(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20230428BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20230428BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20230428BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61F13/532 100
A61F13/532 200
A61F13/533 100
A61F13/537 220
A61F13/53 200
(21)【出願番号】P 2020113599
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】大西 和彰
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-143544(JP,A)
【文献】特開2018-000525(JP,A)
【文献】特開2017-12437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/532
A61F 13/533
A61F 13/537
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、短手方向及び厚さ方向を有し、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品であって、
前記吸収コアは、肌対向面及び非肌対向面を有し、前記肌対向面側の肌側層と、前記非肌対向面側の非肌側層と、からなり、
前記肌側層は、
前記長手方向に沿って延在し、前記厚さ方向に貫通する複数の溝部と、
前記長手方向に沿って延在する複数の基部と、
を備え、
前記複数の溝部のそれぞれと前記複数の基部のそれぞれとは、前記短手方向に交互に延在し、
前記複数の溝部は、
前記長手方向に延在する複数の主溝部と、
前記複数の主溝部のそれぞれと交差する方向に、所定の間隔で、前記複数の主溝部のそれぞれと基端を介して連通して存在する複数の従溝部と、
を含み、
前記非肌側層は、前記厚さ方向において、前記複数の溝部及び前記複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の溝部対応部及び複数の基部対応部を備え、
前記複数の溝部対応部及び前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の第1平均密度は、前記複数の基部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の第2平均密度よりも低
く、
前記複数の基部はそれぞれ、前記複数の溝部に接する基部側面及び前記基部側面の間に位置する天面を含む表層領域を有し、
前記表層領域に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記第2平均密度より低い、
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収コア全体に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子に対する、前記複数の溝部対応部及び前記複数の基部対応部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の比率が30%未満である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収コアの排泄領域における、前記吸収コアの前記短手方向の中央を挟んで前記短手方向の両側に配置された前記複数の主溝部の間隔は、前記排泄領域における前記吸収コアの前記短手方向の最小長さの15%以上45%未満である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記複数の基部、前記複数の溝部対応部、及び前記複数の基部対応部が、一体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の基部のそれぞれの前記短手方向の中央を含む中央領域に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記第2平均密度より高い、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記複数の基部は、
前記短手方向に隣り合う前記複数の主溝部のそれぞれと連通して存在する前記複数の従溝部同士がお互いに対向し合い、前記対向し合う前記複数の従溝部の間に存在する複数の幅狭部と、
前記複数の基部の、前記複数の幅狭部以外の部分に存在する複数の幅広部と、
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記複数の溝部対応部は、
前記複数の主溝部に対応する複数の主溝部対応部と、
前記複数の従溝部に対応する複数の従溝部対応部と、
を含み、
前記複数の主溝部対応部の前記第1平均密度が、前記第2平均密度よりも低い、
請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記複数の従溝部対応部の前記第1平均密度が、前記第2平均密度よりも低い、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記複数の基部は、それぞれ、前記吸収コアの前記長手方向の一端から他端まで連続している、請求項5に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
体液を繰り返し吸収しても、吸収性能(例示:吸収速度及び液戻り抑制)に優れる吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品が開示されている。この吸収性物品では、吸収コアは、非肌対向面側の非肌側層と、肌対向面側の肌側層と、からなる。非肌側層は、長手方向に沿って延在し、厚さ方向に貫通する複数の主溝部を含む複数の溝部と、長手方向に沿って延在する複数の基部と、を備え、複数の主溝部のそれぞれと複数の基部のそれぞれとは、短手方向に交互に延在している。肌側層は、厚さ方向において、複数の主溝部及び複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の主溝部対応部及び複数の基部対応部と、を備えている。複数の基部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度と、複数の主溝部対応部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度とは、いずれも、複数の基部対応部のそれぞれに含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度よりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような吸収性物品は、非肌対向面側の非肌側層に、主溝部、及び主溝部に隣接する基部を備えている。そのため、肌側層を介して非肌側層に達した体液(例示:尿)が、主溝部内を長手方向に拡散できると共に、基部内に浸透して短手方向に拡散でき、基部から基部対応部へ移行し基部対応部内に保持され得る。その結果、吸収コア全体を体液の吸収に有効に利用することができる。さらに、基部には、高吸収性ポリマー粒子が含まれており、体液を吸収することにより膨潤することで、主溝部の厚さ方向の形状を維持することができる。
【0005】
このような吸収性物品では、主溝部へ到達する前に主溝部対応部を通過した体液の一部が主溝部対応部に吸収され、主溝部対応部から基部対応部へ保持され得る。また主溝部対応部に吸収された分だけ主溝部へ到達する体液が減るため、主溝部内を長手方向へ拡散する体液に対し主溝部から基部へ吸収される体液の割合が高くなる。基部へ吸収された体液は基部から基部対応部へ移行し、基部対応部に保持され得る。したがって従来の吸収性物品では、拡散するよりも基部対応部に保持される体液の割合が高いといえる。そのため、体液を繰り返し吸収した場合、基部の高吸収性ポリマー粒子の膨潤の程度が大きくなり過ぎて、局所的に厚みが増加し、着用感が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、体液を繰り返し吸収しても、吸収性能及び着用感を維持することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向、短手方向及び厚さ方向を有し、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品であって、前記吸収コアは、肌対向面及び非肌対向面を有し、前記肌対向面側の肌側層と、前記非肌対向面側の非肌側層と、からなり、前記肌側層は、前記長手方向に沿って延在し、前記厚さ方向に貫通する複数の溝部と、前記長手方向に沿って延在する複数の基部と、を備え、前記複数の溝部のそれぞれと前記複数の基部のそれぞれとは、前記短手方向に交互に延在し、前記複数の溝部は、前記長手方向に延在する複数の主溝部と、前記複数の主溝部のそれぞれと交差する方向に、所定の間隔で、前記複数の主溝部のそれぞれと基端を介して連通して存在する複数の従溝部と、を含み、前記非肌側層は、前記厚さ方向において、前記複数の溝部及び前記複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の溝部対応部及び複数の基部対応部を備え、前記複数の溝部対応部及び前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の第1平均密度は、前記複数の基部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の第2平均密度よりも低い、吸収性物品、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、体液を繰り返し吸収しても、吸収性能及び着用感を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る吸収性物品の吸収体の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る吸収性物品の吸収コアの平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る
図2のV-V線に沿った断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る
図2のIII-III線に沿った断面での体液の流れを示す模式図である。
【
図7】第2実施形態に係る
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る吸収性物品の吸収コアの平面図である。
【
図9】第1及び第2実施形態に係る吸収性物品の製造方法に用いる製造装置を示す模式図である。
【
図10】製造装置のサクションドラム上での吸収性材料の供給状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
長手方向、短手方向及び厚さ方向を有し、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収コアを備えた吸収性物品であって、前記吸収コアは、肌対向面及び非肌対向面を有し、前記肌対向面側の肌側層と、前記非肌対向面側の非肌側層と、からなり、前記肌側層は、前記長手方向に沿って延在し、前記厚さ方向に貫通する複数の溝部と、前記長手方向に沿って延在する複数の基部と、を備え、前記複数の溝部のそれぞれと前記複数の基部のそれぞれとは、前記短手方向に交互に延在し、前記複数の溝部は、前記長手方向に延在する複数の主溝部と、前記複数の主溝部のそれぞれと交差する方向に、所定の間隔で、前記複数の主溝部のそれぞれと基端を介して連通して存在する複数の従溝部と、を含み、前記非肌側層は、前記厚さ方向において、前記複数の溝部及び前記複数の基部と重複する位置に、それぞれ複数の溝部対応部及び複数の基部対応部を備え、前記複数の溝部対応部及び前記複数の基部対応部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の第1平均密度は、前記複数の基部のそれぞれに含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の第2平均密度よりも低い、吸収性物品。
本吸収性物品は、排泄された体液を、主溝部を通じて吸収コアの長手方向に輸送する。体液は、主溝部、及び主溝部と連通した従溝部から吸収コアの内部に吸収される。したがって、体液を繰り返し吸収させても、本吸収性物品は、吸収性能、例えば吸収速度を維持することができる。溝部対応部及び基部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の第1平均密度は、基部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の第2平均密度よりも低い。そのため、溝部対応部へ吸収された体液は、長手方向へ拡散すると同時に一部が基部対応部へ移行する。すなわち溝部対応部へ吸収された体液のうち基部対応部へ移行した一部の体液のみが基部へ移行し、基部に保持され得るので、基部の高吸収性ポリマー粒子が膨潤して大きくなりすぎることを抑制することができる。結果として本吸収性物品は、体液を繰り返し吸収しても局所的な厚みの増加が抑制され、着用感を維持することができる。
【0011】
[態様2]
前記吸収コア全体に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子に対する、前記複数の溝部対応部及び前記複数の基部対応部に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の比率が30%未満である、態様1に記載の吸収性物品。
本吸収性物品は、吸収コア全体に含まれる高吸収性ポリマー粒子に対する、複数の溝部対応部及び複数の基部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子の比率が30%未満である。そのため、複数の溝部対応部及び複数の基部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子を基部に比べ十分に少なくすることができるので、溝部対応部及び基部対応部の膨潤が抑制される。したがって本吸収性物品は、厚みの増加をより確実に抑制することができる。さらに、本吸収性物品は、溝部対応部及び基部対応部を通じて、長手方向及び短手方向へ体液をより迅速に拡散することができる。
【0012】
[態様3]
前記複数の基部はそれぞれ、前記複数の溝部に接する基部側面及び前記基部側面の間に位置する天面を含む表層領域を有し、前記表層領域に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記第2平均密度より低い、態様1又は2に記載の吸収性物品。
本吸収性物品は、前記表層領域に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度が、前記第2平均密度より低い。そのため、溝部内の体液は、高吸収性ポリマー粒子の平均密度がより低い表層領域に浸み込むことによって、基部内へより迅速に透過する。したがって本吸収性物品は、溝部内の体液を迅速に吸収することができる。さらに、高吸収性ポリマー粒子の少ない表層領域は、吸水して膨潤した高吸収性ポリマー粒子が溝部内にこぼれ出して溝部を塞ぐ現象を起こり難くする。したがって本吸収性物品は、繰返し吸収しても迅速な吸収速度を維持することができる。
【0013】
[態様4]
前記吸収コアの排泄領域における、前記吸収コアの前記短手方向の中央を挟んで前記短手方向の両側に配置された前記複数の主溝部の間隔は、前記排泄領域における前記吸収コアの前記短手方向の最小長さの15%以上45%未満である、態様1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
主溝部の間隔が、前記排泄領域における前記吸収コアの前記短手方向の最小長さの15%以上45%未満であることによって、本吸収性物品は、体液が吸収コアの中央に集中することを防ぎ、体液を分散して溝部からより迅速に吸収することができる。
【0014】
[態様5]
前記複数の基部、前記複数の溝部対応部、及び前記複数の基部対応部が、一体である、態様1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
溝部対応部、基部対応部及び基部の間を体液がよりスムーズに移行することができるので、体液をより迅速に拡散することができる。
【0015】
[態様6]
前記複数の基部のそれぞれの前記短手方向の中央を含む中央領域に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記第2平均密度より高い、態様1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
基部の中央を含む中央領域に含まれる前記高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、前記第2平均密度より高いので、溝部に接する基部側面の膨潤を抑え、溝部を潰してしまうことを抑制することができる。したがって、本吸収性物品は、体液を繰り返し吸収させる場合においても、溝部から溝部対応部へ体液をより確実に透過し、吸収することができる。
【0016】
[態様7]
前記複数の基部は、前記短手方向に隣り合う前記複数の主溝部のそれぞれと連通して存在する前記複数の従溝部同士がお互いに対向し合い、前記対向し合う前記複数の従溝部の間に存在する複数の幅狭部と、前記複数の基部の、前記複数の幅狭部以外の部分に存在する複数の幅広部と、を含む、態様1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
体液は、主溝部から溝部対応部へ透過すると共に、主溝部と連通した従溝部を通って幅狭部へ透過する。溝部から溝部対応部及び幅狭部へ透過した体液を吸収コアの内部に吸収するので、体液を繰り返し吸収させても、本吸収性物品は、吸収性能、例えば吸収速度を維持することができる。
【0017】
[態様8]
前記複数の溝部対応部は、前記複数の主溝部に対応する複数の主溝部対応部と、前記複数の従溝部に対応する複数の従溝部対応部と、を含み、前記複数の主溝部対応部の前記第1平均密度が、前記第2平均密度よりも低い、態様1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
主溝部対応部の第1平均密度が、前記第2平均密度よりも低い。主溝部対応部へ吸収された体液は、主溝部対応部を通じて長手方向へ拡散し、同時に基部対応部へ移行する。すなわち主溝部対応部へ吸収された体液のうち基部対応部へ移行した一部の体液のみが基部へ移行し、基部に保持され得る。したがって本吸収性物品は、基部の高吸収性ポリマー粒子が膨潤して大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0018】
[態様9]
前記複数の従溝部対応部の前記第1平均密度が、前記第2平均密度よりも低い、態様8に記載の吸収性物品。
主溝部対応部に加え従溝部対応部の第1平均密度も、前記第2平均密度よりも低いので、上記効果をより確実に得ることができる。
【0019】
[態様10]
前記複数の基部は、それぞれ、前記吸収コアの前記長手方向の一端から他端まで連続している、態様6に記載の吸収性物品。
本吸収性物品は、上記中央領域が前記吸収コアの前記長手方向の一端から他端まで連続しているので、吸収コアの長手方向全域にわたって溝部に接する基部側面の膨潤を抑え、溝部を潰してしまうことを抑制すると共に、長手方向へ繰り返し体液を拡散させ続けることができる。
【0020】
以下、実施形態に係る吸収性物品について、図面を参照しながら説明する。
本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例示:吸収性物品、吸収体、吸収コア)を、それらの厚さ方向の上方又は下方側から対象物を見ること」を「平面視」という。対象物が吸収性物品の場合、吸収性物品を展開した状態で表面シート側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがある。対象物が吸収コアの場合、吸収性物品を展開した状態で吸収コアの非肌対向面側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがある。
【0021】
本明細書において用いる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。「長手方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの長い方向」を指し、「短手方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向」を指し、「厚さ方向」は「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指す。これらの長手方向、短手方向及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。なお、方向はそれぞれ逆の二つの向きを含むが、図面において示す場合、紙面に直交する方向については一方の向きのみを示す場合がある。
【0022】
本明細書において、特に断りのない限り、吸収性物品の厚さ方向にて、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌対向面に対し相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌対向面に対し相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。本明細書においては、吸収性物品を構成する各種部材(例示:表面シート、吸収体、裏面シート)の「肌対向面側の表面」及び「非肌対向面側の表面」を、それぞれ単に「肌対向面」及び「非肌対向面」という。
【0023】
本明細書において、「主溝部」は、長手方向と平行な方向に延びる溝部のみならず、長手方向に沿って延びる溝部を意味する。主溝部は、長手方向となす角度が、好ましくは45°未満、より好ましくは30°未満、さらにより好ましくは15°未満である。主溝部は、直線状、非直線状、例えば、湾曲状に延びることができる。本明細書において、主溝部の幅は、対象部分における、主溝部が延びる方向と直交する方向における主溝部の長さを意味する。
【0024】
本明細書において、「従溝部」は、短手方向と平行又は略平行な方向に延びる溝部のみならず、長手方向以外の方向に延びる溝部を意味する。従溝部は、主溝部と連通する部分(基端)における主溝部(又は主溝部の接線)となす角度が、好ましくは45°以上、より好ましくは60°以上、さらにより好ましくは80°以上である。従溝部は、直線状、非直線状、例えば、湾曲状に延びることができる。本明細書において、従溝部の幅は、対象部分における、従溝部が延びる方向と直交する方向における従溝部の長さを意味する。
【0025】
本明細書において、「前胴周り領域」と、「後胴周り領域」と、「股部領域」とは、吸収性物品が使い捨ておむつである場合に用いられる用語であり、それらの意義は、以下の通りである。パンツ型使い捨ておむつにおいて、前胴周り領域は、前身頃のうち、前身頃及び後身頃を接合する短手方向の両端部の一対の接合部に挟まれた領域を意味し、後胴周り領域は、後身頃のうち、上記一対の接合部に挟まれた領域を意味する。股部領域は、前胴周り領域と、後胴周り領域との間の領域を意味する。股部領域はまた、一対の脚回り開口部に挟まれた領域に相当する。テープ型使い捨ておむつでは、あらかじめ定められた、テープファスナ用の固定領域に、一対のテープファスナの先端同士が隣接するように固定した固定状態で、胴周り領域及び股部領域を区画する。具体的には、胴周り領域は、上記の固定状態で、吸収性物品のうち、前身頃の胴周り形成部材と、後身頃の胴周り形成部材とが重複する、一対の重複部分を基準に判断する。前胴周り領域は、吸収性物品の前身頃のうち、一対の重複部分の間の領域を意味する。同様に、後胴周り領域は、吸収性物品1の後身頃のうち、一対の重複部分の間の領域を意味する。股部領域は、前胴周り領域と、後胴周り領域との間の領域を意味する。
【0026】
[吸収性物品]
(第1実施形態)
図1~
図6は、第1実施形態に係る吸収性物品1、具体的には、使い捨ておむつの構成例を示す図である。
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
図2は第1実施形態に係る吸収性物品の吸収体の平面図である。
図3は第1実施形態に係る
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4は第1実施形態に係る吸収性物品の吸収コアの平面図である。
図5は第1実施形態に係る
図2のV-V線に沿った吸収体の断面図である。
図6は第1実施形態に係る
図2のIII-III線に沿った吸収体の断面での体液の流れを示す模式図である。
【0027】
図1に示すように、吸収性物品1は、液透過性シート3と、液不透過性シート5と、液透過性シート3及び液不透過性シート5の間の吸収体7Aと、を含む。吸収性物品1は、長手方向Lにおいて、前胴周り領域FWと、後胴周り領域RWと、前胴周り領域FW及び後胴周り領域RWの間の股部領域Cとの三領域に区画される。吸収体7Aは、上記三領域に亘って配置されている。吸収性物品1は、弾性部材103を含む一対の防漏壁101と、防漏壁101を液透過性シート3に固定する固定部105と、脚部周りの弾性部材107と、テープファスナ109等をさらに備える。なお、これらは、当技術分野で公知のものであるため、説明を省略する。
【0028】
図2及び
図3に示すように、吸収体7Aは、長手方向Lと短手方向Wと厚さ方向Tとを有する。吸収体7Aは、肌対向面15及び非肌対向面17を有する吸収コア9Aと、肌対向面15及び非肌対向面17を覆うティッシュからなるコアラップ11とを備える。なお、本実施形態では、吸収性物品1の長手方向、短手方向及び厚さ方向は吸収体7Aのそれら方向と同じなので、吸収性物品1のそれら方向としても長手方向L、短手方向W及び厚さ方向Tを使用する。コアラップ11は、親水性の不織布を用いてもよい。
【0029】
吸収コア9Aは、肌対向面側の肌側層6Aと、非肌対向面側の非肌側層8とからなる。肌側層6Aは、肌側層6Aを厚さ方向Tに貫通する複数の溝部18と、複数の溝部18同士の間に設けられた基部20Aとを備える。
図4に示すように、吸収コア9Aは、長手方向Lの両端部分に、短手方向Wの長さが互いに同じ長さの第1端部12及び第2端部13と、長手方向Lの中央部分に、第1端部12及び第2端部13より短手方向Wの長さが短い、くびれ部14とを有する。第1端部12と括れ部14、及び第2端部13と括れ部14は、それぞれ括れ部14へ向かって短手方向Wの内側へ傾斜する傾斜辺を介して接続されている。溝部18及び基部20Aは、長手方向Lに沿った形状であって、短手方向Wに交互に延在する。溝部18は、吸収コア9Aを短手方向Wに2等分する中央軸線VLに対し、線対称となるように配置されている。
【0030】
溝部18は、複数の主溝部19と、複数の従溝部21とを有する。複数の主溝部19は、それぞれ、肌対向面15から非肌対向面17へ向かって、吸収コア9Aの厚さ方向Tに窪んでおり、かつ、長手方向Lに延びている。第1実施形態の場合、主溝部19は、第1端部12の端43、及び第2端部13の端44をそれぞれ基端とし、短手方向Wに均等に4本ずつ配置されている。第1端部12及び第2端部13の4本の主溝部19のうち、内側の2本は、括れ部14より第1端部12及び第2端部13側にそれぞれ先端を有している。
【0031】
第2端部13の短手方向Wの外側の2本の主溝部19は、括れ部14へいくにしたがって、短手方向Wの内側へ傾斜して延び、長手方向Lに沿った位置に先端を有している。第1端部12の短手方向Wの外側の2本の主溝部19は、括れ部14へいくにしたがって、短手方向Wの内側へ傾斜して延び、括れ部14において再び長手方向Lに沿って延びている。さらに当該2本の主溝部19は、第2端部13から延びた2本の主溝部19の先端をよけるように、短手方向Wの外側へ傾斜し、長手方向Lに沿った位置に先端を有している。2本の主溝部19の先端間、すなわち吸収コア9Aの短手方向Wの中央に、略十字状の十字溝部16が配置されている。
【0032】
主溝部19の短手方向Wの間隔が、排泄領域における吸収コア9Aの短手方向Wの最小長さの15%以上45%未満であるのが好ましい。主溝部19の間隔は、2本の主溝部19の、中心間の長さである。第1実施形態の場合、主溝部19の短手方向Wの間隔は、括れ部14における第1端部12から延びた2本の主溝部19の間隔L1である。吸収コア9Aの短手方向Wの最小長さは、括れ部14の短手方向長さL2である。したがって長さL1は、長さL2の15%以上45%未満であるのが好ましい。
【0033】
主溝部19は、
図3に示すように、非肌側層8と接する主溝底面23と、主溝底面23の短手方向Wの外側で基部20Aに接する主溝側面25とを有する。主溝底面23は、非肌側層8の肌側の表面である。主溝部19は、吸収体7Aの厚みの、好ましくは0.5~3.0倍、より好ましくは0.8~2.5倍、そしてさらに好ましくは1.0~2.0倍の幅を有する。主溝部19の幅が上記範囲内にあると、吸収性物品1が体液を吸収した後に、主溝部19がその通水機能を保持しやすい。
【0034】
本明細書において、特に断りのない限り、対象物(例示:吸収体、吸収コア)の厚み(mm)は、以下の通り測定される。株式会社大栄科学精器製作所製 FS-60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2]を準備し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)の下、対象物の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚みを測定し、5つの測定値の平均値を吸収体の厚みとする。なお、後述する吸収性試験において、第2サイクル後の吸収性物品の厚みを測定する場合も、同様に測定する。
【0035】
図4に示すように、複数の従溝部21は、それぞれ、基端が主溝部19に連通しており、先端が短手方向Wに延び、先端を有している。第1実施形態の場合、従溝部21は、第1端部12から括れ部14、及び第2端部13から括れ部14へかけて、主溝部19が傾斜している範囲においても、短手方向Wに沿って延びている。従溝部21は、
図5に示すように、肌対向面15から非肌対向面17へ向かって、吸収コア9Aの厚さ方向Tに窪んでおり、かつ、短手方向Wに延びている。従溝部21の深さは、主溝部19の深さと同じである。従溝部21は、非肌側層8と接する従溝底面27と、従溝底面27の短手方向Wの外側で基部20Aに接する従溝側面29とを有する。従溝底面27は、非肌側層8の肌側の表面である。従溝部21は、通常、主溝部19の両側に形成されるが、吸収コア9Aの短手方向Wの最も外側にある両端の主溝部19では、それの主溝部19の外側の従溝部21を省略することも可能である。
【0036】
本明細書において、主溝底面23と従溝底面27とを特に区別しない場合は溝底面33と呼ぶ。溝底面33に対向した溝部18の開口は、コアラップ11で塞がれている。
【0037】
図3及び
図5に示すように、基部20Aは、基部20Aの両側にある主溝部19から基部20Aに向かって延びる対向し合う従溝側面29の間にある幅狭部31と、主溝側面25の間にある幅広部32とを有する。基部20Aの天面34は、肌対向面15である。天面34は、短手方向W外側で、主溝側面25と、従溝側面29とにそれぞれ接する。主溝側面25と従溝側面29は、基部側面35でもある。幅狭部31を形成する従溝部21同士は対向し合う必要があるが、幅狭部31と反対側の従溝部21はその主溝部19の同じ位置から延びる必要はない。複数の基部20Aは、それぞれ第1端部12から括れ部14を介して第2端部13まで、連続している。溝部18を介して隣り合う複数の基部20Aは、括れ部14における主溝部19の先端同士の間において、連続している(
図4)。
【0038】
図5に示すように、非肌側層8は、厚さ方向Tにおいて、複数の主溝部19と重複する位置に複数の主溝部対応部22と、複数の従溝部21と重複する位置に複数の従溝部対応部26と、複数の基部20Aと重複する位置に、複数の基部対応部24とを備える。主溝部対応部22と従溝部対応部26とを特に区別しない場合、溝部対応部36と呼ぶ。非肌側層8の非肌対向面17は、平らである。複数の基部20A、複数の溝部対応部36、及び複数の基部対応部24は、一体に形成されてもよい。
【0039】
肌側層6A及び非肌側層8の厚みは、いずれも、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~4mm、さらにより好ましくは1~3mmである。なお、肌側層6A及び非肌側層8の厚みは、それぞれレーザー変位計(例示:キーエンス株式会社製 高精度2次元レーザー変位計LJ-Gシリーズ(型式:LJ-G030))を使用して、次のように非接触方式で測定することができる。吸収性物品1にコールドスプレーを吹き付けて液透過性シート3、液不透過性シート5、及びコアラップ11を剥がして得た吸収コア9Aを100mm×100mmのサイズに切り出し、サンプルとする。当該サンプルを、複数の溝部18と基部20Aとが形成された肌対向面15が上になるように、水平な測定台に載置し、異なる5つの基部20Aについて、測定台からの変位をレーザー変位計で測定し、5つの測定値の平均値をAx(mm)とする。同様に、異なる5つの溝部18(主溝部19)について、測定台からの変位をレーザー変位計で測定し、5つの測定値の平均値をAy(mm)とする。非肌側層8の厚みは、Ay(mm)であり、肌側層6Aの厚みは、Ax(mm)とAy(mm)との差から算出する。
【0040】
吸収コア9Aは、吸水性繊維30及び高吸収性ポリマー粒子(SAP)32を含み、吸収性物品1に排出された体液を吸収、保持する機能を持つ。吸収コア9A全体に含まれる高吸収性ポリマー粒子に対する、非肌側層(主溝部対応部22、基部対応部24)8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の比率は、0%以上50%未満であり、0%以上30%未満であるのが好ましく、0%以上20%以下であるのがより好ましい。
【0041】
第1実施形態では、肌側層6A及び非肌側層8における吸水性繊維の平均坪量は、いずれも、好ましくは50~250g/m2、より好ましくは80~200g/m2である。坪量は以下の測定方法に従って測定される。5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、100℃以上の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。次いで、測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値をシートの坪量とする。非肌側層8における高吸収性ポリマー粒子の平均坪量は、好ましくは0~200g/m2、より好ましくは0~150g/m2であり、肌側層6Aにおける高吸収性ポリマー粒子の平均坪量は、好ましくは100~500g/m2、より好ましくは150~400g/m2である。
【0042】
非肌側層(主溝部対応部22、基部対応部24)8における高吸収性ポリマー粒子の平均密度(以下、「第1平均密度」という。)は、肌側層(基部20A)6Aにおける高吸収性ポリマー粒子の平均密度(以下、「第2平均密度」という。)よりも小さい。第1実施形態の場合、第1平均密度は、例えば、0~0.15g/cm3、0~0.1g/cm3、0~0.08g/cm3であり、第2平均密度は、例えば、0.03~0.4g/cm3、0.04~0.35g/cm3、0.05~0.3g/cm3である。
【0043】
高吸収性ポリマー粒子の平均密度の測定方法は、以下の通りである。吸収コア9Aから所定の長さ及び幅のサンプルを5つ切り出し(例示:4mm×4mm)、各サンプルに含まれる高吸収性ポリマー粒子を選別し、各サンプルに含まれる高吸収性ポリマー粒子の合計質量をそれぞれ計測し、この計測値を、後述するサンプルの厚みとサンプルの面積とで得られるサンプルの体積で除したものの平均値により得られる。
【0044】
本明細書において、吸収コア9A内における基部20A、非肌側層(主溝部対応部22、基部対応部24)8の各部における高吸収性ポリマー粒子の平均密度の高低を評価する場合、以下の方法によってもよい。例えば、サンプルとなる吸収性物品1を液体窒素に含浸させて凍結させた後、剃刀で当該吸収性物品1を厚さ方向Tにカットし、主溝部19が延びる方向と交差する面における断面を得る。次いで、当該サンプルを常温に戻し、電子顕微鏡(例えば、キーエンス社VE7800)を用いて、50倍の倍率の断面画像を得る。そして当該断面画像において、基部20A、主溝部対応部22、及び基部対応部24の各部における高吸収性ポリマー粒子の平均密度の高低を目視により評価する。なお、従溝部対応部26における高吸収性ポリマー粒子の平均密度と基部20A及び基部対応部24のそれぞれにおける高吸収性ポリマー粒子の平均密度との高低を評価する場合には、上記方法に代えて従溝部21が延びる方向と交差する面における断面画像を用いて、上記と同様の方法により評価することができる。
【0045】
吸収性物品1は、肌側層6Aに溝部18を有し、かつ、高吸収性ポリマー粒子の平均密度が非肌側層8<肌側層6Aという関係にあるので、体液は、例えば、
図6に示すように、吸収コア9A内を移動する。
【0046】
(i)コアラップ11に到達した体液は、重力により溝部18へ移動する(矢印A)。
(ii)溝部18へ移動した体液は、長手方向Lへ輸送されると共に、溝部対応部36及び基部20Aへ透過する(矢印B1、B2)。
(iii)溝部対応部36へ透過した体液は、基部対応部24を通じて長手方向L及び短手方向Wへ拡散する(矢印C)。
(iV)基部対応部24を拡散する体液は、高吸収性ポリマー粒子を多く含み、密度の高い基部20Aへ吸い上げられ、高吸収性ポリマー粒子内に保持され得る(矢印D)。
【0047】
吸収性物品1は、肌側層6Aに溝部18と高吸収性ポリマー粒子の高い基部20Aとを備え、高吸収性ポリマー粒子の吸水速度は高くないので、コアラップ11に到達した体液の多くが直ちに溝部18へ通水される。溝部18へ通水された体液は、主溝部19を通じて吸収コア9Aの長手方向Lに輸送されると共に、主溝部19、及び主溝部19と連通した従溝部21から吸収コア9Aの内部に吸収される。すなわち、体液は、主溝底面23から主溝部対応部22へ、従溝底面27から従溝部対応部26へ透過すると共に、主溝側面25から幅広部32へ、従溝側面29から幅狭部31へ透過する。さらに主溝部対応部22及び従溝部対応部26へ透過した体液は、基部対応部24を通じて拡散し、同時に高吸収性ポリマー粒子を多く含み、密度の高い基部20Aへ吸い上げられ、高吸収性ポリマー粒子内に保持され得る。したがって、体液を繰り返し吸収させても、上記サイクルを繰り返すことによって、吸収性物品1は、吸収性能、例えば吸収速度を維持することができる。
【0048】
溝部対応部36及び基部対応部24に含まれる高吸収性ポリマー粒子の第1平均密度は、基部20Aに含まれる高吸収性ポリマー粒子の第2平均密度よりも低い。高吸収性ポリマー粒子の吸収速度は低く、更に繊維基質内にブレンドされ高密度に圧縮された高吸収性ポリマー粒子の吸水・膨潤は抑制される。そのため、溝部18内の体液は、溝部対応部36の膨潤が抑制されるので、溝部対応部36へより多く透過する。さらに、基部対応部24の膨潤も抑制されるので、溝部対応部36へ吸収された体液は、溝部対応部36を通じて長手方向Lへ拡散する。体液は長手方向Lへ拡散すると同時に一部が基部対応部24へ移行する。基部対応部24へ移行した体液は、基部20Aへ吸い上げられ、基部20Aに保持され得る。したがって吸収性物品1は、基部20Aの吸い上げ速度に対して、溝部対応部36と基部対応部24の膨潤を抑制し拡散速度を高めることで、基部20Aの高吸収性ポリマー粒子が膨潤して大きくなりすぎることを抑制することができる。すなわち、吸収性物品1は、体液をより広い範囲に拡散することによって、局所的な厚みの増加を抑制することができる。結果として吸収性物品1は、体液を繰り返し吸収しても全体の厚みの増加を抑制され、着用感を維持し得る。
【0049】
吸収コア9A全体に含まれる高吸収性ポリマー粒子に対する、非肌側層8に含まれる高吸収性ポリマー粒子の比率は、0%以上30%未満である。上記範囲内の場合、複数の溝部対応部36及び複数の基部対応部24に含まれる高吸収性ポリマー粒子を基部20Aに比べ十分に少なくすることができるので、溝部対応部36及び基部対応部24の膨潤が抑制される。したがって吸収性物品1は、厚みの増加をより確実に抑制することができる。さらに、吸収性物品1は、溝部対応部36及び基部対応部24を通じて、長手方向L及び短手方向Wへ体液をより迅速に拡散することができる。
【0050】
主溝部19の短手方向Wの間隔L1が、排泄領域における吸収コア9Aの短手方向Wの最小長さL2の15%以上45%未満である。吸収性物品1は、体液が吸収コア9Aの中央に集中することを防ぎ、体液を分散して溝部18からより迅速に吸収することができる。複数の基部20A、複数の溝部対応部36、及び複数の基部対応部24は、一体に形成されることによって、溝部対応部36、基部対応部24及び基部20Aの間を体液がよりスムーズに移行することができるので、体液をより迅速に拡散することができる。
【0051】
従溝部対応部26における高吸収性ポリマー粒子の平均密度は、第2平均密度より低い第1平均密度である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、第1平均密度より高く第2平均密度以下であってもよい。従溝部対応部26における高吸収性ポリマー粒子の平均密度が第1平均密度より高い場合であっても、非肌側層8は、基部対応部24に加え、主溝部対応部22を有するので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る吸収性物品について説明する。第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
図7は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図8は、吸収性物品1の吸収コア9Bの平面図である。
【0053】
吸収体7Bは、吸収コア9Bと、コアラップ11とを備える。吸収コア9Bは、肌側層6Bと、非肌側層8とからなり、肌側層6Bは、複数の溝部18と、複数の基部20Bとを備える。基部20Bは、それぞれ、表層領域40と、中央領域42とを有する。表層領域40は、天面34及び基部側面35を含み、天面34及び基部側面35から基部20B内へ一定の厚みを有する。表層領域40の厚みは、例えば、基部20Bの短手方向Wの長さの1/5の範囲である。表層領域40に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度(以下、「第3平均密度」という。)は、第2平均密度より低い。第3平均密度は、第2平均密度の30%程度である。
【0054】
中央領域42は、複数の基部20Bのそれぞれ短手方向Wの中央を含み、表層領域40に接している。中央領域42基部側面35側、及び天面34側は、表層領域40に接している。第1端部12の端43から括れ部14を介して第2端部13の端44まで、連続している。中央領域42の短手方向Wの長さは、例えば、基部20Bの短手方向Wの長さの3/5の範囲である。中央領域42に含まれる高吸収性ポリマー粒子の平均密度(以下、「第4平均密度」という。)は、第2平均密度より高い。第4平均密度は、第2平均密度の150%程度である。表層領域40と中央領域42は、吸収コアのX線画像から高吸収性ポリマー粒子の分布を解析することによって、存在を確認することもできる。
【0055】
表層領域40の第3平均密度が、第2平均密度より低いため、溝部18へ通水された体液は、主溝部19を通じて吸収コア9Bの長手方向Lに輸送されると共に、高吸収性ポリマー粒子の平均密度がより低い表層領域40に浸み込むことによって、基部20B内へより迅速に透過する。すなわち、体液は、主溝側面25から幅広部32へ、従溝側面29から幅狭部31へより迅速に透過する。したがって吸収性物品1は、溝部18内の体液を迅速に吸収することができる。さらに、高吸収性ポリマー粒子の少ない表層領域40は、吸水して膨潤した高吸収性ポリマー粒子が溝部18内にこぼれ出して溝部18を塞ぐ現象を起こり難くする。したがって吸収性物品1は、繰返し吸収しても迅速な吸収速度を維持することができる。
【0056】
中央領域42の第4平均密度は、第2平均密度より高いので、溝部18に接する基部側面35の膨潤を抑え、溝部18を潰してしまうことを抑制することができる。したがって、吸収性物品1は、体液を繰り返し吸収させる場合においても、溝部18から溝部対応部36へ体液をより確実に透過し、吸収することができる。
【0057】
中央領域42は、吸収コア9Bの第1端部12の端43から第2端部13の端44まで連続しているので、吸収コア9Bの長手方向L全域にわたって溝部18に接する基部側面35の膨潤を抑えることができる。したがって、吸収性物品1は、溝部18を潰してしまうことを抑制すると共に、長手方向Lへ繰り返し体液を拡散させ続けることができる。
【0058】
[変形例]
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【0059】
[吸収性物品の製造方法]
上記の実施形態に記載の構成を有する吸収性物品1を製造する場合には、製造方法に制限はないが、例えば次のような方法を用いることができる。ただし、本明細書において、「材料又は製品の搬送方向」を「MD方向」、「MD方向と水平面上において直交する方向」(すなわち、製造ラインの幅方向)を「CD方向」、「これらMD方向とCD方向と直交する方向」(すなわち、製造ラインの垂直方向)を「TD方向」とそれぞれいう。
【0060】
図9は、実施形態に係る吸収性物品1を製造するための製造装置50の構成例を示す模式図である。
図10(a)、
図10(b)は、
図9の製造装置50のサクションドラム52上での吸収性材料の供給状態を示す模式図である。
【0061】
製造装置50は、搬送管51とサクションドラム52とを備えている。搬送管51は、開繊された吸水性繊維8aや高吸収性ポリマー粒子8bを含む吸収性材料をサクションドラム52へ搬送する。搬送管51は、高吸収性ポリマー粒子8bを吐出口51Spからサクションドラム52へ吐出する搬送管ノズル51Sを含む。サクションドラム52は、回転自在であり、搬送管51内の吸収性材料を吸引し、その吸収性材料を、外周面に周方向に沿って一定間隔で配設された複数の凹状の型部材53内に積層させることで、後工程で吸収体7Aの吸収コア9Aとなる第1積層体61を形成する。
【0062】
製造装置50は、さらに、コアラップ連続体用の巻出ロール54を備えている。巻出ロール54は、長尺のコアラップ連続体62をサクションドラム52へ向かって巻き出す。サクションドラム52は、外周面にある第1積層体61を、コアラップ連続体62上に載置する。コアラップ連続体62上に載置された第1積層体61がコアラップ連続体62で被覆されることにより、第2積層体63が形成される。製造装置50は、さらに、プレス装置55を備えている。プレス装置55は、第2積層体63を、厚さ方向(TD方向)に加圧して圧縮させる一対のプレスロール55a,55bを含む。第2積層体63がプレス加工されることで第3積層体64が形成される。製造装置50は、さらに、液透過性シート連続体用の巻出ロール57を備えている。巻出ロール57は、第3積層体64の一面(
図10の場合、上面)に対して、液透過性シート3となる長尺の液透過性シート連続体66を巻き出して積層させる。第3積層体64に液透過性シート連続体66が積層されることにより第4積層体65が形成される。製造装置50は、さらに、液不透過性シート連続体用の巻出ロール58を備えている。巻出ロール58は、第4積層体65における液透過性シート連続体66とは反対側の面(
図10の場合、下面)に対して、液不透過性シート5となる長尺の液不透過性シート連続体68を巻き出して接合させる。第4積層体65に液不透過性シート連続体68が積層されることにより第5積層体67が形成される。
【0063】
なお、製造装置50は、巻出ロール58よりもMD方向の下流に、第5積層体67を吸収性物品1の形状に切断し、単体の吸収性物品1とする装置(図示せず)や第5積層体67に防漏壁101やテープファスナ109を圧着する各装置(図示せず)を備える。ただし、これらの装置は、当業界において知られている通常の装置であるため、その詳細な説明を省略する。
【0064】
前述の製造装置50を用いて吸収性物品1を製造する場合、以下の工程を実施する。すなわち、第1積層体61を形成する第1工程と、コアラップ連続体62により第1積層体61を被覆して第2積層体63を形成する第2工程と、第2積層体63をプレス装置55によりTD方向に圧縮して第3積層体64とする第3工程とを順次実施する。さらに、第3積層体64に液透過性シート連続体66を積層して第4積層体65とする第4工程と、第4積層体65に液不透過性シート連続体68を接合して第5積層体67とする第5工程とを順次実施する。
【0065】
まず、最終的に吸収体7Aの吸収コア9Aを構成することとなる第1積層体61を形成する第1工程を実施する。第1工程は、吸水性繊維8aや高吸収性ポリマー粒子8bを含む吸収性材料を、搬送管51を通じてサクションドラム52により吸引して、サクションドラム52の外周面の型部材53内に積層させて、第1積層体61を形成する。
【0066】
ここで、型部材53は、底部53cに、サクションドラム52の周方向に延びる断面四角形状の4対の突起部(
図10では53a、53bのみを図示)を備えている。具体的には、突起部53a、53bのそれぞれは、矩形形状を有している。これらの突起部53a、53bは、吸収体7Aの溝部18の位置に適応する位置に、溝部18の長さ方向の形状及び幅に適応する長さ方向の形状及び幅を有した態様に配設されている。
【0067】
図10(a)は、搬送管51における吸収性材料が供給される領域のうちの最初の領域(例示:全領域の最初の1/5)及び中間領域(例示:全領域の中間の1/5)でのサクションドラム52上における吸収性材料の供給状態を示している。この領域は、吐出口51Spから吐出された高吸収性ポリマー粒子8bが所定量だけ供給され、かつ、吸水性繊維8aが所定量だけ供給されるように制御された領域である。それゆえ、高吸収性ポリマー粒子8b及び吸水性繊維8aが供給され、積層される。高吸収性ポリマー粒子8bと吸水性繊維8aとを合わせた全体の積層厚みは突起部53a、53bの高さと同じ高さである。上記のようにして肌側層6Aが形成される。
【0068】
図10(b)は、搬送管51における吸収性材料が供給される領域のうちの最終の領域(例示:全領域の最後の1/5)でのサクションドラム52上における吸収性材料の供給状態を示している。この領域は、吐出口51Spから吐出された高吸収性ポリマー粒子8bが少量((a)の「所定量」より少ない)又はほとんど供給されず、かつ、吸水性繊維8aが所定量だけ供給されるように制御された領域である。それゆえ、主に吸水性繊維8aが供給され、積層される。高吸収性ポリマー粒子8bと吸水性繊維8aとを合わせた全体の積層厚みは突起部53a、53bの高さよりも高い。それにより、さらに、非肌側層8が形成される。サクションドラム52から取り外し、本図において上下を逆にすることによって、第1実施形態に係る吸収コア9Aを最終的に得ることができる。
【0069】
第2実施形態に係る表層領域40及び中央領域42を有する基部20Bを形成する場合、
図10(a)に先立って、吐出口51Spから高吸収性ポリマー粒子8bを少量((a)の「所定量」より少ない)又はほとんど供給せず、かつ、吸水性繊維8aを所定量だけ供給する。そうすると、天面34側に表層領域40を形成することができる。その後、
図10(a)、
図10(b)の順に高吸収性ポリマー粒子8bと吸水性繊維8aを積層するとき、高吸収性ポリマー粒子8bを相対的に多い量で吐出する搬送管ノズル(図示しない)から、吸収性材料を供給する。この場合、高吸収性ポリマー粒子8bが高吐出量で含まれるため、高吸収性ポリマー粒子8bが突起部53a、53bに衝突すると、高吸収性ポリマー粒子8bが跳ね返り易くなり、突起部53a、53bの近傍に高吸収性ポリマー粒子8bの平均密度が低い表層領域40が形成される。同時に、高吸収性ポリマー粒子が突起部53a、53bが中央に集まり、中央に高吸収性ポリマー粒子の平均密度が高い中央領域42が形成される。上記のようにして、表層領域40と中央領域42とを有する基部20Bを形成し、第2実施形態に係る吸収コア9Bを得ることができる。
【0070】
第2工程では、回転したサクションドラム52が型部材53内の第1積層体61を、コアラップ連続体用の巻出ロール54から巻き出されてMD方向に移動しているコアラップ連続体62(接着剤塗布済)上に転写して載置する。そして、図示しない折曲手段によってコアラップ連続体62を第1積層体61の外周面に沿って、MD方向と直交するCD方向に折曲げ、コアラップ連続体62を第1積層体61に巻くことにより被覆し、長尺の第2積層体63とする。次いで、第3工程では、プレス装置55の一対のプレスロール55a,55bの間に第2積層体63を通すことにより、第2積層体63をTD方向に圧縮する。このとき、第3積層体64が形成される。次いで、第4工程では、第3積層体64の上面に、ホットメルト型接着剤等の接着剤を介して、液透過性シート連続体用の巻出ロール57から巻き出した液透過性シート連続体66を積層して長尺の第4積層体65とする。次いで、第5工程では、第4積層体65の下面に、ホットメルト型接着剤等の接着剤を介して、液不透過性シート連続体用の巻出ロール58から巻き出した液不透過性シート連続体68を接合して、長尺の第5積層体67とする。第5の工程終了後、切断装置によって第5積層体67を吸収性物品1の形状に切断する。この結果、吸収性物品1が完成することとなる。各工程は本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
(A)試料
吸水性繊維としてパルプ繊維と、高吸収性ポリマー粒子(SAP)とを含む、335mm×100mm(長手方向×短手方向)のサイズの吸収コアを、前述の製造方法にしたがって製造した。
図10(a)、
図10(b)の工程において、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の坪量を適宜調整した。主溝部の短手方向長さは4mm、従溝部の短手方向長さは6mm、従溝部の長手方向長さは4mmとした。
【0072】
次いで、吸収コアを、ホットメルト接着剤を間に挟んで、肌側層のコアラップとして親水性ポリプロピレンスパンボンド(PPSB、坪量:15g/m2、355mm×100mm)、非肌側層側のコアラップとして親水性ポリプロピレンスパンボンド(PPSB、坪量:15g/m2、355mm×140mm)を用いた。肌側層及び非肌側層の2枚のコアラップで覆い、非肌側層の短手方向に交差する辺を肌側層側へ巻き上げて肌側層表面に接着して吸収体を形成した。吸収体を油圧プレス機でプレスすることにより吸収コアの厚みを調整した。それにより、実施例1~6の吸収コアから実施例1~6の吸収体を形成し、参考例1及び比較例1の吸収コアから参考例1及び比較例1の吸収体を形成した。その後、各吸収体の肌側層側に液透過性シート(エアスルー不織布)を貼り付け、そして非肌側層側に液不透過性シート(ポリエチレンフィルム)を貼り付けた。それにより、実施例1~6の吸収体から実施例1~6の簡易の吸収性物品を形成し、参考例1及び比較例1の吸収体から参考例1及び比較例1の簡易の吸収性物品を形成した。実施例、参考例及び比較例の具体的な構成は、表1の通りである。表1中、「溝部の向き」は、溝部が形成されている位置を示し、肌側層に形成されている場合を「上」、非肌側層に形成されている場合を「下」と表記した。表1中、「SAP構成比(%)」は、吸収コア全体に含まれるSAPに対し肌側層と非肌側層に含まれるSAPの構成比を示す。実施例1~6は、溝部が肌側層に形成されている。実施例1は、肌側層をパルプ繊維及びSAPで形成し、非肌側層をパルプ繊維のみで形成した。実施例2~6は、非肌側層のSAPの比率を肌側層より少ない範囲で調整した。参考例1は、実施例1に対し溝部が非肌側層に形成されている点が異なる。比較例1は、実施例2~6に対し、肌側層と非肌側層に含まれるSAPの比率が同じである点のみが異なる。実施例1~6、参考例1、及び比較例1において、パルプ繊維は表1に記載の坪量とし、肌側層と非肌側層の厚みをそれぞれ同じとした。
【0073】
(B)評価
実施例1~6の吸収性物品、参考例1、及び比較例1の吸収性物品に、以下に規定する吸収性試験を行い、厚み変化、吸収速度、液戻り量(リウェット性)を評価した。評価の結果を表1及び表2に示す。
【0074】
[吸収性試験]
(1)吸収性物品の長手方向の中央位置Aに十字にマーク、更に、その長手方向の腹側寄り50mmの位置Bに十字のマークを付けた。中央位置Aの厚みT1を測定した後、吸収性物品を、側面視が略U字型であるU字器具にセットする。なお、吸収性物品は、U字器具に、吸収体の長手方向の中央位置Aと、U字器具中央部(最も高さが低い位置)との位置を合わせるようにセットする。
【0075】
<第1サイクル>
(2)吸収体の位置Bに、ビュレットから、80mLの人工尿(1回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
<第2サイクル>
(3)1回目の人工尿の注入開始から10分後、吸収体の位置Bに、ビュレットから、80mLの人工尿(2回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
(4)U字器具から吸収性物品を取り外し、アクリル製の平板上に、液透過性シートが上面となるように吸収性物品を拡げて長手方向中央位置Aの厚みT2を測定し、厚みの差(T2-T1)を記録する(表1及び2の「厚み変化」)。
<第3サイクル>
(5)吸収性物品をU字器具へ戻し、2回目の人工尿の注入開始から10分後、吸収体の位置Bに、ビュレットから、80mLの人工尿(3回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
(6)表面から人工尿が消えるまでの吸収時間(240mL)を測定し記録する(表1及び2の「吸収速度」)。
(7)3回目の人工尿の注入開始から4分後、U字器具から吸収性物品を取り出し、アクリル製の平板上に、液透過性シートが上面となるように吸収性物品を拡げて1分間静置する。
(8)3回目の人工尿の注入開始から5分後、100mm×100mmのろ紙60gを、人工尿注入点を中心として吸収性物品の液透過性シート上に静置する。さらに、その上に3.5kg、100mm×100mm×50mm(高さ)の錘を静置する。なお、ろ紙については事前に試験前の質量を測定する。
(9)3回目の人工尿の注入開始から8分後、錘を取り除いて、ろ紙の質量を測定し、試験前のろ紙の質量を差し引き、その差分を液戻り量とする(表1及び2の「液戻り量」)。
なお、人工尿は、イオン交換水10Lに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム8g、塩化カルシウム3g及び色素:青色1号約1gを溶解させることにより調製した。
【0076】
【0077】
【0078】
実施例1と参考例1は、溝部の向きが異なる。すなわち、実施例1は、吸収コアの肌側層に溝部及び基部が形成され、非肌側層に溝部対応部及び基部対応部が形成されている。これに対し、参考例1は、吸収コアの非肌側層に溝部及び基部が形成され、肌側層に溝部対応部及び基部対応部が形成されている。両者の肌側層と非肌側層とのSAP構成比を合わせたことで、実施例1では、基部のSAPの平均密度が高いのに対し、参考例1では、溝部対応部及び基部対応部のSAPの平均密度が高い。表1の結果から実施例1は、いずれも、160ml吸収後の厚みの変化が、参考例1に比べ、少なく、かつ、吸収速度の結果が優れており、液戻り量の結果が同等以上であることが確認された。実施例1は、非肌側層に溝部対応部と基部対応部が連続して配され、基部対応部に加え溝部対応部が拡散に寄与する。また実施例1は、吸収速度が参考例1に比べ速いことから、吸収コアの拡散性が優れているといえる。すなわち、実施例1では、肌側層に形成された溝部によって体液を吸収コアの長手方向へ輸送することによって拡散することができる。非肌側層が、基部対応部に加え溝部対応部を有し、基部対応部及び溝部対応部がSAPを含まないことによって、体液をより確実に拡散する。さらに体液を拡散したうえで、基部で吸収することによって、体液を繰り返し吸収しても全体の厚みの増加が抑制できると共に、吸収性能のうち吸収速度を向上し、リウェット性を維持できることがわかった。
【0079】
一方、参考例1の場合、肌側層がSAPを多く含むため、体液が肌側層の溝部対応部を経て溝部へ通水されにくい。更に、参考例1は非肌側層にSAPが無く、殆どパルプ繊維のみで形成された基部は吸水によって嵩が収縮し、溝部も縮小してしまう。そのため、参考例1は、溝部へ通水されるのが遅くなった分、厚み変化が比較的少ないが、それでも実施例1より厚み変化が多い結果となった。参考例1に対し、溝部対応部のSAPを少なくして、その分、基部対応部と基部のSAPを多くした構成を実施例1に対する比較例として考える。その場合、その比較例では、基部対応部のSAPの密度が最も高く、次いで溝部対応部と基部のSAPの平均密度が同程度で低い。当該比較例は、基部対応部は参考例1より体液をより多く吸収し、基部対応部と基部のSAPの密度が参考例1より高く、吸水によって溝部の容積が増えるので、参考例1より厚くなる。したがって、非肌側層に溝部を有する構成は、実施例1に比べ厚みがより厚くなりやすいといえる。
【0080】
実施例2~6は、非肌側層の第1平均密度が、肌側層の第2平均密度より低い例である。比較例1は、非肌側層の第1平均密度と、肌側層の第2平均密度が同じ例である。実施例2~6は、厚み変化が比較例1に比べ小さく、特に、非肌側層におけるSAP構成比が20%以下である実施例2~4において、より厚み変化が小さいことが確認された。すなわち溝部対応部及び基部対応部に含まれる高吸収性ポリマー粒子を基部に比べ少なくすることによって、溝部対応部及び基部対応部の膨潤を抑制でき、かつ吸収性能(吸収速度、リウェット性)を維持できることが分かった。
【符号の説明】
【0081】
1 吸収性物品
6A、6B 肌側層
8 非肌側層
9A、9B 吸収コア
18 溝部
19 主溝部
20A、20B基部
21 従溝部
22 主溝部対応部(溝部対応部)
24 基部対応部
26 従溝部対応部(溝部対応部)
31 幅狭部
32 幅広部
40 表層領域
42 中央領域