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  • 特許-微粒子測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】微粒子測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20060101AFI20230426BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20230426BHJP
   G06M 11/00 20060101ALI20230426BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230426BHJP
   G01M 99/00 20110101ALN20230426BHJP
【FI】
G01N15/06 E
G01N15/06 B
G01N15/06 C
G01N15/02 A
G06M11/00 A
C02F1/00 V
G01M99/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021164867
(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公開番号】P2023055462
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-225302(JP,A)
【文献】国際公開第86/007147(WO,A1)
【文献】特開2010-236989(JP,A)
【文献】特開平10-063810(JP,A)
【文献】特開2008-241584(JP,A)
【文献】Rondang Tambun,Measurement and Estimation of the Particle Size Distribution by the Buoyancy WeighingBar Method and the RosinRammler Equation,JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN,2016年,Volume 49 Issue 2,Pages 229-233,https://doi.org/10.1252/jcej.14we129
【文献】車裕輝,液中粒子数濃度の測定技術と標準に関する調査研究,産総研計量標準報告,2020年02月,Vol. 10 No. 2,pp.179-205
【文献】飯田健次郎,液中粒子数濃度の計測および校正技術に関する調査研究,産総研計量標準報告,2011年03月,Vol. 8, No. 2,pp.213-243
【文献】Wu Zhou,Advances in Nanoparticle Sizing in Suspensions: Dynamic Light Scattering and Ultrasonic Attenuation Spectroscopy,KONA Powder and Particle Journal,2017年,Volume 34,Pages 168-182,https://doi.org/10.14356/kona.2017022
【文献】T. Vitez,PARTICLE SIZE DISTRIBUTION OF A WASTE SAND FROM A WASTE WATER TREATMENT PLANT WITH USE OF ROSINRAMMLER AND GATESGAUDINSCHUMANN MATHEMATICAL MODEL,ACTA UNIVERSITATIS AGRICULTURAE ET SILVICULTURAE MENDELIANAE BRUNENSIS,2011年,Volume LIX 25 Number 3,pp.197-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/06
G01N 15/02
G06M 11/00
C02F 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水製造装置からの超純水中の微粒子の3以上の粒径区分毎の微粒子数を微粒子計又は直接検鏡法により測定し、
測定データより粒径分布を表わす指数近似式及び累乗近似式を求め、
累乗近似のR 値が指数近似のR 値よりも大きい場合に前記超純水製造装置に異常があるものと判定する超純水製造装置の診断方法
【請求項2】
微粒子計が光散乱方式、CPC方式、又は超音波方式の微粒子計である、請求項1の超純水製造装置の診断方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水、超純水などの液中の微粒子数を測定するための方法に係り、特に粒径が著しく小さい微粒子数を測定するのに好適な微粒子測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水中の微粒子数を測定する方法として、特許文献1には、超純水をフィルタで濾過し、フィルタに付着した微粒子数を顕微鏡で計測するものが記載されている。
【0003】
超純水中の微粒子をオンラインで測定する装置として、レーザー散乱を応用した微粒子計が利用されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-63810号公報
【文献】特開2008-241584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に光散乱を用いた微粒子測定は、微粒子の粒径が小さくなるほど散乱強度が弱まる(粒径の6乗に反比例)原理を利用している。そのため、光散乱を用いた微粒子測定方法による微粒子粒径の下限値は、市販されている高純度超純水・薬液向け光散乱式オンラインモニタの場合、約20nmにとどまっている。一方、国際半導体技術ロードマップ(IRDS)では、2020年現在、最小3.5nmの微粒子管理を求めており、極微細な微粒子数を測定することができる方法が必要となってきている。
【0006】
本発明は、かかる従来法における欠点を改善し、液体中の小粒径の微粒子数値を予測することができる微粒子測定方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微粒子測定方法では、液中の微粒子の粒径区分毎の微粒子数を測定し、測定データより粒径分布を表わす近似式を求め、測定された微粒子の最小粒径区分よりも小さい微小粒径区分の粒径値を該近似式に代入して該微小粒径区分の微粒子数を予測する。
【0008】
本発明の一態様では、前記粒径区分の数が3以上である。
【0009】
本発明の一態様では、前記粒径区分毎の微粒子数を微粒子計により測定する。
【0010】
本発明の一態様では、微粒子計が光散乱方式、CPC方式、又は超音波方式の微粒子計である。
【0011】
本発明の一態様では、前記粒径区分毎の微粒子数を直接検鏡法により測定する。
【0012】
本発明の一態様では、前記近似式を指数近似又は累乗近似で求める。
【0013】
本発明の一態様では、前記液が超純水である。
【0014】
本発明の一態様では、かかる微粒子測定方法で予測された微粒子数に基づいて、超純水の水質又は超純水製造装置の診断を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、微粒子測定データの粒径区分値から粒度分布を求め、実測した粒径よりも微小な粒径側の微粒子数値を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の測定結果を示すグラフである。
図2】実施例1及び比較例1の測定結果を示すグラフである。
図3】実施例2,3の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の微粒子測定方法では、液中の微粒子の粒径区分毎の微粒子数を測定し、測定データより粒径分布を表わす近似式を求める。そして、測定された微粒子の最小粒径区分よりも小さい、(モニタリングしたい)粒径区分の粒径値を該近似式に代入して、該小粒径区分の微粒子数、すなわちモニタリングしたい粒径区分の微粒子数を予測する。
【0018】
本発明の微粒子測定方法が測定対象とする液は、純水又は超純水が好適である。
【0019】
モニタリングしたい微粒子の粒径は、微粒子計等で測定可能な最小微粒子径よりも小さいことが好ましい。
【0020】
本発明方法で使用する微粒子計としては、光散乱方式を用いているもの、CPC方式を用いているもの、超音波方式を用いているもの等のいずれでもよい。本発明で用いられる微粒子計の具体例については後述する。
【0021】
本発明の微粒子測定方法では、微粒子の粒径区分毎の微粒子数の実測に、直接検鏡法を用いてもよい。直接検鏡法は、超純水等をフィルタで濾過し、フィルタに付着した微粒子の粒径及び数を顕微鏡で計測する方法である。
【0022】
測定した微粒子数データは、予め設定した粒径区分と、各設定粒径区分の微粒子数とを含む。区分の数は多い方が好ましい。通常、粒径区分幅は3~100nm、特に10~50nmの範囲から選ばれた値、例えば約10nmが好ましい。
【0023】
本発明では、測定結果の解析に指数近似、累乗近似、対数近似又は線形近似を用いる。好ましくは指数近似又は累乗近似を用いる。なお、指数近似、累乗近似、対数近似及び線形近似のうち、近似性(R)が最も良好なものを用いるのが好ましい。
【0024】
得られた近似式に、予測しようとする微小微粒子径の区分の粒径を代入して該区分の微粒子数を予測することができる。
【0025】
例えば、超純水中の粒径40nm以上の微粒子数を粒径区分幅10nmで測定する場合には、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、110nm以上、120nm以上、130nm以上、140nm以上の各区分に属する微粒子数を実測する。この実測定値を指数近似又は累乗近似解析し、得られた近似式に粒径D(D<40)を外挿することにより粒径Dnm以上の微粒子数を予測することができる。
【0026】
本発明方法による微小微粒子数の解析結果に基づいて、超純水の水質や超純水製造装置の正常、異常を判断することも可能である。
【0027】
本発明で用いられる微粒子計としては、光散乱方式のものではスペクトリス社製のHslis M50e、 Ultra DI50、Ultra Chem 40、Ultra DI20、Chem20や、RION社製のKL-30AX、KL-30B、KL-30、KS-19F、KS-17B、KS-18F、KS-18FX、KS-16/KS16F、KS-41a、KS-41B、KS-42a/42F、KS-42B/42BF、KS-42C、KS-42D、XP-65、Light house社製のNanocount 25、Nanocount 30、Nanocount 50+などが挙げられる。
【0028】
ネブライザー+CPC+光散乱方式の微粒子計としては、Kanomax社製のScanning TPC model9010-03、Scanning TPC model9010などが挙げられる。
【0029】
超音波式の微粒子計としては、Uncopiers社製のPS10、PS20などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
前述の通り、粒径区分は多い方が好ましく、上記の各モニタの場合、設定できる最大個数とすることが望ましい。例えば、KL-30AXやKL30A、KS19Fは10個設定できるので、粒径区分を10個とすることが望ましい。UDI20の場合、最大4個の粒径区分を設定可能であるので、粒径区分を4個とすることが望ましい。
【実施例
【0031】
[実施例1]
微粒子モニタとして40nm以上を測定できるKL-30AX(RION社)を使用した。超純水システムからの超純水について、1時間にわたって粒径区分毎のデータ(モニタに表示される微粒子数値)を取得し、本データについて指数近似した。粒径区分は、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、110nm以上、130nm以上、150nm以上の10区分とした。その結果、図1に示す通り、近似式y=41.101e-0.028x,R=0.9969を得た。
【0032】
この近似式に粒径x=3(nm)を代入し、3nm以上の微粒子数を予測した。この測定、解析及び予測を連続的に行い、超純水中の微粒子モニタリングを実施した。3nm以上の微粒子数の予測値の経時変化を図2に示す。
【0033】
[比較例1]
実施例1において実測した、40nm以上の微粒子数(モニタに表示される数値)の経時変化を図2に示した。
【0034】
<考察(1)>
図2に示す通り、実施例1によると、粒径3nm以上の微粒子数データを連続的に予測することができた。計測3時間目では比較例1では大きな変動は見られなかったが、実施例1の予測値では微粒子数が大きく増加していることが分かり、微小微粒子数の変化をとらえることが可能であることが認められた。
【0035】
[実施例2]
実施例1において、同一の超純水システムからの超純水について別時刻において同様にして、1時間にわたって粒径区分(実施例1と同一)毎の微粒子数データを取得し、指数近似した。その結果、図3の通り、y=42.016e-0.027x,R=0.9965を得た。この式への3nm外挿値は39pcs/mLであった。
【0036】
[実施例3]
実施例2と同じ水質の超純水について、粒径10nm以上の微粒子を直接検鏡法で測定した。すなわち、粒径10nm以上の微粒子を捕捉できるフィルタで微粒子を捕捉し、SEMで粒径及び微粒子数を測定した。得られたデータに基づいて指数近似したところ、図3の通り、y=96.222e-0.024x,R=0.9674を得た。この式への3nm外挿値は90pcs/mLであった。
【0037】
<考察(2)>
図3の通り、粒径の測定原理が異なる実施例2,3のいずれにおいても指数近似が良くフィットすること、またRの相関性が良好であることが認められた。
【0038】
なお、実施例2,3のデータについて累乗近似、対数近似及び線形近似解析し、R値を表1に示した。表1の通り、この場合は指数近似のRが最大であり、指数近似が適切であることが認められた。
【0039】
【表1】
【0040】
[参考例1]
この超純水システムが異常な状態である時の超純水について実施例2,3と同様にして測定を行い、得られたデータに基づいて指数近似、累乗近似、対数近似及び線形近似解析した。各々のR値を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
<考察(3)>
水質が通常の場合は表1の通り指数近似が適切であるが、水質異常(装置異常)が起きた場合は表2の通り累乗近似が適切であることが認められた。累乗近似は小さい粒径がより多くなることを示している。累乗近似と指数近似が逆転し、累乗近似のRがフィットする場合に、微粒子管理にとって良くない状態(システム異常)を判断することができる。

図1
図2
図3