(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】HER2陽性乳癌のアジュバント治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230428BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230428BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20230428BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230428BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K31/337
A61K31/282
A61P35/00
A61P35/04
A61P15/00
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021174654
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2019547135の分割
【原出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-11-16
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンユーンズ, マーク シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロス, グレアム アレクサンダー
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0035907(US,A1)
【文献】Oncologist, (2017.02.06), 22, [2], p.139-143
【文献】History of Change for Study:NCT01358877, [online], 2016-Nov-01, ClinicalTrials.gov archive, NCT ID:NCT01358877 [Retrieved on 2021-SEP-14], Retrieved from the internet:<https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT01358877?V_112=View#StudyPageTop>
【文献】Phase III APHINITY Study Shows Genentech's Perjeta Regimen Helped People with an Aggressive Type of Early Breast Cancer Live Longer without their Disease Returning Compared to Herceptin and Chemotherapy, [online], 2017.Mar.01, Genentech Press Releases, [Retrieved on 2021-SEP-22], Retrieved from the internet:<https://www.gene.com/media/press-releases/14655/2017-03-01/phase-iii-aphinity-study-shows-genentech>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心毒性を増加させることなく、HER2陽性早期乳癌の患者における3年間の無浸潤疾患生存(IDFS)を増加させるための
、ペルツズマブを含む医薬であって、患者が、癌再発の高い危険性を有し、55%以上のベースライン左室駆出分画(LVEF)を有し、かつ事前に抗HER2療法を受けたことがなく、手術後に、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び非アントラサイクリンを含む化学療法が、前記患者に投与され、非アントラサイクリンを含む化学療法が、3週毎、6サイクルの75mg/m
2のドセタキセル、及び6回の
用量で血中濃度時間曲線下面積(AUC
)(900mgの最大用量)のカルボプラチンを含み、ペルツズマブ及びトラスツズマブが、非アントラサイクリンを含む化学療法の初回のサイクルの1日目に開始して、それぞれ静脈内投与され、かつ合計52週間投与され、並びにペルツズマブの初回用量が840mgであり、420mgのペルツズマブが3週間毎に
これに続き、かつトラスツズマブの初回用量が8mg/kgであり、6mg/kgのトラスツズマブが3週間毎に
これに続き、前記患者における初回投与からの前記3年間のIDFSが、ペルツズマブなしで、トラスツズマブ、及び非アントラサイクリンを含む化学療法を投与された患者と比較して
増加し、心毒性が、ベースラインから10ポイント以上のLVEFの低下及び50パーセント未満
へのLVEFの低下であり、かつ前記高い危険性を有する患者が、リンパ節転移陽性又はホルモン受容体陰性である、医薬。
【請求項2】
心毒性を増加させることなく、HER2陽性早期乳癌の患者における3年間の無浸潤疾患生存(IDFS)を、トラスツズマブ、及び非アントラサイクリンを含む化学療法と組み合わせて増加させるための、ペルツズマブを含む医薬であって、患者が、癌再発の高い危険性を有し、55%以上のベースライン左室駆出分画(LVEF)を有し、かつ事前に抗HER2療法を受けたことがなく、手術後に、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び非アントラサイクリンを含む化学療法が、前記患者に投与され、非アントラサイクリンを含む化学療法が、3週間毎、6サイクルの75mg/m
2のドセタキセル、及び6回の
用量で血中濃度時間曲線下面積(AUC
)(900mgの最大用量)のカルボプラチンを含み、ペルツズマブ及びトラスツズマブが、非アントラサイクリンを含む化学療法の初回のサイクルの1日目に開始してそれぞれ静脈内投与され、かつ合計52週間投与され、並びにペルツズマブの初回用量が840mgであり、420mgのペルツズマブが3週間毎に
これに続き、かつトラスツズマブの初回用量
が8mg/kgであり、6mg/kgのトラスツズマブが3週間毎に
これに続き、前記患者における初回投与からの前記3年間のIDFSが、ペルツズマブなしで、トラスツズマブ、及び非アントラサイクリンを含む化学療法を投与された患者と比較して上昇し、心毒性が、ベースラインから10ポイント以上のLVEFの低下及び50パーセント未満
へのLVEFの低下であり、かつ前記高い危険性を有する患者が、リンパ節転移陽性又はホルモン受容体陰性である、医薬。
【請求項3】
前記高い危険性を有する患者が、リンパ節転移陽性である、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
前記高い危険性を有する患者が、ホルモン受容体陰性である、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項5】
前記高い危険性を有する患者が、リンパ節転移陽性及びホルモン受容体陰性である、請求項1又は2に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式にて電子的に提出され、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含む。2018年2月5日に作成された上記ASCIIコピーは、P34141-WO_SL.txtという名称であり、33,918バイトのサイズである。
【0002】
本発明は、化学療法及びトラスツズマブに加えてペルツズマブを投与することによる、ヒト患者における手術可能なHER2陽性原発性乳癌の治療に関する。具体的には、本発明は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び化学療法のアジュバント投与による手術可能なHER2陽性早期乳癌(eBC)の治療に関する。
【0003】
それは、中にペルツズマブを有するバイアルと、HER2陽性早期乳癌を治療するための、トラスツズマブ及び化学療法と併せてペルツズマブのアジュバント投与に関する指示を提供する添付文書と、本明細書の方法で使用するための組成物とを含む製品にも関する。
【背景技術】
【0004】
受容体チロシンキナーゼのHERファミリーのメンバーは、細胞の成長、分化、及び生存の重要な媒介因子である。受容体ファミリーには、上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB1、またはHER1)、HER2(ErbB2またはp185neu)、HER3(ErbB3)、及びHER4(ErbB4またはtyro2)を含む4つの異なるメンバーが含まれる。受容体ファミリーのメンバーは、様々な種類のヒト悪性腫瘍に関与している。
【0005】
マウスの抗HER2抗体4D5(huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、トラスツズマブ、またはHERCEPTIN(登録商標)、米国特許第5,821,337号)の組み換えヒト化バージョンは、広範囲の以前に抗がん治療を受けたHER2過剰発現転移性乳癌を有する患者において臨床的に有効である(Baselga et al.,J.Clin.Oncol.14:737-744(1996))。
【0006】
トラスツズマブは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を有する患者の治療に関して、1998年9月25日に米国食品医薬品局から販売承認を受けた。現在、トラスツズマブは、転移性がん設定において単剤として、または化学療法もしくはホルモン療法と併せて使用すること、及び早期HER2陽性乳癌を有する患者に対して単剤として、またはアジュバント治療として化学療法と併せて使用するのに承認されている。トラスツズマブを基にした療法は、現在、その使用に対して禁忌症を有さないHER2陽性早期乳癌を有する患者に対する推奨治療である(Herceptin(登録商標)処方情報;NCCNガイドライン、バージョン2.2011)。トラスツズマブ+ドセタキセル(または、パクリタキセル)は、第1選択の転移性乳癌(MBC)治療設定において登録標準治療である(Slamon et al.N Engl J Med.2001;344(11):783-792.;Marty et al.J Clin Oncol.2005;23(19):4265-4274)。
【0007】
HER2発現を基にした療法に対して、HER2抗体トラスツズマブを用いて治療された患者が選択される。例えば、WO99/31140(Paton et al.)、US2003/0170234A1(Hellmann,S.)、及びUS2003/0147884(Paton et al.)、ならびにWO01/89566、US2002/0064785、及びUS2003/0134344(Mass et al.)を参照されたい。HER2過剰発現及び増幅を検出するための免疫組織化学(IHC)及び蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)に関する米国特許第6,573,043号、米国特許第6,905,830号、及びUS2003/0152987,Cohen et al.も参照されたい。したがって、転移性乳癌の最適な管理は、現在、患者の全体的な病態、既往歴、及び受容体の状態だけでなく、HER2の状態も考慮する。
【0008】
ペルツズマブ(組み換えヒト化モノクローナル抗体2C4(rhuMAb 2C4)、Genentech,Inc,South San Francisco)は、HER二量体化阻害剤(HDI)として知られる薬剤の新たなクラスの筆頭であり、HER2が他のHER受容体(例えば、EGFR/HER1、HER2、HER3、及びHER4)との活性ヘテロ二量体またはホモ二量体を形成する能力を阻害するように機能する。例えば、Harari and Yarden Oncogene 19:6102-14(2000)、Yarden and Sliwkowski.Nat Rev Mol Cell Biol 2:127-37(2001)、Sliwkowski Nat Struct Biol 10:158-9(2003)、Cho et al.Nature 421:756-60(2003)、及びMalik et al.Pro Am Soc Cancer Res 44:176-7(2003)を参照されたい。
【0009】
腫瘍細胞内のHER2-HER3ヘテロ二量体の形成がペルツズマブによって遮断されることで、重大な細胞シグナル伝達が阻害され、腫瘍の増殖及び生存の低減がもたらされることが実証された(Agus et al.Cancer Cell 2:127-37(2002))。
【0010】
第Ia相試験を以って進行がんを有する患者、ならびに第II相試験を以って卵巣癌及び乳癌、ならびに肺癌及び前立腺癌を有する患者において、医療機関でペルツズマブに関して単剤としての試験が行われた。第I相研究において、標準療法中またはその後に進行した、治療不能で局所的進行性の再発性または転移性固形腫瘍を有する患者を、3週間毎に静脈内にペルツズマブを付与することによって治療した。ペルツズマブは概して十分に忍容性があった。腫瘍後退は、奏効が評価可能な20名の患者のうち3名において達成された。2名の患者は、部分奏効を確認した。2.5ヶ月を超える継続した疾患の安定は、21名の患者のうち6名において観察された(Agus et al.Pro Am Soc Clin Oncol 22:192(2003))。2.0~15mg/kgの用量において、ペルツズマブの薬物動態は直線的であり、平均クリアランスは2.69~3.74mL/日/kgの範囲であり、平均消失半減期は15.3~27.6日の範囲であった。ペルツズマブに対する抗体は検出されなかった(Allison et al.Pro Am Soc Clin Oncol 22:197(2003))。
【0011】
US2006/0034842は、抗ErbB2抗体との組合せによるErbB発現癌を治療するための方法を記載している。US2008/0102069は、HER2陽性転移性癌、例えば、乳癌の治療におけるトラスツズマブ及びペルツズマブの使用を記載する。Baselga et al.,J Clin Oncol,2007 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I,Col.25,No.18S(June 20 Supplement),2007:1004は、トラスツズマブとペルツズマブとの組合せを伴うトラスツズマブを用いた治療中に進行した前治療済みHER2陽性乳癌を有する患者の治療を報告している。Portera et al.,J Clin Oncol,2007 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I.Vol.25,No.18S(June 20 Supplement),2007:1028は、トラスツズマブを基にした療法において疾患が進行したHER2陽性乳癌患者におけるトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法の効能及び安全性を評価した。著者は、本治療レジメンの全体的な危険性及び利益を定義するために、併用治療の効能のさらなる評価が必要であると結論づけた。
【0012】
ペルツズマブは、第II相研究において、転移性疾患のためにトラスツズマブを以前に受けたHER2陽性転移性乳癌を有する患者において、トラスツズマブと併せて評価された。国立がん研究所(NCI)によって行われたある研究は、以前に治療されたHER2陽性転移性乳癌を有する11名の患者を登録した。11名の患者のうちの2名は、部分奏功(PR)を示した(Baselga et al.,J Clin Oncol 2007 ASCO Annual Meeting Proceedings;25:18S(June 20 Supplement):1004)。
【0013】
2010年12月8~12日にCTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)で発表された早期HER2陽性乳癌を有する女性におけるペルツズマブ及びトラスツズマブ+化学療法(ドセタキセル)の新規の併用レジメンの効果を評価する第II相ネオアジュバント研究の結果は、手術前のネオアジュバント設定において付与された2つのHER2抗体+ドセタキセルが、乳房における完全腫瘍消失率(病理学的完全奏功率(pCR)45.8%)を、トラスツズマブ+ドセタキセル(pCR、29.0%)と比較して半数超で有意に改善したことを示した(p=0.014)。
【0014】
ペルツズマブ及びトラスツズマブ(CLEOPATRA)の第II相臨床研究の臨床評価は、局所的再発、切除不可能、または転移性HER2陽性乳癌を有する患者のための第1選択の治療として、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルの効能及び安全性を評定した。ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルの組合せは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、HER2陽性転移性乳癌に対する第1選択の治療として使用されるとき、心毒性作用を増加することなく、無増悪生存期間を著しく長期化した。(Baselga et al.,N Eng J Med 2012 366:2,109-119)。
【0015】
第II相臨床研究NeoSphereは、手術可能であり局所進行性で炎症性乳癌を有する治療未経験女性(以前にがん療法を一切受けたことのない患者)におけるペルツズマブ及びトラスツズマブのネオアジュバント投与の効能及び安全性を評定した。ペルツズマブ及びトラスツズマブ+ドセタキセルを付与された患者は、トラスツズマブ+ドセタキセルを付与された患者と比較して、有意に改善した病理学的完全奏功率を示し、忍容性においては実質的な相違はなかった(Gianni et al.,Lancet Oncol 2012 13(1):25-32)。5年間の追跡調査の結果は、Gianni et al.,Lancet Oncol 2016 17(6):791-800によって報告されている。
【0016】
アジュバント療法は、最も広範な意味で、放射線学的検査または臨床検査によっては検出され得なくとも、拡散しているであろう任意のがん細胞を殺滅させるための、一次療法に加えて付与される治療である。
【0017】
アジュバント療法に関連する刊行物またはセミナーには、Paik et al.,J.Natl.Cancer Inst.,92(24):1991-1998(2000)、Paik et al.,J.Natl.Cancer Inst.,94:852-854(2002)、Paik et al.Successful quality assurance program for HER2 testing in the NSABP Trial for Herceptin.San Antonio Breast Cancer Symposium,2002、Roche P C et al.,J.Natl.Cancer Inst.,94(11):855-7(2002)、Albain et al.,Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Thirty-Eighth Annual Meeting,May 18-21 2002,Orlando,Fla.,Abstract 143、The ATAC(Arimidex,Tamoxifen Alone or in Combination)Trialists’ Group,Lancet,359:2131-39(2002)、Geyer et al.,26th Annual San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS),December 2003,Abstract 12、Perez et al.,Proc.ASCO,2005,Abstract 556が含まれる。
【0018】
米国特許公開第2004/0014694号(2004年1月22日公開)は、ドセタキセル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミドの投与を含む、早期乳癌の治療のためのアジュバント療法の方法を記載している。
【0019】
HERCEPTIN(登録商標)の投与による乳癌のアジュバント治療は、米国特許第8,591,897号に開示されている。
【0020】
HER2抗体に関連する特許公開には、米国特許第5,677,171号、同第5,720,937号、同第5,720,954号、同第5,725,856号、同第5,770,195号、同第5,772,997号、同第6,165,464号、同第6,387,371号、同第6,399,063号、同第6,015,567号、同第6,333,169号、同第4,968,603号、同第5,821,337号、同第6,054,297号、同第6,407,213号、同第6,639,055号、同第6,719,971号、同第6,800,738号、同第5,648,237号、同第7,018,809号、同第6,267,958号、同第6,695,940号、同第6,821,515号、同第7,060,268号、同第7,682,609号、同第7,371,376号、同第6,127,526号、同第6,333,398号、同第6,797,814号、同第6,339,142号、同第6,417,335号、同第6,489,447号、同第7,074,404号、同第7,531,645号、同第7,846,441号、同第7,892,549号、同第6,573,043号、同第6,905,830号、同第7,129,840号、同第7,344,840号、同第7,468,252号、同第7,674,589号、同第6,949,245号、同第7,485,302号、同第7,498,030号、同第7,501,122号、同第7,537,931号、同第7,618,631号、同第7,862,817号、同第7,041,292号、同第6,627,196号、同第7,371,379号、同第6,632,979号、同第7,097,840号、同第7,575,748号、同第6,984,494号、同第7,279,287号、同第7,811,773号、同第7,993,834号、同第7,435,797号、同第7,850,966号、同第7,485,704号、同第7,807,799号、同第7,560,111号、同第7,879,325号、同第7,449,184号、同第7,700,299号、同第8,591,897号、ならびにUS2010/0016556、US2005/0244929、US2001/0014326、US2003/0202972、US2006/0099201、US2010/0158899、US2011/0236383、US2011/0033460、US2005/0063972、US2006/018739、US2009/0220492、US2003/0147884、US2004/0037823、US2005/0002928、US2007/0292419、US2008/0187533、US2003/0152987、US2005/0100944、US2006/0183150、US2008/0050748、US2010/0120053、US2005/0244417、US2007/0026001、US2008/0160026、US2008/0241146、US2005/0208043、US2005/0238640、US2006/0034842、US2006/0073143、US2006/0193854、US2006/0198843、US2011/0129464、US2007/0184055、US2007/0269429、US2008/0050373、US2006/0083739、US2009/0087432、US2006/0210561、US2002/0035736、US2002/0001587、US2008/0226659、US2002/0090662、US2006/0046270、US2008/0108096、US007/0166753、US2008/0112958、US2009/0239236、US2004/008204、US2009/0187007、US2004/0106161、US2011/0117096、US2004/048525、US2004/0258685、US2009/0148401、US2011/0117097、US2006/0034840、US2011/0064737、US2005/0276812、US2008/0171040、US2009/0202536、US2006/0013819、US2006/0018899、US2009/0285837、US2011/0117097、US2006/0088523、US2010/0015157、US2006/0121044、US2008/0317753、US2006/0165702、US2009/0081223、US2006/0188509、US2009/0155259、US2011/0165157、US2006/0204505、US2006/0212956、US2006/0275305、US2007/0009976、US2007/0020261、US2007/0037228、US2010/0112603、US2006/0067930、US2007/0224203、US2008/0038271、US2008/0050385、US2010/0285010、US2008/0102069、US2010/0008975、US2011/0027190、US2010/0298156、US2009/0098135、US2009/0148435、US2009/0202546、US2009/0226455、US2009/0317387、及びUS2011/0044977が含まれる。
【発明の概要】
【0021】
米国で年間およそ6000~8000件の死亡例、ヨーロッパで年間およそ12,000~15,000件の死亡例、及び世界中で年間およそ60,000~90,000件の死亡例(乳癌全体の死亡率に基づく)が推定されるHER2陽性乳癌を有する患者のための新たな有効治療が必要とされている(Levi et al.,Eur J Cancer Prev 2005;14:497-502、Estimates of worldwide burden of cancer in 2008:GLOBOCAN 2008.Int J Cancer 2010;127:2893-917、SEER cancer statistics review,1975-2008[Internet].Bethesda,MD.National Cancer Institute;November 2010[updated,2011]、Malvezzi et al.,Ann Oncol 2013;24:792-800)。HER2陽性乳癌を提示する患者の年齢の中央値は、50代半ばであり、これは、一般的な乳癌集団よりもおよそ5歳若い(Breast Cancer Res Treat 2008;110:153-9、Breast Cancer Res 2009;11:R31)。女性の推定生存年齢が>80歳において、患者1人あたりの生存年数の喪失年数の中央値は、およそ20年である。疾患が依然として乳房及び所属リンパ節に局所的であるときに初期治療の結果を改善することによって、疾患の治癒、ならびに疾患の再発及び治癒できない患者における死亡の遅延の可能性のチャンスがもたらされる。
【0022】
本発明は、手術可能なHER2陽性原発癌を有する患者におけるアジュバント療法としての化学療法+トラスツズマブに加えてペルツズマブの安全性及び効能を評定する、無作為化された二重盲検のプラセボ対照の2つのアームの第III相臨床研究(Adjuvant Pertuzumab and Herceptin IN Initial TherapY in Breast Cancer(APHINITY)、NCT01358877/BO25126)の結果の分析に少なくとも部分的に基づく。
【0023】
第1の態様において、本発明は、HER2陽性早期乳癌(eBC)と診断された患者の浸潤性乳癌の再発または死亡の危険性を低減する方法に関し、本方法は、手術後にトラスツズマブ及び化学療法と併せてペルツズマブを該患者に投与することを含み、ここで、浸潤性乳癌の再発または死亡の危険性が、ペルツズマブを伴わないトラスツズマブの投与及び化学療法と比較して低減される。
【0024】
一実施形態において、患者は、該投与後少なくとも1年間浸潤性乳癌を再発することなく生存し続ける。
【0025】
第2の態様において、本発明は、手術後に、HER2陽性早期乳癌(eBC)を有するヒト対象にトラスツズマブ及び化学療法と併せてペルツズマブを投与することを含み、ここで、該療法が、ペルツズマブを伴わないトラスツズマブの投与及び化学療法と比較して、投与後少なくとも1年間、該患者の浸潤性乳癌の再発または死亡の危険性を低減する。
【0026】
両方の態様において、及び様々な実施形態において、患者は、投与後少なくとも2年間、または少なくとも3年間、浸潤性乳癌を再発することなく生存し続け得る。
【0027】
一実施形態において、患者は、リンパ節転移陽性である。
【0028】
第2の実施形態において、患者は、ホルモン受容体(HR)陰性である。
【0029】
第3の実施形態において、浸潤性乳癌の再発または死亡の危険性は、ペルツズマブを伴わないトラスツズマブの投与及び化学療法と比較して、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、例えば、ペルツズマブを伴わないトラスツズマブの投与及び化学療法と比較して、少なくとも19%低減される。
【0030】
第4の実施形態において、HER2陽性癌は、IHC2+または3+のHER2発現レベルを特徴とする。
【0031】
第5の実施形態において、がんは、HER2増幅され、ここで、HER2増幅は、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)によって決定され得る。
【0032】
第6の実施形態において、がんは、HER2変異され、ここで、HER2変異は、例えば、HER2のエクソン20内の挿入、HER2のアミノ酸残基755~759前後の欠失、G309A、G309E、S310F、D769H、D769Y、V777L、P780-Y781insGSP、V8421I、R896C、及び2個以上の固有の検体が見出される他の推定上の活性化変異からなる群から選択され得る。
【0033】
ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブは、静脈内投与または皮下投与され得る。
【0034】
様々な実施形態において、ペルツズマブ及びトラスツズマブは、典型的には、3週間毎に投与される。
【0035】
1つの投与スケジュールに従って、ペルツズマブは、3週間毎のIVの付与で840mg、その後、420mgのIV負荷量として投与される。
【0036】
1つの投与スケジュールに従って、トラスツズマブは、3週間毎のIV点滴の付与で8mg/kg、その後、6mg/kgの静脈内(IV)負荷量として投与される。
【0037】
別の投与スケジュールに従って、ペルツズマブは、3週間毎に1200mg、その後、600mgの負荷量で皮下投与される。
【0038】
ペルツズマブ及びトラスツズマブは、2つの別個の皮下注入として同時皮下投与され得るか、または単一の皮下注入として同時混合され得るか、または皮下投与のための単一の共製剤として投与され得る。
【0039】
一実施形態において、ペルツズマブ及びトラスツズマブは、少なくとも52週間投与される。
【0040】
別の実施形態において、ペルツズマブ及びトラスツズマブの投与は、化学療法後に続く。
【0041】
化学療法は、アントラサイクリンを基にした化学療法を含み得るか、または非アントラサイクリンを基にした化学療法であり得る。
【0042】
一実施形態において、化学療法は、5-フルオロウラシル+エピルビシンまたはドキソルビシン+シクロホスファミドの投与を含み、任意に、タキサン、例えば、ドセタキセル及び/またはパクリタキセルの投与をさらに含む。
【0043】
第2の実施形態において、化学療法は、ドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミドの投与を含み、任意に、タキサン、例えば、ドセタキセル及び/またはパクリタキセルの投与をさらに含む。
【0044】
非アントラサイクリンを基にした化学療法は、例えば、ドセタキセル+カルボプラチンの投与を含み得る。
【0045】
別の態様において、本発明は、ペルツズマブを有するバイアルと、添付文書と、を含む製品に関し、ここで、添付文書は、本明細書に開示される該ペルツズマブを投与するための指示を提供する。
【0046】
さらに別の態様において、本発明は、ペルツズマブ及びトラスツズマブを有するバイアルと、添付文書と、を含む製品に関し、ここで、添付文書は、本明細書に開示される該ペルツズマブ及びトラスツズマブを投与するための指示を提供する。
【0047】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるHER2陽性早期乳癌(eBC)を有する患者の治療にトラスツズマブと併せて使用するためのペルツズマブの組成物に関する。
【0048】
またさらなる実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるHER2陽性早期乳癌(eBC)を有する患者のための薬品の調製における、ペルツズマブとトラスツズマブとの併用に関する。
【0049】
これらの及びさらなる態様及び実施形態は、本開示及び当該技術分野における一般的な知識に基づいて、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】HER2タンパク質構造及びその細胞外ドメインのドメインI~IVのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1~4)の概略図を提供する。
【
図2】
図2A及び2Bはマウスモノクローナル抗体2C4の可変軽鎖(V
L)(
図2A)及び可変重鎖(V
H)(
図2B)ドメインのアミノ酸配列(それぞれ配列番号5及び6)、バリアント574/ペルツズマブのV
L及びV
Hドメインのアミノ酸配列(それぞれ配列番号7及び8)、ならびにヒトV
L及びV
Hコンセンサスフレームワーク(hum κ1、軽鎖カッパサブグループI;humIII、重鎖サブグループIII)のアミノ酸配列(それぞれ配列番号9及び10)の整列を示す。星印は、ペルツズマブ及びマウスモノクローナル抗体2C4の可変ドメイン間またはペルツズマブ及びヒトフレームワークの可変ドメイン間の相違を特定する。相補性決定領域(CDR)は、かぎ括弧内にある。
【
図3】
図3A及び3Bはペルツズマブ軽鎖のアミノ酸配列(
図3A、配列番号11)及び重鎖のアミノ酸配列(
図3B、配列番号12)を示す。CDRは、太字で示される。軽鎖及び重鎖の計算された分子質量は、23,526.22Da及び49,216.56Da(低減された形態のシステイン)である。糖鎖部分は、重鎖のAsn299に結合する。
【
図4】
図4A及び4Bはトラスツズマブ軽鎖のアミノ酸配列(
図4A、配列番号13)及び重鎖のアミノ酸配列(
図4B、配列番号14)をそれぞれ示す。可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの境界は、矢印で示される。
【
図5】
図5A及び5Bはバリアントペルツズマブ軽鎖配列(
図5A、配列番号15)及びバリアントペルツズマブ重鎖配列(
図5B、配列番号16)をそれぞれ示す。
【
図6A】実施例1に記載されるような手術可能なHER2陽性早期乳癌(eBC)におけるアジュバントペルツズマブを基にした療法の効能を評価するAPHINITY臨床試験の概略図である。留意点:
aトラスツズマブ、6mg/kgをIVで3週間毎、ペルツズマブ、420mgをIVで3週間毎、
bタキサンを伴うアントラサイクリンを基にしたレジメン、またはカルボプラチンを伴うTaxotereのいずれか、
c1年(52週)間のHER2療法。略語:HER:ヒト上皮性成長因子受容体、IV:静脈内、3週間毎(q3 weeks):3週間毎(every 3 weeks)。
【
図6B】アントラサイクリンを基にした化学療法を使用する、APHINITY臨床試験の研究設計を示す。
【
図6C】非アントラサイクリンを基にした化学療法を使用する、APHINITY臨床試験の研究設計を示す。
【
図7A】実施例1に記載されるように、一次臨床エンドポイントとしての無浸潤疾患生存(iDFS)を使用して、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=2400)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=2404)を用いて治療された患者における効能結果をそれぞれ示す。
【
図7B】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=2400)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=2404)を用いて治療された患者における遠隔転移無再発期間(月単位)のカプランマイヤープロットをそれぞれ示す。
【
図8A】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=1503)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=1502)を用いて治療されたリンパ節転移陽性乳癌患者における効能結果(iDFS)をそれぞれ示す。
【
図8B】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=1503)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=1502)を用いて治療された乳癌患者のリンパ節転移陽性コーホートにおける治療レジメンによる第1のIDFS事象に対する時間(月単位)のカプランマイヤープロットをそれぞれ示す。
【
図8C】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=987)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=902)を用いて治療された乳癌患者のリンパ節転移陰性コーホートにおける治療レジメンによる第1のIDFS事象に対する時間(月単位)のカプランマイヤープロットをそれぞれ示す。
【
図9A】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=864)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=858)を用いて治療された中枢ホルモン受容体陰性乳癌患者における効能結果(iDFS)をそれぞれ示す。
【
図9B】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=864)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=858)を用いて治療された中枢ホルモン受容体陰性患者における治療レジメンによる第1のIDFS事象に対する時間(ヶ月)のカプランマイヤープロットをそれぞれ示す。
【
図9C】実施例1に記載されるように、ペルツズマブ+トラスツズマブ(n=1536)及びプラセボ+トラスツズマブ(n=1546)を用いて治療された中枢ホルモン受容体陽性患者における治療レジメンによる第1のIDFS事象に対する時間(月単位)のカプランマイヤープロットをそれぞれ示す。
【
図10】実施例1に記載されるように、ITT集団の、治療レジメン別の(ペルツズマブ(Ptz)+トラスツズマブ(H)+化学療法(n=2400)及びプラセボ(Pla)+トラスツズマブ+化学療法(n=2404)をそれぞれ用いて治療された患者)、打切り患者を示す、第1のIDFS事象に対する時間(月単位)のカプランマイヤープロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
I.定義
「化学療法」という用語は、本明細書で使用される場合、下記で定義されるような化学療法の適用を含む治療を指す。
【0052】
「生存」は、患者が生存していることを指し、全生存、ならびに無増悪生存を含む。
【0053】
「全生存」または「OS」は、患者が、診断または治療の時点から1年、5年等の定義された期間にわたって生存し続けていることを指す。実施例に記載される臨床試験の目的に関して、全生存(OS)は、患者集団の無作為化の日から任意の原因による死亡の日までの時間と定義される。
【0054】
「無増悪生存」または「PFS」は、がんの進行または悪化がなく患者が生存し続けていることを指す。実施例に記載される臨床試験の目的に関して、無増悪生存期間(PFS)は、研究集団の無作為化から、最初に記録された疾患の進行、または管理不能な毒性、または任意の原因による死亡のうち先に発生した事象までの時間と定義される。疾患の進行は、例えば、固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST)(Therasse et al.,J Natl Ca Inst 2000;92(3):205-216)によって決定されるようなレントゲン写真による疾患の進行、脳脊髄液の細胞学的評価によって診断される脳軟膜転移癌、及び/または皮下病巣の胸壁再発を監視するための医療用撮影等の任意の臨床的に許容される方法によって記録され得る。
【0055】
「無疾患生存」または「DFS」は、治療の開始から、または最初の診断から、例えば、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年の定義された期間にわたって、がんが再出現することなく患者が生存し続けていることを指す。本発明の基礎となる研究において、DFSは、ITT(治療意図)原則に従って分析され、すなわち、患者を割り付けた療法に基づいて評価した。DFSの分析において使用される事象には、典型的には、がんの局所的再発、局所再発、及び遠隔再発、二次がんの発生、先行事象(乳癌再発または第2の原発癌)のない患者の任意の原因による死亡が含まれる。
【0056】
「浸潤性無疾患生存期間」または「iDFS」は、本明細書で定義される場合、患者が、アジュバント治療後に任意の部位において浸潤性乳癌が再出現することがないか、または任意の原因によって死亡することなく生存する時間である。言い換えると、iDFSは、治療の開始から、または最初の診断から、例えば、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年の定義された期間、アジュバント治療後に浸潤性疾患が再出現することなく生存している(alive)(生存している(surviving))患者と定義される。一実施形態において、iDFSは、治療の開始から約1年、または約3年における。
【0057】
「延長生存」は、未治療の患者に対して及び/または1つ以上の承認済みの抗腫瘍剤を用いて治療されたが、本発明による治療を受けていない患者に対して、本発明に従って治療された患者において増加した全生存または無増悪生存を意味する。特定の例において、「延長生存」は、トラスツズマブ及び化学療法のみを用いて治療された患者に対して、本発明の併用療法(例えば、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び化学療法の併用治療)を受けたがん患者の延長した無増悪生存(PFS)及び/または全生存(OS)を意味する。別の特定の例において、「延長生存」は、ペルツズマブ及び化学療法のみを用いて治療された患者に対して、本発明の併用療法(例えば、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び化学療法の併用治療)を受けたがん患者の延長した無増悪生存(PFS)及び/または全生存(OS)を意味する。
【0058】
「客観的奏効」は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。
【0059】
「完全奏効」または「CR」によって、治療に応答したがんの全ての兆候の消滅が意図される。これは、必ずしもがんが治癒されたことを意味しない。
【0060】
「部分奏効」または「PR」は、治療に応答した、1つ以上の腫瘍もしくは病巣のサイズ、または身体内のがんの範囲の低下を指す。
【0061】
「HER受容体」は、HER受容体ファミリーに属し、EGFR、HER2、HER3、及びHER4受容体を含む受容体タンパク質チロシンキナーゼである。HER受容体は、一般に、HERリガンドと結合し、及び/または別のHER受容体分子と二量体化することができる細胞外ドメイン、親油性膜貫通ドメイン、保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン、及びリン酸化され得る複数のチロシン残基を有するカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含むであろう。HER受容体は、「天然配列の」HER受容体またはその「アミノ酸配列バリアント」であり得る。好ましくは、HER受容体は、天然配列のヒトHER受容体である。
【0062】
「ErbB2」及び「HER2」という表現は、本明細書において互換的に使用され、例えば、Semba et al.,PNAS(USA)82:6497-6501(1985)及びYamamoto et al.Nature 319:230-234(1986)に記載されているヒトHER2タンパク質を指す(Genebank受託番号X03363)。「erbB2」という用語は、ヒトErbB2をコードする遺伝子を指し、「neu」は、ラットp185neuをコードする遺伝子を指す。好ましいHER2は、天然配列ヒトHER2である。
【0063】
本明細書において、「HER2細胞外ドメイン」または「HER2 ECD」は、細胞膜に固定または循環しているかのいずれかである細胞の外側にあるHER2のドメインを指し、その断片を含む。HER2のアミノ酸配列は、
図1に示される。一実施形態において、HER2の細胞外ドメインは、4つのドメイン:「ドメインI」(約1~195のアミノ酸残基、配列番号1)、「ドメインII」(約196~319のアミノ酸残基、配列番号2)、「ドメインIII」(約320~488のアミノ酸残基:配列番号3)、及び「ドメインIV」(約489~630のアミノ酸残基、配列番号4)(シグナルペプチド無しの残基番号付け)を含み得る。Garrett et al.Mol.Cell.11:495-505(2003)、Cho et al.Nature 421:756-760(2003)、Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)、及びPlowman et al.Proc.Natl.Acad.Sci.90:1746-1750(1993)、ならびに本明細書の
図1を参照されたい。
【0064】
本明細書において、「HER3」または「ErbB3」は、例えば、米国特許第5,183,884号及び同第5,480,968号、ならびにKraus et al.PNAS(USA)86:9193-9197(1989)に開示されているような受容体を指す。
【0065】
「低HER3」癌は、がんの種類においてHER3発現の中央レベル未満のレベルでHER3を発現するがんである。一実施形態において、低HER3癌は、上皮性卵巣癌、腹膜癌、または卵管癌である。がんにおけるHER3 DNA、タンパク質、及び/またはmRNAレベルは、がんが低HER3癌であるかどうかを決定するために評価され得る。例えば、低HER3癌に関しての追加の情報に関して、米国特許第7,981,418号を参照されたい。任意に、HER3 mRNA発現アッセイは、がんが低HER3癌であることを決定するために行われる。一実施形態において、がんにおけるHER3 mRNAレベルは、例えば、定量逆転写PCR(qRT-PCR)等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して評価される。任意に、がんは、qRT-PCR、例えば、COBAS z480(登録商標)機器を使用して評定される場合、約2.81以下の濃度比でHER3を発現させる。
【0066】
「HER二量体」は、本明細書において、少なくとも2つのHER受容体を含む非共有結合的に会合された二量体である。かかる複合体は、2つ以上のHER受容体を発現する細胞がHERリガンドに曝露されるときに形成し得、免疫沈降によって単離され得、例えば、Sliwkowski et al.,J.Biol.Chem.,269(20):14661-14665(1994)に記載されているようなSDS-PAGEによって分析され得る。サイトカイン受容体サブユニット(例えば、gp130)等の他のタンパク質は、二量体と会合され得る。好ましくは、HER二量体は、HER2を含む。
【0067】
「HERヘテロ二量体」は、本明細書において、EGFR-HER2、HER2-HER3、またはHER2-HER4ヘテロ二量体等の少なくとも2つの異なるHER受容体を含む非共有結合的に会合されたヘテロ二量体である。
【0068】
「HER抗体」は、HER受容体に結合する抗体である。任意に、HER抗体は、HER活性化または機能をさらに妨害する。好ましくは、HER抗体は、HER2受容体に結合する。目的とするHER2抗体は、本明細書において、ペルツズマブ及びトラスツズマブである。
【0069】
「HER活性化」は、任意の1つ以上のHER受容体の活性化、またはリン酸化を指す。一般に、HER活性化は、(例えば、HER受容体または基質ポリペプチドにおけるチロシン残基をリン酸化するHER受容体の細胞内キナーゼドメインによって引き起こされる)シグナル伝達をもたらす。HER活性化は、目的とするHER受容体を含むHER二量体に結合するHERリガンドによって媒介され得る。HER二量体に結合するHERリガンドは、二量体におけるHER受容体のうちの1つ以上のキナーゼドメインを活性化し得、それによって、HER受容体のうちの1つ以上におけるチロシン残基のリン酸化、及び/またはAktもしくはMAPK細胞内キナーゼ等の追加の基質ポリペプチド(複数可)におけるチロシン残基のリン酸化をもたらす。
【0070】
「リン酸化」は、タンパク質、例えば、HER受容体またはその基質への1つ以上のリン酸基(複数可)の付加を指す。
【0071】
「HER二量体化を阻害する」抗体は、HER二量体の形成を阻害するか、または妨害する抗体である。好ましくは、かかる抗体は、そのヘテロ二量体結合部位でHER2に結合する。抗体を阻害する最も好ましい二量体化は、本明細書において、ペルツズマブまたはMAb 2C4である。HER二量体化を阻害する抗体の他の例には、EGFRに結合し、1つ以上の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体(例えば、活性化されているかまたは「結合されていない」EGFRに結合するEGFRモノクローナル抗体806、MAb806;Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004)を参照されたい)、HER3に結合し、1つ以上の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体、ならびにHER4に結合し、1つ以上の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体が含まれる。
【0072】
「HER2二量体化阻害剤」は、HER2を含む二量体またはヘテロ二量体の形成を阻害する薬剤である。
【0073】
HER2上の「ヘテロ二量体結合部位」は、それとの二量体が形成されるとEGFR、HER3、またはHER4の細胞外ドメイン内の領域と接触するかまたは接合するHER2の細胞外ドメイン内の領域を指す。領域は、HER2のドメインII内で見られる(配列番号15)。Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)。
【0074】
HER2の「ヘテロ二量体結合部位に結合する」HER2抗体は、ドメインII(配列番号2)内の残基に結合し、任意に、ドメインI及びIII、配列番号1及び3等のHER2細胞外ドメインの他のドメイン内の残基にも結合し、HER2-EGFR、HER2-HER3、またはHER2-HER4ヘテロ二量体の形成を少なくともある程度立体的に妨害し得る。Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)は、RCSBタンパク質構造データバンク(IDコードIS78)に寄託されるHER2-ペルツズマブの結晶構造を特徴付けており、HER2のヘテロ二量体結合部位に結合する例示的な抗体を例示している。
【0075】
HER2の「ドメインIIに結合する」抗体は、ドメインII(配列番号2)内の残基に結合し、任意に、ドメインI及びIII(それぞれ、配列番号1及び3)等のHER2の他のドメイン(複数可)内の残基に結合する。好ましくは、メインIIに結合する抗体は、HER2のドメインIとIIとIIIとの間の連結部に結合する。
【0076】
本明細書の目的に関して、互換的に使用される「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」は、それぞれ配列番号7及び8内の可変軽鎖及び可変重鎖アミノ酸配列を含む抗体を指す。ペルツズマブが、無傷抗体である場合、それは、好ましくは、IgG1抗体を含み、一実施形態において、配列番号11または15内の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号12または16内の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、任意に、組み換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」という用語は、本明細書において、米国一般名(USAN)または国際一般名(INN):ペルツズマブを有する薬物のバイオシミラーバージョンを網羅する。
【0077】
本明細書の目的に関して、互換的に使用される「トラスツズマブ」及び「rhuMAb 4D5」は、それぞれ配列番号13及び14内からの可変軽鎖及び可変重鎖アミノ酸配列を含む抗体を指す。トラスツズマブが、無傷抗体である場合、それは、好ましくは、IgG1抗体を含み、一実施形態において、配列番号13の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号14の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、任意に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。「トラスツズマブ」及び「rhuMAb 4D5」という用語は、本明細書において、米国一般名(USAN)または国際一般名(INN):トラスツズマブを有する薬物の後バイオシミラーバージョンを網羅する。
【0078】
「抗体」という用語は、本明細書において、最も広範な意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を網羅する。
【0079】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、齧歯類)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の能力をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むことになる。さらなる詳細に関して、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。ヒト化HER2抗体には、具体的には、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,821,337号の表3に記載され、かつ本明細書で定義されるようなトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、及び本明細書に記載及び定義されるようなヒト化2C4抗体、例えば、ペルツズマブが含まれる。
【0080】
「無傷抗体」は、本明細書において、領域及びFc領域に結合する2つの抗原を含む抗体である。好ましくは、無傷抗体は、機能Fc領域を有する。
【0081】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくは、その抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片(複数可)から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0082】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、他方の端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと位置が揃っており、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと位置が揃っている。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインでは残基24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインでは31~35(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、及び/または「超可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインでは残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインでは26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)、Chothia and LeskJ.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0084】
「Fc領域」という用語は、本明細書において、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去され得る。したがって、無傷抗体の組成物は、全K447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0085】
本明細書で別途示されない限り、本明細書において、免疫グロブリン重鎖内の残基の番号付けは、参照によって本明細書に明示的に組み込まれるKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)にあるようなEU指標の番号付けである。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0086】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方調節(例えば、B細胞受容体、BCR)等が含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)との結合を必要とし、例えば、本明細書に開示される様々なアッセイを使用して評定され得る。
【0087】
「天然配列Fc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2Fc領域、天然配列ヒトIgG3Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4Fc領域、ならびにそれらの天然に存在するバリアントが含まれる。
【0088】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。バリアントFc領域は、本明細書において、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親のポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくは、それらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくは、それらと少なくとも約95%の相同性を保有する。
【0089】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、無傷抗体には、異なる「クラス」が割り当てられ得る。無傷抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、Aサブクラス@(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分割され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成がよく知られている。
【0090】
「裸抗体」は、細胞毒性部分または放射標識等の異種分子にコンジュゲートされない抗体である。
【0091】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上の超可変領域内に1つ以上の変化を保有し、これらの変化が、これらの変化(複数可)を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を改善させるものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術分野において既知の手技によって産生される。Marks et al.Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載している。CDR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異生成は、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147-155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995)、及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)によって記載されている。
【0092】
「脱アミドされた」抗体は、その1つ以上のアスパラギン残基が、例えば、アスパラギン酸、サクシニミド、またはイソ-アスパラギン酸に誘導体化されている抗体である。
【0093】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、または説明する。
【0094】
「早期乳癌(early-stage breast cancer)」または「早期乳癌(early breast cancer)」または「eBC」は、本明細書で使用される場合、乳房または腋窩リンパ節を越えて拡散していない乳癌を指す。かかるがんは、一般に、ネオアジュバントまたはアジュバント療法を用いて治療される。
【0095】
「進行」がんは、元の部位または器官の外に、局所浸潤または転移のいずれかによって拡散したがんである。したがって、「進行」がんという用語は、「進行乳癌」等の局所的に進行した疾患及び転移性疾患の両方を含む。
【0096】
「不応性」癌は、化学療法等の抗腫瘍剤ががん患者に投与されているにもかかわらず進行するがんである。不応性癌の例は、白金不応性であるがんである。
【0097】
「再発」がんは、手術等の初期療法への応答後に、初期部位または遠隔部位のいずれかにおいて再成長したものである。
【0098】
「局所的再発」がんは、治療後に以前に治療されたがんと同じ場所で再出現するがんである。
【0099】
「切除不可能な(non-resectable)」または「切除不可能な(unresectable)」がんは、手術によって除去(切除)することができない。
【0100】
「アジュバント療法」または「アジュバント治療」または「アジュバント投与」は、手術後に付与される全身療法を指す。アジュバント治療は、残留疾患の証拠が検出され得ない根治手術後に付与されて、疾患再発の危険性を低減し得る。アジュバント療法の目標は、がんの再発を防止することであり、したがって、がん関連死の可能性を低減することである。
【0101】
「根治手術」は、腫瘍及び周辺組織、ならびに一切の罹患リンパ節の完全な除去を指す。かかる手術には、乳腺腫瘍摘出術、乳房切除術、例えば、全乳房切除術+腋窩切開、両乳房切除術等が含まれる。
【0102】
「リンパ節転移陽性」または「リンパ節転移陽性」乳癌は、所属リンパ節(通常、脇下のリンパ)に拡散した乳癌である。リンパ節転移陽性乳癌を有する対象には、本明細書において、1~3つの罹患リンパ節転移、4~9つの罹患リンパ節転移、及び10以上の罹患リンパ節転移を有する対象が含まれる。4つ以上の罹患リンパ節転移を有する対象は、罹患リンパ節転移がより少ないかまたは罹患リンパ節転移が無い対象よりも再発の危険性がより高い。
【0103】
「エストロゲン受容体(ER)陽性」癌は、ERの発現に関する試験で陽性であるがんである。対照的に、「ER陰性」癌の試験は、かかる発現に関して陰性である。ER状態の分析は、当技術分野において既知の任意の方法によって行われ得る。本明細書の研究の目的に関して、ER陽性腫瘍は、デキストランチャコールもしくはスクロース密度勾配法による≧10fmol/mgのサイトゾルタンパク質、または(個別の研究室基準を使用する)酵素免疫アッセイ(EIA)法による、もしくは免疫細胞化学アッセイによる陽性と定義される。
【0104】
「がんの再発」は、本明細書において、治療後のがんの再出現を指し、乳房におけるがんの再出現、ならびにがんが乳房以外に再出現する場合の遠隔再発が含まれる。
【0105】
「がんの再発の危険性が高い」対象は、がんの再発を経験する可能性がより高い対象、例えば、比較的若年の対象(例えば、約50歳未満)、陽性リンパ節、特に4つ以上の罹患リンパ節(4~9つの罹患リンパ節、及び10以上の罹患リンパ節を含む)を有する対象、直径2cmを超える腫瘍を有する対象、HER2陽性乳癌を有する対象、及びホルモン受容体陰性乳癌(すなわち、エストロゲン受容体(ER)陰性及びプロゲステロン受容体(PR)陰性)を有する対象である。対象の危険レベルは、熟練の医師によって決定され得る。一般に、かかる危険性が高い対象は、リンパ節の罹患(例えば、4つ以上の罹患リンパ節)を有するが、例えば、腫瘍が2cm以上である場合、リンパ節の罹患が無い対象もまた危険性が高い。
【0106】
「プロゲステロン受容体(PR)陽性」癌は、PRの発現に関する試験で陽性であるがんである。対照的に、「PR陰性」癌の試験は、かかる発現に関して陰性である。PR状態の分析は、当技術分野において既知の任意の方法によって行われ得る。本明細書の研究の目的に関して、許容可能な方法は、デキストランチャコールもしくはスクロース密度勾配法、酵素免疫アッセイ(EIA)技法、または免疫細胞化学アッセイが含まれる。
【0107】
「ネオアジュバント療法」または「ネオアジュバント治療」または「ネオアジュバント投与」は、手術前に付与される全身療法を指す。
【0108】
本明細書において、「治療の開始」は、腫瘍の手術除去後の治療レジメンの始まりを指す。一実施形態において、かかる治療の開始は、手術後のACの投与を指し得る。あるいは、これは、HER2抗体及び/または化学療法剤の最初の投与を指し得る。
【0109】
HER2抗体及び化学療法剤の「最初の投与」は、治療スケジュールの一部としてのHER2抗体または化学療法剤の1回目の用量を意味する。
【0110】
がんを「治癒すること」は、本明細書において、アジュバント療法の開始後、約4年または約5年のがんの再発の不在を意味する。
【0111】
「転移性」がんは、身体の一部(例えば、乳房)から身体の別の場所に拡散したがんを指す。
【0112】
本明細書において、「患者」または「対象」は、ヒト患者である。患者は「がん患者」、すなわち、がん、特に乳癌の1つ以上の症状を罹患しているか、または罹患する危険性がある者であり得る。
【0113】
「患者集団」は、がん患者の群を指す。かかる集団は、薬物、例えば、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブの統計的に有意な効能及び/または安全性を実証するために使用され得る。
【0114】
「再発」患者は、寛解後にがんの兆候または症状を有する者である。任意に、患者は、アジュバントまたはネオアジュバント療法後に再発した。
【0115】
「HER発現、増幅、または活性化を示す」がん、または生体試料は、診断試験において、HER受容体を発現し(過剰発現を含む)、HER遺伝子を増幅し、及び/またはさもなければHER受容体の活性化もしくはリン酸化を実証するものである。
【0116】
「HER活性化を示す」がん、または生体試料は、診断試験において、HER受容体の活性化またはリン酸化を実証するものである。かかる活性化は、(例えば、ELISAによってHERリン酸化を測定することによって)直接または(例えば、本明細書に記載されるような、遺伝子発現プロファイリングによって、またはHERヘテロ二量体を検出することによって)間接的に決定され得る。
【0117】
「HER受容体過剰発現または増幅」を伴うがん細胞は、同じ組織型の非がん性細胞と比較して、著しく高いレベルのHER受容体タンパク質または遺伝子を有するものである。かかる過剰発現は、遺伝子の増幅、または転写もしくは翻訳の増加によって引き起こされ得る。HER受容体過剰発現または増幅は、(例えば、免疫組織化学アッセイ、IHCを介して)細胞の表面に存在する増加したHERタンパク質のレベルを評価することによって、診断または予後アッセイで決定され得る。あるいは、または加えて、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH、1998年10月に公開されたWO98/45479を参照されたい)及び発色性インサイツハイブリダイゼーション法(CISH、例えば、Tanner et al.,Am.J.Pathol.157(5):1467-1472(2000)、Bella et al.,J.Clin.Oncol.26:(5月20日増刊、abstr 22147)(2008)を参照されたい)を含むインサイツハイブリダイゼーション法(ISH)、サザンブロット法、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法、例えば、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を介して細胞内のHERコード核酸のレベルを測定することができる。また、血清等の生物流体中の脱落抗原(例えば、HER細胞外ドメイン)を測定することによって、HER受容体過剰発現または増幅を研究することもできる(例えば、1990年6月12日に発行された米国特許第4,933,294号、1991年4月18日に公開されたWO91/05264、1995年3月28日に発行された米国特許第5,401,638号、及びSias et al.J.Immunol.Methods132:73-80(1990)を参照されたい)。上記のアッセイの他に、様々なインビボアッセイが当業者には利用可能である。例えば、患者の体内の細胞を検出可能標識、例えば、放射性同位体で任意に標識化される抗体に曝露することができ、患者における細胞への抗体の結合は、例えば、放射能のための外部スキャンによって、または以前に抗体に曝露した患者から採取した生検を分析することよって評価され得る。
【0118】
「HER2陽性」癌は、HER2陽性乳癌等の正常レベルよりも高いHER2を有するがん細胞を含む。任意に、HER2陽性癌は、2+もしくは3+の免疫組織化学(IHC)スコア、及び/または≧2.0のインサイツハイブリダイゼーション(ISH)増幅率を有する。
【0119】
本明細書において、「抗腫瘍剤」は、がんを治療するために使用される薬物を指す。抗腫瘍剤の非限定的な例には、本明細書において、化学療法剤、HER二量体化阻害剤、HER抗体、腫瘍関連抗原に対して指向される抗体、抗ホルモン化合物、サイトカイン、EGFR標的薬物、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、成長阻害剤及び抗体、細胞毒性剤、アポトーシスを誘導する抗体、COX阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、がん胎児性タンパク質CA125に結合する抗体、HER2ワクチン、Rafまたはras阻害剤、リポソームドキソルビシン、トポテカン、タキサン、二重チロシンキナーゼ阻害剤、TLK286、EMD-7200、ペルツズマブ、トラスツズマブ、エルロチニブ、ならびにベバシズマブが含まれる。
【0120】
「エピトープ2C4」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。2C4エピトープに本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイが行われ得る。好ましくは、抗体は、HER2への2C4の結合を約50%以上遮断する。あるいは、エピトープマッピングを行って、抗体がHER2の2C4エピトープに本質的に結合するかどうかを評価することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメイン内のドメインII(配列番号2)からの残基を含む。2C4及びペルツズマブは、ドメインI、II、及びIII(それぞれ、配列番号1、2、及び3)の連結部でHER2の細胞外ドメインに結合するFranklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)。
【0121】
「エピトープ4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)及びトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインの近くにあり、HER2のドメインIV(配列番号4)内にある。4D5エピトープに本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイが行われ得る。あるいは、エピトープマッピングは、抗体がHER2の4D5エピトープに本質的に結合するかどうかを評定するために行われ得る(例えば、HER2 ECDを含む約残基529~約残基625に由来する領域内のいずれか1つ以上の残基、シグナルペプチドを含む残基番号付け)。
【0122】
「治療」は、治療的処置及び予防的もしくは予防性手段の両方を指す。治療を必要とする者には、がんを既に有する者、ならびにがんが予防されるべき者が含まれる。したがって、治療されるべき患者は、本明細書において、がんを有すると診断されている可能性があるか、またはがんに罹りやすいか、もしくはがんを患いやすい可能性がある。
【0123】
「有効量」という用語は、患者においてがんを治療するのに有効性のある薬物の量を指す。有効量の薬物によって、がん細胞の数が低減され、腫瘍サイズが低減され、がん細胞の周辺器官への浸潤が阻害され(すなわち、ある程度減速され、好ましくは停止される)、腫瘍の転移が阻害され(すなわち、ある程度減速され、好ましくは停止される)、腫瘍の成長がある程度阻害され、及び/またはがんと関連付けられる症状のうちの1つ以上がある程度緩和され得る。薬物が既存のがん細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。有効量によって、無増悪生存期間が延長され(例えば、固形腫瘍の奏功評価基準(RECIST)またはCA-125変化によって測定される)、客観的奏功がもたらされ(部分奏功(PR)または完全奏功(CR)を含む)、全生存期間が上昇し、及び/またはがんの1つ以上の症状が改善される(例えば、FOSIによって評定される)。
【0124】
「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/またはバリアントを含む)等の毒素が含まれることが意図される。
【0125】
「化学療法」は、がんの治療に有用な化学化合物の使用である。化学療法で使用される化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のアルキルスルホネート;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;TLK 286(TELCYTA(商標));アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドハイドロクロライド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等の窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン等のニトロスレア;クロドロネート等のビスホスホネート;抗生物質、例えば、エネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1(例えば、Agnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい))、ならびにアントラサイクリン、例えば、アナマイシン、AD32、アクラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、デクスラゾキサン、DX-52-1、エピルビシン、GPX-100、イダルビシン、バルルビシン、KRN5500、メノガリル、ダイネミシンAを含むダイネミシン、エスペラマイシン、ネオカルチノスタチン発光団及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エソルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロキシウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸(ロイコボリン);アセグラトン;抗葉酸抗腫瘍剤、例えば、ALIMTA(登録商標)、LY231514ペメトレキセド、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、例えば、メトトレキサート、代謝拮抗薬、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)及びその前駆薬物、例えば、UFT、S-1、及びカペシタビン、ならびにチミジル酸シンターゼ阻害剤、ならびにグリシンアミドリボヌクレオチドフォルミルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ラルチトレキセド(TOMUDEX(商標)、TDX);ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼの阻害剤、例えば、エニルウラシル;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド、例えば、マイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK7多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン;クロラムブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金;白金類似体または白金系類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));ビンカアルカロイド;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルヒロルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;上記のいずれかの薬学上許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組合せ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略語)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと併せたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を伴う治療レジメンの略語)が含まれる。
【0126】
この定義には、腫瘍におけるホルモン作用を調節または阻害する役割を果たす抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;アロマターゼ阻害剤;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮成長因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えば、遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに上記のいずれかの薬学上許容される塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0127】
「タキサン」は、有糸分裂を阻害し、微小管を妨害する化学療法剤である。タキサンの例には、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルまたはナブパクリタキセルのクレモフォール不含アルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標)、American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)が含まれる。
【0128】
「アントラサイクリン」は、真菌Streptococcus peucetius由来の抗生物質の種類であり、この例には、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及び前に列挙されるものを含む任意の他のアントラサイクリン化学療法剤が含まれる。
【0129】
「アントラサイクリンを基にした化学療法」は、1つ以上のアントラサイクリンからなるか、またはそれを含む化学療法レジメンを指す。例には、5-FU、エピルビシン、及びシクロホスファミド(FEC);5-FU、ドキソルビシン、及びシクロホスファミド(FAC);ドキソルビシン及びシクロホスファミド(AC);エピルビシン及びシクロホスファミド(EC);投与集中型ドキソルビシン及びシクロホスファミド(ddAC)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書の目的に関して、「カルボプラチンを基にした化学療法」は、1つ以上のカルボプラチンからなるか、またはそれを含む化学療法レジメンを指す。一例は、TCH(ドセタキセル/TAXOL(登録商標)、カルボプラチン、及びトラスツズマブ/HERCEPTIN(登録商標))である。
【0131】
「アロマターゼ阻害剤」は、副腎においてエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害する。アロマターゼ阻害剤の例には、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エクセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが含まれる。一実施形態において、アロマターゼ阻害剤は、本明細書において、レトロゾールまたはアナストロゾールである。
【0132】
「代謝拮抗薬化学療法」は、代謝産物と構造的に類似しているが、身体が生成に使用することができない薬剤の使用である。多くの代謝拮抗薬化学療法は、核酸、RNA、及びDNAの産生を妨害する。代謝拮抗薬化学療法剤の例には、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(XELODA(商標))、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、6-チオグアニン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アラビノシルシトシンARA-Cシタラビン(CYTOSAR-U(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-DOME(登録商標))、アゾシトシン、デオキシシトシン、ピリドミデン(pyridmidene)、フルダラビン(FLUDARA(登録商標))、クラドリビン、2-デオキシ-D-グルコース等が含まれる。
【0133】
「化学療法抵抗性」がんは、がん患者が、化学療法レジメンを受けている間に進行していること(すなわち、患者が「化学療法不応性」であること)、または患者が、化学療法レジメンの完了後12カ月以内に(例えば、6カ月以内に)進行していることを意味する。
【0134】
「プラチン」という用語は、本明細書において、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含むが、これらに限定されない白金系化学療法剤を指すのに使用される。
【0135】
「フルオロピリミジン」という用語は、本明細書において、カペシタビン、フロキシウリジン、及びフルオロウラシル(5-FU)を含むが、これらに限定されない代謝拮抗薬化学療法剤を指すのに使用される。
【0136】
本発明において、「化学療法」は、標準治療のアントラサイクリンを基にした化学療法及び非アントラサイクリンを基にした化学療法を含む、浸潤性乳癌の治療に使用される任意の化学療法を指すのに使用される。一実施形態において、化学療法は、5-フルオロウラシル+エピルビシンまたはドキソルビシン+シクロホスファミドの投与を含み、任意に、タキサン、例えば、ドセタキセル及び/またはパクリタキセルの投与をさらに含む。別の実施形態において、化学療法は、ドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミドの投与を含み、任意に、タキサン、例えば、ドセタキセル及び/またはパクリタキセルの投与をさらに含む。非アントラサイクリンを基にした化学療法は、例えば、ドセタキセル+カルボプラチンの投与を含み得る。
【0137】
療法剤の「固定」または「一定」用量は、本明細書において、患者の体重(WT)または体表面積(BSA)に関係なくヒト患者に投与される用量を指す。したがって、この固定用量または一定用量は、mg/kg用量またはmg/m2用量としてではなく、むしろ療法剤の絶対量として提供される。
【0138】
本明細書において、「負荷」用量は、一般に、患者に投与される療法剤の初期用量を含み、1つ以上のその維持用量(複数可)が続く。一般に、単一負荷量が投与されるが、複数の負荷量が本明細書で企図される。通常、投与される負荷量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を超過し、及び/または負荷量(複数可)は、療法剤の所望の定常状態における濃度を、維持用量(複数可)を用いて達成することができるものよりも早く達成するように、維持用量(複数可)よりも頻繁に投与される。
【0139】
「維持」用量は、本明細書において、治療期間にわたって患者に投与される療法剤の1つ以上の用量を指す。通常、維持用量は、ほぼ毎週、およそ2週間毎、およそ3週間毎、またはおよそ約4週間毎の治療間隔で投与されるが、3週間毎等の治療間隔で投与されることが好ましい。
【0140】
「静脈内」投与は、薬物(例えば、トラスツズマブ及び/またはペルツズマブ及び/または化学療法)を患者の静脈に、例えば、点滴(静脈へのゆっくりとした療法的導入)によって投与することを指す。
【0141】
「皮下」投与は、薬物(例えば、トラスツズマブ及び/またはペルツズマブ及び/または化学療法)を患者の皮膚の下に投与することを指す。
【0142】
「点滴」または「点滴する」は、療法を目的として、静脈を通して体内に薬物含有溶液を導入することを指す。一般に、これは、静注(IV)バッグを介して達成される。
【0143】
「静注バッグ」または「IVバッグ」は、患者の静脈を介して投与され得る溶液を保持することができるバッグである。一実施形態において、溶液は、生理食塩液である(例えば、約0.9%または約0.45%NaCl)。任意に、IVバッグは、ポリオレフィンまたはポリ塩化ビニルから形成される。
【0144】
「共投与」は、2つ以上の薬物の連続点滴ではなく、同じ投与中に2つ(以上)の薬物を静脈内投与することを意味する。一般に、これは、2つ(以上)の薬物を、その共投与前に同じIVバッグ内で合わせることを伴う。
【0145】
「心毒性」は、薬物または複合薬の投与によって生じる任意の毒性副作用を指す。心毒性は、症候性左室収縮機能不全(LVSD)もしくはうっ血性心不全(CHF)の発生率、または左室駆出率(LVEF)の低下のうちのいずれか1つ以上に基づいて評価され得る。
【0146】
ペルツズマブを含む複合薬に関する「心毒性を増加することなく」という表現は、心毒性の発生率が、複合薬中のペルツズマブ以外の薬物を用いて治療された患者において観察される心毒性の発生率以下である(例えば、トラスツズマブ及び化学療法、例えば、ドセタキセルの投与によって生じる心毒性の発生率以下である)ことを指す。
【0147】
「バイアル」は、液体または凍結乾燥調製物を収容するのに好適な容器である。一実施形態において、バイアルは、単回使用バイアル、例えば、栓付きの20cc単回使用バイアルである。
【0148】
「添付文書」は、米国食品医薬品局(FDA)または他の規制当局の命令によって、あらゆる処方薬のパッケージ内に入れなければならないリーフレットである。リーフレットは、一般に、薬物の商標、その一般名、及びその作用機序を含み、その適応症、禁忌、警告、使用上の注意、有害作用、及び剤形を記載し、投与の推奨用量、投与時間、及び投与経路に関する指示を含む。
【0149】
「安全性データ」という表現は、薬物に対する有害反応を監視及び防止する方法に関しての指導を含む、薬物の安全性に関して使用者を指導するための、有害事象の出現率及び重症度が示す、対照臨床試験で得られるデータに関する。本明細書の表3及び表4は、ペルツズマブに関する安全性データを提供する。安全性データは、表3及び4において最も一般的な有害事象(AE)または有害反応(ADR)のうちのいずれか1つ以上(例えば、2、3、4つ以上)を含む。例えば、安全性データは、本明細書に開示される好中球減少症、発熱性好中球減少症、下痢、及び/または心毒性に関する情報を含む。
【0150】
「有効性データ」は、薬物が疾患、例えば、がんを効果的に治療すること示す、対照臨床試験で得られるデータを指す。
【0151】
「安定な混合物」は、2つ以上の薬物、例えば、ペルツズマブとトラスツズマブとの混合物を指すとき、混合物中の薬物の各々が、1つ以上の分析アッセイによって評価された場合に、混合物中でその物理的及び化学的安定性を本質的に保持していることを意味する。この目的のための例示的な分析アッセイには、色、外観及び透明度(CAC)、濃度及び濁度分析、粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)、ならびに効力アッセイが含まれる。一実施形態において、混合物は、5℃または30℃で最長24時間にわたって安定することが示されている。
【0152】
1つ以上の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同じ治療周期中に、1つ以上の他の薬物と同じ治療日に、及び任意に、1つ以上の他の薬物と同じ時間に投与される。例えば、3週間毎に付与されるがん療法の場合には、同時に投与される薬物は各々、3週間周期の1日目に投与される。
【0153】
II.抗体及び化学療法剤組成物
抗体の産生に使用されるHER2抗原は、例えば、所望のエピトープを含有する、HER2受容体の細胞外ドメインまたはその一部分の溶解形態であり得る。あるいは、細胞表面でHER2を発現する細胞(例えば、HER2を過剰発現するように形質転換されたNIH-3T3細胞、またはSK-BR-3細胞等のがん細胞株、Stancovski et al.PNAS(USA)88:8691-8695(1991)を参照されたい)が抗体の生成に使用され得る。抗体を生成するための有用なHER2受容体の他の形態は、当業者に明らかになるであろう。
【0154】
本明細書のモノクローナル抗体を作製するための様々な方法は、当技術分野で利用可能である。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ法を使用して、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。
【0155】
本発明に従って使用される抗HER2抗体、トラスツズマブ及びペルツズマブは、市販されている。
【0156】
(i)ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において記載されている。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「移入」可変ドメインに由来する「移入」残基を指すことが多い。ヒト化は、本質的には、Winter及び共同研究者らの方法(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988)、Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988))に従って、ヒト抗体の対応する配列の超可変領域配列を置換することによって行われ得る。したがって、かかる「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここで、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基、かつ可能性としてはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0157】
ヒト化抗体を作製するのに使用される軽鎖及び重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリに対してスクリーニングされる。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として許容される(Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークは、複数の異なるヒト化抗体に使用され得る(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993))。
【0158】
抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持しながら抗体をヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従って、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用する、親配列及び様々な概念的ヒト化生成物の分析のプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用可能であり、当業者はそれらに精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を例示及び示すコンピュータープログラムが利用可能である。これらのディスプレイの精査によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割を分析でき、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原と結合する能力に影響を与える残基の分析が可能になる。このように、標的抗原(複数可)に対する増加された親和性等の所望の抗体特性が達成されるように、FR残基がレシピエント及び移入配列から選択され、組み合わされ得る。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接的に、かつ最も実質的に関与している。
【0159】
米国特許第6,949,245号は、HER2を結合し、HER受容体のリガンド活性化を遮断する例示的なヒト化HER2抗体の産生を記載している。
【0160】
ヒト化HER2抗体には、具体的には、参照によって本明細書中に明示的に組み込まれる米国特許第5,821,337号の表3に記載され、かつ本明細書中で定義されるようなトラスツズマブ、ならびに本明細書に記載及び定義されるようなヒト化2C4抗体、例えば、ペルツズマブが含まれる。
【0161】
本明細書において、ヒト化抗体は、例えば、ヒト可変重鎖ドメインに組み込まれた非ヒト超可変領域残基を含み得、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されている可変ドメイン番号付けシステムを利用して、69H、71H、及び73Hからなる群から選択される位置にフレームワーク領域(FR)置換をさらに含み得る。一実施形態において、ヒト化抗体は、69H、71H、及び73H位のうちの2つまたは全てでFR置換を含む。
【0162】
目的とする例示的なヒト化抗体は、本明細書において、可変重鎖ドメイン相補性決定残基GFTFTDYTMX(配列番号17)(式中、Xは、好ましくはDまたはSである)、DVNPNSGGSIYNQRFKG(配列番号18)、及び/またはNLGPSFYFDY(配列番号19)を含み、任意に、例えば、修飾が抗体の親和性を本質的に維持または改善する、それらのCDR残基のアミノ酸修飾を含む。例えば、本発明の方法に使用するための抗体バリアントは、上記の可変重鎖CDR配列中に約1個~約7個または約5個のアミノ酸置換を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、後述されるように、親和性成熟によって調製され得る。
【0163】
ヒト化抗体は、例えば、直前のパラグラフのそれらの可変重鎖ドメインCDR残基に加えて、可変軽鎖ドメイン相補性決定残基KASQDVSIGVA(配列番号20)、SASYX1X2X3(式中、X1は好ましくはRまたはLであり、X2は好ましくはYまたはEであり、X3は好ましくはTまたはSである)(配列番号21);及び/またはQQYYIYPYT(配列番号22)を含み得る。かかるヒト化抗体は、任意に、例えば、修飾が抗体の親和性を本質的に維持または改善する場合、上記のCDR残基のアミノ酸修飾を含む。例えば、目的とする抗体バリアントは、上記の可変軽鎖CDR配列中に約1個~約7個または約5個のアミノ酸置換を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、後述されるように、親和性成熟によって調製され得る。
【0164】
本出願はまた、HER2と結合する親和性成熟抗体も企図する。親抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体、例えば、それぞれ配列番号7及び8の可変軽鎖配列及び/または可変重鎖配列を含む(すなわち、ペルツズマブのVL及び/またはVHを含む)ものであり得る。ペルツズマブの親和性成熟バリアントは、好ましくは、マウス2C4またはペルツズマブの親和性よりも優れた親和性(例えば、HER2-細胞外ドメイン(ECD)ELISAを使用して評定される場合に、約2倍または約4倍~約100約倍または約1000倍改善された親和性)を有するHER2受容体に結合する。置換のための例示的な可変重鎖CDR残基には、H28、H30、H34、H35、H64、H96、H99、または2つ以上(例えば、これらの残基の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ)の組合せが含まれる。変化のための可変軽鎖CDR残基の例には、L28、L50、L53、L56、L91、L92、L93、L94、L96、L97、または2つ以上(例えば、これらの残基の2つから3つ、4つ、5つ、または約10まで)の組合せが含まれる。
【0165】
トラスツズマブを含むそのヒト化バリアントを生成するためのマウス4D5抗体のヒト化は、米国特許第5,821,337号、同第6,054,297号、同第6,407,213号、同第6,639,055号、同第6,719,971号、及び同第6,800,738号、ならびにCarter et al.PNAS(USA),89:4285-4289(1992)に記載されている。HuMAb4D5-8(トラスツズマブ)は、HER2抗原と、マウス4D5抗体より3倍強固に結合し、ヒトエフェクター細胞の存在下においてヒト化抗体の指向性細胞毒性活性を可能にする二次的な免疫機能(ADCC)を有した。HuMAb4D5-8は、VLκサブグループIコンセンサスフレームワークに組み込まれた可変軽鎖(VL)CDR残基、及びVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークに組み込まれた可変重鎖(VH)CDR残基を含んでいた。抗体は、VHの71、73、78、及び93位(FR残基のKabat番号付け)にフレームワーク領域(FR)置換、及びVLの66位(FR残基のKabat番号付け)にFR置換をさらに含んでいた。トラスツズマブは、非Aアロタイプヒトγ1Fc領域を含む。
【0166】
ヒト化抗体または親和性成熟抗体の様々な形態が企図される。例えば、ヒト化抗体または親和性成熟抗体は、抗体断片であり得る。あるいは、ヒト化抗体または親和性成熟抗体は、無傷IgG1抗体等の無傷抗体であり得る。
【0167】
(ii)ペルツズマブ組成物
HER2抗体組成物の一実施形態において、組成物は、主要種ペルツズマブ抗体とその1つ以上のバリアントとの混合物を含む。本明細書において、ペルツズマブ主要種抗体の好ましい実施形態は、配列番号5及び6の可変軽鎖アミノ酸配列及び可変重鎖アミノ酸配列を含むものであり、最も好ましくは、配列番号11の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号12の重鎖アミノ酸配列を含むものである(これらの配列の脱アミド化及び/または酸化バリアントを含む)。一実施形態において、組成物は、主要種ペルツズマブ抗体とアミノ末端リーダー伸張を含むそのアミノ酸配列バリアントとの混合物を含む。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、抗体バリアントの軽鎖上(例えば、抗体バリアントの1つまたは2つの軽鎖上)にある。主要種HER2抗体または抗体バリアントは、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab=)2断片のFab)であり得るが、好ましくは両方とも全長抗体である。抗体バリアントは、本明細書において、その重鎖または軽鎖のうちのいずれか1つ以上にアミノ末端リーダー伸張を含み得る。好ましくは、アミノ末端リーダー伸長は、抗体の1つまたは2つの軽鎖上にある。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、VHS-を含むかまたはそれからなる。組成物中のアミノ末端リーダー伸張の存在は、N末端配列分析、電荷異質性に関するアッセイ(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーまたはキャピラリーゾーン電気泳動)、質量分析法を含むが、これらに限定されない様々な分析技法によって検出され得る。組成物中の抗体バリアントの量は、一般に、バリアントを検出するために使用される任意のアッセイ(好ましくは、N末端配列分析)の検出限界を構成する量から、主要種抗体の量未満の量までの範囲である。一般に、組成物中の抗体分子の約20%以下(例えば、約1%~約15%、例えば、5%~約15%)が、アミノ末端リーダー伸張を含む。かかるパーセンテージ量は、好ましくは、定量的N末端配列分析または陽イオン交換分析を使用して(好ましくは、高分解能弱陽イオン交換カラム、例えば、PROPAC WCX-10(商標)陽イオン交換カラムを使用して)決定される。アミノ末端リーダー伸張バリアントの他に、その重鎖の一方または両方にC末端リジン残基を含む抗体、脱アミド化抗体バリアント等を含むが、これらに限定されない主要種抗体及び/またはバリアントのさらなるアミノ酸配列変化が企図される。
【0168】
さらに、主要種抗体またはバリアントは、グリコシル化変形をさらに含み得、その非限定的な例には、そのFc領域に結合したG1もしくはG2オリゴ糖構造を含む抗体、その軽鎖に結合した糖鎖部分を含む抗体(例えば、抗体の1つまたは2つの軽鎖に結合した、例えば、1つ以上のリジン残基に結合した、1つまたは2つの糖鎖部分、例えば、グルコースまたはガラクトース)、1つもしくは2つの非グリコシル化重鎖を含む抗体、またはその1つもしくは2つの重鎖に結合したシアリダーゼ化オリゴ糖を含む抗体等が含まれ得る。
【0169】
組成物は、遺伝子組換え操作された細胞株、例えば、HER2抗体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から回収され得るか、またはペプチド合成によって調製され得る。
【0170】
例示的なペルツズマブ組成物に関するさらなる情報に関して、米国特許第7,560,111号及び同第7,879,325号、ならびにUS2009/0202546A1を参照されたい。
【0171】
(iii)トラスツズマブ組成物
トラスツズマブ組成物は、一般に、主要種抗体(それぞれ、配列番号13及び14の軽鎖配列及び重鎖配列を含む)とそのバリアント形態、特に酸性バリアント(脱アミド化バリアントを含む)との混合物を含む。好ましくは、組成物中のかかる酸性バリアントの量は、約25%未満、または約20%未満、または約15%未満である。米国特許第6,339,142号を参照されたい。ピークA(両軽鎖においてAsn30がAspに脱アミド化されている)、ピークB(1つの重鎖においてAsn55がisoAspに脱アミド化されている)、ピーク1(1つの軽鎖においてAsn30がAspに脱アミド化されている)、ピーク2(1つの軽鎖においてAsn30がAspに脱アミド化されており、1つの重鎖においてAsp102がisoAspに異性化されている)、ピーク3(主要ピーク形態、または主要種抗体)、ピーク4(1つの重鎖においてAsp102がisoAspに異性化されている);及びピークC(1つの重鎖中にAsp102スクシンイミド(Asu))を含む、陽イオン交換クロマトグラフィーによって分解可能なトラスツズマブの形態に関する、Harris et al.,J.Chromatography,B752:233-245(2001)も参照されたい。かかるバリアント形態及び組成物は、本明細書中の本発明に含められる。
【0172】
(iv)化学療法
HER2陽性早期乳癌(eBC)の治療のための標準化学療法には、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル+エピルビシン、ドキソルビシン+シクロホスファミド、及びタキサン(例えば、ドセタキセルまたはパクリタキセル)のうちの1つ以上を用いた治療等のアントラサイクリン含有化学療法及び非アントラサイクリン含有化学療法が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法で使用されるような標準化学療法には、具体的には、実施例1に記載されるような、1)3~4周期(3週間毎)の5-フルオロウラシル+エピルビシンまたはドキソルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセルのいずれか、2)4周期(3週間毎)のドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセルのいずれか、及び3)(非アントラサイクリン化学療法)6周期(3週間毎)のドセタキセル+カルボプラチンが含まれる。様々な標準化学療法レジメンで使用される薬物は市販されており、地域の処方情報に従って、かつ実施例1に記載されるように投与される。
【0173】
III.療法のための患者の選択
HER2の検出は、本発明による治療のための患者を選択するために使用され得る。HER2陽性癌患者を特定するための複数のFDAの承認済みの市販のアッセイが利用可能である。これらの方法には、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)及びPATHWAY(登録商標)HER2(免疫組織化学(IHC)アッセイ)、ならびにPathVysion(登録商標)及びHER2 FISH pharmDx(商標)(FISHアッセイ)が含まれる。使用者は、各アッセイの確証及び性能能力に関する情報に関して、特定のアッセイキットの添付文書を参照しなければならない。
【0174】
例えば、HER2過剰発現は、IHCによって、例えば、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)を使用することによって分析され得る。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供し、以下の通りHER2タンパク質染色強度基準に適合させることができる。
【0175】
スコア0は、染色が観察されないか、または腫瘍細胞の10%未満で膜染色が観察される。
スコア1+は、かすかな/ほとんど認識不可能な膜染色が腫瘍細胞の10%超で検出される。細胞が、それらの膜の一部で染色されるだけである。
スコア2+は、弱~中度の完全膜染色が腫瘍細胞の10%超で観察される。
スコア3+は、中~強度の完全膜染色が瘍細胞の10%超で観察される。
【0176】
HER2過剰発現評定に関するスコアが0または1+であるそれらの腫瘍は、HER2陰性と特徴付けられ得るが、スコアが2+または3+であるそれらの腫瘍は、HER2陽性と特徴付けられ得る。
【0177】
HER2を過剰発現させる腫瘍は、細胞1個当たりに発現されるHER2分子のコピーの数に対応する免疫組織化学的スコアによって評価され得、生化学的に決定され得る。
0=0~10,000個のコピー/細胞、
1+=少なくとも約200,000個のコピー/細胞、
2+=少なくとも約500,000個のコピー/細胞、
3+=少なくとも約2,000,000個のコピー/細胞。
【0178】
チロシンキナーゼのリガンド非依存的活性化をもたらす3+レベルのHER2の過剰発現(Hudziak et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7159-7163(1987))は、乳癌のおよそ30%で起こり、これらの患者において、無再発生存期間及び全生存期間が減少する(Slamon et al.,Science,244:707-712(1989)、Slamon et al.,Science,235:177-182(1987))。
【0179】
HER2タンパク質過剰発現の存在及び遺伝子増幅は相関性が高く、したがって、あるいは、または加えて、遺伝子増幅を検出するためのインサイツハイブリダイゼーション(ISH)アッセイ、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)アッセイの使用も、本発明による治療に適切な患者の選択に用いられ得る。INFORM(商標)(Ventana,Arizonaによって販売)またはPathVysion(登録商標)(Vysis,Illinois)等のFISHアッセイを、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織に対して実施して、腫瘍のHER2増幅(もしある場合)の程度を決定することができる。
【0180】
最も一般的には、HER2陽性状態は、前述の方法のいずれかを使用して、保管パラフィン包埋腫瘍組織を使用して確認される。
【0181】
好ましくは、2+もしくは3+IHCスコアを有するか、またはFISHもしくはISH陽性であるHER2陽性患者が、本発明による治療のために選択される。
【0182】
ペルツズマブを用いる療法のための患者をスクリーニングするための代替的アッセイに関しては、米国特許第7,981,418号及び実施例も参照されたい。
【0183】
IV.薬学的製剤
本発明に従って使用されるHER2抗体の療法製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の薬学上許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合する(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))ことによって、一般には凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存用に調製される。抗体の結晶も企図される(米国特許出願第2002/0136719号を参照されたい)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量及び濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、それらには、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン:カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及び他の糖鎖(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む);EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類:ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。凍結乾燥抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0184】
凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号、同第6,685,940号、及び同第6,821,515号に記載されており、参照によって本明細書中に明示的に組み込まれる。
【0185】
一実施形態において、トラスツズマブ製剤は、440mgのトラスツズマブ、400mgのアルファ、α-トレハロース脱水物、9.9mgのL-ヒスチジン-HCl、6.4mgのL-ヒスチジン、及び1.8mgのポリソルベート20、USPを含む静脈内(IV)投与のための白色から淡黄色の防腐剤不含の凍結乾燥粉末である。防腐剤として1.1%のベンジルアルコールを含有する20mLの静菌注射用水(BWFI)の再構成によって、21mg/mLのトラスツズマブを含有するおよそ6.0のpHの多回用量溶液が得られる。さらなる詳細に関して、トラスツズマブ処方情報を参照されたい。
【0186】
別の実施形態において、例えば、皮下投与に好適なトラスツズマブ製剤は、米国特許第9,345,661号に開示されている。この製剤は、
(a)約100~約150mg/mlのトラスツズマブと、
(b)5.5.+-.2.0のpHを提供する約1~約50mMの緩衝剤と、
(c)第1の安定剤としての約150~約250mMのα,α-トレハロース脱水物またはスクロース及び第2の安定剤としての約5~約15mMのメチオニンと、
(d)約0.01~約0.08%の非イオン性界面活性剤と、
(e)約1’000~16’000U/mlの少なくとも1つのヒアルロニダーゼ酵素と、を含む。
【0187】
一実施形態において、療法的使用のためのペルツズマブ製剤は、20mMの酢酸ヒスチジン、120mMのスクロース、0.02%のポリソルベート20中にpH6.0で30mg/mLペルツズマブを含む。代替的ペルツズマブ製剤は、25mg/mLペルツズマブ、10mMのヒスチジン-HCl緩衝剤、240mMのスクロース、0.02%のポリソルベート20をpH6.0で含む。
【0188】
別の実施形態において、療法的使用のためのペルツズマブ製剤は皮下投与に好適であり、60mg/mlの濃度の600mgのペルツズマブ、60mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブ、1,000U/mLのrHuPH20、pH5.5の20mMのHis-HCl、105mMのトレハロース、100mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、10mMのメチオニン、及び15mlのバイアル中に収容され得る10mlの合計最大容量の滅菌注射用水を含む。
【0189】
さらなる実施形態において、療法的使用のためのペルツズマブ製剤は皮下投与に好適であり、80mg/mlの濃度の1,200mgのペルツズマブ、40mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブ、1,000U/mLのrHuPH20、pH5.5の20mMのHis-HCl、70mMのトレハロース、133mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、10mMのメチオニン、及び20mlのバイアル中に収容され得る15mlの合計最大容量の滅菌注射用水を含む。
【0190】
さらに別の実施形態において、例えば、皮下投与に好適なペルツズマブとトラスツズマブとの共製剤は、約600mgのペルツズマブの単一の固定用量及び約600mgのトラスツズマブの単一の固定用量、または約1200mgのペルツズマブの単一の固定用量及び約600mgのトラスツズマブの単一の固定用量と、皮下投与の間、同じ液体製剤中に含有されるペルツズマブ及びトラスツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量の組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)等のヒアルロニダーゼ酵素とを、例えば、少なくとも約600U/mLの濃度、または約600U/ml~約2,000U/mlの濃度、例えば、約1,000U/mLの濃度で含む。
【0191】
さらなる実施形態において、例えば、皮下投与に好適なペルツズマブとトラスツズマブとの共製剤は、下記を含む:
【0192】
60mg/mlの濃度の600mgのペルツズマブ、60mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブ、1,000U/mLのrHuPH20、pH5.5の20mMのHis-HCl、105mMのトレハロース、100mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、10mMのメチオニン、及び10mlの合計最大容量の滅菌注射用水、または
【0193】
80mg/mlの濃度の1,200mgのペルツズマブ、40mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブ、1,000U/mLのrHuPH20、pH5.5の20mMのHis-HCl、70mMのトレハロース、133mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、10mMのメチオニン、及び15mlの合計最大容量の滅菌注射用水。
【0194】
実施例に記載される臨床試験で使用されるプラセボの製剤は、活性薬剤を含まないペルツズマブに等しい。
【0195】
本明細書の製剤はまた、治療されている特定の適応症に必要な2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的活性を有する化合物を含有し得る。HER二量体化阻害剤と併用され得る様々な薬物は、下記の「方法」のセクションに記載する。かかる分子は、好適には、意図される目的のために有効な量で組合せて存在する。
【0196】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成される。
【0197】
V.治療法
本発明は、HER2陽性早期乳癌を有する患者に、有効量のペルツズマブ、トラスツズマブ、及び標準化学療法を組合せたアジュバント投与を含む、HER2陽性早期乳癌の治療のための方法に関し、ここで、かかる投与は、ペルツズマブの投与を伴わない標準化学療法を用いたトラスツズマブの投与に対して、無疾患生存(DFS)、特に、無浸潤疾患生存(iDFS)の増加等の主要及び/または二次効能エンドポイントの到達を増加させる。
【0198】
一実施形態において、本発明に従って治療された患者は、HER2陽性、リンパ節転移陽性早期乳癌と診断された。
【0199】
別の実施形態において、本発明に従って治療された患者は、HER2陽性、ホルモン受容体陰性乳癌と診断された。
【0200】
一実施形態において、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び化学療法は、以下のスケジュールのうちの1つの後に適用される:以下のスケジュールのうちの1つに従う化学療法と組合せた3週間毎のペルツズマブIV及びトラスツズマブIV(主治医の判断による):1)3~4周期(3週間毎)の5-フルオロウラシル+エピルビシンまたはドキソルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセルのいずれか、2)4周期(3週間毎)のドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセルのいずれか、3)(非アントラサイクリン療法)6周期(3週間毎)のドセタキセル+カルボプラチン。
【0201】
一実施形態において、トラスツズマブ及び/またはペルツズマブは、静脈内投与される。他の実施形態において、トラスツズマブ及び/またはペルツズマブは、皮下投与される(例えば、皮下投与に好適であるトラスツズマブ及びペルツズマブの両方を含む共製剤を介して)。
【0202】
一実施形態において、ペルツズマブIVは、3週間毎に840mg、その後、420mgの負荷量で投与される。
【0203】
一実施形態において、トラスツズマブIVは、3週間毎に8mg/mg、その後、6mg/kgの負荷量で投与される。
【0204】
一実施形態において、ペルツズマブscは、3週間毎に1200mg、その後、600mgの負荷量で投与される。
【0205】
一実施形態において、トラスツズマブscは、3週間毎に600mg、その後、600mgの負荷量で投与される。
【0206】
HER2陽性早期乳癌を治療するために使用される化学療法のための追加の投与量及びスケジュールは、下記の実施例に開示されるが、他の投与量及びスケジュールも知られており、本明細書の発明に従って企図される。
【0207】
VI.製品
本発明の別の実施形態において、乳癌の治療に有用な材料を含有する製品が提供される。本製品は、HER2(ペルツズマブ)の固定用量を有するバイアルを含み、ここで、固定用量は、およそ420mg、およそ525mg、およそ600mg、およそ840mg、またはおよそ1050mg、またはおよそ1200mgのHER抗体である。
【0208】
本製品は、好ましくは、添付文書をさらに含む。添付文書は、固定用量を乳癌患者に静脈内投与または皮下投与するための指示を提供し得る。
【0209】
一実施形態において、本製品は、2つのバイアルを含み、ここで、第1のバイアルは、およそ840mgのペルツズマブの固定用量を含有し、第2のバイアルは、およそ420mgのペルツズマブの固定用量を含有する。
【0210】
別の実施形態において、本製品は、2つのバイアルを含み、ここで、第1のバイアルは、およそ1200mgのペルツズマブの固定用量を含有し、第2のバイアルは、およそ600mgのペルツズマブの固定用量を含有する。
【0211】
本明細書の製品の一実施形態において、がん患者への投与に好適なペルツズマブとトラスツズマブとの安定した混合物を含有する静脈内(IV)バッグを含む。任意に、混合物は、例えば、約0.9%のNaClまたは約0.45%のNaClを含む、生理食塩液中に存在する。例示的なIVバッグは、ポリオレフィンまたは塩化ポリビニル点滴バッグ、例えば、250mLのIVバッグである。本発明の一実施形態によると、混合物は、約420mgまたは約840mgのペルツズマブ及び約200mg~約1000mgのトラスツズマブ(例えば、約400mg~約900mgのトラスツズマブ)を含む。
【0212】
任意に、IVバッグ内の混合物は、5℃または30℃で最長24時間にわたって安定する。混合物の安定性は、色、外観及び透明度(CAC)、濃度及び濁度分析、粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)、ならびに効力アッセイからなる群から選択される1つ以上のアッセイによって評価され得る。
【0213】
VII.生物学的材料の寄託
以下のハイブリドーマ細胞株を、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209,USA(ATCC)に寄託した:
抗体記号表示 ATCC No. 寄託日
4D5 ATCC CRL 10463 1990年5月24日
2C4 ATCC HB-12697 1999年4月8日
表1
配列表
【0214】
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例によって例示される。本明細書における全ての引用の開示内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0215】
実施例を含む本明細書全体で使用される略語及び用語の定義のリストが以下の表2に提供される。
【0216】
実施例1
HER2陽性原発性乳癌を有する参加者におけるアジュバント療法としての、化学療法及びトラスツズマブに加えたペルツズマブの第III相研究。
【0217】
目的
この無作為化された二重盲検のプラセボ対照の2つのアームの第III相研究(Adjuvant Pertuzumab and Perception In Initial Therapy of Breast Cancer,APHINITY,NCT01358877)は、現在4806名の患者を登録しており、手術可能なHER2陽性原発性乳癌を有する参加者におけるアジュバント療法としての化学療法+トラスツズマブに加えてペルツズマブの安全性及び効能を評定した。国際的な乳癌研究グループ(BIG)との協同でこの研究を実施する。
【0218】
研究設計
研究設計の概略図を
図6A、6B、及び6Cに示す。研究に登録される患者は手術を受け、2つの治療群のうちの1つに無作為化して(1:1)、以下のいずれかを受けた:
・6~8周期の化学療法(アントラサイクリンまたは非アントラサイクリン含有レジメン)を伴うPERJETA(登録商標)及びHerceptin、その後、合計1年(52週)間の治療における3週間毎のPERJETA(登録商標)及びHERCEPTIN(登録商標)。具体的には、この試験アームにおいて、参加者は、以下のスケジュールのうちの1つ(治験責任医師の判断による):1)3~4周期(3週間毎)の5-フルオロウラシル+エピルビシンまたはドキソルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセル、2)4周期(3週間毎)のドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期パクリタキセルのいずれか、3)(非アントラサイクリン療法)6周期(3週間毎)のドセタキセル+カルボプラチンのいずれかに従って、化学療法と併せて、1年間の治療において3週間毎にペルツズマブIV及びトラスツズマブIVを受ける。
・6~8周期の化学療法(アントラサイクリンまたは非アントラサイクリン含有レジメン)を伴うプラセボ及びHERCEPTIN(登録商標)、その後、合計1年(52週)間の治療における3週間毎のプラセボ及びHerceptin。具体的には、このプラセボ比較アームにおいて、参加者は、以下のスケジュールのうちの1つ(治験責任医師の判断による):1)3~4周期(3週間毎)の5-フルオロウラシル+エピルビシンまたはドキソルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセル、2)4周期(3週間毎)のドキソルビシンまたはエピルビシン+シクロホスファミド、その後、4周期(3週間毎)のドセタキセルまたは12週周期のパクリタキセルのいずれか、3)(非アントラサイクリン療法)6周期(3週間毎)のドセタキセル+カルボプラチンのいずれかに従って、化学療法と併せて、1年間の治療において3週間毎にプラセボIV及びトラスツズマブIVを受ける。
・薬物ペルツズマブ:参加者は、3週間毎に周期1において840mgのIV、その後、420mgIVの負荷量でペルツズマブを受けた。
・薬物トラスツズマブ:参加者は、3週間毎に1kg当たり8ミリグラム(mg/kg)、その後、6mg/kgのIVの負荷量でトラスツズマブを受けた。
・薬物:5-フルオロウラシル:参加者は、3週間毎に1平方当たり500~600ミリグラム(mg/m
2)のIVの5-フルオロウラシルを受け得る。
・薬物:カルボプラチン:参加者は、3週間毎に6回の用量で血中濃度時間曲線下面積(AUC)(900mgの最大用量)のIVのカルボプラチンを受け得る。
・薬物:シクロホスファミド:参加者は、3週間毎に500~600mg/m
2のIVのシクロホスファミドを受け得る。
・薬物:ドセタキセル:参加者は、第1の周期の間、3週間毎に75mg/m
2のIV、または3週間毎に100mg/m
2のIV、または3週間毎に75mg/m
2のIVのいずれか、その後、3週間毎に100mg/m
2のIVのドセタキセルを受け得る。
・薬物:ドキソルビシン:参加者は、3週間毎に50mg/m
2のIVのドキソルビシンを受け得る。
・薬物:エピルビシン:参加者は、3週間毎に90~120mg/m
2のIVのエピルビシンを受け得る。
・薬物:パクリタキセル:参加者は、毎週1回80mg/m
2のIVのパクリタキセルを受け得る。
【0219】
放射線療法及び/または内分泌療法は、アジュバント療法の最後に開始され得る。APHINITY研究は、使用される標準アジュバント化学療法レジメンを許容した。リンパ節転移陽性及びリンパ節転移陰性の参加者の両方は、登録が可能であった(下記を参照されたい)。
【0220】
適格
研究に適格な年齢:18歳以上(成人、高齢者)
研究に適格な性別:全て
健康なボランティアの許容:いいえ
【0221】
選択基準
・組織学的に確認され、かつ適切に切除される非転移性で手術可能な原発浸潤性HER2陽性乳癌
・リンパ節転移陽性疾患、またはリンパ節転移陰性疾患(pN0)、及び>1.0cmの腫瘍サイズ。まず、pN0腫瘍を有し、腫瘍サイズが0.5~1.0cmである患者を、以下の特徴:グレード3、両方のホルモン受容体陰性、または<35歳の年齢のうちの少なくとも1つが提示される場合、適格とした。3655名の患者を無作為化した後に、プロトコル修正下でpN0を有する患者を適格としなかった。
・米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが1以下(≦)
・乳癌の根治手術と化学療法剤の1回目の用量との間の間隔は、8週(56日)間以内であるべきである。第1の周期の化学療法は、無作為化の7日以内または56日目のどちらか早い段階に施されるべきである。
・既知のホルモン受容体の状態(エストロゲン受容体及びプロゲステロン受容体)
・心エコー図(ECHO)またはマルチゲート収集(MUGA)スキャンによって測定される55パーセント(%)以上(≧)のベースラインLVEF
・確認されたHER2陽性状態であり、これは、患者の乳癌が、>10%の免疫反応性細胞において3+の免疫組織化学スコアまたはインサイツハイブリダイゼーション法によるc-erbB2遺伝子増幅(セントロメア17シグナルに対するc-erbB2遺伝子シグナルの比、≧2)を有するという確認を必要とする。
・妊娠する可能性のある女性参加者及び妊娠する可能性のあるパートナーを持つ男性参加者は、研究治療の間及び研究薬物の最後の投薬後の少なくとも7ヶ月間、参加者及び/またはパートナーによる有効な避妊法の使用(プロトコルによって定義されるように)に同意する必要がある。
【0222】
除外基準
・一切の(同側及び/または反対側)浸潤性乳癌の前既往歴
・研究登録前5年以内の乳癌以外の悪性腫瘍の既往歴、ただし、子宮頸部上皮内癌、結腸上皮内癌、表皮内黒色腫、ならびに皮膚の基底細胞癌及び扁平上皮癌を除く
・炎症性乳癌を含む、原発性腫瘍/所属リンパ節/遠隔転移(TNM)による一切の「臨床上」T4腫瘍
・がんに対する全身性化学療法またはがんに対する放射線療法の一切の施行歴
・任意の理由による抗HER2療法の施行歴、またはがんに対する他の生物学的もしくは免疫学的療法の施行歴
・別の治験における抗がん治療の併用
・重篤な心臓または心血管疾患または病態
・重度の肺の病態/疾患を含む計画治療を妨害し得る他の同発の重篤な疾患
・無作為化の直前の異常臨床検査
・妊娠中または授乳中の女性
・研究医薬のいずれか、またはこれらの医薬の成分もしくは賦形剤のいずれかに対して敏感性
【0223】
評価項目
研究の主要及び二次的評価項目の完全なリストを下記に列挙する。
【0224】
APHINITY研究の1つの主要効能エンドポイントはiDFSであり、これは、患者が、アジュバント治療後に任意の部位において浸潤性乳癌が再出現することがないか、または任意の原因によって死亡することなく生存する時間である。
【0225】
2つの治療群間のIDFSを比較するために層別ログランク試験を使用した。各治療群に関する3年間のIDFSパーセントを推定するためにカプランマイヤー手法を使用した。2つの治療群間のハザード比(HR)及びその95%の信頼区間(CI)を推定するために層別コックス比例ハザードモデルを使用した。主要分析は、治療意図(ITT)集団に基づいた。5%の両側の有意水準で、0.75のハザード比を検出するために80%の検出力を有するように研究を設計した。BCIRG006研究の結果に基づいて、プラセボ群に関して89.2%の3年間のIDFSパーセンテージを推測した(NCT00021255)。これらの推測の下で、IDFSの主要分析に関しておよそ379例のIDFS事象が必要とされる。
【0226】
二次効能エンドポイントは、心臓安全性及び全体的な安全性、全生存、無疾患生存、ならびに健康に関連する生活の質を含む。
【0227】
遠隔転移無再発期間(DRFI)は、無作為化と遠隔乳癌再発の日との間の時間と定義される。分析の時点で遠隔疾患再発を有さない患者は、死亡日または最後に認識された生存日において打ち切られるであろう。640件の死亡例が起こったときに、決定的(最終事象観察)OS分析を計画する。IDFSの主要分析の時点でOSの第1の中間分析が利用可能になるが、決定的分析と比較して限定的な情報である。後で2つの中間分析を行う。規制の目的に関して、全体的なアルファレベルを4つのOS分析に関して0.05に制御する。OSの第1の中間分析における調整された両側の有意水準は、<0.00001である。
【0228】
任意の量の研究治療(化学療法または標的療法)を受ける患者を、患者が実際に受けた治療による安全性分析に含んだ。アジュバントペルツズマブを受けた患者は、ペルツズマブ安全性分析集団アームに入れる。ペルツズマブではない研究医薬を受けた患者は、プラセボ安全性分析集団アームに入れる。
【0229】
主要心臓エンドポイントは、心不全NYHAクラスIIIもしくはIV、ならびにベースラインから少なくとも10のEFポイント及び50%未満へのLVEFにおける低下、または心臓死と定義される重度のうっ血性心不全(CHF)であった。APHINITY Cardiac Advisory Board(CAB)によって心臓死を特定した。
【0230】
二次心臓エンドポイントを、MUGAスキャンまたはECHOによるLVEFにおける無症候性または軽度症候性(NYHAクラスII)の著しい低下と定義し、これは、著しい低下を示したおよそ3週間以内の第2のLVEF評定によっても確認されたか、またはAPHINITY CABによっても確認された。
【0231】
主要評価項目
・放射線学的検査、組織学的検査、または臨床検査所見を使用して評定されるような無浸潤疾患生存(iDFS)期間(IDFS事象として第2の原発性非乳癌を除く)[時間フレーム:プロトコルが定義するIDFS事象までの無作為化(第2の原発性非乳癌を除く)(最長全12年)]。
・ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIまたはIVの心不全、及びベースラインから少なくとも10ポイント及び50パーセント(%)未満の左室駆出分画(LVEF)における低下の両方を有する参加者のパーセンテージ[時間フレーム:ベースラインから最長12年(最初の12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、36ヶ月、48ヶ月、60ヶ月までは12週毎、その後は12ヶ月毎に最長全12年評定する)]。
【0232】
二次評価項目
・放射線学的検査、組織学的検査、または臨床検査所見を使用して評定されるようなIDFS期間(IDFS事象として第2の原発性非乳癌を含む)[時間フレーム:無作為化からプロトコルが定義するIDFS事象まで(第2の原発性非乳癌を含む)(最長全12年)]。
・放射線学的検査、組織学的検査、または臨床所見を使用して評定されるような無疾患生存(DFS)期間(事象として第2の原発性非乳癌、または反対側もしくは同側非浸潤性乳管癌を含む)[時間フレーム:無作為化からプロトコルが定義するDFS事象(第2の原発性非乳癌、または反対側もしくは同側非浸潤性乳管癌を含む)(最長全12年)]。
・全生存(OS)[時間フレーム:無作為化から一切の原因を起因とする死亡まで(最長全12年)]
・放射線学的検査、組織学的検査、または臨床検査所見を使用して評定されるような無再発期間(RFI)[時間フレーム:無作為化から乳癌の局所的再発、局所再発、及び遠隔再発まで(最長全12年)]。
・放射線学的検査、組織学的検査、または臨床所見を使用して評定されるような遠隔転移無再発期間(DRFI)[時間フレーム:無作為化から乳癌の遠隔再発までの無作為化(最長全12年)]。
・有害事象を有する参加者のパーセンテージ[時間フレーム:ベースラインから最長12年]
・ベースラインから少なくとも10ポイント及び50%未満の左室駆出分画(LVEF)における無症候性または軽度症候性(NYHAクラスII)の低下を有する参加者のパーセンテージ[時間フレーム:ベースラインから最長12年(最初の12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、36ヶ月、48ヶ月、60ヶ月までは12週毎、その後は12ヶ月毎に最長全12年評定する)]。
・研究期間にわたるLVEF項目[時間フレーム:ベースラインから最長12年(最初の12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、36ヶ月、48ヶ月、60ヶ月までは12週毎、その後は12ヶ月毎に最長全12年評定する)]。
・欧州がん研究治療機関の生活の質に関する質問-コア30(EORTC QLQ-C30)スコア[時間フレーム:ベースライン、10週目、13週目、19週目、及び25週目;研究医薬の最後の投薬の28日後(56週目);及び18ヶ月、24ヶ月、及び36ヶ月]
・欧州がん研究治療機関の乳癌の生活の質(EORTC QLQ BR23)機能スケールスコアモジュール[時間フレーム:ベースライン、10週目、13週目、19週目、及び25週目;研究医薬の最後の投薬の28日後(56週目);及び18ヶ月、24ヶ月、及び36ヶ月]。
・欧州生活の質-5つの観点(EQ-5D)質問スコア[時間フレーム:ベースライン、10週目、13週目、19週目、及び25週目;研究医薬の最後の投薬の28日後(56週目);及び18ヶ月、24ヶ月、及び36ヶ月]。
【0233】
製剤化、梱包、及び取扱い
20mMのL-ヒスチジン(pH6.0)、120mMのスクロース、及び0.02%のポリソルベート-20中で製剤化される30mg/mLのペルツズマブを含有する単回使用製剤としてPERJETA(登録商標)を提供する。各20ccのバイアルは、およそ420mgのペルツズマブ(14.0mL/バイアル)を含有する。さらなる詳細に関して、PERJETA(登録商標)IBまたはPERJETA(登録商標)の地域の処方情報を参照されたい。
【0234】
PERJETA(登録商標)の表示
各国における規制要件に従って、ならびに医薬品規制調和国際会議(ICH)医薬品の臨床試験の実施の基準に従って、PERJETA(登録商標)を表示する。研究依頼者は、治験使用に関して表示された全ての研究部位にのみPERJETA(登録商標)を提供する。
【0235】
PERJETA(登録商標)の保存
PERJETA(登録商標)のバイアルは、2℃~8℃(36°F~46°F)の範囲の温度で輸送され、物理的及び生化学的完全性の最適な保持を確実にするために、受け取り後すぐに(同じ温度範囲の)冷蔵室に配置されなければならず、使用の直前まで冷蔵しておく必要がある。温度ログは、適切な保存状態を確実にするために、(地域の薬局業務規範に従って)冷蔵室表上で維持する必要がある。輸送または保存のいずれかの間で許容される2℃~8℃からの温度偏差が見られる場合、依頼者に連絡し、薬物がなおも使用に適切であるかどうかを決定されたい。
【0236】
PERJETA(登録商標)バイアルは、振とうしてはならない場合がある。全てのバイアルは外箱内に保管され、光から保護されるべきである。医薬は、IMPキット表示上に提供される使用期限日情報を超えて使用してはならない。
【0237】
PERJETA(登録商標)の調製
PERJETA(登録商標)製剤は保存剤を含有しないため、バイアルシールは、1回のみ穿刺され得る。一切の残った溶液は、廃棄されるべきである。
【0238】
PERJETA(登録商標)溶液の示される容量をバイアルから抜き取り、0.9%の塩化ナトリウム注入の250ccのIVバッグに添加しなければならない。バッグを穏やかに逆さにして溶液を混合しなければならないが、激しく振とうしてはならない。投与前に、溶液を粒子及び変色に関して外観検査しなければならない。継続IV点滴として、バッグ内の全容量を投与しなければならない。投与管内に収容される容量は、0.9%の塩化ナトリウム注入液を使用して完全に流さなければならない。
【0239】
0.9%の塩化ナトリウム注入液を含有する塩化ポリニビル(PVC)または非PVCポリオレフィンバッグ内で希釈した点滴用のPERJETA(登録商標)の溶液は、使用前に最長24時間、2℃~8℃(36°F~46°F)で保存され得る。希釈したPERJETA(登録商標)は、室温(2℃~25℃)で最長24時間にわたって安定することが示されている。しかし、希釈したPERJETA(登録商標)は防腐剤を含有しないため、無菌希釈した溶液は、冷蔵保存(2℃~8℃)で24時間を超えてはならない。
【0240】
全ての研究薬物点滴に量調節デバイスが使用され得る。研究薬物IVバッグが空のとき、50mLの0.9%の塩化ナトリウム注入液がIVバッグに添加され得るか、または追加のバッグが吊り下げられ得、管の容量と同等の容量で点滴が継続され、研究薬物の完全な送達を確実にし得る。
【0241】
研究薬物点滴の血管外漏出が起こった場合、以下のステップを取るべきである。
点滴を停止する。
非腐食剤の血管外漏出に関する施設指針に従って血管外漏出に対応する。
著しい容量の研究薬物点滴が残っている場合、同じ肢内のより近位部位でまたは他方の側で点滴を再開する。
【0242】
HERCEPTIN(登録商標)の製剤化
この研究で使用するためのHERCEPTIN(登録商標)(凍結乾燥製剤)は、凍結乾燥調製物として依頼者によって供給される。全てのHERCEPTIN(登録商標)は非経口IV投与用で供給され、皮下用HERCEPTIN(登録商標)は、この研究において許可されていない。HERCEPTIN(登録商標)をヒスチジン、トレハロース、及びポリソルベート20中で製剤化する。この研究で使用するためのHERCEPTIN(登録商標)は、非経口投与用の凍結乾燥調製物を含有するバイアルで依頼者によって供給される。IV投与に関して、HERCEPTIN(登録商標)の各バイアルを、以下の通り、バイアルサイズに応じて滅菌注射用水(SWFI)で再構成する。
HERCEPTIN(登録商標)440mgのバイアルを20.0mLのSWFI(供給されない)と混合する。
HERCEPTIN(登録商標)150mgのバイアルを7.2mLのSWFI(供給されない)と混合する。
【0243】
他の再構成溶媒の使用は許可されない。再構成溶液は21mg/mLのトラスツズマブを含有し、患者に投与するために250mLの0.9%の塩化ナトリウム注入液に添加される。HERCEPTIN(登録商標)製剤は、防腐剤を含有しない。生成物は、無菌条件下で行われない限り、再構成及び希釈の後に保存されることを意図していない。したがって、点滴を一度調製すると、それは、単回使用のためのみであり、すぐに投与するべきである。用量は、無菌調製され、かつ2℃~8℃で保存されない限り(最長冷蔵保存時間は24時間である)、再構成後8時間以内に点滴されるべきである。この研究のために提供された各HERCEPTIN(登録商標)バイアルは、単回用量バイアルのみとして使用する。各バイアルは、Herceptinの2回以上の投与に使用してはならず、同時に2人以上の患者に使用してはならない。再構成したHERCEPTINを凍結してはならない。
【0244】
HERCEPTIN(登録商標)の表示
各国における規制要件に従って、ならびにICH医薬品の臨床試験の実施の基準に従って、HERCEPTIN(登録商標)を表示する。研究依頼者は、治験使用に関して表示された全ての研究施設にのみHERCEPTIN(登録商標)を提供する。
【0245】
HERCEPTIN(登録商標)の保存
HERCEPTIN(登録商標)のバイアルは、2℃~8℃(36°F~46°F)の範囲の温度で冷却パックを用いて輸送され、物理的及び生化学的完全性の最適な保持を確実にするために、受け取り後すぐに(同じ温度範囲の)冷蔵室に配置されなければならない。温度ログは、適切な保存状態を確実にするために、(地域の薬局業務規範に従って)冷蔵室上で維持する必要がある。バイアル上に示される使用期限を超えて使用してはならない。凍結してはならない。
【0246】
HERCEPTIN(登録商標)は、せん断誘導による負荷(例えば、撹拌またはシリンジからの急速な圧出)に敏感であり得る。振とうしてはならない。HERCEPTIN(登録商標)の溶液を激しく取扱うと、タンパク質の凝集がもたらされ、濁った溶液が作製され得る。HERCEPTIN(登録商標)は、再構成の間、取扱いには注意が必要である。再構成の間に過剰な発泡を引き起こすか、または再構成したHERCEPTIN(登録商標)を振とうすると、バイアルから抜き取られ得るHERCEPTIN(登録商標)の量の問題がもたらされ得る。
【0247】
HERCEPTIN(登録商標)の調製
研究薬物を調製するときは、適切な無菌技法を使用しなければならない。上述されるSWFIを用いてHERCEPTIN(登録商標)の各バイアルを再構成する。HERCEPTIN(登録商標)は、再構成の間、取扱いには注意が必要である。再構成の間に過剰な発泡を引き起こすか、または再構成したHERCEPTIN(登録商標)を振とうすると、バイアルから抜き取られ得るHERCEPTIN(登録商標)の量の問題がもたらされ得る。
【0248】
以下の指示に従わなければならない。
1.滅菌シリンジを使用し、凍結乾燥のケーキに流れを向けながら、凍結乾燥HERCEPTIN(登録商標)を含有するバイアル中の滅菌注射用水をゆっくりと注入する。
2.穏やかにバイアルを撹拌して、再構成を促進させる。振とうしてはならない。
【0249】
再構成時の生成物のわずかな発泡は、珍しいことではない。バイアルをおよそ5分間静置させる。再構成したHERCEPTIN(登録商標)は、無色から淡黄色の透明溶液をもたらし、本質的に可視の粒子不含であるべきである。
【0250】
再構成したHERCEPTIN(登録商標)を冷蔵または凍結してはならない。
【0251】
薬物調製:希釈
再構成した溶液を、米国薬局方の250mLの0.9%の塩化ナトリウム注入液を含有する点滴バッグに添加する。点滴を一度調製すると、すぐに投与するべきである。滅菌希釈した場合、それは、再構成から最長24時間保存され得る(30℃を超えて保存してはならない)。
【0252】
結果
研究は、その主要エンドポイントを満たし、PERJETA(登録商標)-HERCEPTIN(登録商標)の組合せを伴うアジュバント(手術後)治療が、HERCEPTIN(登録商標)及び化学療法のみと比較して、HER2陽性eBCを有する人々における浸潤性疾患の再発または死亡の危険性を著しく低減した(無浸潤疾患生存期間、iDFS)ことを示した。下記で考察される7A&B、8A~C、9A~Cで提示される結果は、iDFSの研究の主要分析の結果を表す(電子症例報告書「eCRF」に収集されたデータに基づく)。
【0253】
主要エンドポイント:
・
図7Aに示すように、iDFSのハザード比(HR)は、0.81[95%CI、0.66~1.00、p=0.0446]であり、これは、HERCEPTIN(登録商標)対照アームと比較して、PERJETA(登録商標)-HERCEPTIN(登録商標)アームにおける患者の浸潤性乳癌の再発または死亡の危険性における19%の低減を表す。
図7Bに示すカプランマイヤープロットも参照されたい。
3年間のiDFS率の対応する推定値は、以下の通りであった。
・PERJETA(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、及び化学療法アーム=94.06%
・プラセボ、HERCEPTIN(登録商標)、及び化学療法(対照)アーム=93.24%
【0254】
効能
研究は、無浸潤疾患生存(iDFS)の統計的に有意な改善を伴ってその主要研究エンドポイントを満たし、0.81のハザード比(95%CI、0.66~1.00、P=0.0446)でペルツズマブ群が有利であった。追跡調査期間中央値の45.4ヶ月後、ペルツズマブ群に無作為化された患者のうち171例(7.1%)のiDFS事象が報告され、対照群に無作為化された患者においては210例(8.7%)の事象が報告された。3年間のiDFSの推定値は、ペルツズマブ群で94.1%及びプラセボ群で93.2%であった。ペルツズマブ及び対照群において、それぞれ112名(4.7%)の患者及び139名(5.8%)の患者で遠隔再発が第1のiDFSとして起こったが、局所再発を伴う患者の数は、それぞれ16(1.1%)及び34(1.4%)であった。ペルツズマブ及び対照群において、それぞれ患者の1.9%及び1.8%で中枢神経系(CNS)転移が第1のiDFS事象として起こった。内臓部位またはCNS部位の第1の遠隔再発は、骨よりも一般的である。
【0255】
二次分析において、第2の原発性非乳癌事象もiDFS事象とみなした。事象の数は、ペルツズマブ及び対照群において、それぞれ189例及び230例に増加し、0.82(95%CI、0.68~0.99、P=0.043)の統計的に有意なハザード比をもたらした。
【0256】
PERJETA(登録商標)-HERCEPTIN(登録商標)の組合せの心臓安全性及び全体的な安全性プロファイルは、PERJETA(登録商標)の以前の研究と一致し、新たな安全性シグナルは特定されなかった。
【0257】
治療レジメンにおけるペルツズマブの陽性効果は、様々なサブグループの患者において均一に観察されたが、iDFSに関するサブグループ分析は、リンパ節転移陽性(
図8A及び8B)及びホルモン受容体(HR)陰性患者(
図9A及び9B)において、治療効果が最も明白であったことを明らかにした。
図8Aに示すように、リンパ節転移陽性疾患を有する患者において、ペルツズマブ群では139例(9.2%)のIDFS事象及びプラセボ群では181例(12.1%)のiDFS事象が存在した。3年間のIDFSパーセントは、ペルツズマブ群では92.0%及びプラセボ群では90.2%であった。ハザード比は、0.77(95%CI、0.62~0.96、P=0.0188)であった。カプランマイヤープロットの曲線は、無作為化後の2年後に分かれ始めた(
図8B)。対照的に、リンパ節転移陰性疾患を有する患者は、非常に少数のIDFS事象(ペルツズマブでは32例[3.6%]及びプラセボでは29例[3.2%])を示し、治療効果は検出不能であった(1.13のハザード比(95%CI、0.68~1.86、P=0.6436)(
図8C)。
【0258】
ホルモン受容体陰性腫瘍を有する患者において、ペルツズマブ群では71例(8.2%)のIDFS事象、プラセボ群では91例(10.6%)存在して、これは、0.76(0.56~1.04、P=0.0847)のハザード比をもたらした。3年のIDFSパーセントは、ペルツズマブ群では92.8%及びプラセボ群では91.2%であった(
図9A及び9B)。事象の数は、ホルモン受容体陽性腫瘍を有する患者において非常に少数(ペルツズマブ群で100例[6.5%]及びプラセボ群で119例[7.7%])であり、これは、0.86(0.66~1.13)(P=0.2771)のハザード比をもたらした。3年のIDFSパーセントは、ペルツズマブ群では94.8%及びプラセボ群では94.4%であった(
図9C)。
【0259】
この主要エンドポイント分析の時点で、全生存に関する第1の中間分析を行うと、ペルツズマブアームでは80件の死亡例及びプラセボアームでは89件の死亡例があった。初期時点において著しい治療効果はなかった(ハザード比0.89、95%CI、0.66~1.21、P=0.4673)。
【0260】
図10、ならびに下記の表3及び4は、対話型web/音声応答システム「IxRS」によって収集された層別因子データに基づく、主要iDFSエンドポイントのAPHINITY研究の規定の感受性分析の結果を提示する。
表3 APHINITY臨床研究の効能結果
HR=ハザード比、CI=信頼区間
1結節状態、プロトコルバージョン、中枢ホルモン受容体状態、及びアジュバント化学療法レジメンによって層別化された全ての分析。層別因子は、IDFSの無作為化データに従って定義される。
2カプランマイヤー推定値に由来する3年間の無事象率
3第1の中間分析からのデータ
表4 ベースライン疾患特性及びAPHINITY臨床研究からのアジュバント化学療法による効能結果
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1複数の比較の調整が無い探索的分析であるため、結果は記述的であるとみなされる。
【0261】
安全性
ホルモン受容体陰性腫瘍を有する患者において、ペルツズマブアームでは71例(8.2%)のIDFS事象、プラセボアームでは91例(10.6%)存在して、これは、0.76(0.56~1.04、P=0.0847)のハザード比をもたらした。3年のIDFSパーセントは、ペルツズマブアームでは92.8%及びプラセボアームでは91.2%であった。事象の数は、ホルモン受容体陽性腫瘍を有する患者において非常に少数(ペルツズマブアームで100例[6.5%]及びプラセボアームで119例[7.7%])であり、これは、0.86(0.66~1.13)(P=0.2771)のハザード比をもたらした。3年のIDFSパーセントは、ペルツズマブアームでは94.8%及びプラセボアームでは94.4%であった。
【0262】
この主要エンドポイント分析の時点で、全生存に関する第1の中間分析を行うと、ペルツズマブアームでは80件の死亡例及びプラセボアームでは89件の死亡例があった。初期時点において著しい治療効果はなかった(ハザード比0.89、95%CI、0.66~1.21、P=0.4673)。
【0263】
心臓安全性
少なくとも単回用量の研究治療(化学療法または標的療法)を受けた患者を、患者が実際に受けた治療による安全性分析に含んだ。アジュバント治療のペルツズマブを受けた患者は、ペルツズマブ安全性分析集団群に入れる。ペルツズマブではない研究医薬を受けた患者は、対照安全性分析集団群に入れる。
【0264】
主要心臓エンドポイントは、心不全NYHAクラスIIIもしくはIV、ならびにベースラインから少なくとも10のEFポイント及び50%未満へのLVEFにおける低下、または心臓死と定義される重度のうっ血性心不全(CHF)であった。APHINITY Cardiac Advisory Board(CAB)によって心臓死を予見定義した。
【0265】
二次心臓エンドポイントを、MUGAスキャンまたはECHOによるLVEFにおける無症候性または軽度症候性(NYHAクラスII)の著しい低下と定義し、これは、著しい低下を示したおよそ3週間以内の第2のLVEF評定によっても確認されたか、またはAPHINITY CABによっても確認された。
【0266】
考察
APHINITY研究は、大規模で、十分に検出力があるプラセボ対照の第III相臨床研究である。治療効果は、全てのサブグループを通して均一であったが、分析の初期時点において、それは、リンパ節の罹患または陰性ホルモン受容体状態に起因してより高い再発の危険性のある患者において最も検出可能であると考えられた。この併用で1年間付与されたペルツズマブの安全性プロファイルは好ましく、転移性またはネオアジュバント設定において報告された安全性と比較して、新たな安全性シグナルは観察されなかった。
【0267】
患者利益の評価は常に、効果規模と副作用による潜在危険性とを関連付けなければならない。ペルツズマブの添加によって、グレード≧3の下痢が6.2%超で起こり、下痢止め薬を用いて十分に治療できなかった可能性があり、治療を中断することになった。それにもかかわらず、ペルツズマブを用いた場合の全体的な治療中断率は、プラセボと比較して、わずか2.9%高いだけであった。最も重要なことには、大多数の患者にもかかわらず、心毒性に関しては統計的な相違が検出されなかった。ペルツズマブの心毒性の種類がトラスツズマブによって誘導される種類と同等であると推測すると、ほとんどの心臓事象は分析の時点で既に観察され、後の心臓事象は稀であろう。ペルツズマブの心臓安全性は、転移性設定において以前の試験で(Swain et al.,Oncologist.2013;18(3):257-64)、ならびにネオアジュバント設定におけるトラスツズマブ及びエピルビシンによる同時投与に関しても既に実証された(Schneeweiss et al.,Ann.Oncol.2013 24(9);278-84)。
【0268】
APHINITY研究の結果の重要性は、アジュバント治療としてのペルツズマブの投与を超える。このアジュバント研究は、長期の結果に関するネオアジュバント研究において観察された病理学的完全奏効(pCR)に代わる概念実証としてもみなされた。NeoSphere研究によって、ドセタキセル及びトラスツズマブの治療の12週間後の29.0%から、同じ治療であるが、ペルツズマブの添加を伴う治療後の45.8%まで、pCR率の増加が報告された(Gianni et al.,Lancet Oncol.2012 13(1):25-32)。対応する5年間の無増悪生存率は、ペルツズマブを伴わない場合は81%(95%CI、71%~87%)であり、ペルツズマブを伴う場合は86%(95%CI、77%~91%)であったが、この試験は、統計的に著しい相違を示すほど十分に検出力がなかった。タキサン及びアントラサイクリン(または、カルボプラチン)を含むより強力な化学療法を考慮すると、APHINITY研究において観察された効果規模は、pCR到達における報告されたネオアジュバント効果に十分に対応している。
【0269】
結果として、APHINITY試験は、ペルツズマブが、化学療法及びトラスツズマブに添加されるとき、手術可能なHER2陽性乳癌を有する患者においてIDFSを有意に改善し、かつ新たな安全性シグナルが特定されなかったことを実証する。より長期間もしくはより短期間の治療の効能等のさらなる態様はさらに探求される必要があるが、この試験は、HER2陽性EBCを有する患者の治療に関する重要な事象に相当する。
【0270】
本発明のある特定の実施形態が、本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者に理解されるであろう。ここで、当業者は、多数の変化形、変更、及び置換を本発明から逸脱することなく想定するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替手段が、本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、特許請求の範囲内の方法及び構造ならびにそれらの等価物を包含することが意図される。
【配列表】