(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】自動分析装置、および異常検知方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
G01N35/00 C
(21)【出願番号】P 2021525913
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008937
(87)【国際公開番号】W WO2020250507
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019109032
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩畑 博文
(72)【発明者】
【氏名】大田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 孝明
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-057228(JP,A)
【文献】特開2013-217741(JP,A)
【文献】特開2010-249661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収納する試薬容器から前記試薬を吸引し、
検体を収容する反応容器に前記試薬を吐出して反応液を生成する試薬分注部と、
前記検体の種類、および前記検体の種類毎に定められ、前記検体に含まれる測定対象成分の濃度に関連する濃度関連情報を記憶する記憶部と、
前記反応液に含まれる測定対象成分の濃度である測定濃度を検出する検出部と、
前記濃度関連情報および前記測定濃度に基づいて、前記試薬容器内の異常の発生の有無を判断する判断部と、
を備え、
前記濃度関連情報は、前記試薬容器内の泡の有無を判断するために定められた、前記測定対象成分の濃度の許容範囲を示し、
前記判断部は、前記濃度関連情報および前記測定濃度に基づいて、前記試薬容器内における泡の発生の有無、あるいは前記試薬容器に収容された前記試薬の劣化の可能性を判断し、
前記判断部は、前記測定濃度が前記許容範囲に含まれるか否かの結果に基づいて、前記試薬容器内で泡が発生したか否かを判断する、自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部は、前記検体の種類、前記測定対象成分が測定された測定時間、および当該測定時間に検出された測定濃度と、を関連付けて記憶し、
前記判断部は、前回測定時における測定濃度が前記許容範囲に含まれる場合、前記試薬容器内の泡が存在すると判断する、自動分析装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記判断部は、前記試薬容器内に異常が発生したと判断した場合、指示に応答して、前記試薬容器を排出準備位置まで移動させるように移動部を制御する、自動分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記判断部は、前記試薬容器内に異常が発生したと判断した場合、前記試薬容器を排出準備位置まで移動するか否かを選択する画面を表示画面上に表示するように表示装置を制御する、自動分析装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記判断部は、前記試薬容器内の異常以外の異常の可能性があると判断した場合、当該異常の可能性を外部に出力する、自動分析装置。
【請求項6】
試薬を収納する試薬容器から前記試薬を吸引し、
検体を収容する反応容器に前記試薬を吐出して反応液を生成する試薬分注部と、
前記検体の種類、および前記検体の種類毎に定められ、前記検体に含まれる測定対象成分の濃度に関連する濃度関連情報を記憶する記憶部と、
前記反応液に含まれる測定対象成分の濃度である測定濃度を検出する検出部と、
前記濃度関連情報および前記測定濃度に基づいて、前記試薬容器内の異常の発生の有無を判断する判断部と、
を備え、
前記判断部は、前回測定時の測定濃度と今回測定時の測定濃度との差の絶対値が第1閾値以下の場合には、前記試薬容器内の試薬の劣化の可能性と泡の発生の可能性があると判断する、自動分析装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記判断部は、前回測定時の測定濃度と今回測定時の測定濃度との差の絶対値が前記第1閾値より大きく第2閾値以下の場合には、前記試薬容器内の試薬の劣化の可能性があると判断する、自動分析装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記判断部は、前回測定時の測定濃度と今回測定時の測定濃度との差の絶対値が前記第2閾値より大きい場合には、
泡の発生の可能性があると判断する、自動分析装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記判断部は、前記試薬容器内に異常が発生したと判断した場合、指示に応答して、前記試薬容器を排出準備位置まで移動させるように移動部を制御する、自動分析装置。
【請求項10】
請求項6において、
前記判断部は、前記試薬容器内に異常が発生したと判断した場合、前記試薬容器を排出準備位置まで移動するか否かを選択する画面を表示画面上に表示するように表示装置を制御する、自動分析装置。
【請求項11】
検出部が、検体と、試薬容器から吸引された試薬とを含む反応液に含まれる測定対象成分の濃度を検出することと、
判断部が、記憶部から、前記検体の種類、および前記検体の種類毎に定められ、前記検体に含まれる測定対象成分の濃度に関連する濃度関連情報を取得することと、
前記判断部が、前記濃度関連情報および前記測定濃度に基づいて、前記試薬容器内における泡の発生の有無、あるいは前記試薬容器に収容された前記試薬の劣化の可能性を判断することと、
を含み、
前記濃度関連情報は、前記試薬容器内の泡の有無を判断するために定められた、前記測定対象成分の濃度の許容範囲を示し、
前記判断部は、前記測定濃度が前記許容範囲に含まれるか否かの結果に基づいて、前記試薬容器内における泡の発生の有無を判断する、異常検知方法。
【請求項12】
試薬分注部が、試薬を収納する試薬容器から前記試薬を吸引し、
検体を収容する反応容器に前記試薬を吐出して反応液を生成することと、
検出部が、前記反応液に含まれる測定対象成分の濃度である測定濃度を検出することと、
判断部が、前記検体の種類、および前記検体の種類毎に定められ、前記検体に含まれる測定対象成分の濃度に関連する濃度関連情報を記憶する記憶部から、前記濃度関連情報を読み出すことと、
前記判断部が、前記濃度関連情報および前記測定濃度に基づいて、前記試薬容器内の異常の発生の有無を判断する判断部と、
を含み、
前記判断部は、前回測定時の測定濃度と今回測定時の測定濃度との差の絶対値が第1閾値以下の場合には、前記試薬容器内の試薬の劣化の可能性と泡の発生の可能性があると判断する、異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置、および異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿などの生体試料の分析を行う自動分析装置では、分析項目ごとに異なる試薬を使用して分析を行う。これら試薬は、試薬の種類ごとに、それぞれ一定量が試薬容器に収納されており、通常では自動分析装置の試薬保管庫に搭載されている。
【0003】
自動分析装置では、装置の分析性能が正常であることを確認するために精度管理を実施する。精度管理では、患者検体の測定の合間に一定時間間隔または一定検体数間隔で、精度管理物質(コントロール検体)を測定し、その測定結果がコントロール検体に関連付けられた管理範囲内かどうか、或いは日内変動、日差変動を検討し、精密度が範囲内かどうかを判断している。
【0004】
精度管理の測定結果が範囲外になった場合、オペレータが自動分析装置、試薬、検体の状態から要因を調査する。自動分析装置の汚れ、試薬容器内の泡、検体の泡、など要因は様々である。オペレータは、試薬容器に何らかの不具合が発生していると判断した場合、当該試薬容器を自動分析装置から排出して、容器を調べる必要がある。
【0005】
試薬容器に発生した何らかの不具合の要因を検知する技術として、例えば、試薬容器内の泡検知がある。試薬容器内の泡を検知する技術としては、液面の高さの変化から泡を検出する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、試薬プローブの分注時の移動量から泡を検知する方法や初回分注からの液面高さの推移を記録する方法(後者について、例えば、特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-303937号公報
【文献】特開2004-170279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
精度管理で問題が発生したとき、試薬に問題あるか(例えば、泡の発生や試薬の劣化など)を検知して、その試薬容器を排出することにより、オペレータの原因調査作業を行いやすくすることが必要である。また、泡検知により排出された試薬の温度変化による劣化を防ぐ必要がある。
【0008】
しかしながら、上述した分注時の液面高さから泡を検知する方法では、試薬容器内の泡が前回の分注から残り続けた場合、液面高さに変化が発生しないため泡を検知できない可能性がある。したがって、分注時以降も泡の懸念を確認し、懸念がある試薬をなくすことが必要である。
本開示は、このような状況に鑑みて、オペレータによる、不具合の原因調査の作業を行いやすくする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は、試薬を収納する試薬容器から試薬を吸引し、検体を含む反応液を収容する反応容器に試薬を吐出する試薬分注部と、検体の種類、および検体の種類毎に定められ、検体に含まれる測定対象成分の濃度に関連する濃度関連情報を記憶する記憶部と、反応液に含まれる測定対象成分の濃度である測定濃度を検出する検出部と、濃度関連情報および測定濃度に基づいて、試薬容器内の異常の発生の有無を判断する判断部と、を備える、自動分析装置を提案する。
【0010】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素および多様な要素の組み合わせ、ならびに以降の詳細な記述と添付される請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0011】
本開示の技術によれば、オペレータは、自動分析装置における不具合の原因調査の作業を行いやすくする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】分析モジュールにおける移動部の構成例を示す図。
【
図4】測定部から受け取った測定濃度を記録する測定濃度データテーブルの構成例を示す図。
【
図5】各コントロール検体に割り当てられた情報を格納するコントロール検体割り当てデータテーブルの構成例を示す図。
【
図6】異常検出部が検出した装置の各種異常の警告または判断部が検出した泡の発生警告を格納する警告データテーブルの構成例を示す図。
【
図7】判断部による分析モジュールの精度管理処理の詳細を説明するためのフローチャート。
【
図8】
図7のステップ702で確認する測定結果の範囲を設定する画面構成例を示す図。
【
図9】対象の試薬容器に「泡発生あり」と判断された場合に、当該試薬容器を自動で排出するか否かを設定する泡試薬排出設定画面900の構成例を示す図。
【
図10】「泡発生あり」と判断された試薬容器を排出するかオペレータに問い合わせするための泡試薬排出選択画面1000の構成例を示す図。
【
図11】各コントロール検体と測定項目のセットに割り当てられた試薬劣化閾値と泡あり閾値を格納する試薬容器内原因閾値テーブル1100の構成例を示す図である。
【
図12】異常があると判断した試薬容器に対して、それが試薬容器内の泡によるものなのか、試薬劣化によるものなのかを判断する処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図13】各試薬容器内の液面高さを保持する試薬容器内液面高さテーブル1300の構成例を示す図である。
【
図14】試薬液面高さの変化から泡を検知する仕組みと試薬劣化の閾値から試薬劣化を判断する仕組みを組み合わせた処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0014】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0015】
更に、本開示の実施形態は、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0016】
なお、以後の説明では「テーブル」形式によって本開示の各情報について説明するが、これら情報は必ずしもテーブルによるデータ構造で表現されていなくても良く、リスト、DB、キュー等のデータ構造やそれ以外で表現されていても良い。そのため、データ構造に依存しないことを示すために「テーブル」、「リスト」、「DB」、「キュー」等について単に「情報」と呼ぶことがある。
【0017】
<自動分析装置の全体構成例>
図1は、自動分析装置1の全体構成例を示すシステムブロック図である。
【0018】
自動分析装置1は、全体管理用コンピュータ10と、分析モジュール20と、を備えている。全体管理用コンピュータ10は、通常のコンピュータの構成要素を含み、例えば、プロセッサ、メモリや記憶装置、通信装置、表示装置(表示部)、および入力装置などを有している。例えば、
図1における判断部11はプロセッサで構成され、記憶部12はメモリや記憶装置で構成される。なお、判断部11は、泡発生の可能性を判断し、記憶部12は、分析モジュール20から受け取った測定濃度に関する情報など(後述する
図4から
図6のテーブルの内容)を格納する。
【0019】
分析モジュール20は、測定濃度を検出する検出部21と、試薬容器を移動させる移動部22と、試薬容器に収容される試薬を吸引し、当該試薬を、該試薬および検体からなる反応液を生成するための反応容器に吐出する試薬分注部23と、分析モジュールの異常を検出する異常検出部24と、を備えている。異常検出部24は、例えば、分析モジュール20の内部に設けられ、検体用泡検知カメラ218(
図2参照)を含み、その他に、機構動作の各種異常を検知する各種センサ、情報処理の異常や分析結果の異常を検知する各種ソフトウェアで構成することができる。
【0020】
<分析モジュールの構成例>
図2は、分析モジュール20の全体構成例を示す図である。分析モジュール20は、搬送ラック201と、サンプル分注ノズル203と、インキュベータ(反応ディスク)204と、サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206と、サンプル分注チップおよび反応容器保持部材207と、反応容器攪拌機構208と、サンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔209と、ラック搬送ライン216と、試薬ディスク211と、試薬ディスクカバー212と、試薬分注ノズル213と、反応液吸引ノズル214と、検出ユニット215と、検体用泡検知カメラ218と、を備える。
【0021】
分析モジュール20の、搬送ラック201には、サンプルを保持するサンプル容器202が架設されており、ラック搬送ライン216によって、サンプル分注ノズル203の近傍のサンプル分注位置まで移動させる。ラック搬送ライン216の上方には検体用泡検知カメラ218が備え付けられている。検体用泡検知カメラ218は、検体の泡の有無を確認し、泡がある場合、全体管理用コンピュータ10に異常として通知する。
【0022】
インキュベータ204には、複数の反応容器205が設置可能であり、円周方向に設置された反応容器205をそれぞれ所定位置まで移動させるための回転運動が可能である。
【0023】
サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206は、X軸,Y軸,Z軸の3方向に移動可能であり、サンプル分注チップおよび反応容器保持部材207、反応容器攪拌機構208、サンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔209、サンプル分注チップ装着位置210、インキュベータ204の所定箇所の範囲を移動し、サンプル分注チップおよび反応容器の搬送を行う。
【0024】
サンプル分注チップおよび反応容器保持部材207には、未使用の反応容器とサンプル分注チップが複数設置されている。サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206は、サンプル分注チップおよび反応容器保持部材207の上方に移動し、下降して未使用の反応容器を把持した後上昇し、さらに、インキュベータ204の所定位置上方に移動し、下降して反応容器を設置する。
【0025】
次いで、サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206は、サンプル分注チップおよび反応容器保持部材207の上方に移動し、下降して未使用のサンプル分注チップを把持した後、上昇し、サンプル分注チップ装着位置210の上方に移動し、下降してサンプル分注チップをそこに設置する。
【0026】
サンプル分注ノズル203は、回動および上下動可能であり、サンプル分注チップ装着位置210の上方に回動移動した後、下降して、サンプル分注ノズル203の先端にサンプル分注チップを圧入して装着する。サンプル分注チップを装着したサンプル分注ノズル203は、搬送ラック201に載置されたサンプル容器202の上方に移動した後、下降して、サンプル容器202に保持されたサンプルを所定量吸引する。サンプルを吸引したサンプル分注ノズル203は、インキュベータ204の上方に移動した後、下降して、インキュベータ204に保持された未使用の反応容器205に、サンプルを吐出する。サンプル吐出が終了すると、サンプル分注ノズル203は、サンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔209の上方に移動し、使用済みのサンプル分注チップを廃棄孔から廃棄する。
【0027】
試薬ディスク(試薬設置機構)211には、複数の試薬容器217が設置されている。試薬ディスク211の上部には試薬ディスクカバー212が設けられ、試薬ディスク211内部は所定の温度に保温される。なお、試薬ディスクカバー212の一部に、開口部(試薬ディスクカバー開口部)を設けるようにしてもよい。
【0028】
試薬分注ノズル213は、回転と上下移動が可能であり、試薬ディスクカバー212の開口部の上方に回転移動した後に下降し、試薬分注ノズル213の先端を所定の試薬容器内の試薬に浸漬して、所定量の試薬を吸引する。試薬分注ノズル213は、ノズル外壁への液体付着量を少なくする為に、試薬容器内の液体の液面を検出しノズルの先端が液面よりわずか下に達した位置でノズルの下降動作を停止させ所定量の試薬を吸引する。試薬分注ノズル213は、上昇した後に、インキュベータ204の所定位置の上方に回転移動して、反応容器205に試薬を吐出する。
【0029】
吐出されたサンプルと試薬を保持する反応容器205は、インキュベータ204の回転によって所定位置に移動し、サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206によって、反応容器攪拌機構208へと搬送される。反応容器攪拌機構208は、反応容器に対して回転運動を加えることで反応容器内のサンプルと試薬を攪拌し、混和する。攪拌の終了した反応容器は、サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206によって、インキュベータ204の所定位置に戻される。
【0030】
反応液吸引ノズル214は回転と上下移動が可能であり、サンプルと試薬を分注し、攪拌が終了し、インキュベータ204で所定の反応時間が経過した反応容器205の上方に移動し、下降し、反応容器205内の反応液を吸引する。反応液吸引ノズル214で吸引された反応液は、検出ユニット215で分析される。
【0031】
反応液の吸引された反応容器205は、インキュベータ204の回転によって所定位置に移動し、サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構206によって、インキュベータ204からサンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔209の上方に移動し、廃棄孔から廃棄する。
【0032】
図3は、移動部22の全体構成例を示す図である。移動部22は、分析モジュール20の一部を構成し、回転式の試薬設置機構(試薬ディスク)211と、試薬分注ノズル213と、試薬攪拌機構(磁性粒子攪拌機構)219と、試薬ローダ220と、試薬情報読取機構221と、を含んでいる。試薬設置機構211および試薬ローダ220には、複数の試薬容器217が設置されている。試薬容器217内には、例えば、1つの検査項目の測定に必要な3つ一組の液状試薬がセットされている。そのうちの1つは、磁性粒子が入った試薬である。試薬情報読取機構221は、試薬ローダ220に隣接して設置されている。試薬容器217には試薬情報が付与されており、試薬情報読取機構221を用いて試薬ローダ220上の試薬情報を取得することが可能である。
【0033】
オペレータは、試薬容器217を試薬ローダ220の所定の位置に設置して試薬を搬入する。また、オペレータは全体管理用コンピュータ10を用いて試薬ローダ220を操作し、試薬容器217を試薬ローダ220の試薬排出準備位置に排出する。なお、通常、試薬ローダ220は冷蔵されている。
【0034】
<測定濃度データテーブルの構成例>
図4は、分析モジュール20の検出部21で測定した濃度を格納する測定濃度データテーブル400の構成例を示す図である。
【0035】
測定濃度データテーブル400は、測定時刻401と、測定したコントロール検体の種類を示す検体402と、測定で使用した試薬容器の情報403と、測定項目404と、測定濃度405と、泡の影響406と、を構成項目として含んでいる。ここで、泡の影響406の欄には、判断部11が泡の影響ありと判断した場合「あり」が格納される。
【0036】
例えば、測定濃度データ407は、コントロール検体dを試薬容器Dの試薬を用いて測定項目DDDを測定したら測定濃度が201であり、泡の影響があったことを示している。
【0037】
<コントロール検体割り当て情報テーブルの構成例>
図5は、各コントロール検体に割り当てられた情報を格納するコントロール検体割り当てデータテーブル500の構成例を示す図である。
【0038】
コントロール検体割り当て情報テーブル500は、コントロール検体の種類を示すコントロール検体501と、測定項目502と、対応するコントロール検体の正しい濃度を示す既知濃度503と、測定された濃度の許容下限値504と、測定された濃度の許容上限値505と、を構成項目として含んでいる。
【0039】
分析モジュール20に対しては、所定間隔(例えば、1日に1回など)で各コントロール検体を測定して装置の測定精度を確認する精度管理処理が実行される。このような制度管理処理では、測定結果(精度管理結果)が管理範囲内にあるかをチェックすることにより、分析モジュール20の精度が正常であるか否かが確認される。例えば、精度管理処理において、「コントロール検体a」の測定項目AAAを測定する場合、許容下限値504が「35」、許容上限値505が「65」と設定されている。従って、コントロール検体aの測定濃度が35以上65以下の範囲内にあれば分析モジュール20の動作として正常であると判断され、満たさなければ何らかの不具合があると判断される。
【0040】
<警告データテーブルの構成例>
図6は、異常検出部24(
図1参照)が検出した装置の各種異常の警告(以下、アラーム)。または判断部11が検出した泡の発生警告を格納する警告データテーブル600の構成例を示す図である。
【0041】
警告データテーブル600は、アラームの発生日時601と、アラームコード602と、アラーム内容603と、を構成項目として含んでいる。ここで、アラームは、例えば、情報処理での異常、機構動作での異常、分析結果の異常などの種類がある。
【0042】
<精度管理処理の詳細>
図7は、判断部11による分析モジュール20の精度管理処理の詳細を説明するためのフローチャートである。当該精度管理処理は、例えば、1つのコントール検体の1項目の測定が完了したタイミングで、判断部11が実行することができる。判断部11は、記憶部12に格納されている測定濃度データテーブル400、コントロール検体割り当て情報テーブル500、および警告データテーブル600の情報に基づいて、試薬容器内での泡発生の可能性を判断する。本実施形態では、「試薬容器X」を使用した「コントロール検体X」の測定項目「XXX」の測定が完了し、測定濃度データテーブル400にその情報408が格納されたケースを例に精度管理処理について説明する。なお、精度管理処理はコンピュータプログラムで実現可能であるので、プロセッサに対応する判断部11が各ステップの動作主体としているが、各ステップの処理あるいは複数のステップの処理をモジュール化して該当するモジュールを動作主体としてもよい。また、ここでは、試薬容器内の異常の例として試薬容器内の泡の発生の有無について説明しているが、試薬の劣化なども試薬容器内の異常とすることができる。
【0043】
(i)ステップ701
判断部11は、測定濃度データテーブル400の測定濃度405から「コントロール検体X」測定項目「XXX」の測定濃度「20」を取得する。そして、判断部11は、取得した測定濃度(濃度値20)がコントロール検体割り当て情報テーブル500の許容下限値504および許容上限値505で規定される許容範囲内にあるか否か確認する。測定濃度が許容範囲内である場合(ステップ701でYESの場合)、「異常なし」と判断され、精度管理処理は終了する。一方、測定濃度が許容範囲外である場合(ステップ701でNOの場合)、処理はステップ702に移行する。例えば、コントロール検体割り当て情報テーブル500では、「コントロール検体X」の測定項目「XXX」の許容下限値504は「90」、許容上限値505は「100」であるため、測定濃度「20」は許容範囲外となる。従って、判断部11は、ステップ702を実行することとなる。
【0044】
(ii)ステップ702
判断部11は、検出部21に問題がないか確認するため、「試薬容器X」以外の試薬容器を使用したコントロール検体の測定濃度が正常であるか、つまり各コントロール検体の測定濃度がコントロール検体割り当て情報テーブル500で設定された許容範囲内か否か確認する。このとき、測定濃度データテーブル400において泡の影響406が「あり」となっているコントロール検体は確認対象から除かれる。この場合、試薬容器の問題であり、検出部21の問題ではないからである。なお、どの期間の範囲まで確認するか(例えば、1日前までの測定濃度を確認するのか、2日前までの測定濃度を確認するか)はユーザが
図8の確認範囲設定画面800を用いて設定することができる。
図8では、2日前までの測定濃度を確認することがオペレータによって設定された例が示されている。
【0045】
他試薬容器(例えば、「試薬容器X」以外の試薬容器)を使用したコントロール検体の測定濃度が正常であると判断された場合(ステップ702でYESの場合)、処理はステップ703に移行する。他試薬容器(例えば、「試薬容器X」以外の試薬容器)を使用したコントロール検体の測定濃度が異常であると判断された場合(ステップ702でNOの場合)、処理はステップ705に移行する。また、確認対象の測定結果が無い場合にも処理はステップ705に移行する。
本実施形態では、測定濃度データテーブル400の全確認対象の測定濃度は許容範囲内であるため、処理はステップ703に移行する。
なお、ステップ702とステップ703の処理を実行することによって、試薬容器X以外には異常が発生していないことを確認している。
【0046】
(iii)ステップ703
判断部11は、警告データテーブル600を参照して、正常に測定できた日時から分析モジュール20に異常が発生していないか確認する。ただし、試薬容器の泡の検知のアラームは確認対象から除くこととする。特定の試薬容器で泡検知があったというアラームを確認対象としてしまうと、他の異常(例えば、センサの異常など装置自体の異常)と区別できず、泡発生の場合でも処理がステップ705に移行してしまうからである。つまり、泡発生の場合にはそれ以外の理由での問題とは分離して検出する必要があるからである。
【0047】
正常に測定できた日時から分析モジュール20に異常が発生していると判断された場合(ステップ703でYESの場合)、処理はステップ705に移行する。正常に測定できた日時から分析モジュール20に異常が発生していないと判断された場合(ステップ703でNOの場合)、処理はステップ704に移行する。
【0048】
なお、本実施形態において、測定濃度データテーブル400では、正常に測定できた最後の日時は2019年1月3日12:00となっている。また、警告データテーブル600では、最後に泡検知以外のアラームが発生したのは2019年1月1日9:30となっている。判断部11は、これらから測定できた日時から分析モジュール20には異常が発生していないと判断し、処理をステップ704に移行させる。
【0049】
(iv)ステップ704
判断部11は、分析モジュール20には問題なく、対象の試薬容器に泡が発生している可能性があると判断し、当該試薬容器を排出準備位置に排出する。つまり、上記例の場合、判断部11は、分析モジュール20には異常はなく、「試薬容器X」で泡発生の可能性があると判断し、試薬容器Xを排出準備位置(冷蔵されている試薬ローダ220)に排出する。また、判断部11は、泡発生の可能性があると判断した測定結果について、測定濃度データテーブル400の泡の影響406に「泡あり」の情報を格納する。
【0050】
(v)ステップ705
他測定濃度で異常があった場合、試薬容器Xにおける泡発生以外の要因で異常が発生した可能性がある。このため、判断部11は、オペレータに測定値(測定濃度)の異常をオペレータに通知する。なお、通知は、表示部の画面上にアラーム表示による方法を用いてもよいし、ブザーなどのアラーム音による方法を用いてもよい。
【0051】
<試薬排出設定>
(i)
図9は、対象の試薬容器に「泡発生あり」と判断された場合に、当該試薬容器を自動で排出するか否かを設定する泡試薬排出設定画面900の構成例を示す図である。
【0052】
オペレータがチェック項目ボックス901にチェックを入れてOKボタン902を押すことで、「泡発生あり」と判断された試薬容器を自動で排出することが可能となる。つまり、判断部11は、対象の試薬容器に「泡発生あり」と判断した場合、チェック項目ボックス901にチェックが入っていることに応答して自動的に当該試薬容器を排出する。
【0053】
一方、チェック項目ボックス901にチェックが入っていない場合には、判断部11は、後述の
図10で例示される画面を表示画面上に表示し、オペレータの指示入力を待つことになる。
【0054】
(ii)
図10は、「泡発生あり」と判断された試薬容器を排出するかオペレータに問い合わせするための泡試薬排出選択画面1000の構成例を示す図である。泡試薬排出選択画面1000は、上述のように、判断部11によって対象の試薬容器に泡発生の可能性が検知されたタイミングに、チェック項目ボックス901にチェックがなされていない場合に表示される画面である。
【0055】
泡試薬排出選択画面1000が表示されたときに、オペレータがOKボタン1001を押すと、判断部11で「泡発生の可能性あり」と判断された試薬容器が排出される。一方、オペレータがCancelボタン1002を押すと、判断部11で「泡発生の可能性あり」と判断された試薬容器は排出されず、試薬ディスク211に保持されたままとなる。
【0056】
<前回測定濃度の比較による試薬劣化と泡発生の区別>
なお、
図11の試薬容器内閾値テーブル1100を追加し、ステップ704を
図12の処理に置き換えることで、泡検知の精度をさらに向上することができる。
【0057】
<試薬容器内原因閾値テーブルの構成例>
図11は、各コントロール検体と測定項目のセットに割り当てられた試薬劣化閾値と泡あり閾値を格納する試薬容器内原因閾値テーブル1100の構成例を示す図である。
【0058】
試薬容器内閾値テーブル1100は、コントロール検体の種類を表すコントロール検体1101と、測定項目1102と、測定濃度異常の原因が試薬劣化にあるのかを識別するための試薬劣化閾値1103と、測定濃度異常の原因が泡発生にあるのかを識別するための泡あり閾値1104と、有効な前回の測定値1105と、を構成項目として含んでいる。
【0059】
前回と今回の測定濃度の差が試薬劣化閾値1103と泡あり閾値1104の閾値を超えるかで、測定濃度の異常の原因を判断する。今回と前回の測定濃度の差が試薬劣化閾値1103を超えない場合、判断部11は、区別できるだけの十分な差がないとして、試薬劣化と泡の両方の可能性ありと判断する。
【0060】
例えば、「コントロール検体a」の測定項目「AAA」の試薬劣化閾値1103は「前回測定値±25」、泡あり閾値は「前回測定値±30」に設定されている。したがって、-25≦(今回の測定濃度-前回の測定濃度)≦25であれば、区別できるだけの十分な差がないとして、試薬劣化と泡の両方の可能性ありと判断する。また-30≦(今回の測定濃度-前回の測定濃度)<-25または25<(今回の測定濃度-前回の測定濃度)≦30であれば試薬劣化の可能性ありと判断する。また、-30>(今回の測定濃度-前回の測定濃度)または30<(今回の測定濃度-前回の測定濃度)であれば試薬容器内に泡発生のありと判断する。
【0061】
本実施形態では、測定濃度の影響が試薬劣化より泡発生のほうが大きいとし、泡あり閾値1104の中に試薬劣化閾値1103が入る関係になっている。試薬を長時間常温にさらしたなどで試薬劣化が激しい場合、試薬劣化での測定濃度への影響が泡発生より大きくなり、この入れ子の関係が崩れる可能性がある。そのため、有効な前回の測定値1105を設定する。有効な前回の測定値1105の期間を超えた測定値は入れ子の関係が崩れている可能性があるとして使用しない。
【0062】
例えば、測定濃度データテーブル400の2019年1月3日12:00に測定した「コントロール検体c」の「測定項目CCC」について試薬劣化と泡発生の判断をする場合、「コントロール検体c」の「測定項目CCC」の有効な前回の測定値1105は1日前までなので、2019年1月2日12:00までの前回値を使用する。
【0063】
<前回測定濃度の比較による試薬劣化と泡発生の判断処理の詳細>
図12は、異常があると判断した試薬容器に対して、それが試薬容器内の泡によるものなのか、試薬劣化によるものなのかを判断する処理の詳細を説明するフローチャートである。本処理は、記憶部12に格納されている測定濃度データテーブル400、試薬容器内原因閾値テーブル1100の情報に基づいて、試薬容器内での泡発生の可能性、試薬劣化の可能性を判断する。
【0064】
(i)ステップ1201
判断部11は、同検体の同測定項目の測定濃度が過去に存在するかを判断する。過去の測定値を試薬劣化と泡発生の区別に使用するため、存在しない場合は泡と試薬劣化の区別が不可能としてステップ1207に移行する。存在する場合、ステップ1202に移行する。
【0065】
本実施形態では、判断部11は、「コントロール検体x」で測定項目「xxx」を過去に測定したかを判断する。まず判断部11は、試薬容器内原因閾値テーブル1100から「コントロール検体x」の測定項目「xxx」の有効な前回の測定値1105「12時間前まで」を取得する。したがって、判断部11は、今回の測定日時である2019年1月4日13:00から12時間前までの範囲で過去の測定値を取得する。測定濃度データテーブル400の2019年1月4日10:00に該当する測定濃度「98」があるため、ステップ1202に移行する。過去の測定濃度がない場合、閾値を求められないのでステップ1207に移行する。
【0066】
(ii)ステップ1202
判断部11は、試薬容器内原因閾値テーブル1100から試薬劣化、泡発生を区別する閾値を取得する。試薬容器内原因閾値テーブル1100に該当のコントロール検体と測定項目の組み合わせがない場合、閾値を取得できないため泡と試薬劣化の区別が不可能としてステップ1207に移行する。
【0067】
本実施例では、試薬容器内原因閾値テーブル1100から「コントロール検体x」の測定項目「xxx」の試薬劣化閾値1103と泡あり閾値1104を取得する。「コントロール検体x」の測定項目「xxx」の試薬劣化閾値1103は前回値の±15、泡ありの閾値1104は前回値の±20と取得できるため、ステップ1203へ移行する。
【0068】
(iii)ステップ1203
判断部11は、今回の測定値から試薬劣化と泡を区別できるかを判断する。試薬劣化閾値1103を超えない、つまり今回と前回の測定濃度の差が試薬劣化閾値を超えない場合、試薬劣化と泡を区別できるほど測定濃度に差異がないとして、ステップ1207に移行する。試薬劣化の閾値を超える場合、試薬劣化と泡を区別できるほど測定濃度に差異があるとしてステップ1204へ移行する。
【0069】
本実施形態では、今回の測定濃度は「20」、前回の測定濃度は「98」であり。今回と前回の測定濃度の差が「-78」と試薬劣化閾値1103「-15」を超えるため、試薬劣化と泡を区別できるほど測定濃度に差異があるとしてステップ1204へ移行する。
【0070】
(iv)ステップ1204
判断部11は、ステップ1202で取得した閾値から今回の測定濃度の異常が試薬劣化によるものか泡発生によるものかを判断する。今回と前回の測定濃度の差が、試薬劣化閾値1103を超えるかつ泡発生の閾値1104を超えない場合、試薬劣化の可能性ありと判断しステップ1205へ移行する。今回と前回の測定濃度の差が、泡発生の閾値1104を超える場合、試薬容器内に泡発生の可能性ありと判断しステップ1206へ移行する。
【0071】
本実施形態では、今回と前回の測定濃度の差が「-78」と泡あり閾値1104を超えているため、泡発生の可能性ありと判断しステップ1206へ移行する。
【0072】
(v)ステップ1205
ステップ1204で試薬劣化の可能性ありと判断した場合、判断部11は、オペレータに試薬劣化の可能性をオペレータに通知する。
【0073】
(vi)ステップ1206
ステップ1204で試薬容器内に泡発生の可能性ありと判断した場合、判断部11は、オペレータに泡発生の可能性をオペレータに通知する。
【0074】
(vii)ステップ1207
【0075】
ステップ1202で閾値を取得できなかった場合、もしくはステップ1203で試薬劣化と泡を区別できないと判断した場合、オペレータに試薬劣化もしくは泡発生の可能性ありを通知する。なお、どのステップまで進んだかを通知して、閾値が登録されていなかったのか、大きな差が発生しなかったのか、をオペレータに通知してもよい。
【0076】
なおステップ1205、ステップ1206、ステップ1207の通知は、表示部の画面上にアラーム表示による方法を用いてもよいし、ブザーなどのアラーム音による方法を用いてもよい。
【0077】
(viii)ステップ1208
判断部11は、分析モジュール20には問題なく、対象の試薬容器に問題があると判断し、当該試薬容器を排出準備位置に排出する。
【0078】
<試薬液面位置の変化による泡検知の検知例>
なお、試薬容器内液面高さテーブル1300を追加し、ステップ1230、ステップ1204、ステップ1205、ステップ1206を
図14の処理に置き換えることで、試薬液面高さの変化から泡を検知する仕組みを組み込むことができる。
【0079】
<試薬容器内液面高さテーブルの構成例>
図13は、各試薬容器内の液面高さを保持する試薬容器内液面高さテーブル1300の構成例を示す図である。
【0080】
試薬容器内液面高さテーブル1300は、試薬容器1301とその試薬容器の現在の試薬液面高さ1302を構成項目として含んでいる。
【0081】
液面高さ1302は、試薬を吸引したときの試薬分注ノズル213の降下量とその時の吸引量、ボトルサイズから求める。
【0082】
液面高さを比較することで、泡の発生を検知できる。例えば、試薬吸引時に泡の液面検知をした場合、試薬分注ノズル213の降下量が少なくなり、算出した液面高さが前回の液面高さよりも高くなる。このとき泡発生と判断できる。
【0083】
また、液面高さを比較することで、泡の消失も検知できる。例えば、前回の液面高さを泡がある状態で算出し、今回の試薬分注時に泡が消失していた場合、想定より液面高さが想定より低くなる。
【0084】
泡発生もしくは泡消失を識別する液面高さの変化の閾値は、オペレータが全体管理用コンピュータ10から設定しても良いし、製品設計者があらかじめ記憶部12に固定値を設定しておいてもよい。
【0085】
<試薬液面位置の変化による泡検知処理の詳細>
図14は、試薬液面高さの変化から泡を検知する仕組みと試薬劣化の閾値から試薬劣化を判断する仕組みを組み合わせた処理を説明するフローチャートである。本処理は、記憶部12に格納されている試薬容器内原因閾値テーブル1100、試薬容器内液面高さテーブル1300の情報に基づいて、試薬容器内での泡発生もしくは泡消失の可能性、試薬劣化の可能性を判断する。
【0086】
(i)ステップ1401
判断部11は、今回の試薬吸引で試薬分注ノズル213が降下した量と試薬ボトルの形状から、液面高さを算出する。算出した液面高さと試薬容器内液面高さテーブル1300に記録されている前回の液面高さ1302とを比較する。比較した結果、今回算出した液面高さが前回算出した液面高さより大きい場合、泡発生の可能性ありと判断しステップ1402へ移行する。今回算出した液面高さが前回算出した液面高さより小さい場合、泡消失の可能性ありと判断しステップ1403へ移行する。今回算出した液面高さと前回算出した液面高さの差がない場合、泡発生、泡消失の可能性なしと判断しステップ1404へ移行する。
【0087】
本実施形態では、泡発生を識別するための液面高さの変化の閾値を「2mm」、泡消失を識別する液面高さ変化の閾値を「-4mm」に設定していた場合、今回算出した「試薬容器X」の液面高さが前回の液面高さより「2mm」より大きければ泡発生と判断し、「-4mm」より小さければ消失と判断し、「-4mm以上、2mm以下」であれば泡発生、泡消失なしと判断する。
【0088】
(ii)ステップ1402
ステップ1401で泡発生の可能性ありと判断した場合、判断部11は、オペレータに試薬劣化の可能性をオペレータに通知し、ステップ1407へ移行する。
【0089】
(i)ステップ1403
ステップ1401で泡消失の可能性ありと判断した場合、判断部11は、オペレータに泡消失の可能性をオペレータに通知し、ステップ1407へ移行する。
【0090】
なお、泡消失の可能性ありと判断した場合、その試薬容器を使った以前の測定結果をオペレータに合わせて通知してもよい。
【0091】
(i)ステップ1404
判断部11は、ステップ1401で、泡発生または泡消失の可能性がないと判断した場合、前回と今回の測定濃度の差が試薬劣化の閾値を超えているか確認する。試薬劣化の閾値を超える場合は、ステップ1405へ移行する。試薬劣化の閾値より小さい場合は、設定している閾値では測定濃度の異常が泡によるものか、試薬劣化によるものかを判断できなかったとしてステップ1406へ移行する。
【0092】
(i)ステップ1405
判断部11は、ステップ1404で、試薬劣化の可能性ありと判断した場合、オペレータに対象の試薬容器に試薬劣化の可能性ありを通知する。
【0093】
(i)ステップ1406
判断部11は、ステップ1404で、前回と今回の測定濃度の差が試薬劣化の閾値より小さかった場合、測定濃度の異常が泡によるものか、試薬劣化によるものかを判断できなかったことをオペレータに通知する。
【0094】
(i)ステップ1407
判断部11は、分析モジュール20には問題なく、対象の試薬容器に問題があると判断し、当該試薬容器を排出準備位置に排出する。
【0095】
なおステップ1402、ステップ1403、ステップ1405、ステップ1406の通知は、表示部の画面上にアラーム表示による方法を用いてもよいし、ブザーなどのアラーム音による方法を用いてもよい。
【0096】
<まとめ>
(i)本実施形態によれば、自動分析装置において、検体(例えば、各種コントロール検体)の種類、および検体の種類毎に定められ、検体に含まれる測定対象成分の濃度に関連する濃度関連情報と反応液に含まれる測定対象成分の濃度とに基づいて(当該2つの情報を比較することにより)、試薬容器内の異常の発生(試薬容器内の泡の発生や、試薬容器内に含まれる試薬自体の劣化)の有無を判断する。このように、精度管理の測定結果が異常になった際、試薬に問題があるかを検知し、問題がある試薬を自動で排出することで、オペレータの原因調査作業を行いやすくすることが可能となる。
【0097】
具体的には、上記濃度関連情報は、試薬容器内の泡の有無を判断するために定められた、前記測定対象成分の濃度の許容範囲を示している。そして、判断部(プロセッサ)は、測定濃度が許容範囲に含まれるか否かの比較結果に基づいて、試薬容器内で泡が発生したか、試薬の劣化があるか否かを判断する。このように、本実施形態では、測定濃度が適切な範囲内にあるかについて判断するだけで試薬の異常の可能性を検知できる。つまり、比較的シンプルな処理により試薬における異常の有無の可能性を検知することができる。
【0098】
また、試薬容器内に異常が発生したと判断した場合、判断部は、指示(オペレータによる自動排出の指示、あるいは都度排出の指示)に応答して、試薬容器を排出準備位置(試薬容器が冷蔵されている位置)まで移動させるように移動部を制御している。このように、異常があると判断された試薬容器を冷蔵されている位置に排出することで、温度変化による試薬の劣化がなくなり、オペレータは好きなタイミングで排出された試薬容器を確認することができるようになる。また、異常が試薬容器内の泡の発生である場合には、泡の可能性が高い試薬容器を排出することで、泡による結果不正の懸念を減らし、測定結果への信頼を向上させることができる。
【0099】
また、前回の測定濃度と許容範囲を超えた測定濃度とを比較することで、試薬容器内の異常が試薬容器内の泡によるのか、試薬容器内に含まれる試薬自体の劣化によるのかを判断している。このように、さらに詳細に試薬容器内の異常の要因を判断することで、オペレータの原因調査作業を行いやすくしている。
【0100】
また、本発明は、試薬容器内の試薬液面の変化による泡の検知と組み合わせることによっても、さらに詳細に試薬容器内の異常の要因を判断することができる。
【0101】
(ii)実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0102】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0103】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0104】
ここで述べたプロセスおよび技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはない。また、汎用目的の多様なタイプのデバイスが本開示の記述に従って使用することができる。なお、本開示の技術を実行する上で、専用の装置を構築するのが有益である場合があるかもしれない。
【0105】
本実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示の技術は、具体例な実施形態に関連して記述したが、これらは、本開示の技術を限定するためではなく、説明のためである。本分野にスキルのある者であれば、本開示の技術を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、およびファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0106】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0107】
1 自動分析装置
11 判断部
12 記憶部
10 全体管理用コンピュータ
20 分析モジュール
21 検出部
22 移動部
23 試薬分注部
24 異常検出部
201 搬送ラック
202 サンプル容器
203サンプル分注ノズル
204インキュベータ
205 反応容器
206 サンプル分注チップおよび反応容器搬送機構
207 サンプル分注チップおよび反応容器保持部材
208 反応容器攪拌機構
209 サンプル分注チップおよび反応容器廃棄孔
210 サンプル分注チップ装着位置
211 試薬ディスク
212 試薬ディスクカバー
213 試薬分注ノズル
214 反応液吸引ノズル
215 検出ユニット
216 ラック搬送ライン
217 試薬容器
218 検体用泡検知カメラ
219 試薬攪拌機構(磁性粒子攪拌機構)
220 試薬ローダ
221 試薬情報読取機構