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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および光学機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20230426BHJP
【FI】
G02B7/04 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020563053
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048599
(87)【国際公開番号】W WO2020137563
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2018247796
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【弁理士】
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】長岡 弘仁
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-142471(JP,A)
【文献】特開2003-140018(JP,A)
【文献】特開2012-133115(JP,A)
【文献】特開2005-208579(JP,A)
【文献】特開2000-304996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に対して少なくとも一部が角度をもって形成されたカム溝と、
前記光軸方向に延びる直進溝と、
前記カム溝が設けられたカム筒と、
前記直進溝が設けられ、前記カム筒と相対回転する筒部材と、
前記直進溝の周方向の一方の側面である第1面および前記カム溝の光軸方向の一方の側面である第2面に沿って移動する第1カムフォロアを有する第1移動部材と、
前記直進溝の周方向の他方の側面である第3面および前記カム溝の前記光軸方向の他方の側面である第4面に沿って移動する第2カムフォロアを有する第2移動部材と、を備え、
前記カム筒と前記筒部材が相対回転すると、前記第1面および前記第2面に沿って前記第1カムフォロアが移動するのに伴って前記第1移動部材が移動し、また、前記第3面および前記第4面に沿って前記第2カムフォロアが移動するのに伴って前記第2移動部材が移動し、
前記カム筒と前記筒部材が相対回転する際、前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアは前記光軸方向に沿った第1方向に移動し、または、前記第1方向とは逆方向の第2方向に移動し、
ワイド状態において、前記第1カムフォロアの一部の位置と前記第2カムフォロアの一部の位置とは、前記光軸方向において一部が重複可能であり、
縮筒状態及びテレ状態において、前記第1カムフォロアの位置と前記第2カムフォロアの位置とは、前記光軸方向において重複していない
前記第1カムフォロアは前記第3面には非接触であり、
前記第2カムフォロアは前記第1面には非接触であるレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第1カムフォロアの一部と前記第2カムフォロアの一部は、前記光軸回りの周方向における位置が異なる請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記カム筒の内径側に少なくとも一部が配置された光学系を備え、
前記光学系の光学特性が変化する際、前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアとの前記光軸方向における間隔は可変である、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアは、光軸周りの周方向における位置が異なっている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第1カムフォロアの移動方向が前記第1方向から前記第2方向へと切り替わる際に前記第1カムフォロアが接触する前記カム溝の領域は、
前記第2カムフォロアの移動方向が前記第1方向から前記第2方向へと切り替わる際に前記第2カムフォロアが接触する前記カム溝の領域よりも鋭角となっている、請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1移動部材と前記第2移動部材とをそれぞれ前記光軸方向に付勢する付勢部材が設けられている、
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアとを光軸方向および周方向に離れる方向に付勢する付勢部材が設けられている、
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記レンズ鏡筒は、縮筒開始状態から縮筒完了状態までの間、
前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアは、同じ軌跡で移動する、
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記第2移動部材の内径側に配置され、前記光軸方向に移動可能な移動レンズと、
前記第2移動部材に固定され、前記移動レンズを前記光軸方向に移動させる駆動部と、を備える、
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記移動レンズを前記光軸方向に案内する案内軸と、
前記案内軸は前記筒部材に固定される
請求項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアは、外周方向から見た形状が同じである請求項1から10のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアの少なくとも一方は、外周方向から見たときの形状が丸である請求項1から11のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアの少なくとも一方は、直進溝またはカム溝に点接触する請求項1から12のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備える光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのレンズ群のカム溝を1本のカム溝で兼用するようにしたズームレンズ装置がある。
本発明は、光軸方向の小型化が可能なレンズ鏡筒および光学機器を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-326734号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様のレンズ鏡筒は、光軸方向に対して少なくとも一部が角度をもって形成されたカム溝と、前記光軸方向に延びる直進溝と、前記カム溝が設けられたカム筒と、前記直進溝が設けられ、前記カム筒と相対回転する筒部材と、前記直進溝の周方向の一方の側面である第1面および前記カム溝の光軸方向の一方の側面である第2面に沿って移動する第1カムフォロアを有する第1移動部材と、前記直進溝の周方向の他方の側面である第3面および前記カム溝の前記光軸方向の他方の側面である第4面に沿って移動する第2カムフォロアを有する第2移動部材と、を備え、前記カム筒と前記筒部材が相対回転すると、前記第1面および前記第2面に沿って前記第1カムフォロアが移動するのに伴って前記第1移動部材が移動し、また、前記第3面および前記第4面に沿って前記第2カムフォロアが移動するのに伴って前記第2移動部材が移動し、前記カム筒と前記筒部材が相対回転する際、前記第1カムフォロアと前記第2カムフォロアは前記光軸方向に沿った第1方向に移動し、または、前記第1方向とは逆方向の第2方向に移動し、ワイド状態において、前記第1カムフォロアの一部の位置と前記第2カムフォロアの一部の位置とは、前記光軸方向において一部が重複可能であり、縮筒状態及びテレ状態において、前記第1カムフォロアの位置と前記第2カムフォロアの位置とは、前記光軸方向において重複していない前記第1カムフォロアは前記第3面には非接触であり、前記第2カムフォロアは前記第1面には非接触である構成とした。
【0006】
第3の態様は、上記記載のレンズ鏡筒を備える光学機器とした。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のレンズ鏡筒1を示す断面図である。
図2】レンズ鏡筒1がワイド位置にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。
図3】レンズ鏡筒1がワイド位置にある場合におけるカム筒15より内径側の、図1におけるA-A線に沿った断面図である。
図4】3群レンズ保持枠23を示す像側から見た斜視図である。
図5】4群レンズL4を保持する4群レンズ保持枠24と、4群レンズ保持枠24を保持する4群レンズ移動筒24Aとを示す像側から見た斜視図であり、ステッピングモータ243が取り付けられている部分を断面で示す。
図6】4群レンズ保持枠24と、4群レンズ保持枠24を保持する4群レンズ移動筒24Aとを示す被写体側から見た斜視図であり、ステッピングモータ243が取り付けられている部分を断面で示す。
図7】レンズ鏡筒1が最も短い縮筒状態にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。
図8】レンズ鏡筒1がテレ状態にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。
図9】第2実施形態における、第4カム溝154’と、直進溝172’とに係合する3群カムフォロア231’と4群カムフォロア241’とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、第1実施形態のレンズ鏡筒1について説明する。図1は、第1実施形態のレンズ鏡筒1を示す断面図である。レンズ鏡筒1は、図中右側にレンズ側マウント部11を有し、カメラボディ2に設けられたボディ側マウント部(図示せず)に対して着脱可能な交換式レンズ鏡筒1である。ただしこれに限定されず、カメラボディ2と一体型のレンズ鏡筒1であってもよい。以下、光軸OAに沿った図中左側を被写体側、図中右側を像側と称す。
【0009】
レンズ鏡筒1は焦点距離が可変のズームレンズで、外径側から順に、ズームリング12と、ズームリング12とともに回転する回転筒13と、第1レンズ群移動直進筒14と、カム筒15と、固定筒17と、第2レンズ群移動直進筒16と、を備える。固定筒17は、レンズ側マウント部11に固定されている。ズームリング12およびカム筒15は、固定筒17に対して光軸OAを中心軸として回転可能である。第1レンズ群移動直進筒14および第2レンズ群移動直進筒16は、固定筒17に対するズームリング12およびカム筒15の回転に伴い、光軸OA方向に直進する。
さらに、レンズ鏡筒1は、光学系として、1群レンズL1と、2群レンズL2と、3群レンズL3と、4群レンズL4、5群レンズL5とを備える。4群レンズL4はモータにより駆動されて光軸方向に移動することにより光学系の焦点位置を調整するフォーカスレンズである。
1群レンズL1の外周は1群レンズ保持枠21に保持されている。1群レンズ保持枠21は、第1レンズ群移動直進筒14に固定されている。2群レンズL2外周は2群レンズ保持枠22に保持されている。3群レンズL3の外周は3群レンズ保持枠23に保持されている。4群レンズL4の外周は4群レンズ保持枠24に保持されている。5群レンズL5の外周は5群レンズ保持枠25に保持されている。2群レンズ枠22および5群レンズ枠L5は、第2レンズ群移動直進筒16に固定されている。3群レンズ枠23および4群レンズ枠L4は、第2レンズ群移動直進筒16の内径側で、光軸OA方向に移動可能に配置されている。
【0010】
(カム筒15)
図2はレンズ鏡筒1がワイド状態にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。図3はレンズ鏡筒1がワイド状態にある場合におけるカム筒15より内径側の、図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【0011】
カム筒15には、被写体側から順に、第1カム溝151、第2カム溝152、第3カム溝153及び第4カム溝154の4種類のカム溝が、それぞれ3本ずつ設けられている。
第1カム溝151には、第2レンズ群移動直進筒16の外面の周方向における互いに均等な3か所から外方に突出した2群カムフォロア161が係合している。
第2カム溝152には、固定筒17の外面の周方向における互いに均等な3か所から外方に突出したローラ171が係合している。
第3カム溝153には、第1レンズ群移動直進筒14の内面の周方向における互いに均等な3か所から内方に突出した1群カムフォロア141が係合している。
【0012】
第4カム溝154は、被写体側のカム面154aと、像側のカム面154bとは平行ではなく、少なくとも一部で異なる形状を有している。
第4カム溝154の被写体側のカム面154aには、3群レンズ保持枠23の外面の周方向における互いに均等な3か所から外方に突出した3群カムフォロア231が係合している。第4カム溝154の像側のカム面154bには、4群レンズ保持枠24を保持する4群レンズ移動筒24Aの外面の周方向における互いに均等な3か所から外方に突出した4群カムフォロア241が係合している。3群カムフォロワ231はカム面154bには非接触であり、4群カムフォロワ241はカム面154aに非接触であるか、後述のテレ状態などで他方のカム面に接触することとしてもよい。
したがって、3群カムフォロア231、すなわち3群レンズ保持枠23および3群レンズL3と、4群カムフォロア241、すなわち4群レンズ保持枠24および4群レンズL4とは、1つのカム溝である第4カム溝154によって駆動されるが、異なる軌道で駆動される。
【0013】
(固定筒17)
固定筒17は周面を貫通する直進溝172が光軸方向に沿って3カ所に設けられている。直進溝172の内側では、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241とが移動可能に貫通している。また、図3に示すように固定筒17の内面の周方向における互いに均等な3か所には光軸OA方向に延びる固定筒案内キー溝173が設けられている。
【0014】
(第2レンズ群移動直進筒16)
2群レンズ保持枠22は、第2レンズ群移動直進筒16の内周に一体的に設けられている。5群レンズL5の外周を保持する5群レンズ保持枠25は、第2レンズ群移動直進筒16の像側端部に固定されている。すなわち、2群レンズL2と2群レンズ保持枠22、および5群レンズL5と5群レンズ保持枠25とは、第2レンズ群移動直進筒16と一体で光軸OA方向に移動する。
【0015】
上述のように、第2レンズ群移動直進筒16の外面の周方向における互いに均等な3か所には、外方に突出して2群カムフォロア161が取り付けられている。2群カムフォロア161は、カム筒15の第1カム溝151に係合している。したがって、第2レンズ群移動直進筒16は、カム筒15の回転に伴って第1カム溝151に沿って移動する。
第2レンズ群移動直進筒16の2群レンズ保持枠22と、5群レンズ保持枠25との間には光軸OA方向にメインガイドバー163と、サブガイドバー164とが架け渡されている(図1においてはメインガイドバー163のみ図示)。
【0016】
また、第2レンズ群移動直進筒16には、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とをカム筒15の第4カム溝154へと貫通させる直進溝167が設けられている。
さらに第2レンズ群移動直進筒16には、外面の周方向における互いに均等な3か所から外方に突出して光軸OA方向に延びる2群案内キー165が設けられている。2群案内キー165は固定筒案内キー溝173と嵌合し、固定筒案内キー溝173に沿って光軸OA方向に移動する。2群案内キー165は貫通溝で、内径側には2群案内キー溝166が形成されている。
【0017】
(3群レンズ保持枠23)
図4は3群レンズ保持枠23を示す像側から見た斜視図である。メインガイドバー163およびサブガイドバー164は、3群レンズ保持枠23を貫通している。
3群レンズ保持枠23の外面の周方向における互いに均等な3か所から外方に突出して、3群カムフォロア231と3群案内キー232が設けられている。3群案内キー232の内径側には、3群案内キー溝233が形成されている。
【0018】
(4群レンズ保持枠24)
図5は4群レンズL4を保持する4群レンズ保持枠24と、4群レンズ保持枠24を光軸OA方向に移動可能に保持する4群レンズ移動筒24Aとを示す像側から見た斜視図である。4群レンズ移動筒24Aには4群レンズL4を光軸OA方向に駆動するステッピングモータ243が固定されており、ステッピングモータ243が取り付けられている部分を断面で示す。
図6図5の4群レンズ保持枠24と4群レンズ移動筒24Aとを示す像側から見た斜視図であり、ステッピングモータ243が取り付けられている部分を断面で示す。
【0019】
4群レンズ保持枠24は、ステッピングモータ243により駆動されて、メインガイドバー163とサブガイドバー164に沿って移動可能である。4群レンズ保持枠24の外周には、サブガイドバー164と係合する外径側に開口したU字型係合部240と、メインガイドバー163と嵌合する嵌合部242とが設けられている。嵌合部242は、メインガイドバー163における光軸OA方向に所定距離離間した2箇所を挿通する壁部を有し、4群レンズ保持枠24のメインガイドバー163に対する倒れを防止する。嵌合部242は、メインガイドバー163の延在する方向に所定距離離間した2枚の壁部を有し、それぞれをメインガイドバー163に挿通させることで、メインガイドバー163との係合長が長くとられている。
【0020】
(4群レンズ移動筒24A)
4群レンズ移動筒24Aにはステッピングモータ243が取り付けられている。ステッピングモータ243のリードスクリュー244は光軸OA方向に延び、リードスクリュー244には、その外周にネジ部が設けられている。リードスクリュー244のネジ部には移動部245が噛み合っており、ステッピングモータ243がリードスクリュー244を回動させると移動部245がリードスクリュー244の延在する方向に移動する。移動部245は嵌合部242に光軸OA方向の位置を固定されており、移動部245の光軸OA方向の移動成分に応じて、嵌合部242は4群レンズ保持枠24と伴に光軸OA方向に移動する。
4群レンズ移動筒24Aの外面の周方向における互いに均等な3か所には、外方に突出した4群カムフォロア241(図2においては1つ、図3においては3つ、図5図6においては2つ示す)と、光軸OA方向に延びる4群案内キー246(図3においては3つ、図5図6においては2つ示す)とが設けられている。
【0021】
ここで、図3に示すように3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とは、光軸OA方向に対して同一直線上には配置されておらず、周方向にずれている。
また、4群案内キー246は、4群レンズ移動筒24Aの外周面で3群案内キー溝233に嵌合する。つまり、4群レンズ移動筒24Aを直進案内する部材は、4群案内キー246と3群案内キー溝233である。
また、3群案内キー溝233が形成された3群案内キー232は、3群レンズ枠23の外周面で2群案内キー溝166に嵌合する。つまり、3群レンズ枠23を直進案内する部材は、3群案内キー232と2群案内キー溝166である。
また、2群案内キー溝166が形成された2群案内キー165には、固定筒案内キー溝173が嵌合している。つまり、第2レンズ群移動直進筒16を直進案内する部材は、2群案内キー165と、2群案内キー溝166および固定筒案内キー溝173である。
【0022】
図6に示すように、4群レンズ移動筒24Aの被写体側の面には、周方向における互いに均等な3か所に板バネ247が取り付けられている。板バネ247は、光軸OAを略中心とした円弧形状の板状金属部材である。板バネ247の一端は4群レンズ移動筒24Aに固定され、他端は被写体側に突出している。
4群レンズ移動筒24Aの被写体側には3群レンズ保持枠23が配置されている。板バネ247は、3群レンズ保持枠23の像側の面と当接し、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとを光軸OA方向に広がるように付勢する。
【0023】
ここで、前述のように、3群レンズ保持枠23の外面に設けられている3群カムフォロア231と、4群レンズ移動筒24Aの外面に設けられている4群カムフォロア241とは、1つの第4カム溝154に係合している。また、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aは、4群案内キー246、3群案内キー232、3群案内キー溝233および2群案内キー溝166によって光軸OA方向に直進案内されている。
3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとの間の距離が広がるように付勢されると、図2に示すように、3群カムフォロア231は第4カム溝154の被写体側のカム面154aに当接する。4群カムフォロア241は第4カム溝154の像側のカム面154bに当接する。
【0024】
(ズーム動作)
レンズ鏡筒1は、外周に設けられたズームリング12を回転すると、ズームリング12の内径側に配置された回転筒13が回転する。回転筒13が回転すると、カム筒15が回転しつつ直進方向に移動する。
【0025】
カム筒15の第2カム溝152は固定筒17に設けられたローラ171に係合している。したがって、カム筒15は、回転することによりローラ171と係合する第2カム溝152の位置が変化して光軸OA方向に移動する。
【0026】
カム筒15が光軸OA方向に移動しつつ回転すると、第3カム溝153に沿って第1レンズ群移動直進筒14が光軸OA方向に移動する。第1レンズ群移動直進筒14には、1群レンズ保持枠21が固定されているので、第1レンズ群移動直進筒14の光軸OA方向の移動に伴い1群レンズ保持枠21および1群レンズL1が光軸OA方向に移動する。
【0027】
カム筒15が光軸OA方向に移動しつつ回転すると、第1カム溝151に沿って第2レンズ群移動直進筒16が光軸OA方向に移動する。第2レンズ群移動直進筒16の内径には2群レンズ保持枠22が設けられ、後端には5群レンズ保持枠25が固定されているので、第2レンズ群移動直進筒16の光軸OA方向の移動に伴い2群レンズ保持枠22および2群レンズL2と、5群レンズ保持枠25および5群レンズL5とが直進移動する。
【0028】
第2レンズ群移動直進筒16の2群レンズ保持枠22には、メインガイドバー163の一端とサブガイドバー164の一端とが固定されている。また、5群レンズ保持枠25には、メインガイドバー163の他端とサブガイドバー164の他端が固定されている。したがって、メインガイドバー163と、サブガイドバー164も第2レンズ群移動直進筒16の光軸OA方向の移動に伴い直進移動する。
【0029】
(合焦動作)
合焦の際には、ステッピングモータ243の駆動により、リードスクリュー244が回転する。リードスクリュー244の回転によって移動部245、嵌合部242、4群レンズ保持枠24、フォーカスレンズである4群レンズL4が移動し、これにより合焦動作が行われる。
【0030】
上述のように、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとは、互いに離れるように板バネ247で付勢されているので、3群レンズ保持枠23に設けられた3群カムフォロア231は、第4カム溝154の被写体側のカム面154aに当接し、4群レンズ移動筒24Aに設けられた4群カムフォロア241は、像側のカム面154bに当接している。
【0031】
ここで、図2は、上述のようにレンズ鏡筒1がワイド状態(撮影可能状態)にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。図7はレンズ鏡筒1がワイド状態より短い縮筒状態(撮影不可状態)にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。図8はレンズ鏡筒1がテレ状態(撮影可能状態)にある場合におけるカム筒15より内径側の側面図である。
【0032】
カム筒15が光軸OA方向に移動しつつ回転すると、第4カム溝154の被写体側のカム面154aに沿って3群カムフォロア231が光軸OA方向に移動する。第4カム溝154の像側のカム面154bに沿って4群カムフォロア241が光軸OA方向に移動する。
図7の縮筒状態では、3群カムフォロア231および4群カムフォロア241は、第4カム溝の図中上部にある。縮筒状態において、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241とは、光軸OA方向における位置が重複していない。
図2のワイド状態では、3群カムフォロア231および4群カムフォロア241は、第4カム溝の中央寄りの第4カム溝が折れ曲がっている位置にある。ワイド状態において、3群レンズL3と4群レンズL4とは最も近づき、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241とは、光軸OA方向における位置が重複している。
図8のテレ状態では、3群カムフォロア231および4群カムフォロア241は、第4カム溝の図中下部にある。テレ状態において、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241とは、光軸OA方向における位置が重複していない。
図7図2図8との状態で、3群カムフォロア231および4群カムフォロア241の間の光軸OA方向の距離は異なり、すなわち3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とは異なる軌跡で移動している。ワイド状態からテレ状態まで変倍する際、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とは異なる軌跡で移動可能であり、3群レンズL3と4群レンズL4との光軸OA方向の間隔は可変である。ワイド状態から縮筒状態に変化する際、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とは、ワイド状態(撮影可能状態で最も3群レンズL3と4群レンズL4とが近づく状態)より光軸OA方向の間隔が大きくなる。縮筒開始(図2のワイド状態から少しだけ縮筒方向にズームリング12を回したとき)から縮筒完了(図7の状態)までの間、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とは同じ軌跡で移動する。
【0033】
変倍または合焦の際、ステッピングモータ243がリードスクリュー244を回転駆動させると、4群レンズ移動筒24A内において移動部245が光軸OA方向に駆動され、4群レンズ保持枠24が4群レンズ移動筒24Aに対して光軸OA方向に駆動される。
【0034】
なお、上述のように、4群案内キー246は3群案内キー溝233に嵌合し、3群案内キー232は2群案内キー溝166に嵌合し、2群案内キー165は固定筒案内キー溝173に嵌合している。それぞれの筒間の、直進案内は、カムフォロアによらず、それぞれの筒間において案内キーと案内キー溝とで行われる。また、各筒間の直進案内を周方向における同じ領域で行うこととしたが、適宜変更可能である。
【0035】
以上、第1実施形態によると、3群レンズ保持枠23の外面に設けられている3群カムフォロア231と、4群レンズ移動筒24Aの外面に設けられている4群カムフォロア241とは、1つの第4カム溝154に係合している。
したがって、それぞれのカム溝を独立して形成するより、カム筒15の光軸OA方向の長さを短縮することができる。また、それぞれのカム溝を独立して形成することにより、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241との光軸OA方向の距離を近づけることができるので、小型化が達成できるとともに、光学設計または鏡筒設計の自由度が向上する。
【0036】
実施形態によると、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241とは、光軸OA方向に対して同一直線上には配置されておらず、周方向にずれている。
したがって、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241は光軸OA方向における位置が、移動可能範囲の少なくとも一部で重複可能である。本実施形態では、図2におけるワイド状態で、3群カムフォロワ231の光軸OA方向における位置と4群カムフォロワ241の光軸OA方向における位置とは、一部が重複している。従って、3群レンズL3と4群レンズL4とを近づけて配置することができ、小型化が達成できる。ゆえに、3群レンズ保持枠23と、4群レンズ移動筒24Aとの相対距離を短くすることができ、全体としてレンズ鏡筒1の小型化が可能となる。
【0037】
板バネ247は、3群レンズ保持枠23の像側の面と当接し、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとの間の距離が広がるように付勢している。
したがって、3群カムフォロワ231をカム面154aに当てつけて付勢しかつ4群カムフォロワ241をカム面154bに当てつけて付勢して、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとの光軸OA方向のガタ取りが可能である。なお、本明細書において「ガタ」とは、2つの筒部材間での、製造上の誤差や、機械設計時に意図的に設けられた組立上必要なクリアランス等によって生じてしまう相対的な動きをいう。また、「ガタ取り」とは、この相対的な動きを除去することを意味する。
したがって、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとの姿勢変動を抑制できる。
【0038】
実施形態では、板バネ247によって、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとの間の距離が広がるように付勢した。板バネ247の形状は適宜変更可能であり、3つの板バネ247を連続して形成して一つのバネ部材としてもよい。板バネ247を3つ設けてそれぞれ固定することにより、圧縮バネ、引張りバネに対し、レンズ枠をシフト調整する際の抵抗力が低いので、調整精度がよくなる。
【0039】
また、板バネ247を円弧状にすることで、板長さを大きく確保することができ、バネ定数を下げ易くなる。ゆえに、狙いの付勢力量を狙いやすく、潰れた際の耐性確保にも寄与する。
また、4群レンズ移動筒24Aをバネ付勢することができるので、例えば、ステッピングモータ243によるレンズ駆動から発生する駆動振動を吸収できる効果も高く、静音化にも寄与する。
【0040】
なお、上述のように、4群案内キー246は3群案内キー溝233に嵌合し、3群案内キー232は2群案内キー溝166に嵌合し、2群案内キー165は固定筒案内キー溝173に嵌合している。それぞれの筒間の、直進案内は、カムフォロアによらず、それぞれの筒間において案内キーと案内キー溝とで行われるので、それぞれの筒間における直進精度が向上する。
【0041】
また、本実施形態においては、3群カムフォロワ231および4群カムフォロワ241は、径方向に向けて突出する円柱部材に対して回動可能なローラを取り付けて構成されている。3群カムフォロワ231および4群カムフォロワ241は、それぞれカム溝154の1つのカム面に対して押し付けられて位置決めされている。仮に、2群カムフォロワ161のようにカム溝の2つのカム面に当接してカムフォロワが位置決めされる場合、2つのカム面に対するガタを小さくするため、カム溝とカムフォロワとの個体差に応じてローラの大きさを調整する必要がある。本実施形態では、カム溝とカムフォロワの個体差の測定やローサの選定を行う必要がないという効果もある。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、板バネ247によって、3群レンズ保持枠23と4群レンズ移動筒24Aとの間の距離が広がるように付勢することにより、3群カムフォロア231を第4カム溝154の被写体側のカム面154aに当接させ、4群カムフォロア241を第4カム溝154の像側のカム面154bに当接させた。
【0043】
図9は第2実施形態における、第4カム溝154’と、直進溝172’とに係合する3群カムフォロア231’と4群カムフォロア241’とを示す図である。第2実施形態においては、板バネを設けず、3群カムフォロア231’と4群カムフォロア241’との間にねじり板バネ247’を配置する。
【0044】
ねじり板バネ247’は、3群カムフォロア231’の側面と、4群カムフォロア241’の側面とを押圧する。押圧する力F1,F2の方向は、直進溝172’の側面およびカム溝のカム面154a’,154b’の両方に対して傾いている方向である。
そうすると、3群カムフォロア231’を押圧する力F1はカム溝のカム面154a’を押圧する力f11と、直進溝172’の側面を押圧する力f12との分力となる。
4群カムフォロア241’を押圧する力F2はカム溝のカム面154b’を押圧する力f21と、直進溝172’の側面を押圧する力f22との分力となる。つまり、ねじり板バネバネ247’は、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241とを光軸OA方向に沿って離れる方向に付勢するとともに、3群カムフォロワ231と4群カムフォロワ241とを光軸OA回りの周方向に沿って離れる方向に付勢する。
【0045】
そうすると、3群カムフォロア231’と4群カムフォロア241’とは、直進溝172’の側面も押圧するので、3群レンズ保持枠および4群レンズ移動筒の、固定筒17に対する周方向のガタ取りも可能となる。
この場合、周方向のガタ取りが可能となるので、直進案内用のキー溝とキーとを別途設けることなく、直進性が確保できる。また、3群レンズ保持枠および4群レンズ移動筒の直進案内用の直進溝を1つの直進溝172’で兼用できるので、3群用および4群用にそれぞれ直進溝を設けるより構造の簡略化が可能である。
【0046】
以上、実施形態について説明したが、これに限定されない。
例えば、実施形態ではカム筒15の内径側の3群レンズ保持枠23と、4群レンズ移動筒24Aに、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241が設けられている構成としたが、これに限定されず、カム筒の外径側の筒にカムフォロアが設けられている構成であってもよい。
【0047】
実施形態では、3群カムフォロア231と4群カムフォロア241が設けられている3群レンズ保持枠23と、4群レンズ移動筒24Aが、それぞれ3群レンズL3および4群レンズL4を保持している場合について説明したが、これに限定されず、カムフォロアが設けられている筒部材は他の部材を保持していてもよく、またレンズを保持していない筒部材であってもよい。
【0048】
実施形態では直進案内を、直進キーと案内キー溝とで行う形態について説明したが、これに限定されず、直進案内を、カム溝とカムフォロアとで行ってもよい。
【0049】
実施形態では、3群レンズ保持枠23と、4群レンズ移動筒24Aと間の距離が離れるよう付勢する板バネ247を用いたが、これに限定されず、互いの距離が近づくように引っ張る、引張りバネであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:レンズ鏡筒、11:レンズ側マウント部、12:ズームリング、13:回転筒、14:第1レンズ群移動直進筒、15:カム筒、16:第2レンズ群移動直進筒、17:固定筒、21:1群レンズ保持枠、22:2群レンズ保持枠、23:3群レンズ保持枠、24:4群レンズ保持枠、24A:4群レンズ移動筒、25:5群レンズ保持枠、141:1群カムフォロア、151:第1カム溝、152:第2カム溝、153:第3カム溝、154:第4カム溝、154a:カム面、154b:カム面、161:2群カムフォロア、163:メインガイドバー、164:サブガイドバー、165:2群案内キー、166:2群案内キー溝、167:直進溝、171:ローラ、172:直進溝、173:固定筒案内キー溝、231:3群カムフォロア、232:3群案内キー、233:3群案内キー溝、240:U字型係合部、241:4群カムフォロア、242:嵌合部、243:ステッピングモータ、244:リードスクリュー、245:移動部、246:4群案内キー、247:板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9