(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】低蒸気圧化学物質供給
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20230428BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20230428BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/52
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2020522045
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 US2018050515
(87)【国際公開番号】W WO2019083628
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-06-12
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カーン, アディーブ
(72)【発明者】
【氏名】リャン, チーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ネマニ, シュリーニヴァース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コーフマン-オズボーン, トービン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-122725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0019960(US,A1)
【文献】特表2017-505383(JP,A)
【文献】特開2016-040402(JP,A)
【文献】特開2012-234860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
C23C 16/52
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理システムへのガスの供給のための装置であって、
化学物質アンプルの化学物質アンプル入口に連結された吸入弁を有するガス吸入ラインと、
噴出隔離弁の下流に配置されたアンプル噴出弁及び前記アンプル噴出弁の下流に配置された隔離噴出弁を有するガス噴出ラインと、
前記吸入弁を通る流れを制御するように配置されたガス流コントローラと、
前記
隔離噴出弁の下流の前記ガス噴出ラインに大きさを調整されて適合しかつその中に含まれるオリフィスであって、前記オリフィスの領域が、大きさを調整されて、前記ガス吸入ラインを通る絞られた流れを提供する、オリフィスと、
センサの下流の前記ガス噴出ラインに連結されたオリフィス較正回路と
を備えている装置であって、
前記センサが、前記オリフィスの下流に配置され、熱缶が、前記ガス吸入ライン及び前記ガス噴出ラインの一部を取り囲み、前記化学物質アンプルが、前記熱缶の外側に配置され
、前記センサが、前記アンプル噴出弁を出るガスからの流れ、圧力、又は化学物質のうちの少なくとも1つの測定基準を提供するように配置される、装置。
【請求項2】
前記噴出隔離弁が、前記化学物質アンプル内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス流コントローラが、前記センサによって当該コントローラに提供された前記測定基準に応答して、前記ガス吸入ライン内を流れるガスの特性を調節するように構成される、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記化学物質アンプルが、昇華アンプル、蒸発アンプル、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
パージ噴出弁を備えたパージラインをさらに備え、前記パージ噴出弁が、前記パージラインと流体連通し、パージガスを処理チャンバに流す、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記吸入弁及び前記アンプル噴出弁を通る流れが維持されている間、前記吸入弁及び前記アンプル噴出弁を通る前記流れを測定することにより、前記吸入弁又は前記アンプル噴出弁の有効開口領域を較正するように構成された較正回路をさらに備えている、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記オリフィス較正回路が、前記吸入弁及び前記アンプル噴出弁を通る流れが維持されている間、前記オリフィスを通る流れを測定することにより、前記オリフィスの領域を較正するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記化学物質アンプル入口の上流の、前記ガス吸入ラインに流体接続されたチェック弁をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の実施形態は、概して、半導体処理システムへガスを供給するための方法及び装置に関する。特に、本開示の実施形態は、基板処理チャンバへの前駆体の供給を改善するための方法及び装置を対象としている。
【発明の概要】
【0002】
[0002]低蒸気圧化学物質供給を含む、固体前駆体を利用する蒸気堆積処理は、幾つかの問題を抱える場合がある。例えば、ガスの入出力ラインに沿って望ましくない温度差があると、それらのラインに激しい化学的凝縮が生じる。さらに、基板処理の間、ガスの初期的な供給スパイクとガスの不安定な流れが存在する。温度と圧力の変動が組み合わさることにより、基板への堆積における非反復性と不均一性がもたらされる。しかしながら、基板の処理は、処理中に使用されるガスの供給において、温度、流量、及び圧力を精密に制御することが必要である。
【0003】
[0003」一実施形態では、ガスを半導体処理システムに供給するための装置が提供される。当該装置は、吸入弁を有するガス吸入ラインと、噴出弁を有するガス噴出ラインと、吸入弁を通る流れを制御するように配置されたガス流コントローラと、ガス噴出ライン、噴出弁、化学物質アンプル噴出弁、又は噴出隔離弁のうちの少なくとも1つの中に含まれるオリフィスと、ガス吸入ライン及びガス噴出ラインのうちの少なくとも1つに流体連結された化学物質アンプルと、処理チャンバとを含む。
【0004】
[0004]別の実施形態では、ガスを半導体処理システムに供給するための装置が提供される。当該装置は、吸入弁を有するガス吸入ラインと、噴出弁を有するガス噴出ラインと、吸入弁を通る流れを制御するように配置されたガス流コントローラと、噴出弁、ガス噴出ライン、又はこれらの組み合わせに流体連結されたオリフィスと、処理チャンバと、熱缶と、ガス吸入ラインに流体接続されたチェック弁と、熱缶と流体連通している化学物質アンプルと、ガス噴出ライン、及び処理チャンバをバイパスする加熱された迂回ラインに連結された第3の噴出弁であって、処理チャンバが、ガス噴出ラインに連結されている、第3の噴出弁と、ガス噴出ラインと流体連通し、化学物質アンプルから処理チャンバへの化学前駆体及び/又はキャリアガスの流れを可能にする、第4の噴出弁とを含む。
【0005】
[0005]別の実施形態では、ガスを半導体処理システムに供給するための装置が提供される。当該装置は、吸入弁を有するガス吸入ラインと、噴出弁を有するガス噴出ラインと、吸入弁を通る流れを制御するように配置されたガス流コントローラと、処理チャンバと、熱缶と、ガス吸入ラインに流体接続されたチェック弁と、噴出弁、ガス噴出ライン、又はこれらの組み合わせに流体連結されたオリフィスと、熱缶と流体連通している化学物質アンプルと、ガス噴出ライン、及び処理チャンバをバイパスする加熱された迂回ラインに連結された第3の噴出弁であって、処理チャンバが、ガス噴出ラインに連結されている、第3の噴出弁と、ガス噴出ラインと流体連通し、化学物質アンプルから処理チャンバへの化学前駆体及び/又はキャリアガスの流れを可能にする、第4の噴出弁と、噴出弁に連結された較正回路とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
[0006]本開示の上述の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによって、得ることができる。そのうちの幾つかの実施形態は添付の図面で例示されている。しかし、添付図面は例示的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容され得ることに留意されたい。
【0007】
【
図3】オリフィスを有する化学物質供給システム及びオリフィスを有さない化学物質供給システムに関する圧力対時間のプロットを示す。
【0008】
[0010」理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。一実施形態の要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込むことができると考えられている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0011]本開示の実施形態は、化学物質アンプルから処理チャンバへの化学物質供給を改善する装置及び方法を対象としている。
【0010】
[0012]化学物質アンプルを利用する従来の処理システム(又は装置)のガス供給ラインでは、重大な化学的凝縮が観察されている。
図1に示す従来の装置100では、化学物質供給ラインに沿って、例えば、約91°Cから約180°Cの広い温度範囲が存在する。凝縮により、化学物質の供給に関する問題、ウエハ上の粒子、不均一、及び背中合わせのウエハ処理中のファーストウエハ効果(first wafer effect)がもたらされる。本発明者らは、これらの問題は、供給ラインの均一な加熱、温度勾配の維持、及び加熱されたキャリアラインにより対処できることを発見した。
【0011】
[0013]従来の装置100では、基板処理の初期段階中、望ましくない高圧供給スパイク及びガスの不安定な流れがさらに見られる。これにより、定常状態の投与条件の間、チャンバ内への前駆体の流動が一貫せず、且つチャンバ内の圧力が不安定となり、化学物質の供給が不安定となることが実証されている。本発明者らは、
図2に示される新規なプロセスの化学物質供給システム(又は装置)200で示されるように、供給ラインにオリフィスを追加することにより、前述の問題に対する解決策がもたらされることを発見した。オリフィスは、加熱された迂回ライン及びチェック弁の有無に関わらず使用することができる。オリフィスを使用すると、完全に開いた弁により初期スパイクが減少し、ガスの流れが制御される。加熱された迂回ライン及びチェック弁の使用は、ガスの任意の初期スパイクを分散させ、化学物質アンプルから処理チャンバへのガスの流れを安定させるのに役立ち得る。チェック弁の主な目的は、前駆体がガス吸入ラインを逆流するのを防止することである。さらに、チェック弁は、前駆体を熱缶内に保持するための追加のツールを設けることができ、それにより、前駆体は、キャリアガスライン内で不用意に凝縮することはできない。
【0012】
[0014]
図1は、従来の化学物質供給システム(又は従来の装置)100の概略を示す。従来の装置100は、処理チャンバ106、ペデスタル107、キャリアガス源102a、パージガス源104a、及び化学物質アンプル110を含む。処理チャンバ106は、気化した化学前駆体を含む、熱堆積処理又は蒸着処理を行うためのチャンバであり得る。
【0013】
[0015]化学物質アンプル110は、アンプル入口111及びアンプル出口112を含み、化学物質アンプル110の内部空間と流体連通する追加の導管113をさらに含み得る。任意選択的な導管113は、隔離弁113aを含んでよく、化学物質アンプル110を加圧又は減圧するために使用され得る。
【0014】
[0016]化学物質アンプル110は、内部本体114を含み、内部本体114は、化学前駆体を貯蔵することができる。アンプル入口111は、化学物質アンプル110が接続されていないとき、アンプル入口111を外部環境から隔離する吸入隔離弁111aを含み得る。同様に、アンプル出口112は、化学物質アンプル110が接続されていないとき、アンプル出口112を外部環境から隔離する噴出隔離弁112aを含み得る。吸入隔離弁111a及び噴出隔離弁112aは、化学物質アンプル110の内部空間との流体連通を可能にするために開放され得る。
【0015】
[0017]装置100は、キャリアガス102又はキャリアガス源102aと流体連通するガス吸入ライン115を含む。キャリアガス源102aは、キャリアガスヒータ102bによって加熱され得る。ガス吸入ライン115は、アンプル吸入弁115a及び隔離吸入弁115bを有し、化学物質アンプル110へのキャリアガス102の流れを制御する。装置100は、アンプル噴出弁117a及び隔離噴出弁117bを含むガス噴出ライン117を含み、例えば、化学物質アンプル110を離れる前駆体蒸気及びキャリアガスの流れを制御する。バイパスライン130は、ガス吸入ライン115とガス噴出ライン117とを接続する。バイパスライン130は、化学物質アンプル110が存在する場合、アンプル噴出弁117aの下流にバイパス弁130aを備える。バイパス弁130aは、キャリアガス102を化学物質アンプル110に流し込むことなく、キャリアガス102が、ガス吸入ライン115から流れて、ガス噴出ライン117をパージすることを可能にする。例えば、化学物質アンプル110が存在しない場合、バイパス弁130aを開いて、キャリアガス102の流れを可能にすることができる。幾つかの実施形態のバイパスライン130及びバイパス弁130aは、アンプル吸入弁115aの上流にある。幾つかの実施形態では、バイパスライン130は、アンプル吸入弁115aの下流のガス吸入ライン115に接続する。幾つかの実施形態では、バイパスライン130及びバイパス弁130aは、アンプル噴出弁117aの下流のガス噴出ライン117と連通している。幾つかの実施形態では、バイパスライン130は、アンプル噴出弁117aの上流でガス噴出ライン117に接続する。幾つかの実施形態では、バイパスライン130は、アンプル吸入弁115aの上流のガス吸入ライン115に接続且つ流体連通し、アンプル噴出弁117aの下流のガス噴出ライン117に接続且つ流体連通する。幾つかの実施形態では、バイパスライン130は、アンプル吸入弁115aの下流のガス吸入ライン115に接続且つ流体連通し、アンプル噴出弁117aの上流のガス噴出ライン117に接続且つ流体連通する。
【0016】
[0018]装置100は、パージガス104及び/又はパージガス源104aと流体連通するパージライン155を含む。パージガス源は、パージガスヒータ104bによって加熱され得る。パージライン155は、パージライン155と流体連通するパージ噴出弁155aを備え、処理チャンバ106へのパージガス104の流れを可能にする。幾つかの実施形態では、パージ噴出弁155aは、パージライン155と流体連通する第1の入力部156a、及びガス噴出ライン117と流体連通する第2の入力部156bを含む。パージ噴出弁155aは、処理チャンバ106に向かう流れを方向付けるための第1の出口156cをさらに含み得る。幾つかの実施形態では、パージ噴出弁155aは、三方弁又は比例弁であり、ガス噴出ライン117及びパージライン155のうちの一方のみから処理チャンバ106への流れを通過させることができ、又は、ガス噴出ライン117及びパージライン155からの流れを混合させることができる。混合流の範囲は、完全にガス噴出ライン117から、完全にパージライン155まで、及び中間の全ての状態まであり得る。
【0017】
[0019]熱缶105(破線で示す)は、ガス供給システムに沿って均一な温度勾配を保証するために、ガス吸入ライン115とガス噴出ライン117の一部を取り囲み、供給ライン内の弁を加熱し、且つ基板を損傷し得る不純物の堆積の防止を助ける。熱缶105は、熱缶105内の構成要素上の熱を収容且つ保持するために使用されるハウジングである。ヒータは、ハウジングの内側又は外側に存在し得る。構成要素は、例えば、強制熱風、カートリッジヒータ、抵抗ヒータ、及び加熱ラップによって加熱することができる。
【0018】
[0020]従来の装置100内の圧力と熱の変動、及び化学的凝縮により、チャンバ内への前駆体ガスの流動が一貫せず、化学物質供給が不安定となり、その結果、処理が反復不能となり、基板処理が不均一となる。したがって、圧力と熱の変動、及び化学的凝縮を最小限に抑える機構を追加することが必要である。
図2に示された新規なシステムについて以下に説明されるように、オリフィスは、他の構成要素の中でもとりわけ、制御された化学蒸気供給と、各運転に対する安定した蒸気圧とを可能にする。
【0019】
[0021]
図2は、新規なプロセスの化学物質供給システム200の概略を示す。新規なプロセス化学物質供給システム(又は装置)200は、処理チャンバ206、ペデスタル207、キャリアガス源202a(任意選択的に加熱される)、パージガス源204a(任意選択的に加熱される)、及び化学物質アンプル210を含む。処理チャンバ206は、気化した化学前駆体を含む、熱堆積処理又は蒸着処理を行うためのチャンバであり得る。処理チャンバ206は、概して、化学気相堆積(CVD)チャンバ、原子層堆積(ALD)チャンバであるか、又はこれらの派生物であり得る。
【0020】
[0022]装置200は、化学物質アンプル210を有する。一実施形態では、化学物質アンプル210を装置200と共に使用することができる。別の実施形態では、化学物質アンプル210は、装置200の一部ではない場合がある。化学物質アンプル210は、任意の低蒸気圧前駆体の供給のために使用される任意のアンプル、例えば、昇華アンプル(sublimation ampoule)又は蒸発アンプル(evaporation ampoule)であり得る。化学物質アンプル210は、堆積処理に使用するのに適した任意の形態の前駆体を含み得る。幾つかの実施形態では、化学物質アンプル210は、1つ以上の固体前駆体を含む。幾つかの実施形態では、化学物質アンプル210は、1つ以上の液体前駆体を含む。幾つかの実施形態では、化学物質アンプル210は、1つ以上の固体前駆体及び1つ以上の液体前駆体を含む。幾つかの実施形態では、化学物質アンプル210は、内部本体214を含み、内部本体214は、前駆体を貯蔵することができる。
【0021】
[0023]化学物質アンプル210は、アンプル入口211及びアンプル出口212を含み、化学物質アンプル210の内部空間と流体連通する追加の導管213をさらに含み得る。任意選択的な導管213は、隔離弁213aを含んでよく、化学物質アンプル210を加圧又は減圧するために使用され得る。アンプル入口211は、化学物質アンプル210が接続されていないとき、アンプル入口211を外部環境から隔離する吸入隔離弁211aを含み得る。同様に、アンプル出口212は、化学物質アンプル210が接続されていないとき、アンプル出口212を外部環境から隔離する噴出隔離弁212aを含み得る。吸入隔離弁211a及び噴出隔離弁212aは、化学物質アンプル210の内部空間との流体連通を可能にするために開放され得る。
【0022】
[0024]装置200は、キャリアガス202又はキャリアガス源202aと流体連通するガス吸入ライン215を含む。キャリアガス源202aは、キャリアガスヒータ202bによって加熱され得る。ガス吸入ライン215は、アンプル吸入弁215a及び隔離吸入弁215bを有し、化学物質アンプル210へのキャリアガス202の流れを制御する。装置200は、アンプル噴出弁217a及び隔離噴出弁217bを含むガス噴出ライン217を含み、例えば、化学物質アンプル210を離れる前駆体蒸気及びキャリアガス202の流れを制御する。バイパスライン230は、ガス吸入ライン215とガス噴出ライン217とを接続する。バイパスライン230は、化学物質アンプル210が存在する場合、アンプル噴出弁217aの下流にバイパス弁230aを備える。バイパス弁230aは、キャリアガス202を化学物質アンプル210に流し込むことなく、キャリアガス202が、ガス吸入ライン215から流れて、ガス噴出ライン217をパージすることを可能にする。例えば、化学物質アンプル210が存在しない場合、バイパス弁230aを開いて、キャリアガス202の流れを可能にすることができる。幾つかの実施形態のバイパスライン230及びバイパス弁230aは、アンプル吸入弁215aの上流にある。幾つかの実施形態では、バイパスライン230は、アンプル吸入弁215aの下流のガス吸入ライン215に接続する。幾つかの実施形態では、バイパスライン230及びバイパス弁230aは、アンプル噴出弁217aの下流のガス噴出ライン217と連通している。幾つかの実施形態では、バイパスライン230は、アンプル噴出弁217aの上流でガス噴出ライン217に接続する。幾つかの実施形態では、バイパスライン230は、アンプル吸入弁215aの上流のガス吸入ライン215に接続且つ流体連通し、アンプル噴出弁217aの下流のガス噴出ライン217に接続且つ流体連通する。幾つかの実施形態では、バイパスライン230は、アンプル吸入弁215aの下流のガス吸入ライン215に接続且つ流体連通し、アンプル噴出弁217aの上流のガス噴出ライン217に接続且つ流体連通する。
【0023】
[0025]ガス吸入ライン215は、ガス流を正確に測定するように構成された吸入較正回路239に連結され得る。吸入較正回路239は、システム構成要素の流れの検証を行うために利用され得るが、処理チャンバ206への流れを必要としない。ガス吸入ライン215は、チェック弁240に連結され得る。チェック弁240の主な目的は、前駆体がガス吸入ライン215を逆流するのを防止することである。さらに、チェック弁240は、前駆体を熱缶205(破線により示される)内に保持するための追加のツールを設けることができ、それにより、前駆体は、キャリアガスライン内で不用意に凝縮することはできない。吸入較正回路239は、チェック弁240の上流又は下流であってもよい。
【0024】
[0026]一実施形態では、吸入較正回路239は、ガス源、迂回弁、調整デバイス、及び感知回路を含む。感知回路は、吸入弁及び噴出弁を通過するガスの流れを受け入れるように構成される。別の実施形態では、吸入較正回路239は、ガス流を受け入れるための較正された空間を利用する。較正された空間内のガスから測定された特性及び/又は属性により、感知回路に入るガスの流量及び/又は圧力を検証することができる。別の実施形態では、吸入較正回路239は、ガス流を受け入れるための較正されていない空間を利用する。較正されていない空間内のガスから経時的に測定された特性及び/又は属性の変化により、感知回路に入るガスの流量及び/又は圧力を検証することができる。さらに別の実施形態では、吸入較正回路239は、較正された空間内に配置された振動部材を含む。他の実施形態では、吸入較正回路239は、較正された空間内に入れられたガスの電気的特性又は磁気的特性のうちの少なくとも1つを検出するように構成されたセンサを含み得る。したがって、吸入較正回路239は、アンプル吸入弁215a及びアンプル噴出弁217aを通る流れが維持されている間、アンプル吸入弁215a及びアンプル噴出弁217aを通る流れを測定することによって、弁の有効開口領域を較正するように構成されている。
【0025】
[0027]ガス噴出ライン217は、ガス流を正確に測定するように構成された噴出較正回路241に連結され得る。噴出較正回路241は、システム構成要素の流れの検証を行うために利用され得るが、処理チャンバ206への流れを必要としない。この場合、噴出較正回路241は、流れが接続弁(この場合、オリフィス較正回路である)を通して維持されている間、オリフィス250を通る流れを測定することにより、オリフィスの領域を較正するように構成されている。ガス噴出ライン217は、絞られた流れ状態をもたらす大きさのオリフィス250を含む。絞られた流れ状態を確立することにより、処理チャンバ206内に運び込まれるガス圧力のスパイクが最小限となる。オリフィス250は、基板処理システム内にある化学物質及び副生成物と適合する任意の材料から作られ得る。オリフィス250は、ガス噴出ライン217に適合するように寸法形成される。オリフィス250は、ガスが処理チャンバ206内に流れ込んでいるときに存在する状態と類似のフロー状態をガス噴出ライン217において生成する。オリフィス250の大きさは、実験、実証分析、又は他の適切な方法によって決定され得る。幾つかの実施形態では、オリフィス250の大きさは、オリフィス250の下流の圧力を測定し、所望の圧力が実現するまでオリフィス250の大きさを調整することによって、決定され得る。幾つかの実施形態では、1つ以上のオリフィスが、噴出弁、ガス噴出ライン、又はその両方の組み合せのそれぞれに流体連結される。
【0026】
[0028]装置200は、ガス噴出ライン217に沿って、少なくとも1つのセンサ218a/218bを含み得る。センサ218a/218bは、噴出弁のうちの少なくとも1つを出るガスからの流れ、圧力、又は化学物質のうちの少なくとも1つの測定基準を提供するように配置されている。装置200は、ガス流コントローラ219を含み得る。ガス流コントローラ219は、少なくとも1つのセンサ218a/218bによってガス流コントローラ219に提供された測定基準に応答して、ガス吸入ラインのうちの少なくとも1つの中を流れるガスの特性を調節するように構成されている。
【0027】
[0029]装置200は、パージガス204及び/又はパージガス源204aと流体連通するパージライン255を含む。パージガス源204aは、パージガスヒータ204bによって加熱され得る。パージライン255は、パージライン255と流体連通するパージ噴出弁255aを備え、処理チャンバ206へのパージガス204の流れを可能にする。幾つかの実施形態では、パージ噴出弁255aは、パージライン255と流体連通する第1の入力部256a、及びガス噴出ライン217と流体連通する第2の入力部256bを含む。パージ噴出弁255aは、処理チャンバ206に向かう流れを方向付けるための第1の出口256cをさらに含み得る。幾つかの実施形態では、パージ噴出弁255aは、三方弁又は比例弁であり、ガス噴出ライン217及びパージライン255のうちの一方のみから処理チャンバ206への流れを通過させることができ、又は、ガス噴出ライン217及びパージライン255からの流れを混合させることができる。混合流の範囲は、完全にガス噴出ライン217から、完全にパージライン255まで、及び中間の全ての状態まであり得る。
【0028】
[0030]
図2に示す実施形態では、装置200は、熱缶205(破線で示す)を含む。本開示のオリフィス250は、熱缶と処理チャンバとの間に延在するガス噴出ライン217とインターフェースされる。本開示のチェック弁240は、熱缶205の間に延在するガス吸入ライン215とインターフェースし、熱缶205によって包囲される。熱缶205は、(例えば、ガス吸入ライン215及びガス噴出ライン217の一部を取り囲むことによって)装置200の少なくとも一部に沿って均一な温度勾配を確実なものとし、弁を均一に加熱し、基板を損傷し得る不純物の堆積防止に役立つ。熱缶のさらなる説明は、上述されている。幾つかの実施形態では、オリフィス250及び/又はチェック弁240は、熱缶205の外側にあってもよい。この場合、ガス吸入ライン215及びガス噴出ライン217に沿ったガスヒータを使用して、それぞれのラインを流れるガスの温度を上昇させ、ライン内でガスが蒸気を凝縮させないようにすることができる。
【0029】
[0031]幾つかの実施形態では、装置は、オリフィス250、チェック弁240、迂回ライン263(加熱可能である)、又はこれらの組み合わせを含む。
【0030】
[0032]幾つかの実施形態では、加熱された迂回ラインが使用される。
図2に示されるように、ガス噴出ライン217と流体連通する第3の噴出弁260は、例えば、化学物質アンプル210からの化学前駆体及び/又はキャリアガスの流れが、処理チャンバ206をバイパスして、迂回ライン263を介して、排気ライン(フォアライン)265に導かれることを可能にする。迂回ラインは、迂回ラインヒータ263aによって加熱され得る。幾つかの実施形態では、第3の噴出弁260は、ガス噴出ライン217と、処理チャンバ206をバイパスする加熱された迂回ラインとに連結される。処理チャンバ206は、ガス噴出ライン217に接続される。幾つかの実施形態では、第3の噴出弁260は、ガス噴出ライン217と流体連通するバイパスライン230の下流にある。この構成により、化学物質アンプル210が存在するとき、又は化学物質アンプル210が存在しないとき、ガスがフォアライン265に導かれることが可能になる。1つ以上の実施形態では、第3の噴出弁260は、バイパスライン230の上流にあり、ガス噴出ライン217と流体連通する。
【0031】
[0033]ガス噴出ライン217と流体連通する第4の噴出弁270は、化学物質アンプル210からの化学前駆体及び/又はキャリアガスの流れを処理チャンバ206に導くことを可能にする。幾つかの実施形態では、第4の噴出弁270は、ガス噴出ライン217と流体連通するバイパスライン230の下流にある。この構成により、化学物質アンプル210が存在するとき、又は化学物質アンプル210が存在しないとき、ガスが処理チャンバ206に導かれることが可能になる。1つ以上の実施形態では、第4の噴出弁270は、バイパスライン230の上流にあり、ガス噴出ライン217と流体連通する。
【0032】
[0034]
図2の装置について説明したように、単なる単一の区域の温度制御(例えば、熱缶)ではなく、温度制御のために複数の区域が存在する。温度制御の複数の区域を利用することにより、化学物質供給装置のラインに沿って、凝縮及び化学物質残留物をより少なくすることが可能になる。従来の装置(単一区域温度制御)のラインに沿った最低温度は91.6°Cであり、最高温度は179.41°Cである。本明細書に開示された新しい装置では、ラインに沿った最低温度は154°Cであり、最高温度は160°Cである。
【0033】
[0035]化学物質アンプル210は、内部本体214を含む。化学的適合性及び機械的強度を理由として、内部本体214は、典型的には、ステンレス鋼(例えば、316ステンレス鋼(316 SST))で製作されている。反応性の高い材料などの様々な種類の化学前駆体を内部本体214内に貯蔵することができるので、内部本体214の材料は、相当に化学的に不活性でなければならない。化学物質アンプル210の内部本体214にとって、実質的な機械的強度は、望ましい特性である。幾つかの実施形態では、内部本体214は、処理中に大気圧未満で作動することができ、輸送及び貯蔵のために大気圧を上回るよう加圧されてもよい。したがって、内部本体214は、真空チャンバ又は圧力容器として利用されている間、有毒な化学前駆体のための信頼性のある格納容器として機能しなければならない。
【0034】
[0036]316 SSTは、熱伝導性の悪い媒体であるため、使用中に内部本体214の内部に望ましくない熱勾配が生じる場合がある。例えば、液体化学前駆体が内部本体214の内部に含まれる場合、液体前駆体が枯渇するにつれて、内部本体214のより多くの容積が蒸気で充填され、内部本体214の低い熱伝導性により、アンプルの寿命の後期に、液体前駆体内の不均一な加熱(例えば、ホットスポット)がもたらされることがある。別の実施例では、例えば、内部本体214が固体化学前駆体(solid chemical precursor)を含む場合、内部本体214の熱伝導率が低いと、アンプルの寿命全体にわたってホットスポットが生じ得る。いずれの場合でも、CVD処理又はALD処理は、このような温度に不均一によって有害な影響を受ける可能性がある。
【0035】
[0037]固体化学前駆体は、タンタル前駆体、例えば、ペンタキス(ジメチルアミド)タンタル(PDMAT、Ta(NMe2)5)、ペンタキス(ジエチルアミド)第3アミルイミド-トリス(ジメチルアミド)タンタル(TAIMATA、(t-AmyIN)Ta(NMe2)3(ここで、t-Amylは、第3アミル基(C5H11又は-CH3CH2C(CH3)2-)である)、又はこれらの誘導体を含む処理ガスを形成するために使用され得る。一実施形態では、PDMATは、低いハロゲン含有量(例えば、CI、F、I、又はBr)を有する。PDMATは、約100ppm未満のハロゲン濃度を有し得る。例えば、PDMATは、約100ppm未満、好ましくは、約20ppm未満、より好ましくは、約5ppm未満、より好ましくは、約1ppm未満、例えば、約100ppb以下の塩素濃度を有し得る。
【0036】
[0038]昇華プロセスを通して処理ガスを形成するために使用され得る他の固体化学前駆体には、四塩化ハフニウム(HfCl4)、二フッ化キセノン、ニッケルカルボニル、及びタングステンヘキサカルボニル、又はこれらの誘導体が含まれる。他の実施形態では、液体化学前駆体を蒸発させて、本明細書に記載のアンプル内で処理ガスを形成することができる。処理ガスを形成するために使用され得る他の化学前駆体には、タングステン前駆体(例えば、
六フッ化タングステン(WF6)、タンタル前駆体(例えば、タンタル(PDEAT、Ta(NEt2)5)、ペンタキス(メチルエチルアミド)タンタル(PMEAT、Ta(NMeEt)5)、tertブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT、t-BuNTa(NMe2)3)、tertブチルイミノ-トリス(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET、t-BuNTa(NEt2)3)、tertブチルイミノ-トリス(メチルエチルアミノ)タンタル(TBTMET、t-BuNTa(NMeEt)3)、又はこれらの誘導体)、チタン前駆体(例えば、四塩化チタン(TiCl4)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT、(Me2N)4Ti),テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TEMAT、(Et2N)4Ti)、又はこれらの誘導体、ルテニウム前駆体(例えば、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((EtCp)2Ru)、ハフニウム前駆体(例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH、(Me2N)4Hf)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH、(Et2N)4Hf))、テトラキス(メチルエチルアミノ)ハフニウム(TMEAH、MeEtN4Hf))、又はこれらの誘導体、及びアルミニウム前駆体(例えば、1-メチルピロリドラジン:アラン(1-methylpyrolidrazine:alane)(MPA、MeC4H3N:AIH3)、ピリジン:アラン(C4H4N:AIH3)、アルキルアミン:アラン錯体(例えば、トリメチルアミン:アラン(Me3N:AIH3)、トリエチルアミン:アラン(Et3N:AIH3)、ジメチルエチルアミン:アラン(Me2EtN:AIH3)、トリメチルアルミニウム(TMA、Me3Al)、トリエチルアルミニウム(TEA、Et3Al)、トリブチルアルミニウム(Bu3Al)、塩化ジメチルアルミニウム(Me2AlCl)、塩化ジエチルアルミニウム(Et2AlCl)、水素化ジブチルアルミニウム(Bu2AlH)、塩化ジブチルアルミニウム(Bu2AlCl)、又はこれらの誘導体)が含まれる。1つ以上の実施形態では、前駆体は四塩化ハフニウムである。
【0037】
[0039]パージガスは、当技術分野で知られている任意の適切なパージガスであり得る。適切なパージガスには、ヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、パージガスは、窒素である。
【0038】
[0040]優れた化学物質供給は、加熱された迂回ライン及び/又はチェック弁のような追加の要素の有無にかかわらず、オリフィスを化学物質供給システムに追加することによって達成される。
図3は、これらの特徴を有する場合と有さない場合との、化学物質供給の性能比較である。追加された特徴は、初期的な圧力スパイクを軽減し、チャンバ内への前駆体の流動の漸進的な増加を可能にする。さらに、定常状態の投入条件の間のチャンバ内の安定した圧力は、安定した化学物質供給を実証する。
【0039】
[0041]本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の例示にすぎないことを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に対して様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。ゆえに、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物に含まれる修正例及び変形例を含むことが意図されている。