(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】穿孔装置およびそれを備えた播種装置
(51)【国際特許分類】
A01C 7/20 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
A01C7/20 Z
(21)【出願番号】P 2019158611
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、産学共同実用化開発事業(NexTEP)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】593148147
【氏名又は名称】日下部機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】西浦 芳史
(72)【発明者】
【氏名】島田 耕治
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-330606(JP,A)
【文献】特開2014-209875(JP,A)
【文献】実開昭47-25306(JP,U)
【文献】特開2008-136449(JP,A)
【文献】実公昭12-11283(JP,Y1)
【文献】中国特許出願公開第112772054(CN,A)
【文献】中国実用新案第209768172(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/20
A01C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面に一定の深さの複数の孔を穿つ穿孔装置であって、
穿孔方向に移動可能な移動ヘッドと、
前記穿孔方向に対して直交する方向に並んだ状態で前記移動ヘッドに搭載された複数の穿孔ユニットと、を有し、
前記穿孔ユニットそれぞれが、
凸部を含み、前記移動ヘッドに対して前記穿孔方向に移動可能に設けられ、前記対象面に孔を穿つ穿孔部材と、
前記移動ヘッドに前記穿孔部材が接近することによって前記穿孔方向に弾性的に圧縮変形する第1の弾性部材と、
前記穿孔部材に対して前記穿孔方向に移動可能に設けられ、前記対象面に対して接触する接触端を備えるストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材が前記穿孔部材の凸部によって係止されて前記移動ヘッド側への移動が制限されたときに前記ストッパ部材の接触端が前記穿孔部材に対して前記移動ヘッド側に最大に後退した状態
になり、前記ストッパ部材の接触端と前記穿孔部材の先端との間の距離が前記深さと同一である、穿孔装置。
【請求項2】
前記ストッパ部材が、前記穿孔方向に弾性的に圧縮変形する第2の弾性部材と、前記第2の弾性部材を介して前記穿孔部材に設けられて前記接触端を備える接触部材とを含み、
前記第2の弾性部材の弾性率が、前記第1の弾性部材の弾性率に比べて低
く、
前記穿孔部材の凸部が、前記第2の弾性部材を介して、前記接触部材を係止する、請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記接触部材が、筒状であって、
前記穿孔部材が、前記穿孔方向に移動可能に前記接触部材内に挿入されている、請求項2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
前記接触部材の接触端が、フランジ状である、請求項3に記載の穿孔装置。
【請求項5】
前記接触部材の外周面に、その内部空間に連通する開口が設けられている請求項3または4に記載の穿孔装置。
【請求項6】
前記第1および第2の弾性部材が、コイルスプリングであって、
前記穿孔部材が、前記第1および第2の弾性部材内に配置されている、請求項2から5のいずれか一項に記載の穿孔装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の穿孔装置と、
前記穿孔装置によって形成された孔に種子を供給する種子供給装置と、を有する播種装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔装置およびそれを備えた播種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、土壌に複数の孔を一度に穿ち、その孔それぞれに種子を播く播種装置が開示されている。特許文献1に記載された播種装置では、ポットの複数のセルそれぞれに収容された土壌に対して孔を一度に穿つように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の種子それぞれが土壌面から出芽するタイミングを合わせるためには、種子を播く孔の深さを一定にする必要がある。しかしながら、そのためには、複数の孔を穿つ土壌面のレベルを一様にする必要がある。すなわち、凹凸な土壌面を平坦に整地する必要がある。特許文献1の場合には、ポットの複数のセルそれぞれの土壌面のレベルを同一にする必要がある。しかしながら、土壌面のレベルを一様にするには手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、例えば凹凸な土壌面などの対象面に対して一定の深さの複数の孔を一度に穿つことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
対象面に一定の深さの複数の孔を穿つ穿孔装置であって、
穿孔方向に移動可能な移動ヘッドと、
前記穿孔方向に対して直交する方向に並んだ状態で前記移動ヘッドに搭載された複数の穿孔ユニットと、を有し、
前記穿孔ユニットそれぞれが、
前記移動ヘッドに対して前記穿孔方向に移動可能に設けられ、前記対象面に孔を穿つ穿孔部材と、
前記移動ヘッドに前記穿孔部材が接近することによって前記穿孔方向に弾性的に圧縮変形する第1の弾性部材と、
前記穿孔部材に対して前記穿孔方向に移動可能に設けられ、前記対象面に対して接触する接触端を備えるストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材の接触端が前記穿孔部材に対して前記移動ヘッド側に最大に後退した状態のときに、前記ストッパ部材の接触端と前記穿孔部材の先端との間の距離が前記深さと同一である、穿孔装置が提供される。
【0007】
本開示の別態様によれば、
上記の穿孔装置と、
前記穿孔装置によって形成された孔に種子を供給する種子供給装置と、を有する、播種装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば凹凸な土壌面などの対象面に対して一定の深さの複数の孔を一度に穿つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る播種装置の穿孔装置を示す部分断面図
【
図2A】播種装置における穿孔装置の穿孔・播種動作における一動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施の形態に係る播種装置の穿孔装置について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る播種装置における穿孔装置を示す部分断面図である。なお、図に示すX-Y-Z座標系は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。Z軸方向は土壌面に対して直交する方向であって、X軸方向はZ軸方向に対して直交する方向であって、Y軸方向はX軸方向およびZ軸方向の両方に対して直交する方向である。
【0012】
本実施の形態の播種装置は、
図1に示すように、ポット100の複数のセル102A、102Bに収容された土壌Sに種子Wを播種するように構成されている。具体的には、土壌面SSに対して交差する方向(Z軸方向)に穿孔し、その穿孔によって種子Wを土壌面SSから一定の深さDの位置に配置する穿孔装置10を、播種装置は備えている。なお、
図1においては、各セル102A、102Bの土壌Sの土壌面SSのレベルは、同一ではなく異なる。具体的には、セル102Aの土壌面SSのレベルが、セル102Bの土壌面SSのレベルに対してΔHだけ高い。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態の播種装置の穿孔装置10は、穿孔方向(Z軸方向)に移動可能な移動ヘッド12と、穿孔方向に対して直交する方向(X軸方向)に並んだ状態で移動ヘッド12に搭載された複数の穿孔ユニット14A、14Bとを有する。なお、本実施の形態の場合、穿孔方向は上下方向である。また、移動ヘッド12に搭載される複数の穿孔ユニットの数は、3つ以上であってもよく、またX軸方向およびY軸方向に並んだ状態で、すなわちマトリックス状に移動ヘッド12に搭載されてもよい。
【0014】
本実施の形態の播種装置においては、複数の穿孔ユニット14A、14Bが対応するセル102A、102Bの上方に位置するように、穿孔装置10の移動ヘッド12がポット100に対して配置される。次に、移動ヘッド12がポット100に向かって降下する(Z軸方向に移動する)ことにより、複数の穿孔ユニット14A、14Bが対応するセル102A、102B内の土壌Sを穿孔する。
【0015】
本実施の形態の播種装置において、穿孔装置10の移動ヘッド12は、例えばアクチュエータによって穿孔方向(Z軸方向)に移動されてもよい。この場合、播種装置は、ポット100を穿孔装置10の下方に配置する、例えば搬送コンベアなどの搬送装置(図示せず)を備える。この代わりとして、穿孔装置10の移動ヘッド12は、上下方向(Z軸方向)と水平方向(X軸方向およびY軸方向)とに移動してポット100の上方に配置されてもよい。
【0016】
本実施の形態の場合、穿孔装置10の複数の穿孔ユニット14A、14Bは、同一の構造であって、穿孔部材16A、16Bと、第1のコイルスプリング18A、18B(第1の弾性部材)とを備える。
【0017】
穿孔部材16A、16Bは、穴を穿つための部材であって、移動ヘッド12に対して穿孔方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。
【0018】
具体的には、本実施の形態の場合、穿孔部材16A、16Bは、土壌Sに孔を穿つ穿孔チップ20A、20B、シリンダーダンパ22A、22B、およびこれらを連結するジョイントシャフト24A、24Bから構成されている。
【0019】
穿孔部材16A、16Bの穿孔チップ20A、20Bは、移動ヘッド12がポット100に向かって降下すると土壌面SSに接触し、そこからさらに移動ヘッド12が降下すると、土壌Sを押し分けてその内部に進入する。その結果として、土壌面SSに孔を穿つ。なお、穿孔チップ20A、20Bの形状は、土壌Sの種類によって変更してもよい。すなわち、土壌S内に進入することができるのであれば、穿孔チップ20A、20Bの形状は問わない。あらゆる土壌Sの種類に対応するために、穿孔チップ20A、20Bをジョイントシャフト24A、24Bに対して着脱可能にしてもよい。
【0020】
穿孔部材16A、16Bのシリンダーダンパ22A、22Bは、シリンダ22Aa、22Bbと、シリンダ22Aa、22Baに対して穿孔方向(Z軸方向)に進退するピストンロッド22Ab、22Bbとから構成されている。
【0021】
本実施の形態の場合、シリンダーダンパ22A、22Bのピストンロッド22Ab、22Bbの先端が移動ヘッド12に固定されている。また、シリンダ22Aa、22Baには、穿孔方向(Z軸方向)に延在するジョイントシャフト24A、24Bを介して、穿孔チップ20A、20Bが取り付けられている。
【0022】
なお、代わりとして、シリンダーダンパ22A、22Bのシリンダ22Aa、22Baを移動ヘッド12に固定し、ピストンロッド22Ab、22Bbの先端に穿孔チップ20A、20Bを取り付けてもよい。
【0023】
第1のコイルスプリング18A、18Bは、穿孔ユニット14A、14Bにおいて、穿孔方向(Z軸方向)に弾性的に圧縮変形するように配置されている。また、第1のコイルスプリング18A、18Bは、圧縮変形中に、移動ヘッド12に接触する一端18Aa、18Baと、シリンダーダンパ22A、22Bのシリンダ22Aa、22Baに設けられたフランジ部22Ac、22Bcに接触する他端18Ab、18Bbとを備える。すなわち、本実施の形態の場合、第1のコイルスプリング18A、18B内に穿孔部材16A、16Bのシリンダーダンパ22A、22Bが配置されている。そして、移動ヘッド12に穿孔部材16A、16Bが接近することにより、これらに挟まれて第1のコイルスプリング18A、18Bが圧縮変形する。
【0024】
さらに、穿孔ユニット14A、14Bは、穿孔部材16A、16Bによって形成される孔の深さを一定の深さDに制限するためのストッパ部材26A、26Bを備えている。
【0025】
本実施の形態の場合、ストッパ部材26A、26Bは、第2のコイルスプリング28A、28B(第2の弾性部材)と、第2のコイルスプリング28A、28Bを介して穿孔部材16A、16Bに設けられた接触部材30A、30Bとを含んでいる。
【0026】
ストッパ部材26A、26Bの第2のコイルスプリング28A、28Bは、穿孔ユニット14A、14Bにおいて、穿孔方向(Z軸方向)に弾性的に圧縮変形するように配置されている。その第2のコイルスプリング28A、28B内に、穿孔部材16A、16Bのジョイントシャフト24A、24Bが配置されている。また、第2のコイルスプリング28A、28Bの一端28Aa、28Baは、穿孔部材16A、16B(そのシリンダーダンパ22A、22Bのシリンダ22Aa、22Ba)に固定されている。さらに、理由は後述するが、第2のコイルスプリング28A、28Bは、第1のコイルスプリング18A、18Bの弾性率に比べて低い弾性率を備えている。
【0027】
ストッパ部材26A、26Bの接触部材30A、30Bは、穿孔方向(Z軸方向)に延在する筒状であって、土壌面SSと接触するフランジ状の接触端30Aa、30Baを備える部材である。また、ストッパ部材26A、26Bの内部空間30Ab、30Bbに、穿孔部材16A、16B(その穿孔チップ20A,20B)が穿孔方向に移動可能に挿入されている。さらに、ストッパ部材26A、26Bは、接触端30Aa、30Baに対して反対側の端が、第2のコイルスプリング28A、28Bの他端28Ab、28Bbに固定されている。
【0028】
また、本実施の形態の場合、ストッパ部材26A、26Bの接触部材30A、30Bは、その外周面に、その内部空間30Ab、30Bbに連通する開口であって、その内部空間に種子Wを投入するための種子投入口30Ac、30Bcを備える。なお、本実施の形態に係る播種装置は、この種子投入口30Ac、30Bcに接続され、種子Wを所定数ずつ接触部材30A、30Bの内部空間30Ab、30Bbに供給する種子供給装置(図示せず)を有する。
【0029】
すなわち、ストッパ部材26A、26Bの接触部材30A、30Bは、第2のコイルスプリング28A、28Bを介して、吊り下げ状態で穿孔部材16A、16Bに支持されている。また、接触部材30A、30Bは、挿入されている穿孔部材16A、16B(その穿孔チップ20A、20B)に対して、穿孔方向(Z軸方向)にスライド可能に支持されている。
【0030】
なお、種子Wの形状によって種子投入口の形状が異なる複数の種類の接触部材が着脱可能に、穿孔ユニット14A、14Bを構成してもよい。
【0031】
ここまでは、本実施の形態に係る播種装置、特に播種装置が備える穿孔装置10の構成について説明してきた。ここからは、穿孔装置10の動作について、すなわち一定の深さDの孔を穿ち、その孔に種子を播種(配置)する穿孔・播種動作について説明する。
【0032】
図2A~2Gは、本実施の形態に係る播種装置における穿孔装置の穿孔・播種動作を示す図である。なお、
図2A~2Gにおいて、第1および第2のコイルスプリング18A、18B、28A、28Bは簡略的に示されている。また、
図2A~2Gは、ポット100の各セル102A、102Bの土壌Sの土壌面SSのレベルが異なる場合の穿孔装置10の動作を示している。
【0033】
まず、
図2Aに示すように、穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌Sに向かって(ポット100に向かって)移動すると、一方の穿孔ユニット14Aにおけるストッパ部材26Aの接触部材30Aの接触端30Aaが、対応するセル102A内の土壌Sの土壌面SSに接触する。
【0034】
これに対して、他方の穿孔ユニット14Bは、対応するセル102B内の土壌Sの土壌面SSに接触していない。これは、セル102Bの土壌面SSのレベルが、セル102Aの土壌面SSのレベルに対して、ΔHだけ低いからである。
【0035】
次に、
図2Aに示すように、セル102Aの土壌面SSに接触している接触部材30Aの内部空間30Abに、その種子投入口30Acを介して種子Wが投入される。これにより、穿孔チップ20Aの下方の土壌面SS上に種子Wが配置される。
【0036】
図2Aに示す位置からさらに穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌S(ポット100)に向かって移動すると、
図2Bに示すように、一方の穿孔ユニット14Aにおいては、第2のコイルスプリング28Aが、セル102Aの土壌面SSに接触している接触部材30Aに押されて圧縮変形する。このとき、接触部材30Aは、その接触端30Aaがフランジ状であるので、圧縮状態の第2のコイルスプリング28Aに付勢されていても土壌S内に沈み込むにくい。なお、第1のコイルスプリング18Aは、その弾性率が第2のコイルスプリング28Aの弾性率に比べて高いので、実質的に圧縮変形しない。
【0037】
これに対して、他方の穿孔ユニット14Bにおいては、ストッパ部材26Bの接触部材30Bの接触端30Baが、対応する102B内の土壌Sの土壌面SSに接触する。
【0038】
次に、
図2Bに示すように、セル102Bの土壌面SSに接触している接触部材30Bの内部空間30Bbに、その種子投入口30Bcを介して種子Wが投入される。これにより、穿孔チップ20Bの下方の土壌面SS上に種子Wが配置される。
【0039】
図2Bに示す位置からさらに穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌S(ポット100)に向かって移動すると、
図2Cに示すように、一方の穿孔ユニット14Aにおいては、第2のコイルスプリング28Aがさらに圧縮変形する。それにより、穿孔部材16Aの穿孔チップ20Aが接触部材30A内を移動し、その先端20Aaが土壌面SSに接触する。その穿孔チップ20Aにより、種子Wが土壌S内に押し込まれる。
【0040】
これに対して、他方の穿孔ユニット14Bにおいては、第2のコイルスプリング28Bが圧縮変形するものの、穿孔チップ20Bの先端20Baは土壌面SSに接触していない。
【0041】
図2Cに示す位置からさらに穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌S(ポット100)に向かって移動すると、
図2Dに示すように、他方の穿孔ユニット14Bにおいても、穿孔チップ20Bの先端20Baが土壌面SSに接触する。その穿孔チップ20Bにより、種子Wが土壌S内に押し込まれる。
【0042】
図2Dに示すように、一方の穿孔ユニット14Aにおける穿孔チップ20Aと接触部材30Aとが土壌面SSに接触するとともに、他方の穿孔ユニット14Bにおける穿孔チップ20Bと接触部材30Bとが土壌面SSに接触している。この場合、一方の穿孔ユニット14Aの第2のコイルスプリング28Aと、他方の穿孔ユニット14Bの第2のコイルスプリング28Bは、同程度に圧縮されている。
【0043】
これに対して、一方の穿孔ユニット14Aの第1のコイルスプリング18Aと他方の穿孔ユニット14Bの第1のコイルスプリング18Bは、圧縮変形量が異なり、前者の方が後者に比べてより大きく圧縮変形している。この圧縮変形量の差ΔPは、セル102Aの土壌面SSとセル102Bの土壌面SSとの間のレベル差ΔHに等しい。そのため、第1のコイルスプリング16Aによって付勢されている穿孔部材16Aの穿孔チップ20Aは、第1のコイルスプリング16Bによって付勢されている穿孔部材16Bの穿孔チップ20Bに比べて大きな力で土壌面SSに接触している。
【0044】
図2Dに示す位置からさらに穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌S(ポット100)に向かって移動すると、一方の穿孔ユニット14Aの第1のコイルスプリング18Aと他方の穿孔ユニット14Bの第1のコイルスプリング18Bとがさらに圧縮変形する。その圧縮変形量がある程度大きくなると、その第1のコイルスプリング18A、18Bの付勢力によって穿孔チップ20A、20Bが土壌S内に押し入り始める。すなわち、種子Wを土壌S内に押し込み始める。
【0045】
図2Eに示すように、一方の穿孔ユニット14Aの穿孔部材16Aの穿孔チップ20Aが、他方の穿孔ユニット14Bの穿孔部材16Bの穿孔チップ20Bに比べて、先行して土壌S内を押し進む。これは、
図2Dに示すように、他方の穿孔ユニット14Bの穿孔チップ20Bが土壌面SSに接触したときにはすでに、一方の穿孔ユニット14Aの第1のコイルスプリング18Aが、他方の穿孔ユニット14Bの第2のコイルスプリング18Bに比べて大きく圧縮されているからである。
【0046】
移動ヘッド12の移動によって穿孔部材16A、16Bの穿孔チップ20A、20Bが土壌S内を押し進むと、その先端20Aa、20Baと接触部材30A、30Bの接触端30Aa、30Baとの間の距離が拡大していく。すなわち、接触部材30A、30Bが、穿孔部材16A、16Bに対して移動ヘッド12側に相対的に移動する。その結果、第2のコイルスプリング28A、28Bが圧縮される。
【0047】
図2Eに示す位置からさらに穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌S(ポット100)に向かって移動すると、
図2Fに示すように、一方の穿孔ユニット14Aにおいて、穿孔部材16Aの穿孔チップ20Aの土壌S内での移動が停止する。このとき、第1のコイルスプリング18Aが最大に圧縮され、それにより、ストッパ部材26Aの接触部材30Aの接触端30Aaは、穿孔部材16Aに対して最大に後退し、これ以上の後退が制限される。その結果、接触部材30Aの接触端30Aaは、穿孔チップ20Aの先端20Aaから移動ヘッド12側に距離Dだけ離れた位置で停止する。
【0048】
このように、接触部材30Aの接触端30Aaが穿孔チップ20Aの先端20Aaから移動ヘッド12側に距離Dだけ離れた位置で停止することにより、また、その接触部材30Aの接触端30Aaが土壌面SSに接触していることにより、穿孔チップ20Aの先端20Aは、土壌面SSから距離Dだけ離れた位置で停止する。その結果、穿孔チップ20Aが土壌Sに一定の深さDの孔を穿ち、種子Wが土壌面SSから一定の深さDの位置に配置される。
【0049】
図2Fに示すように、一方の穿孔ユニット14Aにおいては穿孔部材16Aの穿孔チップ20Aの土壌S内での移動が停止するものの、他方の穿孔ユニット14Bにおいては穿孔部材16Bの穿孔チップ20Bの土壌S内での移動が継続される。
【0050】
図2Fに示す位置から穿孔装置10(その移動ヘッド12)が土壌S(ポット100)に向かって移動すると、
図2Gに示すように、他方の穿孔ユニット14Bにおいても、穿孔部材16Bの穿孔チップ20Bの土壌S内での移動が停止する。その結果、一方の穿孔ユニット14Aと同様の理由で、他方の穿孔ユニット14Bが対応するセル102Bの土壌Sに一定の深さDの孔を穿ち、種子Wが土壌面SSから一定の深さDの位置に配置される。
【0051】
なお、一方の穿孔ユニット14Aの穿孔部材16Aの穿孔チップ20Aの土壌S内での移動が停止してから、他方の穿孔ユニット14Bの穿孔部材16Bの穿孔チップ20Bの土壌内での移動が停止するまでの間、一方の穿孔ユニット14Aの第1のコイルスプリング18Aが圧縮変形する。これにより、移動ヘッド12は、一定の深さDの孔を穿ち終えた一方の穿孔ユニット14Aに妨害されることなく、土壌Sに向かって移動することができる。
【0052】
最終的には、
図2Gに示すように、ポット100の各セル102A、102Bの両方で一定の深さDの孔を穿ち終えたとき、一方の穿孔ユニット14Aの第1のコイルスプリング18Aと他方の穿孔ユニット14Bの第1のコイルスプリング18Bとの間の圧縮量差ΔPは、セル102Aの土壌面SSとセル102Bの土壌面SSとの間のレベル差ΔHと実質的に一致する。すなわち、セル102A、102B間の土壌面SSのレベル差を、穿孔ユニット14A、14Bの第1のコイルスプリング18A、18Bが吸収している。
【0053】
図2Gに示すように、セル102A、102Bの土壌Sに一定の深さDの孔を穿ち終えると(土壌面SSから一定の深さDの位置に種子Wを配置し終えると)、穿孔装置10は、土壌S(ポット100)から上方向に離脱する。そして、本実施の形態に係る播種装置は、穿孔装置10を次のセルの上方に配置し、その次のセル内の土壌に対する穿孔・播種作業を開始する。
【0054】
以上のような実施の形態によれば、
図2Aに示すように、土壌面SSのレベルが異なる
ポット100の複数のセル102A、102B内の土壌Sに対して、一定の深さの複数の孔を一度に穿つことができる。
【0055】
なお、補足すると、
図2E~
図2Gに示すように、一方の穿孔ユニット14Aによるセル102Aの土壌Sに対する穿孔開始タイミングと、他方の穿孔ユニット14Bによるセル102Bの土壌Sに対する穿孔開始タイミングは、完全には一致しない。同様に、穿孔終了タイミングも完全には一致しない。しかしながら、穿孔装置10(その移動ヘッド12)がポット100に一度接近するだけで、そのポット100の各セル102A、102B内の土壌Sに対して孔を一度に穿つことができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る穿孔装置10は、ポット100の各セル102A、102B内の土壌Sに孔を穿つことに限らず、畑などの凹凸の土壌面に対しても、一定の深さDの複数の孔を一度に穿つことができる。この場合、例えば、穿孔装置10は、畑などを走行することが可能な農業機械に搭載されてもよい。
【0057】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されない。
【0058】
例えば、上述の実施の形態の場合、
図2Aおよび
図2Bに示すように、穿孔ユニット14A、14Bが孔を穿つ前の土壌面SSに種子Wが配置される。そして、
図2Gに示すように、穿孔ユニット14A、14Bの穿孔部材16A、16B(その穿孔チップ20A、20B)により、種子Wが土壌面SSから一定の深さDの位置まで押し込まれる。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、穿孔ユニット14A、14Bが土壌面SSに孔を穿ってその孔から離脱した後、その孔に種子Wを供給してもよい。また例えば、土壌が硬い場合には、穿孔ユニット14A、14Bによって下穴としての孔を穿ってもよい。まず、穿孔ユニット14A、14Bが、土壌面SSに下穴として孔を穿ち、その下穴から一度離脱する。そして、その下穴に種子Wが投入された後、穿孔ユニット14A、14Bが下穴に投入された種子Wを土壌Sの奥に向かって押し込む。
【0059】
また、上述の実施の形態の場合、
図2Aおよび
図2Bに示すように、種子供給装置(図示せず)が穿孔装置10の穿孔ユニット14A、14Bにおけるストッパ部材26A、26Bの接触部材30A、30Bを介して、土壌Sに種子Wを供給する。すなわち、種子供給装置と穿孔装置10とが一体的に接続されている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、種子供給装置と穿孔装置とが別体であって、その種子供給装置が、穿孔装置によって形成された孔に種子を供給してもよい。
【0060】
さらに、上述の実施の形態の場合、
図1に示すように、第1のコイルスプリング18A内と第2のコイルスプリング28A内とに穿孔部材16Aが配置されるとともに、第1のコイルスプリング18B内と第2のコイルスプリング28B内とに穿孔部材16Bが配置されている。さらには、ストッパ部材26A、26Bの接触部材30A、30Bが筒状であって、その接触部材30A、30Bに穿孔部材16A、16Bが挿入されている。これにより、各穿孔ユニット14A、14Bそれぞれの幅サイズ(X軸方向およびY軸方向のサイズ)を小さくすることができる。それにより、複数の穿孔ユニット14A、14Bの間の間隔を小さくすることができ、その結果、移動ヘッド12に多くの穿孔ユニット14A、14Bを搭載することができる。しかし、穿孔部材を、第1および第2のコイルスプリング内に配置することなく、および/または接触部材に挿入することなく、穿孔ユニットを構成することも可能である。
【0061】
すなわち、
図1~
図2Gに示す上述の実施の形態は、本発明における1つの実施の形態に過ぎない。本発明に係る穿孔装置は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、概念的に表すことができる。
【0062】
図3Aは穿孔前の概念的な穿孔装置を示し、
図3Bは穿孔後の概念的な穿孔装置を示している。
【0063】
図3Aおよび
図3Bに示すように、穿孔装置210は、土壌面などの凹凸な対象面TSに一定の深さDの複数の孔を一度に穿つ装置であって、穿孔方向(Z軸方向)に移動可能な移動ヘッド212と、穿孔方向に対して直交する方向(X軸方向)に並んだ状態で移動ヘッド212に搭載された複数の穿孔ユニット214A、214Bとを有する。
【0064】
その穿孔ユニット214A、214Bは、移動ヘッド212に対して穿孔方向(Z軸方向)に移動可能に設けられ、対象面TSに孔を穿つ穿孔部材216A、216Bと、移動ヘッド12に対して穿孔部材216A、216Bが接近することによって弾性的に圧縮変形する弾性部材218A、218Bと、穿孔部材216A、216Bに対して穿孔方向に移動可能に設けられ、対象面TSに対して接触する接触端を備えるストッパ部材226A、226Bと、を備える。
【0065】
そして、
図3Bに示すように、ストッパ部材226A、226Bの接触端が穿孔部材216A、216Bに対して移動ヘッド212側に最大に後退した状態のときに、ストッパ部材226A、226Bの接触端と穿孔部材216A、216Bの先端との距離が深さDと同一である。
【0066】
この概念的な穿孔装置210によれば、弾性的に圧縮変形する弾性部材218A、218Bは、コイルスプリングであってもよいし、蛇腹状のチューブ、円柱状のゴム部材、空圧式または油圧式のシリンダやばねなどであってもよい。なお、同様に、
図1に示す上述の実施の形態におけるストッパ部材26A、26Bの第2の弾性部材(第2のコイルスプリング28A、28B)も、蛇腹状のチューブ、円柱状のゴム部材、空圧式または油圧式のシリンダやばねなどであってもよい。また、ストッパ部材226A、226Bが穿孔部材216A、216Bに対して最大に後退した位置でそのストッパ部材226A、226Bを係止する構成要素として、フランジなどの凸部216Aa、216Baが穿孔部材216A、216Bに設けられてもよい。
【0067】
以上のように、本発明における技術の例示として、上述の実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0068】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0069】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る穿孔装置は、播種の目的に限らず、複数の孔を一度に穿つ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 穿孔装置
12 移動ヘッド
14A 穿孔ユニット
14B 穿孔ユニット
16A 穿孔部材
16B 穿孔部材
18A 第1の弾性部材(第1のコイルスプリング)
18B 第1の弾性部材(第1のコイルスプリング)
26A ストッパ部材
26B ストッパ部材
D 深さ