(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ストレーナー及び粗大粒子除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
B01D35/02 A
(21)【出願番号】P 2019134867
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】林 荘太
(72)【発明者】
【氏名】永元 良治
(72)【発明者】
【氏名】井下 俊樹
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-80711(JP,A)
【文献】実開昭59-65710(JP,U)
【文献】米国特許第6063296(US,A)
【文献】実開平3-38128(JP,U)
【文献】特開2009-242552(JP,A)
【文献】特開2018-192422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/02
B01D 24/02
B03B 5/00,7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーから粗大粒子を除去するストレーナーであって、
上下端にフランジを有する直管と、
前記直管から斜め下方に分岐する配管を配置させてから前記直管と平行に降下し、前記直管に斜めに合流する配管を配置させるバイパス管と、
前記バイパス管の上部屈曲部からさらに横に分岐する配管を配置させてから降下配置させた大気解放状態の抜出管と、を備え、
前記直管内であって、前記斜め下方に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該斜め下方に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれの該スリットの幅が10mm以上である第1スリット部と、
前記バイパス管内であって、前記横に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該横に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれの該スリットの幅が10mm以上である第2スリット部を有することを特徴とするストレーナー。
【請求項2】
前記バイパス管において、前記直管から斜め下方に分岐する配管の角度が、前記直管に対して30~45度であることを特徴とする請求項1に記載のストレーナー。
【請求項3】
前記第1スリット部及び前記第2スリット部のスリットの幅が30mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のストレーナー。
【請求項4】
前記第1スリット部及び前記第2スリット部を構成する平板の横方向の厚みが、3mm以上あることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のストレーナー。
【請求項5】
湿式粉砕機から溢流した粉砕後のスラリーを一時的に貯留する貯留槽と、該貯留槽に貯留した前記スラリーから粗大粒子を除去するストレーナーと、前記粗大粒子を捕集する容器と、を備える粗大粒子除去装置であって、
前記ストレーナーは、
前記貯留槽の直下に垂直に配設され、上下端にフランジを有する直管と、
前記直管から斜め下方に分岐する配管を配置させてから前記直管と平行に降下し、前記直管に斜めに合流する配管を配置させるバイパス管と、
前記バイパス管の上部屈曲部からさらに横に分岐する配管を配置させてから降下配置させた大気解放状態の抜出管と、を備え、
前記直管内であって、前記斜め下方に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該斜め下方に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれの該スリットの幅が10mm以上である第1スリット部と、
前記バイパス管内であって、前記横に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該横に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれスリットの幅が10mm以上である第2スリット部を有し、
前記ストレーナーの下端フランジには抜取配管が接続され、
前記抜出管の下には前記容器が配設されていることを特徴とする粗大粒子除去装置。
【請求項6】
前記抜取配管の高低差が、鉛直方向で0.8m以上であることを特徴とする請求項5に記載の粗大粒子除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーから粗大粒子を除去するストレーナー及び粗大粒子除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体中に微量に混在する固体を取り除くために、一般的なY型ストレーナー又はU形ストレーナーや、スラリー中の固形成分を取り除くために、スクリーン又はスクリューを回転させることによって遠心力により固液分離を促進する固液分離装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スラリーを固体と液体とに分離する固液分離装置であって、周方向に連続する6枚の側面に囲まれ、六角形断面を有して、回転軸の回りを回転する筒形の回転バスケットと、前記回転バスケットを収納するケーシングと、を備える装置が記載されており、回転する傾斜のついたスクリーンにより固液分離を行っている。
【0004】
例えば、特許文献2には、水蒸気の供給孔を有するスクリュー軸、及び該スクリュー軸の少なくとも一部の外周に螺旋状に設けられるスクリュー羽根からなるスクリューと、油水の通過孔を有し、該スクリューを囲む内筒と、該内筒の外側に設置され、該内筒との間に油水の排出隙間を形成する外筒と、該内筒内に、含油スラッジを供給するための含油スラッジ供給口と、該外筒内に水蒸気を供給するための外筒側水蒸気供給口と、該内筒の残渣スラッジ排出側の筒端近傍に設置され、該内筒の残渣スラッジ排出側の筒端との間に残渣スラッジの排出隙間を形成するストッパーと、該油水の排出隙間に排出された油水を、装置外に排出するための油水排出口と、該スクリューを回転駆動させる駆動手段と、を有する含油スラッジの処理装置が記載されており、スクリーン内でスクリューが回転しスクリーンを通過しないスラッジはスクリューによって排出口から排出することで固液分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-179233号公報
【文献】特開2010-194390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的なY型ストレーナーやU型ストレーナーは液体中に微量に混在する固体を除去するためのものであって、粗大粒子を含んだスラリーのような固体成分負荷が高いものに対しては適用しにくい。一般的なY型ストレーナーやU型ストレーナーでは固体成分がスクリーン部内に充満し、閉塞することで揚液不良を発生させる等の問題があった。一方、特許文献1や特許文献2はスクリーン部内が閉塞しない構造になっているが、装置の構成が大掛かりであり、電動機を用いるため電力コストがかかることや電動機の故障による揚液不良、回転軸摺動面からの液漏れなどの問題があった。
【0007】
そこで本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであって、固体成分負荷が高い粗大粒子を含んだスラリーから粗大粒子を除去するに当たって、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単なストレーナー及び粗大粒子除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るストレーナーは、スラリーから粗大粒子を除去するストレーナーであって、上下端にフランジを有する直管と、前記直管から斜め下方に分岐する配管を配置させてから前記直管と平行に降下し、前記直管に斜めに合流する配管を配置させるバイパス管と、前記バイパス管の上部屈曲部からさらに横に分岐する配管を配置させてから降下配置させた大気解放状態の抜出管と、を備え、前記直管内であって、前記斜め下方に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該斜め下方に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれの該スリットの幅が10mm以上である第1スリット部と、前記バイパス管内であって、前記横に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該横に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれの該スリットの幅が10mm以上である第2スリット部を有することを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単なストレーナーを提供することができる。
【0010】
このとき、前記バイパス管において、前記直管から斜め下方に分岐する配管の角度が、前記直管に対して30~45度であってもよい。
【0011】
このようにすれば、第1スリット部で回収された粗大粒子が第2スリット部を経由して転げ落ち、抜出管から容易に排出される。また、第2スリット部へ流れ落ちるスラリー量も少なくて済む。
【0012】
このとき、本発明の一態様では、前記第1スリット部及び前記第2スリット部のスリットの幅が30mm以下としてもよい。
【0013】
このようにすれば、後工程で閉塞や装置の故障等の重大トラブルを引き起こす30mmより大きな粗大粒子を除去することができる。
【0014】
このとき、本発明の一態様では、第1スリット部及び第2スリット部を構成する平板の横方向の厚みが、3mm以上としてもよい。
【0015】
このようにすれば、粗大粒子が衝突した際、衝撃で平板が変形することを防止できる。
【0016】
このとき、本発明の他の態様では、湿式粉砕機から溢流した粉砕後のスラリーを一時的に貯留する貯留槽と、該貯留槽に貯留した前記スラリーから粗大粒子を除去するストレーナーと、前記粗大粒子を捕集する容器と、を備える粗大粒子除去装置であって、前記ストレーナーは、前記貯留槽の直下に垂直に配設され、上下端にフランジを有する直管と、前記直管から斜め下方に分岐する配管を配置させてから前記直管と平行に降下し、前記直管に斜めに合流する配管を配置させるバイパス管と、前記バイパス管の上部屈曲部からさらに横に分岐する配管を配置させてから降下配置させた大気解放状態の抜出管と、を備え、前記直管内であって、前記斜め下方に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該斜め下方に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれの該スリットの幅が10mm以上である第1スリット部と、前記バイパス管内であって、前記横に分岐する配管と平行なスリットで、かつ該横に分岐する配管の底面と同一面上に上辺があり、それぞれスリットの幅が10mm以上である第2スリット部を有し、前記ストレーナーの下端フランジには抜取配管が接続され、前記抜出管の下には前記容器が配設されていることを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単な粗大粒子除去装置を提供することができる。
【0018】
本発明の一態様では、前記抜取配管の高低差が、鉛直方向で0.8m以上としてもよい。
【0019】
このようにすれば、スラリーを抜出管からオーバーフローさせずに、かつスラリーにエアーを噛み込ませずに、スムーズにスラリーを送ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固体成分負荷が高い粗大粒子を含んだスラリーから粗大粒子を除去するに当たって、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単なストレーナー及び粗大粒子除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るストレーナーの概略を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るストレーナーが有する第1スリット部を示す拡大図であり、
図2(A)は側面図、
図2(B)は正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るストレーナーの上端フランジを上から見た概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るストレーナーが有する第2スリット部を示す拡大図であり、
図4(A)は側面図、
図4(B)は正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に係る粗大粒子除去装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決するため、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単なストレーナーについて鋭意検討したところ、直管、バイパス管及び抜出管を備え、第1スリット部及び第2スリット部を有するストレーナーとすることで上記課題を解決できるとの知見を得て、本発明を完成したものである。以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。以降、本発明の一実施形態に係るストレーナー及び粗大粒子除去装置について、下記の順に説明する。
1.ストレーナー
2.粗大粒子除去装置
【0024】
<1.ストレーナー>
本発明の一実施形態に係るストレーナー100は、スラリー中に含まれる粗大粒子を除去するものである。そして、
図1に示すように、垂直に配設され、上下端にフランジ11、12を有する直管10と、上記直管10から斜め下方に分岐する配管21を配置させてから上記直管10と平行に降下し、上記直管10に斜めに合流する配管を配置させるバイパス管20と、上記バイパス管20の上部屈曲部22からさらに横に分岐する配管を配置させてから降下配置させた大気解放状態の抜出管30と、を備える。
【0025】
例えば、粉状のニッケル硫化物を含むスラリーを竪型の湿式媒体撹拌型粉砕機で粉砕し次工程に送るとき、粉砕用媒体としてのアルミナボールがスクリューに引っ掛かって押し上げられたり、塊状化したニッケル硫化物の付着物が剥離したりして、粉砕機から溢流した粉砕後のスラリーを一時的に貯留する貯留槽に逸出することがある。そうすると、貯留槽の底抜き配管が閉塞を起こし、湿式粉砕操業自体の継続が困難になることがあった。そこで、本発明の一実施形態に係るストレーナー100を用いることで、簡単な装置の構成であって、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易な湿式粉砕操業が可能となる。
【0026】
本発明の一実施形態に係るストレーナー100は、上記直管10内であって、上記斜め下方に分岐する配管21と平行なスリットで、かつ当該斜め下方に分岐する配管21の底面21bと同一面上に上辺があり、それぞれのスリットの幅が10mm以上である第1スリット部40を有することを特徴とする。
【0027】
そして、本発明の一実施形態に係るストレーナー100は、上記バイパス管20内であって、上記バイパス管20の上部屈曲部22からさらに横に分岐する配管と平行なスリットで、かつ当該横に分岐する配管の底面22bと同一面上に上辺があり、それぞれのスリットの幅が10mm以上である第2スリット部50を有することを特徴とする。
【0028】
湿式粉砕機で粉砕したスラリーは、上端フランジ11から入り、直管10又はバイパス管20を通り、下端フランジ12から排出される。一方、スラリー中に含まれる粗大粒子は、第1スリット部40を通過することなく、転がりながら直管10から斜め下方に分岐する配管21に移動し、第2スリット部50を通過することなく、バイパス管20の上部屈曲部22からさらに横に分岐する配管を配置させてから降下配置させた大気解放状態の抜出管30から排出される。なお、抜出管30は大気解放状態であるので、抜出管30の下に粗大粒子を捕集する容器を配設すれば、粗大粒子を容易に回収することができる。
【0029】
図1に示すように、直管10の上下は、それぞれスラリーの入口と出口となっており、上端フランジ11及び下端フランジ12を有する。そうすることで、ストレーナーのみの取り外しが容易になり、メンテナンス等がし易くなる。また、取り付けも容易になるので、予備のストレーナーとの交換も簡単にできるようになる。よって、第1スリット部40や第2スリット部50や直管10を清掃等し易くなり、ストレーナー内で粗大粒子が閉塞しても迅速に対応できる。
【0030】
また、本発明の一実施形態に係るストレーナー100は、第1スリット部40だけではなく第2スリット部50も有するので、直管10から斜め下方に分岐する配管21へと流入したスラリーを、第2スリット部50を経由して直管へと戻すことができるので、抜出管30からスラリーが流出することが無い。また、スラリーを直管10から斜め下方に分岐する配管21に流すことによって、粗大粒子の移動を加勢することができる。さらに、スラリーを第2スリット部50に通過させることで、第2スリット部50の目詰まりを防止することができる。従って、本発明の一実施形態に係るストレーナー100によれば、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、電動機を使わずに構成が簡単な装置とすることができる。
【0031】
図1及び
図2(A)(B)に示すように、第1スリット部40は、直管10内であって、斜め下方に分岐する配管21と平行なスリットで、かつ当該斜め下方に分岐する配管21の底面21bと同一面上に上辺がある。そうすることによって、粗大粒子が排出され易くなる。
【0032】
第1スリット部40のスリットの幅s1は、10mm以上であるが、10~30mmが好ましい。10mm未満であると、目詰まりが生じる可能性がある。一方、30mmを超える幅とすると、30mm以下の粗大粒子が第1スリット部40を通過する可能性がある。
【0033】
第1スリット部40を構成する平板の横方向の厚みt1は3mm以上が好ましい。粗大粒子の落下衝撃で平板が変形する場合があるため、第1スリット部40を構成する平板の横方向の厚みt1を3mm以上とし、耐衝撃性を向上させることが好ましい。
【0034】
また、第1スリット部40の傾きθ1は、直管10に対してなす角度が30~45度であることが好ましい。30度未満であると、粗大粒子ばかりでなく、スラリーも斜め下方に分岐する配管21に移動しやすくなり、第2スリット部へ流れ落ちるスラリー量が増加して、抜出管30からスラリーが流出する可能性が高くなる。一方で、45度より大きいと、第1スリット部40が平坦になり、第1スリット部40で回収された粗大粒子が第2スリット部50を経由して転げ落ちにくくなり、抜出管30から排出されにくくなる。第1スリット部40の傾きθ1を、直管10に対してなす角度で30~45度とすれば、抜出管30からスラリーを流出させずに、より容易に粗大粒子を抜出管30から排出できる。
【0035】
さらに、バイパス管20において、直管10から斜め下方に分岐する配管21の角度θ2が、直管10に対してなす角度で30~45度であり、直管10に斜めに合流する配管20の角度θ3が、直管10に対してなす角度で30~45度であることが好ましい。
【0036】
直管10から斜め下方に分岐する配管の角度θ2が、直管10に対してなす角度で30度未満であると、第2スリット部へ流れ落ちるスラリー量が増加して、抜出管30からスラリーが流出する可能性が高くなる。また、直管10に合流するまでの距離が遠くなり、ストレーナー自体が大型化し、メンテナンス性や経済性が悪くなる場合がある。一方で、直管10から斜め下方に分岐する配管の角度θ2が45度より大きいと、直管10から斜め下方に分岐する配管21が平坦になり、第1スリット部40で回収された粗大粒子が第2スリット部50を経由して転げ落ちにくくなり、抜出管30から排出されにくくなる。直管10から斜め下方に分岐する配管の角度θ2を、直管10に対してなす角度で30~45度とすれば、抜出管30からスラリーを流出させずに、より容易に粗大粒子を抜出管30から排出できる。
【0037】
バイパス管20が直管10に斜めに合流する配管の角度θ3が、直管10に対してなす角度で30度未満であると、直管10に合流するまでの距離が遠くなるので、ストレーナー自体が大型化し、メンテナンス性や経済性が悪くなる場合がある。一方で、45度より大きいと、スラリーが直管10に排出されにくくなる。よって、直管10に斜めに合流する配管の角度θ3を、直管10に対してなす角度で30~45度とすれば、装置を必要以上に大型化させず、スラリーの排出不良によって抜出管30からスラリーをオーバーフローさせずに、スラリーを抜取ることができる。
【0038】
第1スリット部40を構成する平板の幅w1は、10~60mmが好ましい。10mm未満であると、粗大粒子の落下衝撃によって変形する恐れがある。60mmより大きいと平板間が閉塞し易くなる。
【0039】
直管10とバイパス管20の間隔d1は、配管(直管、バイパス管、抜出管)の管径の0.5~3倍とすることが好ましい。0.5倍未満であると、直管10とバイパス管20との距離が小さくなるので傾斜部分の距離が短くなり、粗大粒子が抜出管30まで転がらず、抜出管から上手く排出できない場合がある。また、飛び散ったスラリーを全てバイパス管に誘導することができず、粗大粒子にスラリーが混入してしまう可能性がある。一方、3倍を超えると傾斜部分の距離が長くなるので、粗大粒子が転がり易くなり、粗大粒子に付着したスラリーを全て回収できない場合がある。
【0040】
本発明の一実施形態に係るストレーナー100の上端フランジ11を上から見ると、
図3に示すようになり、第1スリット部40を視認することができる。
【0041】
第2スリット部50は、
図1及び
図4(A)(B)に示すように、バイパス管20の上部屈曲部22からさらに横に分岐する配管と平行なスリットで、かつ横に分岐する配管の底面22bと同一面上に上辺がある。バイパス管20を垂直にした場合、第2スリット部50は、つまり水平となるが、第2スリット部50も第1スリット部40と同様に傾斜をつけると、バイパス管20に流下すべきスラリーが、粗大粒子と共に抜出管30に流出する可能性がある。
【0042】
また、第2スリット部50のスリットの幅s2は、10mm以上であるが、10~30mmが好ましい。10mm未満であると、目詰まりが生じる可能性がある。一方、30mmを超える幅とすると、30mm以下の粗大粒子が第2スリット部40を通過する可能性がある。
【0043】
第2スリット部50を構成する平板の横方向の厚みt2は、3mm以上が好ましい。粗大粒子の落下衝撃で平板が変形する場合があるため、第2スリット部50を構成する平板の横方向の厚みt2を3mm以上とし、耐衝撃性を向上させることが好ましい。
【0044】
第2スリット部50を構成する平板の幅w2は、10~60mmが好ましい。10mm未満であると、粗大粒子の落下衝撃によって変形する恐れがある。60mmより大きいと平板間が閉塞し易くなる。
【0045】
バイパス管20と抜出管30の間隔d2は、0.02~0.07mとすることが好ましい。0.02m未満とすると、施工が困難になる場合がある。一方、0.07mを超えると抜出管30までの距離が遠くなり、粗大粒子が抜出管30へと排出されない場合がある。
【0046】
以上より、本発明の一実施形態に係るストレーナー100によれば、固体成分負荷が高い粗大粒子を含んだスラリーから粗大粒子を除去するに当たって、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単なストレーナーとすることができる。
【0047】
<2.粗大粒子除去装置>
本発明の他の実施形態に係る粗大粒子除去装置200は、
図5に示すように、湿式粉砕機70から溢流した粉砕後のスラリー60を一時的に貯留する貯留槽75と、当該貯留槽75に貯留した上記スラリー60から粗大粒子65を除去するストレーナー100と、上記粗大粒子65を捕集する容器90と、を備える。
【0048】
上記ストレーナー100は、<1.ストレーナー>で説明したものを用いる。そして、上記ストレーナー100の下端フランジ12には抜取配管80が接続され、上記抜出管30の下には上記容器90が配設されていることを特徴とする。
【0049】
抜取配管80の下端には湿式粉砕機70に戻すための循環ポンプ(不図示)又は中継槽(不図示)が接続されていても良い。中継槽は、スラリー60を送液するために中継する槽であり、例えば、一般的な、有底円筒形状のSS材(一般構造用圧延鋼材)製タンクの内面にゴムライニングが施された槽などが挙げられる。また、粗大粒子65を捕集する容器11は、例えば、市販のポリバケツなどが挙げられる。
【0050】
上記抜出管30の下は大気解放状態としている。こうすることで、粗大粒子65のみを、容器90に回収することができる。
【0051】
抜取配管80の高低差Lが、鉛直方向で0.8m以上であることが好ましい。このようにすれば、スラリーを抜出管からオーバーフローさせずに、かつスラリーにエアーを噛み込ませずに、スムーズにスラリー60を送ることができる。
【0052】
以上より、本発明の他の実施形態に係る粗大粒子除去装置200によれば、固体成分負荷が高い粗大粒子を含んだスラリーから粗大粒子を除去するに当たって、閉塞を起こさず、粗大粒子の回収が容易であり、装置の構成が簡単な粗大粒子除去装置とすることができる。
【0053】
なお、上記のように本発明の各実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0054】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。またストレーナー及び粗大粒子除去装置の構成、動作も本発明の各実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 直管、11 上端フランジ、12 下端フランジ、20 バイパス管、21 直管から斜め下方に分岐する配管、21b 斜め下方に分岐する配管の底面、22 バイパス管の上部屈曲部、22b 横に分岐する配管の底面、30 抜出管、40 第1スリット部、50 第2スリット部、60 スラリー、65 粗大粒子、70 湿式粉砕機、75 貯留槽、80 抜取配管、90 粗大粒子を捕集する容器、
θ1 第1スリット部の傾き、θ2 直管から斜め下方に分岐する配管の角度、θ3 直管に斜めに合流する配管の角度、d1 直管とバイパス管の間隔、d2 バイパス管と抜出管の間隔、w1 第1スリット部を構成する平板の幅、w2 第2スリット部を構成する平板の幅、t1 第1スリット部を構成する平板の横方向の厚み、t2 第2スリット部を構成する平板の横方向の厚み、s1 第1スリット部のスリットの幅、s2 第2スリット部のスリットの幅、L 抜取配管の高低差