(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】光導波装置、光電変換装置、建築物、電子機器、移動体および電磁波導波装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/28 20060101AFI20230428BHJP
H02S 40/22 20140101ALI20230428BHJP
H10K 39/10 20230101ALI20230428BHJP
【FI】
G02B6/28 T
H02S40/22
H10K39/10
(21)【出願番号】P 2019543728
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2018035015
(87)【国際公開番号】W WO2019059342
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2017181884
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 晃
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-070573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377798(US,A1)
【文献】国際公開第2017/061448(WO,A1)
【文献】特開2007-171769(JP,A)
【文献】特開2005-189385(JP,A)
【文献】特表2010-525582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/28 - 6/293
H01L 31/02 - 31/078
H01L 31/18
H02S 10/00 - 10/40
H02S 30/00 - 99/00
H10K 39/00 - 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の上記導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部において上記導波コア層にタンジェンシャルに接続するように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された、上記導波コア層の屈折率と等しい屈折率を有する光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられ、
上記クラッド層の上記断絶部は上記導波コア層の上記導波方向に離散的併進対称性を持って複数設けられ、それぞれの上記断絶部に上記光導入コア層が設けられ、
上記光導入コア層および上記光導入コア層を被覆する上記クラッド層は外部から上記光導入コア層の端面に入射して上記光導入コア層に導入される光が上記光導入コア層と上記クラッド層との界面で全反射を繰り返して上記導波コア層に到達するように設けられ、
上記導波コア層は上記導波方向に対して連続的併進対称性を有するとともに準解放性を有し、上記クラッド層は上記導波方向に対して離散的併進対称性を有するとともに不連続性を有し、
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は上記導波コア層の上記導波方向に凹に湾曲した形状を有する光導波装置。
【請求項2】
上記光導入コア層内に一つまたは複数の補助的クラッド層が上記光導入コア層の長さ方向の途中の範囲にだけ設けられている請求項1記載の光導波装置。
【請求項3】
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は四分の一円の円弧の形状または楕円の長軸および短軸で分割された四分の一部分の弧の形状を有する請求項1記載の光導波装置。
【請求項4】
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は光入射側の直線部とこの直線部に連なる曲線部とを有する請求項1記載の光導波装置。
【請求項5】
上記導波コア層と上記クラッド層とを少なくとも上記導波コア層に導波される光の波長の1000倍以上10万倍以下の距離に亘って有する請求項1~4のいずれか一項記載の光導波装置。
【請求項6】
上記導波コア層は平板状に構成され、上記クラッド層は、上記導波コア層の一方の主面を連続に被覆して上記導波コア層の上記導波方向に併進対称性を有し、他方の主面を不連続に被覆するように設けられ、上記他方の主面に上記断絶部を有し、上記断絶部に上記光導入コア層が設けられている請求項1~5のいずれか一項記載の光導波装置。
【請求項7】
上記導波コア層は平板状に構成され、上記クラッド層は、上記導波コア層の一方の主面および他方の主面を不連続に被覆するように設けられ、上記一方の主面および上記他方の主面にそれぞれ上記断絶部を有し、上記断絶部に上記光導入コア層が設けられている請求項1~5のいずれか一項記載の光導波装置。
【請求項8】
上記導波コア層の上記一方の主面の上記断絶部と上記他方の主面の上記断絶部とは上記導波コア層の上記導波方向に互いにずれている請求項7記載の光導波装置。
【請求項9】
上記導波コア層は繊維状に構成され、上記クラッド層は、上記導波コア層の外周面を不連続に被覆するように設けられ、上記外周面に上記断絶部を有し、上記断絶部に上記光導入コア層が設けられている請求項1~5のいずれか一項記載の光導波装置。
【請求項10】
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の上記導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部において上記導波コア層にタンジェンシャルに接続するように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された、上記導波コア層の屈折率と等しい屈折率を有する光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられ、
上記クラッド層の上記断絶部は上記導波コア層の上記導波方向に離散的併進対称性を持って複数設けられ、それぞれの上記断絶部に上記光導入コア層が設けられ、
上記光導入コア層および上記光導入コア層を被覆する上記クラッド層は外部から上記光導入コア層の端面に入射して上記光導入コア層に導入される光が上記光導入コア層と上記クラッド層との界面で全反射を繰り返して上記導波コア層に到達するように設けられ、
上記導波コア層は上記導波方向に対して連続的併進対称性を有するとともに準解放性を有し、上記クラッド層は上記導波方向に対して離散的併進対称性を有するとともに不連続性を有し、
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は上記導波コア層の上記導波方向に凹に湾曲した形状を有する光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置。
【請求項11】
上記光電変換部は半導体層により構成され、上記半導体層はp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合である請求項10記載の光電変換装置。
【請求項12】
上記半導体層のバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的および/または連続的に減少するように構成されている請求項11記載の光電変換装置。
【請求項13】
少なくとも一つの光電変換装置を有し、
上記光電変換装置が、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の上記導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部において上記導波コア層にタンジェンシャルに接続するように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された、上記導波コア層の屈折率と等しい屈折率を有する光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられ、
上記クラッド層の上記断絶部は上記導波コア層の上記導波方向に離散的併進対称性を持って複数設けられ、それぞれの上記断絶部に上記光導入コア層が設けられ、
上記光導入コア層および上記光導入コア層を被覆する上記クラッド層は外部から上記光導入コア層の端面に入射して上記光導入コア層に導入される光が上記光導入コア層と上記クラッド層との界面で全反射を繰り返して上記導波コア層に到達するように設けられ、
上記導波コア層は上記導波方向に対して連続的併進対称性を有するとともに準解放性を有し、上記クラッド層は上記導波方向に対して離散的併進対称性を有するとともに不連続性を有し、
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は上記導波コア層の上記導波方向に凹に湾曲した形状を有する光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である建築物。
【請求項14】
外面に取り付けられた少なくとも一つの光電変換装置を有し、
上記光電変換装置が、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の上記導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部において上記導波コア層にタンジェンシャルに接続するように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された、上記導波コア層の屈折率と等しい屈折率を有する光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられ、
上記クラッド層の上記断絶部は上記導波コア層の上記導波方向に離散的併進対称性を持って複数設けられ、それぞれの上記断絶部に上記光導入コア層が設けられ、
上記光導入コア層および上記光導入コア層を被覆する上記クラッド層は外部から上記光導入コア層の端面に入射して上記光導入コア層に導入される光が上記光導入コア層と上記クラッド層との界面で全反射を繰り返して上記導波コア層に到達するように設けられ、
上記導波コア層は上記導波方向に対して連続的併進対称性を有するとともに準解放性を有し、上記クラッド層は上記導波方向に対して離散的併進対称性を有するとともに不連続性を有し、
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は上記導波コア層の上記導波方向に凹に湾曲した形状を有する光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である電子機器。
【請求項15】
外面に取り付けられた少なくとも一つの光電変換装置を有し、
上記光電変換装置が、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の上記導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部において上記導波コア層にタンジェンシャルに接続するように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された、上記導波コア層の屈折率と等しい屈折率を有する光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられ、
上記クラッド層の上記断絶部は上記導波コア層の上記導波方向に離散的併進対称性を持って複数設けられ、それぞれの上記断絶部に上記光導入コア層が設けられ、
上記光導入コア層および上記光導入コア層を被覆する上記クラッド層は外部から上記光導入コア層の端面に入射して上記光導入コア層に導入される光が上記光導入コア層と上記クラッド層との界面で全反射を繰り返して上記導波コア層に到達するように設けられ、
上記導波コア層は上記導波方向に対して連続的併進対称性を有するとともに準解放性を有し、上記クラッド層は上記導波方向に対して離散的併進対称性を有するとともに不連続性を有し、
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は上記導波コア層の上記導波方向に凹に湾曲した形状を有する光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である移動体。
【請求項16】
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の上記導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部において上記導波コア層にタンジェンシャルに接続するように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された、上記導波コア層の屈折率と等しい屈折率を有する電磁波導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられ、
上記クラッド層の上記断絶部は上記導波コア層の上記導波方向に離散的併進対称性を持って複数設けられ、それぞれの上記断絶部に上記電磁波導入コア層が設けられ、
上記電磁波導入コア層および上記電磁波導入コア層を被覆する上記クラッド層は外部から上記電磁波導入コア層の端面に入射して上記電磁波導入コア層に導入される光が上記電磁波導入コア層と上記クラッド層との界面で全反射を繰り返して上記導波コア層に到達するように設けられ、
上記導波コア層は上記導波方向に対して連続的併進対称性を有するとともに準解放性を有し、上記クラッド層は上記導波方向に対して離散的併進対称性を有するとともに不連続性を有し、
上記断絶部の上記端部から延在する上記クラッド層は上記導波コア層の上記導波方向に凹に湾曲した形状を有する電磁波導波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光導波装置、光電変換装置、建築物、電子機器、移動体および電磁波導波装置に関する。より詳細には、この発明は、例えば、紫外光、可視光、赤外光などの光を効率的に集め、かつ当該光を途中で損失を生じることなく高効率で導波するのに適用して好適な光導波装置、ビルや家屋などの各種の建築物の窓、壁、屋根や各種の電子機器のディスプレイ、自動車などの各種の移動体の外面に設置して太陽電池として用いて好適な光電変換装置ならびにこの光電変換装置を用いた建築物、電子機器および移動体ならびにマイクロ波などの電磁波を効率的に集め、かつ当該電磁波を途中で損失を生じることなく高効率で導波するのに適用して好適な電磁波導波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導波路(waveguide)とは、一般に、波動を一定領域に閉じ込めて伝送する回路または線路であり、物理的な境界によって決められる方向に電磁波を閉じ込め、指向するために設計されたシステムや材料と定義される。従来、電磁波、中でも光を途中で損失を生じることなく長距離を導波する構造体として、光ファイバーや2次元導波路(スラブ型光導波路)がよく知られている。通常、光を内部に閉じ込めて伝送するために、導波路は連続的併進対称性を持つ。また、屈折率小の部分、即ちクラッド層に囲まれ、屈折率大の部分、即ちコア層は、上面に凹凸や片流れの厚み変化を持つものもあるが、その断面は単純な閉曲面である。即ち、断面の面積をS、当該面積を定義する外周長をLとすると、断面の面積Sは、効率的に、即ち、比較的短いLにより、囲まれている。S~cL2 で与えられるが、1/cは12~50(12は円の場合、50は扁平な楔状構造の場合に相当)など10のオーダーの量である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、従来より平面基板を用いて、複数の光をまとめ、またその光を分ける光合波・分波器が開発されているが、これは光集積回路においてであり、その光合波(集光)・分波は、損失を少なくするために数mmに亘り、極めてまばらに、約34mmで4回程度行われるに過ぎない(非特許文献1参照。)。従来系では、この集光プロセスの生じている正味の距離は、基本的に短距離であり(その方が、将来的には集積度も上がる)、光の合波を稠密に長距離(数cmから数十m)に亘って行うシステムは存在しなかった。また情報処理が目標なので、光の存在域も線状である。
【0004】
既存の太陽電池としては、バルクシリコン、薄膜シリコン、CISを含め、面入射型が大多数であるが、材料が面積に比例して多く必要である。これに対し、スラブ型光導波路の一辺に太陽電池を配置したエッジ利用型太陽電池(特許文献2、3参照。)は、一辺の長さに比例して増えるのみなので、材料が少量で済むが、光のマニピュレーションが課題である。即ち、3次元光を2次元光化する必要があり、導波距離を十分稼ぐ必要もある。
【0005】
近年、太陽光発電の効率を高めるため、特に、集光系として系を構成するために、ルミネセントソーラーコンセントレーター(Luminescent Solar Concentrator,LSC)(非特許文献2参照。)が注目を集めている。その中に、上記の2次元導波路が重要な構成要素として含まれている。しかしその実態は、従来すべて、連続的併進対称性を持つ左右対称導波路を暗黙の前提としている。
【0006】
従来の導波路は、光導波方向についてその順方向と逆方向に関して、対称構造を持っており、また基本的に光を導波するコア層をクラッド層で連続的に挟み・包んだ構造により、光の漏れを防ぎ、閉じ込めを行っていた。このため、光を外から導波路コア層に導入するのが極めて難しかった。光の導波効率を下げたくないので、そもそも想定されていなかったと言える。かかる状況下では、従来型導波路を集光型太陽電池や光電変換素子と結合する場合、光を効率的に集光するに際し非常に大きな困難が伴っていた。即ち、ルミネセントソーラーコンセントレーターに入射した光には出戻る成分もあるため、全反射にならない。ルミネセントソーラーコンセントレーターには色素や量子ドットが使用されるが色素や量子ドットで太陽光を全吸収できるわけではない(抜ける成分がある)。また、色素による光の再吸収があり、また色素の寿命が長くない。さらに、ルミネセントソーラーコンセントレーターに光を閉じ込めきりにするのが難しく、発光は基本的に等方的であるため、全反射条件を満たさない光は空間に出戻るものもある(非特許文献3参照。)。その結果として、太陽電池における光電変換効率を高くできていない。
【0007】
また、液晶などの屈折率異方性を有する層をクラッド層として用いる提案もなされているが、偏光の一部しか利用できないため、効率の最大化には限界が出現するか、あるいは、これを回避するために、同等の構造をもう一組用意する必要があるなど、構造の複雑化の問題を抱えていた。
【0008】
また、上記のルミネセントソーラーコンセントレーターにおいては、3次元で伝搬する太陽光を、2次元導波路の中に配置した色素や量子ドットで一旦吸収し、次に、これらの色素や量子ドット内でエネルギー緩和が生じることで出て来る光を、当該導波路内を導波させることで、エッジに置かれた光電変換素子あるいは太陽電池で、電気エネルギー化するが、この一連の過程を高効率化することが容易ではなかった(例えば、非特許文献1参照。)。その理由は、(1)かかる色素や量子ドットが、太陽光のスペクトル全体に亘り、光を吸収することはできない、(2)当該色素や量子ドット間の再吸収や、当該色素内や量子ドット内のエネルギー緩和で損失が発生する、更に、(3)当該色素や量子ドットが発光する際には、基本的に等方的に発光するので、2次元導波路内を全反射で導光される光の割合は限られる(発光した光のうち、2次元導波路面に垂直方向に進む光は、当然、導波路内に閉じ込められることなく、外部にその一部が放射される)点などが挙げられる。
【0009】
また、本発明者自身も、別のコンセプトを用い、その中で、くし歯状の屈折率変調構造を用いて、3次元伝播光を2次元伝播光化することが試みていたが、その効率は必ずしも高いものではなかった(特許文献4参照。)。これは、回折に基づく方向変換を利用しているため、波長依存性が大きいことと、上記屈折率変調構造は、光入射方向に対し、直角な方向において左右対称構造を持つため、時間反転対称性と空間反転対称性の効果が相俟って、基本的に、3次元伝播光を2次元伝播光にしたり、これと逆に2次元伝播光を3次元伝播光にしたりすることが不可能であることによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2013-543150号公報
【文献】米国特許出願公開第2015/0323825号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0038841号明細書
【文献】国際公開第2014/061719号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】[平成29年9月11日検索]、インターネット〈URL:http://www.ntt.co.jp/dic/phlab/organ/03 _complex.html〉
【文献】[平成29年9月11日検索]、インターネット〈URL:https://www.nature.com/articles/srep17777.pdf 〉Chen Li, et. al.,
【文献】[平成29年9月11日検索]、インターネット〈URL:http://uml.chemistry.unimelb.edu.au/research-2/luminescent-solar-concentrators/ 〉University of Melbourne
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の導波構造体では、損失を生じることなく光を長距離、導波させるためには、光の導入部は、基本的に、端点(ファイバーや導波路の始点のみ)に限られていた。このような中で、光を遠くへ届けることを目標とする場合は、殆ど例外なく当該光ファイバーや2次元導波路は、基本的にファイバーの始点(2次元導波路の光入射面)からファイバー終点(2次元導波路の光出射面)までは、光の進行方向に沿って、連続的な併進対称性を持っていた。
【0013】
これは、次のように考えると理解できる。即ち、導波路のコア部の幅が一定でなく、先細りになっているとすると、当該先細りレートで決まる消失点以遠には光を届かせることができない。従って、光を長距離届かせることが不可能である。また逆に、先太り構造にすると、遠距離導波するうちに、人間が使うに便利な構造サイズを超えてしまい、これまた実用上使用が大変厄介となる。厳密には、届けたい距離まで、少しずつ先細りにしたり、使用に支障がない範囲で先太りにしたりすることも不可能ではないが、用途によりこの距離は異なるであろうから、このような導波構造体を量産する際に、大変生産性が阻害されることとなる。これを解決するには、光を導波する際の始点から終点に向かって、当該導波構造体のどこを切っても金太郎飴のように、同じ構造が現れるような構造を採用することとなる、即ち、併進対称性を持つことになる。こうすれば長さは用途に応じて、それを満たすように自由にとれる。
【0014】
また、このような光を遠くまで届けるための構造体においては、始点と終点との間の構造に対しては併進対称性が存在する故に、仮に光の出し入れを反転させても、即ち、終点において光を導入しても、同じような高導波効率で、始点まで光を届かせることができることが特徴であった。即ち、簡単のため、左に始点、右に終点を置いて、両者を結ぶ一直線の配置に当該導波構造体を配置すると、この構造体は左右の空間反転対称性を有することとなる。あるいはまた、当該導波路は光導波方向について、その順方向と逆方向に関して、反転対称性を有すると言い換えても良い。
【0015】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、導波コア層の導波効率は高いままに維持しつつ、導波コア層の途中の位置から光導入コア層により太陽光などの外部からの光を導入することができ、これによって外部の光を効率的に集光して導波コア層の内部で効率的に導波させることができる光導波装置、この光導波装置の光出射部から出射される光を光電変換部に入射させることにより極めて高い光電変換効率を得ることができる光電変換装置ならびにこの光電変換装置を用いた建築物、電子機器および移動体を提供することである。
【0016】
この発明が解決しようとする他の課題は、導波コア層の導波効率は高いままに維持しつつ、導波コア層の途中の位置から電磁波導入コア層によりマイクロ波などの外部からの電磁波を導入することができ、これによって外部の電磁波を効率的に集めて導波コア層の内部で効率的に導波させることができる電磁波導波装置、あるいはアンテナ装置を提供することである。
【0017】
上記課題および他の課題は、本明細書の以下の記述によって明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、この発明は、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている光導波装置である。
【0019】
この光導波装置は、上記のように構成されていることにより、導波コア層の導波方向とその逆方向とに対して非対称な構造を有する。典型的には、導波コア層は導波方向に対して連続的並進対称性を有し、クラッド層は導波方向に対して離散的並進対称性を有する。ここで、導波方向は、光のエネルギーの移動方向と言い換えることもできる。この光導波装置の対象とする光の波長は特に限定されず、紫外光、可視光、赤外光などを含む。
【0020】
典型的には、クラッド層の断絶部は、導波コア層の導波方向に等間隔に複数設けられ、それぞれの断絶部に光導入コア層が設けられる。断絶部の間隔は必要に応じて選ばれる。好適には、光導入コア層およびこの光導入コア層を被覆するクラッド層は、光導入コア層に導入される光が光導入コア層とクラッド層との界面で全反射を繰り返して導波コア層に到達するように設けられる。より具体的には、光導入コア層およびクラッド層の形状や厚さ(太さ)などは、光導入コア層に導入される光のうちできるだけ多くの割合が導波コア層に到達するように最適化される。典型的には、断絶部の端部から延在するクラッド層は、導波コア層の導波方向に凹に湾曲した形状(より正確には導波コア層の導波方向に凹に湾曲した形状の一部)を有する。この形状は、例えば、四分の一円の円弧の形状や、楕円の長軸および短軸で分割された四分の一部分の弧の形状などであるが、これに限定されるものではない。断絶部の端部から延在するクラッド層は光入射側の直線部とこの直線部に連なる曲線部とを有するものであってもよい。
【0021】
導波コア層、クラッド層および光導入コア層の屈折率、材質、サイズ(各層の厚さ、太さな、長さなど)は、光導波装置の使用目的などに応じて適宜選ばれる。例えば、導波コア層および光導入コア層の屈折率は1.6以上2.0以下に選ばれ、材質は樹脂またはガラスである。例えば、クラッド層の屈折率は1.8以上2.0以下であり、導波コア層および光導入コア層の屈折率より低く選ばれる。導波コア層および光導入コア層の材質は、具体的には、例えば、透明ガラス、高屈折率ガラス、透明プラスチックなどである。透明プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などが挙げられる。導波コア層および光導入コア層の材質は、特に、プラスティックオプティカルファイバー(POF)などに用いられるフッ素系の素材が、その低光損失性により好適である。クラッド層の材質は、例えば、アモルファスフッ素樹脂(旭硝子株式会社の商品名CYTOP)(屈折率1.34)が挙げられるが、これに限定されるものではない。典型的には、光導波装置は、導波コア層とクラッド層とを少なくとも導波コア層に導波される光の波長の1000倍以上10万倍以下の距離に亘って有する。光導波装置の全体のサイズは、光導波装置の使用目的などに応じて適宜選ばれるが、一般的には、例えば(1cm~1m)×(1cm~1m)である。光導波装置は、必要に応じて、素材や厚さなどの選択によりフレキシブルに構成することができる。
【0022】
導波コア層の形状は必要に応じて選ばれるが、例えば、平板状や繊維状などの形状に構成される。一つの典型的な例では、導波コア層は平板状に構成され、クラッド層は、導波コア層の一方の主面を連続に被覆して導波コア層の導波方向に併進対称性を有し、他方の主面を不連続に被覆するように設けられ、他方の主面に断絶部を有し、断絶部に光導入コア層が設けられる。別の典型的な例では、導波コア層は平板状に構成され、クラッド層は、導波コア層の一方の主面および他方の主面を不連続に被覆するように設けられ、一方の主面および他方の主面にそれぞれ断絶部を有し、断絶部に光導入コア層が設けられる。この場合、好適には、導波コア層の一方の主面の断絶部と他方の主面の断絶部とは導波コア層の導波方向に互いにずれており、最も好適には、断絶部の間隔の1/2の距離だけ互いにずれている。これは、導波コア層の一方の主面の断絶部に設けられる光導入コア層から導入される光と導波コア層の他方の主面の断絶部に設けられる光導入コア層から導入される光とが互いに干渉しないようにするためである。さらに別の例では、導波コア層は繊維状に構成され、クラッド層は、導波コア層の外周面を不連続に被覆するように設けられ、外周面に断絶部を有し、断絶部に光導入コア層が設けられる。
【0023】
この光導波装置の特徴を改めて詳細に説明する。この光導波装置では、既に述べた従来の導波路構造の基本概念を変えて、離散的併進対称性をもつ左右(あるいは進行方向・逆方向)非対称導波路構造をとる。即ち、光導波方向に対して、その順方向と逆方向に関して、反転対称性を有しない導波路を構成する。即ち、導波路に対し、その光導波方向についてその順方向と逆方向に関して、非対称構造を持たせる。あるいは光進行方向に対し非対称構造を持たせると言い換えても良い。
【0024】
さらに、クラッド層に非連続性を、そして導波コア層に準解放性を持たせる。構造における主たる導波部分、即ち屈折率が相対的に大きい導波コア層に逆開裂構造(即ち、2つの部分だったものが一つにまとまる構造)を有せしめる。これにより、導波コア層は準解放系コア層となり、光は閉じ込めるが、幾何学的構造的にはオープン構造をとる。
【0025】
今、導波方向にx軸を取ると、上述のクラッド層が不連続となる点、これをx=xi と記すと、x<xi では、導波のコア領域およびその近傍において、導波方向に沿って、(断面形状として)クラッド層が3本、即ち、そのポイント断絶した地点には、始点以外の外界より、導波コア層へ光が侵入することができる。これによって、導波コア層に準解放構造を持たせ、またクラッド層に、各部分において不連続構造を有せしめる。また、この時、各非連続クラッド層は、その幾何学的構造は、導波方向に対して、導波方向に沿って、その最後端において、導波コア層に対してタンジェンシャル(tangential)に接するような構造を持たせる。
【0026】
このクラッド層が終端する点において、二つの分かれていた屈折率大の部分が一つにまとまるが、二つの内の一つの屈折率大の部分から、上記クラッド層終端域において、ホイヘンスの原理に従って発する球面波が、もう一つの屈折率大層、即ち光導入コア層とそれに隣接するクラッド層に拡がって行った際に、当該クラッド層により全反射条件を満たすようななだらかな曲線を当該クラッド層は描く。これは、二つの屈折率大層のもう一つに対して、残る一つの屈折率大層、即ち光導入コア層およびその隣接クラッド層が満たす条件でもある。すなわち、合流する二つの屈折率大層(導波コア層および光導入コア層)における光は、互いにもう片方側へ、中間のクラッド層が終端して以降、ホイヘンスの原理に従って拡がってゆくが、この光は、拡がり先の屈折率大層に隣接するクラッド層により、全反射される。これにより光の合流による損失は発生しない状況が実現する。
【0027】
これにより、導波コア層内の光は、導波方向に沿って100%導波されつつ、しかしクラッド層の非連続性、導波コア層の準解放性によって、導波コア層において、導波方向の複数ポイントにおいて、外界からの光導入を可能とする。
【0028】
この光導波装置においては、光導入コア層およびこの光導入コア層を被覆するクラッド層により反射光学系が構成されることが、波長依存性が極めて小さく、光の集光と高効率の導波という目的に対し、極めて有効である。
【0029】
このような光導波装置を従来のエッジ利用太陽電池と結合することで、光電変換効率の飛躍的向上が可能となる。本発明者が先に発明したフォトンフォトキャリア直交型太陽電池と結合すれば、太陽光の連続スペクトルに呼応して(スペクトルエネルギーについて)連続して光電変換を可能とすることで、更に高い光電変換効率が実現する。従来の面入射の太陽電池と結合することももちろん可能である。特に、従来型の直列のタンデム構造との結合も非常に有効である。
【0030】
また、この光導波装置は、例えば、入射光がガラス面内に導波されるように表面構造を持つ導波路と結合させて設けることで、従来建物の窓や壁などの建築材としての応用も開け、日照権問題の解消・緩和にも役立ちうる。
【0031】
また、この発明は、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である。
【0032】
この光電変換装置において、光電変換部は、光導波装置の光出射部に直接接して設けられてもよいし、光導波装置の光出射部に対し従来公知の光導波路を介して設けられてもよい。
【0033】
好適には、光電変換装置に光が入射する際に光電変換部に光が直接入射しないように構成される。言い換えると、光電変換装置に光が入射する場合、光導波装置には光が入射するが、光電変換部の面には光が直接入射しない。こうすることで、光電変換部、特にその半導体層に直接入射する光により半導体層が加熱されて温度が上昇するのを防止することができるので、半導体層の特性劣化を防止することができ、ひいては、熱として散逸するエネルギーも少ないことと相まって、この光電変換装置の光電変換効率の低下を防止することができ、高い光電変換効率を得ることができる。
【0034】
光電変換部は半導体層により構成してもよいし、太陽電池などの半導体層を用いた光電変換素子により構成してもよい。光電変換素子としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、例えば、バルクシリコン、多結晶シリコン、CIS、ペロブスカイト物質、化合物半導体などを用いた光電変換素子である。この光電変換装置は集光系を形成するので、タンデム太陽電池との結合が有効である。集光比は、光導波装置の光入射面上の光導入コア層の端面の面積の総和を光が導波される導波コア層の端面の面積で除した値となる。タンデム太陽電池は面積を大きく取ることが難しいことがネックとなっているから、光を効率的に集光できるこの光導波装置との結合が極めて有効である。結合するタンデム太陽電池は、並列タイプのものでも有効である。この場合は、光は、pn接合面に平行またはほぼ平行に入射するが、最初に最もワイドギャップの素子に入り、順次、バンドギャップが減少し、最後に最もバンドギャップの小さい太陽電池に入射することは共通である。
【0035】
また、実使用例における、この発明の光導波装置と光電変換素子、即ち太陽電池とを結合した系のメリットは、太陽光受光部と光電変換部とが空間的に互いに分離されていることである。これにより、屋根や建物側面に置いた集光部、即ち光導波装置からエネルギーとして光を室内や屋根裏、側壁裏などに導いて、そこで光電変換することで、光電変換部を保護することができることにより、太陽電池の耐候性に関する要求を緩和できることは大きなメリットである。外部環境(外)と使用環境(室内)との境界を、従来の太陽電池システムは、電気の形で跨ぐのに対し、この発明では、光の形で跨ぐ設定にもできるということが大きな違いである。即ち、従来技術では太陽光受光部と光電変換部とが一体化していることにより、雨露霜雪に弱い電気の形で戸外や車外に存在するのに対し、この発明では、電荷中性、つまりニュートラルな光の形で戸外や車外に存在するので、電気的なショートなど絶縁不良に起因する機能不全や故障が発生し無い設定にできる。翻って、耐候性を増強することができる。
【0036】
家屋やビルへの応用では、特に、集光部は戸外、光電変換部は屋内あるいは、建物外壁の内側において、雨露や埃などによるダメージからアクティブリージョン(光電変換部)を守る。特に離島などにおける発電システムの塩害からのプロテクションが容易になる。
【0037】
このメリットは、宇宙空間での太陽光発電でも顕著に発揮される。即ち、在来システムでは、受光したところで発電するため、太陽電池は、宇宙空間に暴露して置かれているので、太陽風や、宇宙線の高エネルギー粒子のボンバードメントを受け、効率劣化が生じてしまう。これに対し、この発明では、宇宙空間に暴露されるのは、無機材料ガラス系素材を主体とするパッシブなマテリアルで光をうける集光部のみにとどめ、光として、船内または、宇宙線の外壁の裏まで導き、そこに導波路と結合して設置した光電変換素子あるいは太陽電池で電気エネルギー化することで、当該アクテティブリージョンを上記の高エネルギー粒子ボンバードメントから守ることができるという顕著なメリットがある。これにより、宇宙で必要な高エネルギー変換効率の長期に亘る維持という大きな価値を生み出すことができる。
【0038】
即ち、宇宙応用として、集光部は宇宙空間に、光電変換部は船内あるいは、宇宙船の外壁の内側において、ラディエーションダメージからアクティブリージョン(光電変換部)を守ることができる。
【0039】
半導体層は、無機半導体または有機半導体からなり、典型的には、p型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合である。導波コア層が平板状である場合、典型的には、半導体層も平板状に構成され、そのpn接合面はこの導波コア層の主面に平行または垂直である。この場合、半導体層の上下の互いに対向する主面にそれぞれ第1の電極および第2の電極が設けられる。導波コア層が繊維状である場合、典型的には、半導体層は導波コア層の端面と同等以上の大きさの端面を有する平板状または繊維状に構成され、そのpn接合面はこの導波コア層の直径を含む縦断面に平行または垂直である。この場合、半導体層の上下の互いに対向する面にそれぞれ第1の電極および第2の電極が設けられる。これらの第1の電極および第2の電極の一方はアノード電極、他方はカソード電極として用いられる。典型的には、導波コア層の内部を導波される光の正味の進行方向と、導波コア層の端面から半導体層に入射した光により半導体層中に生成されるキャリアの正味の移動方向とのなす角度Θがほぼ直角である。Θは、具体的には、例えば、π/2-δ≦Θ≦π/2+δに選ばれる。ただし、δは、第1の電極および第2の電極のうちのアノード電極として用いられるものの、半導体層内の光の進行方向に平行な方向の幅(電極幅)に対する半導体層の厚さの比に対応し、δ~半導体層の厚さ/電極幅である。典型的には、導波コア層と半導体層とは互いに一体に設けられ、例えば、それらの端部同士が接合されて一体化される。半導体層の厚さは、この半導体層内のキャリアの拡散長の関数を勘案して適宜選ばれるが、pn接合面が平板状の導波コア層の主面に平行な場合、好適には100nm以上100μm以下、pn接合面が平板状の導波コア層の主面に垂直な場合、好適には1μm以上500μm以下である。半導体層を構成する半導体は、アモルファス(非晶質)、多結晶、単結晶のいずれの形態のものであってもよい。
【0040】
無機半導体としては、CdSe、PbS、PbSe、PbTeなどのII-VI族化合物半導体、GaSb、InAs、InN、AlInN、GaInN、GaN、AlGaN、GaAsN、GaPNなどのIII-V族化合物半導体、SiやSiGeなどのIV族半導体、Six Gey Sn1-x-y O、SiNx 、SiOx 、CIS(CuInSe)、CIGS(CuInGaSe)、CuInGaSeTeなどを用いることができる。これらの半導体は、例えば、In、GaなどのIII族元素の組成比の制御や硫黄(S)の混合などによってバンドギャップを制御することができるのが特徴である。半導体層は、これらの無機半導体からなる微粒子により構成することもできる。
【0041】
有機半導体としては、有機太陽電池の材料として一般的に報告されているものは全て用いることができるが、具体的には、ペンタセンなどのポリアセン、ポリアセチレン(好ましくは二置換型ポリアセチレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)、ポリピロール、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-ビチオフェン)(F8T2)、ポリ(1-ヘキシル-2-フェニルアセチレン)(PHX PA)(発光材料としては青色の発光を示す)、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体(PDPA-nBu)(発光材料としては緑色の発光を示す)、ポリ(ピリジン)(PPy)、ポリ(ピリジルビニレン)(PPyV)、シアノ置換型ポリ(p-フェニレンビニレン)(CNPPV)、ポリ(3,9-ジ-tert-ブチルインデノ[1,2-b]フルオレン(PIF)などを用いることができる。これらの有機半導体のドーパントについては、ドナーとしてはアルカリ金属(Li、Na、K、Cs)を用いることができ、アクセプタとしてはハロゲン類(Br2 、I2 、CI2 )、ルイス酸(BF3 、PF5 、AsF5 、SbF5 、SO3 )、遷移金属ハロゲン化物(FeCl3 、MoCl5 、WCl5 、SnCl4 )、有機アクセプタ分子としてはTCNE、TCNQを用いることができる。また、電気化学ドーピングに用いられるドーパントイオンは、陽イオンとしてはテトラエチルアンモニウムイオン(TEA+ )、テトラブチルアンモニウムイオン(TBA+ )、Li+ 、Na+ 、K+ 、陰イオンとしてはClO4
- 、BF4
- 、PF6
- 、AsF6
- 、SbF6
- などを用いることができる。有機半導体としてはさらに、高分子電解質を用いることもできる。この高分子電解質の具体例を挙げると、ポリアニオンとしては、サルフォネートポリアニリン、ポリ(チオフェン-3-酢酸)、サルフォネートポリスチレン、ポリ(3-チオフェンアルカンサルフォネート)など、ポリカチオンとしては、ポリアリルアミン、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)前駆体高分子、ポリ(p-メチルピリジニウムビニレン)、プロトン化ポリ(p-ピリジルビニレン)、ポロトン(2-N-メチルピリジニウムアセチレン)などを用いることができる。半導体層として低不純物濃度にドープされた有機半導体層を用いる場合、この有機半導体層はヘテロジャンクション型あるいはバルクヘテロジャンクション型の構造とすることができる。ヘテロジャンクション型構造の有機半導体層においては、p型有機半導体膜およびn型有機半導体膜とを第1の電極および第2の電極と接触するように接合する。バルクヘテロジャンクション型構造の有機半導体層は、p型有機半導体分子とn型有機半導体分子との混合物からなり、p型有機半導体とn型有機半導体とが互いに入り組んで互いに接触した微細構造を有する。
【0042】
半導体層を構成する半導体としては、無機半導体および有機半導体のほかに、有機無機ハイブリッド半導体を用いることもできる。このような有機無機ハイブリッド半導体としては、例えば、ペロブスカイト系半導体を用いることができる。
【0043】
好適には、第1の電極および第2の電極は半導体層とオーミック接触している。半導体層として有機半導体を用いる場合は、第1の電極および第2の電極は半導体層とオーミック接触していなくてもよい。第1の電極および第2の電極としては、金(Au)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などの金属のほか、特にp型SiにはAl、n型SiにはAgを用いることが有効であり、インジウム-スズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などの各種の透明導電性酸化物などを用いることができ、クロム、チタン、モリブデン等も合わせて用いることができるが、これに限定されるものではない。また、第1の電極および第2の電極として上記の透明導電性酸化物からなる透明電極を用いる場合、その低屈折率性、ワイドギャップ性を以て、半導体層への進入光子の高導波特性、生成フォトキャリアの低表面再結合レートへと導き、結果として高光電変換効率を可能とする効果も有する。半導体層自体のバンドギャップを第1の電極および第2の電極に近づくにつれて大きくすることも少数キャリアの表面再結合を抑制するのに有効であり、同時に光の閉じ込めをする上でも効果を有するので2重に有効である。上記透明電極は、導波コア層の主面に対し垂直方向の半導体層の差し渡しの方向の両端に設ける、上記半導体層の屈折率より低屈折率の領域に相当する。
【0044】
好適には、半導体層のバンドギャップ、あるいは半導体層が有機半導体からなる場合にはHOMO(最高被占分子軌道)-LUMO(最低非占分子軌道)ギャップが光の進行方向に順に段階的および/または連続的に減少するようにする。こうすることで、例えば、光電変換装置の半導体層の主面に太陽光が入射した場合、この太陽光は、面状光導波路内を導波されて半導体層に入射すると、バンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが一番大きい半導体にまず入射し、最終的にバンドギャップが一番小さい半導体に入射することになり、この過程で太陽光スペクトルのうちの短い波長の光から長い波長の光に亘って順次吸収され、しかもこの吸収量は最大化される。このため、半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップの変化のさせ方および使用する半導体の種類によって、太陽光スペクトルの主要部あるいは実質的に全部の光を光電変換することができ、究極的には光電変換効率を理論最大効率に近づけることができる。典型的には、半導体層は、バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなり、各領域の互いに対向する一対の面に第1の電極および第2の電極が設けられ、これらの第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方は各領域間で互いに分離して設けられる。
【0045】
好適には、半導体層はバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなり、各領域の光の進行方向の幅が、各領域のバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップと等しいエネルギーを有する光の各領域における吸収係数の逆数以上である。
【0046】
半導体層が、バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなる場合、これらの領域の例を挙げると、光の進行方向に順に、Six C1-x (0<x<1)からなる領域、Siからなる領域およびSiy Ge1-y (0<y<1)からなる領域、あるいは、Six C1-x からなる領域、Siからなる領域およびマイクロクリスタルSiy Ge1-y からなる領域、あるいは、AlGaN、GaNおよびIGZO(In、Ga、Znの酸化物)からなる群より選ばれた少なくとも一つの半導体を含む領域、Six C1-x からなる領域、Siからなる領域およびSiy Ge1-y からなる領域、あるいは、Six C1-x からなる領域、Siからなる領域、Siy Ge1-y からなる領域およびGeからなる領域である。
【0047】
光電変換装置には、太陽電池のほか、光センサーなども含まれる。必要に応じて、光電変換装置または太陽電池を複数組み合わせてモジュール化あるいはシステム化してもよい。
【0048】
また、この発明は、
少なくとも一つの光電変換装置を有し、
上記光電変換装置が、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である建築物である。
【0049】
ここで、建築物は、光電変換装置を設置可能な建築物であれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には、例えば、ビルディング、マンション、戸建住宅、アパート、駅舎、校舎、庁舎、競技場、球場、病院、教会、工場、倉庫、小屋、橋などが挙げられる。これらの建築物への光電変換装置の設置箇所は特に限定されず、必要に応じて選ばれる。設置箇所の例を挙げると、これらの建築物のガラス窓や採光部などである。この場合、光電変換装置は、例えば、これらの建築物やその内部に設置される電気製品の電源として用いられる太陽電池である。好適には、光導波装置の光入射面(光導入コア層側の面)に光が入射する際に半導体層に光が直接入射しないように半導体層が建築物の陰の部分に配置される。例えば、光導波装置が緩やかな曲率を有する部分を含むようにし、この部分を、例えば、瓦の下、屋根の中央部迫り出し稜線の下、窓の枠あるいは桟等に配置する。
【0050】
また、この発明は、
外面に取り付けられた少なくとも一つの光電変換装置を有し、
上記光電変換装置が、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である電子機器である。
【0051】
電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品などである。この場合、光電変換装置は、例えば、これらの電子機器の電源として用いられる太陽電池である。
【0052】
また、この発明は、
外面に取り付けられた少なくとも一つの光電変換装置を有し、
上記光電変換装置が、
光導波装置と、
上記光導波装置の光出射部に設けられた光電変換部とを有し、
上記光導波装置が、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている光導波装置であり、
上記光導波装置の光入射部に入射した光が、上記光導波装置の光出射部から出射されて上記光電変換部に入射する光電変換装置である移動体である。
【0053】
移動体は、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体例を挙げると、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船、船舶などである。この場合、光電変換装置は、例えば、これらの移動体の電源として用いられる太陽電池である。
【0054】
上記の光電変換装置、建築物、電子機器および移動体の各発明においては、その性質に反しない限り、上記の光導波装置の発明に関連して説明したことが成立する。
【0055】
最後に、この光導波装置において何故、始点から終点までにおいて、始点のみならず途中の各点でも光の合流が可能な導波路が実現するか考える。従来導波路は、進行方向とその逆方向に対し空間反転対称性を有する(始点と終点を左右に見込むような位置(視点Sとする)からみると左右対称構造を有する)。また、導波過程はマクスウエル方程式に従う過程であるので、時間反転対称性を有する。さて、今視点Sから発した(導波路にとっては外部からの)3次元伝播光が、或る構造Dを通じてこの導波構造(2次元導波路)に入射することができたとすると、左右対称性から、向かって右へその半分、左へ残る半分が進行する(右へ向かう光が、その末端におかれた光電変換部、例えば太陽電池に入射して発電することとなる)。時間反転対称性があるので、時間の向きを逆転させると、光電変換部から2次元導波路内を光が左へ進行し、上記構造Dを経て、外部へ出てきて視点Sへ戻ってくる。問題は、時間が正転しているなかでも、上記空間反転対称性より、左へ向かう光が、入射できた分の半分は存在することである。この光は、(始点と終点のいたるところで外界の光を2次元導波路内に取りこめているという仮定からして、始点と終点の間の至るところに存在する)構造Dを通じて、外部にでてくる。つまり、左右対称構造にする限り、3次元伝播光を2次元導波路内に行ったっきりにすることは、時間反転対称性から、物理的に許されない。もし、行ったっきりにできるのであれば、上記の考察の前提条件の一部を崩す必要がある。これが、この発明が前提としている(上記視点Sから見ての)左右に対する空間反転対称性を有しない導波路構造を用いる理由である。空間反転対称性を破る構造とすることで(即ち、後述の
図1でいえば、外から取りこむ光は、左からくる導波コア層と光導入コア層とがタンジェンシャルに接触して、それより右の領域では一つになることで、すべて右向きに導波されるようにすることで)、始点と終点の途中においても外部から光を取りこめることは上述の説明の通りである。この過程の時間反転は、当該構造で仮に右から左に走る光は、導波路のいたるところで外へ向かって流れ出てくることとなる(逆に、日照権問題を解決するに際してはこれを利用し、ビルの北面において、この配置になるように、この発明の光導波装置を組み込んだ壁材を組み込むこととなる)。光電変換応用に戻ると、この意味では、終点にて結合される太陽電池、光電変換素子は、光の入射に関し反射率が極めて小さいものとなるよう(例えば表面に段階的に粒径の大きくなっていく微粒子が積みあがったような構造などにより)設定することが極めて重要でかつ有効となることは言うまでもない。
【0056】
また、この発明は、
導波コア層と、
上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、
上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、
上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された電磁波導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている電磁波導波装置、あるいはアンテナ装置である。
【0057】
この電磁波導波装置は広範な波長の電磁波を対象とし、光を集光して導波する上記の光導波装置を含むものである。電磁波は、典型的には、マイクロ波乃至テラヘルツ波(波長30cm~0.3cm、周波数1GHz~1THz)であるが、これに限定されるものではない。この電磁波導波装置において、クラッド層は、電磁波を反射する物質、典型的には金属により形成され、導波コア層および電磁波導入コア層は電磁波に対して透明な物質、具体的には誘電体により形成される。誘電体には空気も含まれる。導波コア層および電磁波導入コア層の誘電率に特異的な振る舞いが無い波長領域に対しては、電磁波の波長とこの電磁波導波装置の構造のサイズとの間にスケーリングが成り立つ。この電磁波導波装置の発明においては、上記以外のことは、その性質に反しない限り、光を電磁波に置き換えて、上記の光導波装置の発明に関連して説明したことが成立する。
【0058】
この電磁波導波装置により集められ、導波コア層を導波される電磁波は、導波コア層から外部に取り出され、例えばダイオードなどの半導体素子を用いた整流回路により直流に変換されて電気機器などに利用される。この意味で、この電磁波導波装置は、電磁波を受信するアンテナとしての役割も果たす。この電磁波導波装置は、上記の光導波装置と同様に、各種の建築物、電子機器および移動体に用いることができる。
【発明の効果】
【0059】
この発明によれば、光導波装置が導波コア層の導波方向とその逆方向とに対して非対称な構造を有するため、光導波装置の光入射面に入射して光導入コア層から導入され、導波コア層に合流する光は導波コア層の内部をあらかじめ決められた導波方向に効率的に導波され、光導波装置から出射される。この光導波装置は、外部から入射する光を効率的に集光することができ、しかも導波コア層に途中で損失を生じることなく光効率的に導波することができる。言い換えると、導波コア層内の光は、導波方向に沿って100%導波されつつ、しかし、クラッド層の非連続性、導波コア層の準解放性によって、導波コア層に対する光の取り入れを、導波コア層の始点から終端までの至るところで(離散的連続性を以って)、即ち導波方向の複数ポイントにおいて、行うことができる。そして、光の集光と高効率の導波という目的に対し、極めて有効な構造と機能を実現することができる。
【0060】
また、光電変換装置においては、例えば、上記の光導波装置をマルチストライプフォトンフォトキャリア直交型光電変換装置と結合して、熱力学限界に迫る高光電変換効率の実現が可能となる。更にこの光導波装置と在来型のタンデム太陽電池と結合することも可能で、従来よりも高効率に、太陽光の連続スペクトルに対応して光電変換が可能となる。特に、この光導波装置を入射光がガラス面内に導波されるように表面構造を持つ導波コア層と結合させて設けることで、従来建物の窓や壁を以って、高効率のフォトン・フォトキャリア直交型光電変換装置とすることができる。太陽電池応用と併用しつつ、“光を装うことのできる”建物の外壁材としても有効である。
【0061】
光電変換装置においては更に、導波コア層内を導波される光の正味の進行方向と、導波コア層の端面から半導体層に入射した光により半導体層中に生成されるキャリアの正味の移動方向とのなす角度θをほぼ直角とすることにより、光の入射方向の半導体層の厚さの選択による光の吸収量の最大化と電極間距離の最小化とを両立させることができる。このため、極めて高い光電変換効率を得ることができる。また、光導波装置の光入射面に入射した光が導波コア層内を導波されて半導体層に入射するので、半導体層に光が直接入射しないようにすることができる。このため、半導体層が例えばアモルファスシリコンや有機半導体からなる場合であっても、ステブラー・ロンスキー(SW)効果や紫外成分による有機半導体の劣化を抑えることができる。また、光導波装置の光入射面の面積を大きくすることにより、光電変換装置の大面積化も極めて容易である。また、半導体層のバンドギャップあるいは半導体層が有機半導体からなる場合にはHOMO-LUMOギャップが光の入射方向に段階的および/または連続的に減少するようにすることにより、太陽光スペクトルの主要部あるいは全部の波長の光を吸収して光電変換することができ、究極的には理論最大効率に迫る光電変換効率を得ることができる。
【0062】
光電変換装置においては更に、集光系のメリットで明電流と暗電流の比が大きくなることから、出力電圧の上昇がもたらされることで、従来の殆どすべての太陽電池の特性を上げることができる。太陽電池部が戸外にさらされることを回避することができることから、太陽光発電システムの耐用年数を上げることができる。これは、地球上のみならず宇宙空間についてもなりたち、宇宙ステーションや人工衛星、惑星探査機などの電力源となっている太陽電池システムの高信頼性化に役立つ。また、建築物側壁に用いて、光を建物の裏側に導いて、従来構想建築物の影となっていた領域への光の輸送が可能となり、いわゆる日照権問題の緩和に役立つと期待される。自動車の電気動力化が進んでいるが、かかる車両のボンネット、天井、側壁などに本構造を用いることで、特に夏の昼間の車内の温度上昇を防ぎつつ、かつ、太陽光発電および蓄電により、電気自動車の燃費向上、性能向上をもたらすことができる。自動車の表面、即ち、天井、ドアやボンネットに用いて、電気自動車化の流れに大きな貢献をすることは言うまでもない。フロントガラスやリア・サイドガラスにも半透過タイプとして適用することができるので、夏場の社内の温度上昇を、電気に変えることで熱化するチャネルを塞ぐことで実現できる。発電した電力は、空調のエネルギーに回せるので、車内温度低下に向けた効率は2重の掛け算となって、非常に高まることは重要である。また、この構造を繊維や、きし麺状の構造とすることで、これを織り合わせて衣服型の日焼け防止服(且つ太陽光発電服)やテント、さらには大規模な布状構造を作り、建物や橋の造形物を覆いながら、芸術性を醸し出しつつ、太陽光発電を行うことができる。衣服としての応用も可能となる。ファイバー、繊維、織物応用が実現する。
【0063】
また、電磁波導波装置は、電磁波全般について上記の光導波装置と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【
図2】この発明の第1の実施の形態による光導波装置のクラッド層の断絶部付近を拡大して示す断面図である。
【
図3】この発明の第1の実施の形態による光導波装置のクラッド層の断絶部付近を拡大して示す断面図である。
【
図4A】この発明の第1の実施の形態による光導波装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図4B】この発明の第1の実施の形態による光導波装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図4C】この発明の第1の実施の形態による光導波装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図4D】この発明の第1の実施の形態による光導波装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図5】この発明の第1の実施の形態による光導波装置の平面形状の一例を示す平面図である。
【
図6A】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションに用いた構造を示す略線図である。
【
図6B】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図6C】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図7A】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションに用いた構造を示す略線図である。
【
図7B】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図7C】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図8A】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションに用いた構造を示す略線図である。
【
図8B】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図8C】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図9A】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図9B】この発明の第1の実施の形態による光導波装置において導波コア層の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図10】この発明の第2の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【
図11】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図12】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図13A】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13B】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13C】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13D】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13E】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13F】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13G】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13H】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図13I】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の光波進行方向変換層による効果を検証するために行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【
図14A】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(構造と光場)を示す略線図である。
【
図14B】この発明の第2の実施の形態による光導波装置の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(光場)を示す略線図である。
【
図15】この発明の第2の実施の形態による光導波装置に入射する波長1μmと0.5μmの3次元入射光の2次元導波光への変換効率を3次元入射光の入射角に対して示す略線図である。
【
図16A】この発明の第3の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【
図16B】この発明の第3の実施の形態による光導波装置の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【
図17】この発明の第4の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【
図18】この発明の第5の実施の形態による光電変換装置を示す断面図である。
【
図19】この発明の第5の実施の形態による光電変換装置の一部を拡大して示す断面図である。
【
図20】この発明の第5の実施の形態による光電変換装置の光電変換用の半導体層の具体例を示す断面図である。
【
図21】この発明の第5の実施の形態による光電変換装置の光電変換用の半導体層の具体例を示す断面図である。
【
図22】この発明の第5の実施の形態による光電変換装置の要部を示す断面図である。
【
図23】この発明の第7の実施の形態による建築物を示す側面図である。
【
図24】この発明の第7の実施の形態による建築物において側壁に設置された光電変換装置の動作を説明するための平面図である。
【
図25】この発明の第8の実施の形態によるスマートフォンを示す正面図である。
【
図26】この発明の第9の実施の形態による自動車を示す斜視図である。
【
図27】この発明の第10の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【
図28】この発明の第11の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【
図29】この発明の第11の実施の形態による光導波装置を示す側面図である。
【
図30】この発明の第12の実施の形態による自動車を示す斜視図である。
【
図31A】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(構造と光場)を示す略線図である。
【
図31B】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(光場)を示す略線図である。
【
図31C】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(導入効率)を示す略線図である。
【
図32A】この発明の第12の実施の形態による自動車のフロントドアに設置された電磁波受電装置の電磁波導波装置の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(構造と光場)を示す略線図である。
【
図32B】この発明の第12の実施の形態による自動車のフロントドアに設置された電磁波受電装置の電磁波導波装置の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(光場)を示す略線図である。
【
図32C】この発明の第12の実施の形態による自動車のフロントドアに設置された電磁波受電装置の電磁波導波装置の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(導入効率)を示す略線図である。
【
図33A】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションに用いた構造および光強度を測定するためのモニターの配置を示す略線図である。
【
図33B】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(構造と光場)を示す略線図である。
【
図33C】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(光場)を示す略線図である。
【
図33D】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(導入効率)を示す略線図である。
【
図34A】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションに用いた構造および光強度を測定するためのモニターの配置を示す略線図である。
【
図34B】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(構造と光場)を示す略線図である。
【
図34C】この発明の第12の実施の形態による自動車のボンネットおよび屋根に設置された光電変換装置の光導波装置部の導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果(導入効率)を示す略線図である。
【
図35】この発明の第13の実施の形態による光導波装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という。)について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態の図面においては、原則として、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0066】
〈第1の実施の形態〉
[光導波装置]
図1は第1の実施の形態による光導波装置を示す。
図1に示すように、この光導波装置は、クラッド層11と導波方向に間隔δで周期的に配置された複数のクラッド層12とにより平板状の導波コア層13の上下が挟まれた構造を有する。クラッド層11は導波コア層13の一方の主面(上面)を連続に被覆し、クラッド層12は導波コア層13の他方の主面(下面)を不連続に被覆している。クラッド層11とクラッド層12とは全体として、導波コア層13を不連続に被覆するクラッド層を構成する。即ち、このクラッド層は、導波コア層13を被覆していない断絶部の端部(例えば、
図1中、Eで示す)と、この断絶部に対して導波コア層13の導波方向と反対側でかつ導波コア層13から離れた位置(例えば、
図1中、Pで示す)との間に延在し、導波コア層13の導波方向に向かって導波コア層13に次第に近づき、かつ後述のように断絶部の端部における接線が導波コア層13に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有する。導波コア層13の両側面はクラッド層11の延長部により被覆してもよいし、反射面により構成してもよい。クラッド層12と導波コア層13との結合部分の詳細を
図2に、より広域に亘るこの結合部分の詳細を
図3に示す。
図2および
図3においては、クラッド層12をクラッド層12-a、12-b、12-c、12-dで示す。それぞれのクラッド層12と隣のクラッド層12との間には光導入コア層14が設けられている。
図2および
図3においては、光導入コア層14を光導入コア層14-a、14-b、14-c、14-dで示す。クラッド層12および光導入コア層14は
図1の垂直方向(奥行き方向)に所定距離延びている。クラッド層12は導波コア層13の導波方向に凹に湾曲した形状を有し、その形状は必要に応じて選ばれるが、
図1では、一例としてクラッド層12が四分の一円の形状を有する場合が示されている。クラッド層12の導波コア層13側の端部の接線は導波コア層13の面と一致しており、従って導波コア層13内の導波方向と一致している。言い換えると、クラッド層12の導波コア層13側の端部は導波コア層13にタンジェンシャルに接続している。クラッド層11、12および導波コア層13の屈折率は、クラッド層11、12により導波コア層11内に光を閉じ込めることができるように、導波コア層13の屈折率に対してクラッド層11、12の屈折率が小さく選ばれている。また、クラッド層12および光導入コア層14の屈折率は、クラッド層12により光導入コア層14内に光を閉じ込めることができるように、光導入コア層14の屈折率に対してクラッド層12の屈折率が小さく選ばれている。導波コア層13の屈折率と光導入コア層14の屈折率とは好適には等しく選ばれるが、これに限定されるものではない。光導波装置の平面形状は特に限定されず、光導波装置の用途などに応じて適宜選ばれるが、例えば、長方形または正方形であり、この場合、光導波装置は全体として直方体の形状を有する。
【0067】
上記の四分の一円の断面形状を有するクラッド層12は、光入射面(光導波装置の底面)で、その接線としては、垂直のものを持つ。対応して、四分の一円の反対の終端部では、クラッド層12は断絶し、そこで水平方向の接線を持つ。クラッド層12が間隔δをもって横方向に周期的に配置されるので、四分の一円の上部の終端部では、
図2に示すように、導波コア層13(屈折率大の部分)がクラッド層12に閉じ切られておらず、幾何学的にオープンな構造を持つことが特徴である。これにより、
図1に示すように導波方向にx軸を取る(光導波装置の厚さ方向にz軸を取り、
図1の紙面に垂直方向にy軸を取る)と、クラッド層12が不連続となる地点を
図2に示すようにx=x
i と記すと、x<x
i では、導波コア層13およびその下部近傍において、
図2に示すように、導波方向に沿って(断面形状として)クラッド層12が4本、即ちクラッド層12-a、12-b、12-c、12-dが存在する。即ち、
図2に示すクラッド層12-aが断絶した地点以降の領域(x≧x
i )では、始点以外の外界より(
図2では、左下側から光導入コア層14aを通じて)、導波コア層13へ光が侵入することができる。
図2および
図3に示すように、x=x
i よりδ(2δ)だけ右側にずれた地点、即ち、x=x
i +δ(x=x
i +2δ)では、光導入コア層14-b(光導入コア層14-c)(支流)が、導波コア層13(本流)に合流する(
図3では、簡単のため、光導入コア層14-cの下方に存在する光導入コア層およびこの光導入コア層と光導入コア層14-cとの間のクラッド層は図示していない)。
図3に示すように、クラッド層12-a 、12-b、12-cの右終端部(断絶部)での接線(図中、破線で示す)は、導波光進行方向に平行またはほぼ平行になっている。即ち、クラッド層12-a 、12-b、12-cの終端部の導波コア層13へのタンジェンシャル接続が形成されている。このようにして、導波コア層13には
図3の太矢印で示すように進行方法に沿っての連続的併進対称性を持たせ、クラッド層12に関しては、周期δの離散的な併進対称性を持たせる。これにより、導波コア層13は、準解放構造を持つこととなる。x
i -δ<x<x
i において導波コア層13に最近接するクラッド層12-aは、上記終端部x=x
i において不連続構造を持つものの、下方より滑らかにほぼ平行性を持ちつつ導波コア層13に近づいてくる一層下の別のクラッド層12-bが、上記最近接クラッド層の断絶をカバーするとともに自らが最近接クラッド層となることで、導波コア層13内の光が、損失を生じることなく
図3中、向かって右側へと効率良く導波される。また、この時、各非連続クラッド層12は、その上部の終端部において(
図3に破線で示すように、その接線が導波コア層13に平行(水平)またはほぼ平行であり)幾何学的に上部のクラッド層11に平行またはほぼ平行である。導波方向はクラッド層11に平行であることから(当然ながら水平方向であるので)、断絶クラッド層12は、導波方向に沿って、その最後端において導波コア層13に対して上述の如く、タンジェンシャルに合流するような構造を持つ。x=x
i において最近接クラッド層12-aが終端した地点から、ホイヘンスの原理に従って、微小球面波として導波コア層13を導波してきた光は拡がろうとするが、上記のタンジェンシャル性をもって下から近接してくる一段下の層のクラッド層12-bにより全反射される。上記の“平行またはほぼ平行であること”とは、上記過程によって全反射が生じ得る程度に平行であることにより定義される。この平行性により、上記のように導波コア層13内の光は散逸することなく、ほぼ100%効率良く導波される。x=x
i +δにおいてもクラッド層12-bとクラッド層12-cについて全く同様のことが生じる。以降のすべての本流・支流合流点でも同様である。
【0068】
導波コア層13の素材としては、例えば屈折率が1.6以上2.0以下程度の無機物質、無機ガラスあるいは屈折率1.6以上の高屈折率樹脂などが挙げられるが、これに限定されるものではない。光導入コア層14の素材としては、例えば屈折率が1.6以上2.0以下程度の無機物質、無機ガラスあるいは屈折率1.6以上の高屈折率樹脂などが挙げられるが、これに限られることはない(特に同層を挟むクラッド層として空気層などを用いる場合)。また、クラッド層11、12としては、例えば屈折率1.34等の低屈折率が得られる樹脂、例えばCYTOPが挙げられる(この他、空気層などを用いることも可能である)。導波コア層13および光導入コア層14の屈折率とクラッド層11、12の屈折率との組み合わせの一例を挙げると、導波コア層13および光導入コア層14の屈折率が2.0、クラッド層11、12の屈折率が1.35である。導波コア層13および光導入コア層14の屈折率を例えば1.6前後とすることにより安価な材料を用いることができることから光導波装置の大面積化が容易になるため、光導波装置の大面積化が必要な場合は、導波コア層13および光導入コア層14の屈折率を1.6前後、クラッド層11、12の屈折率を1.35とすることも考えられる。あるいは、光導入コア層14の作製時に犠牲スペーサ層を介在させて作製し、光導入コア層14完成後は、当該犠牲スペーサ層を例えば溶かすことで、上述のように空気層(屈折率=1)そのものをクラッド層として用いることも可能である。この場合、導波コア層13および光導入コア層14の屈折率を、例えば、通常の建材ガラスの屈折率であるn=1.5~1.7程度とすることができる。この光導波装置は、例えば、クラッド層11を下にして建築用窓材に張り合わせて使用することができる。この場合、例えば、この光導波装置の光出射部に、従来の面入射型太陽電池を光電変換部として配置して光電変換装置を構成することにより、建築用窓材において太陽光発電を容易に実現することができる。
【0069】
クラッド層11、12の厚さは例えば1μm以上数μm以下(例えば、2μm以下)であるが、これに限定されるものではない。導波コア層13の厚さは、1μmオーダーから、1mmオーダーであるが、建築物の外壁に設置する用途では、数mm程度も用いられ得る。この光導波装置をpn接合に平行に光を入射させるフォトンフォトキャリア直交型太陽電池と結合する場合の導波コア層13の厚さは、2μm以上300μm以下あるいは2μm以上300μm程度以下程度である。在来型のタンデム構造(直列タンデム構造)光電変換装置との接続では、数百μmから数mmの厚みを持たせ、これに対応する幅を持つ短冊状に形成した上記直列タンデム構造光電変換装置と結合させる。
図1に示す導波路全体構造に置ける屈折率大の部分の面積Sとこれを包囲する縁の曲線の総延長(~クラッド層断面長さの総延長)Lを評価すると、既に述べたS~cL
2 で定義される係数cの逆数:1/c=200~10
4 となり、百~万のオーダーの量である。一般に、在来型の同じサイズの導波路と比べると、この光導波装置の導波路に対しては、総じて1/cの値が一桁以上大きな値となる。これは、導波コア層13の始点と終端との間の至るところで外界から光を導入することが可能となるので、導波コア層13と同じ屈折率を持つ領域、即ち光導入コア層14が導波コア層13辺縁部まで連続しており、この領域の縁に存在して外部からの光導入に寄与するクラッド層12の(断面の線分)総延長がはるかに長くなることによる。
【0070】
光導波装置の各部のサイズは、光導波装置の使用目的などに応じて適宜選ばれるが、例えば、
図1のx軸方向の幅は5cm以上100cm以下、z軸方向の厚さは1mm以上6mm以下、奥行き(y軸方向の幅)は3cm以上50cm以下、クラッド層12の曲線の形状は半径6mmの四分の一円である。
【0071】
【0072】
図4Aに示すように、まず基板21上に熱可塑性樹脂からなるクラッド層12と光導入コア層14との交互積層膜を形成し、基板21上にこの交互積層膜と接するように型22を固定するとともに、この交互積層膜上に押し板23を載せる。型22は四分の一円の形状の断面を有し、
図4Aに垂直方向に延びている。型22の弧の長さは交互積層膜の高さと同じに選ばれる。
【0073】
次に、
図4Bに示すように、クラッド層12および光導入コア層14を構成する熱可塑性樹脂がある程度軟化する温度に加熱した状態で、押し板23を押し下げつつ、型22に当たるように横にずらすことで、交互積層膜が湾曲した構造を形成する。このとき、交互積層膜を形成するクラッド層12および光導入コア層14は型22に倣って変形する。ここで、押し下げつつ、横にずらすのは、圧縮およびずり前の交互積層膜の高さが、圧縮およびずり後の型22の弧の長さと一致するようにすることで、クラッド層12および光導入コア層14の基板21に平行な方向の幅も圧縮およびずりの前後で維持できるようにするためである。この幅が高さによらず一定であることで、
図1に示したクラッド層12の間隔δでの周期配置構造が可能となる。光導入コア層14の特性を上げるべく、完全平行から、“+ずり”(光導入コア層14の先端が細くなる)あるいは“-ずり”(光導入コア層14の先端を相対的に太くする)などの調整も可能である。
【0074】
この後、
図4Cに示すように、押し板23を外して、その上に、上面にクラッド層11が設けられた導波コア層13の圧着を行うことで、
図4Dに示す構造が完成する(図示の便宜上、導波コア層13と光導入コア層14の間に黒線が描かれているが、実用上は、典型的には同一屈折率で作るので、当該黒線は実態としては存在しない点に留意されたい)。
【0075】
クラッド層12および光導入コア層14の湾曲形状が四分の一円でない場合には、その型22の曲線の形状をその湾曲形状に合わせれば良い。例えば、型22の曲線の形状の取り方により、楕円を始め、他の有為な曲線、変曲点具有構造等も形成し得る。
【0076】
[光導波装置の動作]
光導波装置の動作について説明する。一例として、
図5に平面形状が長方形である光導波装置を光入射面側から見た図を示す。
図5に示すように、外部から光導波装置の光入射面(光導入面)に対してほぼ垂直方向から入射光が入射する場合を考える。入射光は光入射面上の各光導入コア層14の端面に入射し、光導入コア層14とクラッド層12との界面で全反射を繰り返しながら光導入コア層14内を導波されて導波コア層13に入り、続いて導波コア層13内を矢印方向に導波され、導波コア層13の端面から出射される。
【0077】
[光導波装置の検証シミュレーションおよび数値実験]
既に述べたように、
図2のクラッド層12-aが終端する点、即ち、x=x
i において、二つの分かれていた屈折率大の部分、即ち導波コア層13および光導入コア層14-aが一つにまとまる(合流する)が、導波コア層13から、クラッド層12-aの終端域において、ホイヘンスの原理に従って発する球面波が、光導入コア層14-aとこれに隣接するクラッド層12-bに向かって拡がって行った際に、クラッド層12-bは導波コア層13にタンジェンシャルに接続されていることにより、当該クラッド層12-bは当該クラッド層12-bにより全反射条件を満たすようななだらかな曲線を描くよう構造を作製する。
【0078】
このことがもたらす効果を、コンピュータシミュレーションにより検証した。その結果を
図6A、
図6Bおよび
図6Cに示す。ただし、シミュレーションに際しては、導波コア層13および光導入コア層14の屈折率は2.0、クラッド層12の屈折率は1.35と設定した。クラッド層12の端部の導波コア層13へのタンジェンシャル接続部の曲率半径は1.1mmとした。シミュレーション領域としては、
図2において一点鎖線で示す領域を用いた。
【0079】
図6Aは、
図2の導波コア層13(本流)と光導入コア層14-a(
図6Aでは単に支流と記載されている)との合流部の拡大図である。
図6Aでは、図で示す位置に光強度測定用のモニターA、Bが配置されている。
図6A中の三角形は光の向きを示す。
図6Bはy=0における電場のz軸方向の振幅E
Z のxz面内の分布(光場)の計算結果を示す。
図6Bに示すように、導波コア層13を導波されてきた光は、クラッド層12-aが断絶するx=x
i を過ぎて、多少下に膨らむもののクラッド層12-bで全反射されて導波コア層13へと戻ってくる。モニターA、Bにおける光強度の計算結果を
図6Cに示す。
図6Cの横軸は光速cと時間Tとの積つまり距離である。
図6Cから分かるように、モニターA、Bにおける光強度が一致しており、このことから、導波コア層13が準解放系であり、またクラッド層12が非連続的であるにもかかわらず、Aの位置からBの位置まで、導波コア層13と光導入コア層14-aとの合流が導波効率に害を及ぼすことなく、光が損失を生じることなく100%導波されていることが分かる。即ち、
図6Bに示すように、上記の全反射状況は、導波コア層13に対して(光導入コア層14に隣接する)クラッド層12が、その対導波コア層13タンジェンシャル性を以って、もたらされている。
【0080】
互いに合流する導波コア層13および光導入コア層14における光は、互いに相手側へ、中間のクラッド層12が終端して以降、ホイヘンスの原理に従って拡がってゆくが、
図7A、
図7Bおよび
図7Cに示すように、光導入コア層14中を伝搬する光は、その拡がり先である導波コア層13に隣接するクラッド層11により全反射される。クラッド層12に断絶があり、導波コア層13は幾何学的に解放構造を持っているにもかかわらず、上記の当該非連続クラッド層12の上部終端部において、導波コア層13に対しタンジェンシャルな接続をとるよう非連続クラッド層12を配置することにより、光の合流による損失が発生しない状況を実現することができる。
図7Aは、
図2の導波コア層13と光導入コア層14-a(
図7Aでは光導入コア層(支流)と記載されている)との合流部の拡大図である。
図7Aでは、光導入コア層14-aおよび導波コア層13にモニターA、B、Cが配置されている。
図7Bは、y=0における電場のz軸方向の振幅E
Z のxz面内の分布(光場)の計算結果を示す。
図7Bに示すように、光導入コア層14-aを導波されてきた光は、クラッド層12-aが断絶するx=x
i を過ぎて、ホイヘンスの原理により多少上に膨らむもののクラッド層11で全反射されて導波コア層13へと戻ってくる。
図7Aの光導入コア層14-aの左端の位置Aにおける光強度、合流直後の位置Bにおける光強度および導波コア層13の右端の位置Cにおける光強度を評価した結果を
図7Cに示す。
図7Cより、モニターA、B、Cにおける光強度がほぼ一致しており、導波コア層13が準解放系でクラッド層12が非連続的であることにより、支流である光導入コア層14-aから本流である導波コア層13に光が注入され、合流地点から遠く離れた光導入コア層14-aの位置Aから、光が損失を生じることなく導波コア層13の位置Cまでほぼ100%導波されていることが分かる。
【0081】
図8A、
図8Bおよび
図8Cは、導波コア層13を導波される光と光導入コア層14-aを導波される光との合流(合波)のシミュレーション結果である。
図8Aは、導波コア層13と光導入コア層14-aとの合流部の拡大図である。
図8Aでは、導波コア層13にモニターAが配置され、光導入コア層14-aにモニターBが配置され、導波コア層13の下流にモニターCが配置され、光導入コア層14-aのモニターCに対応する位置にモニターDが配置され、導波コア層13のモニターCより下流にモニターEが配置されている。
図8Bは、y=0における電場のz軸方向の振幅E
Z のxz面内の分布(光場)の計算結果を示す。
図8Bに示すように、導波コア層13を導波されてきた光と光導入コア層14-aを導波されてきた光は、クラッド層12-aが断絶するx=x
i を過ぎて、ホイヘンスの原理により多少上下に膨らむもののクラッド層11とクラッド層12-bで全反射されて導波コア層13へと戻ってくる。
図8AのモニターA、B、C、D、Eにおける光強度を評価した結果を
図8Cに示す。
図8Cに示すように、モニターA、Bにおける光強度とモニターC、Dにおける光強度とがほぼ一致しており、モニターEにおける光強度が、モニターA、Bにおける光強度とモニターC、Dにおける光強度との和に等しくなっていることから、導波コア層13が準解放系であり、クラッド層12が非連続的であることにより、光導入コア層14-aのモニターAの位置から、導波コア層13と光導入コア層14-aとの合流後のモニターCの位置まで、光が損失を生じることなく100%導波されていることが分かる。
【0082】
以上、光導波装置における導波を3つの特徴的なパターンに分けて示してきたが、最後に、少し大局的な導波の様子(
図1の導波コア層13に沿って合流箇所を三つ含む場合の計算結果)を
図9Aおよび
図9Bに示す。外部から光を取り入れることを反映して、支流である光導入コア層14から光を入れた。
図9Aに支流左端を発した光の光導波装置内の導波の様子を示す。
図9Bに
図9AのモニターA、B、C、Dにおける光強度の評価結果を示す。
図9Bに示すように、導波コア層13と光導入コア層14との合流箇所を三つ経ているにもかかわらず、光導入コア層14のモニターAの位置から導波コア層13のモニターDの位置まで、100%導波されていることが分かる。
【0083】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、光導波装置が導波コア層13の導波方向とその逆方向とに対して非対称な構造を有するため、光入射面に入射して光導入コア層14から導入され、導波コア層13に合流する光は導波コア層13の内部をあらかじめ決められた導波方向に効率的に導波され、光導波装置から出射される。この光導波装置は、外部から入射する光を効率的に集光することができ、しかも導波コア層13に途中で損失を生じることなく光を効率的に導波することができる。言い換えると、導波コア層13内の光は、導波方向に沿って100%導波されつつ、しかし、クラッド層12の非連続性、導波コア層13の準解放性によって、導波コア層13に対する光の取り入れを、導波コア層13の始点から終端までの至るところで、即ち導波方向の複数ポイントにおいて、行うことができる。そして、光の集光と高効率の導波という目的に対し、極めて有効な構造と機能を実現することができる。また、光導波装置の光入射面に入射する3次元空間伝播光を光導入コア層14に導入し、光導入コア層14内で全反射を繰り返しながら導波コア層13に入射させ、導波コア層13内を導波させるので、入射する3次元空間伝播光の波長によらず、導波コア層13の内部に効率的に光を導入することができる。この光導波装置は、高効率の受光器、受光像の転送・再生機など、幅広い分野への応用が可能である。
【0084】
〈第2の実施の形態〉
[光導波装置]
図10は第2の実施の形態による光導波装置を示す。
図10に示すように、この光導波装置は、光入射面に光波進行方向変換層35が設けられていることを除いて、第1の実施の形態の形態による光導波装置と同様な構成を有する。
【0085】
図10に示すように、光波進行方向変換層35は、この光波進行方向変換層35に入射する入射光の入射角度によらず、入射光をこの光波進行方向変換層35の面に垂直な方向の光に変換することができる。このため、様々な方向から入射光が光導波装置に入射しても、光波進行方向変換層35により進行方向が光入射面に対して垂直な方向に変換されることにより、結果として光導入コア層14内で全反射を繰り返しながら導波コア層13の内部に光を導入することができる。
【0086】
光波進行方向変換層35による効果を検証するためにシミュレーションを行った。光波進行方向変換層35として、スラブ導波路上に、放物線の断面形状を有する透明樹脂構造体のラインアンドスペース(L&S)構造(スペース=0の場合を含む)を一方向に形成した1次元構造を用いた。当該透明樹脂の屈折率は1.52とした。この1次元構造付きスラブ導波路に対して入射角θ
0 (~30°)で波長1.0μmの光(平面波)を入射させた。この1次元構造付きスラブ導波路の厚さ方向をz軸、この1次元構造付きスラブ導波路に対する入射光と垂直方向をx軸、これらのx軸およびz軸に垂直な方向をy軸とした。
図11は、光波の電場のy軸方向の振幅E
y の大きさ(強度)のxz面内の分布を示したものである。
図11より、この1次元構造付きスラブ導波路に入射角θ
0 で入射した光は、この1次元構造を透過した後、スラブ導波路に対してほぼ垂直な方向から入射していることが分かる。即ち、このL&S構造により、斜め入射光の進行方向を光波進行方向変換層35の面に対しほぼ垂直方向に変換することができることが分かる。
【0087】
図12は、1次元構造を構成する放物線断面の構造体の幅wおよび高さhを変えて、入射角θ
0 に対する屈折角(実効屈折角)の変化をシミュレーションにより求めた結果を示す。比較のために、1次元構造なしの単純なスラブ導波路を用いた場合の同様な結果も
図12に示す。
図12より、単なるスラブ導波路を用いた場合に比べて、放物線断面の構造体からなる上記L&S構造を介すると、垂直入射に近づく(実効屈折角は0°±10°程度に抑えられる)ことが分かる。なお、断面形状は放物線でこれが軸の周りに回転対称性を有する構造、即ち回転放物面(パラボロイド)の集合体からなる膜(パラボロイド集合体膜)を光波進行方向変換層35に用いることも有効である。
【0088】
適切に選ばれた互いに異なる光波進行方向変換層35を2層タンデムで用いることにより、ほぼ垂直入射を実現することができる。すなわち、例えば、
図12において、光が入射する側から見て1層目の光波進行方向変換層35をw=1.0μm、h=1.0μmとし、2層目の光波進行方向変換層35をw=0.7μm、h=0.7μmとする。今、1層目の光波進行方向変換層35に入射する光の入射角をxとし、1層目の光波進行方向変換層35による屈折角をx’とすると、
図12に示すように0≦x≦50に対してほぼ0≦x’≦10となる。次に、2層目の光波進行方向変換層35に入射する光の入射角をx’とし、2層目の光波進行方向変換層35による屈折角をx”とすると、この0≦x’≦10に対して、再び
図12よりx”~0となることが解る。すなわち、ほぼ垂直入射とすることができる。
【0089】
次に、光波進行方向変換層35により実際に進行方向変換実験を行った結果について説明する。光波進行方向変換層35としてはパラボロイド集合体膜を用いた。
図13A、
図13B、
図13C、
図13D、
図13E、
図13F、
図13Gおよび
図13Iに示すように、この実験では、光ビーム(レーザービーム)が入射するパラボロイド集合体膜の後ろにスクリーンを置いた配置となっていて、それぞれ入射角θ=0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°となっている(各図において光ビームの入射方向を矢印で示す)。
図13A~
図13Iより、垂直入射(入射角θ=0°)の配置から徐々に入射角θを大きくしていった場合(入射方向を矢印で示す)のスクリーン上の光強度の最も大きなところの位置の変遷が分かる。
図13A~
図13Iより、斜め入射をしても、垂直入射(±10°程度)の場合の光の位置に強い光強度が確認され、斜めから入る光に対しても垂直方向への光波進行方向変換が良く行われていることが分かる。またLED光源によっても同様の結果が得られることを確かめた。これにより、昼間のどの時間帯であるかにかかわらず、光導波装置の光入射面には、ほぼ垂直に太陽光が入射するように設定されることが実証された。
【0090】
図14Aおよび
図14Bは光波進行方向変換層35を2層タンデムで用いた場合に3次元入射光(3D)を光導波装置の入射面に垂直に入射させた時に3次元入射光が2次元導波光(2D)に変換される様子をシミュレーションにより求めたものであり、
図14Aは光導波装置内における光場に加えてクラッド層12および光導入コア層14の構造を表示したもの、
図14Bは光場のみを表示したものである。この光導入部の構造は紙面に対し深さ方向に併進対称性を持っている(その断面構造が
図14Aに示されている)。この光導入部は、x軸方向に沿って離散的な併進対称性を持っており、真下からの光を垂直縦長楕円(この例では短軸11μm、長軸22μmで、光レシーバー[receiver]部と呼ぶ)とこの楕円の頂上部で接続する水平横長楕円(この例では短軸30μm、長軸180μmで、光マージャー[merger]部と呼ぶ)から成る。光マージャー楕円は、その頂上部で導波コア層13とタンジェンシャルに合流している。
図14Aの構造では、光レシーバー楕円の頂上部(光マージャー楕円との接続点)は、上記導波コア層13下端から8μm下方の位置に存在するように設定している。光導入コア層14の幅は下端入射面で(x軸方向に沿って)約2.25μm、クラッド層12の幅は同0.4μmであるが、32周期毎にクラッド層12の幅を1μmと厚くした離散的併進対称性を光導入コア層14はx軸方向に沿って有している。計算に用いた波長は1μmである。
図14Aおよび
図14Bに示すように、3次元入射光は一部が光導入コア層14を垂直に抜けて光漏れが生じるが、大部分は2次元導波光に効率的に変換されることが分かる。
図15は、3次元入射光の2次元導波光への変換効率と入射角との関係を波長が1μmの場合と0.5μmの場合とについて示したものである。
図15より、入射角が0°付近では3次元入射光の2次元導波光への変換効率(即ち
図1~
図3における導波コア層13への光の導入効率)がほぼ50%となっていること、変換効率の波長依存性が小さいことが分かる。変換効率の波長依存性が小さいのは、この光導波装置では、反射光学系が使用されているためである。
【0091】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波装置に対する光の入射角によらず、光導波装置の光入射面にほぼ垂直に太陽光が入射するように設定することができるという利点を得ることができる。特に、
図12から分かるように、上記L&S構造では、w=0.7μm、h=0.7μmのL&S構造を用いると垂直入射からのずれを概ね8度以下に抑えることができることが、また、パラボロイド集合体膜を光波進行方向変換層35に用いる場合も、
図13A~
図13Iから分かるように垂直入射からのずれを概ね同程度に抑えることができる。このように光波進行方向変換により入射光を光導波装置の光入射面に垂直に入射させることができ、この入射角の光は、
図10の構造(例えば、導波コア層13および光導入コア層14は屈折率2.0、クラッド層11、12は屈折率1.35を有する)に対し、クラッド層12(四分の一円であるので、入射面にクラッド層12は直交していることに注意されたい)で全反射される。このようにして、光を光導入コア層14を介して効率良く導波コア層13に導入することができ、導波コア層13の内部を導波される光量の大幅な増加を図ることができるという利点を得ることができる。
【0092】
〈第3の実施の形態〉
[光導波装置]
図16Aは第3の実施の形態による光導波装置を示し、特に、光導入効率の高い光導入コア層14およびクラッド層12の部分の一例を模式的に示したものである。
【0093】
図16Aに示すように、この光導波装置においては、クラッド層12-aとクラッド層12-bとで挟まれた光導入コア層14-a内に補助的にクラッド層12’、12''、12''' 、12''''等が設けられている。図示しないが、クラッド層12-bとクラッド層12-cとで挟まれた光導入コア層14-b内にも同様の構造が作製され、これらの層を含め、全体でx軸方向に離散的併進対称性が確立されている。この補助的なクラッド層12’、12''、……は、クラッド層が相互に近づいてくるレートを小さくするために設けられる(当該クラッド層の曲線を、局所的に直線で近似すると、その交差角εを小さくする効果があり、光導入コア層14内を遠くまで光を届けることができる)。補助的なクラッド層12’、12''、……は光導入コア層14-aの長さ方向の途中の範囲にだけ設けられており、その長さおよび位置は、上記の実効交差角(同じz座標値における接線の成す角の差)で定量的に決定することができる。好適には、(π/2-θ
c )/ε(ただし、θ
c は臨界角)が十分大きくなるように取る。
図16Bに導波性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示すが、この補助的なクラッド層12’、12''、……により、光導入コア層14-a内を全反射を繰り返しながら光を導波する場合、光導入コア層14-aの全長で全反射条件をより簡単に満たすことができるようになる。これはタンジェンシャル接続の別の例であり、中途断絶するクラッド層の上下のコア層を伝搬する光がホイヘンスの原理に従って微小球面波が、中断クラッド層(補助的なクラッド層)の上下のクラッド層で全反射する程度に上記3本のクラッド層の接線の傾きが互いにほぼ平行である。このように、局所的な領域の各場所毎に、上記接線の傾きがほぼ平行であることを満たせばよいので、大局的には、(上記光導波あるいは光導入)導波路は、(
図1等に代表される平面状のみならず)
図16Aに示すように一般になだらかに湾曲していてもよい(車のボンネットなどにこの発明の光導波装置を張り付ける際に有用な特徴となる)。この光導波装置のその他の構成は、第1の実施の形態の形態による光導波装置と同様である。
【0094】
また
図16Aに示す構造と実効的に同様の効果をもたらす構造として、
図16Aの根本の部分から上方に向かって進むにつれて補助的なクラッド層の幅が狭くなり、
図16Aで補助的なクラッド層が途絶えている地点以降で、この幅が光侵入長にくらべて小さくなってクラッド層として機能しない厚みとなっているような構造(先細り構造)を採用することも有効である。この場合、補助的なクラッド層を構成する物質材料自体は
図16Aの根本の部分からメイン導波路である導波コア層13まで途切れることなく連続的に存在する配置を採ることができ、より容易に作製できるメリットを有する。例えば、
図4A、
図4B、
図4Cおよび
図4Dに示す横(x軸)方向へのずらしを応用した作製法に従えば、クラッド層12の体積保存とクラッド層12のx方向のスライスの幅が不変であることを合わせると、クラッド層12は図の下方からの光の進行に沿ってはその幅を小さくして行くことが分かる。横方向へのずらしを図の縦方向の位置(z座標)に応じて制御する(ことを通じて、例えば
図14Aのような構造を得る)ことで、上述の先細り構造を実現することができる。
【0095】
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導入コア層14から導波コア層13に到達する光の量を増やすことができ、光導波装置に入射する光の利用効率の向上を図ることができるという利点を得ることができる。
【0096】
〈第4の実施の形態〉
[光導波装置]
図17は第4の実施の形態による光導波装置を示す。
図17に示すように、この光導波装置は、光入射面側のクラッド層12が直線状の断面形状を有することを除いて、第1の実施の形態の形態による光導波装置と同様な構成を有する。
【0097】
図17に示すように、この光導波装置においては、光入射面側の厚さtの範囲のクラッド層12が光入射面に対して角度φをなす直線の断面形状を有し、
図1に示す四分の一円の接線が水平方向からθの仰角を持つ位置で接続されている。ここで、t=δ・tan φである。φは、θに対し、φ = (θ+π/2)/2を満たすように設定する。この直線状のクラッド層12は、低屈折率層のほか、アルミニウムなどの光の反射率が高い金属により構成される。
【0098】
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波装置の光入射面に垂直に入射する光をクラッド層12の直線部で効率的に全反射させることにより、始点と終端との間の至る所で損失を生じることなく滑らかに光導入コア層14を導導波させることができ、光導波装置の光入射面に入射する光の利用効率の向上を図ることができるという利点を得ることができる。
【0099】
〈第5の実施の形態〉
[光電変換装置]
図18は第5の実施の形態による光電変換装置を示す。
図18に示すように、この光電変換装置は、第1の実施の形態による光導波装置を用いたものである。
【0100】
図18に示すように、この光電変換装置は、光導波装置部および光電変換部を有する。光導波装置部は、
図1に示す光導波装置と同様な構造を有する。光電変換部は各種の太陽電池あるいは光電変換素子であってもよいが、
図18においては、光電変換部が光電変換用の半導体層50により構成される場合が示されている。この場合、クラッド層11上に設けられ、導波コア層13の外側に延在した基板40上に、導波コア層13の端面に接触して半導体層50が設けられている。
【0101】
基板40は、光導波装置の機械的支持や機械的保護の役割なども果たすことができ、導波コア層13の内部に光を効率良く閉じ込めるためのクラッド層としての役割を果たすことができるものであってもよく、この場合は、クラッド層11を兼用させることもできる。基板40は2層以上の多層構造となっていてもよい。基板40は、例えば、ガラス板、透明プラスチック板などである。透明プラスチック板を構成する透明プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などを用いることができる。また、基板40はフレキシブルなものであってもよく、この場合は、凸面または凹面に沿って曲げた状態で光電変換装置を容易に設置することができる。
【0102】
半導体層50はpn接合を有し、そのpn接合面が導波コア層13の主面に平行になっている。半導体層50は一般的には細長い長方形の平面形状を有する導波コア層13と半導体層50とは互いに一体に設けられており、全体として面状の形状を有する。
【0103】
半導体層50の上下(光入射側を上とする)の互いに対向する一対の面(上面および下面)にそれぞれ第1の電極60および第2の電極70が設けられている。これらの第1の電極60および第2の電極70の一方はアノード電極、他方はカソード電極として用いられる。例えば、第1の電極60がアノード電極、第2の電極80がカソード電極として用いられる。第1の電極60および第2の電極70は、半導体層50が互いに異なる半導体からなる複数の領域に分割されている場合には各領域毎に設けられてもよいし、一方が全ての領域上に延在する全面電極であってもよい。
【0104】
この光電変換装置においては、光導波装置部の光入射面に入射した入射光(3次元空間伝播光)は、光導入コア層14を介して導波コア層13の内部に入って導波された後、導波コア層13の端面から出射されて半導体層50に入射するように構成されている。
図19に示すように、この場合、導波コア層13の内部を導波される光の正味の進行方向と、導波コア層13の端面から半導体層50に入射した光によりこの半導体層50中に生成されるキャリア(フォトキャリア)の正味の移動方向(第1の電極60と第2の電極70とを最短で結ぶ方向)とのなす角度Θはほぼ直角である。角度Θは、具体的には、第1の電極60の光の進行方向の幅あるいは半導体層50が互いに異なる半導体からなる複数の領域に分割されており第1の電極60が各領域毎に設けられる場合には各領域毎に設けられる第1の電極60の光の進行方向の幅をW´、半導体層50の厚さをdとすると、π/2-δ≦Θ≦π/2+δ(ただし、δ~d/W´)であり、典型的には80°≦Θ≦100°であり、最も好適には90°である。導波コア層13と半導体層50との接合面には、導波コア層13から半導体層50に入射する光の反射を防止するために、好適には反射防止膜が設けられる。
【0105】
この光電変換装置においては、好適には、外部から光が入射する際に半導体層50に光が直接入射しないように構成される。言い換えると、光電変換装置に光が入射する場合、光導波装置部の光入射面には光が入射するが、半導体層50の面には光が直接入射しないようにする。このためには、具体的には、例えば次のようにする。例えば、第1の電極60を覆うように半導体層50の上方に遮光層を設ける。遮光層は従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、例えば、アルミ箔の両面にプラスチックフィルムが形成されたアルミラミネートフィルムなどである。この遮光層により、半導体層50に光が直接入射しないようにすることができる。また、基板40が建築物や電子機器の外面の一部を構成する場合には、光導波装置部には太陽光が入射するが、半導体層50には太陽光が入射しないように、言い換えれば半導体層50が陰になるように部材などにより覆うようにする。例えば、建築物の窓にこの光電変換装置を設置する場合には、窓ガラスが基板40となり、外部に露出した窓ガラス上に光導波装置部が設けられ、半導体層50は例えばAl製の窓枠の内側に隠れるようにする。また、この光電変換装置を建築物の屋根に敷き詰める場合には、隣接する光電変換装置の端部が上下に重なり合うようにし、上の光電変換装置の端部の半導体層50により下の光電変換装置の端部の半導体層50が覆われるようにする。また、電子機器、例えばスマートフォンのディスプレイ部にこの光電変換装置を設置する場合には、このディスプレイ部の表面の透明部材が基板40となり、外部に露出した透明部材上に光導波装置部が設けられ、半導体層50はこのディスプレイ部の表面に設けられた部材の内側に隠れるようにする。
【0106】
半導体層50は、例えば、既に挙げたものの中から必要に応じて選ばれる。半導体層50は、典型的には、p型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合である。好適には、半導体層50のうちの第1の電極60および第2の電極70が接触する部分が高不純物濃度にドープされ、これらの第1の電極60および第2の電極70が半導体層50とオーミック接触するようにする。半導体層50の一辺の長さは、典型的には、この半導体層50が設けられる導波コア層13の辺の長さと同一に選ばれるが、この辺と直角な辺の長さは、典型的には0.5μm~5mmであり、好適には2μm~1mmである。光導波装置部の大きさは上述のように例えば(5cm~100cm)×(3cm~50cm)であるので、この半導体層50の面積は一般的には光導波装置部の面積よりはるかに小さくて済む。即ち、この光電変換装置は、光導波装置部が大部分を占め、半導体層50は端のわずかな部分しか占めない。例えば、光導波装置部の大きさが10cm×10cm、半導体層50の大きさが1mm×10cmとすると、光導波装置部と半導体層50との全体の面積に占める半導体層50の面積の割合は、0.1×10/10.1×10=0.0099≒1%に過ぎない。これに加えて、半導体層50の厚さは、一般的には数十μm以下と小さいので、半導体層50の体積も極めて小さい。即ち、半導体層50の使用量が極めて少なくて済む。このため、光電変換装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0107】
半導体層50のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップE
g は、半導体層50内の光の進行方向にN段階(N≧2)に段階的に減少しており、順にE
g1、E
g2、…、E
gN(E
g1>E
g2>…>E
gN)となっている。
図20に一例としてN=4の場合を示すが、これに限定されるものではない。
図20に示すように、半導体層50は、バンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップE
g がそれぞれE
g1、E
g2、E
g3、E
g4の領域51、52、53、54からなる。各領域51、52、53、54は、導波コア層13の半導体層50が設けられた辺に平行な方向に延在する細長いストライプ状の形状を有する。
図20においては、各領域51、52、53、54上に互いに分離してそれぞれ第1の電極61、62、63、64が設けられている。第2の電極70は全面電極であり、各領域51、52、53、54の共通電極である。半導体層50を構成する各E
gi領域の幅(光の進行方向の幅で、
図20の横方向の長さ)は、各E
gi領域の光電変換対象光子(各E
gi領域のバンドギャップE
gi以上のエネルギーを有する光子)のうち、最低エネルギーのものに対するこのE
gi領域の吸収係数をα
i とすると、1/α
i 以上とする。
【0108】
Egiは次のように設定することができる。例えば、AM1.5太陽光スペクトルの全波長範囲またはその主要な波長範囲(入射エネルギーが高い部分を含む範囲)において、波長をN個の区間に分ける。そして、これらの区間に短波長側(高エネルギー側)から順に1、2、…、Nというように番号を付け、i番目の区間の最小光子エネルギーに等しくEgiを選ぶ。こうすることで、k番目の区間の光子エネルギーを有する光子がEgi領域に入射すると電子-正孔対が発生し、光電変換が行われる。また、この場合、このk番目の区間の光子エネルギーを有する光子が各Egi領域に到達して十分に吸収されるように、導波コア層13と半導体層50との接合面からこのEgi領域までの距離を選ぶ。これによって、導波コア層13の内部を導波されて半導体層50に入射する太陽光は、まずEg1領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg1以上のものが吸収されて光電変換され、続いてEg2領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg2以上でEg1より小さいものが吸収されて光電変換され、最終的にEgN領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEgN以上でEgN-1より小さいものが吸収されて光電変換される。この結果、太陽光スペクトルのほぼ全範囲あるいは主要な波長範囲の光を光電変換に使用することができる。
【0109】
各E
giの設定は、各E
gi領域を構成する半導体の組成や半導体の形態(アモルファス、多結晶、単結晶)などを変えることにより行うことができる。具体的には、各E
gi領域を別種の半導体により構成する。この場合、この半導体は、吸収係数αの大小は問わず、キャリア移動度μの高いものを選ぶことができるので、選択肢が広い。無機半導体を用いる場合について具体例をいくつか挙げると次の通りである。N=3の場合には、例えば、E
g1領域をSi
x C
1-x (E
g =1.8~2.9eV)、E
g2領域をSi(E
g =1.11eV)、E
g3領域をGe(E
g =0.76eV)により構成する。また、N=4の場合には、例えば、E
g1領域をSi
x C
1-x (E
g =1.8~2.9eV)、E
g2領域をアモルファスシリコン(a-Si)(E
g =1.4~1.8eV)、E
g3領域をSi
y Ge
1-y (E
g =1.11eV)、E
g4領域をSi
y Ge
1-y (E
g =~0.76eV)により構成する。あるいは、N=4の場合に、E
g1領域をIGZO(In、Ga、Znの酸化物)(E
g =~3eV)、E
g2領域をSi
x C
1-x (E
g =~1.8eV)、E
g3領域をSi(E
g =1.11eV)、E
g4領域をSi
y Ge
1-y (E
g =~0.76eV)により構成する。そのほかに、次のように構成することもできる。N=2の最も簡単な場合には、例えば、E
g1領域をa-Si(E
g =1.4~1.8eV)、E
g2領域をSi
y Ge
1-y (E
g =~0.76eV)により構成する。また、N=3の場合には、例えば、E
g1領域をGaP(E
g =2.25eV)、E
g2領域をGaAs(E
g =1.43eV)、E
g3領域をInN(E
g =0.7eV)により構成する。また、N=4の場合には、例えば、E
g1領域をGa
x In
1-x N(E
g =2.3eV)、E
g2領域をGa
y In
1-y N(E
g =1.4~1.8eV)、E
g3領域をGa
z In
1-z N(E
g =1.1eV)、E
g4領域をInN(E
g =0.7eV)により構成する。また、N=5の場合には、例えば、E
g1領域を直径1.9nm程度のCdSe微粒子(吸収ピーク波長445nm)、E
g2領域を直径4.0nm程度のCdSe微粒子(吸収ピーク波長585nm)、E
g3領域を直径2nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長800nm)、E
g4領域を直径4.5nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長1100nm)、E
g5領域を直径90nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長2300nm)により構成する。さらに、GaInN
x As
1-x やGaInN
x P
1-x を用いてxの制御だけでN~10の場合のE
gi領域を構成することも可能である。加えて、Teを含ませると大きなボウイング(bowing)を示すことが知られているII-VI族化合物半導体を用いてE
gi領域を構成してもよい。有機半導体と無機半導体とを用いる場合についての具体例を挙げると次のとおりである。例えば、N=4の場合には、E
g1領域をMDMO-PPV(E
g =2.2eV)、E
g2領域をa-Si(E
g =1.4~1.8eV)、E
g3領域をポリアセン系(ヘキサセン)半導体(E
g =1~1.2eV)、E
g4領域をポリアセン系(ヘプタセン)半導体(E
g =0.6~08eV)により構成する。また、N≧2の場合に、E
g1領域をIGZO(In、Ga、Znの酸化物)(E
g =~3eV)、AlInN(E
g =2.8~3eV)、またはGaInN(E
g =2.8~3eV)、あるいは同様のバンドギャップを有する酸化物半導体(ZnO、ZnMgO等)のうちのいずれか一つとし、それに続く領域、例えば、E
g2領域をa-Si(E
g =1.4~1.8eV)とすることで、450nm以下の波長の光によって生ずることが示されているステブラー・ロンスキー反応を起こす光子を、予め、a-Si層に侵入する前に、光電変換しておくことで同反応を抑えることができ、従って、a-Si層からなる光電変換領域の寿命を伸ばすことができる。また、導波コア層13の端に、ハライド系有機-無機ペロブスカイト半導体(CH
3 NH
3 PbI
3 )太陽電池や、銅、亜鉛、スズ、硫黄を原料とするCZTSを用いることも有効である。CIGS(Cu、In、Ga、Se)系、CZTSe(Cu
2 ZnSnSe
4 )系を用いても良い。CZTS内のバルク再結合が性能低下の要因とされているので、
図20のような光進行方向とフォトキャリア移動方向が直交する配置は、キャリアが電極に到着する時間を、光吸収を犠牲にすることなく短くすることができるので、極めて有効である。一方、銅、スズ、ゲルマニウム、硫黄を構成元素とするCTGSは、バンドギャップが1.0eVで、高い光吸収係数、非毒性・非希少元素の材料として注目されている。Ge/Sn比の制御でバンドギャップの調整が可能なので、
図20の導波コア層13の端に、並列接続タンデム配置する光電変換素子として有望である。上記の単なるパッシベーションでなく、有効に光電変換しつつコヒーシブエネルギーを抑える高エネルギー光子除去機能は、同じく戸外での使用には弱いとされている有機半導体光電変換部の信頼性の向上や長寿命化にも有効である。この光電変換装置を太陽電池として使用する場合、この太陽電池は導波コア層13、即ち導波路が結合した太陽電池であるため、導波路のx方向の長さを太陽電池の厚みで割った値が集光比となる高効率の集光系である。レーザー応用の太陽電池は、太陽光をレーザー光(発振波長約1.06μm)に変換し、これを結晶Si太陽電池に照射して発電するというシステムであり、太陽電池の膜厚がわずか50μmでも光閉じ込め構造を適用することで、入射光に対して0.8~0.9という高い量子効率を得ており、20W/cm
2 のレーザー照射強度で変換効率30%を達成しているが、この光電変換装置による横方向からの光注入システムは、ラテラル方向に光を吸収することで、上記の光閉じ込め構造と同等の効果を有し、光強度についても集光比が上述の通り、構造設計により十分大きくとれるので、レーザーを使わないにもかかわらず、上記のレーザー系と同等乃至それ以上の光電変換効率を実現することができる(具体的には、1Sun の光強度は、1kW/m
2 =100mW/cm
2 程度であるので、例えば
図20の領域51、52等の厚みが10μm(100μm)の時には、これに結合する導波コア層13の横幅(x軸方向の拡がり)が1cm(10cm)程度あれば[集光比は、当該横幅を上記厚みで除したもので与えられるので]、上記20W/cm
2 の強度[200Sun 相当の強度]は十分に達成できる)。並列接続タンデム構造を用いれば、さらなる高効率が達成できる。
【0110】
各E
gi領域の厚さdは必要に応じて選ばれるが、例えば数μm~数十μmである。各E
gi領域の幅(半導体層50内の光の進行方向の幅)も必要に応じて選ばれるが、例えば数十μm~数百μmである。例えば、
図21は
図20の領域51~54の拡大図であるが、各領域51~54の厚さdを数μm~数十μm、各領域51~54の幅w
1 ~w
4 を数十μm~数百μm、例えば~100μmに選ぶ。
【0111】
図22に示すように、典型的な場合、各領域51~54はp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合により構成される。
図22には、各領域51~54を構成するpn接合の接合面を破線で示す。
【0112】
[光電変換装置の動作]
この光電変換装置の動作について説明する。半導体層50はpn接合とする。
図18に示すように、この光電変換装置の光導波装置部の光入射面に3次元空間伝播黒体輻射光、例えば太陽光が入射する。半導体層50の主面には光は直接入射しない。光導波装置部の光入射面に入射した3次元空間伝播光は、光導入コア層14を通って導波コア層13の内部に入り、導波コア層13の内部を効率的に導波され、導波コア層13の端面から出て半導体層50の側面(端面)に入射した後に半導体層50内を進み、その過程で半導体層50中に電子-正孔対が生成される。そして、こうして生成された電子および正孔は半導体層50内をドリフトまたは拡散により移動し、第1の電極60および第2の電極70のうちの一方および他方に収集される。こうして半導体層50内で光電変換が行われ、第1の電極60と第2の電極70とから外部に電流(光電流)が取り出される。
【0113】
この光電変換装置においては、上述のようにΘはほぼ直角であるため、従来の一般的な太陽電池と異なり、吸収光子数およびフォトキャリア収集効率はトレードオフの関係ではなくなる。最も好適には、Θ=90°とすることができる。言い換えると、第1の電極60と第2の電極70とを最短に結ぶ直線に垂直な方向から、導波コア層13の内部を導波されて導波コア層13の端面から出射される光を半導体層50に入射させることができる。この場合、半導体層50の吸収光子数は、光の入射方向の幅(半導体層50が例えば領域51~54からなる場合には領域51~54の幅w1 ~w4 )で支配され、光電変換効率は光吸収律速領域では半導体層50の厚さdに支配されない。即ち、この光電変換装置の極めて有利な点は、導波コア層13の内部の導波方向とキャリアの移動方向とを例えば互いに直交させることにより、光吸収の最適化とキャリア収集効率の最適化とを完全に両立させることができることである。さらに、半導体層50の吸収係数αの小ささは、光の入射方向の半導体層50の幅(半導体層50が例えば領域51~54からなる場合には領域51~54の幅w1 ~w4 )を大きくすることにより補うことができるので、半導体層50の材料として、αの大小にとらわれることなく、唯一の支配パラメータであるμの大きい材料を用いることができる。こうすることで、高い光電変換効率を得ることが可能となり、熱力学的限界に迫る光電変換効率を得ることも可能である。
【0114】
この第5の実施の形態によれば、次のような種々の利点を得ることができる。即ち、この光電変換装置においては、光導波装置部により、第1の実施の形態と同様に、広範な波長帯の3次元空間伝播光を導波コア層13の内部を効率的に導波させ、この広範な波長帯の光を半導体層50に入射させて光電変換を行うことができるので、極めて高い光電変換効率を得ることができる。また、この光電変換装置においては、光導波装置部が大部分の面積を占め、この光導波装置部の光入射面全体で入射光を受光することができるため、入射光に対する不感領域が実質的にない。また、この光電変換装置においては、光導波装置部の光入射面に入射し、最終的に導波コア層13の内部を導波されて集光された光が半導体層50に入射するため、極めて高い光電変換効率を得ることができる。例えば、光導波装置の大きさが10cm×10cm、半導体層50の厚さdが50μm=50×10-4cm、半導体層50の幅が10cmとすると、集光率は(光導波装置部の面積)/(半導体層50の光が入射する端面の面積)=(10×10)/(10×50×10-4)=2000倍となる。このときの光電変換効率は少なくとも60%を超える。また、従来の太陽電池では、光入射面の全体に光電変換用の半導体を設ける必要があるため、半導体の使用量が多いのに対し、この光電変換装置においては、半導体層50はごく一部の面積を占めるに過ぎず、その体積も極めて小さくて済むため、半導体の使用量が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。また、半導体層50が、この半導体層50内の光の進行方向にバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが段階的に減少する複数の領域により構成される場合には、太陽光の高エネルギーの紫外成分を例えば1段目の領域で吸収することができるため、後段の領域に紫外成分が入射しないようにすることができる。このため、後段の領域をアモルファスシリコンや有機半導体により構成しても、ステブラー・ロンスキー効果や有機半導体の劣化の問題がない。このため、これによっても光電変換効率の向上を図ることができるとともに、光電変換装置の信頼性の向上を図ることができる。さらに、この光電変換装置は、光導波装置の面積を大きくするだけで容易に大面積化が可能である。また、導波コア層13の端部に半導体層50が設けられ、導波コア層13内を導波される光が導波コア層13の端面から出て半導体層50に入射するように構成されているため、集光のためのレンズなどが不要であり、構成も極めて簡単であり、光軸合わせなども不要であるため、製造が容易であるだけでなく、製造コストの低減を図ることもでき、経時変化や経年変化を防止することもできる。
【0115】
また、この光電変換装置においては、光導波装置部の光入射面、即ち受光面と光電変換領域である半導体層50とを空間的に分離することができるので、太陽光の直射による半導体層50の温度上昇を抑えることができる。例えば、光導波装置部が緩やかな曲率を持つ部分を含み、当外部分を瓦の下、屋根の中央部迫り出し稜線の下、窓の桟の下等に配置し、光導波装置部の光入射面に光が入射する際に半導体層50は陰の部分に配置することができる。これにより直射光による温度上昇と、直射光の中の紫外(UV)光成分による半導体層50の化学結合に対する悪影響との双方を抑制することができる。特に、太陽光の入射する一層目のバンドギャップEg1を、用いる半導体材料のコヒーシブエネルギー以上に設定することで、後段の半導体の化学結合を保護し、素子寿命を延ばすことができ、長期信頼性が得られる。温度上昇に関しては、この光電変換装置の高効率性は、とりもなおさず、熱としてのロスを極小化できることを意味しているので、導波される光に対しては、そのエネルギーを高効率で電気エネルギーに変え、熱に転化する成分を低減することによって、やはり温度上昇を抑えることができる。
【0116】
〈第6の実施の形態〉
[光電変換装置]
第6の実施の形態による光電変換装置においては、光導波装置部の光入射面に光波進行方向変換層35が設けられていることを除いて、第5の実施の形態の形態による光電変換装置と同様な構成を有する。
【0117】
この第6の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点に加えて、第2の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0118】
〈第7の実施の形態〉
[建築物]
図23は第7の実施の形態による建築物、特に外壁の一部を示す。
図23に示すように、この建築物においては、外壁の少なくとも一部、例えば側壁100に例えば第5の実施の形態による光電変換装置200が太陽電池として、光導波装置部の光入射面が外を向くようにしてアレイ状に複数設置されている。
図24に光電変換装置200の一例を示す。
図24において、符号80は光導波装置部を示す。
【0119】
この第7の実施の形態によれば、建築物の側壁100に設置された太陽電池としての光電変換装置200に太陽光が入射することにより、極めて効率的に電気エネルギーを得ることができ、この電気エネルギーを建築物で消費される電気エネルギーに充当することができる。
【0120】
〈第8の実施の形態〉
[スマートフォン]
図25は第8の実施の形態によるスマートフォンを示す。
図25に示すように、このスマートフォン300においては、ディスプレイ部の少なくとも一部に例えば第5の実施の形態による光電変換装置200が太陽電池として、光導波装置部の光入射面が外を向くようにして設置されている。
図25では、一例として、ディスプレイ部の全体に光電変換装置200が設置されている場合が示されている。
【0121】
この第8の実施の形態によれば、スマートフォン300のディスプレイ部に設置された光電変換装置200に太陽光が入射することにより、極めて効率的に電気エネルギーを得ることができ、この電気エネルギーをスマートフォン300で消費される電気エネルギーに充当することができる。
【0122】
〈第9の実施の形態〉
[自動車]
図26は第9の実施の形態による自動車を示す。
図26に示すように、この自動車400においては、車体の外面の少なくとも一部、例えば屋根、ボンネット、ドアの下部などに例えば第5の実施の形態による光電変換装置200が太陽電池として、光導波装置部の光入射面が外を向くようにして設置されている。
【0123】
この第9の実施の形態によれば、車体の外面の少なくとも一部に設置された光電変換装置200に太陽光が入射することにより、極めて効率的に電気エネルギーを得ることができ、この電気エネルギーを自動車400で消費される電気エネルギーに充当することができる。
【0124】
〈第10の実施の形態〉
[光導波装置]
図27は第10の実施の形態による光導波装置を示す。
図27に示すように、この光導波装置は、第1の実施の形態による光導波装置においてクラッド層11を削除し、導波コア層13のそのクラッド層11を削除した主面にクラッド層12および光導入コア層14を導波コア層13に関して対称的に設けたものである。この場合、光入射面は導波コア層13の両側に二つある。この光導波装置のその他の構成は第1の実施の形態による光導波装置と同様である。
【0125】
この第10の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波装置に対して互いに反対側から光を取り入れることができるため、光導波装置に入射する光の利用効率の大幅な向上を図ることができるという利点を得ることができる。
【0126】
〈第11の実施の形態〉
[光導波装置]
図28は第11の実施の形態による光導波装置を示す断面図、
図29はこの光導波装置の側面図である。
図28および
図29に示すように、この光導波装置は、第1の実施の形態による光導波装置においてクラッド層11を削除し、導波コア層13として円柱状のファイバーを用い、その中心線の周りに
図1に示すクラッド層12および光導入コア層14を360度回転させることにより得られる回転対称性を有する円柱状のファイバーの形態を有する。この場合、光入射面は円柱状のファイバーの外周面全体である。このファイバーの半径は例えば、数十μm~数百μm、導波コア層13の直径は数μm~数十μmが典型的な値であり、長さ(x軸方向の拡がり)は、数百mオーダーになりうる。この光導波装置のその他の構成は、その性質に反しない限り、第1の実施の形態による光導波装置と同様である。
【0127】
この第11の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波装置の外周面全体から光を取り入れることができるため、光導波装置に入射する光の利用効率の極めて大幅な向上を図ることができるという利点を得ることができる。例えば、在来型のタンデム構造(直列タンデム構造)光電変換装置との接続では、数百μmから数mmの厚みを持たせ、これに対応する幅を持つ短冊状に形成した上記直列タンデム構造光電変換装置を導波コア層13に結合させることも非常に有効である。こうすることで、曇天にも強い集光型直列型タンデム光電変換システムを実現できる。
【0128】
〈第12の実施の形態〉
[自動車]
図30は第12の実施の形態による自動車を示す。
図30に示すように、この自動車400においては、車体のボンネットに、第5の実施の形態による光電変換装置200の光導波装置部に相当するシート状の光導波装置510が光入射面を上に向けて設置されている。例えば、光導波装置510のクラッド層11がボンネットに接着され、あるいはクラッド層11が基板(図示せず)上に形成されている場合にはこの基板がボンネットに接着される。光導波装置510の導波コア層13の光出射面には例えばシート状またはリボン状の光導波路520が取り付けられている。光導波路520はボンネットの内部に差し込まれ、ボンネットの内部を通って室内に取り出されている。この光導波路520の光出射面に、第5の実施の形態による光電変換装置200の光電変換部に相当する光電変換部530が取り付けられている。これらの光導波装置510、光導波路520および光電変換部530により光電変換装置500が形成されている。この光電変換装置500は、光電変換部530を自動車400の室内に設置することができるので、耐候性の大幅な向上を図ることができ、長寿命化を図ることができる。なお、この受光部と光電変換部とを分ける配置は、自動車に限らず、建築物、船舶、あるいは宇宙船に対しても適用が可能であることは言うまでもない。光電変換部は人が居住する空間あるいはその近傍(湿度変化や温度変化の小さい環境)に置いて光電変換部の電気的な劣化を防ぎながら、受光部は当該空間外の太陽光の光に有利な場所に置く(光の電荷中性性をもって環境の苛烈さにあまり影響を受けないというメリットを享受する)ことでシステム全体の長期信頼性を大きく拡大するという共通のコンセプトを有する。特に宇宙船においては、アルファ粒子などの宇宙線からの半導体層の防護の観点から、また船舶における太陽光発電においては、光電変換部を船室の奥まったところに置くことができるので、海塩による光電変換部の劣化を圧倒的に抑制することができる。同様の抑制は、例えば、離島や沿岸部でも勿論実現でき、大規模な発電所を持つことのできない地域における太陽光発電の長期信頼性向上に大きく寄与することができる。
【0129】
車体(家屋、船舶、宇宙船などであってもよい)の屋根にも同様に、シート状の光導波装置510が光入射面を上に向けて設置されている。図示は省略するが、この光導波装置510の導波コア層13の光出射面に例えばシート状またはリボン状の光導波路520が取り付けられ、この光導波路520は屋根を通って室内に取り出され、この光導波路520の光出射面に光電変換部530が取り付けられている。これらの光導波装置510、光導波路520および光電変換部530により光電変換装置500が形成されている。
【0130】
さらに、車体のフロントドア401の下部の表面には電磁波導波装置600が入射面を外に向けて設置されている。電磁波導波装置600は、第1の実施の形態による光導波装置と同様な構造を有するが、その構造のサイズは、この光導波装置のサイズに対して対象とする電磁波の波長と光導波装置の対象とする波長との比にスケーリングしたサイズとなっている。電磁波導波装置600の導波コア層13の出射面に例えばシート状またはリボン状の導波路610が取り付けられ、この導波路610はフロントドア401を通って室内に取り出され、この導波路610の出射面に整流回路を含む受電回路(図示せず)が取り付けられている。これらの電磁波導波装置600および受電回路により電磁波受電装置が形成されている。この電磁波受電装置において電磁波導波装置600は平面アンテナの役割を果たす。この電磁波受電装置は、自動車(家屋、船舶、宇宙船などであってもよい)の外部から送信される電磁波、取り分けマイクロ波を電磁波導波装置600で受信し、電磁波導波装置600の導波コア層を導波された後、整流回路により直流電流に変換することができる。すなわち、自動車の走行時あるいは静止時にこの電磁波受電装置により無線給電を受けることができる。
【0131】
光電変換装置500の光導波装置510の光場および電磁波受電装置の電磁波導波装置600の電磁場をシミュレーションにより求めた結果を説明する。電磁波導波装置600の構造のサイズは、光導波装置510の構造のサイズの100倍に選ばれている。
【0132】
図31Aおよび
図31Bは光導波装置510の光場をシミュレーションにより求めた結果を示し、それぞれ
図14Aおよび
図14Bとほぼ同じものである。
図31Cは、後述の
図33Aに示す位置と同様な位置にモニターA~Eを配置した時の各モニターにおける光強度を示す。
図31Cより、この例では、約40%の導入効率(下方から入射する3次元導波光を2次元導波路内伝搬光へ変換する効率)が得られていることが分かる。
【0133】
図32Aおよび
図32Bは電磁波導波装置600の電磁場をシミュレーションにより求めた結果を示し、
図31Aおよび
図31Bに対応するものである。
図32Aおよび
図32Bを
図14Aおよび
図14Bと比較すれば分かるように、電磁波導波装置600の電磁場は光導波装置510の光場と同様な分布を取っている。誘電率に特異的な振る舞いが無い領域では、電磁波波長と構造体サイズに対しスケーリングが成り立つことが示された。マイクロ波、テラヘルツ波など各種の波長に対し、導波・集光(アンテナ)系の構造設計を実行していくことができる。
図32Cは導波コア層における電磁場強度を示し、
図31Cに対応するものである。
図32Cより、この電磁波導波装置600でも約40%の導入効率(3次元進行電磁波の2次元導波電磁波への変換効率)が得られていることが分かる。
【0134】
次に、光導波装置510の光入射部の幅を大きくして光場のシミュレーションを行った結果について説明する(離散的併進対称性を有するので、この入射配置は下部からの全面入射に相当する)。
図33Aは光場のシミュレーションに用いた構造および光強度の評価を行った位置Aを示す。
図33Aに示す位置にモニターA~Eを配置している。
図33Aを
図14Aと比較すれば分かるように、光入射部の幅が約7倍となっている。
図33Bおよび
図33Cは光導波装置510の光場をシミュレーションにより求めた結果を示し、それぞれ
図14Aおよび
図14Bに対応するものである。
図33DはモニターA~Eにおける光強度を示す。
図33Dより、約60%の導入効率(3次元導波光の2次元導波光への変換効率)が得られていることが分かる。
【0135】
次に、光導波装置510における光導入部の構成を変えた場合の光場のシミュレーションを行った結果について説明する。光導入部を構成する最初のパートである光レシーバーは、短軸36μm、長軸72μmの垂直縦長楕円(の四分の一)で、水平メイン導波路との合流を司る光マージャーは、短軸30μm、長軸180μmの水平横長楕円(の一部)で、その頂上部で水平導波路(導波コア層)と接している。レシーバー楕円とマージャー楕円はレシーバー楕円の頂上部で接続し、その点は水平導波路から8μm下方に位置する(即ち、レシーバー楕円は四分の一楕円であるが、マージャー楕円は、上記空間配置を満たすような水平横長楕円の一部から成る)。光導入コア層の幅は下端入射面で(x軸方向に沿って)約2.25μm、クラッド層の幅は同0.4μmであるが、32周期毎にクラッド層の幅を1μmと厚くした離散的併進対称性を光導入コア層はx軸方向に沿って有している。
図34A、
図34Bおよび
図34Cは
図33A、
図33Bおよび
図33Cと対応するものである。
図34Aに示すように、
図33Aに示す位置と同様な位置にモニターA~Eを配置した。
図34CはモニターA~Eにおける光強度を示す。
図34Cより、約66%の導入効率(3次元導波光の2次元導波光への変換効率)が得られていることが分かる。なお、クラッド層12の導波コア層13に対するタンジェンシャル接合部の曲率半径を上記の場合の約1.1mmから2~3mmと増加させることにより、3次元導波光の2次元導波光への変換効率のより一層の向上を図ることができる。特に、上記の構造を張り合わせ可能なフィルム状構造体として作製して、既存の建築用窓材等に張り合わせることで、既存の窓材自体を導波路として、この窓材ガラスを支える額縁の部分に太陽電池を仕込むことで、既存の建築物の窓や壁面を太陽電池部材に化けさせることもできる。当該ガラス額縁部での、通常の面入射配置太陽電池において、特に面入射のタンデム素子を配置することで、小面積ながらも高額なタンデム素子の欠点を補いながら、その高効率性を生かした新たな窓および壁面発電システムとしての応用も可能となる。
【0136】
この第12の実施の形態によれば、車体のボンネットおよび屋根にそれぞれ設置された光電変換装置500の光導波装置510に太陽光が入射することにより、極めて効率的に電気エネルギーを得ることができ、この電気エネルギーを自動車400で消費される電気エネルギーに充当することができる。加えて、自動車400のフロントドア410に設置された電磁波導波装置610に電磁波が入射することにより、極めて効率的に電気エネルギーを得ることができ、この電気エネルギーを自動車400で消費される電気エネルギーに充当することができる。
【0137】
〈第13の実施の形態〉
[光導波装置]
図35は第13の実施の形態による光導波装置を示す。
図35においては、クラッド層11および導波コア層13の図示は省略している。
図35に示すように、この光導波装置は長方形の平面形状を有し、光入射部のクラッド層12および光導入コア層14が、光導波装置の一つの短辺(
図35中、右側の短辺)の中点を中心とする同心円弧状に湾曲した形状を有する。この場合には、各光導入コア層14を導波されて導波コア層13に入射する光は、導波コア層13の内部を光導波装置の一つの短辺の中点に向かって導波される。この光導波装置のその他の構成は、第1の実施の形態の形態による光導波装置と同様である。
【0138】
この第13の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、導波コア層13の内部を導波される光を光導波装置の一つの短辺の中点に集光することができるという利点を得ることができる。このため、例えば、第5の実施の形態による光電変換装置において光導波装置としてこの光導波装置を用いることにより、光電変換部の長さの大幅な縮小を図ることができ、それによって半導体の使用量の大幅な低減を図ることができ、ひいては光電変換装置の低コスト化を図ることができる。
【0139】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0140】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、材料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、形状、配置などを用いてもよい。
【0141】
また、例えば、第5の実施の形態による光電変換装置を複数敷き詰めて光電変換装置システム(あるいは太陽電池システム)を構成してもよい。
【0142】
また、例えば第1の実施の形態による光導波装置をフレキシブルに構成し、例えばビルの側面全面を鉢巻状にぐるりと取り巻き、これと結合する半導体層50は、例えば、当該ビルの北側面の一箇所(即ち、例えば、鉛直方向数m、横方向数mm~1cmの領域)に集約して配置してもよい。
【0143】
なお、この発明による光導波装置と同様の構造により、導波コア層およびクラッド層の材質として金属などを適宜用いることで、電磁波全般の導波が可能な導波装置を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0144】
11、12 クラッド層
13 導波コア層
14 光導入コア層
35 光波進行方向変換層
40 基板
50 半導体層
60 第1の電極
70 第2の電極
100 側壁
200 光電変換装置
300 スマートフォン
400 自動車
500 光電変換装置
600 電磁波導波装置