(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】化合物、エポキシ硬化触媒、及び化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/60 20060101AFI20230427BHJP
C08G 59/52 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C07D233/60 104
C07D233/60 CSP
C08G59/52
(21)【出願番号】P 2019545581
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035772
(87)【国際公開番号】W WO2019065770
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2017191740
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】引田 二郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
(72)【発明者】
【氏名】花野 貴江子
(72)【発明者】
【氏名】石田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 努
(72)【発明者】
【氏名】上原 和浩
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149914(JP,A)
【文献】特開2014-098070(JP,A)
【文献】特開2013-253233(JP,A)
【文献】特開2011-116939(JP,A)
【文献】特開昭49-122599(JP,A)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,54 (19),2011年,6803-6811,ISSN 0022-2623
【文献】Tetrahedron Letters,2004年,45 (37),6937-6939,ISSN 0040-4039
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-1-1)で表される化合物。
【化1】
式(1-1-1)中、X
m+
はm価の対カチオンを表し、前記m価の対カチオンX
m+
が、下記式(3):
(R
21
)
2
N
+
=C(NR
22
2
)
2
(3)
(式(3)中、R
21
はそれぞれ独立に水素原子、又はアルキル基を表し、R
22
はそれぞれ独立に水素原子、又はアルキル基を表す。)で表される含窒素脂肪族カチオン、
下記式(4):
【化2】
(式(4)中、R
31
はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、sは2以上6以下の整数を表す。)で表される含窒素脂肪族カチオン、
下記式(5):
【化3】
(式(5)中、R
H
、R
41
、及びR
42
は、水素原子を表す。)で表される含窒素芳香族カチオン、又は下記式:
【化4】
で表されるカチオンから選択され、mは1であり、nは0であり、R
3
は、nが0であるため、存在せず、R
4
、R
5
、R
6
、及びR
7
は水素原子であり、R
8
は、
-O-R
9
(R
9
は炭素原子数1以上3以下のアルキル基である。)
である。
【請求項2】
m価の対カチオンX
m+
が、下記カチオンから選択される、請求項1に記載の化合物。
【化5】
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の化合物からなるエポキシ硬化触媒。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の化合物の製造方法であって、下記式
(10-1)で表される化合物と、m価の対カチオンX
m+を形成し得る塩基とを溶媒の存在下、又不存在下に中和反応させることにより前記式
(1-1-1)で表される化合物を製造する、方法。
【化6】
(式
(10-1)中、
R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
7
、R
8
、及びnは、式(1-1-1)と同義である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ硬化触媒として好適な新規化合物、該化合物を用いたエポキシ硬化触媒、及び該化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物と、硬化剤や硬化触媒とを含む硬化性組成物は、接着剤用途、種々の電子部品の封止用途、繊維強化複合材料のマトリックス形成用途等の種々の用途において広く使用されている。かかる硬化性組成物について、硬化剤や硬化触媒による硬化性を更に向上させることが求められている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、特許文献2には、マイグレーションや配線表面の酸化の抑制効果に優れる金属表面処理液を与える特定構造のイミダゾール化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-074890号公報
【文献】国際公開第2016-031928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術のエポキシ化合物を含む硬化性組成物の硬化性の更なる向上の要求に鑑み、エポキシ硬化触媒として好適な新規化合物、該化合物を用いたエポキシ硬化触媒、及び該化合物の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、同一又は異なる条件においてエポキシ硬化性を発揮する残基を分子内に複数有する新規化合物がエポキシ化合物を含む硬化性組成物の硬化性を向上(例えば、エポキシ硬化物の耐熱性向上)し得、エポキシ硬化触媒として好適であること、また、該化合物が、異なる条件においてエポキシ硬化性を発揮する異なる残基を複数有する場合、昇温時に段階的なエポキシ硬化性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の第1の態様は、
下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
(式(1)中、X
m+はm価の対カチオンを表し、R
1は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R
2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R
3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、R
2はR
1と結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様の化合物からなるエポキシ硬化触媒である。
本発明の第3の態様は、第1の態様の化合物の製造方法であって、下記式(10)で表される化合物と、m価の対カチオンX
m+を形成し得る塩基とを溶媒の存在下、又は不存在下に中和反応させることにより第1の態様の化合物を製造する方法である。
【化2】
(式(10)中、R
1は置換基を有していてもよい芳香族基であり、R
2は置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R
3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基であり、nは0以上3以下の整数であり、R
2はR
1と結合して環状構造を形成していてもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物は、エポキシ硬化性(例えば、エポキシ硬化物の耐熱性)に優れ、エポキシ硬化触媒として好適である。
また、本発明は、該化合物を用いたエポキシ硬化触媒、及び該化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
また、本明細書において、「~」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
【0011】
≪化合物≫
第1の態様に係る化合物は、下記式(1)で表される。
【化3】
(式(1)中、X
m+はm価の対カチオンを表し、R
1は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R
2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R
3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、R
2はR
1と結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0012】
m価の対カチオンX
m+は、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、含窒素芳香族カチオン又は金属カチオンであることが好ましい。mは1以上3以下の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
上記非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、下記式(2)~(4)のいずれかで表されることが好ましい。
【化4】
(式(2)中、R
11~R
14はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよい複素環基を表し、R
11~R
14から選択される少なくとも2つは連結して環を形成していてもよい。)
【0013】
式(2)中、置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素原子数1以上30以下のアルキル基が好ましい。置換基を有してもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1-エチルペンチル基、トリフルオロメチル基、2-エチルヘキシル基、フェナシル基、1-ナフトイルメチル基、2-ナフトイルメチル基、4-メチルスルファニルフェナシル基、4-フェニルスルファニルフェナシル基、4-ジメチルアミノフェナシル基、4-シアノフェナシル基、4-メチルフェナシル基、2-メチルフェナシル基、3-フルオロフェナシル基、3-トリフルオロメチルフェナシル基、及び3-ニトロフェナシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。置換基を有してもよいシクロアルキル基の具体例としては、例えば、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が好ましい。置換基を有してもよいアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルキニル基が好ましい。置換基を有してもよいアルキニル基の具体例としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、及びプロパルギル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素原子数6以上30以下のアリール基が好ましい。置換基を有してもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o-、m-、及びp-トリル基、キシリル基、o-、m-、及びp-クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、及びオバレニル基等が挙げられる。
【0015】
置換基を有してもよいアラルキル基としては、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-α-ナフチルエチル基、及び2-β-ナフチルエチル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族あるいは脂肪族の複素環が好ましい。置換基を有してもよい複素環基の具体例としては、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H-ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H-インドリル基、インドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、4H-キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH-カルバゾリル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及びチオキサントリル基等が挙げられる。
【0016】
前述した置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよい複素環基の水素原子は更に他の置換基で置換されていても良い。
【0017】
そのような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等)、オルガノキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等)、アルキルスルファニル基(メチルスルファニル基、及びtert-ブチルスルファニル基等)、アリールスルファニル基(フェニルスルファニル基、及びp-トリルスルファニル基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、及びシクロヘキシルアミノ基等)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、及びピペリジノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、tert-ブチル基、及びドデシル基等)、アリール基(フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、及びフェナントリル基等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロソ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、ジメチルスルホニウミル基、及びトリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0018】
式(2)中、R11~R14から選択される少なくとも2つが連結して環を形成する場合、連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基又はそれらを連結してなる2価の基が挙げられる。当該連結基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましい。R11~R14から選択される少なくとも2つから形成される環は、環を構成する原子として酸素原子を含んでいてもよい。
【0019】
(R21)2N+=C(NR22
2)2 (3)
(式(3)中、R21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、-C(=NR23)-NR23
2(3個のR23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基)、又は、=C(-NR24
2)2(4個のR24はそれぞれ独立に水素原子又は有機基)を表す。)
【0020】
R21~R23についてのアルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及び1-エチルペンチル基等が挙げられる。
R21~R23についてのシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
R24についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
式(3)で表されるカチオンとしては、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウムカチオン、1-メチルビグアニジウムカチオン、1-n-ブチルビグアニジウムカチオン、1-(2-エチルヘキシル)ビグアニジウムカチオン、1-n-オクタデシルビグアニジウムカチオン、1,1-ジメチルビグアニジウムカチオン、1,1-ジエチルビグアニジウムカチオン、1-シクロヘキシルビグアニジウムカチオン、2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジウムカチオン、1-ベンジルグアニジウムカチオン、1,3-ジベンジルグアニジウムカチオン、1-ベンジル-2,3-ジメチルグアニジウムカチオン、及び1-フェニルグアニジウムカチオン等が挙げられる。これらのカチオンの中では、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウムが好ましい。
【0021】
【化5】
(式(4)中、R
31はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、sは2以上6以下の整数を表す。)
R
31についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アラルキル基、及び上記アリール基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等)、オルガノキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等)、アルキルスルファニル基(メチルスルファニル基、及びtert-ブチルスルファニル基等)、アリールスルファニル基(フェニルスルファニル基、及びp-トリルスルファニル基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、及びシクロヘキシルアミノ基等)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、及びピペリジノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基、及びp-トリルアミノ基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、tert-ブチル基、及びドデシル基等)、アリール基(フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、及びフェナントリル基等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロソ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、ジメチルスルホニウミル基、及びトリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
sは3以上5以下の整数であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。
【0022】
対カチオンX
m+についての含窒素芳香族カチオンとしては、下記式(5)~(13)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化6】
(式中、R
Hは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
R
41、R
43、R
45、R
46、R
47、R
48、R
50、R
51及びR
52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、
R
42、R
44及びR
49はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R
41~R
52はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、
R
41及びR
42は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
41は互いに結合して環を形成していてもよく、R
43及びR
44は互いに結合して環を形成していてもよく、2つのR
43は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
45は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
46は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
47は互いに結合して環を形成していてもよく、R
48及びR
49は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
48は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
50は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
51は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR
52は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0023】
R41~R52についてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
RH及びR41~R52についてのアルキル基としては、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上20以下が好ましく、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。
RH及びR41~R52についてのアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチル-n-ヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基が挙げられる。
【0024】
R41~R52についてのシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
R41~R52についてのアルケニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等が挙げられる。
R41~R52についてのアルキニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルキニル基が好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、及びプロパルギル基等が挙げられる。
【0025】
mが2以上の整数である場合、m価の対カチオンX
m+についての非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、下記式(14)~(16)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化7】
(上記式中、R
Hは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R
53及びR
55は、それぞれ独立にアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R
54はアルキレン基、シクロアルキレン基又はそれらを連結してなる2価の基を表し、R
56はアルキレン基を表し、R
53~R
56はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、少なくとも2つのR
53は互いに結合して環を形成していてもよく、R
53及びR
54は互いに結合して環を形成していてもよく、2つのR
55は互いに結合して環を形成していてもよい。)
R
Hの具体例及び好ましい例としては、上述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
R
H及びR
53~R
55についてのアルキル基としてはR
H及びR
41~R
52についてのアルキル基として上述した具体例及び好ましい例と同様の基が挙げられる。
R
53~R
55についてのシクロアルキル基としてはR
41~R
52についてのシクロアルキル基としては上述した具体例及び好ましい例と同様の基が挙げられる。
R
56についてのアルキレン基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0026】
mが2以上の整数である場合、m価の対カチオンXm+についての含窒素芳香族カチオンとしては、分子中に2,2-ビピリジニウム骨格、3,3-ビピリジニウム骨格、4,4-ビピリジニウム骨格、2,2-ビピラジニウム骨格、4,4-ビキノリニウム骨格、4,4-ビイソキノリニウム骨格、4-[2-(4-ピリジニウム)ビニル]ピリジニウム骨格又は4-[4-(4-ピリジニウム)フェニル]ピリジニウム骨格を有する2価以上のカチオンが挙げられる。
【0027】
対カチオンXm+についての金属カチオンとしては、典型金属元素、遷移金属元素及び半金属元素からなる群より選択される金属原子のカチオン又は上記金属原子を含む原子団のカチオンであることが好ましい。
上記典型金属元素としては、アルカリ金属元素(周期表1族のうち水素を除く元素からなる金属元素、例えば、ナトリウム、及びカリウム)、アルカリ土類金属元素(周期表2族の元素からなる金属元素、例えば、マグネシウム)、周期表12族の元素からなる金属元素(例えば、亜鉛)、周期表13族のうちホウ素を除く元素からなる金属元素(例えば、アルミニウム)、周期表14族のうち炭素、ケイ素を除く元素からなる金属元素(例えば、スズ)、周期表15族のうち窒素、リン、及びヒ素を除く元素からなる金属元素(例えば、アンチモン)、並びに周期表16族のうち酸素、硫黄、セレン、及びテルルを除く元素からなる金属元素(例えば、ポロニウム)が挙げられる。
上記遷移金属元素としては、周期表3~11族の元素からなる金属元素(例えば、ハフニウム)が挙げられる。
上記半金属元素としては、ホウ素、ケイ素、砒素、セレン、及びテルル等が挙げられる。
上記金属原子を含む原子団のカチオンとしては、金属原子と非金属原子の両方を含む原子団等が挙げられ、具体的には、[ZrO]2+、[(C2H5O)Al]2+、及び[(n-C4H9)2Sn-O-Sn(n-C4H9)2]2+等が挙げられる。
【0028】
式(1)中、R1は、置換基を有してもよい芳香族基を表す。置換基を有してもよい芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基でもよく、置換基を有してもよい芳香族複素環基でもよい。
【0029】
芳香族炭化水素基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族炭化水素基は、単環式の芳香族基であってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が縮合して形成されていてもよく、2以上の芳香族炭化水素基が単結合により結合して形成されていてもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましい。
【0030】
芳香族複素環基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族複素環基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましい。
【0031】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホン酸エステル基、アミノ基、アンモニオ基、及び有機基が挙げられる。フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合、当該有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0033】
芳香族基が隣接する炭素原子上に置換基を有する場合、隣接する炭素原子上に結合する2つの置換基はそれが結合して環状構造を形成してもよい。環状構造としては、脂肪族炭化水素環や、ヘテロ原子を含む脂肪族環が挙げられる。
【0034】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合に、当該有機基に含まれる結合は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(-NRA-:RAは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-RB)-、-C(=NRB)-:RBは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、及びアゾ結合等が挙げられる。
【0035】
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(1)で表されるイミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(-NRA-:RAは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-RB)-、-C(=NRB)-:RBは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、及びスルフィニル結合が好ましい。
【0036】
有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、炭化水素基以外の置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。炭化水素基以外の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアルミ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0037】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有する置換基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数1以上12以下のアリール基、炭素原子数1以上12以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上12以下のアリールオキシ基、炭素原子数1以上12以下のアリールアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0038】
R1としては、式(1)で表される化合物を安価且つ容易に合成でき、上記化合物の水や有機溶剤に対する溶解性が良好であることから、それぞれ置換基を有してもよいフェニル基、フリル基、及びチエニル基が好ましい。
【0039】
式(1)中、R2は、置換基を有してもよいアルキレン基である。アルキレン基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキレン基が有していてもよい置換基の具体例としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐鎖アルキレン基であってもよく、直鎖アルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上20以下が好ましく、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。なお、アルキレン基の炭素原子数には、アルキレン基に結合する置換基の炭素原子を含まない。
【0040】
アルキレン基に結合する置換基としてのアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であっても、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
【0041】
アルキレン基に結合する置換基としてのアミノ基は、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
【0042】
R2として好適なアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、n-ウンデカン-1,11-ジイル基、n-ドデカン-1,12-ジイル基、n-トリデカン-1,13-ジイル基、n-テトラデカン-1,14-ジイル基、n-ペンタデカン-1,15-ジイル基、n-ヘキサデカン-1,16-ジイル基、n-ヘプタデカン-1,17-ジイル基、n-オクタデカン-1,18-ジイル基、n-ノナデカン-1,19-ジイル基、及びn-イコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。
【0043】
R3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基であり、nは0以上3以下の整数である。nが2以上3以下の整数である場合、複数のR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
R3が有機基である場合、当該有機基は、R1について、芳香族基が置換基として有していてもよい有機基と同様である。
【0045】
R3が有機基である場合、有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上8以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましく、フリル基、及びチエニル基がより好ましい。
【0046】
R3がアルキル基である場合、アルキル基のイミダゾール環上での結合位置は、2位、4位、及び5位のいずれも好ましく、2位がより好ましい。R3が芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基である場合、これらの基のイミダゾール上での結合位置は、2位が好ましい。
【0047】
上記式(1)で表される化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、水や有機溶剤に対する溶解性に優れる点から、下記式(1-1)で表される化合物が好ましく、式(1-1)で表され、R2がメチレン基である化合物がより好ましい。
【0048】
【化8】
(式(1-1)中、X、R
2、R
3、m及びnは、式(1)と同義であり、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホン酸エステル基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8のうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。R
2はR
6と結合して環状構造を形成してもよい。)
【0049】
R4、R5、R6、R7、及びR8が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるR1が置換基として有する有機基と同様である。R4、R5、R6、及びR7は、上記化合物の溶媒に対する溶解性の点から水素原子であるのが好ましい。
【0050】
中でも、R4、R5、R6、R7、及びR8のうち少なくとも1つは、下記置換基であることが好ましく、R8が下記置換基であるのが特に好ましい。R8が下記置換基である場合、R4、R5、R6、及びR7は水素原子であるのが好ましい。
-O-R9
(R9は水素原子又は有機基である。)
【0051】
R9が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるR1が置換基として有する有機基と同様である。R9としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0052】
上記式(1-1)で表される化合物の中では、下記式(1-1-1)で表される化合物が好ましい。
【化9】
(式(1-1-1)において、X、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8、m及びnは、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8のうち少なくとも1つが水素原子以外の基であること以外は、式(1)と同義である。)
【0053】
式(1-1-1)で表される化合物の中でも、R4、R5、R6、R7、及びR8のうち少なくとも1つが、前述の-O-R9で表される基であることが好ましく、R8が-O-R9で表される基であるのが特に好ましい。R8が-O-R9で表される基である場合、R4、R5、R6、及びR7は水素原子であることが好ましい。
【0054】
式(1)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
【0055】
≪用途≫
第1の態様に係る上記式(1)で表される化合物は、エポキシ硬化触媒として好適に用いることができる。
第2の態様に係るエポキシ硬化触媒は、第1の態様の上記式(1)で表される化合物からなる。
上記式(1)で表される化合物及びエポキシ化合物を例えば、撹拌機等で混合することにより硬化性組成物を調製することが好ましい。
上記硬化性組成物を硬化させる際の温度及び時間は、硬化が十分に進行する限り特に限定されない。例えば、100℃以上200℃以下程度の温度、3分以上10分以下程度の時間で、硬化性組成物が硬化される。上記の硬化性組成物は低温で硬化可能であるが、高温で硬化させることもできる。
上記組成物における上記式(1)で表される化合物の含有量としては特に制限はない。上記組成物における上記式(1)で表される化合物の含有量は、組成物(溶剤を除く)全体に対して、例えば、0.01質量%以上80質量%以下が好ましく、0.1質量%以上40質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上30質量%以下が更に好ましく、1質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
上記組成物は、必要に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、着色剤、分散剤、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
第1の態様の化合物により硬化されるエポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。エポキシ化合物は、従来から硬化性組成物に配合されているエポキシ基を有する種々の化合物から選択できる。エポキシ化合物は、非重合体であるエポキシ基を有する低分子化合物であってもよく、エポキシ基を有する重合体であってもよい。以下、エポキシ化合物に関して、エポキシ基を有する非重合体と、エポキシ基を有する重合体とについて順に説明する。
【0057】
(エポキシ基を有する非重合体)
エポキシ基を有する非重合体としては、従来から硬化性組成物に配合されている、種々の被重合体型のエポキシ化合物から適宜選択できる。エポキシ化合物の好適な例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0058】
硬化性組成物を用いて形成される硬化物が機械的特性に優れる点から、芳香族基を含まない脂肪族エポキシ化合物も好ましい。脂肪族エポキシ化合物の中では、透明性及び硬度に優れる硬化物を与えることから、脂環式エポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物が好ましい。
脂環式エポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0059】
(エポキシ基を有する重合体)
エポキシ基を有する重合体は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよく、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入した重合体であってもよい。また、1,2-ポリブタジエンのような側鎖に不飽和脂肪族炭化水素基を有する重合体の部分酸化物もエポキシ基を有する重合体として好適に使用することができる。かかる部分酸化物は、側鎖に含まれる不飽和結合の酸化により生成したエポキシ基を含む。
【0060】
入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体と、側鎖に不飽和脂肪族炭化水素基を有する重合体の部分酸化物とが好ましい。
【0061】
(エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物の重合体)
エポキシ基を有する重合体の中では、調製が容易であることや、硬化性組成物の基材への塗布性等の点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
【0062】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。硬化性組成物を用いて形成される硬化物の透明性の点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0063】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(-O-CO-)中のオキシ基(-O-)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(-O-)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
【0065】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品用の保護膜、層間絶縁膜、平坦膜、絶縁膜として用いることができる。
硬化物が膜である場合、厚さは、10nm以上100μm以下であることが好ましく、50nm以上10μm以下であることがより好ましく、100nm以上5000nm以下であることが更に好ましい。
【0066】
≪上記式(1)で表される化合物の製造方法≫
第3の態様は、第1の態様の上記式(1)で表される化合物の製造方法であって、下記式(10)で表される化合物と、m価の対カチオンX
m+を形成し得る塩基とを溶媒の存在下、又は不存在下に中和反応させることにより上記式(1)で表される化合物を製造する方法である。
【化13】
(式(10)中、R
1、R
2、R
3及びnは、式(1)と同義であり、具体例及び好ましい例も同様である。)
m価の対カチオンX
m+を形成し得る塩基としては、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族化合物、含窒素芳香族化合物又は金属原子若しくは上記金属原子を含む原子団であることが好ましい。
m価の対カチオンX
m+を形成し得る塩基としては、上記式(2)~(4)のいずれかで表される非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、上記式(5)~(13)のいずれかで表される含窒素芳香族カチオン、上記式(14)~(16)のいずれかで表される含窒素脂肪族カチオン、又は典型金属元素、遷移金属元素及び半金属元素からなる群より選択される金属原子のカチオン若しくは上記金属原子を含む原子団のカチオンを形成し得る塩基であることがより好ましい。
【0067】
上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを溶媒中にて中和反応させる方法としては、加熱下ないし非加熱下において、例えば、極性溶媒中、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを混合する方法等が挙げられる。
上記極性溶媒としては、アルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びtert-ブタノール等が挙げられる。
加熱下において、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを上記溶媒に溶解して混合することができる。加熱温度は、例えば、40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。加熱時の温度の上限としては特に制限はないが、上記溶媒の沸点以下であることが好ましい。
非加熱下では、上記式(10)で表される化合物又は上記塩基が溶媒に溶解し難い場合がある。この場合、塩形成が進行するに従い、反応液中の不溶物の量が低減し得る。
【0068】
上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを溶媒の不存在下に中和反応させる方法は、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを接触させることができる方法であれば特に限定されない。具体的な方法としては、例えば、常温において、個体である上記式(10)で表される化合物と、個体若しくは液体である上記塩基とを、乳鉢等を用いて粉砕ないしすりつぶしながら混合する方法等が挙げられる。
【0069】
また、上記式(10)で表される化合物と上記塩基との割合(モル比)としては特に制限はないが、式(10)で表される化合物のモル数をM1とし、m価の対カチオンXm+を与える上記塩基のモル数をM2とする場合に、M1/(M2/m)の値として、20/80~80/20であることが好ましく、30/70~70/30であることがより好ましい。
【0070】
また、Xm+がナトリウムカチオン、カリウムカチオンである上記式(1)で表される化合物と、ナトリウムカチオン及びカリウムカチオン以外のm価の対カチオンXm+を形成し得る塩基とを混合して塩交換を行うことにより、Xm+がナトリウムカチオン及びカリウムカチオン以外の上記式(1)で表される化合物を製造することもできる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0072】
〔合成例1〕上記式(1)で表される化合物の合成1
【化14】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)とを加えた。フラスコ内を窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従いジアザビシクロウンデセン(DBU;1.24g,8.12mmol)を滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、室温(25℃)まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物1)を得た。(収量=3.27g,収率=95%,黄色粘調液体)
1H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=3.48(CH
2,2H),3.40(CH
2,2H),3.15(CH
2,2H),2.65(CH
2,2H),1.82(CH
2,2H),1.70-1.45(CH
2,6H)、
アニオンδ(ppm)=7.70(CH,1H),7.22(Ph,2H),7.15(CH,1H),6.85(Ph,2H),6.80(CH,1H),5.63(CH,1H),3.70(CH
3,3H),2.85-2.65(CH
2,2H)
【0073】
〔合成例2〕上記式(1)で表される化合物の合成2
【化15】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)とを加えた。フラスコ内を窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従いジアザビシクロノネン(DBN;1.11g,8.12mmol)を滴下し、化合物AとDBNとを60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物2)を得た。(収量=2.91g,収率=90%,黄色粘調液体)
1H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=3.55(CH
2,2H),3.40-3.25(CH
2,4H),2.81(CH
2,2H),2.00(CH
2,2H),1.88(CH
2,2H)
アニオンδ(ppm)=7.70(CH,1H),7.22(Ph,2H),7.15(CH,1H),6.85(Ph, 2H),6.80(CH,1H),5.63(CH,1H),3.70(CH
3,3H),2.85-2.65(CH
2,2H)
【0074】
〔合成例3〕上記式(1)で表される化合物の合成3
【化16】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)とを加えた。フラスコ内を窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、イミダゾール(IM;0.55g,8.12mmol)を加え、化合物AとIMとを60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物3)を得た。(収量=2.43g,収率=95%,白色固体)
1H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=7.03(CH,2H),7.65(CH,1H)
アニオンδ(ppm)=7.86(CH,1H),7.35(3H),6.99(3H),5.70(CH,1H),3.71(CH
3,3H),3.35-3.16(CH
2,2H)
【0075】
原料の化合物A単体、イミダゾール単体、及び得られた化合物3について、それぞれ、X線回折測定装置((株)リガク社製;商品名「全自動水平型多目的X線回折測定装置SmartLab」)を用いて、以下の条件下でX線回折パターンの測定を行った。得られた化合物3は、原料の各単体のいずれとも異なる反射パターンを示したことから、単なる混合物ではなく、塩であると判断される。
使用X線:回転対陰極型X線発生源由来CuKα線、45kV-200mA
走査速度(2θ):4.0°/min
発散スリット:(2/3)°
散乱スリット:(2/3)°
その他の条件は、パッケージ測定「汎用測定>汎用(集中法)」の標準条件設定による。
【0076】
〔合成例4〕上記式(1)で表される化合物の合成4
【化17】
20mlナスフラスコに化合物A(1.60g,6.50mmol)とテトラヒドロフラン(3g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをテトラヒドロフランに溶解させた。次に、上記スキームに従い、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD;1.00g,6.50mmol)を滴下し、化合物AとMTBDとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物4)を得た。(収量=2.5g,収率=95%,黄色粘調液体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=9.20(NH,1H),3.27-3.22(6H),3.17-3.15(2H),2.90(CH3,3H),1.92-1.89(2H),1.81-1.79(2H)
アニオンδ(ppm)=7.67(CH,1H),7.21(2H),7.12(1H),6.84(2H),6.79(1H),5.62(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.73-2.61(CH
2,2H)
【0077】
〔合成例5〕上記式(1)で表される化合物の合成5
【化18】
20mlナスフラスコに化合物A(1.50g,6.09mmol)とメタノール(9g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従い、1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(TBD;0.85g,6.09mmol)を滴下し、化合物AとTBDとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物5)を得た。(収量=2.2g,収率=95%,黄色固体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=10.48(NH,2H),3.22-3.17(4H),3.10-3.07(4H),1.86-1.81(4H)
アニオンδ(ppm)=7.71(CH,1H),7.25(2H),7.17(1H),6.86(2H),6.80(1H),5.65(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.87-2.73(CH
2,2H)
【0078】
〔合成例6〕上記式(1)で表される化合物の合成6
【化19】
20mlナスフラスコに化合物A(1.50g,6.09mmol)とメタノール(9g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従い、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG;0.7g,6.09mmol)を滴下し、化合物AとTMGとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物6)を得た。(収量=2.2g,収率=100%,黄色固体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=2.84(6H)
アニオンδ(ppm)=7.67(CH,1H),7.21(2H),7.12(1H),6.85(2H),6.79(1H),5.62(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.28-2.64(CH
2,2H)
【0079】
〔合成例7〕上記式(1)で表される化合物の合成7
【化20】
20mlナスフラスコに化合物A(1.00g,4.06mmol)とメタノール(9g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従い、イミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(0.72g,4.06mmol)を滴下し、化合物Aとイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホランとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式で表される化合物(化合物7)を得た。(収量=1.7g,収率=98%,黄色固体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=2.63(9H),2.61(9H),
アニオンδ(ppm)=7.65(CH,1H),7.18(2H),7.10(1H),6.84(2H),6.84(1H),5.61(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.28-2.64(CH
2,2H)
【0080】
〔組成物の調製〕
下記表1に示した配合比(質量部)で下記エポキシ化合物、式(1)で表される化合物、及び比較化合物を混合し実施例1及び比較例1の組成物を調製した。
【表1】
【化21】
【0081】
〔耐熱性評価〕
実施例1及び比較例1の組成物を用いて耐熱性評価を行った。
実施例1及び比較例1の組成物を、ガラス基板に塗布して200℃で(5分間)加熱し膜厚1μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜を一度室温まで冷ました後、再び、室温から200℃まで昇温して、膜の状態を確認した。
比較例1の硬化膜は140℃付近で膜が融解し始めたが、実施例1の硬化膜は融解が起こらず、示差走査熱量計(商品名:DSC-50、島津製作所製)による観測においても吸熱ピークが現れなかったため、耐熱性の良好な硬化膜が得られていると考えられる。