(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】静電チャックシステム、成膜装置、吸着方法、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20230501BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20230501BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230501BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C23C14/50 A
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14
(21)【出願番号】P 2019047563
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0131375
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 一史
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-072034(JP,A)
【文献】特開2018-060905(JP,A)
【文献】特開平11-251418(JP,A)
【文献】特開2001-219332(JP,A)
【文献】特開2017-108055(JP,A)
【文献】特開平04-371579(JP,A)
【文献】特開2010-123843(JP,A)
【文献】特開平07-018438(JP,A)
【文献】特開平11-330219(JP,A)
【文献】特開2003-282692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着体を吸着するための静電チャックシステムであって、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有し、
前記静電チャックプレート部の吸着面において、
矩形の前記静電チャックプレート部のコーナー部に設けられた前記
少なくとも1つの切り欠き部を含む第1領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力は、前記第1領域よりも前記
少なくとも1つの切り欠き部からの距離が離れた第2領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力より大きいことを特徴とする静電チャックシステム。
【請求項2】
前記静電チャックプレート部の前記第1領域に設けられている第1電極部の電極密度が前記第2領域に設けられている第2電極部の電極密度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の静電チャックシステム。
【請求項3】
前記第1電極部及び前記第2電極部はそれぞれ一対の櫛歯電極を有し、前記一対の櫛歯電極はそれぞれの櫛歯部が交互に噛み合うように対向して配置され、
前記第1電極部の前記櫛歯部間の間隔は、前記第2電極部の前記櫛歯部間の間隔より狭いことを特徴とする請求項2に記載の静電チャックシステム。
【請求項4】
前記静電チャックプレート部は、電極部と、少なくとも前記電極部と前記被吸着体を吸着させるための吸着面との間に介在する誘電体部と、を有し、
前記第1領域における前記誘電体部の厚さが前記第2領域における前記誘電体部の厚さより小さいことを特徴とする請求項1に記載の静電チャックシステム。
【請求項5】
前記静電チャックプレート部は、電極部と、少なくとも前記電極部と前記被吸着体を吸着させるための吸着面との間に介在する誘電体部と、を有し、
前記第1領域における前記誘電体部の比抵抗が前記第2領域における前記誘電体部の比抵抗より小さいことを特徴とする請求項1に記載の静電チャックシステム。
【請求項6】
前記静電チャックプレート部は、電極部と、少なくとも前記電極部と前記被吸着体を吸
着させるための吸着面との間に介在する誘電体部と、を有し、
前記第1領域における前記誘電体部の誘電率が前記第2領域における前記誘電体部の誘電率より大きいことを特徴とする請求項1に記載の静電チャックシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの切り欠き部には電極部が設けられず、前記切り欠き部は、アライメント用の切り欠き部及び前記被吸着体の吸着度確認用の切り欠き部のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の静電チャックシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの切り欠き部は、前記静電チャックプレート部を貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の静電チャックシステム。
【請求項9】
前記
貫通孔は、
基板及びマスクの少なくとも一方に形成されているアライメントマークが見えるようにするためのアライメント用の孔、又は、前記静電チャックプレート部と前記基板との間の吸着度若しくは前記基板と前記マスクとの間の吸着度を確認するための孔であることを特徴とする請求項
8に記載の静電チャックシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの切り欠き部は、前記静電チャックプレート部の中央部に設けられることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の静電チャックシステム。
【請求項11】
被吸着体を吸着するための静電チャックシステムであって、
複数の電極部を有し、少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部と、
前記複数の電極部への電圧の印加を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記複数の電極部のうち、第1電極部に印加される電圧が、前記第1電極部よりも前記切り欠き部からの距離が離れた第2電極部に印加される電圧より大きくなるように制御することを特徴とする静電チャックシステム。
【請求項12】
前記複数の電極部はそれぞれ一対の電極を有し、
前記制御部は、前記第1電極部の一対の電極の間に印加される電圧が、前記第2電極部の一対の電極の間に印加される電圧より大きくなるように制御することを特徴とする請求項11に記載の静電チャックシステム。
【請求項13】
前記制御部は、前記第1電極部の前記被吸着体に対する吸着力と前記第2電極部の前記被吸着体に対する吸着力とが実質的に同一になるように、前記第1電極部と前記第2電極部とのそれぞれに印加される電圧を制御することを特徴とする請求項11に記載の静電チャックシステム。
【請求項14】
基板にマスクを介して成膜を行うための成膜装置であって、
少なくとも前記基板を吸着するための静電チャックシステムを有し、
前記静電チャックシステムは、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の静電チャックシステムであることを特徴とする成膜装置。
【請求項15】
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有する静電チャックに被吸着体を吸着させる方法であって、
前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させる吸着工程を有し、
前記吸着工程では、前記静電チャックプレート部の吸着面において
矩形の前記静電チャックプレート部のコーナー部に設けられた前記
少なくとも1つの切り欠き部を含む第1領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力が、前記第1領域よりも前記
少なくとも1つの切り欠き部からの距離が離れた第2領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力より大きい状態で、前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させることを特徴とする吸着方法。
【請求項16】
複数の電極部を有し、少なくとも1つの切り欠き部が設置された静電チャックプレート部を有する静電チャックに被吸着体を吸着させる方法であって、
前記複数の電極部に電圧を印加して前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させる吸着工程を有し、
前記吸着工程では、前記複数の電極部のうちの第1電極部に、前記第1電極部よりも前記切り欠き部からの距離が離れた第2電極部より大きい電圧を印加することを特徴とする吸着方法。
【請求項17】
基板にマスクを介して蒸着材料を成膜する成膜方法であって、
真空容器内にマスクを搬入する工程と、
前記真空容器内に基板を搬入する工程と、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有する静電チャックに前記基板を吸着させる第1吸着工程と、
前記基板を介して前記静電チャックに前記マスクを吸着させる第2吸着工程と、
前記静電チャックに前記基板及び前記マスクが吸着された状態で、前記蒸着材料を放出させて、前記マスクを介して前記基板に前記蒸着材料を成膜する工程と、
を有し、
前記第1吸着工程及び前記第2吸着工程の少なくとも1つの吸着工程では、前記静電チャックプレート部の吸着面において
矩形の前記静電チャックプレート部のコーナー部に設けられた前記
少なくとも1つの切り欠き部を含む第1領域における被吸着体としての前記基板又は前記マスクに対する単位面積当たりの静電引力が、前記第1領域よりも前記
少なくとも1つの切り欠き部からの距離が離れた第2領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力より大きい状態で、前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させることを特徴とする成膜方法。
【請求項18】
基板にマスクを介して蒸着材料を成膜する成膜方法であって、
真空容器内にマスクを搬入する工程と、
前記真空容器内に基板を搬入する工程と、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有する静電チャックの複数の電極部に電圧を印加して、前記静電チャックに前記基板を吸着させる第1吸着工程と、
前記静電チャックの前記複数の電極部に電圧を印加して、前記静電チャックに前記基板を介して前記マスクを吸着させる第2吸着工程と、
前記静電チャックに前記基板及び前記マスクが吸着された状態で、前記蒸着材料を放出させて、前記マスクを介して前記基板に前記蒸着材料を成膜する工程と、
を有し、
前記第1吸着工程及び前記第2吸着工程の少なくとも1つの吸着工程では、前記複数の電極部のうちの第1電極部に、前記第1電極部よりも前記切り欠き部からの距離が離れた第2電極部より大きい電圧を印加することを特徴とする成膜方法。
【請求項19】
請求項17又は18の成膜方法を用いて電子デバイスを製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックシステム、成膜装置、吸着方法、成膜方法及び電子デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子;OLED)を形成する際に、成膜装置の蒸着源から蒸発した蒸着材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して、基板に蒸着させることで、有機物層や金属層を形成する。
【0003】
上向蒸着方式(デポアップ)の成膜装置において、蒸着源は成膜装置の真空容器の下部に設けられ、基板は真空容器の上部に配置され、基板の下面に蒸着される。このような上向蒸着方式の成膜装置の真空容器内において、基板はその下面の周辺部だけが基板ホルダによって保持されるので、基板がその自重によって撓み、これが蒸着精度が低下する1つの要因となっている。上向蒸着方式以外の方式の成膜装置においても、また、基板の自重による撓みは生じる可能性がある。
【0004】
基板の自重による撓みを低減するための方法として、静電チャックを使う技術が検討されている。すなわち、基板の上面をその全体にわたって静電チャックで吸着することで、基板の撓みを低減することができる。
【0005】
特許文献1では、静電チャックで基板及びマスクを吸着する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開公報2007-0010723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1には、静電チャックに孔のような切り欠き部が設けられる構成、及びこのような構成においての静電チャックの吸着力制御については、開示がない。
【0008】
本発明は、静電チャックに切り欠き部が設けられた場合でも被吸着体を良好に静電チャックに吸着することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様による静電チャックシステムは、
被吸着体を吸着するための静電チャックシステムであって、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有し、
前記静電チャックプレート部の吸着面において、矩形の前記静電チャックプレート部のコーナー部に設けられた前記少なくとも1つの切り欠き部を含む第1領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力は、前記第1領域よりも前記少なくとも1つの切り欠き部からの距離が離れた第2領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力より大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2態様による静電チャックシステムは、
被吸着体を吸着するための静電チャックシステムであって、
複数の電極部を有し、少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部と、
前記複数の電極部への電圧の印加を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記複数の電極部のうち、第1電極部に印加される電圧が、前記第1電極部よりも前記切り欠き部からの距離が離れた第2電極部に印加される電圧より大きくなるように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の第3態様による成膜装置は、
基板にマスクを介して成膜を行うための成膜装置であって、
少なくとも前記基板を吸着するための静電チャックシステムを有し、
前記静電チャックシステムは、本発明の第1態様又は第2態様による静電チャックシステムであることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4態様による吸着方法は、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有する静電チャックに被吸着体を吸着させる方法であって、
前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させる吸着工程を有し、
前記吸着工程では、前記静電チャックプレート部の吸着面において矩形の前記静電チャックプレート部のコーナー部に設けられた前記少なくとも1つの切り欠き部を含む第1領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力が、前記第1領域よりも前記少なくとも1つの切り欠き部からの距離が離れた第2領域における前記被吸着体に対する単位面積当たりの静電引力より大きい状態で、前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5態様による吸着方法は、
複数の電極部を有し、少なくとも1つの切り欠き部が設置された静電チャックプレート部を有する静電チャックに被吸着体を吸着させる方法であって、
前記複数の電極部に電圧を印加して前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させる吸着工程を有し、
前記吸着工程では、前記複数の電極部のうちの第1電極部に、前記第1電極部よりも前記切り欠き部からの距離が離れた第2電極部より大きい電圧を印加することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6態様による成膜方法は、
基板にマスクを介して蒸着材料を成膜する成膜方法であって、
真空容器内にマスクを搬入する工程と、
前記真空容器内に基板を搬入する工程と、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有する静電チャックに前記基板を吸着させる第1吸着工程と、
前記基板を介して前記静電チャックに前記マスクを吸着させる第2吸着工程と、
前記静電チャックに前記基板及び前記マスクが吸着された状態で、前記蒸着材料を放出させて、前記マスクを介して前記基板に前記蒸着材料を成膜する工程と、
を有し、
前記第1吸着工程及び前記第2吸着工程の少なくとも1つの吸着工程では、前記静電チャックプレート部の吸着面において矩形の前記静電チャックプレート部のコーナー部に設けられた前記少なくとも1つの切り欠き部を含む第1領域における被吸着体としての前記基板又は前記マスクに対する単位面積当たりの静電引力が、前記第1領域よりも前記少なくとも1つの切り欠き部からの距離が離れた第2領域における前記被吸着体に対する単位
面積当たりの静電引力より大きい状態で、前記被吸着体を前記静電チャックに吸着させることを特徴とする。
【0015】
本発明の第7態様による成膜方法は、
基板にマスクを介して蒸着材料を成膜する成膜方法であって、
真空容器内にマスクを搬入する工程と、
前記真空容器内に基板を搬入する工程と、
少なくとも1つの切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部を有する静電チャックの複数の電極部に電圧を印加して、前記静電チャックに前記基板を吸着させる第1吸着工程と、
前記静電チャックの前記複数の電極部に電圧を印加して、前記静電チャックに前記基板を介して前記マスクを吸着させる第2吸着工程と、
前記静電チャックに前記基板及び前記マスクが吸着された状態で、前記蒸着材料を放出させて、前記マスクを介して前記基板に前記蒸着材料を成膜する工程と、
を有し、
前記第1吸着工程及び前記第2吸着工程の少なくとも1つの吸着工程では、前記複数の電極部のうちの第1電極部に、前記第1電極部よりも前記切り欠き部からの距離が離れた第2電極部より大きい電圧を印加することを特徴とする。
【0016】
本発明の第8態様による電子デバイスの製造方法は、本発明の第6又は7態様による成膜方法を用いて電子デバイスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、静電チャックに切り欠き部が設けられた場合でも被吸着体を良好に静電チャックに吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による成膜装置の模式図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の一実施形態による静電チャックシステムの概念図である。
図3(b)は、本発明の一実施形態による静電チャックシステムの模式的平面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の他の実施形態による静電チャックシステムの模式的平面図である。
図4(b)は、
図4(a)のABラインに沿って切り取った静電チャックの模式的断面図である。
図4(c)は、
図4(a)のABラインに沿って切り取った静電チャックの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、ガラス、高分子材料のフィルム、金属等の任意の材料を選択することができ、基板は、例えば、ガラス基板上にポリイミド等のフィルムが積層された基板であってもよい。また、蒸着材料として、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物等)等の任意の材料を選択してもよい。なお、以下の説明において説明する真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を有する成
膜装置にも、本発明を適用することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デ
バイス(例えば、有機EL素子、薄膜太陽電池)、光学部材等の製造装置に適用可能である。そのうち、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL素子を形成する有機EL素子の製造装置は、本発明の好ましい適用例の1つである。
【0021】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0022】
図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に、有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルを製作する。
【0023】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置1の間を繋ぐ中継装置とを有する。
【0024】
クラスタ装置1は、基板Sに対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクMを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を備える。搬送室13は、
図1に示すように、複数の成膜装置11及びマスクストック装置12のそれぞれと接続されている。
【0025】
搬送室13内には、基板S及びマスクMを搬送する搬送ロボット14が配置されている。搬送ロボット14は、上流側に配置された中継装置のパス室15から成膜装置11へと基板Sを搬送する。また、搬送ロボット14は、成膜装置11とマスクストック装置12との間でマスクMを搬送する。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板S又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0026】
成膜装置11(蒸着装置とも呼ぶ)では、蒸着源に収納された蒸着材料がヒータによって加熱されて蒸発し、マスクMを介して基板S上に蒸着される。搬送ロボット14からの又は搬送ロボット14への基板Sの受け渡し、基板SとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスクM上への基板Sの固定、成膜(蒸着)等の一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0027】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、2つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0028】
クラスタ装置1には、基板Sの流れ方向において上流側からの基板Sを当該クラスタ装置1に受け渡すパス室15と、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板Sを下流側の他のクラスタ装置に受け渡すためのバッファ室16が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Sを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の1つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Sを複数の成膜装置11の1つ(例えば、成膜装置11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファ室16に搬送する。
【0029】
バッファ室16とパス室15との間には、基板Sの向きを変える旋回室17が設置される。旋回室17には、バッファ室16から基板Sを受け取って基板Sを180°回転させ、パス室15に搬送するための搬送ロボット18が設けられる。これにより、上流側のクラスタ装置1と下流側のクラスタ装置1とで基板Sの向きが同じになり、基板処理が容易
になる。
【0030】
パス室15、バッファ室16、旋回室17は、クラスタ装置1間を連結する、いわゆる中継装置であり、クラスタ装置1の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室15、バッファ室16、旋回室17のうち少なくとも1つを有する。
【0031】
成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファ室16、旋回室17等は、有機EL素子の製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室15は、通常、低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもよい。
【0032】
本実施形態では、
図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバを有してもよく、これらの装置やチャンバ間の配置が変わってもよい。
【0033】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
【0034】
<成膜装置>
図2は、成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板Sが水平面(XY平面)と平行となるよう固定された場合、基板Sの短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向とする。また、Z軸まわりの回転角をθで表す。
【0035】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21の内部に設けられる、基板支持ユニット22と、マスク支持ユニット23と、静電チャック24と、蒸着源25とを有する。
【0036】
基板支持ユニット22は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14が搬送して来る基板Sを受け取って保持する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。
【0037】
基板支持ユニット22の下方には、マスク支持ユニット23が設けられる。マスク支持ユニット23は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14が搬送して来るマスクMを受け取って保持する手段であり、マスクホルダとも呼ばれる。
【0038】
マスクMは、基板S上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンを有し、マスク支持ユニット23の上に載置される。特に、スマートフォン用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ぶ。
【0039】
基板支持ユニット22の上方には、基板S及び/又はマスクMを静電引力によって吸着し固定するための静電チャック24が設けられる。静電チャック24は、成膜前に、基板S(第1被吸着体)を吸着して保持し、実施形態によってはマスクM(第2被吸着体)をも吸着し保持する。その後、例えば、静電チャック24で基板S(第1被吸着体)とマスクM(第2被吸着体)を保持した状態で成膜を行い、成膜を完了した後に基板S(第1被吸着体)とマスクM(第2被吸着体)に対する静電チャック24による保持を解除する。
【0040】
静電チャック24は、誘電体(例えば、セラミック材質)マトリックス内に金属電極等の電気回路が埋設された構造を有する。静電チャック24は、クーロン力タイプの静電チャックであってもよいし、ジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックであってもよいし、グラジエント力タイプの静電チャックであってもよい。静電チャック24は、グラジエント力タイプの静電チャックであることが好ましい。静電チャック24がグラジエン
ト力タイプの静電チャックの場合、基板Sが絶縁性基板であっても、静電チャック24によって良好に吸着することができる。静電チャック24がクーロン力タイプの静電チャックの場合、金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)の電圧が印加されると、誘電体マトリックスを通じて基板S等の被吸着体に金属電極と反対極性の分極電荷が誘導され、これらの間の静電引力によって基板Sが静電チャック24に吸着固定される。
【0041】
静電チャック24は、1つのプレートで形成されてもよく、複数のサブプレートを有するように形成されてもよい。また、1つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電気回路を有し、1つのプレート内で位置によって静電引力が異なるように制御してもよい。
【0042】
静電チャック24には、1つ以上の切り欠き部(例えば、孔)がプレートを貫通するように形成される。切り欠き部は、例えば、基板SやマスクMに形成されているアライメントマークが見えるようにするためのアライメント用の孔であってもよく、静電チャック24と基板Sとの間の吸着度(密着度)や基板SとマスクMとの間の吸着度を確認するための吸着度確認用の孔であってもよい。アライメント用の孔は、例えば、矩形の静電チャックプレートの対角線上の2つのコーナー部又は4つのコーナー部の全体にそれぞれ設けられる。実施形態によっては、対向する一対の辺(例えば、短辺)の中央にも、それぞれアライメント用の孔が追加で設置されてもよい。吸着度確認用の孔は、例えば、静電チャックプレートの中央部を貫通するように開いていてもよく、実施形態によっては、矩形の静電チャック24の対向する一対の辺(例えば、短辺又は長辺)の中央部に設けられてもよい。ただし、本発明はこれに限定されず、切り欠き部は本発明の技術的思想の範囲内で他の位置や数で設けられてもよい。また、切り欠き部は、切り欠き部を有しない部材に対し後から切り欠きの工程を施して形成しても良いし、初めから貫通孔や穴の形状を有するように部材を形成することによって設けても良い。
【0043】
本実施形態では、後述するように、吸着面における孔がある部分を含む静電チャックプレートの一領域(第1領域)は、第1領域より孔から遠く離れた他の領域(第2領域)より単位面積当たりの静電引力が大きくなるように静電チャック24が構成される。なお、ここでいう「単位面積当たりの静電引力」とは、その領域が孔の如き切り欠き部を含む場合には、当該領域全体が被吸着対に対して及ぼす静電引力を、当該領域全体のうち切り欠き部を除いた面積(すなわち、当該領域のうち静電チャックプレートが存在する領域)で除したものをいう。本実施形態では、静電チャック24の複数の電極部のうち孔Hがある部分を含む一電極部(第1電極部)には、第1電極部より孔Hから遠く離れた他の電極部(第2電極部)より大きい電圧が印加されるように制御されてもよい。
【0044】
これによって、第1領域(又は第1電極部)は、第2領域(又は第2電極部)に比べて相対的に強い単位面積当たりの吸着力を基板SやマスクMに加える。従って、静電チャック24の第1領域(又は第1電極部)が孔がある部分を含んでいても、第1領域(又は第1電極部)に対応する基板SやマスクMの部分(例えば、4つのコーナー部及び/又は中央部)の静電チャック24への吸着度の低下を抑制することができる。第1領域には孔があるため、基板SやマスクM等の被吸着体に対し吸着力が作用する有効面積が、孔の分だけ第2領域より小さいが、第1領域における単位面積当たりの静電引力は第2領域より大きい。従って、吸着力が作用する有効面積と単位面積当たりの静電引力との積によって定まる被吸着体に対する吸着力の点では、孔の存在に起因して第1領域において低下することを抑制できる。さらに、吸着面における孔の面積と第1領域における単位面積当たりの静電引力を適宜調整することで、被吸着体に対する吸着力を第1領域と第2領域とで均一にすることも可能である。その結果、静電チャック24の一部の位置に孔が形成されても、基板SやマスクMは、全体的に良好に静電チャック24に吸着されることができる。
図2には示さなかったが、静電チャック24の吸着面とは反対側に基板Sの温度上昇を抑え
る冷却機構(例えば、冷却板)を設けることで、基板S上に堆積された有機材料の変質や劣化を抑制する構成としてもよい。
【0045】
蒸着源25は、基板Sに成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸着源25からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板Sに飛散することを阻むシャッタ(不図示)等を有する。蒸着源25は、点(point)蒸着源や線状(linear)蒸着源等、用途に従って多様な構成を有することができる
。
【0046】
図2には示さなかったが、成膜装置11は、基板Sに蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を有する。
【0047】
真空容器21の上部外側(大気側)には、基板Zアクチュエータ26、マスクZアクチュエータ27、静電チャックZアクチュエータ28、位置調整機構29等が設けられる。これらのアクチュエータ26,27,28と位置調整機構29は、例えば、モータとボールねじ、又はモータとリニアガイド等で構成される。基板Zアクチュエータ26は、基板支持ユニット22を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。マスクZアクチュエータ27は、マスク支持ユニット23を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。静電チャックZアクチュエータ28は、静電チャック24を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。
【0048】
位置調整機構29は、静電チャック24のアライメントのための駆動手段である。位置調整機構29は、静電チャック24全体を基板支持ユニット22及びマスク支持ユニット23に対して、X方向移動、Y方向移動、θ回転させる。なお、本実施形態では、基板Sを吸着した状態で、静電チャック24をX、Y、θ方向に位置調整することで、基板SとマスクMの相対的位置を調整するアライメントを行う。
【0049】
真空容器21の外側上面には、上述した駆動手段及び位置調整機構の他に、真空容器21の上面に設けられた透明窓及び静電チャック24に設けられたアライメント用の孔を介して、基板S及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラ20を設置してもよい。本実施形態においては、アライメント用カメラ20は、矩形の基板S、マスクM及び静電チャック24の対角線に対応する位置、又は、矩形の4つのコーナー部に対応する位置に設置してもよい。
【0050】
本実施形態の成膜装置11に設置されるアライメント用カメラ20は、基板SとマスクMとの相対的な位置を高精度で調整するために使われるファインアライメント用カメラであり、その視野角は狭いが高解像度を持つカメラである。成膜装置11は、ファインアライメント用カメラ20の他に相対的に視野角が広くて低解像度であるラフアライメント用カメラを有してもよい。
【0051】
なお、位置調整機構29は、アライメント用カメラ20によって取得した基板S(第1被吸着体)及びマスクM(第2被吸着体)の位置情報に基づいて、基板S(第1被吸着体)とマスクM(第2被吸着体)を相対的に移動させて位置調整するアライメントを行う。
【0052】
図2には示していないが、真空容器21の外側上面には、真空容器21の上面に設置された透明窓と静電チャック24に開いている吸着度確認用の孔Hを介して、基板S及び/又はマスクMの吸着度を確認するための吸着度確認用カメラを設置してもよい。吸着度確認用カメラは、吸着度確認用の孔Hが開いている静電チャック24の中央部に対応する位置に設置してもよいが、基板S及び/又はマスクMで吸着度の確認が必要な他の場所、例えば静電チャック24の長辺又は短辺の中央部に対応する位置に設置してもよい。なお、
吸着度確認要カメラを静電チャック24の中央部に対応する位置に設ける場合は、静電チャックプレート部240の中央部に吸着度確認要の孔Hを設ける、静電チャック24の長辺又は短辺の中央部に対応する位置に設ける場合は、静電チャックプレート部240の長辺又は短辺の中央部に吸着度確認要の孔Hを設ける。
【0053】
成膜装置11は、制御部40を備える。制御部40は、基板Sの搬送及びアライメント、蒸着源25の制御、成膜の制御等の機能を有する。制御部40はまた、静電チャック24への電圧の印加を制御する機能、つまり後述する
図3(a)の電圧制御部32の機能を有することができる。
【0054】
制御部40は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/O等を持つコンピュータによって構成可能である。この場合、制御部40の機能はメモリ又はストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを使用してもよく、組込み型のコンピュータ又はPLC(Programmable Logic Controller)を使用してもよい。又は、制御部40の機能の一部
又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置11毎に制御部40が設置されていてもよく、1つの制御部40が複数の成膜装置11を制御するように構成してもよい。
【0055】
<静電チャックシステム及び吸着方法>
図3(a)、
図3(b)、
図4(a)~
図4(c)を参照して本実施形態による静電チャックシステム30及び吸着方法について説明する。
【0056】
図3(a)は、本実施形態の静電チャックシステム30の概念的ブロック図であり、
図3(b)は、静電チャック24の模式的平面図である。また、
図4(a)は、本発明の一実施形態による静電チャック24の構成を説明するための、模式的平面図であり、
図4(b)及び4cは、それぞれ
図4(a)のABラインに沿って切り取った静電チャックの模式的断面図である。
【0057】
本実施形態の静電チャックシステム30は、
図3(a)に示したように、静電チャック24と、電圧印加部31と、電圧制御部32とを有する。
【0058】
電圧印加部31は、静電チャック24の電極部241~249に静電引力を発生させるための電圧を印加する。
【0059】
電圧制御部32は、静電チャックシステム30の吸着工程又は成膜装置11の成膜工程の進行に応じて、電圧印加部31から電極部240aに加えられる電圧の大きさ、電圧の印加開始時点、電圧の維持時間、電圧の印加順番等を制御する。電圧制御部32は、例えば、静電チャック24の電極部240aに含まれる複数のサブ電極部241~249への電圧印加をサブ電極部毎に独立に制御することができる。本実施形態では、電圧制御部32が成膜装置11の制御部40とは別途に構成されるが、本発明はこれに限定されず、成膜装置11の制御部40に統合されてもよい。
【0060】
静電チャック24は、誘電体(例えば、セラミックの材質)のマトリックス内に金属電極等の電気回路が埋設された構造の静電チャックプレート部240を有する。
【0061】
静電チャックプレート部240は、電極部240aと誘電体部240bを有する。電極部240aは、電圧印加部31による電圧の印加によって吸着面に被吸着体(例えば、基板S、マスクM)を吸着させるための吸着力を発生させる。そして、誘電体部240bは、1つ以上の誘電体物質で形成され、少なくとも電極部240aと前記吸着面との間に介
在される。静電チャックプレート部240は、基板Sの形状に対応する形状、例えば、矩形の形状を有してもよい。
【0062】
静電チャックプレート部240は、切り欠き部として1つ以上の孔Hが垂直方向に貫通するように形成される。孔Hが貫通する部分には、電極部が形成されない。孔Hは、何も満たされていない、空いた空間であってもよく、実施形態によっては、孔Hに透明な絶縁性物質が満たされていてもよい。孔Hは、例えば、静電チャック24の4つのコーナー部に設けられるアライメント用孔及び/又は静電チャック24の中央部に設けられる吸着度確認用の孔を含んでもよい。
【0063】
図3(a)及び
図3(b)に示したように、電極部240aは、複数のサブ電極部241~249を有することができる。例えば、本実施形態の電極部240aは、静電チャックプレート部240の長手方向(Y方向)及び/又は、静電チャックプレート部240の短手方向(X方向)に沿って、分割された複数のサブ電極部241~249を有してもよい。
図3(b)には、複数のサブ電極部241~249が、静電チャックプレート部240の全面において電極密度が均一に設けられていることと示されているが、孔Hがある部分を含むか否かに応じて領域毎(吸着部毎)に電極密度が異なるように設けられてもよい。
【0064】
サブ電極部241~249の各々は、静電吸着力を発生させるためにプラス(第1極性)及びマイナス(第2極性)の電位が印加される電極対33を有する。例えば、それぞれの電極対33は、プラス電位が印加される第1電極331と、マイナス電位が印加される第2電極332とを有する。
【0065】
第1電極331及び第2電極332は、
図3(b)に示したように、それぞれ櫛形状を有する。例えば、第1電極331及び第2電極332は、それぞれ複数の櫛歯部と、複数の櫛歯部に連結される基部とを有する。第1電極331及び第2電極332の各々の基部は櫛歯部に電圧を供給し、複数の櫛歯部は、被吸着体との間で静電吸着力を生じさせる。1つのサブ電極部において、第1電極331の各櫛歯部は、第2電極332の各櫛歯部と対向するように、交互に配置される。このように、第1電極331及び第2電極332の各々の櫛歯部が対向しかつ互いに入り組んだ構成とすることで、異なる電圧が印加される電極間の間隔を狭くすることができ、大きな不平等電界を形成し、グラジエント力によって基板Sを吸着することができる。
【0066】
本実施形態においては、静電チャック24のサブ電極部241~249の各々の第1電極331及び第2電極332が櫛形状を有すると説明したが、本発明はそれに限定されず、被吸着体との間で静電引力を発生させることができる限り、多様な形状を持つことができる。
【0067】
本実施形態の静電チャック24は、複数のサブ電極部241~249に対応する複数の吸着部141~149を有する。例えば、本実施形態の静電チャック24は、
図3(b)に示したように、9つのサブ電極部241~249に対応する9つの吸着部141~149を有するが、これに限定されず、基板S及び/又はマスクMの吸着をより精密に制御するため、他の個数の吸着部を有してもよい。
【0068】
吸着部141~149は、静電チャック24の長手方向(Y軸方向)及び短手方向(X軸方向)に分割されるように設けられるが、これに限定されず、静電チャック24の長手方向又は短手方向だけに分割されてもよい。複数の吸着部は、物理的に1つのプレートが複数の電極部を持つことで構成されてもよく、物理的に分割された複数のプレートそれぞれが1つ又はそれ以上の電極部を持つことで構成されてもよい。
【0069】
図3(b)に示した実施形態において、複数の吸着部それぞれが複数のサブ電極部それぞれに対応するように構成されてもよく、1つの吸着部が複数のサブ電極部を有するように構成されてもよい。
【0070】
例えば、電圧制御部32によるサブ電極部241~249への電圧の印加を制御することで、後述するように、基板Sの吸着進行方向(X方向)と交差する方向(Y方向)に配置された3つのサブ電極部241、244、247が1つの吸着部を成すようにすることができる。すなわち、3つのサブ電極部241、244、247それぞれは、独立に電圧制御が可能であるが、これら3つのサブ電極部241、244、247に同時に同じ電圧が印加されるように制御することで、これら3つの電極部241、244、247が1つの吸着部として機能するようにすることができる。複数の吸着部それぞれに独立に基板の吸着が行われることができる限り、その具体的な物理的構造及び電気回路的構造は変わり得る。
【0071】
本実施形態によれば、静電チャックプレート部240は、孔Hがある部分を含む第1領域101(101a、101b)での基板Sに対する単位面積当たりの静電引力が、第1領域101(101a、101b)以外の領域、つまり、第1領域101(101a、101b)より孔Hから遠く離れた第2領域102での単位面積当たりの静電引力より大きくなるように構成される。これによれば、第1領域101(101a、101b)で相対的に大きい単位面積当たりの静電引力が印加されるので、静電チャックプレート部240において孔Hが開いている部分、例えば、基板Sの4つのコーナー部及び/又は中央部において、孔Hのために基板Sの吸着力が弱くなることを抑制することができる。従って、静電チャックプレート部240の第1領域101(101a、101b)に対応するコーナー部や中央部における吸着度が相対的に低下することが抑制され、基板Sは、全体的に良好に静電チャック24に吸着され得る。
【0072】
静電チャックプレート部240の第1領域101(101a、101b)での静電引力が、第2領域102での静電引力より大きくなるように構成する1つの方法としては、静電チャックプレート部240を構成する電極部240aに印加される電圧が領域毎(つまり、吸着部毎)に異なるように制御する方法を用いることができる。
【0073】
例えば、静電チャックプレート部240が複数の電極部を有することにより複数の領域に分割されている場合に、孔Hがある部分を含む第1電極部には、第1電極部より孔Hから遠く離れた第2電極部より相対的に高い電圧が印加されるようにすることができる。
【0074】
つまり、本発明の一実施形態によれば、電圧制御部32は、孔Hがある部分を含む5つのサブ電極部241、243、245、247、249、又はこれに対応する吸着部141、143、145、147、149に印加される電圧が、これらより孔Hから遠く離れた4つのサブ電極部242、244、246、248、又はこれに対応する吸着部142、144、146、148に印加される電圧よりも、その大きさが大きくなるように制御する。
【0075】
このように、孔Hがある部分を含む領域に対応する電極部に、これより孔Hから遠く離れた他の領域に対応する電極部より相対的に大きい電圧を印加することで、吸着部142、144、146、148に対応する4つのサブ電極部242、244、246、248によって発生する単位面積当たりの静電引力より、吸着部141、143、145、147、149に対応する5つのサブ電極部241、243、245、247、249によって発生する単位面積当たりの静電引力は、相対的に大きくなる。これにより、孔Hの存在により吸着力が弱くなることを抑制でき、孔Hがある部分を含む吸着部と、これより孔H
から遠く離れた他の吸着部による吸着力が実質的に同じになるように制御することができる。
【0076】
静電チャックプレート部240の第1領域101(101a、101b)での単位面積当たりの静電引力が第2領域102での単位面積当たりの静電引力より大きくなるように構成するもう1つの方法は、静電チャックプレート部240の電極部240a及び/又は誘電体部240bを、領域毎に電気的特性が異なる物質で構成するか、又は同一の物質であっても電気的特性が異なるように構成することである。例えば、電極部240aを構成する電極の密度を領域毎に異なるようにしてもよいし、又は誘電体部240bを構成する誘電体の種類や厚さなどを領域毎に異なるようにしてもよい。以下、
図4(a)~
図4(c)を参照して、これについて具体的に説明する。
【0077】
まず、
図4(b)に概念的に示したように、静電チャックプレート部240の誘電体部240bは、領域毎に異なる誘電体物質で形成してもよいし、同一の誘電体物質であってその厚さが領域毎に異なるようにしてもよい。より具体的に、前者の場合には、静電チャックプレート部240の第1領域101(101a、101b)を構成する誘電体物質は、第2領域102を構成する誘電体物質より比抵抗を小さくしてもよいし、及び/又は誘電率を大きくしてもよい。後者の場合、静電チャックプレート部240の第1領域101(101a、101b)における誘電体部240bの厚さを、第2領域102における誘電体部240bの厚さより小さくすることができる。ここで、ある領域における「誘電体部240bの厚さ」とは、その領域における電極部の下面と、静電チャック24の吸着面との間の距離を指す。
【0078】
このような実施形態によれば、領域に関係なく、電極部240aの電極に同一の電圧が印加されても、第1領域101(101a、101b)に対応する電極部は、第2領域102に対応する電極部より大きい単位面積当たりの静電引力を発生することができる。ただし、
図4(b)に示された実施形態では、電極部240aの構成(例えば、電極密度等)は、領域による差がないことを前提としたが、本発明はこれに限定されない。
【0079】
そして、
図4(c)に概念的に示したように、静電チャックプレート部240の電極部240aを構成する電極は、領域に応じて電極密度が異なるように設けることができる。より具体的には、静電チャックプレート部240の第1領域101(101a、101b)には、第2領域102よりも高い電極密度を有するように、電極が設けられる。例えば、
図3(b)に示したように、静電チャックプレート部240の電極部240aを構成する複数のサブ電極部241~249のそれぞれが櫛形状を有する一対の電極(第1電極331及び第2電極332)で構成される場合、第1領域101(101a、101b)に対応するサブ電極部を構成する一対の電極の櫛歯部間の間隔を、第2領域102に対応するサブ電極部を構成する一対の電極の櫛歯部間の間隔よりも狭くすることで、第1領域101(101a、101b)の電極密度が第2領域102の電極密度よりも大きくなるようにすることができる。
【0080】
このような実施形態によれば、領域に関係なく、電極部240aの電極に同一の電圧が印加されても、電極密度が相対的に高い第1領域101(101a、101b)に対応する電極部は、第2領域102に対応する電極部よりも大きな単位面積当たりの静電引力を発生することができる。ただし、
図4(c)に示された実施形態では、誘電体部240bの構成(例えば、誘電体の比抵抗や誘電率等)は、領域による差がないことを前提としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電極密度が領域毎に異なることだけでなく、誘電体の比抵抗や誘電率も領域毎に異なってもよい。いずれの場合であっても、孔Hのような切り欠き部が設けられた静電チャックプレート部240において、切り欠き部がある部分を含む第1領域に対応する電極部が発生する単位面積当たりの基板S等の被吸着体に
対する静電引力が、第1領域よりも切り欠き部からの距離が遠い第2領域に対応する電極部が発生する単位面積当たりの基板S等の被吸着体に対する静電引力よりも大きくなるように、電極部を構成する電極の密度、誘電体部を構成する物質の比抵抗や誘電率等の物性や特性、電極部に印加する電圧を設定することにより、切り欠き部の存在に起因して第1領域における吸着力が低下することを抑制することができ、結果として静電チャックプレート部240の全体で均一な吸着力を基板S等の被吸着体に対し作用させることができ、基板S等の被吸着体を良好に静電チャック24に吸着させることが可能となる。
【0081】
<成膜プロセス>
以下、本実施形態による吸着方法を採用した成膜方法について説明する。
【0082】
真空容器21内のマスク支持ユニット23にマスクMが支持された状態で、搬送室13の搬送ロボット14によって成膜装置11の真空容器21内に基板Sが搬入される。
【0083】
真空容器21内に進入した搬送ロボット14のハンドが下降し、基板Sが基板支持ユニット22の支持部上に載置される。
【0084】
続いて、静電チャック24が基板Sに向かって下降し、基板Sに十分に近接又は接触した後に、静電チャック24に所定の電圧を印加し、基板Sを吸着させる。
【0085】
本実施形態においては、静電チャック24の静電チャックプレート部240に少なくとも1つの孔、例えば、静電チャックプレート部240の4つのコーナー部のそれぞれにアライメント用の孔Hが開いており、静電チャックプレート部240の中央部には、吸着度確認用の孔Hが開いている。そして、基板Sを吸着する際には、孔Hがある部分を含む吸着部を構成する電極部に対し、これより孔Hから遠く離れた吸着部を構成する電極部より大きい電圧を印加する。
【0086】
本発明の他の実施形態においては、静電チャック24の各吸着部に、孔Hとの位置関係によらず同じ電圧を印加するが、孔Hがある部分を含む吸着部や領域とそれ以外の吸着部や領域とで、電極部の電極密度や誘電体部の比抵抗や誘電率が異なるようにする。詳細は上述した通りである。
【0087】
静電チャック24に基板Sの吸着が完了すると、基板Sが静電チャック24によく吸着されたかを確認する吸着度の確認過程を実行することができる。例えば、吸着度確認のため、吸着度確認用カメラ(不図示)で吸着度確認用の孔Hを介して基板Sを撮影し、基板Sの静電チャック24に対する吸着度を確認する。
【0088】
静電チャック24に基板Sが吸着された状態で、基板SのマスクMに対する相対的な位置ずれを計測するために、基板SをマスクMに向かって下降させる。基板Sが計測位置まで下降すると、アライメント用カメラ20でアライメント用の孔Hを介して基板SとマスクMに形成されたアライメントマークを撮影し、基板SとマスクMの相対的な位置ずれを計測する。
【0089】
計測の結果、基板SのマスクMに対する相対的位置ずれが閾値を超えることが判明した場合、静電チャック24に吸着された状態の基板Sを水平方向(XYθ方向)に移動させて、基板SをマスクMに対して、位置調整(アライメント)する。
【0090】
アライメント工程の後、静電チャック24の電極部又はサブ電極部に所定の電圧を印加して、マスクMを基板S越しに静電チャック24に吸着させる。この際に、基板Sを吸着する際と同様の構成を採用することができる。
【0091】
続いて、蒸着源25のシャッタを開け、蒸着材料をマスクMを介して基板Sに蒸着させる。
【0092】
所望の厚さに蒸着した後、静電チャック24の電極部又はサブ電極部に印加される電圧を下げて、マスクMを分離し、静電チャック24に基板Sのみが吸着した状態で、静電チャックZアクチュエータ28により、静電チャック24を上昇させる。
【0093】
続いて、搬送ロボット14のハンドが成膜装置11の真空容器21内に進入し、静電チャック24の電極部又はサブ電極部にゼロ(0)又は逆極性の電圧が印加され、基板Sが静電チャック24から分離される。その後、蒸着が完了した基板Sを搬送ロボット14によって真空容器21から搬出する。
【0094】
なお、上述の説明では、成膜装置11は、基板Sの成膜面が鉛直方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆる上向蒸着方式(デポアップ)の構成としたが、これに限定はされず、基板Sが真空容器21の側面側に垂直に立てられた状態で配置され、基板Sの成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0095】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0096】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図5(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図5(b)は1画素の断面構造を表している。
【0097】
図5(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施形態にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組み合わせにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0098】
図5(b)は、
図5(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために、陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0099】
図5(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が1つの層で示されているが、有機E
L表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されることができる。
【0100】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0101】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び陽極64が形成された基板63を準備する。
【0102】
陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0103】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の陽極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0104】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、静電チャックにてマスクを基板越しに保持し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0105】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0106】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて陰極68を成膜する。
【0107】
本実施形態によれば、静電チャックにアライメント用の孔や吸着度確認用の孔のような切り欠き部が設けられている場合でも、静電チャック全体にわたって吸着力を実質的に同じに維持することができる。
【0108】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0109】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施形態において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0110】
上記実施形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施形態の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形してもよい。
【符号の説明】
【0111】
11:成膜装置
21:真空容器
22:基板支持ユニット
23:マスク支持ユニット
24:静電チャック
30:静電チャックシステム
31:電圧印加部
32:電圧制御部
240:静電チャックプレート部
240a:電極部
240b:誘電体部