は、コアシェル構造を有する重合体などの複合重合体であってもよい。
【0029】
なお、重合体が粒子状である場合、当該重合体の体積平均粒子径D50は、0.1μm以上であることが好ましく、0.12μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが更に好ましく、1μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることが更に好ましい。重合体の体積平均粒子径D50が上記下限値以上であれば、積層体の内部抵抗の上昇を抑制し、積層体を用いた二次電池の出力特性を向上させることができる。一方、重合体の体積平均粒子径D50が上記上限値以下であれば、電解液中での重合体の接着性を高め、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
なお、重合体の体積平均粒子径D50は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0030】
そして、上述した重合体は、特に限定されることはないが、例えば、各種単量体単位を形成し得る単量体を含む単量体組成物を重合することにより、調製し得る。この際、単量体組成物中の各単量体の含有割合は、重合体中の各繰り返し単位(単量体単位)の含有割合に準じて定めることができる。また、コアシェル構造を有する重合体は、例えば、コア部の重合体の単量体と、シェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、コアシェル構造を有する重合体は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
なお、重合様式は、特に制限なく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。重合に際しては、シード粒子を採用してシード重合を行ってもよい。重合条件は、重合方法などに応じて適宜調整しうる。
また、重合には、乳化剤、重合開始剤、重合助剤、分散安定剤、補助安定剤などの添加剤を使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とし得る。
【0031】
<物質>
物質としては、重合体を可塑化可能であれば、常温(23℃)・常圧(1atm)下で固体の物質を使用してもよいし、常温(23℃)・常圧(1atm)下で液体の物質を使用してもよい。中でも、電池部材(電極および/またはセパレータ)の貼り合わせ面に対して均一に供給し易い観点から、物質としては、常温(23℃)・常圧(1atm)下で液体の物質を使用することが好ましい。
なお、本発明において、「重合体を可塑化可能」とは、重合体のガラス転移温度を低減することを指す。
【0032】
ここで、電池部材の表層部に存在する重合体の種類にもよるが、常温(23℃)・常圧(1atm)下で固体の物質としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジルアニリン、メトキシビフェニル、フェノキシアニリン等の芳香族化合物などを用いることができる。
また、常温(23℃)・常圧(1atm)下で液体の物質としては、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類;プロピレンカーボネート等のカーボネート類;リモネン、シメン等のテルペン類;シクロヘキサン等の環状炭化水素;へプタン等の鎖状炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アニリン、エチルベンゼン、ベンゼン、キシレン等の芳香族化合物;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル化合物;アセトニトリル等のニトリル類;アセトン等のケトン類;などを用いることができる。中でも、安全性の観点からは、リモネン、シメン等のテルペン類が好ましい。
上述した物質は、1種を単独で、または、2種以上を任意の比率で混合して用いることができる。
【0033】
また、物質は、常圧(1atm)下における沸点が、70℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。物質の沸点が上記下限値以上であれば、物質の揮発により非水系二次電池用積層体のプロセス接着性が低下するのを抑制することができるので、長期に亘って非水系二次電池用積層体に優れたプロセス接着性を発揮させ得る。
【0034】
更に、物質は、上述した重合体を膨潤または溶解させ得ることが好ましい。具体的には、物質は、実施例に記載の方法を用いて物質に対する重合体の膨潤度を測定した際に、重合体の膨潤度が好ましくは110%以上2000%以下、より好ましくは150%以上2000%以下、更に好ましくは200%以上2000%以下、特に好ましくは500%以上2000%以下、より一層好ましくは500%以上1000%以下であることが好ましい。重合体の膨潤度が上記範囲内になる物質を使用すれば、重合体が適度な弾性率を保ちつつ十分に可塑化することができるので、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を更に高めることができる。
【0035】
<工程(A)>
そして、工程(A)では、上述した物質を電極の貼り合わせ面およびセパレータの貼り合わせ面の少なくとも一方に供給する。なお、物質が供給される貼り合わせ面は、通常、固体からなる。
【0036】
ここで、物質を供給する貼り合わせ面を有する電池部材は、表層部に上述した重合体が存在しない電池部材であってもよい。互いに接合される貼り合わせ面の少なくとも一方に物質を供給しておけば、電極とセパレータとを貼り合わせた際に上述した重合体を可塑化させることができるからである。なお、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を高める観点からは、物質を供給する貼り合わせ面を有する電池部材は、表層部に上述した重合体が存在する電池部材であることが好ましい。
【0037】
そして、貼り合わせ面への物質の供給は、物質が常温(23℃)・常圧(1atm)下で固体の場合には、例えば、散布等の方法を用いて行うことができる。
【0038】
また、物質が常温(23℃)・常圧(1atm)下で液体の場合には、貼り合わせ面への物質の供給は、例えば、バー塗工、ロール塗工、浸漬塗工、ハケ塗工等の直接塗布法;スプレー塗工、インクジェット塗工等の噴霧法;ベーパー法;などの方法を用いて行うことができる。
【0039】
そして、工程(A)において貼り合わせ面に供給する物質の量は、0.005g/m以上であることが好ましく、0.1g/m以上であることがより好ましく、0.2g/m以上であることが更に好ましく、1g/m以上であることが特に好ましく、5g/m以下であることが好ましく、4g/m以下であることがより好ましく、3g/m以下であることが更に好ましい。物質の供給量が上記下限値以上であれば、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を更に高めることができる。また、物質の供給量が上記上限値以下であれば、積層体を用いた二次電池の電池特性が低下するのを抑制することができる。
【0040】
また、工程(A)において物質を貼り合わせ面に供給する際の温度は、物質の揮発を抑制する観点から、30℃以下であることが好ましく、28℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることが更に好ましく、通常0℃以上である。
【0041】
<工程(B)>
工程(B)では、少なくとも一方に物質が供給された貼り合わせ面を重ね合わせて電極とセパレータとを貼り合わせる。なお、電極とセパレータとの貼り合わせは、貼り合わせ面に供給した物質に対して乾燥などの処理を行うことなく行う。また、供給した物質の揮発を防止する観点からは、貼り合わせは、物質の供給後、30分以内に行うことが好ましく、10分以内に行うことがより好ましく、5分以内に行うことが更に好ましく、1分以内に行うことが特に好ましい。
【0042】
ここで、貼り合わせは、特に限定されることなく、例えば、貼り合わせ面を介して重ね合わせた電極とセパレータとの積層体を加圧および/または加熱することにより行うことができる。
【0043】
そして、工程(B)において積層体を加圧する場合、積層体に加える圧力は、0.3MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることが更に好ましく、20MPa以下であることが好ましく、15MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることが更に好ましい。
【0044】
また、工程(B)において電極とセパレータとを貼り合わせる際の温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが更に好ましく、40℃以上であることが特に好ましく、通常60℃以下である。温度が上記下限値以上であれば、セパレータと電極とを良好に接着させることができる。
更に、貼り合わせ時の積層体の中心部の温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが更に好ましい。積層体の中心部の温度が上記下限値以上であれば、セパレータと電極とを良好に接着させることができる。
【0045】
そして、工程(B)において積層体を加圧および/または加熱する時間は、5秒以上とすることが好ましく、10秒以上とすることがより好ましく、20秒以上とすることが更に好ましく、120秒以下とすることが好ましく、100秒以下とすることがより好ましく、80秒以下とすることが更に好ましい。積層体を加圧および/または加熱する時間が上記下限値以上であれば、セパレータと電極とを良好に接着させることができる。また、積層体を加圧および/または加熱する時間が上記上限値以下であれば、積層体の生産性を高めることができる。
【0046】
<電極とセパレータとの接着力>
なお、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法では、工程(A)で物質を供給する前の電極とセパレータとの接着力が、0N/m以上0.3N/m以下であることが好ましく、0N/m以上0.2N/m以下であることがより好ましく、0N/m以上0.1N/m以下であることが更に好ましい。物質を供給する前の電極とセパレータとの接着力が上記上限値以下であれば、セパレータや電極などの電池部材を捲き取った状態または積層した状態で保存および運搬する際に、隣接する電池部材同士が膠着、即ちブロッキングするのを抑制することができる。従って、不良の発生や生産性の低下を抑制することができる。
なお、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法では、物質の供給により重合体を可塑化させて積層体のプロセス接着性を得ているので、物質を供給する前の電極とセパレータとの接着力を高めることなく(即ち、ブロッキング発生の虞を増大させることなく)、プロセス接着性に優れる積層体を得ることができる。
【0047】
ここで、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法において、少なくともセパレータの貼り合わせ面側の表層部に重合体が存在する場合、工程(A)で物質を供給する前のセパレータの貼り合わせ面同士の接着力は、8N/m以下であることが好ましく、6N/m以下であることがより好ましく、4N/m以下であることが更に好ましい。重合体を可塑化可能な物質を供給する前のセパレータの貼り合わせ面同士の接着力が8N/m以下であれば、セパレータが保存中や運搬中に貼り合わせ面を介して膠着(ブロッキング)するのを抑制することができる。
【0048】
また、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法では、工程(A)で物質を供給した後の電極とセパレータとの接着力が、0.5N/m以上であることが好ましく、0.7N/m以上であることがより好ましく、1.0N/m以上であることが更に好ましい。物質を供給した後の電極とセパレータとの接着力が上記下限値以上であれば、得られる積装体のプロセス接着性を十分に向上させることができる。
【0049】
そして、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法では、工程(A)で物質を供給した後の電極とセパレータとの接着力が、工程(A)で物質を供給する前の電極とセパレータとの接着力の1.2倍以上であることが好ましく、1.6倍以上であることがより好ましく、2.6倍以上であることが更に好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。物質を供給する前の電極とセパレータとの接着力に対する物質を供給した後の電極とセパレータとの接着力の比(供給後の接着力/供給前の接着力)が上記下限値以上であれば、非水系二次電池用積層体のプロセス接着性を十分に高めることができる。
【0050】
(非水系二次電池の製造方法)
本発明の非水系二次電池の製造方法は、上述した本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法を用いて非水系二次電池用積層体を製造する工程と、非水系二次電池用積層体と、電解液とを用いて非水系二次電池を組み立てる工程(組み立て工程)とを含む。そして、本発明の非水系二次電池の製造方法では、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法に従って製造した、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を使用しているので、優れた性能を発揮し得る非水系二次電池を効率的に製造することができる。
【0051】
<組み立て工程>
ここで、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFが特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0052】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。また、これらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0053】
そして、非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法に従って製造した非水系二次電池用積層体に対し、必要に応じて追加の電池部材(電極および/またはセパレータなど)を更に積層した後、得られた積層体を必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより組み立てることができる。なお、非水系二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。また、二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【0054】
ここで、得られる非水系二次電池に優れた電池特性を発揮させる観点からは、電解液中における電極とセパレータとの接着力は、0.5N/m以上であることが好ましく、0.8N/m以上であることがより好ましく、1.0N/m以上であることが更に好ましい。
【実施例
【0055】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、重合体のガラス転移温度、体積平均粒子径D50および物質に対する膨潤度、セパレータの貼り合わせ面同士の接着力、電極とセパレータとのドライ接着力、電極とセパレータとの電解液中接着力、積層体のプロセス接着性、並びに、二次電池のサイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0056】
<ガラス転移温度>
重合体を含む分散液を湿度50%、温度23~25℃の環境下で3日間乾燥させて、厚み1±0.3mmのフィルムを得た。このフィルムを、120℃の熱風オーブンで1時間乾燥させた。その後、乾燥させたフィルムをサンプルとして、JIS K7121に準拠し、測定温度-100℃~180℃、昇温速度5℃/分にて、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、DSC6220SII)を用いて重合体のガラス転移温度を測定した。なお、重合体がコアシェル構造を有する場合には、コア部を構成する重合体のガラス転移温度を測定した。
<体積平均粒子径D50>
分散液中の重合体について、レーザー回折・光散乱方式粒度分布測定装置(LS230、ベックマンコールター社製)を用いて、体積平均粒子径D50を測定した。
<物質に対する膨潤度>
測定対象の重合体を100℃、20kg/cmの条件で5分間熱プレスして、厚み0.5mmのフィルムを作製した。なお、製造した重合体が液中に分散または溶解している場合は、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、温度60℃で12時間乾燥した後、シャーレから取り出し、乾燥した重合体を同様の条件でプレスし、0.5mのフィルムを作製した。
そして、得られたフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の重量を測定し、W0とした。また、試験片を物質に温度23℃で2時間接触させた。その後、試験片を取り出し、試験片の表面の物質を拭き取り、接触後の試験片の重量W1を測定した。そして、これらの重量W0およびW1を用いて、膨潤度S(%)を、S=(W1/W0)×100%にて計算した。
<セパレータの貼り合わせ面同士の接着力(耐ブロッキング性)>
セパレータを幅4cm×長さ4cmに2枚切り出した。そして、セパレータの表層部に重合体が有する面(貼り合わせ面)同士を重ね合わせ、温度40℃、圧力8MPaにて2分間プレスした後、重ね合わせられたセパレータ同士を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力(セパレータの貼り合わせ面同士の接着力)を測定した。
<ドライ接着力>
物質の供給前と供給後との双方について、負極とセパレータとを、積層体の作製時と同じ条件でプレスして貼り合わせ、幅1cm×長さ5cmに裁断して試験片とした。この試験片に対して、セパレータの表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。そして、負極の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値をドライ接着力として求めた。
<電解液中接着力>
積層体の作製時と同じ条件で負極とセパレータとを貼り合わせ、それぞれ10mm幅に切り出して、試験片を得た。この試験片を電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF)中に温度60℃で3日間浸漬した。その後、試験片を取り出し、表面に付着した電解液を拭き取り、当該試験片を、負極の表面を下にして、負極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。また、セロハンテープとしては、JIS Z1522に規定されるものを用いた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めた。そして、得られた平均値を電解液中のピール強度として、以下の基準に従って評価した。ピール強度が大きいほど、電解液中における接着性に優れていることを示す。
A:ピール強度が0.8N/m以上
B:ピール強度が0.6N/m以上0.8N/m未満
C:ピール強度が0.4N/m以上0.6N/m未満
D:ピール強度が0.2N/m以上0.4N/m未満
E:ピール強度が0.2N/m未満
<プロセス接着性>
得られた積層体について、卓上型振動試験機(アズワン製、CV-101M)を用いて振動試験を実施した。具体的には、周波数10Hz、振動時間1分、振幅0.5mmの条件にて振動試験をした後、積層体のずれを測定し、以下の基準に従って評価した。ずれの大きさが小さいほど、プロセス接着性に優れていることを示す。
A:振動試験後のずれが0.3mm未満
B:振動試験後のずれが0.3mm以上0.5mm未満
C:振動試験後のずれが0.5mm以上0.7mm未満
D:振動試験後のずれ精度が0.7mm以上1mm未満
E:振動試験後のずれ精度が1mm以上
<サイクル特性>
作製したリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、温度25℃で5時間静置した。次に、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.65Vまで充電し、その後、温度60℃で12時間エージング処理を行った。そして、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.00Vまで放電した。その後、0.2Cの定電流法にて、CC-CV(定電流-定電圧)充電(上限セル電圧4.20V)を行い、0.2Cの定電流法にて3.00VまでCC放電し、その初期放電容量X1を測定した。その後、温度45℃の環境下、セル電圧4.20-3.00V、1.0Cの充放電レートにて充放電の操作を50サイクル行った。引き続き、0℃の環境下、セル電圧4.20-3.00V、0.5Cの充放電レートにて充放電の操作を50サイクル行った。さらにその後、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、CC-CV充電(セル電圧4.20V)して、0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00Vまで放電し、その放電容量X2を測定した。初期放電容量X1および放電容量X2を用いて、ΔC’=(X2/X1)×100(%)で示される容量維持率を求め、以下の基準に従って評価した。容量維持率ΔCが大きいほど、サイクル特性に優れていることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが70%以上75%未満
E:容量維持率ΔCが70%未満
【0057】
(実施例1)
<低Tg重合体の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王ケミカル社製、「エマルゲン(登録商標)120」)0.15部、および、過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器でイオン交換水50部、乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王ケミカル社製、「エマルゲン(登録商標)120」)0.5部、そして、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)70部、スチレン(ST)25部、アリルグリシジルエーテル(AGE)1.7部、アリルメタクリレート0.3部、および、アクリル酸(AA)3部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を4時間かけて前記反応器Aに連続的に添加して重合を行った。添加中は、70℃で反応を行った。添加終了後、さらに80℃で3時間撹拌して反応を終了し、粒子状重合体Aを含む水分散液を製造した。
得られた粒子状重合体Aのガラス転移温度Tgを測定したところ、観測されるガラス転移温度Tgは一点のみ(-20℃)であり、粒子状重合体がランダム共重合体であることを確認した。また、得られた粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50は200nmであった。
<高Tg重合体の調製>
攪拌機を備えた反応器に、イオン交換水100部および過硫酸アンモニウム0.3部供給し、気相部を窒素ガスで置換し、80℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水40部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、スチレン53.8部、2-エチルヘキシルアクリレート33部、アクリロニトリル10部、エチレングリコールジメタクリレート0.2部、および、メタクリル酸3部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して、重合を行った。単量体混合物の添加中は、80℃で反応を行った。単量体混合物の添加の終了後、さらに80℃で2時間攪拌してから反応を終了し、粒子状の高Tg重合体の水分散液を得た。
得られた重合体について、ガラス転移温度、体積平均粒子径D50および物質に対する膨潤度を測定した。結果を表1に示す。
<多孔膜層用スラリー組成物の調製>
非導電性粒子としてのアルミナ(住友化学社製、製品名「AKP3000」、体積平均粒子径D50:0.5μm)86部と、上述の操作で得られた高Tg重合体の水分散液を固形分相当で14部(アルミナ:高Tg重合体(体積比)=60:40)とを混合した。更に、低Tg重合体の水分散液を固形分相当で5部と、増粘剤としてのポリアクリルアミド1.5部と、分散剤としてのポリアクリル酸0.8部とを添加し、固形分濃度が15%となるようにイオン交換水を加え、ボールミルを用いて混合することにより、多孔膜層用スラリー組成物を調製した。
<セパレータの製造>
ポリプロピレン(PP)製のセパレータ基材(製品名「セルガード2500」)上に、上記多孔膜層用スラリー組成物を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。この操作をセパレータ基材の両面に対して行ない、厚み5μmの多孔膜層を両面に備えるセパレータを得た。
そして、セパレータの耐ブロッキング性を評価した。結果を表1に示す。
<負極の製造>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3-ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止し、負極合材層用結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記負極合材層用結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の負極合材層用結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、製品名「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、およびイオン交換水を混合して固形分濃度68%に調整した後、25℃で60分間さらに混合した。更に、イオン交換水で固形分濃度を62%に調整した後、25℃で15分間更に混合した。得られた混合液に、上記の負極合材層用結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して流動性の良い二次電池負極用スラリー組成物を得た。
得られた二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体としての厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。得られたプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
そして、ドライ接着力および電解液中接着力を評価した。結果を表1に示す。
<正極の製造>
正極活物質としての体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS-100」)を2部と、正極合材層用結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部と、溶媒としてのN-メチルピロリドンとを混合して全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、二次電池正極用スラリー組成物を得た。
得られた二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレス機で圧延することにより、正極合材層を備えるプレス後の正極を得た。
<積層体の製造>
上記で得られたプレス後の正極を4cm×4cmの正方形に切り出した。また、上記で得られたセパレータを5cm×5cmに切り出した。更に、上記の通り作製したプレス後の負極を4.2cm×4.2cmに切り出した。
次に、市販の霧吹きを用いて、セパレータの両面に対して、物質としてのリモネン(融点:-74℃、沸点:176℃)を吹き付け量が2g/mになるように吹き付けた。
そして、負極、セパレータ、正極の順番に重ね合わせ、積層体とした。次いで、得られた積層体を温度50℃、圧力1MPaの条件で50秒間プレスし、接着させた。また、積層体中心部に熱電対を設置したモデルサンプルを用いて、プレス中の積層体中心部の温度を測定した。
得られた積層体について、プロセス接着性を評価した。結果を表1に示す。
<二次電池の製造>
得られた積層体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)/ビニレンカーボネート(VC)(体積比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。そして、温度150℃でアルミ包材外装の開口をヒートシールし、800mAhのラミネート型リチウムイオン二次電池を製造した。
そして、製造したリチウムイオン二次電池について、サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)
積層体およびリチウムイオン二次電池を以下のようにして製造した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
<積層体の製造>
まず、120cm×5.5cmの長方形に切り出したセパレータの両面に対して、市販の霧吹きを用いて、物質としてのリモネンを吹き付け量が2g/mになるように吹き付けた。
次に、プレス後の正極を49cm×5cmの長方形に切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置き、その正極合材層上に物質を吹き付けたセパレータ(寸法:120cm×5.5cm)を、正極がセパレータの長手方向左側に位置するように配置した。更に、プレス後の負極を50×5.2cmの長方形に切り出し、セパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うように、かつ、負極がセパレータの長手方向右側に位置するように配置した。
次いで、得られた積層体を温度50℃、圧力1MPaの条件で80秒間プレスし、接着させた。また、積層体中心部に熱電対を設置したモデルサンプルを用いて、プレス中の積層体中心部の温度を測定した。
<二次電池の製造>
得られた積層体を捲回機により捲回し、捲回体を得た。得られた捲回体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)/ビニレンカーボネート(VC)(体積比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。そして、温度150℃でアルミ包材外装の開口をヒートシールし、容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
【0059】
(実施例3)
積層体の製造時に、リモネンに替えてシメン(融点:-68℃、沸点:177℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例4)
積層体の製造時に、リモネンに替えてジエチレングリコールモノブチルエーテル(融点:-68℃、沸点:234℃)を使用し、市販の霧吹きに替えて富士フィルム社製のマテリアルプリンター(DMP-2850)を用いて塗布した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例5)
積層体の製造時に、リモネンに替えて酢酸ブチル(融点:-78℃、沸点:126℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例6)
積層体の製造時に、リモネンに替えてキシレン(融点:-25℃、沸点:144℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例7)
積層体の製造時に、リモネンに替えてヘプタン(融点:-91℃、沸点:98℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例8)
積層体の製造時に、リモネンに替えてシクロヘキサン(融点:7℃、沸点:81℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例9)
積層体の製造時に、シクロヘキサンに替えて冷却下の乳鉢中で粉砕したベンゾフェノン(融点:48℃、沸点:305℃)をセパレータの両面に対して散布した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例10)
積層体の製造時に、霧吹きを用いたリモネンの吹き付けに替えて、セパレータとリモネンとを直接接触しないようにガラス製の密閉容器に入れ、1時間放置した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
なお、放置前後でセパレータの重さを測定したところ、セパレータの単位面積当たりの重さは0.005g/m増加していた。
【0067】
(実施例11)
積層体の製造時にリモネンの吹き付け量を5g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例12)
高Tg重合体の調製時に、スチレンの量を75.8部に変更し、2-エチルヘキシルアクリレートの量を11部に変更した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例13)
以下のようにして調製した高Tg重合体を使用した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
<高Tg重合体の調製>
高Tg重合体としてコアシェル構造を有する粒子状重合体を調製した。具体的には、まず、コア部の形成にあたり、攪拌機付き5MPa耐圧容器に、メタクリル酸メチル単量体42部、アクリル酸ブチル24.5部、メタクリル酸2.8部、エチレングリコールジメタクリレート0.7部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、シェル部を形成するために、スチレン29.7部およびメタクリル酸0.3部を連続添加し、70℃に加温して重合を継続し、転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、コアシェル構造を有する粒子状重合体を含む水分散液を得た。
【0070】
(実施例14)
積層体の製造時に、リモネンに替えてプロピレンカーボネート(融点:-55℃、沸点:242℃)を使用した以外は実施例13と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例15)
高Tg重合体の調製時に、スチレンの量を64.0部に変更し、アクリロニトリルおよびエチレングリコールジメタクリレートを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例16)
高Tg重合体の調製時に、2-エチルヘキシルアクリレートの量を23部に変更し、アクリロニトリルの量を20部に変更した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例17)
多孔膜層用スラリー組成物の調製時に、アルミナの量を90部に変更し、高Tg重合体の水分散液14部(固形分相当)に替えて、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)共重合体(SIGMA-ALDRICH社製)を10部使用した(アルミナ:PVdF-HFP(体積比)=80:20)以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例18)
積層体の製造時に、リモネンに替えてプロピレンカーボネート(融点:-55℃、沸点:242℃)を使用した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例19)
積層体の製造時に、リモネンを吹き付ける場所を、セパレータの両面から正極の正極合材層の表面および負極の負極合材層の表面に変更した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例20~21)
積層体の製造時に、プレス温度をそれぞれ30℃(実施例20)および20℃(実施例21)に変更した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(比較例1)
積層体の製造時にセパレータの両面に対してリモネンを吹き付けなかった以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0078】
(比較例2)
積層体の製造時に、リモネンに替えて水(融点:0℃、沸点:100℃)を使用した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例3)
積層体の製造時に、リモネンに替えてエタノール(融点:-114℃、沸点:78℃)を使用した以外は実施例1と同様にして、低Tg重合体、高Tg重合体、多孔膜層用スラリー組成物、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例4)
以下のようにして製造した多孔膜層用スラリー組成物、セパレータおよび積層体を使用した以外は実施例1と同様にして、セパレータ、負極、正極、積層体および二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
<多孔膜層用スラリー組成物の調製>
非導電性粒子としてのアルミナ(住友化学社製、製品名「AKP3000」、体積平均粒子径D50:0.5μm)90部と、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)共重合体(SIGMA-ALDRICH社製)10部とを混合した。更に、低Tg重合体の水分散液を固形分相当で5部と、増粘剤としてのポリアクリルアミド1.5部と、分散剤としてのポリアクリル酸0.8部とを添加し、固形分濃度が15%となるようにイオン交換水を加え、ボールミルを用いて混合することにより、多孔膜層用スラリー組成物を調製した。
<セパレータの製造>
上記多孔膜層用スラリー組成物を、ポリプロピレン製のセパレータ基材(製品名「セルガード2500」)上にバーコーターを用いて塗工量が6g/mとなるように塗工した。その後、溶液を塗工したセパレータを温度25℃、湿度60%に調整した恒温恒湿空間に15秒以上放置し、吸湿させた(放置前後の重量変化:0.01g/m)。
<積層体の製造>
プレス後の正極を4cm×4cmの正方形に切り出した。また、上記で得られたセパレータを5cm×5cmに切り出した。更に、プレス後の負極を4.2cm×4.2cmに切り出した。
そして、負極、セパレータ、正極、セパレータの順番に重ね合わせ、積層体とした。次いで、得られた積層体を80℃の温風乾燥機に1時間入れて、正極および負極と、セパレータとを貼り合わせた。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、重合体を可塑化可能な物質を使用した実施例1~21では、重合体を可塑化可能な物質を使用しなかった比較例1~3と比較し、プロセス接着性に優れる積層体が得られることが分かる。また、実施例1~21では、重合体を可塑化可能な物質を使用せずに長い時間をかけて貼り合わせを行った比較例4と比較し、プロセス接着性に優れる積層体を短い時間で効率的に得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法によれば、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を効率的に得ることができる。
また、本発明の非水系二次電池の製造方法によれば、プロセス接着性に優れる非水系二次電池用積層体を使用し、優れた性能を発揮し得る非水系二次電池が効率的に得られる。