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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】自動分析装置及び分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230427BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/10 J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019220385
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021089232
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 孝伸
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-139506(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047481(WO,A1)
【文献】特開2010-256200(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を分注する分注ノズルと、
前記分注ノズルにより前記流体を分注するための圧力変動を発生させる圧力源と、
前記分注ノズルと前記圧力源とを接続する流路と、
前記分注ノズルが前記流体を分注する際の前記流路内の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサが測定した前記圧力の時系列データを記憶する記憶部と、
前記分注ノズル及び前記圧力源の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1の分節空気、第1の液体、第2の分節空気、第2の液体の順に前記分注ノズルに吸引するように、前記分注ノズル及び前記圧力源を制御し、
前記第1の液体の吸引量に基づいて、前記第1の分節空気の吸引量及び前記第2の分節空気の吸引量のうち少なくともいずれか一方を決定する自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記時系列データに基づいて前記第2の液体の分注時の異常を検知する判定部をさらに備える自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記第2の液体の吸引以前に前記分注ノズルに吸引される全ての流体の体積の総量が一定になるように、前記第1の分節空気の吸引量及び前記第2の分節空気の吸引量のうち少なくともいずれか一方を決定する自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記第2の液体の吸引以前に前記分注ノズルに吸引される全ての流体の体積の総量が一定になるように、前記第1の分節空気の吸引量を決定する自動分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記時系列データは、前記第2の液体の吸引時における圧力履歴を含み、
前記判定部は、
前記圧力履歴に基づいて判定指標を算出し、予め設定された判定閾値と前記判定指標とを比較することにより前記第2の液体の分注時の異常を検知する自動分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動分析装置において、
前記判定部は、
前記判定指標として、前記第2の液体を吸引する前の圧力値と前記第2の液体を吸引中の圧力値との差分を算出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記第2の分節空気の吸引量と、前記第2の液体の吸引量とが同一となるように、前記圧力源を制御する自動分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記時系列データに基づいて前記第2の液体の分注時の異常を検知する判定部をさらに備え、
前記判定部は、
前記第2の分節空気を吸引するときの圧力値と前記第2の液体を吸引するときの圧力値との差分を判定指標として算出して、予め設定された判定閾値と前記判定指標とを比較することにより、前記異常を検知する自動分析装置。
【請求項9】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記時系列データは、前記第2の液体の吸引時における圧力履歴を含み、
前記判定部は、
前記圧力履歴に基づいて判定指標を算出し、予め設定された判定閾値と前記判定指標とを比較することにより、前記異常を検知し、
前記判定閾値は、前記第1の液体の吸引量に基づいて変化する関数であり、
前記制御部から前記第1の液体の吸引量を取得して、取得した前記第1の液体の吸引量における前記判定閾値と前記判定指標とを比較する自動分析装置。
【請求項10】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記時系列データは、前記第2の液体の吸引時における圧力履歴を含み、
前記判定部は、
前記圧力履歴に基づいて判定指標を算出し、予め設定された判定閾値と前記判定指標とを比較することにより、前記異常を検知し、
前記判定閾値は、前記第1の液体の物性値に基づいて変化する関数であり、
前記制御部から前記第1の液体の物性値を取得して、取得した前記第1の液体の物性値における前記判定閾値と前記判定指標とを比較する自動分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記第1の液体及び前記第2の液体を交互に複数回前記分注ノズルに吸引するように、前記分注ノズル及び前記圧力源を制御する自動分析装置。
【請求項12】
流体を分注する分注ノズルと、
前記分注ノズルにより前記流体を分注するための圧力変動を発生させる圧力源と、
前記分注ノズルと前記圧力源とを接続する流路と、
前記分注ノズルが前記流体を分注する際の前記流路内の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサが測定した前記圧力の時系列データを記憶する記憶部と、
前記分注ノズル及び前記圧力源の駆動を制御する制御部と、
前記時系列データに基づいて、異常の検知対象となる流体の分注時における異常を検知する判定部と、を備え、
前記制御部は、
第1の分節空気、第1の液体、第2の分節空気、第2の液体の順に前記分注ノズルに吸引するように、前記分注ノズル及び前記圧力源を制御し、
前記判定部は、
前記第1の液体の吸引量又は物性値に基づいて設定される判定閾値を用いて、前記第2の液体の吸引時における前記異常を検知する自動分析装置。
【請求項13】
請求項12に記載の自動分析装置において、
前記時系列データは、前記第2の液体の吸引時における圧力履歴を含み、
前記判定部は、
前記圧力履歴に基づいて判定指標を算出し、予め設定された判定閾値と前記判定指標とを比較することにより、前記異常を検知し、
前記判定閾値は、前記第1の液体の吸引量又は物性値に基づいて変化する関数であり、
前記制御部から前記第1の液体の吸引量又は物性値を取得して、取得した前記第1の液体の吸引量又は物性値における前記判定閾値と前記判定指標とを比較する自動分析装置。
【請求項14】
自動分析装置を用いた流体の分注方法であって、
前記自動分析装置は、
前記流体を分注する分注ノズルと、
前記分注ノズルにより前記流体を分注するための圧力変動を発生させる圧力源と、
前記分注ノズル及び前記圧力源の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記分注方法は、
前記制御部が前記圧力源を駆動することにより、
前記分注ノズルに第1の分節空気を吸引することと、
前記第1の分節空気の吸引後、前記分注ノズルに第1の液体を吸引することと、
前記第1の液体の吸引後、前記分注ノズルに第2の分節空気を吸引することと、
前記第2の分節空気の吸引後、前記分注ノズルに第2の液体を吸引することと、
前記制御部により、前記第1の液体の吸引量に基づいて、前記第1の分節空気の吸引量及び前記第2の分節空気の吸引量のうち少なくともいずれか一方を決定することと、を含む分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置及び分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分析装置や免疫分析装置などの自動分析装置は、生体試料などの検体及び試薬を規定量吸引して反応容器内に吐出する分注機構と、検体と試薬との反応液についての分析を行う分析機構とを備えている。
【0003】
分注機構は、検体や試薬などの液体中に挿入されるプローブと、液体の吸引及び吐出のための圧力源となるシリンジと、プローブとシリンジの間を接続する流路とによって構成される。分注機構は、検体容器又は試薬容器内の液体にプローブを挿入し、シリンジを動作させて規定量の液体を吸引し、プローブを反応容器に移動し、吐出を行うことで、規定量の液体を分注する。なお、分注に際して、次の検査への成分の持ち越しを防ぐために、プローブの先端に使い捨てのチップを装着することもある。
【0004】
分析項目によっては、複数の試薬、若しくは試薬と検体の両方を同時にプローブ又はチップ(分注ノズル)内に保持して、反応容器に分注することがある。このように複数の液体を同時に分注ノズル内に保持する場合は、複数種類の液体を連続して吸引し、全ての液体を吸引した後に反応容器へ吐出することで分注する。複数種類の液体を同時に分注することによって、洗浄水の使用量の低減、チップの使用数の低減、分注の所要時間の短縮を実現できる。
【0005】
分注に際して、検体容器ハンドリングによって発生した気泡を吸引する、高粘度の検体や検体中のフィブリン等の繊維素により流路内が詰まる、といった異常が起こりうる。それ故、分注状態を正確に推定し、異常が発生したことを高確度に検知することによって、分析結果の確度を高めることができる。
【0006】
分注の異常検知を行う手法として、例えば特許文献1には、検体吐出時の圧力変動に対し、特定の時区間における圧力データの積分値や、吐出終了時に算出した平均圧力と正常に吐出した時に算出した平均圧力との差を指標とし、これらを予め設定された閾値と比較することで、分注の異常を検知する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、異常検知のための基準とする基準液体を分注するときの圧力と、所定液体を分注するときの圧力との比を使用して、所定液体を分注したときの異常を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3633631号公報
【文献】特開平11-258244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のように複数種類の液体を同時に分注する場合においては、分注異常の検知対象となる液体に先んじてノズル内に吸引されている他の液体の分注量や物性値の違いによって、異常検知の確度が低下する可能性がある。
【0010】
特許文献2についても特許文献1と同様に、異常の検知対象となる所定液体に先んじて分注ノズル内に吸引されている基準液体の分注量や物性値の違いによって、異常検知の確度が低下する可能性がある。また、基準液体を保持する部分を必要とするため、装置の小型化が難しい。
【0011】
そこで、本開示は、複数の液体を同時に分注する場合に、異常検知の対象となる液体の前に吸引される液体の分注量や物性値によらず、異常検知の対象となる液体の分注時における異常を高確度に検知可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本開示の自動分析装置は、流体を分注する分注ノズルと、前記分注ノズルにより前記流体を分注するための圧力変動を発生させる圧力源と、前記分注ノズルと前記圧力源とを接続する流路と、前記分注ノズルが前記流体を分注する際の前記流路内の圧力を測定する圧力センサと、前記圧力センサが測定した前記圧力の時系列データを記憶する記憶部と、前記分注ノズル及び前記圧力源の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、第1の分節空気、第1の液体、第2の分節空気、第2の液体の順に前記分注ノズルに吸引するように、前記分注ノズル及び前記圧力源を制御し、前記第1の液体の吸引量に基づいて、前記第1の分節空気の吸引量及び前記第2の分節空気の吸引量のうち少なくともいずれか一方を決定することを特徴とする。
【0013】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本開示の自動分析装置によれば、異常検知の対象となる液体の分注時における異常を高確度に検知することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る自動分析装置の分注機構を示す概略構成図である。
図2】第1の実施形態に係る分注方法を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る異常の有無の判定方法を示すフローチャートである。
図4図2の分注動作におけるプローブ及びチップ内の流体の状態を示す概略図である。
図5図2の分注動作における試薬及び分節空気の吸引量の算出方法を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態における判定指標と試薬の分注量との関係を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る自動分析装置の分注機構を示す概略構成図である。
図8】第2の実施形態に係る分注方法を示すフローチャートである。
図9図8の分注動作におけるプローブ内の流体の状態を示す概略図である。
図10】第3の実施形態に係る異常の有無の判定方法を示すフローチャートである。
図11】第3の実施形態における判定指標と試薬の分注量との関係及び判定閾値を示す図である。
図12】第4の実施形態に係る自動分析装置の分注機構を示す概略構成図である。
図13】第4の実施形態に係る異常の有無の判定方法を示すフローチャートである。
図14】第4の実施形態における判定指標と試薬の粘度との関係及び判定閾値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
<自動分析装置の分注機構の構成>
第1の実施形態に係る自動分析装置の分注機構においては、プローブの先端に着脱可能なチップが取り付けられる形態を採用することとする。本実施形態の分注機構は、チップ内に試薬及び検体を順に吸引して同時に反応容器に分注し、このように予めチップ内に試薬を吸引し保持した状態で検体を吸引する際における、気泡の吸引(以下、「空吸い」という)又は詰まりを検知する。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の分注機構100を示す概略構成図である。図1に示すように、分注機構100は、チップ101、プローブ102、流路103、シリンジ104、シリンジ駆動部106、プローブ駆動部107、制御部108、給水ポンプ109、洗浄水105を収容する給水タンク110、電磁弁111、分析項目に応じた試薬113(第1の液体)を収容する試薬容器112、検体115(第2の液体)を収容する検体容器114、反応容器116、圧力センサ117、分岐ブロック118、信号増幅器119、A/D変換器120、判定部121、表示部125、チップ廃棄部126を備える。
【0018】
チップ101(分注ノズル)は、プローブ102の先端に対して着脱可能である。プローブ102にはモータやアクチュエータ(不図示)などのプローブ駆動部107が接続されており、これによりプローブ102を水平方向及び垂直方向に移動させ、所定の位置に移動させることができる。チップ101は、例えばチップラック(不図示)に保持されており、プローブ駆動部107がチップラックの上方にプローブ102を移動させ下降させることによりプローブ102にチップ101を装着することができる。なおチップ101は、チップ101を一時的に保持するチップバッファにおいてプローブ102に取り付けられてもよい。
【0019】
プローブ102は流路103を介してシリンジ104に接続され、これらの内部は洗浄水105で充填されている。シリンジ104は、シリンダ104a及びプランジャ104bを有し、プランジャ104bにはシリンジ駆動部106が接続されている。シリンジ駆動部106は、プランジャ104bをシリンダ104aに対して上下方向に駆動させ、これによりプローブ102に接続されたチップ101での流体(液体及び気体)の吸引及び吐出を行う。
【0020】
シリンジ104は、給水タンク110と通ずる流路を有し、該流路には電磁弁111及び給水ポンプ109が設けられている。給水タンク110には洗浄水105が収容されており、給水ポンプ109の駆動により洗浄水105をプローブ102から吐出することで、プローブ102の内部を洗浄できる。プローブ102の洗浄は、例えば試薬113及び検体115の分注前に行われる。
【0021】
図示は省略しているが、自動分析装置は、試薬容器112を保持する試薬庫、検体容器114を保持する検体容器ラック、反応容器116を保持する反応ディスクを有する。試薬容器112、検体容器114及び反応容器116の保持手段は上記のものに限定されない。反応容器116には、チップ101に吸引された試薬113及び検体115が分注される。
【0022】
チップ廃棄部126には、反応容器116への試薬113及び検体115の分注が完了したチップ101が廃棄される。
【0023】
制御部108は、シリンジ駆動部106、プローブ駆動部107、給水ポンプ109及び電磁弁111の動作を制御する。制御部108は、分注機構100の各構成要素のみならず、自動分析装置全体の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0024】
圧力センサ117は、流路103の途中に設けられた分岐ブロック118に接続され、流路103内の圧力を測定する。圧力センサ117は、圧力の検出信号を信号増幅器119に出力する。圧力センサ117の位置は、図1に示すようにシリンジ104側であってもよいが、可能な限りプローブ102に近い位置に圧力センサ117を接続することにより、チップ101の開口部の圧力変動を感度良く測定することができる。
【0025】
信号増幅器119は、圧力センサ117の検出信号を増幅し、増幅信号をA/D変換器120に出力する。A/D変換器120は、増幅信号をデジタル信号に変換し、圧力値として判定部121に出力する。
【0026】
判定部121は、分注機構100の分注動作時における異常の有無を判定するための回路である。判定部121は、A/D変換器120からの圧力値の入力を受け付けるサンプリング部122と、サンプリング部122に入力された圧力値などのデータを記憶する記憶部123と、記憶部123に記憶されたデータについての処理を実行する計算部124と、を有する。
【0027】
判定部121は、制御部108と通信可能に構成されており、計算部124におけるデータ処理の結果から、オペレーションの中止動作が必要であると判断される場合には、制御部108に動作の内容を送信する。
【0028】
判定部121は、専用の回路基板として自動分析装置内のハードウェアとして構成されていてもよいし、プロセッサが記憶部123に記録されたプログラムを読み込んで実行することで判定部121として機能してもよい。さらには、無線又は有線で自動分析装置と通信可能に接続されたサーバ内のプロセッサがプログラムを読み込んで実行し、判定部121として機能してもよい。
【0029】
表示部125は、制御部108及び判定部121に接続され、判定部121におけるデータ処理の結果や、当該結果に関する情報などを表示する。
【0030】
<分注方法>
図2は、第1の実施形態に係る分注方法を示すフローチャートである。本実施形態の分注方法は、実際には図1に示した制御部108が分注機構100の各構成要素(シリンジ駆動部106、プローブ駆動部107、給水ポンプ109及び電磁弁111等)の動作を制御することにより実施されるが、以下においては分注機構100の各構成要素を動作の主体として説明する場合がある。
【0031】
ステップS201において、制御部108は、電磁弁111を開状態とし、給水ポンプ109を駆動して、給水タンク110内の洗浄水105をプローブ102から吐出する。これにより、プローブ102の内部を洗浄する。
【0032】
ステップS202において、シリンジ駆動部106は、シリンジ104を駆動してプローブ102内に第1の分節空気を吸引する。これは、プローブ102内に充填されている洗浄水105と、次のステップで吸引する試薬113とが混ざり合わないようにするためである。
【0033】
ステップS203において、プローブ駆動部107は、プローブ102をチップラック又はチップバッファの上方に移動させ、その後下降させることにより、プローブ102の先端にチップ101を装着する。
【0034】
ステップS204において、プローブ駆動部107は、プローブ102を試薬容器112の上方に移動させ、チップ101の先端が試薬113に浸漬されるまで下降させる。
【0035】
ステップS205において、シリンジ駆動部106は、シリンジ104を駆動して試薬113をチップ101内に吸引する。
【0036】
ステップS206において、プローブ駆動部107は、チップ101の先端が試薬113から出るまでプローブ102を上昇させる。その後、シリンジ駆動部106は、シリンジ104を駆動してチップ101内に第2の分節空気を吸引する。これは、先にチップ101に吸引した試薬113と、次のステップで吸引する液体とが混ざり合わないようにするためである。
【0037】
本実施形態においては、1種類の試薬113のみを吸引することとするが、分析項目によっては複数の試薬を分注する場合もある。複数の試薬を分注する場合はステップS204~S206を必要な回数繰り返し、分注すべき全ての試薬と、それらを隔てる第2の分節空気とをチップ101内に吸引する。
【0038】
ステップS207において、プローブ駆動部107は、プローブ102を検体容器114の上方に移動させ、チップ101の先端が検体115に浸漬されるまで下降させる。
【0039】
ステップS208において、シリンジ駆動部106は、シリンジ104を駆動して検体115をチップ101内に吸引する。ここで、判定部121のサンプリング部122は、検体115の吸引動作中の圧力値の入力を受け付け、検体115の吸引動作中の圧力値を時系列データ(以下、「圧力履歴」という場合がある)として記憶部123に記憶する。
【0040】
ステップS209において、プローブ駆動部107は、チップ101の先端が検体115から出るまでプローブ102を上昇させ、反応容器116の内部にチップ101の先端が位置するように、プローブ102を移動させる。
【0041】
ステップS210において、シリンジ駆動部106は、シリンジ104を駆動してチップ101内に保持されている試薬113及び検体115を反応容器116内に吐出する。このとき、複数の試薬を吸引している場合には、チップ101内に吸引されている全ての試薬が同時に反応容器116内に吐出される。
【0042】
ステップS211において、プローブ駆動部107は、プローブ102をチップ廃棄部126まで移動させ、チップ廃棄部126内にチップ101を廃棄することによりプローブ102から取り外す。
【0043】
ステップS212において、判定部121の計算部124は、記憶部123に記憶された検体吸引時の圧力履歴に基づいて、検体115の吸引時に詰まりや空吸いなどの異常があったか否かを判定する(異常を検知する)。なお、検体115の吸引時に空吸いや詰まりなどの異常が生じた場合の圧力履歴は、正常な分注が行われた場合の圧力履歴とは異なる。したがって、圧力履歴を参照することにより、異常の有無を判定することができる。圧力履歴を用いた異常の有無の判定方法については、後述する。
【0044】
本ステップにおいて、判定部121は、異常の有無の判定結果を表示部125及び制御部108に送信する。また、表示部125は判定結果を表示する。
【0045】
ステップS212において異常がないと判定された場合(No)は、ステップS213に移行する。ステップS213において、制御部108は、判定部121から受信した判定結果に基づいて、正常に分注が終了したと判断し、分注動作を終了する。制御部108は、分析項目に応じてステップS201~S213を繰り返してもよい。
【0046】
ステップS212において異常があると判定された場合(Yes)は、ステップS214に移行する。ステップS214において、制御部108は、判定部121から受信した判定結果に基づいて、検体115の吸引時に異常があったと判断する。このとき、表示部125にアラートを表示させ、該当する検体115の分注動作を終了する。また、ユーザーに検体115を返却する。このように、異常があった検体115の分注を中止することによって、以降の分析に使用する試薬の消費を低減できる。
【0047】
なお、ステップS212~S214とステップS209~S211との順序を入れ替えてもよい。この場合、ステップS208の後にステップS212が実行されることになる。ステップS212において異常ありと判定され、ステップS214に移行した際は、制御部108は、ステップS209に移行せずに分注動作を終了する。これにより、異常があった検体115を反応容器116に吐出しないで済むため、反応容器116の消費又は洗浄の手間を削減できる。
【0048】
<異常の有無の判定方法>
図3は、図2のステップS212における判定部121による異常の有無の判定方法を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS301において、計算部124は、記憶部123に記憶された検体吸引時の圧力履歴を読み出す。本明細書において「検体吸引時の圧力履歴」とは、ステップS208において検体115を吸引する際のシリンジ104の動作時間(吸引動作時間)を含む所定の時間範囲における圧力値を指す。
【0050】
ステップS302において、計算部124は、検体吸引時の圧力履歴に基づいて、異常の有無の判定に使用する判定指標を算出する。「判定指標」とは、例えば、検体115の吸引動作中の圧力値の平均、検体115の吸引動作前又は後の圧力値の平均、圧力値の最大値又は最小値、圧力履歴の圧力脈動周期又は振幅、予め設定された基準となる圧力履歴と本ステップで取得した圧力履歴とのユークリッド距離といった統計距離などが挙げられる。「基準となる圧力履歴」とは、例えば、過去に多数取得された圧力値をもとに設定されるものであり、正常に検体が吸引されたと判断された際の圧力値であってもよいし、検体吸引時に異常があったと判断された際の圧力値であってもよい。この基準となる圧力履歴との類似度又は非類似度を判定指標とすることもできる。また、上記した指標を複数組み合わせて、判定指標として用いてもよい。
【0051】
本実施形態においては、判定指標として、検体115の吸引動作中の圧力値の平均と、吸引動作前の圧力値の平均との差分を算出し、これを用いて正常な分注であったか空吸いであったかを判定することとする。空吸いの原因としては検体容器114のハンドリングによって意図せず発生した気泡による液面の誤検知などが考えられる。なお、気泡は、血液の検体115が搬送される途中で振られるなどした場合に発生する。
【0052】
ステップS303において、計算部124は、判定指標に基づいて、検体115の吸引時における異常の有無を判定する。異常の有無の判定方法としては、例えば、判定指標と所定の判定閾値とを比較する方法、複数の判定指標の組み合わせがある条件を満たした場合に異常と判定する方法などが挙げられる。本実施形態においては、判定指標と一定の判定閾値とを比較して異常の有無を判定するというアルゴリズムを使用することとする。異常の有無の判定に用いられる判定閾値は、予め記憶部123に記憶されている。
【0053】
検体115の吸引時における異常の検知を高い確度で行うために、本発明者らは鋭意検討した結果、検体115(第2の液体)の吸引に先立って吸引される試薬113(第1の液体)の分注量(体積)が上記の圧力履歴に与える影響を小さくすることが効果的であることを見出した。
【0054】
試薬113の分注量は分析項目によって異なる。管路内の流動の摩擦による圧力損失を表す物理式の一例として、以下のハーゲン・ポアズイユの式(1)が挙げられる。
loss=128μLQ/(πd)・・・(1)
ここでPlossは圧力損失、μは流体の粘度、Lは流体が管路を占める長さ、πは円周率、dは管路直径、Qは管路内の流量を表す。
【0055】
管路内に複数種類の流体が存在する場合、この圧力損失Plossは流体成分ごとに計算される。試薬113の分注量が異なると、流体がチップ101やプローブ102の管路を占める長さLが変化する。このことにより、圧力損失Plossが変化し、異常の有無の判定に使用する圧力履歴に影響を与える。また圧力履歴は、管路内の流体成分の境界による圧力波の反射があるために、試薬113の分注量の違いにより生じる管路内の流体配置の差異の影響も受ける。したがって、試薬113の分注量が圧力履歴に与える影響を小さくすることによって高確度な異常検知が可能となる。そこで、以下においては、試薬113の分注量の違いによる圧力履歴への影響を低減するための分注動作について説明する。
【0056】
図4は、図2に示した分注動作におけるプローブ102及びチップ101内の流体の状態を示す概略図である。図4(a)は、ステップS201において洗浄水105によりプローブ102内を洗浄した直後の状態を示している。図4(a)に示すように、プローブ102の内部は洗浄水105により満たされている。
【0057】
図4(b)は、ステップS202において第1の分節空気401を吸引し、ステップS203においてチップ101を装着した後の状態を示している。
【0058】
図4(c)は、ステップS205において試薬113を吸引した後の状態を示している。試薬113は、チップ101の先端に位置している。
【0059】
図4(d)は、ステップS206において第2の分節空気402を吸引した状態を示している。すなわち、検体115を吸引する前の状態が示されている。第2の分節空気402はチップ101の先端に位置し、その上部に試薬113が位置している。なお、図4(d)においては1種類の試薬113と検体115のみを吸引した際の状態を示しているが、複数の試薬を分注する場合は、試薬113及び第2の分節空気402が吸引した試薬の数だけ交互に配置される。
【0060】
図4(e)は、ステップS208において検体115を吸引した状態を示している。検体115はチップ101の先端に位置し、その上部に第2の分節空気402が位置し、第2の分節空気402上に試薬113が位置している。
【0061】
上述のように、検体115の吸引時の圧力履歴を用いて異常の有無が判断される。検体115を吸引する前の状態(図4(d))において、洗浄水105と第1の分節空気401との境界403の位置は、試薬113の分注量(体積)によって変化する。この境界403の位置を一定とすることによって、試薬113の分注量が検体115の吸引時の圧力履歴に与える影響を低減することが可能となる。
【0062】
洗浄水105と第1の分節空気401の境界403の位置は、ステップS202で吸引する第1の分節空気401の量と、ステップS205で吸引する試薬113の量と、ステップS206で吸引する第2の分節空気402の量の総和(流体の体積の総和)によって変化する。したがって、検体115の吸引前に吸引される流体の体積の総和を一定とするようにシリンジ104の動作を制御することで、境界403の位置を一定とすることができる。なお、境界403の位置が「一定」であるとは、必ずしもすべての分析の分注動作において正確に同じ位置に境界403が位置することを意味するのではない。用いる装置やプローブ、チップに応じて、上記総和に例えば±10μL分のばらつきがあってもよい。流体の体積の総和が一定であっても、プローブやチップの内径に応じて洗浄水105と第1の分節空気401との境界403の位置が変わることは言うまでもない。
【0063】
図5は、図2の分注動作における試薬113、第1の分節空気401及び第2の分節空気402の吸引量の算出方法を示すフローチャートである。本方法は、例えば図2に示した分注動作の開始前に制御部108により実行され、算出された吸引量に基づいて試薬や分節空気の吸引動作が実行される。また、本方法の実行前に、予め制御部108の記憶部には、試薬113、第1の分節空気401及び第2の分節空気402の体積の総和が記憶されている。これら流体の体積の総和は、分析項目によらず同じ値とすることができる。
【0064】
ステップS501において、制御部108は、ステップS205において吸引する試薬113の量と、ステップS206において吸引する第2の分節空気402の量を算出する。試薬113の吸引量は、分析項目や試薬の種類に応じて設定することができる。なお、ステップS204~S206を繰り返して複数種類の試薬を同一チップ内に吸引する場合は、制御部108は、ステップS205で吸引される試薬の量の総和と、ステップS206で吸引される第2の分節空気の量の総和とをそれぞれ算出する。
【0065】
ステップS502において、制御部108は、ステップS501で算出した試薬113の量と分節空気量とに基づいて、ステップS202において吸引すべき第1の分節空気401の量を算出する。このとき、第1の分節空気401の量、試薬113の量及び第2の分節空気402の量の総和が一定となるように、第1の分節空気401の量を算出する。制御部108は、算出された各吸引量に基づいてシリンジ104の動作量を決定し、シリンジ駆動部106に指示を出す。
【0066】
チップ101が、チップ101からプローブ102に試薬113が流入しないような十分な体積を有する場合には、以上のような第1の分節空気401の量の調整によって、検体115の吸引前におけるプローブ102内部の流体の配置(洗浄水105と第1の分節空気401との境界403の位置)を一定とすることができる。プローブ102内部の流体の配置を一定とすることによって、試薬113の分注量の違いが検体吸引時の圧力履歴に与える影響を低減することが可能となる。
【0067】
上述のように、本実施形態においては、ステップS205において吸引する試薬113の量と、ステップS206において吸引する第2の分節空気402の量をまず算出し、その後ステップS201で吸引すべき第1の分節空気401の量を調整するという構成を採用している。この代わりに、第1の分節空気401の量と試薬113の量をまず算出し、その後第2の分節空気402の量を調整するようにしてもよい。
【0068】
また、第1の分節空気401の量、試薬113の量及び第2の分節空気402の量の総和について、複数の基準値(総和が20μL、50μL及び100μLなど)が予め記憶部123に記憶されていてもよく、分析項目によって用いる試薬113の量が大きく異なる場合に、どの基準値を用いるか決定するようにしてもよい。例えば、用いられる試薬113の量が20μLであれば上記総和が50μLとなるように設定し、用いられる試薬113の量が50μLであれば、上記総和が100μLとなるように設定することができる。これにより、試薬113の量が少ないにもかかわらず分節空気401及び402の吸引量が大きくなることがない。したがって、シリンジ104の駆動量の増大が防止され、シリンジ104の寿命を向上できる。
【0069】
本実施形態による異常検知の確度の向上効果について説明する。図6(a)は、第1の分節空気401の量を調整せず一定とした場合(図5の処理を実行しなかった場合)における、判定指標(例えば、圧力値の平均)と試薬113の分注量との関係を示している。○のプロットは、正常に検体115が分注された場合の判定指標を示す(正常分注群601)。また、×のプロットは、検体115の吸引時に空吸いが生じた場合の判定指標を示す(空吸い群602)。図6(a)に示すように、正常分注群601の判定指標と、空吸い群602の判定指標は、試薬113の分注量によって大きく変化する。したがって、算出した判定指標を一定の判定閾値と比較することによっては、空吸いが生じたかどうかを判断することが困難である。
【0070】
これに対し、図6(b)は、図5の方法により第1の分節空気401の量(流体の体積の総量)を調整した場合における、判定指標(例えば、圧力値の平均)と試薬113の分注量との関係を示している。○のプロットは、正常に検体115が分注された場合の判定指標を示す(正常分注群603)。また、×のプロットは、検体115の吸引時に空吸いが生じた場合の判定指標を示す(空吸い群604)。図6(b)に示すように、第1の分節空気401の量を調整することによって、正常分注群601の判定指標と、空吸い群602の判定指標は、試薬113の分注量に関係なくそれぞれほぼ一定の値となる。したがって、一定の判定閾値605を予め設定しておき、算出した判定指標と判定閾値605とを比較することによって、空吸いが生じたかどうかを判断することができる。
【0071】
以上、検体115の吸引時に空吸いが生じたかどうかを検知する例について説明したが、詰まりが生じたかどうかの判定についても同様に、本実施形態の方法を適用することができる。すなわち、試薬113の分注量に関係なく、算出した判定指標と一定の値の判定閾値との比較により、吸引時に詰まりが生じたかどうかを判定することができる。
【0072】
<技術的効果>
以上のように、本実施形態の自動分析装置は、検体の吸引前に吸引する流体(分節空気及び試薬)の体積の総量が一定となるように分注動作を行い、プローブ内に存在する洗浄液と分節空気との境界位置を一定とする。これにより、試薬の分注量の違いが検体吸引時の圧力履歴に与える影響を低減することができる。より詳細には、正常な分注での圧力履歴から算出される判定指標と、異常がある分注での圧力履歴から算出される判定指標とを、それぞれ試薬の分注量によらずほぼ一定とすることができる。したがって、試薬の分注量によらず、すなわち分析項目によらず一定の値の判定閾値を設定することができるので、高確度に異常の有無を検知することができる。
【0073】
また、異常を高確度に検知できるため、自動分析装置の分析結果の信頼性も向上できる。さらに、異常を検知した際は分注動作を終了するため、試薬のロスも低減できる。
【0074】
<第1の実施形態の変形例>
以上、検体115の吸引時における空吸い及び詰まりといった異常検知の方法について説明したが、本実施形態の方法は検体115の分注量推定や粘度推定にもそのまま適用可能である。
【0075】
また、本実施形態においては検体115を分注異常の検知対象の液体としたが、試薬113の吸引時における異常検知、分注量推定や粘度推定に本実施形態の方法を適用してもよい。この場合は、上記における「検体115」を「試薬113」と読み替えればよい。
【0076】
本実施形態においては、図5を参照して説明したように、ステップS202で吸引する第1の分節空気401の量と、ステップS205で吸引する試薬113の量と、ステップS206で吸引する第2の分節空気402の量と、の総和が一定になるように、ステップS202で吸引する第1の分節空気401の量を調整した。これは、洗浄水105と第1の分節空気401の境界403の位置をプローブに対して一定とすることで、試薬113の分注量が検体115の吸引時の圧力履歴に与える影響を低減することを目的としたためである。
【0077】
このように検体115の吸引前に吸引される流体の総和を一定とする代わりに、自動分析装置の分注機構の構成や構造に応じて、ステップS202で吸引する第1の分節空気401の量を、ステップS205で吸引する試薬113の量とステップS206で吸引する第2の分節空気402の量に依存した関数により算出してもよい。また、この関数は分析項目ごとに決定してもよい。
【0078】
また、本実施形態では試薬113の分注量に応じて分節空気の量を調整したが、検体115吸引時における、シリンジ104の流量や、検体115へチップ101を浸漬する深さなどの動作を調整するという構成を採用してもよい。
【0079】
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、プローブの先端に使い捨て可能なチップを装着し、チップ内に試薬及び検体を吸引する分注機構(図1)について説明した。しかし、分注機構の構成は図1に示したものに限定されない。そこで、第2の実施形態においては、他の分注機構の構成として、チップを使用せずプローブ内に試薬及び検体を直接吸引する例を提案する。このように分注機構の構成が異なっていても、第1の実施形態と同様にして、検体吸引時の詰まり又は空吸いを検知することができる。
【0080】
<分注機構の構成>
図7は、第2の実施形態に係る自動分析装置の分注機構200を示す概略構成図である。図7に示すように、分注機構200は、図1に示したチップ101及びプローブ102の代わりに、プローブ701(分注ノズル)を備える。プローブ701の管路の長さは、図1のチップ101をプローブ102に装着した場合の合計の管路の長さと同様とすることができる。プローブ701以外の構成については、第1の実施形態の分注機構100と同様であるため説明を省略する。
【0081】
本実施形態の分注機構200は、プローブ701に直接試薬113や検体115を吸引する。プローブ701の動作は、プローブ駆動部107により制御される。
【0082】
<分注方法>
図8は、第2の実施形態に係る分注方法を示すフローチャートである。本実施形態の分注方法は、実際には図7に示した制御部108が分注機構200の各構成要素の動作を制御することにより実施されるが、以下においては分注機構200の各構成要素を動作の主体として説明する場合がある。また、第1の実施形態の分注方法(図2)と同様のステップには同じ符号を付している。以下においては第1の実施形態との相違点のみ説明する。
【0083】
本実施形態においては、チップ101を使用しないため、図2におけるステップS203及びS211は実行されない。
【0084】
まず、ステップS201の代わりに、ステップS801において、制御部108は、電磁弁111を開状態とし、給水ポンプ109を駆動して、給水タンク110内の洗浄水105をプローブ701から吐出する。これにより、プローブ701の内部を洗浄する。
【0085】
ステップS202を実行した後、ステップS204の代わりにステップS802が実行される。ステップS802において、プローブ駆動部107は、プローブ701を試薬容器112の上方に移動させ、プローブ701の先端が試薬113に浸漬されるまで下降させる。
【0086】
ステップS205及びS206を実行した後、ステップS207の代わりにステップS803が実行される。ステップS803において、プローブ駆動部107は、プローブ701を検体容器114の上方に移動させ、プローブ701の先端が検体115に浸漬されるまで下降させる。
【0087】
以降の動作は第1の実施形態と同様である。また、ステップS212における異常の有無の判定方法についても、図3に示した方法と同様である。
【0088】
図9は、図8に示した分注動作におけるプローブ701内の流体の状態を示す概略図である。図9(a)は、ステップS801において洗浄水105によりプローブ701内を洗浄した直後の状態を示している。図9(a)に示すように、プローブ701の内部は洗浄水105により満たされている。
【0089】
図9(b)は、ステップS202において第1の分節空気901を吸引した後の状態を示している。
【0090】
図9(c)は、ステップS205において試薬113を吸引した後の状態を示している。試薬113は、プローブ701の先端に位置している。
【0091】
図9(d)は、ステップS206において第2の分節空気902を吸引した状態を示している。すなわち、検体115を吸引する前の状態が示されている。第2の分節空気902はプローブ701の先端に位置し、その上部に試薬113が位置している。なお、図9(d)においては1種類の試薬113と検体115のみを吸引した際の状態を示しているが、複数の試薬を分注する場合は、試薬113及び第2の分節空気902が吸引した試薬の数だけ交互に配置される。
【0092】
図9(e)は、ステップS208において検体115を吸引した状態を示している。検体115はプローブ701の先端に位置し、その上部に第2の分節空気902が位置し、第2の分節空気902上に試薬113が位置している。
【0093】
上述のように、検体115の吸引時の圧力履歴を用いて異常の有無が判断される。検体115を吸引する前の状態(図9(d))において、洗浄水105と第1の分節空気401との境界903の位置は、試薬113の分注量(体積)によって変化する。この境界903の位置を一定とすることによって、試薬113の分注量が検体115の吸引時の圧力履歴に与える影響を低減することが可能となる。
【0094】
洗浄水105と第1の分節空気901の境界903の位置は、ステップS202で吸引する第1の分節空気901の量と、ステップS205で吸引する試薬113の量と、ステップS206で吸引する第2の分節空気902の量の総和(流体の体積の総和)によって変化する。したがって、検体115の吸引前に吸引される流体の体積の総和を一定とするようにシリンジ104の動作を制御することで、境界903の位置を一定とすることができる。第1の分節空気901、試薬113及び第2の分節空気902の吸引量についても、図5に示した方法と同様に算出される。制御部108は、算出された各吸引量に基づいてシリンジ104の動作量を決定し、シリンジ駆動部106に指示を出す。
【0095】
<技術的効果>
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、検体の吸引前に吸引する流体(分節空気及び試薬)の体積の総量が一定となるように分注動作を行い、プローブ内に存在する洗浄液と分節空気との境界位置を一定とする。これにより、試薬の分注量の違いが検体吸引時の圧力履歴に与える影響を低減することができ、検体115の吸引時における異常を高確度に検知することができる。したがって、自動分析装置の分析結果の信頼性が向上する。さらに、本実施形態においては、チップ101を装着したり脱着したりする必要がないため、第1の実施形態と比較して分注動作をより迅速に行うことができる。
【0096】
[第3の実施形態]
第1の実施形態及び第2の実施形態においては、検体の前に吸引される分節空気の吸引量及び試薬の吸引量の総和を一定とすることによって、試薬の分注量による、検体吸引時の圧力履歴への影響を低減し、検体吸引時の異常を高確度に検知する手法について説明した。そこで、第3の実施形態においては、試薬の分注量の影響をさらに低減し、より高確度に検体吸引時の異常を検知する手法を提案する。
【0097】
本実施形態に係る自動分析装置の分注機構の構成としては、第1の実施形態と同様の構成(図1)を採用することができる。また、分注動作についても、第1の実施形態の分注方法(図2)とほぼ同様である。ただし、本実施形態においては、ステップS212における異常の有無の判定方法が第1の実施形態と異なっている。
【0098】
図10は、第3の実施形態に係る異常の有無の判定方法を示すフローチャートである。図10の判定方法は、図3に示した第1の実施形態の判定方法の代わりに判定部121により実行される。図3と同様のステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
まず、第1の実施形態と同様にしてステップS301及びS302を実行し、検体吸引時の圧力履歴から判定指標を算出する。
【0100】
次に、ステップS1001において、判定部121は、制御部108から、ステップS205にて吸引される試薬113の吸引量についての情報を取得する。なお、複数の試薬を吸引する場合には、ステップS1001において、判定部121は、制御部108から、ステップS205で吸引される試薬量の総和とステップS206で吸引される第2の分節空気量の総和についての情報を取得する。
【0101】
ステップS1002において、計算部124は、ステップS302で算出した判定指標と、ステップS1001において取得した試薬113の吸引量についての情報とに基づいて、検体115の吸引時における異常の有無を判定する。このとき、第1の実施形態と同様に、検体115の吸引動作中の圧力値の平均と、吸引動作前の圧力値の平均との差分を判定指標として、正常な分注であったか空吸いであったかを判定することとする。
【0102】
本実施形態においては、判定閾値を試薬113の分注量に応じて変化する関数とし、当該判定閾値と判定指標との大小関係を比較することにより、異常の有無を判定する。判定閾値の関数は、予め記憶部123に記憶されている。
【0103】
本実施形態に係る判定閾値について説明する。図11は、判定指標(例えば、圧力値の平均)と試薬113の分注量との関係及び判定閾値を示す図である。○のプロットは、正常に検体115が分注された場合の判定指標を示す(正常分注群1101)。また、×のプロットは、検体115の吸引時に空吸いが生じた場合の判定指標を示す(空吸い群1102)。図11に示すように、正常分注群1101と判定閾値1103との距離、空吸い群1102と判定閾値1103との距離それぞれについて、試薬113の分注量による変動が最小化されるように、判定閾値1103が折れ線状の関数として設定されている。折れ線状の関数に限らず、判定閾値1103は例えば一次関数や任意の多項式であってもよい。
【0104】
このように、異常の判定に用いる判定閾値を試薬113の分注量によって変化する関数とすることによって、正常分注群1101と判定閾値1103との距離及び空吸い群1102と判定閾値1103との距離について、試薬113の分注量の変化による影響を低減することができる。これにより、一定の値の判定閾値を用いる場合(図6(b))と比較して、より高確度に異常の有無を判定できる。
【0105】
なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に検体115を吸引する前の流体の総量を一定とした上で、異常の判定に用いる判定閾値を試薬113の分注量によって変化する関数とした。しかしながら、検体115を吸引する前の流体の総量を一定としない場合にも、判定閾値を試薬113の分注量によって変化する関数とする本実施形態は有効である。
【0106】
<技術的効果>
以上のように、第3の実施形態は、判定閾値を、試薬の分注量に応じた関数として設定しておき、検体吸引時の圧力履歴から算出される判定指標を関数と比較して異常の有無を判定するという構成を採用している。これにより、第1の実施形態のように判定指標とある一定の判定閾値とを比較する場合よりも、高確度に異常を検知することができる。したがって、自動分析装置の分析結果の信頼性をより向上することができる。
【0107】
[第4の実施形態]
第1の実施形態~第3の実施形態においては、検体(第2の液体)の吸引前に吸引される試薬(第1の液体)の分注量が圧力履歴に与える影響を低減することで、検体吸引時の異常を高確度に検知する手法について説明した。しかしながら、試薬の分注量だけでなく試薬の粘度といった物性値が圧力履歴に与える影響を小さくすることも効果的である。そこで第4の実施形態においては、より高確度に異常を検知するために、試薬の物性値が圧力履歴に与える影響についても考慮する手法を提案する。
【0108】
試薬の物性値のうち粘度が変化すると、上述のハーゲン・ポアズイユの式(1)における管路内の流体粘度μが変化する。これにより圧力損失Plossが変化するため、異常の有無の判定に使用する圧力履歴に影響を与える。また、試薬が微小な径の管路を通過する場合は、試薬の粘度の違い以外に、試薬の表面張力の違いによって管路内の圧力が変化する。管路内の試薬が占める部分の鉛直長さが長い場合は、試薬の密度の違いによる重力の違いによっても、管路内の圧力が変化する。
【0109】
<分注機構の構成>
図12は、第4の実施形態に係る自動分析装置の分注機構400を示す概略構成図である。図12に示すように、分注機構400は、第1の実施形態の分注機構(図1)とほぼ同様であるが、試薬物性値保存部1201をさらに備えている。
【0110】
試薬物性値保存部1201は、分析に用いられる様々な試薬の粘度、表面張力、密度などの物性値が保存されているデータベースである。試薬物性値保存部1201は、判定部121と接続されているか、又は通信可能に構成されており、試薬物性値保存部1201に保存されている情報は判定部121により読み出すことができる。
【0111】
<分注方法>
本実施形態に係る分注動作については、第1の実施形態の分注方法(図2)とほぼ同様である。ただし、本実施形態においては、ステップS212における異常の有無の判定方法が第1の実施形態と異なっている。
【0112】
図13は、第4の実施形態に係る異常の有無の判定方法を示すフローチャートである。図13の判定方法は、図3に示した第1の実施形態の判定方法の代わりに実行される。図3と同様のステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
まず、第1の実施形態と同様にしてステップS301及びS302を実行し、検体吸引時の圧力履歴から判定指標を算出する。
【0114】
次に、ステップS1301において、判定部121は、試薬物性値保存部1201から試薬113の粘度、表面張力、密度などの物性値の情報を取得する。
【0115】
ステップS1302において、判定部121は、ステップS302で算出した判定指標と、ステップS1301において取得した試薬113の物性値についての情報とに基づいて、検体115の吸引時における異常の有無を判定する。このとき、第1の実施形態と同様に、検体115の吸引動作中の圧力値の平均と、吸引動作前の圧力値の平均との差分を判定指標として、正常な分注であったか空吸いであったかを判定することとする。
【0116】
ここで、試薬113の物性値の一例として、粘度に基づいて異常の有無を判定する。より詳細には、判定閾値を試薬113の粘度に応じて変化する関数とし、当該判定閾値と判定指標との大小関係を比較することにより、異常の有無を判定する。判定閾値の関数は、予め記憶部123に記憶されている。
【0117】
本実施形態に係る判定閾値について説明する。図14は、判定指標(例えば、圧力値の平均)と試薬113の粘度との関係及び判定閾値を示す図である。○のプロットは、正常に検体115が分注された場合の判定指標を示す(正常分注群1401)。また、×のプロットは、検体115の吸引時に空吸いが生じた場合の判定指標を示す(空吸い群1402)。図14に示すように、正常分注群1401と判定閾値1403との距離、空吸い群1402と判定閾値1403との距離それぞれについて、試薬113の粘度による変動が最小化されるように、判定閾値1403が直線状の関数として設定されている。直線状の関数に限らず、判定閾値1403は例えば一次関数や任意の多項式であってもよい。
【0118】
このように、異常の判定に用いる判定閾値を試薬113の粘度によって変化する関数とすることで、正常分注群1401と判定閾値1403との距離及び空吸い群1402と判定閾値1403との距離について、試薬113の粘度の違いによる影響を低減することができる。これにより、一定の値の判定閾値を用いる場合と比較して、より高確度に異常の有無を判定できる。
【0119】
なお、本実施形態では、試薬113の粘度の関数を用いることとしたが、分注機構の特性上、試薬113の表面張力や密度が圧力履歴に与える影響が大きい場合は、判定閾値を試薬113の表面張力や密度の関数にすることで、高精度に異常を検知できる。これにより、例えば使用するチップやプローブの径によって、どの物性値が圧力履歴に与える影響が大きいかを考慮して異常の検知を行うことができる。
【0120】
なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に検体115を吸引する前の流体の総量を一定とした上で、異常の判定に用いる判定閾値を試薬113の物性値によって変化する関数とした。しかしながら、検体115を吸引する前の流体の総量を一定としない場合にも、判定閾値を試薬113の物性値によって変化する関数とする本実施形態は有効である。
【0121】
<技術的効果>
以上のように、第4の実施形態は、判定閾値を、試薬の物性値に応じた関数として設定しておき、当該関数と検体吸引時の圧力履歴の判定指標とを比較して異常の有無を判定するという構成を採用している。これにより、第1の実施形態のようにある一定の判定閾値と判定指標とを比較する場合よりも、高確度に異常を検知することができる。また、検体吸引時の圧力履歴に対する試薬の物性値による影響を低減できるため、試薬の物性値によらず、圧力履歴に基づいた異常検知をより高確度にすることができる。したがって、自動分析装置の分析結果の信頼性をより向上することができる。
【0122】
[第5の実施形態]
第4の実施形態においては、試薬の粘度、表面張力、密度などの物性値が圧力履歴に与える影響を考慮して異常の有無を判定する例について説明した。しかしながら、試薬の種類が多い場合には、全ての種類の試薬の物性値を計測し、データベース(試薬物性値保存部)に保持しておくことが困難である。そこで、第5の実施形態においては、検体吸引前に試薬113の物性値を推定する手法を提案する。
【0123】
<分注機構の構成>
本実施形態に係る自動分析装置の分注機構の構成としては、第4の実施形態と同様の構成(図12)を採用することができるため、説明を省略する。
【0124】
<分注方法>
本実施形態の分注方法は、図2に示した分注方法とほぼ同様であるが、ステップS205において、サンプリング部122は、圧力センサ117から試薬113の吸引動作中の圧力値の入力を受け付け、試薬113の吸引動作中の圧力値を時系列データ(試薬吸引時の圧力履歴)として記憶部123に記憶する。「試薬吸引時の圧力履歴」とは、ステップS205において試薬113を吸引する際のシリンジ104の動作時間(吸引動作時間)を含む所定の時間範囲における圧力値を指す。
【0125】
試薬113の吸引時の圧力履歴は、式(1)に示すように試薬113の粘度を反映しているため、この圧力履歴から試薬113の粘度を推定することが可能である。計算部124は、記憶部123に記憶された試薬113の吸引時の圧力履歴から、試薬113の粘度を算出し、試薬物性値保存部1201(図12)に保存する。
【0126】
ステップS212における検体115の吸引時における異常の有無の判定においては、図13に示した第4の実施形態の判定方法と同様のステップを実行する。
【0127】
以上、試薬113の物性値の一つとして粘度を推定する例を説明したが、試薬113の密度を推定し、異常の有無の判定に用いてもよい。この場合は、ステップS205における試薬113の吸引後における圧力値の重力水頭により、密度を算出してもよい。
【0128】
<技術的効果>
第5の実施形態は、試薬吸引時の圧力履歴から試薬の物性値を推定し、異常の有無の判定に用いられる判定閾値を、推定された試薬の物性値に応じた関数として設定する。これにより、第4の実施形態と同様の効果が得られることに加えて、分析に用いる試薬の物性値に関する情報が試薬物性値保存部に記憶されていなくとも、高確度に異常を検知することができる。
【0129】
[第6の実施形態]
第5の実施形態においては、試薬吸引時の圧力履歴を使用して試薬の物性値を推定する手法を説明した。しかしながら、同時に分注すべき試薬が複数ある場合は、図2のステップS204~S206を繰り返して吸引する試薬ごとに物性値を推定することになるため、処理が煩雑となってしまう。また、複数の試薬それぞれについて物性値を推定すると、誤差が積み重なり異常検知の確度が低下する可能性がある。
【0130】
そこで、第6の実施形態においては、複数の試薬を分注する場合に、検体吸引前に吸引されている複数の試薬が、検体吸引時の圧力履歴に与える影響を考慮する手法を提案する。
【0131】
<分注方法>
本実施形態の分注方法は、図2に示した分注方法とほぼ同様であるが、以下の点で異なっている。すなわち、必要な試薬の数だけ繰り返されるステップS204~S206のうち最後に実施されるステップS206において第2の分節空気を吸引する際のシリンジ104の吸引流量と、ステップS208において検体115を吸引する際のシリンジ104の吸引流量とを、同一とする。これにより、チップ101内に保持された複数の試薬が検体吸引時の圧力履歴に与える影響を推定することができる。
【0132】
より具体的には、ステップS206において、サンプリング部122は、圧力センサ117から第2の分節空気の吸引動作中の圧力値の入力を受け付け、第2の分節空気の吸引動作中の圧力値を時系列(圧力履歴)として記憶部123に記憶する。計算部124は、ステップS206における分節空気の吸引時の圧力履歴を取得して、この圧力履歴と上記式(1)に基づいて、複数の試薬113の粘度の平均(代表値)を推定する。その他のステップについては第5の実施形態と同様に実行することができる。
【0133】
<技術的効果>
第6の実施形態は、複数の試薬を同時に分注する場合に、複数の試薬の物性値の代表値を推定して、異常の有無の判定に用いられる判定閾値を、推定された試薬の物性値に応じた関数として設定する。これにより、複数の試薬すべてについて物性値を推定する必要がないため、処理が簡単である上に、誤差が蓄積されることがない。したがって、検体の吸引より前に吸引されている複数の試薬の物性値によらず高確度に異常を検知することができる。
【0134】
また、ステップS204~S206のうち最後に実施されるステップS206において第2の分節空気を吸引する際のシリンジ104の吸引流量と、ステップS208において検体115を吸引する際のシリンジ104の吸引流量とを、同一とする構成によって、検体115を吸引する際の圧力履歴に試薬113の粘度が与える影響をより正確に推定することが可能となる。
【0135】
<第6の実施形態の変形例>
上述のように、複数の試薬の物性値の代表値を推定する代わりに、判定指標として、試薬の物性値や分注量の影響をキャンセルした判定指標を用いることもできる。具体的には、図3に示した異常の有無の判定方法において、判定指標として、ステップS206における第2の分節空気の吸引における圧力履歴と、ステップS208における検体115の吸引における圧力履歴との差分を算出する。ここで算出される判定指標は、検体吸引直前の圧力履歴と検体吸引後の圧力履歴との差分であるため、検体の吸引より前に吸引されている複数の試薬の物性値や分注量の影響が相殺されている。このような判定指標を用いることによっても、試薬の分注量や物性値によらず高確度に異常の有無を判定することができる。
【0136】
[変形例]
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【0137】
上記した各実施形態の分注方法は、自動分析装置だけでなく、流体の分注機構を有するその他の装置において実行することも可能である。例えば、各実施形態の手法は、医薬品製造装置やマイクロリアクタ等にも適用できる。
【符号の説明】
【0138】
100、200、400…分注機構
101…チップ
102…プローブ
103…流路
104…シリンジ
104a…シリンダ
104b…プランジャ
105…洗浄水
106…シリンジ駆動部
107…プローブ駆動部
108…制御部
109…給水ポンプ
110…給水タンク
111…電磁弁
112…試薬容器
113…試薬
114…検体容器
115…検体
116…反応容器
117…圧力センサ
118…分岐ブロック
119…信号増幅器
120…A/D変換器
121…判定部
122…サンプリング部
123…記憶部
124…計算部
125…表示部
126…チップ廃棄部
401…第1の分節空気
402…第2の分節空気
403…境界
601、603…正常分注群
602、604…空吸い群
605…判定閾値
701…プローブ
901…第1の分節空気
902…第2の分節空気
903…境界
1101…正常分注群
1102…空吸い群
1103…判定閾値
1201…試薬物性値保存部
1401…正常分注群
1402…空吸い群
1403…判定閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14