(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】異常検出回路
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230428BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20230428BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20230428BHJP
【FI】
G01R31/52
H03K17/00 B
G01R31/54
(21)【出願番号】P 2019043054
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】石丸 賢一
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079444(JP,A)
【文献】特開2008-026025(JP,A)
【文献】特開2008-092277(JP,A)
【文献】特開2010-068400(JP,A)
【文献】特開平05-037334(JP,A)
【文献】特開平05-343967(JP,A)
【文献】特開平02-128205(JP,A)
【文献】特開2019-087189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
H03K 17/00
G01R 31/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタと、前記出力トランジスタの駆動制御を行うゲートドライブ回路とを有し、出力端子に接続された負荷を駆動可能に構成されてなる負荷駆動回路の前記出力端子における異常を検出する異常検出回路であって、
当該異常検出回路は、前記負荷駆動回路の電源電圧が印加される電源端子と出力端子の間にスイッチ付定電流源が接続され、当該スイッチ付定電流源は、定電流の出力の有無を制御可能とするスイッチを有して構成され、
前記出力端子には第1のダイオードのアノードが接続され、当該第1のダイオードのカソードには、ディプレッション型の検出回路用第1のトランジスタのドレインが接続され、前記検出回路用第1のトランジスタのゲートとソースは相互に接続されると共に、第1のカレントミラー回路の入力側に接続され、当該第1のカレントミラー回路の出力側に、異常検出の結果に応じた検出電流を出力可能に構成されてなると共に、
前記負荷駆動回路がオフ状態で負荷駆動が停止されている状態において、前記スイッチ付定電流源をオフ状態とすることで前記出力端子の天絡の有無の判定状態となり、当該判定終了直後に、前記スイッチ付定電流源をオン状態とすることで前記出力端子の負荷開放又は天絡の有無の判定状態となる一方、
前記負荷駆動回路がオン状態で負荷駆動が実行されている状態においては、前記スイッチ付定電流源のオン状態かオフ状態かに関わらず前記出力端子の地絡の有無の判定状態となることを特徴とす
る異常検出回路。
【請求項2】
前記第1のダイオードから前記第1のカレントミラー回路の入力側に至る経路に、1つ又は複数個のダイオードを設けたことを特徴とする請求項1記載の異常検出回路。
【請求項3】
前記出力端子から前記第1のカレントミラー回路の入力側に至る経路に抵抗器を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の異常検出回路。
【請求項4】
前記スイッチ付定電流源は、定電流源用第1及び第2のトランジスタにより構成された第2のカレントミラー回路を有し、前記第2のカレントミラー回路の出力側が前記電源端子と出力端子の間に位置せしめられる一方、前記第2のカレントミラー回路の入力側には、
ゲートとソースが相互に接続されて定電流素子として機能するディプレッション型のMOSトランジスタである定電流源用第3のトランジスタと、定電流源用第4のトランジスタが直列接続状態に設けられて、前記定電流源用第4のトランジスタは、外部から印加される制御信号により、そのオン・オフが制御されて、前記第2のカレントミラー回路の出力側における電流の出力を制御可能に構成されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか記載の異常検出回路。
【請求項5】
前記第1のカレントミラー回路を構成する2つのトランジスタの相互に接続されたゲートとグランドとを、外部から印加された制御信号に応じて短絡可能とする検出回路用第4のトランジスタを設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか記載の異常検出回路。
【請求項6】
出力トランジスタと、前記出力トランジスタの駆動制御を行うゲートドライブ回路とを有し、出力端子に接続された負荷を駆動可能に構成されてなる負荷駆動回路の前記出力端子における異常を検出する異常検出回路であって、
当該異常検出回路は、前記負荷駆動回路の電源電圧が印加される電源端子と出力端子の間にスイッチ付定電流源が接続され、当該スイッチ付定電流源は、定電流の出力の有無を制御可能とするスイッチを有して構成され、
前記出力端子には第1のダイオードのアノードが接続され、当該第1のダイオードのカソードには、ディプレッション型の検出回路用第1のトランジスタのドレインが接続され、前記検出回路用第1のトランジスタのゲートとソースは相互に接続されると共に、第1のカレントミラー回路の入力側に接続され、当該第1のカレントミラー回路の出力側に、異常検出の結果に応じた検出電流を出力可能に構成されてなると共に、
前記負荷駆動回路がオフ状態で負荷駆動が停止されている状態において、前記スイッチ付定電流源をオフ状態とすることで前記出力端子の天絡の有無の判定状態となり、当該判定終了直後に、前記スイッチ付定電流源をオン状態とすることで前記出力端子の負荷開放又は天絡の有無の判定状態となり、この負荷開放又は天絡の有無の判定結果により、天絡と負荷開放を区別可能に構成されてなることを特徴とす
る異常検出回路。
【請求項7】
前記第1のダイオードから前記第1のカレントミラー回路の入力側に至る経路に、1つ又は複数個のダイオードを設けたことを特徴とする請求項
6記載の異常検出回路。
【請求項8】
前記出力端子から前記第1のカレントミラー回路の入力側に至る経路に抵抗器を設けたことを特徴とする請求項
6又は請求項
7記載の異常検出回路。
【請求項9】
前記スイッチ付定電流源は、定電流源用第1及び第2のトランジスタにより構成された第2のカレントミラー回路を有し、前記第2のカレントミラー回路の出力側が前記電源端子と出力端子の間に位置せしめられる一方、前記第2のカレントミラー回路の入力側には、
ゲートとソースが相互に接続されて定電流素子として機能するディプレッション型のMOSトランジスタである定電流源用第3のトランジスタと、定電流源用第4のトランジスタが直列接続状態に設けられて、前記定電流源用第4のトランジスタは、外部から印加される制御信号により、そのオン・オフが制御されて、前記第2のカレントミラー回路の出力側における電流の出力を制御可能に構成されてなることを特徴とする請求項
6乃至請求項
8いずれか記載の異常検出回路。
【請求項10】
前記第1のカレントミラー回路を構成する2つのトランジスタの相互に接続されたゲートとグランドとを、外部から印加された制御信号に応じて短絡可能とする検出回路用第4のトランジスタを設けたことを特徴とする請求項
6乃至請求項
9いずれか記載の異常検出回路。
【請求項11】
出力トランジスタと、前記出力トランジスタの駆動制御を行うゲートドライブ回路とを有し、出力端子に接続された負荷を駆動可能に構成されてなる負荷駆動回路の前記出力端子における異常を検出する異常検出回路であって、
当該異常検出回路は、前記負荷駆動回路の電源電圧が印加される電源端子と出力端子の間にスイッチ付定電流源が接続され、当該スイッチ付定電流源は、定電流の出力の有無を制御可能とするスイッチを有して構成され、
前記出力端子には第1のダイオードのアノードが接続され、当該第1のダイオードのカソードには、ディプレッション型の検出回路用第1のトランジスタのドレインが接続され、前記検出回路用第1のトランジスタのゲートとソースは相互に接続されると共に、第1のカレントミラー回路の入力側に接続され、当該第1のカレントミラー回路の出力側に、異常検出の結果に応じた検出電流を出力可能に構成されてなると共に、
前記負荷駆動回路がオフ状態で負荷駆動が停止されている状態において、前記スイッチ付定電流源をオフ状態とすることで前記出力端子の天絡の有無の判定状態となり、当該判定終了直後に、前記スイッチ付定電流源をオン状態とすることで前記出力端子の負荷開放又は天絡の有無の判定状態となり、この負荷開放又は天絡の有無の判定終了後、前記負荷駆動回路をオン状態で負荷駆動の実行状態とすることで、前記出力端子の地絡の有無の判定状態となり、この地絡の有無の判定結果により、天絡と負荷開放と地絡を区別可能に構成されてなることを特徴とす
る異常検出回路。
【請求項12】
前記第1のダイオードから前記第1のカレントミラー回路の入力側に至る経路に、1つ又は複数個のダイオードを設けたことを特徴とする請求項
11記載の異常検出回路。
【請求項13】
前記出力端子から前記第1のカレントミラー回路の入力側に至る経路に抵抗器を設けたことを特徴とする請求項
11又は請求項
12記載の異常検出回路。
【請求項14】
前記スイッチ付定電流源は、定電流源用第1及び第2のトランジスタにより構成された第2のカレントミラー回路を有し、前記第2のカレントミラー回路の出力側が前記電源端子と出力端子の間に位置せしめられる一方、前記第2のカレントミラー回路の入力側には、
ゲートとソースが相互に接続されて定電流素子として機能するディプレッション型のMOSトランジスタである定電流源用第3のトランジスタと、定電流源用第4のトランジスタが直列接続状態に設けられて、前記定電流源用第4のトランジスタは、外部から印加される制御信号により、そのオン・オフが制御されて、前記第2のカレントミラー回路の出力側における電流の出力を制御可能に構成されてなることを特徴とする請求項
11乃至請求項
13いずれか記載の異常検出回路。
【請求項15】
前記第1のカレントミラー回路を構成する2つのトランジスタの相互に接続されたゲートとグランドとを、外部から印加された制御信号に応じて短絡可能とする検出回路用第4のトランジスタを設けたことを特徴とする請求項
11乃至請求項
14いずれか記載の異常検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電源供給を行う負荷駆動回路等に設けられて、負荷開放検出、天絡検出、地絡検出を行う異常検出回路に係り、特に、天絡検出における消費電力の低減、信頼性向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷に電源電圧を供給する負荷駆動回路においては、その回路が組み込まれたシステムの状態を管理するため、負荷の断線や出力端子の短絡等の異常を検出する機能が備えられている。特に、安全が優先される自動車用のシステム等にあっては、必要な時に確実にシステムが機能するよう常時異常検出を実施している。
このため、これらに使用される負荷駆動回路では、負荷駆動回路が動作していない状態にあっても負荷開放や出力端子の短絡を検出する必要がある。
【0003】
特に、電池を主電源とする負荷駆動回路の場合、負荷開放検出は、負荷駆動開始前や、一定周期での監視で足りるが、出力端子が電源に短絡する天絡については、天絡した際に直ちに天絡保護機能を作用させないと著しい電池の消費を招くため、常時監視する必要があり、天絡を確実に検知し、かつ、低消費電流で動作する異常検出回路が求められる。
【0004】
従来の負荷駆動回路の出力端子において、負荷駆動が行われていない状態での負荷開放検出と天絡検出を行う回路としては、例えば、
図7に示されたような構成のものが知られている。
以下、同図を参照しつつ、従来回路における負荷開放検出と天絡検出について説明する。
図7に示された回路においては、電源端子25Aと出力端子26A間に抵抗器RAが、出力端子26Aと接地間に抵抗器RBが、出力端子26Aと接地間に負荷抵抗器RLが、それぞれ設けられている。
【0005】
また、出力端子26Aと電源間が短絡した場合の実効的な直列抵抗を短絡抵抗RSとすると、出力端子26Aを経由した電源と接地間の抵抗は、次述する如くとなる。
すなわち、出力端子26A経由した電源と接地間の抵抗は、出力端子26Aと接地間における抵抗器RBと負荷抵抗器RLの並列抵抗と、電源と出力端子26A間の抵抗器RAと短絡抵抗器RSの並列抵抗とが直列に接続された状態となる。
【0006】
その結果、出力端子26Aには、抵抗器RB、負荷抵抗器RLと、抵抗器RA、短絡抵抗器RSにより分圧された電圧が表れる。
この出力端子26Aの電圧は、第1の比較回路COMP1において、負荷開放判定用の第1参照電圧VR1と、第2の比較回路COMP2において、天絡判定用の第2参照電圧VR2と、それぞれ比較されて、出力端子26Aの負荷開放と天絡の有無が検出されるようになっている。
【0007】
ここで、第1参照電圧VR1と第2参照電圧VR2は、VR1<VR2と設定される。かかる前提の下、出力端子26Aの電圧VOUTが、VOUT<VR1<(<VR2)であれば、第1の比較回路COMP1及び第2の比較回路COMP2いずれも正常判定となり、負荷開放でもなく、天絡でもない正常な状態との判定結果となる。
【0008】
次いで、VR1<VOUT<VR2の場合、第1の比較回路COMP1が異常判定、第2の比較回路COMP2が正常判定となり、結果、負荷開放との判定結果となる。
さらに、(VR1<)VR2<VOUTの場合、第1の比較回路COMP1と第2の比較回路COMP2いずれも異常判定となり、結果、天絡との判定結果となる。
【0009】
また、負荷開放検出や天絡検出を行う従来回路としては、例えば、特許文献1等に示されたように定電流素子を用いたものもある。
特許文献1の
図2に示された回路は、一見すると、
図7に示された従来回路と全く異なる構成の回路であるかのように見えるが、
図7における抵抗器RAを低電流素子に置換した点のみが異なるものである。すなわち、出力端子の電圧を、負荷開放、天絡それぞれの参照電圧と比較することで負荷開放、天絡検出を行う判定方法は、基本的に
図7に示された従来回路と同様である。
【0010】
特許文献1に示された回路と
図7に示された回路の主たる相違点は、負荷抵抗器と出力電圧の相関、電源電圧と消費電流の相関の2つの点にあると考えられる。
しかしながら、相関関係が変わるだけで判定方法の原理は同一であり、
図7に示された回路においては、判定感度の設定を、抵抗器RA及び抵抗器RBの抵抗比によって調整可能であるのに対して、特許文献1に開示された回路においては、同文献の
図2における定電流素子(27)の電流値と抵抗器(33)の抵抗値によって調整可能としているだけの違いがあるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】東芝製TPD1055FAデータシート、2018年11月28日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の検出回路においては、電源から出力端子を経由して接地端子に流れる電流は、抵抗器RA、RBと負荷抵抗器RL、天絡抵抗RSのそれぞれの抵抗値によって定まるが、一般的に抵抗器RA、RBの抵抗値は、これらの抵抗器を経由して流れる電流が無駄な消費とならないように負荷抵抗器RLの抵抗値よりも十分に高い値に設定する必要がある。
そのため、通常、RA>>RL、かつ、RB>>RLの関係に設定される。
なお、RA、RL、RB、RLは、便宜的に上述の各抵抗器の抵抗値であるとする。
【0014】
しかして、
図7に示された従来の検出回路における消費電流は次述する如くとなる。
まず、負荷開放でも天絡でもなく、出力端子に適正に負荷抵抗器が接続されている状態について考える。
出力端子26Aと接地間の抵抗は、抵抗器RBと負荷抵抗器RLの並列抵抗であるが、RB>>RLであることからRLとして近似できる。
【0015】
そして、出力端子26Aを経由した電源と接地間の抵抗は、RA+RLと近似できるが、さらにRA>>RLであることからRAと近似することができる。
したがって、負荷が適正に接続され、かつ、負荷駆動回路が動作していない状態における電源から出力端子26Aを経由して接地に流れる電流は、VCC/RAと近似できる。
【0016】
非特許文献1に示された回路例においては、RA=100kΩであり、例えば、VCC=12Vとすると、負荷駆動されていない状態では、検出回路の動作の有無に関わらず、常時120μAの電流が消費されることとなる。
抵抗RAを大きくすることで、この消費電流を減らすことはできるが、低電圧時にも回路を正常に動作させるためには、出力端子電位が比較回路側の入力インピーダンスの影響を受けない程度に、抵抗器RAに電流を流す必要がある。
【0017】
また、負荷開放については、RAとRLの比が検出感度を定める要因でもあるので、RAの抵抗値は、負荷開放と判定する負荷抵抗の閾値に対する要求を考慮して定める必要があり、消費電流を減らす目的で著しく高い値にすることはできない。このため、電源電圧を高くして使用すると消費電流が増大する問題を招くこととなる。
【0018】
実際の負荷開放検出は、負荷が完全に断線した場合だけでなく、負荷自体の破壊、故障などや、端子との接続不良などにより負荷側の直列抵抗が著しく高くなった場合にも負荷開放と判断する必要がある。ところが、従来の回路において、天絡していない状態での出力電圧VOUTは、VOUT=VCC×RB×RL/{RA×(RB+RL)+RB×RL}であり、VOUT>VR1となることで負荷開放と判定されることから、負荷開放と判定される負荷抵抗の閾値は、RL>VR1×RA×RB/{VCC×RB-VR1×(RA+RB)}と表すことができる。
【0019】
この式は、分母に電源電圧VCCの項を含むことから、負荷開放と判定する負荷抵抗の閾値は、電源電圧VCCに反比例して変化することを意味している。
つまり、負荷開放と判定する抵抗値を電源電圧によらず一定の値に設定することができないという問題がある。
【0020】
次に、負荷抵抗が適正に接続された状態で出力端子が電源に短絡した場合について説明する。
まず、短絡した状態でも、実際には、抵抗値が0Ωとなるわけでなく有限の値となるため、その抵抗を短絡抵抗RSと仮定すると、出力端子26Aの電圧VOUTは、VOUT=VCC×RB×RL×(RA+RS)/{RA×RS×(RB+RL)+RB×RL×(RA+RS)}と表される。
【0021】
先に述べたように、抵抗RA,RBは、消費電流を抑制するためには、高抵抗に設定する必要があり、RA>>RS,RB>>RLであることから、上述の式で表される出力電圧VOUTは、VOUT=VCC×RL/(RS+RL)のように近似することができる。その結果、出力端子の電圧VOUTは、短絡抵抗RSと負荷抵抗RLの比によって定まるものとなる。
そして、この出力電圧VOUTが、天絡検出用の第2参照電圧VR2より高ければ天絡と判定される。
【0022】
ところで、天絡検出用の第2参照電圧VR2と負荷開放検出用の第1参照電圧VR1には、抵抗器RA、RBと関連した制限がある。
すなわち、負荷駆動回路が動作してない状態において、負荷抵抗器が接続されておらず、かつ、出力端子26Aが短絡していない状態において、出力電圧VOUTは、VOUT=VCC×{RB/(RA+RB)}となるが、この値が負荷開放と判定される電圧の最大値である。
【0023】
第1参照電圧VR1を、上述のVOUTよりも高く設定すると当然ながら負荷開放検出は機能しなくなる一方、第2参照電圧VR2を、上述のVOUTよりも低く設定すると負荷開放を天絡として誤検出することとなる。
したがって、第1参照電圧VR1と第2参照電圧VR2は、VR1<VCC×{RB/(RA+RB)}<VR2の関係において設定する必要がある。
【0024】
第2参照電圧VR2は、低く設定したほうが、より高い短絡抵抗であっても検出可能となり、検出感度を上げることができるので、仮にVR2を限界値のVCC×{RB/(RA+RB)}に設定したとすると、検出可能な短絡抵抗RSは、RS=RA/RB×RLとなる。
【0025】
RAとRBの比は、VR1、VR2の設定電圧範囲を狭めることがないように電源電圧の中点付近にするのが一般的である。したがって、RA:RB=1:1とすると、RS=RL、つまり、出力端子26Aと電源間が負荷抵抗器RLと同程度か、それよりも小さい抵抗値で天絡しないと天絡として検出することができず、負荷開放又は正常な状態と判定されてしまう問題もある。
【0026】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、負荷駆動回路が非動作状態にある場合に、出力端子における天絡と負荷開放とを低消費電流で区別して検出可能とし、従来に比して信頼性の高い異常検出回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る異常検出回路は、
出力トランジスタと、前記出力トランジスタの駆動制御を行うゲートドライブ回路とを有し、出力端子に接続された負荷を駆動可能に構成されてなる負荷駆動回路の前記出力端子における異常を検出する異常検出回路であって、
当該異常検出回路は、前記負荷駆動回路の電源電圧が印加される電源端子と出力端子の間にスイッチ付定電流源が接続され、当該スイッチ付定電流源は、定電流の出力の有無を制御可能とするスイッチを有して構成され、
前記出力端子には第1のダイオードのアノードが接続され、当該第1のダイオードのカソードには、デプレッション型の検出回路用第1のトランジスタのドレインが接続され、前記検出回路用第1のトランジスタのゲートとソースは相互に接続されると共に、第1のカレントミラー回路の入力側に接続され、当該第1のカレントミラー回路の出力側に、異常検出の結果に応じた検出電流を出力可能に構成されてなると共に、
前記負荷駆動回路がオフ状態で負荷駆動が停止されている状態において、前記スイッチ付定電流源をオフ状態とすることで前記出力端子の天絡の有無の判定状態となり、当該判定終了直後に、前記スイッチ付定電流源をオン状態とすることで前記出力端子の負荷開放又は天絡の有無の判定状態となる一方、
前記負荷駆動回路がオン状態で負荷駆動が実行されている状態においては、前記スイッチ付定電流源のオン状態かオフ状態かに関わらず前記出力端子の地絡の有無の判定状態となるよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、負荷駆動回路が負荷駆動していない状態において、出力端子の天絡による異常を、負荷開放と区別して極めて低い消費電流で誤検出することなく確実に検出することができるという効果を奏するものである。
また、スイッチ付定電流源を用いて、その動作状態を時系列的にON状態とOFF状態に交互に切り換えることで、天絡と負荷開放を明確に区別して判定することが可能となり、従来に比して、より信頼性の高い異常検出回路を提供することができる。
さらに、負荷駆動時には地絡を検出することができ、負荷駆動開始直前に天絡と負荷開放の判定をし、その後に負荷駆動することで、天絡と負荷開放と地絡を区別して判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態における異常検出回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態における異常検出回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態における異常検出回路の第3の回路構成例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態における異常検出回路の第4の回路構成例を示す回路図である。
【
図5】本発明の実施の形態における異常検出回路の第5の回路構成例を示す回路図である。
【
図6】本発明の実施の形態における異常検出回路の真理値表である。
【
図7】従来の異常検出回路の回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図6を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における異常検出回路の第1の回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における異常検出回路101は、負荷駆動回路102の出力端子26における負荷開放、地絡及び天絡を、それぞれ区別して検出可能に構成されたものである。
【0031】
最初に、負荷駆動回路102について説明する。
本発明の実施の形態における負荷駆動回路102は、基本的に従来同様の回路構成を有してなるものである。
すなわち、負荷駆動回路102は、出力トランジスタ(
図1においては「Q1」と表記)21とゲートドライブ回路(
図1においては「G-DRV」と表記)22とを有して構成されたものとなっている。
【0032】
ゲートドライブ回路22は、NチャンネルMOSFETを用いた出力トランジスタ21の動作制御を行うよう構成されたものである。
出力トランジスタ21のゲート及びソースは、ゲートドライブ回路22の出力段に接続されており、ゲートドライブ回路22によりゲート・ソース間電圧を制御することで、出力トランジスタ21の導通、非導通が制御されるものとなっている。
【0033】
また、出力トランジスタ21のドレインは電源端子25に接続される一方、ソースは、出力端子26に接続されている。
出力端子26とグランドとの間には、負荷30が接続されている。
【0034】
異常検出回路101は、検出回路用第1乃至第3のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Qdet1」、「Qdet2」、「Qdet3」と表記)1~3と、第1のダイオード(
図1においては「D1」と表記)11と、スイッチ付定電流源10とを有して構成されている。
【0035】
本発明の実施の形態において、検出回路用第1のトランジスタ1にはディプレッション型のNチャンネルMOSFETが用いられている。
検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3には、NチャンネルMOSFETが用いられている。
電源端子25と出力端子26との間に、スイッチ付定電流源10が接続され、出力端子26には、第1のダイオード11のアノードが接続されている。
【0036】
スイッチ付定電流源10は、スイッチ10aがオン(閉成)状態とされた場合に定電流を出力する一方、スイッチ10aがオフ(開成)状態とされた場合には高インピーダンス状態となり電流出力が停止されるよう構成されてなるものである。
【0037】
第1のダイオード11のカソードは、検出回路用第1のトランジスタ1のドレインに接続され、検出回路用第1のトランジスタ1のソースは、ゲートと共に検出回路用第2のトランジスタ2のドレインに接続されている。ここで、検出回路用第1のトランジスタ1は、いわゆるダイオード接続状態で設けられたものとなっている。
第1のダイオード11は、出力端子26が負電圧となった際に逆電流の発生を防止するための逆流防止用ダイオードである。
【0038】
検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3は、第1のカレントミラー回路を構成している。
すなわち、まず、検出回路用第2のトランジスタ2のドレインとゲートが相互に接続されると共に、検出回路用第3のトランジスタ3のゲートと接続されている。
【0039】
また、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3のソースは、共にグランドに接続されている。
そして、カレントミラー回路の出力側となる検出回路用第3のトランジスタ3のドレインは、異常検出の結果である検出電流を外部に取り出すための検出端子27に接続されている。
【0040】
検出回路用第2のトランジスタ2は、異常検出回路101への電流流入を制限する定電流素子として機能するものとなっている。この検出回路用第2のトランジスタ2の電流は、出力トランジスタ21のサイズやゲートドライブ回路22の回路構成の影響などを考慮して定める必要があるが、大凡、10μA~100μA程度の定電流素子とするのが好適である。
【0041】
次に、上記構成における動作について説明する。
以下の回路動作の説明は、負荷駆動回路102が負荷駆動している状態(ON)と負荷駆動していない状態(OFF)と、スイッチ付定電流源10がON(動作)している場合とOFF(非動作)している場合のそれぞれについて出力端子26の状態に応じた回路動作を説明する。
【0042】
最初に、負荷駆動回路102がOFF(負荷駆動が停止状態)、スイッチ付定電流源10がONで、負荷30が正常に接続されている場合について説明する。
この場合、出力トランジスタ21は、ゲートドライブ回路22によりゲート・ソース間電圧が閾値電圧よりも低くなるように制御されてOFF状態である。
そのため、電源端子25から出力トランジスタ21を介して出力端子26に電流が流れることはないが、スイッチ付定電流源10はONしているため、電源端子25からスイッチ付定電流源10を介して出力端子26に定電流が流入する。
【0043】
図1に示された回路において、出力端子26からグランドへ至る経路は、次の1)~3)の3つの経路が存在する。
1)負荷30を経由してグランドへ至る経路
2)第1のダイオード11、検出回路用第1のトランジスタ1及び検出回路用第2のトランジスタ2を経由してグランドへ至る経路
3)出力トランジスタ21のソースからゲートドライブ回路22を経由してグランドへ至る経路
【0044】
この内、3つ目の経路3)において、出力端子26は負荷駆動の動作状態に応じて負電圧から正の電源電圧まで変動し、この変動に追従して出力トランジスタ21のソース電位とゲート電位も変動する。このため、出力トランジスタ21のソース及びゲートのグランドに対するインピーダンスは高抵抗となっており、一般的には、この経路は数百kΩの抵抗と見なすことができる。
【0045】
また、1つ目の経路1)においては、負荷30を介する経路は、他の経路よりもはるかに低抵抗であり、大半の電流がこの経路に流れ込むこととなる。
例えば、負荷30の抵抗値が10Ω、スイッチ付定電流源10の出力電流IC1が50μAとすると、出力端子26の電圧は、0.5mVとなり、グランド電位とほぼ同電位と見なすことができる。
【0046】
この状況にあっては、第1のダイオード11を経由して異常検出回路101に電流は流入せず、それ故、第1のカレントミラー回路を構成し、その出力段となる検出回路用第3のトランジスタ3のドレインが接続された検出端子27に検出電流は流れない。
【0047】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がONで、負荷開放の場合について説明する。
この場合、出力トランジスタ21は、ゲートドライブ回路22によりゲート・ソース間電圧が閾値電圧よりも低くなるように制御されて、OFF状態である。
それ故、電源端子25から出力トランジスタ21を介して出力端子26に電流が流入することは無いが、スイッチ付定電流源10はONしているため、電源端子25からスイッチ付定電流源10を介して出力端子26に定電流が流入する。
【0048】
負荷30の接続がはずれた状態にあっては、出力端子26から負荷30に電流が流れ込むことはなく、出力端子26からゲートドライブ回路22又は異常検出回路101を介してグランドへ電流が流れ、出力端子26の電圧が上昇する。
この際、異常検出回路101に電流が流れて検出端子27から検出電流が出力されるためには、出力端子26の電圧が、第1のダイオード11の順方向電圧(VD1)、検出回路用第1のトランジスタ1の飽和電圧(VE1)、検出回路用第2のトランジスタ2の閾値電圧(Vt2)及び検出回路用第2のトランジスタ2の飽和電圧(VE2)の和より高くなる必要がある。すなわち、出力端子26の電圧VOUTが、下記する式1を満たす必要がある。
【0049】
VOUT>VD1+VE1+Vt2+VE2・・・式1
【0050】
この式1が成立すると、出力端子26から第1のダイオード11に電流が流入し、検出回路用第1のトランジスタ1を経由して検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3による第1のカレントミラー回路により検出端子27から検出電流が出力されることとなる。
【0051】
例えば、VD1=0.7V、VE1=0.2V、Vt2=0.6V、VE2=0.2Vとすると、出力端子26の電圧が1.7Vを越えると検出電流が出力されることとなる。
【0052】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がONで、出力端子26が天絡している場合について説明する。
この場合、出力端子26の電位は、電源電圧VCCとほぼ等しい電圧になり、異常検出回路101には、検出回路用第1のトランジスタ1のゲート・ソース電圧Vgs=0V時の飽和電流に相当する電流が出力端子26から第1のダイオード11に流入する。この電流は、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3による第1のカレントミラー回路によってカレントミラーされ、その結果、検出回路用第3のトランジスタ3のドレインから検出端子27に検出電流が出力されることとなる。
【0053】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がONで、出力端子26が地絡している場合について説明する。
この場合、出力端子26の電位はグランド電位となり、スイッチ付定電流源10による定電流はグランドに流れるため、異常検出回路101には電流が流れず、検出端子27から検出電流は出力されない。
【0054】
上述した負荷駆動回路102が負荷駆動していない場合の各々の動作状態の説明を纏めると、次述する如くとなる。
まず、負荷駆動回路102が負荷駆動しておらず、スイッチ付定電流源10がONで定電流が流れている状態においては、異常検出回路101は、負荷開放と天絡を検出して検出電流を出力する。
一方、負荷駆動回路102が負荷駆動していない状態において、負荷30が正常に接続されている場合と、出力端子26が地絡の場合については、異常検出回路101は検出電流を出力しない。
【0055】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がOFFで、負荷30が正常に接続されている場合について説明する。
この場合、出力トランジスタ21は、ゲートドライブ回路22によりゲート・ソース間電圧が閾値電圧よりも低くなるように制御されて、OFF状態である。
それ故、電源端子25から出力トランジスタ21を介して出力端子26に電流が流入することはない。
【0056】
また、スイッチ付定電流源10もOFFしているため、電源端子25からスイッチ付定電流源10を介して出力端子26に定電流が流入することもない。したがって、異常検出回路101への電流流入もなく、また、検出電流も流れない。
この場合、出力端子26は、低抵抗の負荷30でグランドと接続されているため、ほぼグランド電位に等しい電位となっている。
【0057】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がOFFで、負荷開放の場合について説明する。
この場合、出力トランジスタ21は、ゲートドライブ回路22によりゲート・ソース間電圧が閾値電圧よりも低くなるように制御されて、OFF状態である。 それ故、電源端子25から出力トランジスタ21を介して出力端子26に電流が流入することは無い。
【0058】
また、スイッチ付定電流源10もOFFしているため、電源端子25からスイッチ付定電流源10を介して出力端子26に定電流が流入することもない。
したがって、異常検出回路101への電流流入もなく、また、検出電流も流れない。
この場合、出力端子26は、ゲート・ドライブ回路22を介して高抵抗の負荷でグランドに接続されている状態となるため、ほぼグランド電位と等しい電位となっている。
【0059】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がOFFで、出力端子26が天絡している場合について説明する。
この場合、出力端子26の電位は、電源電圧VCCとほぼ等しい電圧になり、
異常検出回路101には、検出回路用第1のトランジスタ1のゲート・ソース電圧Vgs=0V時の飽和電流に相当する電流が出力端子26から第1のダイオード11に流入する。
この電流は、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3による第1のカレントミラー回路によってカレントミラーされ、その結果、検出回路用第3のトランジスタ3のドレインから検出端子27に検出電流が出力されることとなる。
【0060】
次に、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がOFFで、出力端子26が地絡している場合について説明する。
この場合、出力端子26の電位はグランド電位となり、また、検出回路用第1のトランジスタ1、スイッチ付定電流源10いずれも電流が流れないため、異常検出回路101には電流が流れず、検出端子27から検出電流は出力されない。
【0061】
以上説明した異常検出回路101の動作を纏めると次述する如くとなる。
すなわち、負荷駆動回路102が負荷駆動してない状態にあって、スイッチ付定電流源10がOFFで定電流が流れていない状態にある場合、異常検出回路101は、天絡のみを検知して検出電流を出力するが、負荷30が正常に接続されている場合と負荷開放及び地絡については検出電流を出力しない。
【0062】
次に、負荷駆動回路102が負荷駆動している場合について以下説明する。
なお、以下の説明においては、負荷駆動回路102が負荷駆動している場合、電源端子25と出力端子26間は、出力トランジスタ21により低インピーダンスになっており、スイッチ付定電流源10が出力する定電流は、出力端子26の状態にほとんど影響を与えないので、負荷駆動回路102が負荷駆動している場合のスイッチ付定電流源10の動作についてON、OFFのいずれかを特定せずに記することとする。
【0063】
まず、負荷駆動回路102がON(負荷駆動の実行状態)、スイッチ付定電流源10がON又はOFFで、負荷30が正常に接続されている場合について説明する。
この場合、出力トランジスタ21がONして電源端子25と出力端子26間は低インピーダンスとなるため、負荷30へは電源電圧VCCの印加による電流が流れる。
【0064】
そして、出力端子26は、出力ランジスタ21のON抵抗の積となる電圧降下分だけ電源電圧VCCより低い電位となる。
異常検出回路101には、検出回路用第1のトランジスタ1のゲート・ソース間電圧Vgs=0V時の飽和電流に相当する電流が、出力端子26から第1のダイオード11に流入する。この電流は、検出回路用第2及び第3トランジスタ2,3による第1のカレントミラー回路によってカレントミレーされ、その結果、検出回路用第3のトランジスタ3のドレインから検出端子27に検出電流が出力されることとなる。
【0065】
次に、負荷駆動回路102がON、スイッチ付定電流源10がON又はOFFで、負荷開放の場合について説明する。
この場合、出力トランジスタ21がONして電源端子25と出力端子26間は低インピーダンスとなるが、負荷開放状態であるため、負荷30を経由してグランドに電流は流れない。
また、出力トランジスタ21は、ONとなることでゲート電位がソース電位よりも高くなっているため、出力端子26からゲートドライブ回路22を経由して電流が流れることもない。
【0066】
それ故、異常検出回路101のみに、検出回路用第1のトランジスタ1のゲート・ソース間電圧Vgs=0V時の飽和電流に相当する電流が、出力端子26から第1のダイオード11に流入する。この電流は、検出回路用第2及び第3トランジスタ2,3による第1のカレントミラー回路によってカレントミラーされ、その結果、検出回路用第3のトランジスタ3のドレインから検出端子27に検出電流が出力されることとなる。
【0067】
次に、負荷駆動回路102がON、スイッチ付定電流源10がON又はOFFで、出力端子26が天絡している場合について説明する。
この場合、出力端子26の電位は、電源電圧VCCとほぼ等しい電圧になり、異常検出回路101には、検出回路用第1のトランジスタ1のゲート・ソース間電圧Vgs=0V時の飽和電流に相当する電流が、出力端子26から第1のダイオード11に流入する。この電流は、検出回路用第2及び第3トランジスタ2,3による第1のカレントミラー回路によってカレントミラーされ、その結果、検出回路用第3のトランジスタ3のドレインから検出端子27に検出電流が出力されることとなる。
【0068】
次に、負荷駆動回路102がON、スイッチ付定電流源10がON又はOFFで、出力端子26が地絡している場合について説明する。
この場合、出力端子26は、グランド電位となる。
また、出力トランジスタ21はONしており、かつ、ドレイン・ソース間には、電源電圧VCC・グランド間の電圧が印加されるため飽和領域で動作することとなる。
しかし、出力トランジスタ21の電流は、直接グランドに流れてしまうため、異常検出回路101には電流の流入は無く、検出電流は流れない。
【0069】
図6には、上述した各動作状態における真理値表が示されており、以下、その内容について、同図を参照しつつ説明する。
まず、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がOFFの場合、出力端子26が天絡した場合のみ検出電流が流れる。すなわち、負荷駆動回路102がOFF状態において、常時電流を流すことなく、出力端子26の天絡を監視、検出が可能である(
図6(1)の行参照)。
【0070】
また、負荷駆動回路102がOFF、スイッチ付定電流源10がONの場合、出力端子26が天絡又は負荷開放となった場合に検出電流が流れ、出力端子26の天絡と負荷開放の監視、検出が可能となっている(
図6(2)の行参照)。
すなわち、負荷駆動回路102がOFF状態にあって、スイッチ付定電流源10を時系列にON状態、OFF状態と交互に切り替えることで、出力端子26の天絡と負荷開放を区別した異常検出が可能である。
【0071】
また、負荷駆動回路102がONの場合は、スイッチ付定電流源10がONかOFFかに関わらず、出力端子26が地絡している場合にのみ検出電流が流れないので、この事象に基づいて出力端子26の地絡検出が可能である(
図6(3)の行参照)。
さらに、負荷駆動回路102による負荷駆動開始前に、スイッチ付定電流源10を時系列にON状態とOFF状態に交互に切り替えることで、天絡と負荷開放の判定をし(
図6(1)の行及び(2)の行参照)、しかる後に、負荷駆動を開始することで、天絡と負荷開放と地絡を区別して判定することができる。
【0072】
次に、本発明の実施の形態における異常検出回路の第2の回路構成例について、
図2を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例における異常検出回路101Aは、先の
図1に示された第1の回路構成例における第1のダイオード11と検出回路用第1のトランジスタ1の間に、第2のダイオード(
図2においては「D2」と表記)12が挿入されると共に、検出回路用第1及び第2のトランジスタ1,2の間に、第3のダイオード(
図2においては「D3」と表記)13が挿入された構成を有するものである。
【0073】
すなわち、第1のダイオード11のカソードには、第2のダイオード12のアノードが接続され、第2のダイオード12のカソードは、検出回路用第1のトランジスタ1のドレインに接続されている。
また、検出回路用第1のトランジスタ1のソースには、第3のダイオード13のアノードが接続され、第3のダイオード13のカソードは、検出回路用第2のトランジスタ2のドレインに接続されている。
【0074】
かかる構成においては、検出端子27に検出電流が流れ始める際の出力端子26の電圧を高くすることができる。
図1に示された第1の回路構成例の場合、検出電流が流れ始める際の出力端子26の電圧と異常検出回路101の主要部な素子の電圧との関係は、先に述べたように式1で表されるが、この第2の回路構成例においては、下記する式2で表される関係となる。
【0075】
VOUT>VD1+VD2+VE1+VD3+Vt2+VE2・・・式2
【0076】
ここで、VD2は、第2のダイオード12の順方向電圧、VD3は、第3のダイオード13の順方向電圧である。
すなわち、第2の回路構成例の場合、異常検出回路101Aが負荷開放や天絡を検出する際の出力端子26の電圧の閾値は、先の第1の回路構成例に比して、ダイオード2素子分の順方向電圧だけ高くなる。
【0077】
なお、ダイオードを挿入する位置は、
図2に示されたように、第1のダイオード11と検出回路用第1のトランジスタ1との間、又は、検出回路用第1のトランジスタ1と検出回路用第2のトランジスタ2の間であるが、挿入するダイオードの数は、合計で1であっても、また、複数個であっても、いずれでも良い。
かかる第2の回路構成例の回路動作は、負荷開放や天絡を検出する際の出力端子26の電圧の閾値が異なる以外は、基本的には第1の回路構成例と同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0078】
次に、本発明の実施の形態における異常検出回路の第3の回路構成例について、
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1、
図2に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の回路構成例における異常検出回路101Bは、先の
図1に示された第1の回路構成例における検出回路用第1のトランジスタ1と検出回路用第2のトランジスタ2との間に、抵抗器(
図3においては「R1」と表記)15を設けた構成を有するものである。
【0079】
すなわち、検出回路用第1のトランジスタ1のソースには、抵抗器15の一端が接続され、抵抗器15の他端は、検出回路用第2のトランジスタ2のドレインに接続されている。
このように抵抗器15を挿入することで、異常検出回路101Bの検出端子27に検出電流が流れ始める際の出力端子26の電圧を高くすることが可能となる。
図1に示された第1の回路構成例の場合、検出電流が流れ始める際の出力端子26の電圧と異常検出回路101の主要部な素子の電圧との関係は、先に述べたように式1で表されるが、この第3の回路構成例においては、下記する式3で表される関係となる。
【0080】
VOUT>VD1+VE1+R1×ID1+Vt2+VE2・・・式3
【0081】
ここで、ID1は、出力端子26から第1のダイオード11に流入する電流とする。
結局、この第3の回路構成例では、異常検出回路101Bが負荷開放や天絡を検出する出力端子26の電圧の閾値が、第1の回路構成例に比して、抵抗器15により生ずる電圧降下分高くなる。
【0082】
なお、抵抗器15を挿入する位置は、
図3に示された例に限定される必要はなく、例えば、出力端子26と第1のダイオード11の間、第1のダイオード11と検出回路用第1のトランジスタ1の間、検出回路用第1のトランジスタ1と検出回路用第2のトランジスタ2の間のいずれかであれば良い。
【0083】
かかる第3の回路構成例の回路動作は、負荷開放や天絡を検出する際の出力端子26の電圧の閾値が異なる以外は、基本的には第1の回路構成例と同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0084】
次に、本発明の実施の形態における異常検出回路の第4の回路構成例について、
図4を参照しつつ説明する。
なお、
図1乃至
図3のいずれかの回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
第4の回路構成例における異常検出回路101Cは、先の
図1に示された第1の回路構成例におけるスイッチ付定電流源10に代えて後述するように構成されたスイッチ付定電流源10Aを用いる構成としたものである。
【0085】
スイッチ付定電流源10Aは、定電流源用第1乃至第4のトランジスタ(
図4においては、それぞれ「Qcc1」、「Qcc2」、「Qcc3」、「Qcc4」と表記)5~8を用いて構成されている。
本発明の実施の形態において、定電流源用第1及び第2のトランジスタ5,6には、PチャンネルMOSFETが、定電流源用第3のトランジスタ7には、ディプレッション型のNチャンネルMOSFETが、定電流源用第4のトランジスタ8には、NチャンネルMOSFETが、それぞれ用いられている。
【0086】
以下、スイッチ付定電流源10Aの具体的な構成について説明する。
まず、定電流源用第1及び第2のトランジスタ5,6は第2のカレントミラー回路を構成しており、定電流源用第2のトランジスタ6が入力段、定電流源用第1のトランジスタ5が出力段となるように次述するように接続されて構成されている。
【0087】
定電流源用第1のトランジスタ5と定電流源用第2のトランジスタ6は、ソースが相互に接続されて電源端子25に接続される一方、定電流源用第1のトランジスタ5のドレインは、第1のダイオード11のアノードに、定電流源用第2のトランジスタ6のドレインは、定電流源用第3のトランジスタ7のドレインに、それぞれ接続されている。
【0088】
また、定電流源用第1のトランジスタ5と定電流源用第2のトランジスタ6は、ゲートが相互に接続されると共に、定電流源用第2のトランジスタ6のドレインと接続されている。ここで、定電流源用第2のトランジスタ6は、いわゆるダイオード接続された状態となっている。
【0089】
定電流源用第3のトランジスタ7は、ゲートとソースが相互に接続されると共に、定電流源用第4のトランジスタ8のドレインに接続されており、定電流源用第4のトランジスタ8のソースは、グランドに接続されている。
また、定電流源用第4のトランジスタ8のゲートは、制御信号印加端子(
図4においては「EN」と表記)28に接続されている。
【0090】
かかる構成においては、制御信号印加端子28に外部から制御信号として、論理値Highに相当する電圧が入力されると、定電流源用第4のトランジスタ8はON状態となり、定電流源用第3のトランジスタ7は定電流源として機能し、ゲート・ソース間電圧0Vに相当する飽和電流が流れる。
定電流源用第3のトランジスタ7に流れる飽和電流は、定電流源用第1及び第2のトランジスタ5,6で構成される第2のカレントミラー回路により定電流源用第1のトランジスタ5へカレントミラーされる。その結果、出力端子26には、定電流源用第3のトランジスタ7の飽和電流に比例した電流が流れる。
【0091】
一方、制御信号印加端子28に制御信号として、論理値Lowに相当する電圧が入力された場合、定電流源用第4のトランジスタ8はOFF状態となって定電流源用第3のトランジスタ7には電流が流れないため、定電流源用第1のトランジスタ5から出力端子26に電流は流れない。
このように、第4の回路構成例におけるスイッチ付定電流源10Aは、制御信号印加端子28の電圧を制御することで、電源電圧VCCから出力端子26に電流を供給するスイッチ付の定電流源として機能する。
【0092】
かかる第4の回路構成例の回路動作は、上述したように半導体素子から構成されたスイッチ付定電流源10Aを用いる構成とした点を除けば、基本的には第1の回路構成例と同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0093】
次に、本発明の実施の形態における異常検出回路の第5の回路構成例について、
図5を参照しつつ説明する。
なお、
図1乃至
図4のいずれかの回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第5の回路構成例における異常検出回路101Dは、
図1に示された回路構成例の異常検出回路101において第1のカレントミラー回路を構成する検出回路用第2のトランジスタ2と検出回路用第3のトランジスタ3のゲートとグランドとの間に、検出回路用第4のトランジスタ4を設けて、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3により構成されるカレントミラー回路の動作を外部からの制御信号に応じてオン・オフ可能とした構成を有するものである。
【0094】
以下、具体的な回路構成について説明する。
本発明の実施の形態において、検出回路用第4のトランジスタ4には、NチャンネルMOSFETが用いられている。
検出回路用第4のトランジスタ4のドレインは、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3のゲートに接続される一方、ソースはグランドに接続されている。
また、検出回路用第4のトランジスタ4のゲートは、制御信号印加端子28に印加されている。
【0095】
かかる構成においては、負荷駆動回路102が負荷駆動していない状態では、制御信号印加端子28には、論理値Lowに相当する制御信号を常時印加しておき、検出回路用第4のトランジスタ4をOFF状態とさせておくことで、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3により構成されるカレントミラー回路を、第1の回路構成例における同カレントミラー回路と同一の回路状態として、同一の動作を得ることができる。
【0096】
また、負荷駆動回路102が負荷駆動している状態において、同様に制御信号印加端子28に論理値Lowに相当する制御信号を常時印加した場合も、上述したように検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3により構成される第1のカレントミラー回路を、第1の回路構成例における同カレントミラー回路と同一の回路状態として、同一の動作を得ることができる。
すなわち、この第5の回路構成例では、負荷駆動回路102がOFF時には、制御信号印加端子28に常時論理値Lowの制御信号を印加して使用することで、第1の回路構成例と同一の機能を実現することができる。
【0097】
一方、負荷駆動回路102が負荷駆動している状態において、制御信号印加端子28に論理値Highに相当する制御信号を常時印加した場合は、検出回路用第4のトランジスタ4がON状態となり、検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3のゲートがグランドに短絡された状態となる。そのため、出力端子26から第1のダイオード11に電流が流入しても、検出回路用第1のトランジスタ1と検出回路用第4のトランジスタ4を経由してグランドに流れてしまうため、検出端子27を介して検出回路用第3のトランジスタ3のドレインからの電流は出力されない。
すなわち、この第5の回路構成例では、負荷駆動回路102が負荷駆動している状態で、制御信号印加端子28に論理値Highの制御信号を常時印加することで、異常検出回路101Dは機能無効の状態となる。
【0098】
このように、第5の回路構成例における異常検出回路101Dは、制御信号印加端子28の電圧制御によって負荷駆動されていない状態では、異常検出回路101Dの機能を使用し、負荷駆動されている状態では、異常検出回路101Dを適宜無効として、例えば、別途用意した異常検出回路(図示せず)を機能させることが可能となる。
【0099】
なお、本発明は、上述した各回路構成例に限定されるものではなく、例えば、本発明の実施の形態において、出力トランジスタ21にNチャンネルMOSFETを用いたが、PチャンネルMOSFETを用いて負荷駆動回路を構成しても良い。
また、本発明の実施の形態においては、第1のカレントミラー回路を構成する検出回路用第2及び第3のトランジスタ2,3や第2のカレントミラー回路を構成する定電流源用第1及び第2のトランジスタ5,6に、MOSFETを用いたが、バイポーラトランジスタを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0100】
負荷駆動回路が非動作状態における出力端子の天絡と負荷開放の低消費電流での信頼性の高い検出が所望される異常検出回路に適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1~4…検出回路用第1乃至第4のトランジスタ
5~8…定電流源用第1乃至第4のトランジスタ
11~13…第1乃至第3のダイオード
10,10A…スイッチ付定電流源