(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】受電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20230501BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230501BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02H9/04
H02H9/04 C
(21)【出願番号】P 2019063474
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】太矢 隆士
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196225(JP,A)
【文献】特開2008-251755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧の印加によって直流電圧を生成し、前記直流電圧を出力する第1及び第2の出力端を有する整流回路と、
前記第1及び第2の出力端にドレイン及びソースが接続されたトランジスタと、
前記第1及び第2の出力端間の電圧に応じて前記トランジスタの
ゲートに印加されるゲート電圧を制御するゲート駆動回路と、
一端に前記トランジスタの前記ドレインが接続されかつ他端に前記トランジスタの前記ゲートに接続され
、前記第1及び第2の出力端間の電圧の上昇変化に応じて前記トランジスタの前記ゲートに電圧を印加するキャパシタと、を有することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記キャパシタの静電容量は、前記トランジスタのゲート容量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
コイル及びキャパシタを有し、前記コイルへの交流磁界の印加によって
前記交流電圧を生成して前記整流回路に供給する共振回路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記共振回路は、13.56Mhzの共振周波数を有することを特徴とする請求項3に記載の受電装置。
【請求項5】
前記ゲート駆動回路は、基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、前記基準電圧と前記第1及び第2の出力端間の電圧とを比較する電圧比較回路と、前記第1及び第2の出力端間の電圧が前記基準電圧よりも高い場合は前記キャパシタの前記他端に電荷を注入し、前記第1及び第2の出力端間の電圧が前記基準電圧よりも低い場合は前記キャパシタの前記他端から電荷を放出する電流源回路と、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の受電装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の出力端間の電圧を制限する制限電圧を調節する制限電圧調節回路を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の受電装置。
【請求項7】
前記制限電圧調節回路は、前記第1及び第2の出力端間の電圧を測定する出力電圧測定回路と、前記出力電圧測定回路によって測定された第1及び第2の出力端間の電圧に基づいて前記制限電圧を設定する制限電圧設定回路と、を有することを特徴とする請求項6に記載の受電装置。
【請求項8】
前記制限電圧設定回路は、前記整流回路が前記直流電圧の出力を開始した後の第1の期間においては前記制限電圧を第1の値に設定し、前記第1の期間の後の第2の期間においては前記制限電圧を前記第1の値よりも高い第2の値に設定することを特徴とする請求項7に記載の受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の送電装置から無線で電力を受け取る受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット、電子ペンなどの種々の電子機器のバッテリに無線で(又は無接点で)給電する技術が一般化されつつある(例えば、特許文献1など)。無線給電は、例えば磁界を媒体とした電力伝送を行うことで実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線給電システムは、利便性が大幅に向上するなどの多くの利点を有する一方、給電状態が不安定になるという課題を有している。不安定な給電状態の例としては、伝送媒体となる磁界の強度が一時的に大きく上昇又は低下することが挙げられる。この場合、規格値から外れた電圧が受電側の装置に印加されることとなり、例えば正確にバッテリへの給電を行うことが困難となる場合がある。
【0005】
特に、受電側の装置に一時的に大きな磁界が印加される場合、装置内で大きな電圧が生成される。この場合、バッテリのみならず受電された電圧を動作電圧として動作する他の負荷回路にも大きな電圧が印加され、当該負荷回路の動作が不安定になるのみならず、回路及び回路内の素子が破損する場合がある。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、受電電圧が急に上昇した場合でも高い応答性で負荷回路への受電電圧の供給を制限することが可能な受電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による受電装置は、交流電圧の印加によって直流電圧を生成し、直流電圧を出力する第1及び第2の出力端を有する整流回路と、第1及び第2の出力端にドレイン及びソースが接続されたトランジスタと、第1及び第2の出力端間の電圧に応じてトランジスタのゲート電圧を制御するゲート駆動回路と、一端にトランジスタのドレインが接続されかつ他端にトランジスタのゲートに接続されたキャパシタと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明による受電装置においては、受電電圧が急に上昇した直後はキャパシタの電圧上昇によってトランジスタが導通状態となることで出力電圧が制限される。その後、電流源回路によってトランジスタのゲート電圧が制御されることで、出力電圧が制限される。これによって、例えば急な受電電圧の増大に対しても高い応答性で電圧制限を行うことができる。従って、出力電圧が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る送電装置及び受電装置を含む電子システムのブロック図である。
【
図3】実施例1に係る受電装置における電圧制限回路の回路図である。
【
図4】実施例1に係る受電装置に印加される磁界の強度及び当該受電装置内で生成される電圧及び電流の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】実施例1の変形例に係る受電装置の回路図である。
【
図6】実施例1の変形例に係る受電装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る電子システム10のブロック図である。本実施例においては、電子システム10は、無線での送電機能のみを有する電子機器20と、電子機器20から送電された電力を受電する受電装置40を含む電子機器30と、を含む。また、電子システム10は、電子機器20及び30間で交流磁界を介した電力伝送を行う。
【0012】
本実施例においては、電子機器20は、送電機能のみを有し、送電装置として機能する。例えば、電子機器20は、無線給電が可能なテーブル(充電台)である。例えば、電子機器20は、電子機器30のみならず、電子機器20の近傍の空間に対して磁気的に電力を放出(出力)する。なお、電子機器20は、送電機能を有していればよく、他の機能を有していてもよい。
【0013】
本実施例においては、電子機器20は、コイルL1及びキャパシタC1を含む共振回路21を有する。共振回路21は、電磁変換を行い、本実施例においては、電圧の印加によって交流磁界を生成する。共振回路21は、電子機器20における送電部として機能する。例えば、共振回路21は、13.56MHzの共振周波数を有する。
【0014】
また、電子機器20は、共振回路21に交流電圧を印加しかつその電圧特性を制御する送電制御部22を有する。例えば、送電制御部22は、電子機器20の外部電源に接続され、当該外部電源からの電力を受けることで、交流電圧を生成する。そして、送電制御部22は、当該生成した交流電圧を共振回路21に供給する。
【0015】
例えば、送電制御部22は、13.56MHzの交流電圧を共振回路21に供給する。従って、電子機器20は、共振回路21から、13.56MHzの交流磁界を出力する。また、本実施例においては、共振回路21のコイルL1は、交流磁界を電力として出力する送電アンテナとして機能する。このように、電子機器20は、交流磁界を出力する。
【0016】
また、電子機器30は、電子機器30の受電回路として機能する受電装置40と、受電装置40によって受電された電力を消費する負荷回路50と、を有する。本実施例においては、負荷回路50は、電子機器30内の他の機能素子(図示せず)の動作電源となるバッテリ51と、バッテリ51の充電を行う充電部52と、を有する。例えば、電子機器30は、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、電子ペンなどである。
【0017】
また、本実施例においては、受電装置40は、コイルL2及びキャパシタC2を含む共振回路41を有する。共振回路41は、電磁変換を行い、本実施例においては、磁界の印加によって交流電圧を生成する。共振回路41は、受電装置40における受電部として機能する。例えば、共振回路41は、13.56MHzの共振周波数を有する。
【0018】
また、共振回路41のコイルL2は、電子機器30が電子機器20の近傍に配置されることで、電子機器20(送電装置)のコイルL1と磁気的に結合するように構成されている。すなわち、コイルL2は、交流磁界を電力として受け取る受電アンテナとして機能する。
【0019】
受電装置40は、共振回路41によって生成された交流電圧を直流電圧に変換し、その電圧特性を制御する受電制御部42を有する。受電制御部42は、当該変換した直流電圧を負荷回路50の動作電圧(電源電圧)として供給する。このように、受電装置40は、交流磁界を受け取って直流電圧を出力する。例えば、受電装置40によって出力された直流電圧によって、電子機器30のバッテリ51が充電される。
【0020】
図2は、受電装置40の回路図である。
図2を用いて、受電装置40の構成例について説明する。まず、共振回路41は、コイルL2に並列に接続されたキャパシタC2と、コイルL2に直列に接続されたキャパシタC3とを有する。キャパシタC2及びC3は、共振回路41と共振回路21との周波数マッチングを行うマッチングキャパシタとして機能する。
【0021】
また、共振回路41は、交流電圧を出力する一対の電圧出力端(以下、第1及び第2の交流電圧出力端と称する場合がある)N11及びN12を有する。本実施例においては、第1の交流電圧出力端N11は、キャパシタC3におけるコイルL2との接続端とは反対側の端部である。また、第2の交流電圧出力端N12は、キャパシタC2及びコイルL2におけるキャパシタC3との接続端とは反対側の端部である。なお、第1及び第2の交流電圧出力端N11及びN12の各々は、受電装置40における受電端子として機能する。
【0022】
次に、受電制御部42の構成例について説明する。受電制御部42は、共振回路41における交流電圧出力端N11及びN12に接続され、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路43を有する。整流回路43は、共振回路41の交流電圧出力端N11及びN12から出力された交流電圧を直流電圧に変換する。
【0023】
また、整流回路43は、直流電圧を出力する一対の電圧出力端(以下、第1及び第2の直流電圧出力端と称する場合がある)N21及びN22を有する。整流回路43の第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22は、負荷回路50に接続されている。なお、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22は、受電装置40における電力出力端子として機能する。
【0024】
本実施例においては、整流回路43は、第1の交流電圧出力端N11にアノード端子が接続されたダイオードD1と、ダイオードD1のアノード端子にカソード端子が接続されたダイオードD2と、第2の交流電圧出力端N12にアノード端子が接続されたダイオードD3と、ダイオードD3のアノード端子にカソード端子が接続されたダイオードD4と、を有する。ダイオードD1のカソード端子はダイオードD3のカソード端子に接続され、ダイオードD2のアノード端子はダイオードD4のアノード端子に接続されている。
【0025】
また、整流回路43は、ダイオードD1のカソード端子に一端が接続され、ダイオードD4のアノード端子に他端が接続されたキャパシタC4を有する。キャパシタC4は、整流回路43内において、直流電圧を平滑化するように構成されている。本実施例においては、整流回路43における第1の直流電圧出力端N21はキャパシタC4の当該一端であり、第2の直流電圧出力端N22はキャパシタC4の当該他端である。
【0026】
また、受電制御部42は、整流回路43の第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧、すなわち受電装置40から出力される電圧(以下、出力電圧と称する)を制限する電圧制限回路44を有する。
【0027】
本実施例においては、電圧制限回路44は、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22にそれぞれドレイン及びソースが接続されたトランジスタQ1と、一端にトランジスタQ1のドレインが接続されかつ他端にトランジスタQ1のゲートが接続されたキャパシタC5と、を有する。本実施例においては、トランジスタQ1は、NチャネルMOSFETである。
【0028】
また、電圧制限回路44は、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧に応じてトランジスタQ1のゲート電圧を制御するゲート駆動回路44Sを有する。ゲート駆動回路44Sは、ゲート電圧を制御することによって、トランジスタQ1のドレイン及びソース間の導通及び非導通を切替える。
【0029】
本実施例においては、ゲート駆動回路44Sは、電圧制限を行うための基準となる基準電圧(制限電圧)を生成する基準電圧生成回路44Aと、基準電圧と第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧とを比較する電圧比較回路44Bと、を有する。
【0030】
また、ゲート駆動回路44Sは、電圧比較回路44Bによる電圧比較結果に基づいてキャパシタC5の他端に対して電荷を注入及び放出することでゲート電圧を制御する電流源回路44Cを有する。
【0031】
例えば、電圧比較回路44Bは、基準電圧と第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧との差分を示す差分信号を電流源回路44Cに供給する。電流源回路44Cは、当該差分信号に基づいて、キャパシタC5への電荷注入及びキャパシタC5からの電荷放出を切替える。
【0032】
例えば、電流源回路44Cは、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧が基準電圧よりも高い場合にはキャパシタC5の他端に電荷を注入してトランジスタQ1のドレイン及びソース間を導通状態とする。また、電流源回路44Cは、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧が基準電圧よりも低い場合にはキャパシタC4の他端から電荷を放出(抽出)してトランジスタQ1のドレイン及びソース間を非導通状態とする。
【0033】
図3は、電圧制限回路44の回路図である。
図3を用いて、電圧制限回路44の構成例について説明する。まず、本実施例においては、電圧比較回路44Bは、複数のトランジスタ及び抵抗からなる差動増幅回路である。また、電流源回路44Cは、複数のトランジスタからなるカレントミラー回路である。
【0034】
より具体的には、本実施例においては、電流源回路44Cは、第1の直流電圧出力端N21にソースがそれぞれ接続されたトランジスタQ21、Q22及びQ23と、トランジスタQ21、Q22及びQ23のドレインにそれぞれソースが接続されたトランジスタQ24、Q25及びQ26と、を有する。
【0035】
また、トランジスタQ21、Q22及びQ23の各々のゲートは互いに接続されている。また、トランジスタQ24、Q25及びQ26の各々のゲートは互いに接続されている。本実施例においては、トランジスタQ21~Q26の各々は、PチャネルMOSFETである。
【0036】
また、電流源回路44Cは、第2の直流電圧出力端N22にソースがそれぞれ接続されたトランジスタQ27、Q28及びQ29を有する。本実施例においては、トランジスタQ27~Q29の各々は、NチャネルMOSFETである。
【0037】
トランジスタQ27のドレインはトランジスタQ24のドレインに接続されている。トランジスタQ28及びQ29のドレインはそれぞれトランジスタQ25及びQ26のドレインに接続されている。また、トランジスタQ27及びQ28のゲートは互いに接続されている。トランジスタQ28のゲート及びドレインは互いに接続されている。
【0038】
また、トランジスタQ21及びQ22の各々のドレインは電圧比較回路44Bに接続されている。また、トランジスタQ29のゲートは電圧比較回路44Bに接続されている。また、トランジスタQ24のドレインはキャパシタC5の他端及びトランジスタQ1のゲートに接続されている。
【0039】
電圧比較回路44Bは、電流源回路44CにおけるトランジスタQ21のドレインにドレインが接続されたトランジスタQ31と、電流源回路44CにおけるトランジスタQ22のドレインにドレインが接続されたトランジスタQ32と、を有する。また、電圧比較回路44Bは、トランジスタQ31及びQ32の各々のソースにドレインが接続され、第2の直流電圧出力端N22にソースが接続されたトランジスタQ33を有する。本実施例においては、トランジスタQ31~Q33の各々はNチャネルMOSFETである。
【0040】
また、電圧比較回路44Bは、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間に直列に接続された抵抗R1及びR2を有する。抵抗R1の一端は第1の直流電圧出力端N21に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R2の一端に接続されている。抵抗R2の他端は第2の直流電圧出力端N22に接続されている。トランジスタQ32のゲートは抵抗R1の他端に接続されている。
【0041】
また、トランジスタQ31のゲートは基準電圧生成回路44Aに接続されている。トランジスタQ33のゲートは、電流源回路44Cにおけるトランジスタ29のゲートに接続されている。
【0042】
また、本実施例においては、電圧制限回路44は、電圧比較回路44B及び電流源回路44Cの動作源となるバイアス回路44Dを有する。バイアス回路44Dは、第1の直流電圧出力端N21に接続されたバイアス電流源B1と、バイアス電流源B1にドレインが接続されたトランジスタQ4と、を有する。
【0043】
トランジスタQ4のソースは第2の直流電圧出力端N22に接続されている。また、トランジスタQ4のゲートは、トランジスタQ4のドレインに接続されている。また、トランジスタQ4のゲートは、電圧比較回路44BにおけるトランジスタQ33のゲート、及び電流源回路44CにおけるトランジスタQ29のゲートに接続されている。本実施例においては、トランジスタQ4は、NチャネルMOSFETである。
【0044】
例えば、本実施例においては、電圧制限回路44は、キャパシタC5及びトランジスタQ1を除いて集積回路として構成されている。そして、キャパシタC5及びトランジスタQ1は、外付け部品として構成されている。
【0045】
図4は、受電装置40に入力される磁界及び受電回路40内で生成される電圧及び電流の波形を模式的に示す図である。
図4を用いて、受電回路40の動作例について説明する。なお、
図4は、正常に受電動作を行っている途中のタイミングt1において基準電圧に対応する強度よりも大きな強度の磁界が受電装置40に入力された際の受電装置40の動作例(応答特性)を示す。
【0046】
まず、タイミングt1より前の期間、すなわち第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧が基準電圧以下の場合の電圧制限回路44の動作について説明する。この場合、電流源回路44Cは、キャパシタC5の他端に対する電荷の放出を行ってトランジスタQ1のソース及びドレイン間を非導通(高抵抗)状態とする。
【0047】
この状態で動作している途中のタイミングt1において、共振回路41、すなわちコイルL2に印加される磁界が急増した場合を考える。この場合、整流回路43によって生成される直流電圧の電圧値が突発的に増大する。従って、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22を介して電圧制限回路44に入力される電圧が増大する。
【0048】
ここで、本実施例においては、キャパシタC5の静電容量は、整流回路43のキャパシタC4の静電容量、及びトランジスタQ1のゲート容量など、周辺回路の寄生容量よりも十分に大きくなるように設定されている。例えば、キャパシタC5は、約1μFの静電容量を有する。また、例えば、トランジスタQ1は大電流駆動に対応する(例えば数百pFのゲート容量を有する)ように構成されている。
【0049】
従って、タイミングt1において、キャパシタC5の両端の電圧が瞬時に上昇する。これによって、トランジスタQ1のゲート電圧(ゲート-ドレイン間電圧)が上昇することで、トランジスタQ1のソース及びドレイン間が導通(低抵抗)状態となり、ドレイン電流が瞬時に増大する。
【0050】
また、この後、ゲート駆動回路44Sが動作することによって、トランジスタQ1のゲート電圧が上昇する。これによって、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧が基準電圧よりも小さくなるまで、トランジスタQ1のソース及びドレイン間に電流が流れることとなる。
【0051】
このように、受電装置40の出力電圧である第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧は、タイミングt1の直後においてもほとんど変化しない。従って、タイミングt1において過大な磁界が入力された場合でも、その前後で受電装置40から出力される電圧が安定する。従って、負荷回路50に過大な電圧が印加されることが抑制され、負荷回路50の動作が安定する。
【0052】
また、本実施例においては、キャパシタC5の他端には、トランジスタQ1のゲート及び電流源回路44Cのみが接続されている。従って、トランジスタQ1のゲートにはほとんど電流が流れない。従って、キャパシタC5への電荷の注入及び放出のために電流源回路44Cが必要とする電流は小さい。
【0053】
従って、例えば1μFの静電容量のキャパシタC5に対して1Vの電圧調整を行うための電荷注入又は電荷放出にかかる時間は、約1秒程度である。この時間は、電子機器の無線給電には十分許容可能な時間である。また、例えばバイアス回路44Dが電圧比較回路44B及び電流源回路44Cに供給するのに必要な電流は数μA程度である。従って、小さな消費電力で安定した電圧制限を行うことができる。
【0054】
また、抵抗R1及びR2の抵抗値を調節することで、基準電圧を調節することなく、制限する出力電圧を調節することができる。従って、例えば高精度で電圧制限を行うことができるなど、電圧制限の自由度が向上する。
【0055】
なお、上記した電子システム10の構成、及び受電装置40の構成は一例に過ぎない。例えば、例えば、
図3に示した電圧比較回路44B及び電流源回路44Cの構成は一例に過ぎない。また、例えば、
図3に示した抵抗R1及びR2の接続構成は一例に過ぎない。
【0056】
また、例えば、本実施例においては、電子システム10が13.56MHzの交流磁界を介した電力伝送を行う場合について説明した。しかし、電力伝送を行う際の磁界の特性は種々調節可能である。例えば、電子システム10は、6.78MHz、100kHzなど、他の周波数の交流磁界を介して電力伝送を行うように構成されていてもよい。
【0057】
また、本実施例においては、共振回路41が交流磁界の印加によって交流電圧を生成する場合について説明した。しかし、共振回路41は、種々の特性の磁界を印加することで交流電圧を生成するように構成されていればよい。
【0058】
また、本実施例においては、電子システム10が無線による電力伝送を行う場合について説明した。しかし、例えば受電装置40は、有線で磁界が印加されるように構成されていてもよい。すなわち、受電装置40は、外部から磁界を印加可能な種々の装置から受電動作を行うことができる。例えば、受電装置40は、コイルL2及びキャパシタC2を有し、コイルL2への交流磁界の印加によって交流電圧を生成して整流回路43に供給する共振回路41を有していればよい。
【0059】
このように、本実施例においては、受電装置40は、交流電圧の印加によって直流電圧を生成し、直流電圧を出力する第1及び第2の出力端N21及びN22を有する整流回路43と、第1及び第2の出力端N21及びN22間にドレイン及びソースがそれぞれ接続されたトランジスタQ1と、第1及び第2の出力端N21及びN22間の電圧に基づいてトランジスタQ1のゲートに印加する電圧を制御するゲート駆動回路44Sと、一端にトランジスタQ1のドレインが接続されかつ他端にトランジスタQ1のゲートが接続されたキャパシタC5と、を有する。従って、受電電圧が急に上昇した場合でも高い応答性で負荷回路50への受電電圧の供給を制限することが可能な受電装置40を提供することができる。
【実施例2】
【0060】
図5は、実施例2に係る受電装置40Aの回路図である。受電装置40Aは、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧を制限する電圧(以下、制限電圧と称する)を調節する制限電圧調節回路45を有する点を除いては、受電装置40と同様の構成を有する。
【0061】
本実施例においては、制限電圧調節回路45は、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間において互いに直列に接続され、第1の直流電圧出力端N21と電圧比較回路44Bとの間の接続状態を切替可能な抵抗R31、R32、R33、R34及びR35からなるラダー抵抗を有する。
【0062】
また、制限電圧調節回路45は、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧を測定する出力電圧測定回路45Aと、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧の測定結果に基づいて制限電圧を設定する制限電圧設定回路45Bと、を有する。また、制限電圧調節回路45は、抵抗R31~R35と電圧比較回路44Bの入力端との間の接続状態を切替える切替回路45Cを有する。
【0063】
本実施例においては、電圧比較回路44Bは、基準電圧と、制限電圧調節回路45によって調節された電圧とを比較する。例えば、本実施例においては、トランジスタQ32のゲートは、切替回路45Cを介して抵抗R31~R35のいずれかに接続されている。
【0064】
そして、電流源回路44Cは、この2つの電圧の差に基づいて、キャパシタC5の他端への電荷の注入及び放出を行う。例えば、制限電圧設定回路45Bによって切替回路45Cが抵抗R31の他端と電圧比較回路44Bとが接続されるような切替動作を行う場合、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧は、抵抗R31のみを介した第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧に制限される。また、これらの制限電圧の設定は、出力電圧測定回路45Cによる第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧の実測値に基づいて行われる。
【0065】
図6は、受電回路40Aの動作フローを示す図である。
図6を用いて、受電回路40Aにおける動作例について説明する。本実施例においては、まず、制限電圧設定回路45Bは、整流回路43の第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22から直流電圧の出力が開始されてから所定の期間(第1の期間又は受電開始初期)においては、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧を、所定の初期値に設定する(ステップS01)。
【0066】
例えば、初期値となる制限電圧としては、目標値よりも小さな値が挙げられる(例えば、目標値が5Vの場合、初期値を4Vに設定する)。なお、この制限電圧の初期値は、電子機器20(送電装置)によって設定された設計上の初期送電電圧の特性に基づいて算出された値であればよい。
【0067】
次に、電圧制限回路44は、電子機器20が電力を送電する状態にあるか(初期状態から送電状態に移行したか)否かを判定する(ステップS02)。例えば、電圧制限回路44は、電子機器20から電子機器20の動作状態に関する情報を取得するか、送電状態に至るまでの予め定められた期間が経過したかを判定するかなどによって、電子機器20が送電状態にあるか否かを判定する。なお、例えば、送電状態においては、電子機器20は、初期状態よりも高い電圧に対応する磁界を出力する。
【0068】
次に、出力電圧測定回路45Aは、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧を測定する(ステップS03)。ここでは、第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22間の電圧が実測される。
【0069】
続いて、制限電圧設定回路45Bは、測定された出力電圧が目標となる電圧以上であるか否かを判定する(ステップS03)。すなわち、制限電圧設定回路45Bは、負荷回路50に供給する状態に適した電圧が受電されているか否かを判定する。
【0070】
出力電圧が目標値未満でないと判定された場合、制限電圧設定回路45Bは、切替回路45Cを制御することで、制限電圧を目標値になるように調節する(例えば5Vに設定する)(ステップS04)。これによって、例えば、実際に電子機器20から送電が行われる際の送電電圧に合致するような出力電圧が出力されるように、出力電圧を制限することができる。
【0071】
続いて、出力電圧が目標値以上であると判定した場合、電圧制限回路44は、整流回路43と負荷回路50とを接続し、負荷回路50に送電を開始する(ステップS06)。このように、受電回路40Aにおいては、制限電圧調節回路45は、出力電圧を実測し、電圧制限回路44によって制限する出力電圧を調節しつつ受電動作を行う。従って、例えば、回路内の素子の製造誤差や環境温度の変化に対しても安定した受電(電力供給)を行うことができるなど、受電電圧を高精度に制限することができる。
【0072】
また、制限電圧調節回路45の制限電圧設定回路45Bは、整流回路43が第1及び第2の直流電圧出力端N21及びN22から直流電圧の出力を開始した後の第1の期間においては、制限電圧を第1の値(例えば初期値)に設定し、その後の第2の期間においては、制限電圧を第1の値よりも高い第2の値(例えば目標値)に設定する。これによって、例えば、電子機器20及び30間で電力伝送を行う準備が整う前の動作初期段階においても、正確かつ安全に電圧制限を行うことができる。
【0073】
なお、上記した種々の構成及び動作は一例に過ぎない。例えば、制限電圧調節回路45の構成は一例に過ぎない。また、例えば、抵抗R31~R35の接続構成は一例に過ぎない。
【符号の説明】
【0074】
40 受電装置
41 共振回路
43 整流回路
44 電圧制限回路