(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20230428BHJP
【FI】
H01L33/60
(21)【出願番号】P 2019062501
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】八木 健太郎
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-201273(JP,A)
【文献】特開2017-157723(JP,A)
【文献】特開2016-178307(JP,A)
【文献】特開2007-129192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0006188(US,A1)
【文献】特開2015-228397(JP,A)
【文献】特開2015-012143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0233625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01L 31/00 - 31/02
H01L 31/08 - 31/10
H01L 31/18
H01L 27/14 - 27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、前記シリコン基板と接する第1面を含む半導体積層体と、を含む構造体の周りに前記シリコン基板に対向する側面を含む樹脂層を形成する工程と、
前記シリコン基板を除去して、前記樹脂層から前記半導体積層体の
前記第1面を露出させる工程と、
前記半導体積層体の前記第1面及び前記樹脂層の
前記側面に、
前記半導体積層体の前記第1面に対向する第1面対向領域と、
前記樹脂層の前記側面に対向する側面対向領域と、を含む反射膜を形成する工程と、
前記反射膜の前記第1面対向領域を除去し前記反射膜の前記側面対向領域の少なくとも一部を残す異方性エッチングを実施する工程と、
前記異方性エッチングを実施する工程の後に、前記樹脂層及び前記側面対向領域を覆うように、前記シリコン基板が除去されて形成された領域の少なくとも一部に透光性の樹脂部材を形成する工程と、
前記樹脂部材の一部及び前記樹脂層の一部を除去し、前記側面対向領域を露出させる工程と、
を備え、
前記反射膜を形成する工程において、前記樹脂層の
前記側面の少なくとも一部は、前記第1面に対して実質的に垂直である、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層は、前記半導体積層体から前記シリコン基板に向かう第1方向において、前記シリコン基板と重ならない第2面をさらに含み、
前記反射膜を形成する工程において、前記反射膜は前記第2面と対向する第2面対向領域をさらに含み、
前記異方性エッチングを実施する工程において、前記第2面対向領域をさらに除去する、請求項1記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記側面対向領域は、前記第1面対向領域及び前記第2面対向領域と連続している、請求項2記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記側面対向領域は、前記第1方向において前記半導体積層体と重ならない、請求項2または3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体積層体は、第1端部及び第2端部を含み、前記第1端部から前記第2端部に向かう第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、
前記シリコン基板は、第3端部及び第4端部を含み、前記第3端部から前記第4端部に向かう方向は、前記第2方向に対して平行であり、
前記第2方向において、前記第1端部及び前記第2端部は、前記第3端部と前記第4端部との間にある、請求項2~4のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記シリコン基板は、第3面と第4面を含み、
前記第3面は、前記第1面と接し、
前記第3面は、前記第1面と、前記第4面と、の間にあり、
前記樹脂層を形成する工程は、前記樹脂層により前記第4面を覆うことを含み、
前記樹脂層は、前記第4面を覆う第1領域を含み、
前記第1面を露出させる工程は、前記第1領域を除去して、前記シリコン基板を露出させることを含む、請求項2~5のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記異方性エッチングを実施する工程の後
であって、前記樹脂部材を形成する工程の前に、前記シリコン基板が除去されて形成された領域の少なくとも一部に波長変換部材を形成する工程をさらに備え
、
前記樹脂部材は、前記波長変換部材を覆うように形成される、請求項1~6のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1面を露出させる工程と、前記反射膜を形成する工程と、の間に、前記第1面に粗面加工を施す工程をさらに備えた請求項1~7のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記シリコン基板は、前記第1面に接する第3面を含み、
前記側面の少なくとも一部は、前記第3面に対して実質的に垂直である、請求項1~
5のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LED素子の側面に反射性の樹脂などからなる反射部材を配置した発光装置が開示されている。発光装置において、光取り出し効率の更なる向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、高い光取り出し効率を有する発光装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態における発光装置の製造方法は、シリコン基板と、前記シリコン基板と接する第1面を含む半導体積層体と、を含む構造体の周りに前記シリコン基板に対向する側面を含む樹脂層を形成する工程を含む。前記製造方法は、前記シリコン基板を除去して、前記樹脂層から前記半導体積層体の第1面を露出させる工程を含む。前記製造方法は、前記第1面及び前記樹脂層の側面に、前記第1面に対向する第1面対向領域と、前記側面に対向する側面対向領域と、を含む反射膜を形成する工程を含む。前記製造方法は、前記反射膜の前記第1面対向領域を除去し前記反射膜の前記側面対向領域の少なくとも一部を残す異方性エッチングを実施する工程を含む。前記反射膜を形成する工程において、前記樹脂層の側面の少なくとも一部は、前記第1面に対して実質的に垂直である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、高い光取り出し効率を有する発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る発光装置の一部を例示する模式的断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る発光装置の一部を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る発光装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各構成の厚さと幅との関係、構成間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ構成を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図2~
図8は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る発光装置の製造方法において、構造体15に樹脂層を形成する(ステップS110)。例えば、樹脂層30を形成する工程において、
図2に示すような構造体15を準備し、構造体15の周りに樹脂層30を形成する。構造体15は、シリコン基板10及び半導体積層体20を含む。半導体積層体20は、シリコン基板10と接する第1面20faを含む。第1面20faは、シリコン基板10に対向する。構造体15は、例えば、シリコン基板10を成長用基板として用い、このシリコン基板10上に半導体積層体20が形成されたものである。樹脂層30は、シリコン基板10の側面に対向する側面30sを含む。
【0010】
半導体積層体20からシリコン基板10に向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0011】
第1面20faは、X-Y平面に沿う。第1面20faは、X-Y平面に対して実質的に平行である。側面30sは、X-Y平面と交差する。
【0012】
図2に示すように、樹脂層30を形成する工程は、構造体15が支持部材60に固定された状態で行われる。支持部材60は、例えば、構造体15を実装するための実装基板である。この状態において、支持部材60とシリコン基板10との間に半導体積層体20が設けられる。半導体積層体20は、支持部材60と対向する対向面20fcを含む。対向面20fcは、第1面20faと支持部材60との間にある。例えば、半導体積層体20の対向面20fcに第1素子電極20E及び第2素子電極20Fが設けられる。
【0013】
一方、支持部材60の表面に第1電極51及び第2電極52が設けられる。例えば、第1電極51及び第1素子電極20Eが、第1接続部材51Cにより電気的に接続される。例えば、第2電極52及び第2素子電極20Fが、第2接続部材52Cにより電気的に接続される。第1電極51と第2電極52との間に電圧を印加することで、半導体積層体20に電流が供給される。これにより、半導体積層体20から光が出射する。
【0014】
樹脂層30は、例えば、樹脂及び複数の粒子を含む。複数の粒子の周りに樹脂がある。粒子は、半導体積層体20からの光を拡散する機能を有する。粒子は、例えば、酸化チタンまたは酸化アルミニウムなどを含む。樹脂は、例えば、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂などを含む。樹脂層30は、例えば、シリコーン樹脂と酸化チタンとを含む。半導体積層体20から出射される光のピーク波長における樹脂層30の反射率は、例えば、そのピーク波長における半導体積層体20の反射率よりも高い。
【0015】
例えば、支持部材60に構造体15が実装された後に、樹脂が塗布され、その樹脂を硬化することで、樹脂層30が形成される。
【0016】
図2に示すように、この例では、樹脂層30の一部は、シリコン基板10の上にも形成されている。
図2に示すように、シリコン基板10は、第3面10fcと第4面10fdを含む。第3面10fcは、半導体積層体20の第1面20faと接する。第3面10fcは、第1面20faに対向する。第3面10fcは、第1面20faと、第4面10fdと、の間にある。第4面10fdは、第3面10fcの反対側の面である。
【0017】
図2の例において、例えば、半導体積層体20の第1面20faは、半導体積層体20の上面である。例えば、シリコン基板10の第3面10fcは、シリコン基板10の下面である。例えば、シリコン基板10の第4面10fdは、シリコン基板10の上面である。
【0018】
樹脂層30を形成する工程(ステップS110)において、樹脂層30によりシリコン基板10の第4面10fdを覆っていても良い。樹脂層30は、第1領域31を含む。第1領域31は、第4面10fdに対向する。第1領域31は、例えば、第4面10fdと接する。第1領域31は、例えば、シリコン基板10の第4面10fdを覆う。第1領域31と半導体積層体20との間に、シリコン基板10がある。
【0019】
図2に示すように、この例では、樹脂層30は、側面30sに加えて、第2面30fbをさらに含む。第2面30fbは、第1方向D1において、シリコン基板10と重ならない。第2面30fbは、樹脂層30の第1領域31と隣り合っている。
【0020】
このような構成を有する樹脂層30が、ステップS110において形成される。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る発光装置の製造方法において、シリコン基板10を除去して、樹脂層30から半導体積層体20の第1面20faを露出させる(ステップS120)。
【0022】
この例では、
図3に示すように、まず、樹脂層30の第1領域31(例えば、第4面10fdを覆う部分)を除去する。これにより、シリコン基板10を露出させる。樹脂層30の第1領域31を除去する工程では、樹脂層30の第2面30fbを含む部分も除去される。このような樹脂層30の一部の除去は、例えば、研削(CMPなどを含む)などにより実施できる。
【0023】
この後、
図4に示すように、シリコン基板10を除去することで、第1面20faが露出される。例えば、RIEなどにより、シリコン基板10が除去される。シリコン基板10を除去することで、第1面20faの一部が除去されていてもよい。
【0024】
図3及び
図4に示すように、第1面20faを露出させる工程(ステップS120)は、樹脂層30の第1領域31(第4面10fdを覆う部分)を除去して、シリコン基板10を露出させることを含んでも良い。
【0025】
図1に示すように、この後、必要に応じて、粗面加工(ステップS125)を実施しても良い。粗面加工については、後述する。
【0026】
図1に示すように、反射膜を形成する(ステップS130)。例えば、
図5に示すように、第1面20fa、及び、樹脂層30の側面30sに、反射膜40を形成する。反射膜40は、第1面対向領域40fp及び側面対向領域40spを含む。第1面対向領域40fpは、第1面20faに対向する。側面対向領域40spは、樹脂層30の側面30sに対向する。
【0027】
この例では、反射膜40は、第2面対向領域40fqをさらに含む。第2面対向領域40fqは、樹脂層30の第2面30fbと対向する。例えば、側面対向領域40spは、第1面対向領域40fp及び第2面対向領域40fqと連続している。
【0028】
反射膜40は、例えばスパッタリング法などのより形成される。1つの例において、反射膜40は、DBR(Distributed Bragg Reflector)を含む。反射膜40は、金属膜を含んでも良い。半導体積層体20からの光に対する反射膜40の反射率は、樹脂層30の反射率よりも高い。反射膜40の例については、後述する。
【0029】
図1に示すように、異方性エッチングを実施する(ステップS140)。
図6に示すように、ステップS140において、反射膜40の第1面対向領域40fpが除去される。このとき、反射膜40の側面対向領域40spの少なくとも一部を残す。異方性エッチングにおいて、例えば、フッ素などのエッチングガスなどが用いられる。
【0030】
反射膜40が第2面対向領域40fqを含む場合、ステップS140において、第2面対向領域40fqも除去される。
【0031】
本実施形態においては、反射膜を形成する工程(ステップS130)において、樹脂層30の側面30sの少なくとも一部は、第1面20faに対して実質的に垂直である。例えば、
図6に示すように、側面30sの少なくとも一部と、第1面20faと、でなす角度θ2は、80度以上100度以下である。
【0032】
この角度θ2は、樹脂層30の形成(
図2参照)において決まる。
図2に示すように、シリコン基板10は、半導体積層体20の第1面20faに接する第3面10fcを含む。側面30sの少なくとも一部は、シリコン基板10の第3面10fcに対して実質的に垂直である。側面30sの少なくとも一部と、シリコン基板10の第3面10fcと、でなす角度θ1は、80度以上100度以下である。角度θ1は、角度θ2に対応する。角度θ1は、例えば、シリコン基板10を割断して形成される割断面により決まる。例えば、シリコン基板10を割断し個辺化する際に、シリコン基板10の断面視形状が矩形状となるようにする。これにより、樹脂層30の側面30sは、樹脂層30の上面に対して実質的に垂直になる。
【0033】
樹脂層30の側面30sの少なくとも一部が、第1面20faに対して実質的に垂直であることにより、異方性エッチング(ステップS140)において、第1面対向領域40fp及び第2面対向領域40fqが効率的に除去され、側面対向領域40spが残りやすい。異方性エッチング後に残る側面対向領域40spのダメージが抑制できる。反射膜40の側面対向領域40spにおいて、半導体積層体20からの光に対して高い光反射特性が得やすい。これにより、高い光取り出し効率の発光装置を製造できる。
【0034】
本実施形態において、樹脂層30の上面に対して略垂直である側面30sに形成された反射膜40は異方性エッチングにより除去されず、半導体積層体20の表面、及び、樹脂層30の上面に設けられた反射膜40を選択的に除去することができる。その結果、半導体積層体20からの光を、樹脂層30の側面30sに形成された反射膜40により効率よく反射することが可能となる。本実施形態によれば、高い光取り出し効率を有する発光装置を効率よく製造することができる。
【0035】
本実施形態においては、シリコン基板10の外形に沿う樹脂層30が形成される。この樹脂層30の側面30sは、シリコン基板10の側面の形状に沿っている。この側面30sに対向する側面対向領域40spを含む反射膜40を形成し、反射膜40の一部(側面対向領域40spを除く部分)を除去する。このような側面30sを形成し反射膜40の一部を除去することで、側面対向領域40spが、高い精度で形成できる。
【0036】
例えば、反射膜40の一部を除去する際に、マスクなどを形成し、そのマスクを用いて反射膜40の一部を除去する参考例が考えられる。この参考例において、マスクの開口部の位置ずれが生じる可能性がある。このため、位置ずれを考慮したマージンが適用され、その結果、発光装置の小型化に制限が生じる。その結果、反射膜40による十分な光反射特性を得ることが困難になる。さらに、発光装置を製造する上での工程が増えるため、コストが上昇する。
【0037】
これに対して、本実施形態では、反射膜の形成(ステップS130)において、樹脂層30の側面30sの少なくとも一部が、第1面20faに対して実質的に垂直である。このため、異方性エッチング(ステップS140)により、第1面対向領域40fp及び第2面対向領域40fqが効率的に除去できる。異方性エッチング後に残る側面対向領域40spのダメージが抑制できる。これにより、高効率の側面対向領域40spによる高い光反射特性が得られ、高い光取り出し効率の発光装置を製造できる。さらに、発光装置を製造する工程が簡単であり、コストの点で有利である。
【0038】
本実施形態において、以下に説明する工程がさらに実施されても良い。
図1に示すように、波長変換部材を形成する(ステップS150)。例えば、
図7に示すように、異方性エッチングを実施する工程(ステップS140)の後に、波長変換部材35を形成する。波長変換部材35は、シリコン基板10が除去されて形成された領域R1の少なくとも一部に形成される。第1方向D1において、波長変換部材35の厚さは、例えば、側面対向領域40spの厚さと同じ、もしくは波長変換機能が損なわれない程度に薄く形成される。これにより、波長変換部材35からの光を側面対向領域40spにより反射させやすい。
【0039】
波長変換部材35は、例えば、複数の波長変換粒子(例えば蛍光体粒子)と、複数の波長変換粒子の周りの樹脂と、を含む。樹脂は、例えば、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂などを含む。
【0040】
本実施形態において、
図1に示すように、波長変換部材を形成する工程(ステップS150)の後に、樹脂部材を形成する工程(ステップS160)が設けられても良い。
図7に示すように、例えば、波長変換部材35を形成する工程の後に、シリコン基板10が除去されて形成された領域R1の残りの部分に、樹脂部材36が形成される。樹脂部材36は、例えば、透光性の樹脂である。樹脂部材36は、例えば、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂などを含む。この例では、樹脂部材36は、樹脂層30の第2面30fbに対向する部分(樹脂層30の一部36c)を含む。
【0041】
図1に示すように、樹脂部材を形成する工程(ステップS160)の後に、樹脂層30の第2面30fbを含む部分を除去する(ステップS170)。例えば、
図8に示すように、
図7の状態から、樹脂部材36の一部36c(第2面30fbに対向する部分)を除去する。そして、この例では、側面対向領域40spが露出するまで、樹脂部材36の一部が除去される。これにより、側面対向領域40spの上に樹脂部材が位置せず、その樹脂部材中に伝搬する光が存在しなくなる。その結果、発光装置の第2方向D2(
図2参照)に拡がる光を抑制し、「見切り」を向上させることができる。正面輝度を高くできる。樹脂部材36の一部の除去は、例えば、研削(CMPなどを含む)などにより実施できる。
【0042】
このようにして、発光装置110が得られる。発光装置110においては、側面対向領域40spにより、例えば、高い光取り出し効率が得られる。
【0043】
発光装置110において、側面対向領域40spの第2方向D2に沿う長さ40t(厚さ、
図12参照))は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。側面対向領域40spの第1方向D1に沿う長さ40h(高さ、
図12参照))は、例えば、50μm以上200μm以下である。これらの数値は、一例であり、適宜変更しても良い。
【0044】
本実施形態に係る製造方法において、反射膜40の側面対向領域40spは、第1方向D1(Z軸方向)において、半導体積層体20と重ならない(
図6参照)。側面対向領域40spは、X-Y平面において、半導体積層体20の第1面20faの外側にある半導体積層体20からの光は、半導体積層体20の第1面20faから主に第1方向D1に出射する。側面対向領域40spが、X-Y平面において第1面20faの外側にあることで、第1面20faから出射した光が側面対向領域40spで妨げられることがなくなるため効率的に半導体積層体20からの光を取り出すことができる。
【0045】
図2に示すように、シリコン基板10の外縁は、半導体積層体20の外縁よりも外側にあることが好ましい。
図2に示すように、例えば、半導体積層体20は、第1端部20a及び第2端部20bを含む。第1端部20aから第2端部20bに向かう第2方向D2は第1方向D1(Z軸方向)に対して垂直である。第2方向D2は、例えば、X軸方向である。シリコン基板10は、第3端部10c及び第4端部10dを含む。第3端部10cから第4端部10dに向かう方向は、第2方向D2に沿う。例えば、第3端部10cから第4端部10dに向かう方向は、第2方向D2に対して平行である。第2方向D2において、第1端部20a及び第2端部20bは、第3端部10cと第4端部10dとの間にある。
【0046】
シリコン基板10の両方の端部が、半導体積層体20の両方の端部よりも外側にあることで、例えば、光を効率的に取り出すことができる。
【0047】
シリコン基板10の外縁が半導体積層体20の外縁よりも外側にあることで、例えば、シリコン基板10を除去した際に、半導体積層体20が設けられた領域の外側に反射膜40を形成するための領域を確保することができる。
【0048】
図1に示すように、本実施形態において、第1面20faを露出させる工程(ステップS120)と、反射膜40を形成する工程(ステップS130)と、の間に、第1面20faに粗面加工を施す工程(ステップS125)が実施されても良い。
【0049】
図9は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、第1面20faを露出させた後、第1面20faに粗面加工を施す。これにより、第1面20faに凹凸20dpが形成される。凹凸20dpの高さ20hは、例えば、1nm以上3nm以下である。凹凸20dpの高さ20hは、凹凸20dpの頂部と、凹凸20dpの底部と、の間の距離に対応する。この距離は、例えば、第1方向D1に沿う距離である。
【0050】
凹凸20dpは、例えば、ウエットエッチングまたはドライエッチングにより形成できる。粗面加工は、粗面加工の前における凹凸20dpの高さ20hよりも、粗面加工の後における凹凸20dpの高さ20hを大きくすることに対応する。
【0051】
光出射面となる第1面20faに凹凸20dpが形成されることで、光取り出し効率がさらに向上する。
【0052】
以下、反射膜40の例について説明する。
図10は、第1実施形態に係る発光装置の一部を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、反射膜40は、交互に設けられた複数の第1膜41及び複数の第2膜42を含む。複数の第1膜41の1つの屈折率は、複数の第2膜42の1つの屈折率とは異なる。例えば、反射膜40は、複数の第1膜41と、第2膜42を含む。第2膜42は、複数の第1膜41の1つと、複数の第1膜41の別の1つと、の間に設けられる。
【0053】
第1膜41及び第2膜42は、例えば、誘電体膜である。第1膜41及び第2膜42は、酸化物(例えば金属酸化物)などを含む。例えば、第1膜41は、第1元素及び酸素を含む。第2膜42は、第2元素及び酸素を含む。第1元素は、第2元素とは異なる。反射膜40は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)である。このような構成により、高い反射率が得られる。光学特性において、高い安定性が得られる。高い耐久性が得られる。
【0054】
図11は、第1実施形態に係る発光装置の一部を例示する模式的断面図である。
図11に示すように、反射膜40は、金属膜45及び誘電体膜46を含む。金属膜45は、誘電体膜46と、樹脂層30の側面30sと、の間に設けられる。金属膜45は、例えば、Ag、Al及びRhよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。誘電体膜46は、例えば、酸化シリコンなどを含む。このような構成においても、高い反射率が得られる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態は、発光装置に係る。
図12は、第2実施形態に係る発光装置を例示する模式的断面図である。
図12に示すように、実施形態に係る発光装置110は、半導体積層体20、樹脂層30及び反射膜40を含む。
【0056】
半導体積層体20は、第1導電形の第1半導体層21、第2導電形の第2半導体層22、及び、発光層23を含む。発光層23は、第1半導体層21と第2半導体層22との間に設けられる。例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。これらの半導体層は、例えば、ガリウム及び窒素を含む。半導体積層体20は、例えば、窒化物半導体からなる。
【0057】
第2半導体層22から第1半導体層21に向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、例えば、Z軸方向に沿う。
【0058】
樹脂層30は、第1~第6部分領域pr1~pr6を含む。第2方向D2において、第1部分領域pr1と第2部分領域pr2との間に半導体積層体20が設けられる。第2方向D2は、第1方向D1と交差する。例えば、第2方向D2は、第1方向D1と交差する。例えば、第2方向D2は、第1方向D1に対して垂直である。第2方向D2は、例えば、X軸方向である。
【0059】
第2方向D2において、第1部分領域pr1と半導体積層体20との間に、第3部分領域pr3が設けられる。第2方向D2において、第2部分領域pr2と半導体積層体20との間に、第4部分領域pr4が設けられる。第1部分領域pr1から第5部分領域pr5に向かう方向は、第1方向D1(Z軸方向)に沿う。第2部分領域pr2から第6部分領域pr6に向かう方向は、第1方向D1(Z軸方向)に沿う。第1~第6部分領域pr1~pr6は、樹脂層30における第1~第6位置に対応する。第1~第6部分領域pr1~pr6は、互いに連続する。
【0060】
反射膜40は、第1領域41p及び第2領域42pを含む。第3部分領域pr3から第1領域41pに向かう方向は、第1方向D1(Z軸方向)に沿う。第4部分領域pr4から第2領域42pに向かう方向は、第1方向D1に沿う。
【0061】
実施形態に係る発光装置110においては、上記の反射膜40が設けられることで、半導体積層体20から出射する光を反射膜40で効果的に反射させる。光の取り出し効率を向上できる。実施形態によれば、高効率の発光装置を提供できる。
【0062】
第5部分領域pr5は、第1領域41pに対向する第1対向面38faを含む。例えば、第1対向面38faは、第1方向D1に沿う。例えば、第1対向面38faは、第1方向D1に対して実質的に平行である。
【0063】
第6部分領域pr6は、第2領域42pに対向する第2対向面38fbを含む。例えば、第2対向面38fbは、第1方向D1に沿う。例えば、第2対向面38fbは、第1方向D1に対して実質的に平行である。
【0064】
第1対向面38fa及び第2対向面38fbが第1方向D1に沿うことで、反射膜40の形成が容易である。例えば、反射膜40の表面は、第1方向D1に沿う。光を反射膜40で反射させ、光を効率的に取り出すことができる。
【0065】
発光装置110において、第1領域41p及び第2領域42pのそれぞれの第2方向D2に沿う長さ(厚さ)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。第1領域41p及び第2領域42pのそれぞれの第1方向D1に沿う長さ(高さ)は、例えば、50μm以上200μm以下である。
【0066】
図12に示すように、発光装置110は、波長変換部材35をさらに含んでも良い。波長変換部材35は、第2方向D2において、第1領域41pと第2領域42pとの間にある。
【0067】
樹脂部材36がさらに設けられても良い。第1方向D1において、半導体積層体20と樹脂部材36との間に、波長変換部材35が設けられる。発光装置110において、支持部材60がさらに設けられても良い。
【0068】
第2実施形態に係る発光装置110において、第1実施形態に関して説明した構成が適用されても良い。
【0069】
例えば、発光装置110において、側面対向領域40spの第2方向D2に沿う長さ40t(厚さ)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。側面対向領域40spの第1方向D1に沿う長さ40h(高さ)は、例えば、50μm以上200μm以下である。
【0070】
例えば、発光素子の側面に、光反射部材として酸化チタン等を含む樹脂層を設けて、光取り出し効率を向上させる構成がある。樹脂層を厚くすると、樹脂層における光吸収が大きくなる。さらに、厚い樹脂層を設けた場合、発光装置の小型化が困難になる。一方、樹脂層を薄くした場合、小型化は可能になるが、樹脂層を光が通過し、高い反射率が得られない。
【0071】
本実施形態においては、例えば、樹脂層30の側面30sに反射膜40が設けられる。高い精度で選択的に反射膜40を設けることができる。反射膜40により高い反射率が得られるため、発光素子の側面に設ける樹脂層を薄くしても、高い光取り出し効率の発光装置を製造できる。したがって、本実施形態によれば、小型化された高い光取り出し効率を有する発光装置を精度よく製造することができる。
【0072】
実施形態によれば、高効率の発光装置の製造方法を提供できる。
【0073】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直、及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直または実質的に平行であれば良い。
【0074】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、発光装置に含まれる、半導体積層体、樹脂層、反射膜部材及び波長変換部材などのそれぞれの具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0075】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10…シリコン基板、 10c、10d…第3、第4端部、 10fc…第3面、 10fd…第4面、 15…構造体、 20…半導体積層体、 20E、20F…第1、第2素子電極、 20a、20b…第1、第2端部、 20dp…凹凸、 20fa…第1面、 20fc…対向面、 20h…高さ、 21、22…第1、第2半導体層、 23…発光層、 30…樹脂層、 30fb…第2面、 30s…側面、 31…第1領域、 35…波長変換部材、 36…樹脂部材、 36c…一部、 38fa、38fb…第1、第2対向面、 40…反射膜、 40fp、40fq…第1、第2面対向領域、 40h、40t…長さ、 40sp…側面対向領域、 41、42…第1、第2膜、 41p、42p…第1、第2領域、 45…金属膜、 46…誘電体膜、 51、52…第1、第2電極、 51C、52C…第1、第2接続部材、 60…支持部材、 θ1、θ2…角度、 110…発光装置、 D1、D2…第1、第2方向、 R1…領域、 pr1~pr6…第1~第6部分領域