(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230427BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230427BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2019044859
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 忠義
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 周三
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-065133(JP,A)
【文献】特表2011-530833(JP,A)
【文献】特開平07-127625(JP,A)
【文献】特開2000-216136(JP,A)
【文献】特開2006-344766(JP,A)
【文献】特開2019-029384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス供給部を備えたベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記静電チャックは、
一方の面が吸着対象物の載置面である基体と、
前記基体を貫通する、内側面に雌ねじが切られた挿入孔と、を備え、
前記挿入孔内には、側面に雄ねじが切られたねじ込み部材が螺合され、
前記ねじ込み部材の前記ベースプレート側に、前記ねじ込み部材と接する第2のねじ込み部材が挿入され、
前記ねじ込み部材には、一端が前記載置面に開口し、他端が前記第2のねじ込み部材側に開口する、直径が0.1mm以下の貫通孔が形成され、
前記第2のねじ込み部材は、連通する複数の気孔を備えた多孔質体であり、
前記貫通孔及び前記連通する複数の気孔を介して、前記ガス供給部から前記載置面にガスが供給される基板固定装置。
【請求項2】
内部にガス供給部を備えたベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記静電チャックは、
一方の面が吸着対象物の載置面である基体と、
前記基体を貫通する挿入孔と、を備え、
前記ベースプレートは、内側面に雌ねじが切られた、前記挿入孔と連通する凹部を備え、
前記挿入孔内及び前記凹部内には、前記ベースプレート側の側面に雄ねじが切られたねじ込み部材が挿入されて、前記凹部と螺合され、
前記ねじ込み部材の前記ベースプレート側に、前記ねじ込み部材と接する第2のねじ込み部材が挿入され、
前記ねじ込み部材には、一端が前記載置面に開口し、他端が前記第2のねじ込み部材側に開口する、直径が0.1mm以下の貫通孔が形成され、
前記第2のねじ込み部材は、連通する複数の気孔を備えた多孔質体であり、
前記貫通孔及び前記連通する複数の気孔を介して、前記ガス供給部から前記載置面にガスが供給される基板固定装置。
【請求項3】
前記ねじ込み部材の前記載置面に露出する部分に、前記ねじ込み部材を回転させるための構造が設けられた請求項1
又は2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記ねじ込み部材は、酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムを含む請求項1乃至
3の何れか一項に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置等)やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。
【0003】
このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックにより、吸着対象物であるウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。基板固定装置の一例として、ウェハを冷却するためのガス供給部を設けた構造のものが挙げられる。ガス供給部は、例えば、ベースプレート内部のガス流路と、静電チャックに設けられたガス排出部(貫通孔)を介して、静電チャックの表面にガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板固定装置をプラズマエッチング装置に用いる場合、ウェハのエッチング処理中に静電チャックのガス供給部を伝わる異常放電が発生し、ウェハやプラズマエッチング装置自身を破壊する問題がある。
【0006】
異常放電対策として、ガス排出部の小径化が検討されているが、ガス排出部を小径化すると、エッチングの副生成物等によりガス排出部が容易に閉塞し、その除去も極めて困難であるため、メンテナンス性が悪く、実用的な対策とはなっていない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、メンテナンス性に優れた異常放電対策を講じた基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本基板固定装置は、内部にガス供給部を備えたベースプレートと、前記ベースプレート上に設けられた静電チャックと、を有し、前記静電チャックは、一方の面が吸着対象物の載置面である基体と、前記基体を貫通する、内側面に雌ねじが切られた挿入孔と、を備え、前記挿入孔内には、側面に雄ねじが切られたねじ込み部材が螺合され、前記ねじ込み部材の前記ベースプレート側に、前記ねじ込み部材と接する第2のねじ込み部材が挿入され、前記ねじ込み部材には、一端が前記載置面に開口し、他端が前記第2のねじ込み部材側に開口する、直径が0.1mm以下の貫通孔が形成され、前記第2のねじ込み部材は、連通する複数の気孔を備えた多孔質体であり、前記貫通孔及び前記連通する複数の気孔を介して、前記ガス供給部から前記載置面にガスが供給される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、メンテナンス性に優れた異常放電対策を講じた基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図4】
図3(b)のねじ込み部材近傍を更に拡大した断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図7】第5実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図8】第6実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図1(a)は全体図、
図1(b)は
図1(a)のA部の部分拡大図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電チャック30とを有している。
【0013】
ベースプレート10は、静電チャック30を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~40mm程度である。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用できる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック30上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0014】
ベースプレート10の内部には、ガス供給部11が設けられている。ガス供給部11は、ガス流路111と、ガス注入部112と、ガス排出部113とを備えている。
【0015】
ガス流路111は、例えば、ベースプレート10の内部に環状に形成された孔である。ガス注入部112は、一端がガス流路111に連通し、他端がベースプレート10の下面10bから外部に露出する孔であり、基板固定装置1の外部からガス流路111に不活性ガス(例えば、HeやAr等)を導入する。ガス排出部113は、一端がガス流路111に連通し、他端がベースプレート10の上面10aから外部に露出して接着層20を貫通する孔であり、ガス流路111に導入された不活性ガスを排出する。ガス排出部113は、平面視において、ベースプレート10の上面10aに点在している。ガス排出部113の個数は、必要に応じて適宜決定できるが、例えば、数10個~数100個程度である。
【0016】
なお、平面視とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0017】
ベースプレート10の内部には、冷却機構15が設けられている。冷却機構15は冷媒流路151と、冷媒導入部152と、冷媒排出部153とを備えている。冷媒流路151は、例えば、ベースプレート10の内部に環状に形成された孔である。冷媒導入部152は、一端が冷媒流路151に連通し、他端がベースプレート10の下面10bから外部に露出する孔であり、基板固定装置1の外部から冷媒流路151に冷媒(例えば、冷却水やガルデン等)を導入する。冷媒排出部153は、一端が冷媒流路151に連通し、他端がベースプレート10の下面10bから外部に露出する孔であり、冷媒流路151に導入された冷媒を排出する。
【0018】
冷却機構15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷媒制御装置(図示せず)に接続される。冷媒制御装置(図示せず)は、冷媒導入部152から冷媒流路151に冷媒を導入し、冷媒排出部153から冷媒を排出する。冷却機構15に冷媒を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック30上に吸着されたウェハを冷却できる。
【0019】
静電チャック30は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック30の平面形状は、例えば、円形である。静電チャック30の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチである。
【0020】
静電チャック30は、接着層20を介して、ベースプレート10の上面10aに設けられている。接着層20は、例えば、シリコーン系接着剤である。接着層20の厚さは、例えば、0.1~1.0mm程度である。接着層20は、ベースプレート10と静電チャック30を接着すると共に、セラミックス製の静電チャック30とアルミニウム製のベースプレート10との熱膨張率の差から生じるストレスを低減させる効果を有する。
【0021】
静電チャック30は、基体31と、静電電極32とを有している。基体31の上面は、吸着対象物の載置面31aである。静電チャック30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック30は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0022】
基体31は誘電体であり、基体31としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いる。基体31の厚さは、例えば、1~5mm程度、基体31の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度である。
【0023】
静電電極32は、薄膜電極であり、基体31に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック30の基体31の載置面31a上にウェハを吸着保持できる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いる。
【0024】
基体31の内部に、基板固定装置1の外部から電圧を印加することで発熱し、基体31の載置面31aが所定の温度となるように加熱する発熱体を設けてもよい。
【0025】
基体31の各ガス排出部113に対応する位置には、基体31を貫通してガス排出部113の他端を露出する挿入孔311が設けられている。挿入孔311の平面形状は、例えば、内径が2~5mm程度の円形である。挿入孔311は、例えば、ドリル加工やレーザ加工により形成できる。挿入孔311の内側面には雌ねじが切られており、ねじ込み部材60が脱挿入可能である。
【0026】
図2は、ねじ込み部材の形状を例示する図である。
図2(a)に示すように、ねじ込み部材60は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックスから形成された円柱状の部材であり、側面に雄ねじが切られている。基板固定装置1の使用時には、ねじ込み部材60が挿入孔311内に螺合されている。基板固定装置1のメンテナンス時には、ねじ込み部材60が挿入孔311から取り外される場合がある。なお、螺合とは、第1部材に形成された雄ねじと第2部材に形成された雌ねじとが互いに噛み合い、第1部材と第2部材とが結合された状態を指す。
【0027】
ねじ込み部材60には、一端が基体31の載置面31aに開口し、他端がガス供給部11のガス排出部113と連通する貫通孔601が形成されている。貫通孔601の平面形状は、例えば、円形である。ねじ込み部材60の直径φ1は、例えば、2~5mm程度である。貫通孔601の直径φ2は0.1mm以下であり、0.05mm程度であることが好ましい。
【0028】
挿入孔311内に螺合されたねじ込み部材60の貫通孔601は、ガス供給部11のガス排出部113と連通しているため、貫通孔601を介して、ガス供給部11から基体31の載置面31aにガスが供給される。ねじ込み部材60の上面60aは、例えば、基体31の載置面31aと面一である。
【0029】
例えば、
図2(b)に示すように、ねじ込み部材60の上面60aにはマイナス型の溝651が設けられている。溝651にマイナスドライバーを入れてねじ込み部材60を回転させることで、ねじ込み部材60を挿入孔311内に脱挿入できる。
【0030】
例えば、
図2(c)に示すように、ねじ込み部材60の上面60aにプラス型の溝652を設けてもよい。この場合には、溝652にプラスドライバー又はマイナスドライバーを入れてねじ込み部材60を回転させることで、ねじ込み部材60を挿入孔311内に脱挿入できる。
【0031】
例えば、
図2(d)に示すように、ねじ込み部材60の上面60aの外周部に、貫通孔601を挟んで対向する一対の切れ込み653を設けてもよい。この場合には、一対の切れ込み653に専用の回転用冶具を挿入してねじ込み部材60を回転させることで、ねじ込み部材60を挿入孔311内に脱挿入できる。
【0032】
なお、ねじ込み部材60の載置面31aに露出する部分に、ねじ込み部材60を回転させるための構造が設けられていれば、ねじ込み部材60を回転させるための構造は、
図2(b)~
図2(d)には限定されない。すなわち、ねじ込み部材60の載置面31aに露出する部分に、ねじ込み部材60を回転させるための任意の構造を設けて構わない。
【0033】
ねじ込み部材60を作製するには、まず、ねじ込み部材60の前駆体となるペーストを用意する。ペーストは、例えば、酸化アルミニウム粒子や窒化アルミニウム粒子を所定の重量比で含有する。
【0034】
次に、直径が0.1mm以下の線状部材を準備する。そして、ねじ込み部材60を成形するための円筒状の金型にペーストを入れて成形する。その際、線状部材をペーストの長手方向の中央部に通す。その後、成形したペーストを焼成し、線状部材を抜き取る。これにより、長手方向の中央部に0.1mm以下の貫通孔を有するマカロニ状の部材が形成される。この部材を所定の長さに切断し、側面に雄ねじを形成することで、ねじ込み部材60が完成する。
【0035】
発明者らの検討結果によれば、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する孔の直径が大きいとガス供給部11で異常放電が発生する場合がある。これに対して、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する部分の孔の直径を0.1mm以下とすることで、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制できる。
【0036】
基板固定装置1では、直径0.1mm以下の貫通孔601を有するねじ込み部材60が基体31に形成された挿入孔311内に螺合されている。すなわち、基体31の載置面31aに開口する部分の貫通孔601の直径が0.1mm以下であるため、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制できる。なお、必要に応じ、1つのねじ込み部材60に、直径0.1mm以下の貫通孔601を複数個設けてもよい。
【0037】
又、ねじ込み部材60は、脱挿入可能な状態で挿入孔311内に固定されている。そのため、例えば異物により貫通孔601が閉塞した場合等、ねじ込み部材60に問題が発生した場合に、ねじ込み部材60を取り外し、新品のねじ込み部材60と容易に交換できる。従来技術では、1つのガス排出部113に問題が発生すれば、静電チャック30全体が不良品となり大きなコスト上のロスが発生するが、基板固定装置1では、ねじ込み部材60が容易に交換できるため、コストやライフの面で大きなメリットがある。
【0038】
なお、基板固定装置1において、ねじ込み部材60を用いずに、基体31に直径が0.1mm以下の貫通孔601を直接形成することは理論的には可能である。しかし、現実問題としては、基体31に直径が0.1mm以下の貫通孔601を多数設けることは極めて困難であり、低歩留及び高コストの要因となる。又、基板固定装置1をドライエッチング装置等で使用する際に、エッチングの副生成物等により貫通孔601が閉塞した場合、その除去も極めて困難である。すなわち、基体31に直径が0.1mm以下の貫通孔601を直接形成することは、ガス供給部11で発生する異常放電の実用的な対策とはならない。直径0.1mm以下の貫通孔601を有するねじ込み部材60を、脱挿入可能な状態で挿入孔311内に固定することで、これらの問題を解決でき、メンテナンス性に優れた異常放電対策を講じた基板固定装置1を提供できる。
【0039】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、第1実施形態とは異なるねじ込み部材を有する基板固定装置を例示する。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0040】
図3は、第2実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図3(a)は全体図、
図3(b)は
図3(a)のB部の部分拡大図である。
図3を参照すると、基板固定装置2は、ねじ込み部材60がねじ込み部材61に置換された点が、基板固定装置1(
図1参照)と相違する。
【0041】
ねじ込み部材61の側面には雄ねじが切られており、内側面に雌ねじが切られた挿入孔311内に螺合されている。ねじ込み部材61の上面61aは、例えば、基体31の載置面31aと面一である。
【0042】
ねじ込み部材61の上面61aには、
図2(b)~
図2(d)の何れか、又は、ねじ込み部材61を回転させるための他の任意の構造が設けられている。そのため、ねじ込み部材61は、必要なときに挿入孔311内に脱挿入できる。
【0043】
ねじ込み部材61は、ねじ込み部材60とは異なり、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックスを主成分とする多孔質体から形成されている。ねじ込み部材61において、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックスは、例えば、80重量%~97重量%の範囲に設定される。ねじ込み部材61を構成する多孔質体はガスを通過させるため、ねじ込み部材61には、ねじ込み部材60の貫通孔601に相当する貫通孔は形成されていない。
【0044】
図4は、
図3(b)のねじ込み部材近傍を更に拡大した断面図である。
図4に示すように、多孔質体であるねじ込み部材61は、複数の球状酸化物セラミック粒子611と、複数の球状酸化物セラミック粒子611を結着して一体化する混合酸化物612を含んでいる。
【0045】
球状酸化物セラミック粒子611の直径は、例えば、30μm~1000μmの範囲である。球状酸化物セラミック粒子611の好適な一例としては、球状酸化アルミニウム粒子が挙げられる。又、球状酸化物セラミック粒子611は、80重量%以上(97重量%以下)の重量比でねじ込み部材61内に含有されていることが好ましい。
【0046】
混合酸化物612は、複数の球状酸化物セラミック粒子611の外面(球面)の一部に固着してそれらを支持している。混合酸化物612は、例えば、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、及びイットリウム(Y)から選択される2つ以上の酸化物から形成される。
【0047】
ねじ込み部材61の内部には気孔Pが形成されている。気孔Pは、ねじ込み部材61の下側から上側に向けてガスが通過できるように外部と連通している。ねじ込み部材61の中に形成される気孔Pの気孔率は、ねじ込み部材61の全体の体積の20%~50%の範囲であることが好ましい。気孔Pの内面には、球状酸化物セラミック粒子611の外面の一部と混合酸化物612とが露出している。
【0048】
ねじ込み部材61を作製するには、まず、ねじ込み部材61の前駆体となるペーストを用意する。ペーストは、例えば、球状酸化アルミニウム粒子を所定の重量比で含有する。ペーストの残部は、例えば、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム及びイットリウムの5成分を含む酸化物を含み、更に有機バインダや溶剤を含む。有機バインダとしては、例えば、ポリビニルブチラールを使用できる。溶剤としては、例えば、アルコールを使用できる。
【0049】
次に、ねじ込み部材61を成形するための円筒状の金型にペーストを入れて成形する。その後、成形したペーストを所定温度で焼成し、所定の長さに切断後、側面に雄ねじを形成することで、ねじ込み部材61が完成する。
【0050】
前述のように、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する孔の直径が大きいとガス供給部11で異常放電が発生する場合がある。
【0051】
基板固定装置2では、多孔質体であるねじ込み部材61が基体31に形成された挿入孔311内に螺合されている。ねじ込み部材61には貫通孔が形成されていなく、連通する複数の気孔Pを介して、ガス供給部11から基体31の載置面31aにガスが供給される。このように、基板固定装置2では、基体31の載置面31aに開口する貫通孔が存在しないため、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制できる。
【0052】
又、ねじ込み部材61は、脱挿入可能な状態で挿入孔311内に固定されている。そのため、例えば異物により気孔Pの一部が閉塞した場合等、ねじ込み部材61に問題が発生した場合に、ねじ込み部材61を取り外し、新品のねじ込み部材61と容易に交換できる。従来技術では、1つのガス排出部113に問題が発生すれば、静電チャック30全体が不良品となり大きなコスト上のロスが発生するが、基板固定装置2では、ねじ込み部材61が容易に交換できるため、コストやライフの面で大きなメリットがある。
【0053】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、第1及び第2実施形態とは異なるねじ込み部材を有する基板固定装置を例示する。なお、第3実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0054】
図5は、第3実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図5(a)は全体図、
図5(b)は
図5(a)のC部の部分拡大図である。
図5を参照すると、基板固定装置3は、ねじ込み部材60がねじ込み部材62に置換された点が、基板固定装置1(
図1参照)と相違する。
【0055】
基体31の各ガス排出部113に対応する位置には、基体31及び接着層20を貫通してガス排出部113の他端を露出する挿入孔312が設けられている。挿入孔312の平面形状は、例えば、内径が2~5mm程度の円形である。挿入孔312は、例えば、ドリル加工やレーザ加工により形成できる。挿入孔312の内側面には、雌ねじは形成されていない。
【0056】
ベースプレート10の上面10a側の各ガス排出部113に対応する位置には、開口側が挿入孔312と連通し、底面にガス排出部113の他端を露出する凹部101(ザグリ孔)が設けられている。凹部101の平面形状は、例えば、内径が2~5mm程度の円形である。凹部101は、例えば、ドリル加工やレーザ加工により形成できる。凹部101の内側面には、雌ねじが切られている。
【0057】
ねじ込み部材62は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックスから形成された部材である。ねじ込み部材62は、ねじ部621と、ねじ部621の長手方向の端部に連続に形成された円筒部622とを含む。ねじ込み部材62において、ねじ部621の側面には雄ねじが切られているが、円筒部622の側面には、ねじが切られていない。すなわち、ねじ込み部材62では、ベースプレート10側の側面に雄ねじが切られており、静電チャック30側の側面には雄ねじが切られていない。基板固定装置3の使用時には、ねじ込み部材62が連通する挿入孔312及び凹部101内に螺合されている。基板固定装置3のメンテナンス時には、ねじ込み部材62が連通する挿入孔312及び凹部101から取り外される場合がある。
【0058】
なお、ねじ部621は内側面に雌ねじが切られた凹部101内に螺合されるが、円筒部622は挿入孔312に挿入されるだけで固定はされない。円筒部622の側面と挿入孔312の内側面とは互いに接しているか、又は、両者の間に極僅かなクリアランスが設けられている。
【0059】
ねじ込み部材62には、一端が基体31の載置面31aに開口し、他端がガス供給部11のガス排出部113と連通する貫通孔602が形成されている。貫通孔602の平面形状は、例えば、円形である。ねじ込み部材62の直径は、例えば、2~5mm程度である。貫通孔602の直径は0.1mm以下であり、0.05mm程度であることが好ましい。
【0060】
連通する挿入孔312及び凹部101内に螺合されたねじ込み部材62の貫通孔602は、ガス供給部11のガス排出部113と連通しているため、貫通孔602を介して、ガス供給部11から基体31の載置面31aにガスが供給される。ねじ込み部材62の上面62aは、例えば、基体31の載置面31aと面一である。
【0061】
ねじ込み部材62の上面62aには、
図2(b)~
図2(d)の何れか、又は、ねじ込み部材62を回転させるための他の任意の構造が設けられている。そのため、ねじ込み部材62は、必要なときに連通する挿入孔312及び凹部101内に脱挿入できる。ねじ込み部材62の作製方法は、ねじ込み部材60の作製方法と同様である。
【0062】
前述のように、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する孔の直径が大きいとガス供給部11で異常放電が発生する場合がある。
【0063】
基板固定装置3では、直径0.1mm以下の貫通孔602を有するねじ込み部材62が挿入孔312及び凹部101内に螺合されている。すなわち、基体31の載置面31aに開口する部分の貫通孔602の直径が0.1mm以下であるため、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制できる。なお、必要に応じ、1つのねじ込み部材62に、直径0.1mm以下の貫通孔602を複数個設けてもよい。
【0064】
又、ねじ込み部材62は、脱挿入可能な状態で挿入孔312及び凹部101内に固定されている。そのため、例えば異物により貫通孔602が閉塞した場合等、ねじ込み部材62に問題が発生した場合に、ねじ込み部材62を取り外し、新品のねじ込み部材62と容易に交換できる。従来技術では、1つのガス排出部113に問題が発生すれば、静電チャック30全体が不良品となり大きなコスト上のロスが発生するが、基板固定装置3では、ねじ込み部材62が容易に交換できるため、コストやライフの面で大きなメリットがある。
【0065】
〈第4実施形態〉
第4実施形態では、第1~第3実施形態とは異なるねじ込み部材を有する基板固定装置を例示する。なお、第4実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0066】
図6は、第4実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図6(a)は全体図、
図6(b)は
図6(a)のD部の部分拡大図である。
図6を参照すると、基板固定装置4は、ねじ込み部材62がねじ込み部材63に置換された点が、基板固定装置3(
図5参照)と相違する。
【0067】
ねじ込み部材63は、ねじ部631と、ねじ部631の長手方向の端部に連続に形成された円筒部632とを含む。ねじ込み部材63において、ねじ部631の側面には雄ねじが切られているが、円筒部632の側面には、ねじが切られていない。すなわち、ねじ込み部材63では、ベースプレート10側の側面に雄ねじが切られており、静電チャック30側の側面には雄ねじが切られていない。基板固定装置4の使用時には、ねじ込み部材63が連通する挿入孔312及び凹部101内に螺合されている。基板固定装置4のメンテナンス時には、ねじ込み部材63が連通する挿入孔312及び凹部101から取り外される場合がある。
【0068】
なお、ねじ部631は内側面に雌ねじが切られた凹部101内に螺合されるが、円筒部632は挿入孔312に挿入されるだけで固定はされない。円筒部632の側面と挿入孔312の内側面とは互いに接しているか、又は、両者の間に極僅かなクリアランスが設けられている。ねじ込み部材63の上面63aは、例えば、基体31の載置面31aと面一である。
【0069】
ねじ込み部材63上面63aには、
図2(b)~
図2(d)の何れか、又は、ねじ込み部材63を回転させるための他の任意の構造が設けられている。そのため、ねじ込み部材63は、必要なときに連通する挿入孔312及び凹部101内に脱挿入できる。
【0070】
ねじ込み部材63は、ねじ込み部材61と同様に、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックスを主成分とする多孔質体(
図4参照)から形成されている。ねじ込み部材63を構成する多孔質体はガスを通過させるため、ねじ込み部材63には、ねじ込み部材62の貫通孔602に相当する貫通孔は形成されていない。ねじ込み部材63の作製方法は、ねじ込み部材61の作製方法と同様である。
【0071】
前述のように、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する孔の直径が大きいとガス供給部11で異常放電が発生する場合がある。
【0072】
基板固定装置4では、多孔質体であるねじ込み部材63が連通する挿入孔312及び凹部101内に螺合されている。ねじ込み部材63には貫通孔が形成されていなく、連通する複数の気孔Pを介して、ガス供給部11から基体31の載置面31aにガスが供給される。このように、基板固定装置4では、基体31の載置面31aに開口する貫通孔が存在しないため、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制できる。
【0073】
又、ねじ込み部材63は、脱挿入可能な状態で連通する挿入孔312及び凹部101内に固定されている。そのため、例えば異物により気孔Pの一部が閉塞した場合等、ねじ込み部材63に問題が発生した場合に、ねじ込み部材63を取り外し、新品のねじ込み部材63と容易に交換できる。従来技術では、1つのガス排出部113に問題が発生すれば、静電チャック30全体が不良品となり大きなコスト上のロスが発生するが、基板固定装置4では、ねじ込み部材63が容易に交換できるため、コストやライフの面で大きなメリットがある。
【0074】
〈第5実施形態〉
第5実施形態では、ねじ込み部材とは別に挿入部材を有する基板固定装置を例示する。なお、第5実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0075】
図7は、第5実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図7(a)は全体図、
図7(b)は
図7(a)のE部の部分拡大図である。
図7を参照すると、基板固定装置5は、凹部102内に挿入部材64が追加された点が、基板固定装置1(
図1参照)と相違する。
【0076】
ベースプレート10の上面10a側の各ガス排出部113に対応する位置及び接着層20には、開口側が挿入孔311と連通し、底面にガス排出部113の他端を露出する凹部102が設けられている。凹部102の平面形状は、例えば、内径が2~5mm程度の円形である。凹部102は、例えば、ドリル加工やレーザ加工により形成できる。凹部102の内側面には、ねじが切られていない。
【0077】
挿入部材64は、凹部102に挿入されているが固定はされていない。挿入部材64の側面と凹部102の内側面とは互いに接しているか、又は、両者の間に極僅かなクリアランスが設けられている。
【0078】
挿入部材64は、ねじ込み部材61と同様に、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックスを主成分とする多孔質体(
図4参照)から形成されている。挿入部材64を構成する多孔質体はガスを通過させるため、挿入部材64には、ねじ込み部材60の貫通孔601と連通する貫通孔は形成されていない。挿入部材64の作製方法は、ねじ込み部材61の作製方法と同様である。
【0079】
挿入部材64を凹部102に挿入後、ねじ込み部材60が挿入孔311内に螺合されるため、挿入部材64が凹部102から脱落することはない。
【0080】
前述のように、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する孔の直径が大きいとガス供給部11で異常放電が発生する場合がある。
【0081】
基板固定装置5では、基板固定装置1と同様に、直径0.1mm以下の貫通孔601を有するねじ込み部材60が基体31に形成された挿入孔311内に固定されている。そして、更に、ねじ込み部材60のベースプレート10の下面10b側に、ねじ込み部材60と接するように、多孔質体である挿入部材64が挿入されている。ねじ込み部材60の貫通孔601及び挿入部材64の連通する複数の気孔を介して、ガス供給部11から基体31の載置面31aにガスが供給される。これにより、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制する効果を、基板固定装置1よりも更に向上できる。基板固定装置5が奏する他の効果については、基板固定装置1と同様である。
【0082】
〈第6実施形態〉
第6実施形態では、ねじ込み部材とは別に挿入部材を有する基板固定装置を例示する。なお、第6実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0083】
図8は、第6実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図8(a)は全体図、
図8(b)は
図8(a)のF部の部分拡大図である。
図8を参照すると、基板固定装置6は、凹部103内に挿入部材64が追加された点が、基板固定装置3(
図5参照)と相違する。
【0084】
ベースプレート10の上面10a側の各ガス排出部113に対応する位置には、開口側が挿入孔312と連通し、底面にガス排出部113の他端を露出する凹部103が設けられている。凹部103の平面形状は、例えば、内径が2~5mm程度の円形である。凹部103は、例えば、ドリル加工やレーザ加工により形成できる。凹部103の内側面の接着層20側には、雌ねじが切られている。凹部103の内側面の底面側(凹部103の内側面の接着層20と反対側)には、ねじが切られていない。
【0085】
挿入部材64は、凹部103の底面側のねじが切られていない領域に挿入されているが、固定はされていない。挿入部材64の側面と凹部103の内側面の底面側とは互いに接しているか、又は、両者の間に極僅かなクリアランスが設けられている。
【0086】
挿入部材64を凹部103の底面側に挿入後、ねじ込み部材62が、連通する挿入孔312及び凹部103の接着層20側のねじが切られている領域内に、螺合されるため、挿入部材64が凹部103から脱落することはない。
【0087】
前述のように、ガス供給部11において、基体31の載置面31aに開口する孔の直径が大きいとガス供給部11で異常放電が発生する場合がある。
【0088】
基板固定装置6では、基板固定装置3と同様に、直径0.1mm以下の貫通孔602を有するねじ込み部材62が挿入孔312及び凹部103内に固定されている。そして、更に、ねじ込み部材62のベースプレート10の下面10b側に、ねじ込み部材62と接するように、多孔質体である挿入部材64が挿入されている。ねじ込み部材62の貫通孔602及び挿入部材64の連通する複数の気孔を介して、ガス供給部11から基体31の載置面31aにガスが供給される。これにより、ガス供給部11で発生する異常放電を抑制する効果を、基板固定装置3よりも更に向上できる。基板固定装置6が奏する他の効果については、基板固定装置3と同様である。
【0089】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0090】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示できる。
【符号の説明】
【0091】
1、2、3、4、5、6 基板固定装置
10 ベースプレート
10a、60a、61a、62a、63a 上面
10b 下面
11 ガス供給部
15 冷却機構
20 接着層
30 静電チャック
31 基体
31a 載置面
32 静電電極
60、61、62、63 ねじ込み部材
64 挿入部材
101、102、103 凹部
111 ガス流路
112 ガス注入部
113 ガス排出部
151 冷媒流路
152 冷媒導入部
153 冷媒排出部
311、312 挿入孔
601、602 貫通孔
611 球状酸化物セラミック粒子
612 混合酸化物
621、631 ねじ部
622、632 円筒部
651、652 溝