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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】パンツ型使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20230501BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/49 311Z
A61F13/49 413
A61F13/51
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018221452
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020081461
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 圭
(72)【発明者】
【氏名】笹山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永山 唯
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大貴
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-000478(JP,A)
【文献】特開2018-000434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0228969(US,A1)
【文献】特開2010-284228(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094275(WO,A1)
【文献】特開2009-297096(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158750(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107427399(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/49
A61F 13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、
ベルト部と、吸収性本体と、を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、
前記ベルト部は、その厚さ方向の一方側から、第1非伸縮性シートと、伸縮性不織布と、伸縮性フィルムと、第2非伸縮性シートとが積層された積層部を有し、
前記伸縮性不織布、及び、前記伸縮性フィルムは、前記左右方向に伸縮し、
前記伸縮性不織布は、伸縮性繊維と、非伸縮性繊維とを含み、
前記積層部は、前記伸縮性不織布が前記左右方向に伸長している状態で前記第1非伸縮性シートに接合されている接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有し、
胴回り開口に沿う前記ベルト部の上端部には、複数の糸状弾性部材が前記上下方向に間隔をあけて配置されており、
前記ベルト部は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部と、着用者の背側に配置される後側ベルト部を有し、前記前側ベルト部の前記左右方向の両側部と前記後側ベルト部の前記左右方向の両側部とが係止部にて係止されており、
前記左右方向の中央位置において、前記積層部は前記複数の糸状弾性部材よりも下側に設けられており、
前記積層部は、前記左右方向において、一方側の前記係止部から他方側の前記係止部に亘って連続して設けられている
ことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記積層部は、前記伸縮性不織布、及び、前記伸縮性フィルムが前記左右方向に伸長している状態で互いに接合されている第2の接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項3】
請求項2に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記積層部は、前記伸縮性フィルムが前記左右方向に伸長している状態で前記第2非伸縮性シートに接合されている第3の接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項4】
請求項3に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記接合部、前記第2の接合部、及び前記第3の接合部の前記左右方向の各位置が揃っていることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項5】
請求項4に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記接合部、前記第2の接合部、及び前記第3の接合部は、溶着によって接合されており、
前記第1非伸縮性シートと、前記伸縮性不織布と、前記伸縮性フィルムと、前記第2非伸縮性シートのうちの少なくとも1つは、ポリプロピレン樹脂を含有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記積層部において、前記接合部は前記上下方向に間隔をあけて複数配置されていることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項7】
請求項6に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記左右方向に隣り合う前記接合部の間隔が一定であり、
前記上下方向に隣り合う前記接合部の間隔が一定であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記厚さ方向の前記一方側は、着用者の肌側であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項9】
請求項1から7の何れか1項に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記厚さ方向の前記一方側は、着用者の非肌側であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記ベルト部は、前記伸縮性フィルムが配置されていない非配置部を有し、
前記非配置部は、前記伸縮性不織布が前記左右方向に伸長している状態で、前記第1非伸縮性シート及び前記第2非伸縮性シートに接合されている第4の接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項11】
請求項10に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記上下方向に前記係止部と重複する前記ベルト部の部位において、前記積層部の面積の方が前記非配置部の面積よりも小さいことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記積層部は、前記前側ベルト部と前記後側ベルト部に亘って周状に設けられた周状の積層部を、前記上下方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載のパンツ型使い捨ておむつであって、
前記胴回り開口に沿う前記ベルト部の上端部では、前記伸縮性不織布と前記伸縮性フィルムとが配置されていないことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前身頃部及び後身頃部(ベルト部)において、肌側シートと非肌側シートの間に伸縮性不織布が配置され、これらのシートが点在する複数の接合部によって接合された使い捨ておむつが開示されている。このような使い捨ておむつにおいて、伸縮性不織布が横方向に収縮すると、横方向に隣り合う溶着部の間で、肌側シートが肌側に向かって突出し、非肌側シートが非肌側に向かって突出し、襞(凸部)が形成される。一方、伸縮性不織布を構成する繊維は厚さ方向に広がり、襞を支持するクッションとなる。そのため、襞が簡単に凹んでしまうことを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018‐000478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のおむつでは、伸縮性不織布を構成する繊維が、肌側又は非肌側の一方側に偏って広がったり、肌側と非肌側に同程度に広がったりと、凸部によって広がり方にばらつきが生じていた。このように、凸部の大きさ及びクッション性にばらつきが生じていると、着用者への肌当たりが不均一となり、おむつの着け心地が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、パンツ型使い捨ておむつのベルト部において厚さ方向の一方側に突出する凸部の大きさ及びクッション性のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、
ベルト部と、吸収性本体と、を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、
前記ベルト部は、その厚さ方向の一方側から、第1非伸縮性シートと、伸縮性不織布と、伸縮性フィルムと、第2非伸縮性シートとが積層された積層部を有し、
前記伸縮性不織布、及び、前記伸縮性フィルムは、前記左右方向に伸縮し、
前記伸縮性不織布は、伸縮性繊維と、非伸縮性繊維とを含み、
前記積層部は、前記伸縮性不織布が前記左右方向に伸長している状態で前記第1非伸縮性シートに接合されている接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有し、
胴回り開口に沿う前記ベルト部の上端部には、複数の糸状弾性部材が前記上下方向に間隔をあけて配置されており、
前記ベルト部は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部と、着用者の背側に配置される後側ベルト部を有し、前記前側ベルト部の前記左右方向の両側部と前記後側ベルト部の前記左右方向の両側部とが係止部にて係止されており、
前記左右方向の中央位置において、前記積層部は前記複数の糸状弾性部材よりも下側に設けられており、
前記積層部は、前記左右方向において、一方側の前記係止部から他方側の前記係止部に亘って連続して設けられている
ことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつとする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パンツ型使い捨ておむつのベルト部において厚さ方向の一方側に突出する凸部の大きさ及びクッション性のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図である。
図3図2のI-I線での概略断面図である。
図4図4Aは積層部30の概略断面図であり、図4Bは非配置部50の概略断面図である。
図5】接合部40,41の説明図である。
図6図6A図6Cは変形例の積層部30の概略断面図である。
図7図7A図7Cはおむつ1を着用した状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
すなわち、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、ベルト部と、吸収性本体と、を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、前記ベルト部は、その厚さ方向の一方側から、第1非伸縮性シートと、伸縮性不織布と、伸縮性フィルムと、第2非伸縮性シートとが積層された積層部を有し、前記伸縮性不織布、及び、前記伸縮性フィルムは、前記左右方向に伸縮し、前記伸縮性不織布は、伸縮性繊維と、非伸縮性繊維とを含み、前記積層部は、前記伸縮性不織布が前記左右方向に伸長している状態で前記第1非伸縮性シートに接合されている接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0010】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、伸縮性不織布が収縮して厚さ方向に広がる際に、第2非伸縮性シート側への広がりを伸縮性フィルムによって規制できる。そのため、第1非伸縮性シートの凸部内に、同程度の量の伸縮性不織布を充填できる。よって、厚さ方向の一方側に突出する凸部の大きさ及びクッション性のばらつきを抑制でき、ベルト部の着け心地が向上する。
【0011】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記積層部は、前記伸縮性不織布、及び、前記伸縮性フィルムが前記左右方向に伸長している状態で互いに接合されている第2の接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0012】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、左右方向に隣り合う第2の接合部の間で、伸縮性不織布が厚さ方向に広がりやすくなるため、凸部の大きさ及びクッション性を高めることができる。
【0013】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記積層部は、前記伸縮性フィルムが前記左右方向に伸長している状態で前記第2非伸縮性シートに接合されている第3の接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0014】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、左右方向に隣り合う第3の接合部の間で、第2非伸縮性シートがたくれるため、視覚的に柔らかいベルト部である印象をユーザーに付与できる。
【0015】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部、前記第2の接合部、及び前記第3の接合部の前記左右方向の各位置が揃っていることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0016】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、左右方向に隣り合う接合部の間で、伸縮性不織布が厚さ方向に広がりやすくなるため、凸部の大きさ及びクッション性を高めることができる。
【0017】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部、前記第2の接合部、及び前記第3の接合部は、溶着によって接合されており、前記第1非伸縮性シートと、前記伸縮性不織布と、前記伸縮性フィルムと、前記第2非伸縮性シートのうちの少なくとも1つは、ポリプロピレン樹脂を含有することを特徴とするパンツ型の使い捨ておむつである。
【0018】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、接合部の位置を容易に揃えることができる。また、接合部での溶着強度を高めることができ、厚さ方向の一方側に突出する凸部が維持されやすくなる。
【0019】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記積層部において、前記接合部は前記上下方向に間隔をあけて複数配置されていることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0020】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、ベルト部が上下方向に変形しやすくなり、着用者の下腹部や臀部の膨らみに沿ってフィットしやすく、ベルト部の着け心地が向上する。
【0021】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記左右方向に隣り合う前記接合部の間隔が一定であり、前記上下方向に隣り合う前記接合部の間隔が一定であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0022】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、厚さ方向の一方側に突出する凸部の大きさ及びクッション性をより均一化することができる。
【0023】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記厚さ方向の前記一方側は、着用者の肌側であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0024】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、大きさ及びクッション性が均一化された凸部が着用者の肌に接触するため、ベルト部の着け心地の良さが実感されやすい。
【0025】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記厚さ方向の前記一方側は、着用者の非肌側であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0026】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、大きさ及びクッション性が均一化された凸部が着用者の衣服に接触するため、衣服とベルト部の擦れのばらつきを抑制でき、着用時の違和感を軽減できる。
【0027】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記ベルト部は、前記伸縮性フィルムが配置されていない非配置部を有し、前記非配置部は、前記伸縮性不織布が前記左右方向に伸長している状態で、前記第1非伸縮性シート及び前記第2非伸縮性シートに接合されている第4の接合部を、前記左右方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0028】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、非配置部において、ベルト部内の湿った空気を厚さ方向の外部へ放出でき、ベルト部内の蒸れを軽減できる。また、非配置部においても、伸縮性不織布が充填されたクッション性のある凸部が形成されるため、ベルト部の着け心地が向上する。
【0029】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記ベルト部は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部と、着用者の背側に配置される後側ベルト部と、前記前側ベルト部の前記左右方向の両側部と前記後側ベルト部の前記左右方向の両側部とが係止された一対の係止部と、を備え、前記上下方向に前記係止部と重複する前記ベルト部の部位において、前記積層部の面積の方が前記非配置部の面積よりも小さいことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0030】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、非配置部において、ベルト部内の湿った空気を厚さ方向の外部へ放出でき、ベルト部内の蒸れを軽減できる。
【0031】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記ベルト部は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部と、着用者の背側に配置される後側ベルト部と、を備え、前記積層部は、前記前側ベルト部と前記後側ベルト部に亘って周状に設けられた周状の積層部を、前記上下方向に間隔をあけて複数有することを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0032】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、ベルト部の積層部が着用者の胴回りに部分的に密着するため、おむつのずれ落ちを抑制しつつ、過度な圧迫感を与えてしまうことを抑制できる。また、周状の積層部の間において、ベルト部内の湿った空気を厚さ方向の外部へ放出でき、ベルト部内の蒸れを軽減できる。
【0033】
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、胴回り開口に沿う前記ベルト部の上端部では、前記伸縮性不織布と前記伸縮性フィルムとが配置されておらず、複数の糸状弾性部材が前記上下方向に間隔をあけて配置されていることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつである。
【0034】
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、ベルト部の上端部は局所的に着用者に密着でき、おむつのずれ落ちを抑制できる。
【0035】
===実施形態===
以下、パンツ型使い捨ておむつとして、大人向けのパンツ型使い捨ておむつを例に挙げて実施形態を説明する。ただしこれに限定されず、本発明に係るパンツ型使い捨ておむつは、例えば子供向け(乳幼児用)の使い捨ておむつや生理用ショーツ等としても適用できる。
【0036】
<<おむつ1の基本構成>>
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)の概略斜視図である。図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図である。なお、おむつ1の伸長状態とは、おむつ1を皺なく伸長させた状態であり、おむつ1を構成する各部材(例えば外装体20を構成するシート等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。図3は、図2のI-I線(左右方向の中央)での概略断面図である。
【0037】
おむつ1は、互いに交差する上下方向、左右方向、及び、前後方向を有するとともに、図3に示すように、各部材が積層された厚さ方向を有する。上下方向において、着用者の胴側となる側を上側とし、着用者の股下となる側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。厚さ方向において、着用者に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0038】
おむつ1は、吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装体20とを有している。外装体20は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部21(ベルト部)と、着用者の背側に配置される後側ベルト部22(ベルト部)と、それらを繋ぐ股下部23とを有している。
【0039】
なお、本実施形態のおむつ1では外装体20が3部材(前側ベルト部21、後側ベルト部22、及び、股下部23)から構成されているが、これに限らない。例えば、前側ベルト部21、後側ベルト部22、及び、股下部23が連続した1部材で構成されていてもよい。また、股下部23を有さない構成としてもよい。
【0040】
図2に示す展開状態のおむつ1では、吸収性本体10の長手方向の一端側に、前側ベルト部21が位置し、吸収性本体10の長手方向の他端側に、後側ベルト部22が位置している。展開状態のおむつ1において、吸収性本体10が長手方向の略中央で2つ折りされ、前側ベルト部21の左右方向の両側部と後側ベルト部22の左右方向の両側部とが溶着等で係止され、一対の係止部24が形成されることにより、図1に示すパンツ型となる。つまり、吸収性本体10の長手方向がおむつ1の上下方向に沿い、前側ベルト部21と後側ベルト部22とが環状につながり、その上端に胴回り開口1aが形成され、また、左右方向の両側に一対の脚回り開口1bが形成される。
【0041】
吸収性本体10は、図3に示すように、吸収性コア11と、吸収性コア11の肌側に位置する液透過性のトップシート12と、吸収性コア11の非肌側に位置するバックシート13とを有している。本実施形態のバックシート13は、液不透過性シート13a、及び、その非肌側に配された液透過性シート13bの二層構造である。
【0042】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。図示しないが、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシートによって、外周面が覆われていてもよい。
【0043】
前側ベルト部21、及び、後側ベルト部22は、それぞれ図2に示すように、上下方向において係止部24と重複する部位である胴回り領域211,221と、胴回り領域211,221よりも下側の股下側領域212,222とを有している。
【0044】
股下側領域212,222は略台形形状を成し、下側に向かうにつれて横幅(左右方向の長さ)が狭くなっている。また、前側ベルト部21に比べて後側ベルト部22の方が、股下側領域222が大きく、着用者の臀部を被覆可能となっている。
【0045】
前側ベルト部21、後側ベルト部22、股下部23は、それぞれ図3に示すように、肌側シート213,223,231と、非肌側シート214,224,232と、それらの間に位置する伸縮性不織布215,225,233とを有している。
【0046】
<<ベルト部の積層部30について>>
図4Aは、積層部30の概略断面図であり、図4Bは、非配置部50の概略断面図である。図5は、接合部40~43の説明図である。図6A図6Cは、変形例の積層部30の概略断面図である。
【0047】
前側ベルト部21及び後側ベルト部22(以下、合わせて「ベルト部」ともいう)は、図3図4Aに示すように、その厚さ方向の肌側から、肌側シート213,223と、伸縮性不織布215,225と、伸縮性フィルム31と、非肌側シート214,224とが積層された「積層部30」を有する。ただし、積層部30は4層構造に限定されず、別のシートが積層されていたり、4層シートの一部が折り返されていたりと、5層以上の構成であってもよい。
【0048】
伸縮性不織布215,225及び伸縮性フィルム31は、少なくともおむつ1の左右方向に伸縮するシートである。一方、肌側シート213,223及び非肌側シート214,224は、実質的に伸縮しない非伸縮性シートである。また、伸縮性不織布215,225は、伸縮性繊維と、非伸縮性繊維(すなわち伸縮性繊維よりも収縮性の低い伸長性繊維)とを含む不織布である。
【0049】
肌側シート213,223及び非肌側シート214,224としては、スパンボンド不織布やSMS不織布等により形成された柔軟なシートを例示できる。
【0050】
伸縮性不織布215,225としては、弾性を有する熱可塑性エラストマーの一種であるポリウレタン系エラストマーの伸縮性繊維、及び、非弾性を有する熱可塑性樹脂の一種であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)の非伸縮性繊維に、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布を例示できる。延伸処理は、互いに直交する方向(おむつ1の左右方向及び上下方向)に延伸処理を行うものであってもよいし、所定方向(おむつ1の左右方向)にのみ延伸処理を行うものであってもよい。なお、所定方向にのみ延伸処理を行った場合、所定方向の伸縮性が発現されるが、すべての繊維の配向が所定方向に沿っているとは限らないため、所定方向と直交する方向にも伸縮性が発現される。
【0051】
伸縮性フィルム31としては、ウレタンやスチレンのようなエストラマー樹脂を溶融し、均一厚さのシート状とした伸縮性を有する弾性部材を例示できる。また、例えば、エラストマー層の表面と裏面にポリオレフィン層を一体化した伸縮性フィルムでもよい。この伸縮性フィルムを用いる場合は、ポリオレフィン層が伸縮性を持たないため、予めフィルムに延伸をかけることで伸縮性を発現させることができる。表面にポリオレフィン層があることで、ポリオレフィン繊維不織布との溶着がしやすくなるという利点がある。
【0052】
そして、積層部30は、図4A図5に示すように、伸縮性不織布215,225及び伸縮性フィルム31がおむつ1の左右方向に伸長している状態で、積層部30を構成する4層のシートが接合された「接合部40」を左右方向に間隔をあけて複数有する。
【0053】
そのため、おむつ1が左右方向に収縮した状態、例えば、ベルト部20,30の胴回り開口が広げられて装着された後に、ベルト部20,30が着用者の胴回りにフィットした状態において、積層部30は図4Aに示すようになる。すなわち、左右方向に隣り合う接合部40の間において、非伸縮性の肌側シート213,223及び非肌側シート214,224はたくれて、厚さ方向の外側に突出した凸部を形成する。一方、伸縮性不織布215,225は、伸縮性繊維が非伸縮性繊維を絡めつつ(集めつつ)収縮するため、厚さ方向に広がる(膨らむ)。
【0054】
この時、肌側シート213,223及び非肌側シート214,224の間に伸縮性フィルム31が配置されていないと、図4Bに示すようになる。すなわち、伸縮性不織布215,225を構成する繊維が、肌側又は非肌側に偏って集まったり、肌側と非肌側の両側に同程度に集まったりする。そうすると、凸部によって厚さ方向の一方側への広がり方にバラツキが生じ、着用者への肌当たりが不均一となってしまう。
【0055】
これに対して、積層部30では、肌側シート213,223及び非肌側シート214,224の間に伸縮性フィルム31が配置されている。伸縮性フィルム31は平坦状に収縮する。そのため、伸縮性フィルム31によって、厚さ方向の他方側(ここでは非肌側)への伸縮性不織布215,22の広がりが規制され、厚さ方向の一方側(ここでは肌側)に、伸縮性不織布215,225を構成する繊維が収縮して集まる。つまり、肌側シート213,223の凸部内の空間に、伸縮性不織布215,225を構成する同程度の量の繊維が充填される。その結果、図4Aに示すように、厚さ方向の肌側に突出する凸部の大きさ(嵩)を均一化できる。また、肌側に突出した凸部は同程度の量の繊維に支持されるため、潰れにくく、凸部のクッション性(形状回復性)が均一化される。よって、積層部30の着用者への肌当たりを良くすることができる。
【0056】
特に、伸縮性不織布215,225が伸縮性フィルム31よりも着用者の肌側(厚さ方向の一方側)に配置されている場合、肌側シート213,223(第1非伸縮性シート)による均一な大きさ及びクッション性である凸部が着用者の肌に直接接触する。そのため、積層部30の肌当たりの良さが着用者に実感されやすくなる。また、肌側に突出した凸部の間の凹部が通気路となるため、ベルト部21,22の上下方向の通気性が向上し、ベルト部21,22内の蒸れを軽減できる。
【0057】
ただし、上記に限らず、伸縮性不織布215,225が伸縮性フィルム31よりも着用者の非肌側(厚さ方向の一方側)に配置されていてもよい(不図示)。この場合、非肌側シート214,224(第1非伸縮性シート)により非肌側に凸部が形成されるが、その凸部の大きさ及びクッション性が均一化されることで、積層部30の着用者への肌当たりを良くすることができる。詳しくは、非肌側に突出した凸部と着用者の衣服との擦れ(接地面積)が均一化されるため、着用時の違和感を軽減できる。また、この場合、均一な高さの凸部がユーザーに視認されやすくなる。そのため、視覚的に、柔らかいおむつ1である印象をユーザーに付与できる。
【0058】
また、伸縮性フィルム31は、伸縮性不織布215、225よりも厚さ方向における剛性が高いことが好ましい。そうすることで、伸縮性フィルム31は厚さ方向に変形し難くなり、厚さ方向の他方側(非肌側)への伸縮性不織布215,225の広がりをより規制することができる。よって、肌側シート213,223の凸部内の空間に、伸縮性不織布215,225を構成する同程度の量の繊維を充填でき、凸部の大きさ及びクッション性をより均一化することができる。
【0059】
伸縮性フィルム31及び伸縮性不織布215,225の剛性の比較は周知の方法で確認できる。例えば、測定対象のおむつから伸縮性フィルム31及び伸縮性不織布215,225を切り出してサンプルとする。そして、サンプル毎に、自然状態(無負荷状態)でのサンプルの厚さと、一定荷重を掛けた状態でのサンプルの厚さとを測定し、その差を算出する。厚さの差が小さいサンプルの方が、変形量が小さく、剛性が高いことが分かる。
【0060】
また、積層部30では、4層シートのうち、少なくとも伸縮性不織布215,225と伸縮性不織布215,225に隣接する非伸縮性シート(ここでは肌側シート213,223)とが、おむつ1の左右方向に間隔をあけて接合されていればよい。
【0061】
例えば、図6Aに示すように、伸縮性不織布215,225と伸縮性フィルム31を接合する接合部42が左右方向に連続し、かつ、伸縮性フィルム31と非肌側シート214,224を接合する接合部43も左右方向に連続していてもよい。この場合にも、伸縮性フィルム31よりも肌側に、伸縮性不織布215,225を構成する繊維が広がるため、肌側に突出する凸部の大きさ及びクッション性を均一化できる。
【0062】
ただし、図6Bに示すように、積層部30において、伸縮性不織布215,225及び伸縮性フィルム31が左右方向に伸長している状態で互いに接合されている接合部42(第2の接合部)を、左右方向に間隔をあけて複数配置することが好ましい。そうすることで、左右方向に隣り合う接合部42の間で、伸縮性不織布215,225を構成する繊維が厚さ方向に広がりやすくなる。そのため、肌側に突出する凸部の大きさ及びクッション性を高めることができる。また、剛性の高い接合部42の面積が小さくなるため、積層部30を柔らかくすることができ、着用者への肌当たりをより良くすることができる。
【0063】
また、図4Aに示すように、積層部30において、伸縮性フィルム31が左右方向に伸長している状態で、伸縮性フィルム31に隣接する非伸縮性シート(非肌側シート214,224(第2非伸縮性シート))を接合する接合部43(第3の接合部)を、左右方向に間隔をあけて複数配置することが好ましい。そうすることで、左右方向に隣り合う接合部43の間で、非肌側シート214,224がたくれるため、視覚的に、柔らかいおむつ1である印象をユーザーに付与できる。又は、伸縮性フィルム31が非肌側シート214,224に連動してたくれてしまうことを抑制でき、伸縮性フィルム31が平坦状に収縮しやすくなるともいえる。そのため、伸縮性フィルム31よりも肌側に伸縮性不織布215,225が広がりやすくなり、肌側に突出する凸部の大きさ及びクッション性を均一化できる。また、剛性の高い接合部43の面積が小さくなるため、積層部30を柔らかくすることができ、着用者への肌当たりをより良くすることができる。
【0064】
つまり、積層部30を構成する4層のシートは、それぞれ厚さ方向に隣り合うシートと左右方向に間欠に接合されていることが好ましい。
【0065】
その場合、例えば、図6Cに示すように、肌側シート213,223と伸縮性不織布215,225を接合する接合部40と、伸縮性不織布215,225と伸縮性フィルム31を接合する接合部42(第2の接合部)の左右方向の位置がずれていてもよい。この場合にも、伸縮性フィルム31よりも肌側に、伸縮性不織布215,225が広がるため、肌側に突出する凸部の大きさ及びクッション性を均一化できる。
【0066】
ただし、図4Aに示すように、肌側シート213,223と伸縮性不織布215,225を接合する接合部40、伸縮性不織布215,225と伸縮性フィルム31を接合する接合部42(第2の接合部)、及び、伸縮性フィルム31と非肌側シート214,224を接合する接合部43(第3の接合部)の左右方向の各位置が揃っていることが好ましい。
【0067】
そうすることで、伸縮性不織布215,225が厚さ方向に広がりやすくなるため、肌側に突出する凸部の大きさ及びクッション性を高めることができる。また、溶着で形成された接合部40,42,43はフィルム化するため、接合されていない部位に比べて、厚さ方向の通気性が低い。そのため、接合部40,42,43の位置が揃っていることで、接合されていない部位での厚さ方向への空気の流れがスムーズとなる。よって、ベルト部21,22内の湿った空気を厚さ方向の非肌側へ効率良く放出できる。より好ましくは、接合部40,42,43の上下方向の位置も揃っているとよく、その場合、より効率的に湿った空気を非肌側に放出できる。
【0068】
積層部30の接合部40,42,43の接合方法としては、接着剤による接合、熱溶着や超音波溶着等の溶着による接合を例示できる。各層の接合部40,42,43の位置を揃える場合、溶着によって接合するとよい。そうすることで、積層部30を構成する4層のシートを同時にかつ同一の溶着パターンによって接合できる。そのため、容易に(短時間で)確実に各層の接合部40,42,43の位置を揃えることができる。
【0069】
また、接合部40,42,43を溶着によって接合する場合、積層部30を構成する4層のシートのうちの少なくとも1つは、ポリプロピレン(PP)樹脂を含有することが好ましい。そうすることで、接合部40,42,43における溶着強度を高めることができ、接合部40,42,43の剥離を抑制できる。よって、厚さ方向の一方側(肌側)に突出する凸部が維持されやすくなる。
【0070】
また、接合部40,42,43では、接合されていない部位に比べて剛性が高くなる。そのため、おむつ1の左右方向に接合部40が長く延びていると、積層部30が左右方向に変形し難くなる。よって、積層部30を構成する4層のシートが左右方向に間欠に接合されていることが好ましい。そうすることで、積層部30が左右方向に変形しやすくなり、ベルト部21,22が着用者の胴回りに沿ってフィットしやすくなる。
【0071】
同様に、接合部40,42,43は、おむつ1の上下方向においても間隔をあけて複数配置されていることが好ましい。そうすることで、積層部30が上下方向に変形しやすくなり、ベルト部21,22が着用者の下腹部や臀部の膨らみに沿ってフィットしやすくなる。また、剛性の高い接合部40,42,43が上下方向に間欠に配置されていることで、積層部30を柔らかくすることができ、着用者への肌当たりをより良くできる。
【0072】
さらに、図5に示すように、おむつ1の左右方向に隣り合う接合部40,42,43の間隔W1が一定であり、おむつ1の上下方向に隣り合う接合部40,42,43の間隔W2が一定であることが好ましい。そうすることで、厚さ方向の一方側(肌側)に突出する凸部内の空間に、伸縮性不織布215,225を構成する同程度の量の繊維を充填でき、凸部の大きさ及びクッション性をより均一化できる。なお、積層部30が有する複数の接合部40,42,43の少なくとも一部において間隔が一定であればよく、好ましくは全ての接合部40,42,43の間隔が一定であるとよい。
【0073】
また、ベルト部21,22は、図3に示すように、積層部30を有するとともに、伸縮性フィルム31が配置されていない「非配置部50」を有していてもよい。非配置部50では、肌側シート213,223と非肌側シート214,224の間に伸縮性不織布215,225が配置されているものとする。
【0074】
伸縮性フィルム31は伸縮性不織布215,225に比べると厚さ方向における通気性が良くない。そのため、ベルト部21,22に部分的に伸縮性フィルム31(積層部30)を配置することで、ベルト部21,22内の湿った空気を非配置部50から厚さ方向の非肌側に放出でき、ベルト部21,22内の蒸れを抑制できる。
【0075】
また、非配置部50も、伸縮性不織布215,225が左右方向に伸長している状態で、肌側シート213,223及び非肌側シート214,224に接合されている接合部41(第4の接合部)を、左右方向に間隔をあけて複数有することが好ましい。
【0076】
そうすることで、図4Bに示すように、非配置部50においても、左右方向に隣り合う接合部41の間で、肌側シート213,223及び非肌側シート214,224がたくれて凸部が形成され、伸縮性不織布215,225が厚さ方向に広がる。そのため、非配置部50に形成された凸部のクッション性が高まる。
【0077】
ただし、非配置部50では、積層部30に比べると、厚さ方向の一方側に突出する凸部の大きさにバラツキが生じる。しかし、非配置部50には伸縮性フィルム31が配置されていないため、非配置部50は、積層部30に比べて、おむつ着用時の圧力(締め付け圧力)が低い。すなわち、単位幅(上下方向の単位長さ当たり)の非配置部50を左右方向に単位長さ伸長させる力は、単位幅の積層部30を左右方向に単位長さ伸長させる力よりも小さく、非配置部50は積層部30に比べて着用者への密着度が弱い。そのため、非配置部50において凸部の大きさ及びクッション性にバラツキが生じていても、そのことを着用者は感じ難く、おむつ1の着け心地の低下を抑制できる。逆にいえば、積層部30は、着用者への密着度が強いので、凸部の大きさ及びクッション性を均一化することで、おむつ1の着け心地を良くすることができる。
【0078】
また、積層部30と同様に、非配置部50においても、肌側シート213,223と伸縮性不織布215,225を接合する接合部と、伸縮性不織布215,225と非肌側シート214,224を接合する接合部の各位置が揃っているとよい。そうすることで、非配置部50が柔らかくなり、かつ、フィルム化された接合部41に比べて厚さ方向への通気性が向上する。
【0079】
また、前側ベルト部21と後側ベルト部22を係止する一対の係止部24と上下方向に重複するベルト部21,22の部位(胴回り領域211,221)において、積層部30の面積の方が非配置部50の面積よりも小さいことが好ましい。
【0080】
そうすることで、ベルト部21,22の積層部30が着用者の胴回りに部分的に密着するため、おむつ1の位置ずれを抑制しつつ、着用者に過度な圧迫感を与えてしまうことを防止できる。また、非配置部50の面積が大きいことで、ベルト部21,22内の蒸れをより抑制できる。なお、積層部30と非配置部50の面積比較は周知の方法で行うとよい。例えば、目視による方法や、面積算出ソフトを利用する方法等で比較できる。
【0081】
図7A図7Cは、おむつ1を着用した状態を示す概念図である。図7Aは前側から見た図であり、図7Bは、後側から見た図であり、図7Cは横から見た図である。なお、図では、第1積層部群32Aと第2積層部群32Bを一点鎖線で示している。
【0082】
積層部30は、前側ベルト部21と後側ベルト部22に亘って周方向に連続して設けられていることが好ましい。そうすることで、前側ベルト部21及び後側ベルト部22は着用者の胴回りに連続して密着するため、おむつ1の位置ずれを抑制できる。
【0083】
さらに、図2に示すように、積層部30は、前側ベルト部21及び後側ベルト部22に周状に設けられた周状の積層部30a,30bを、上下方向に間隔をあけて複数有することが好ましい。すなわち、周状の積層部30a,30bと非配置部50が上下方向に交互に配置されているとよい。そうすることで、周状の積層部30a,30bの間の非配置部50により、ベルト部21,22内の湿った空気を厚さ方向の非肌側へ放出でき、ベルト部21,22内の蒸れを抑制できる。
【0084】
具体的には、積層部30は第1積層部群32Aと第2積層部群32Bを有し、各積層部群32A,32Bにおいて、3つの周状の積層部30a,30b(すなわち3本の伸縮性フィルム31)が上下方向に間隔を空けて配置されている。また、各積層部群32A,32では、前側の3つの積層部30a,30bと、それらに対応する後側の3つの積層部30a,30bが、係止部24において上下方向の位置が同じになるように配置されている。なお、係止部24において前側の伸縮性フィルム31と後側の伸縮性フィルム31とが完全に一致するに限らず、上下方向に一部ずれていてもよい。
【0085】
また、第1積層部群32Aは、係止部24において、第2積層部群32Bと離間しているとともに、第2積層部群32Bよりも上側に配置されている。そして、第1積層部群32Aは、少なくとも上端が着用者の上前腸骨棘よりも上側になるように配置され、第2積層部群32Bは、少なくとも下端が上前腸骨棘よりも下側になるように配置されていることが好ましい。本実施形態では、第1積層部群32Aの下端が上前腸骨棘の上を通る配置になっている。なお、上前腸骨棘は、骨盤最大の骨である腸骨の突起部分であり、腰に手を当てた時に指に触れる出っ張りである。これにより、おむつ1の着用時に、着用者の上前腸骨棘を第1積層部群32Aと第2積層部群32Bで挟み込むことができる。よって、着用時のおむつ1の位置ずれを抑制できる。
【0086】
また、第1積層部群32Aは、腹側では下側に凸となるように湾曲しており、背側では後側ベルト部22の上端部の下方近くでほぼ水平に配置されている。一方、第2積層部群32Bは、腹側ではほぼ水平に配置されており、背側では上側に凸となるように湾曲している。このため、図7A図7Cに示すように、おむつ1の左右方向の中央Cにおいて、背側の第1積層部群32Aの下端が、腹側の第1積層部群32Aの下端よりも上側に配置されている。同様に、おむつ1の左右方向の中央Cにおいて、背側の第2積層部群32Bの下端が、腹側の第2積層部群32Bの下端よりも上側に配置されている。これにより、下腹部を斜め上に締めることができ、腹腔内圧を高めることができる。そのため、骨盤周りの筋肉(腹筋など)の働きを補助でき、骨盤を安定させることができる。
【0087】
また、図2図3に示すように、おむつ1の胴回り開口1aに沿うベルト部の上端部216,226では、伸縮性不織布215,225と伸縮性フィルム31とが配置されておらず、複数の糸状弾性部材26(例えば糸ゴム等)が上下方向に間隔をあけて配置されていることが好ましい。本実施形態のおむつ1では、厚さ方向の肌側に折り返された非肌側シート214,224の間に複数の糸状弾性部材26が配置されている。
【0088】
そうすることで、ベルト部の上端部216,226では、伸縮性フィルム31が配置されておらず、かつ、積層部30や非配置部50に比べてシートの積層枚数が少ないため、厚さ方向の通気性が良い。よって、ベルト部21,22内の湿った空気を、ベルト部の上端部216,226から放出でき、ベルト部21,22内の蒸れを抑制できる。また、ベルト部の上端部216,226は、糸状弾性部材26により局所的にフィットするため、おむつ1のずれ落ちを抑制できる。逆にいえば、積層部30や非配置部50は、シート状の伸縮性不織布215,225や伸縮性フィルム31によって、着用者に面でフィットできる。よって、着用者の動きを妨げることなく、着用者へのおむつ1のフィット状態が維持される。
【0089】
ただし、上記に限定されず、例えば、ベルト部21,22が非配置部50を有さず、ベルト部21,22の全域、又は、ベルト部の上端部216,226よりも下方の全域に積層部30(伸縮性フィルム31)が配置されていてもよい。また、前側ベルト部21と後側ベルト部22の一方にのみ積層部30が配置されていてもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0091】
1 おむつ(パンツ型使い捨ておむつ)、
10 吸収性本体、11 吸収性コア、
12 トップシート、13 バックシート、
20 外装体、
21 前側ベルト部(ベルト部)、
22 後側ベルト部(ベルト部)、
213、223 肌側シート(第1非伸縮性シート、第2非伸縮性シート)、
214、224 非肌側シート(第1非伸縮性シート、第2非伸縮性シート)
215、225 伸縮性不織布、
23 股下部、24 係止部、
30 積層部、30a、30b 周状の積層部、
31 伸縮性フィルム、
32A 第1積層部群、32B 第2積層部群、
40 接合部、41 接合部、
42 接合部(第2の接合部)、43 接合部(第3の接合部)、
50 非配置部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7