IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

<>
  • 特許-光学式測定装置 図1
  • 特許-光学式測定装置 図2
  • 特許-光学式測定装置 図3
  • 特許-光学式測定装置 図4
  • 特許-光学式測定装置 図5
  • 特許-光学式測定装置 図6
  • 特許-光学式測定装置 図7
  • 特許-光学式測定装置 図8
  • 特許-光学式測定装置 図9
  • 特許-光学式測定装置 図10
  • 特許-光学式測定装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】光学式測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/08 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
G01B11/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019131654
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021018061
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 圭吾
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-210639(JP,A)
【文献】特開2003-329432(JP,A)
【文献】特開2015-190869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
m(mは3以上の整数)個の反射面を備え、回転可能なポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーに光ビームを照射する発光装置と、
前記ポリゴンミラーによって反射された前記光ビームを測定領域に導く照射光学系と、
前記測定領域に照射された前記光ビームを受光して第1受光信号を出力する第1受光部と、
前記測定領域とは異なる領域に照射された前記光ビームを受光して第2受光信号を出力する第2受光部と、
前記第1受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、前記第2受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、の間にクロックパルスを計数し、エッジカウント値として出力するカウント回路と、
前記エッジカウント値に基づいて測定対象物の寸法を示す寸法データを出力する演算処理部と、
前記寸法データの補正に際して参照される補正パラメータを記憶する記憶装置と
を備え、
前記演算処理部は、前記寸法データの取得に際し、前記ポリゴンミラーがn(nは2以上の整数)回回転する間に、
前記ポリゴンミラーの回転に対応して周期的に変動するm×n通りの前記エッジカウント値を取得し、
前記記憶装置からm通りの補正パラメータをn回ずつ取得する
光学式測定装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記m通りの補正パラメータに基づいて、前記m×n通りのエッジカウント値から前記周期的な変動の影響を相殺する補正処理を行い、
前記補正処理によって補正された前記m×n通りのエッジカウント値に基づいてm×n通りの前記寸法データを出力する
請求項記載の光学式測定装置。
【請求項3】
前記演算処理部は、前記補正パラメータの取得に際し、
前記ポリゴンミラーがn(nは2以上の整数)回回転する間にm×n通りの前記エッジカウント値を取得し、
前記m個の反射面それぞれに対応するn通りの前記エッジカウント値の平均値を、m通りの第1平均値として取得し、
前記m×n通りの前記エッジカウント値の平均値を、第2平均値として取得し、
前記m通りの第1平均値、及び、前記第2平均値を示す情報を、前記補正パラメータとして前記記憶装置に入力する
請求項1又は2記載の光学式測定装置。
【請求項4】
m(mは3以上の整数)個の反射面を備え、回転可能なポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーに光ビームを照射する発光装置と、
前記ポリゴンミラーによって反射された前記光ビームを測定領域に導く照射光学系と、
前記測定領域に照射された前記光ビームを受光して第1受光信号を出力する第1受光部と、
前記測定領域とは異なる領域に照射された前記光ビームを受光して第2受光信号を出力する第2受光部と、
前記第1受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、前記第2受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、の間にクロックパルスを計数し、エッジカウント値として出力するカウント回路と、
前記エッジカウント値に基づいて測定対象物の寸法を示す寸法データを出力する演算処理部と
を備え、
前記演算処理部は、前記寸法データの取得に際し、前記ポリゴンミラーがn(nは2以上の整数)回回転する間に、
前記ポリゴンミラーの回転に対応して周期的に変動するm×n通りの前記エッジカウント値を取得し、
前記エッジカウント値の周期的な変動の影響を相殺して、m×n通りの前記寸法データを出力する
光学式測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物が配置される測定領域に光ビームを照射し、この光ビームを走査方向に走査して、この走査方向における測定対象物の寸法等を測定する光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の反射面を備えるポリゴンミラーと、ポリゴンミラーに光ビームを照射する発光装置と、ポリゴンミラーによって反射された光ビームを測定領域に導く照射光学系と、測定領域に照射された光ビームを受光して第1受光信号を出力する第1受光部と、測定領域とは異なる領域に照射された光ビームを受光して第2受光信号を出力する第2受光部と、第1受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、第2受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、の間にクロックパルスを計数し、エッジカウント値として出力するカウント回路と、エッジカウント値に基づいて測定対象物の寸法を示す寸法データを出力する演算処理部と、を備える光学式測定装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
例えば、この様な光学式測定装置によって測定対象物の外径を測定する場合、測定領域に測定対象物を配置し、ポリゴンミラーに光ビームを照射し、ポリゴンミラーを回転させて光ビームを走査する。光ビームが測定対象物に到達すると、光ビームが測定対象物によって遮光され、第1受光部で光ビームが受光されなくなる。これに伴い、上記第1受光信号が立ち下がり、第1のエッジカウント値に対応するクロックパルスの計数が開始される。また、光ビームが測定対象物を通過すると、光ビームが測定領域を通過し、第1受光部で光ビームが受光されるようになる。これに伴い、上記第1受光信号が立ち上がり、第2のエッジカウント値に対応するクロックパルスの計数が開始される。また、光ビームが第2受光部に到達すると、上記第2受光信号が立ち上がり、上記第1及び第2のエッジカウント値が取得される。例えば、これら第1及び第2のエッジカウント値の差分と、光ビームが1クロックあたりに走査される距離と、を乗算して、その結果を測定対象物の寸法を示す寸法データとして出力する。
【0004】
この様な光学式測定装置では、製造誤差、レンズの球面収差等の影響により、上記エッジカウント値に誤差が生じる場合がある。そこで、従来の光学式測定装置では、補正テーブルを用いて上記エッジカウント値を補正し、補正後のエッジカウント値に基づいて寸法データを算出する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-138115号公報
【文献】特開2015-190869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この様な光学式測定装置では、ポリゴンミラーを回転させて光ビームを複数の反射面によって順次走査すると、走査の度に第1受光信号の波形が異なってしまい、上記エッジカウント値及び寸法データがばらついてしまう場合があった。発明者らの鋭意検討の結果、この様なエッジカウント値のばらつきはポリゴンミラーの組付誤差・製造誤差等に起因するものであり、エッジカウント値はポリゴンミラーの回転に応じて周期的に変動する場合があることがわかった。
【0007】
この様なエッジカウント値のばらつきは、例えば、ポリゴンミラーを1回回転させて全ての反射面に対応するエッジカウント値又は寸法データを取得し、これらの平均値を算出することにより、抑制することが出来る。しかしながら、この様な光学式測定装置では、高速且つ高精度な測定が要求される場合もあり、ポリゴンミラーを1回回転させることなく正確なエッジカウント値を取得出来ることが望ましい。
【0008】
本発明は、この様な点に鑑みなされたもので、高速且つ高精度な測定が可能な光学式測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決すべく、本発明の一の実施形態に係る光学式測定装置は、m(mは3以上の整数)個の反射面を備え回転可能なポリゴンミラーと、ポリゴンミラーに光ビームを照射する発光装置と、ポリゴンミラーによって反射された光ビームを測定領域に導く照射光学系と、測定領域に照射された光ビームを受光して第1受光信号を出力する第1受光部と、測定領域とは異なる領域に照射された光ビームを受光して第2受光信号を出力する第2受光部と、第1受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、第2受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、の間にクロックパルスを計数し、エッジカウント値として出力するカウント回路と、エッジカウント値に基づいて測定対象物の寸法を示す寸法データを出力する演算処理部と、寸法データの補正に際して参照される補正パラメータを記憶する記憶装置と、を備える。また、演算処理部は、寸法データの取得に際し、ポリゴンミラーが1回回転する間に、記憶装置からm通りの補正パラメータを順次取得する。
【0010】
ここで、m個の反射面を備えるポリゴンミラーが1回回転する間に出力されるm通りのエッジカウント値には、それぞれ、上記周期的な変動の影響がm通りの態様で含まれている。この様なエッジカウント値の変動は、m個の反射面に対応するm通りの補正パラメータを使用することにより、好適に抑制可能である。そこで、本発明の一の実施形態においては、寸法データの取得に際し、ポリゴンミラーが1回回転する間にm通りの補正パラメータを順次取得する。これにより、m通りのエッジカウント値それぞれに含まれる上記周期的な変動の影響を相殺することが出来る。これにより、ポリゴンミラーを1回回転させることなく正確なエッジカウント値を取得することが出来る。従って、高速且つ高精度な測定が可能な光学式測定装置を提供することが出来る。
【0011】
上記演算処理部は、例えば、寸法データの取得に際し、ポリゴンミラーがn(nは2以上の整数)回回転する間に、ポリゴンミラーの回転に対応して周期的に変動するm×n通りのエッジカウント値を取得し、記憶装置からm通りの補正パラメータをn回ずつ取得することが出来る。
【0012】
上記演算処理部は、例えば、m通りの補正パラメータに基づいて、m×n通りのエッジカウント値から周期的な変動の影響を相殺する補正処理を行い、補正処理によって補正されたm×n通りのエッジカウント値に基づいてm×n通りの寸法データを出力することが出来る。
【0013】
上記演算処理部は、上記補正パラメータの取得に際し、ポリゴンミラーがn(nは2以上の整数)回回転する間にm×n通りのエッジカウント値を取得し、m個の反射面それぞれに対応するn通りのエッジカウント値の平均値を、m通りの第1平均値として取得し、m×n通りのエッジカウント値の平均値を、第2平均値として取得し、m通りの第1平均値、及び、第2平均値を示す情報を、補正パラメータとして記憶装置に入力することが出来る。
【0014】
本発明の一の実施形態に係る光学式測定装置は、m(mは3以上の整数)個の反射面を備え、回転可能なポリゴンミラーと、ポリゴンミラーに光ビームを照射する発光装置と、ポリゴンミラーによって反射された光ビームを測定領域に導く照射光学系と、測定領域に照射された光ビームを受光して第1受光信号を出力する第1受光部と、測定領域とは異なる領域に照射された光ビームを受光して第2受光信号を出力する第2受光部と、第1受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、第2受光信号の立ち上がり又は立ち下りのタイミングと、の間にクロックパルスを計数し、エッジカウント値として出力するカウント回路と、エッジカウント値に基づいて測定対象物の寸法を示す寸法データを出力する演算処理部と、を備える。また、演算処理部は、寸法データの取得に際し、ポリゴンミラーがn(nは2以上の整数)回回転する間に、ポリゴンミラーの回転に対応して周期的に変動するm×n通りのエッジカウント値を取得し、エッジカウント値の周期的な変動の影響を相殺して、m×n通りの寸法データを出力する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高速且つ高精度な測定が可能な光学式測定装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式測定装置の構成を示す斜視図である。
図2】同光学式測定装置の構成を示す模式的なブロック図である。
図3】同光学式測定装置によって測定対象物Wの外径D1を測定する際に取得される受光信号S1、エッジ信号S2、リセット信号RST及びエッジカウント値ECV(E1~E4)の様子を示す模式的なグラフである。
図4】ポリゴンミラーを複数回回転させた場合に取得されるエッジ信号S2、リセット信号RST及びエッジカウント値ECV(E1~E4)の様子を示す模式的なグラフである。
図5】ポリゴンミラーの回転に応じて周期的に変動するエッジカウント値ECVを示す模式的なグラフである。
図6】ポリゴンミラーの組付誤差・製造誤差等について説明するための模式的な図である。
図7】補正パラメータの取得方法を例示する模式的なフローチャートである。
図8】補正パラメータの取得方法を例示する模式的なグラフである。
図9】補正テーブルを例示する模式的な図である。
図10】エッジカウント値ECVの補正方法を例示する模式的なグラフである。
図11】エッジカウント値ECVの補正方法を例示する模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態に係る光学式測定装置について説明する。
【0018】
[概略構成]
図1に示す様に、本実施形態に係る光学式測定装置は、測定部100と、測定部100を制御する制御部200と、を備える。測定部100は、測定対象物Wが配置される測定領域101と、測定領域101に光ビーム(レーザ光L)を照射してこの光ビームを走査方向(-Z方向)に走査する光ビーム走査部110と、測定領域101を通過した光ビームを受光する受光部120と、光ビーム走査部110及び受光部120を連結する連結部130と、を備える。
【0019】
尚、図1の例では、光ビーム走査部110及び受光部120がX方向に離間しており、光ビーム走査部110及び受光部120の間の空間が測定領域101となっている。また、測定領域101にはY方向に延伸する円柱状の測定対象物Wが配置されている。また、光ビーム走査部110は、光ビーム走査部110の筐体110aに設けられた窓部110bを介して-X方向に進行するレーザ光Lを出射し、-Z方向に走査している。
【0020】
図2は、測定部100の光ビーム走査部110及び受光部120、並びに、制御部200の構成を例示している。
【0021】
光ビーム走査部110は、レーザ光Lを出射するレーザ光源111と、出射されたレーザ光Lを反射するミラー112と、ミラー112で反射されたレーザ光Lを更に反射するポリゴンミラー113と、ポリゴンミラー113で反射されたレーザ光Lを測定領域101に導くfθレンズ114(照射光学系)と、レーザ光Lの走査終了時にリセット信号RST(第2受光信号)を出力するフォトダイオード等の受光素子115と、を備える。また、光ビーム走査部110は、ポリゴンミラー113を回転させるモータ116と、モータ116を駆動するモータ駆動回路117と、クロック信号CLKに応じてモータ駆動回路117に同期信号を入力するモータ同期回路118と、を備える。
【0022】
受光部120は、測定領域101を通過したレーザ光Lを集光する集光レンズ121と、集光されたレーザ光Lを受光するフォトダイオード等の受光素子122と、受光素子122の出力信号を増幅して受光信号S1(第1受光信号)として出力するアンプ123と、を備える。
【0023】
制御部200は、受光信号S1を2値化してエッジ信号S2を出力するエッジ検出回路201と、エッジ信号S2の立ち上がり及び立ち下がりに応じてエッジ選択信号S3を立ち上げるセグメント選択回路202と、エッジ選択信号S3及びクロック信号CLKのAND信号を一又は複数のゲート信号S4として出力するゲート回路203と、一又は複数のゲート信号S4に含まれるクロックパルスの数を数えるカウント回路204と、補正テーブルが記録されるメモリ205と、を備える。また、制御部200は、バス206を介してこれらの構成に接続されたCPU207と、これらの構成にクロック信号CLKを出力するクロック信号出力回路208と、を備える。
【0024】
[概略動作]
図3は、本実施形態に係る光学式測定装置の動作を模式的に示している。図3の例では、上記光学式測定装置によって4つのエッジE1~E4を検出する例について説明する。
【0025】
レーザ光Lの走査は、ポリゴンミラー113(図2)を回転させることによって行う。例えばポリゴンミラー113が正16角柱状の形状を有し、16個の反射面を備えている場合、ポリゴンミラー113を1回回転させるごとに、レーザ光Lは16回ずつ走査される。
【0026】
タイミングt1では、レーザ光LがエッジE1に到達する。エッジE1は、例えば、光ビーム走査部110の筐体110aに設けられる窓部110bの上端である(図1参照)。タイミングt1では、レーザ光Lが測定領域101を通過して受光部120に受光される。また、受光信号S1がしきい値Vthよりも大きい値となり、エッジ信号S2が立ち上がる。また、カウント回路204は、エッジE1に対応するクロックパルスの計数を開始する。以下、エッジE1に対応するクロックパルスの数を、「エッジカウント値ECV(E1)」等と呼ぶ。
【0027】
タイミングt2では、レーザ光LがエッジE2に到達する。エッジE2は、例えば、測定対象物Wの上端である。タイミングt2では、レーザ光Lが測定対象物Wによって遮光され、測定領域101を通過しなくなる。また、受光信号S1がしきい値Vthよりも小さい値となり、エッジ信号S2が立ち下がる。また、カウント回路204は、エッジE2に対応するクロックパルスの計数を開始する。以下、エッジE2に対応するクロックパルスの数を、「エッジカウント値ECV(E2)」等と呼ぶ。
【0028】
タイミングt3では、レーザ光LがエッジE3に到達する。エッジE3は、例えば、測定対象物Wの下端である。タイミングt3では、レーザ光Lが測定領域101を通過して受光部120に受光される。また、受光信号S1がしきい値Vthよりも大きい値となり、エッジ信号S2が立ち上がる。また、カウント回路204は、エッジE3に対応するクロックパルスの計数を開始する。以下、エッジE3に対応するクロックパルスの数を、「エッジカウント値ECV(E3)」等と呼ぶ。
【0029】
タイミングt4では、レーザ光LがエッジE4に到達する。エッジE4は、例えば、光ビーム走査部110の筐体110aに設けられる窓部110bの下端である(図1参照)。タイミングt4では、レーザ光Lが光ビーム走査部110の筐体110aによって遮光され、測定領域101を通過しなくなる。また、受光信号S1がしきい値Vthよりも小さい値となり、エッジ信号S2が立ち下がる。また、カウント回路204は、エッジE4に対応するクロックパルスの計数を開始する。以下、エッジE4に対応するクロックパルスの数を、「エッジカウント値ECV(E4)」等と呼ぶ。
【0030】
その後のタイミングt5において、レーザ光Lは光ビーム走査部110の筐体110a内部に配置された受光素子115(図2)によって受光され、リセット信号RSTが立ち上がる。カウント回路204は、リセット信号RSTを受信して、エッジE1~E4に対応する4通りのエッジカウント値ECV(E1~E4)をCPU207に出力する。また、カウント回路204は、保持していたエッジカウント値ECV(E1~E4)をリセットする。CPU207は、例えば、メモリ205に記録された補正テーブルを参照し、エッジカウント値ECVを補正して、補正後のエッジカウント値ECV´を取得する。その後、例えば補正後のエッジカウント値ECV´(E2)から補正後のエッジカウント値ECV´(E3)を減算して差分値を取得する。また、この差分値と、レーザ光Lが1クロックあたりに-Z方向に走査される距離と、を乗算し、その結果を測定対象物Wの外径を示す寸法データとして出力する。
【0031】
尚、図3には4通りのエッジカウント値ECV(E1~E4)を取得する例を示したが、何通りのエッジカウント値を取得するかは、測定の目的等によって適宜調整可能である。例えば、図3に例示した様な測定対象物Wの外径を測定する場合、又は、メモリ205に記録される補正テーブルを取得する場合であれば、図3に例示する様に、4通りのエッジカウント値ECV(E1~E4)を取得することが出来る。また、測定の態様に応じて、6通り以上のエッジカウント値ECVを取得することも出来る。ただし、測定の原理上、取得するエッジカウント値ECVの数は、受光信号S1の立ち上がり及び立ち下がりに対応する偶数通りの値となる。
【0032】
[エッジカウント値ECVのばらつき]
図4(a)に示す様に、ポリゴンミラー113を回転させると、レーザ光Lがポリゴンミラー113の反射面F1によって走査され、エッジ信号S2及びリセット信号RSTが取得される。更にポリゴンミラー113を回転させると、レーザ光Lがポリゴンミラー113の反射面F2に照射され、反射面F2によって走査され、エッジ信号S2及びリセット信号RSTが取得される。更にポリゴンミラー113を回転させると、レーザ光Lがポリゴンミラー113の反射面F3に照射され、反射面F3によって走査され、エッジ信号S2及びリセット信号RSTが取得される。
【0033】
ここで、図4(b)に示す様に、反射面F1によってレーザ光Lを走査する場合と、反射面F2によってレーザ光Lを走査する場合とでは、エッジ信号S2及びリセット信号RSTの波形(立ち上がり及び立ち下りのタイミング)が異なってしまう場合がある。この様な場合、反射面F1に対応する4つのエッジカウント値ECV(E1~E4,F1)と、反射面F2に対応する4つのエッジカウント値ECV(E1~E4,F2)とが、それぞれ異なる値となってしまう。
【0034】
ここで、例えば、16個の反射面F1~F16を有するポリゴンミラー113をn(nは2以上の整数)回回転させて、エッジE2に対応する16×n通りのエッジカウント値ECV(E2,F1~F16,1~n)を取得した場合、例えば図5に示す様に、エッジカウント値ECVが、ポリゴンミラー113の回転に対応して周期的に変動する場合がある。例えば、ポリゴンミラー113を1回回転させた場合に取得される16通りのエッジカウント値ECV(E2,F1~F16,1)の間でのばらつきが比較的大きくなり、反射面F1に対応するn通りのエッジカウント値ECV(E2,F1,1~n)の間でのばらつきが比較的小さくなる場合がある。
【0035】
この様なエッジカウント値ECVの周期的な変動は、例えば、図6(a)に示す様に、ポリゴンミラー113の中心位置113aがモータ116の回転軸116aからずれてしまったり、図6(b)に示す様に、ポリゴンミラー113が取り付け面102に対して斜めに取り付けられてしまったり、図6(c)に示す様に、ポリゴンミラー113の各反射面F1~F16の鏡面加工に際してムラが生じてしまったりすることが原因であると考えられる。
【0036】
この様なエッジカウント値ECVの周期的な変動は、例えば、ポリゴンミラー113を1回回転させて16通りのエッジカウント値ECV(E2,F1~F16,1)を取得し、これらの平均値を算出することにより、抑制することが出来る。しかしながら、図1図3を参照して説明した様な光学式測定装置では、高速且つ高精度な測定が要求される場合もあり、ポリゴンミラー113を1回回転させることなく正確なエッジカウント値ECVを取得出来ることが望ましい。
【0037】
ここで、16個の反射面を備えるポリゴンミラーが1回回転する間に出力される16通りのエッジカウント値ECV(E2,F1~F16,1)には、それぞれ、上記周期的な変動の影響が16通りの態様で含まれている。この様なエッジカウント値ECVの変動は、反射面F1~F16に対応する16通りの補正パラメータを使用することにより、好適に抑制可能である。そこで、本実施形態においては、ポリゴンミラー113の16個の反射面F1~F16に対応する16通りの補正パラメータを使用して、上述の様なエッジカウント値ECVのばらつきを抑制する。尚、16通りの補正パラメータは、補正テーブルとしてメモリ205に記録される。
【0038】
[補正パラメータの取得]
次に、図7図9等を参照して、本実施形態に係る光学式測定装置の、補正パラメータの取得方法について説明する。
【0039】
補正パラメータの取得に際しては、例えば、図8(a)に例示する様に、ポリゴンミラー113をn(nは2以上の整数)回回転させて、エッジE1~E4、反射面F1~F16、及び、回転数1~nに対応する4×16×n通りのエッジカウント値ECV(E1~E4,F1~F16,1~n)を取得する(ステップS101)。
【0040】
次に、例えば、図8(b)に例示する様に、エッジE2、反射面F1、及び、回転数1~nに対応するn通りのエッジカウント値ECV(E2,F1,1~n)の平均値を算出し、エッジE2及び反射面F1に対応する平均値ECVa(E2,F1)として取得する。また、エッジE1~E4、及び、反射面F1~F16に対応する他のエッジカウント値ECVにも同様の処理を行い、エッジE1~E4、及び、反射面F1~F16に対応する4×16通りの平均値ECVa(E1~E4,F1~F16)を取得する(ステップS102)。
【0041】
次に、例えば、図8(c)に例示する様に、エッジE2、反射面F1~F16、及び、回転数1~nに対応する16×n通りのエッジカウント値ECV(E2,F1~F16,1~n)の平均値を算出し、エッジE2に対応する平均値ECVb(E2)として取得する。また、エッジE1,E3,E4に対応する他のエッジカウント値ECVにも同様の処理を行い、エッジE1~E4に対応する4通りの平均値ECVb(E1~E4)を取得する(ステップS103)。
【0042】
次に、例えば、図8(d)に例示する様に、平均値ECVb(E2)から平均値ECVa(E2,F1)を減算し、エッジE2及び反射面F1に対応する補正値C(E2,F1)として取得する。また、エッジE1~E4、及び、反射面F1~F16に対応する他の平均値ECVb及び平均値ECVaにも同様の処理を行い、エッジE1~E4、及び、反射面F1~F16に対応する4×16通りの補正値C(E1~E4,F1~F16)を取得する(ステップS104)。
【0043】
次に、補正テーブルを生成し、この補正テーブルをメモリ205に記録する(ステップS105)。補正テーブルは、例えば、図9に示す様に、エッジE1~E4、及び、反射面F1~F16に対応する4×16通りの補正値C(E1~E4,F1~F16)を補正パラメータとして含む。また、補正テーブルは、例えば、4通りの平均値ECVb(E1~E4)を補正パラメータとして含む。
【0044】
[エッジカウント値ECVの補正]
次に、図10及び図11を参照して、本実施形態に係る光学式測定装置の、エッジカウント値ECVの補正方法の一例について説明する。図10及び図11の例では、光学式測定装置によってエッジE1とエッジE2との距離を算出して測定対象物Wの外径を測定する例について説明する。
【0045】
エッジカウント値ECVの補正に際しては、例えば、補正の対象となるエッジカウント値ECVに対応する反射面を特定する。反射面は、例えば、CPU207中のレジスタの一部をカウンタとして用いて特定することも出来るし、CPU207の外部にカウント回路等を設けて特定することも出来る。図には、特定された反射面が反射面F1である例を示す。
【0046】
次に、例えば図10に示す様に、メモリ205から反射面F1に対応する補正パラメータを取得して、エッジE1~E4に対応する座標点p1~p4を少なくとも2つ取得する。座標点p1~p4のx軸の値は、それぞれ、エッジE1~E4に対応する平均値ECVa(E1~E4,F1)である。座標点p1~p4のy軸の値は、それぞれ、エッジE1~E4に対応する平均値ECVb(E1~E4)である。尚、平均値ECVa(E1~E4,F1)は、例えば、平均値ECVb(E1~E4)から補正値C(E1~E4,F1)を減算することによって取得することが出来る。
【0047】
次に、例えば線形補完等の補完処理を行い、座標点p1と座標点p2とを通る線分l1、座標点p2と座標点p3とを通る線分l2、及び、座標点p3と座標点p4とを通る線分l3の、少なくとも一つを取得する。尚、図には線形補完による補完処理の例を示したが、二次補完又は三次補完等、その他の補完処理を行うことも出来る。
【0048】
次に、例えば図11に示す様に、補正前のエッジカウント値ECVをx座標とする上記線分l1,l2又はl3上の点を求め、この点のy座標を補正後のエッジカウント値ECV´とする。例えば図11には、補正前のエッジカウント値ECV(E2,F1)と、この補正前のエッジカウント値ECV(E2,F1)をx座標とする線分l2上の点p2´と、補正後のエッジカウント値ECV´(E2)と、を例示している。また、図11には、補正前のエッジカウント値ECV(E3,F1)と、この補正前のエッジカウント値ECV(E3,F1)をx座標とする線分l3上の点p3´と、補正後のエッジカウント値ECV´(E3)と、を例示している。
【0049】
[効果]
図5等を参照して説明した様に、ポリゴンミラーを使用する光学式測定装置では、エッジカウント値ECVが、ポリゴンミラーの回転に対応して周期的に変動する場合がある。
【0050】
そこで、本実施形態においては、ポリゴンミラー113が一回回転する間にメモリ205から16通りの補正パラメータを順次取得し、この16通りの補正パラメータを使用して上述の様なエッジカウント値ECVの周期的な変動の影響を相殺する。これにより、図5等を参照して説明した様なエッジカウント値ECVのばらつきを大幅に抑制することが出来る。これにより、ポリゴンミラーを一回回転させることなく正確なエッジカウント値を取得することが出来る。従って、高速且つ高精度な測定を行うことが出来る。
【0051】
また、本実施形態に係る光学式測定装置では、ポリゴンミラー113の組付誤差・製造誤差等に起因する誤差の影響を抑制可能である。従って、測定精度を落とすことなくより安価にポリゴンミラー113の組付及び製造を行うことが可能となり、光学式測定装置の製造コストを削減することが出来る。
【0052】
また、ポリゴンミラー113を使用する光学式測定装置では、ポリゴンミラー113を回転させるモータ116の回転軸が曲がってしまう等、経年劣化が生じる場合がある。この様な場合でも、本実施形態に係る光学式測定装置では、補正パラメータを更新することにより、この様な経年劣化の影響を抑制することが出来る。これにより、光学式測定装置の長寿命化を実現することが出来る。
【0053】
[変形例]
以上、第1の実施形態に係る光学式測定装置について説明した。しかしながら、第1の実施形態は例示に過ぎず、具体的な構成等は適宜調整可能である。
【0054】
例えば、第1の実施形態においては、ポリゴンミラー113が16個の反射面F1~F16を備える例について説明したが、ポリゴンミラー113の反射面の数は、適宜調整可能である。
【0055】
また、例えば、図7図9を参照して説明した様に、第1の実施形態においては、4つのエッジE1~E4を用いて補正パラメータを取得する例について説明した。しかしながら、いくつのエッジを用いて補正パラメータを取得するかは、適宜調整可能である。例えば、2つのエッジのみを用いて補正パラメータを取得することも出来るし、6つ以上のエッジを用いて補正パラメータを取得することも出来る。
【0056】
また、例えば、図7図9を参照して説明した様に、第1の実施形態においては、ポリゴンミラー113を複数回回転させて複数通りのエッジカウント値ECVを取得し、この複数通りのエッジカウント値を用いて補正パラメータを取得する例について説明した。しかしながら、補正パラメータ取得の具体的な処理は、適宜調整可能である。例えば、ポリゴンミラー113を一回だけ回転させてエッジカウント値ECVを取得し、このエッジカウント値ECVを用いて補正パラメータを取得することも出来る。また、例えば、ポリゴンミラー113を一回回転させる度に複数のエッジカウント値ECVを取得し、この複数のエッジカウント値を用いて移動平均によって補正パラメータを取得することも出来る。この場合には、例えば、ポリゴンミラー113を一回回転させるごとにエッジE1~E4、及び、反射面F1~F16に対応する4×16通りのエッジカウント値ECV(E1~E4,F1~F16)を取得し、この4×16通りのエッジカウント値ECV(E1~E4,F1~F16)によって4×16×n通りのエッジカウント値ECV(E1~E4,F1~F16,1~n)の一部を更新して、この更新された4×16×n通りのエッジカウント値ECVを用いて上記平均値ECVa、ECVbを取得することも出来る。
【0057】
また、例えば、図7図9を参照して説明した様に、第1の実施形態においては、補正テーブルに4×16通りの補正値C(E1~E4,F1~F16)及び4通りの平均値ECVb(E1~E4)が含まれていた。しかしながら、補正テーブルに含まれる補正パラメータは、平均値ECVa(E1~E4,F1~F16)及び平均値ECVb(E1~E4)を示す情報であれば良く、具体的な補正パラメータ等は適宜調整することが出来る。例えば、平均値ECVa(E1~E4,F1~F16)及び平均値ECVb(E1~E4)を直接補正パラメータとすることも出来る。また、例えば、図10及び図11を参照して説明した線分l1,l2,l3の切片、傾き等を補正パラメータとすることも出来る。
【0058】
また、図10及び図11を参照して説明した処理は模式的なものであり、エッジカウント値ECVの具体的な補正方法は適宜調整することが出来る。また、図10及び図11を参照して説明した様な補正処理を行う前又は後に、別の補正処理を更に行うことも出来る。
【符号の説明】
【0059】
100…測定部、101…測定領域、110…光ビーム走査部、111…レーザ光源、112…ミラー、113…ポリゴンミラー、114…fθレンズ、115…受光素子、116…モータ、117…モータ駆動回路、118…モータ同期回路、120…受光部、121…集光レンズ、122…受光素子、123…アンプ、130…連結部、200…制御部、201…エッジ検出回路、202…ゲート回路、203…カウント回路、204…メモリ、205…バス、206…CPU、207…クロック信号出力回路、211…比較回路、212…しきい値調整回路、CLK…クロック信号、S1…受光信号、ECV…エッジカウント値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11