(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】鉗子型処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20230502BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2018245959
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】生内 寿文
(72)【発明者】
【氏名】南辻 睦
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-144643(JP,A)
【文献】特表平10-506032(JP,A)
【文献】特開2013-126464(JP,A)
【文献】特開2002-136476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/06
A61B 17/29 ― 17/295
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ワイヤが挿通されたシースの遠位端に設けられた支持部材と、該支持部材に回動可能に取り付けられ、前記駆動ワイヤを前記シースに対してスライドすることにより開閉する一対の鉗子片とを有
し、前記シースの遠位端側が内視鏡を介して体内に挿入される鉗子型処置具であって、
前記シースの全長が1600~2000mmの範囲であり、
前記シースは、密着巻きコイルバネからなるコイルシースを有し、
前記コイルシースは、体内に挿入される遠位端側の一部の初張力よりも、体外に配置される近位端側のその余の部分の初張力が大きい値に設定され
、
前記コイルシースの遠位端側の一部の初張力は、1.9~2.5Nの範囲で設定され、
前記コイルシースの近位端側のその余の部分の初張力は、13~17Nの範囲で設定され、
前記コイルシースの遠位端側の一部の長さは、前記シースの全長に対して55~67%の範囲で設定されている鉗子型処置具。
【請求項2】
前記一対の鉗子片の各鉗子片は、高周波電流が流される電極である請求項1に記載の鉗子型処置具。
【請求項3】
前記コイルシースをインナーシースとして、該インナーシースが回動可能に挿通されたアウターシースをさらに有する請求項1または2に記載の鉗子型処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば内視鏡を利用して高周波電流により止血等の処置を行う鉗子型処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ワイヤが挿通されたシースと、該シースの近位端に設けられた操作部と、該シースの遠位端に設けられた一対の鉗子片を有する処置部とを設け、駆動ワイヤをシースに対してスライドさせることにより一対の鉗子片を開閉するようにした鉗子型処置具が用いられている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
このような鉗子型処置具に用いられるシースとして、同文献には、金属素線を密着巻きしてなるコイルシースが開示されている。このようなコイルシースは、樹脂チューブと比較して、特に軸方向の圧縮に強く、殆ど寸法変化しない。このため、一対の鉗子片を閉じるために、シースに対して駆動ワイヤを引き戻す方向にスライドさせた際の応答性が良好であるとともに、操作部で加えた操作力を一対の鉗子片に十分に伝達することができ、一対の鉗子片による強い把持力を実現することができる。
【0004】
一方において、コイルシースは、引張方向には圧縮方向程の強さはなく、一対の鉗子片を開くために、シースに対して駆動ワイヤを押し出す方向にスライドさせた際の応答性が必ずしも良好ではないとともに、開き角度が不十分となる場合がある。コイルシースの初張力を大きくすれば、この点を改善することは可能ではあるものの、シースは体内において体内管腔の湾曲に沿って、あるいは内視鏡の処置具案内管の入口や出口等にて湾曲される必要があり、初張力を大きくすると、湾曲し難くなるため、むやみに大きくすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、体内における必要な湾曲性を実現しつつ、一対の鉗子片を開く際の応答性や開き角度不足を改善することができる鉗子型処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鉗子型処置具は、
駆動ワイヤが挿通されたシースの遠位端に設けられた支持部材と、該支持部材に回動可能に取り付けられ、前記駆動ワイヤを前記シースに対してスライドすることにより開閉する一対の鉗子片とを有する鉗子型処置具であって、
前記シースは、密着巻きコイルバネからなるコイルシースを有し、
前記コイルシースは、体内に挿入される遠位端側の一部の初張力よりも、体外に配置される近位端側のその余の部分の初張力が大きい値に設定されている鉗子型処置具である。
【0008】
本発明に係る鉗子型処置具では、コイルシースは、体内に挿入される遠位端側の一部の初張力よりも、体外に配置される近位端側のその余の部分の初張力が大きい値に設定されている。このため、体内に挿入される遠位端側の一部を、必要な湾曲性を確保し得るように比較的に低い初張力とし、体外に配置される近位端側のその余の部分を、比較的に高い初張力とすることにより、体内における必要な湾曲性を実現しつつ、一対の鉗子片を開く際の応答性や開き角度不足を改善することができる。
【0009】
本発明は、一対の鉗子片の各鉗子片を高周波電流が流される電極とした鉗子型高周波処置具に適用することができる。鉗子型高周波処置具において、体内における必要な湾曲性を実現しつつ、一対の鉗子片を開く際の応答性や開き角度不足を改善することができる。
【0010】
本発明に係る鉗子型処置具において、前記コイルシースをインナーシースとして、該インナーシースが回動可能に挿通されたアウターシースをさらに有することができる。アウターシースに対してインナーシースを回動させることにより、一対の鉗子片をシース中心軸周りに回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施形態の鉗子型処置具の全体構成を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1Aの鉗子型処置具の遠位端側の構成を示す断面図であり、鉗子片を閉じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態として、鉗子型高周波処置具の一つであるバイポーラ止血鉗子について、図面を参照して具体的に説明する。ただし、本発明は、鉗子型高周波処置具に限定されず、電極としての機能を持たない鉗子片を備える鉗子型処置具にも適用が可能である。
【0013】
まず、
図1Aおよび
図1Bを参照する。本実施形態のバイポーラ止血鉗子は体内の組織を焼灼凝固させて止血を行うために用いられる鉗子型高周波処置具であり、シース部1、操作部2および処置部3を概略備えて構成されている。シース部1の体外に配置される近位端側に操作部2が設けられ、シース部1の内視鏡を介して体内に挿入される遠位端側に処置部3が設けられている。
【0014】
操作部2はベース21、スライダ22および先端キャップ23を備え、処置部3は互いに開閉可能に設けられた一対の鉗子片(電極)31を有する鉗子部を備えており、操作部2を操作することにより、一対の鉗子片31の開閉および中心軸周りの回動を行うことができるようになっている。
【0015】
操作部2は、一対の電線(ケーブル)24a,24bおよびこれらの基端部側に設けられたプラグ24を備えており、これらの電線24a,24bがプラグ24を介して、図外の高周波電源装置と電気的に接続され、高周波電流の供給を受けるようになっている。電線24aは一方の鉗子片31に後述する駆動ワイヤ13aを介して電気的に接続され、電線24bは他方の鉗子片31に後述する駆動ワイヤ13bを介して電気的に接続される。
【0016】
シース部1は、チューブ状のアウターシース11、チューブ状のインナーシース12および一対の駆動ワイヤ13a,13bを備えている。シース部1の全長Lは、対象とする生体組織の焼灼すべき部位にもよるが、1600~2000mm程度の範囲で設定される。
【0017】
アウターシース11は、可撓性を有する中空チューブからなり、絶縁性の樹脂から形成されたチューブが用いられている。アウターシース11を形成する樹脂材料としては、電気絶縁材料であれば特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂等を用いることができる。
【0018】
インナーシース12は、可撓性を有する長尺円筒体からなり、
図1Bに示すようにアウターシース11に挿通されて、アウターシース11内において、その軸周りに回転できるように設けられている。インナーシース12は、密着巻きコイルバネからなるコイルチューブを用いたコイルシースとなっている。
【0019】
インナーシース12を構成するコイルチューブとしては、本実施形態では、ステンレス鋼等の金属製の丸線(断面が円形の線材)を螺旋状に密着巻きしてなる丸線コイルチューブを用いている。ただし、断面が矩形状の素線を用いる平線コイルチューブまたはその他の断面形状の素線を用いるコイルチューブとしてもよい。インナーシース12は、一対の鉗子片31をその姿勢調整のために、シース軸線周りに回動させる回動力を伝達するための動力伝達部材でもある。
【0020】
なお、本実施形態では、インナーシース12を構成するコイルチューブとしては、単一の素線を螺旋状に密着巻きしたものを用いるものとするが、複数の素線を径方向にまたは軸方向に並列させて螺旋状に密着巻きしたものであってもよい。
【0021】
インナーシース12を構成するコイルシースは、遠位端側の一部の初張力よりも近位端側のその余の部分の初張力が大きい値に設定されている。すなわち、遠位端側の一部の初張力が比較的に小さい値に、近位端側のその余の部分の初張力が比較的に大きい値に設定されている。
【0022】
インナーシース12を構成するコイルシースの遠位端側の一部の初張力は、体内管腔や内視鏡の処置具案内管の出入口等の湾曲に円滑に追従して湾曲し得る程度の値に設定され、たとえば1.9~2.5Nの範囲で設定することができる。インナーシース12を構成するコイルシースの近位端側のその余の部分の初張力は、一対の鉗子片31を開くためにインナーシース12に対して駆動ワイヤ13a,13bを押し出す際のインナーシース12の伸張をなるべく小さくする観点から設定され、たとえば13~17Nの範囲で設定することができる。インナーシース12を構成するコイルシースの遠位端側の初張力を比較的に小さく設定する部分の長さは、シース1の体内に挿入が予定される部分の長さに応じて設定され、全長Lに対して、たとえば55~67%の範囲で設定することできる。
【0023】
コイルシースの初張力を、遠位端側を小さく、近位端側を大きくする手法としては、素線を巻回する際に、各種のパラメータ(温度や張力等)を遠位端側と近位端側とで異ならせることにより行ってもよいが、芯金に素線を巻きつける際に用いるコイリングピンその他の工具の位置を調整し近位端側の初張力を大きくなるよう製造(巻回)した後に、遠位端側の初張力小さくなるよう製造するとよい。
【0024】
一対の駆動ワイヤ13a,13bは、
図1Bに示すように、インナーシース12内に挿通され、駆動ワイヤ13a,13bはインナーシース12内で摺動(軸線方向に沿う方向のスライド移動)が可能となっている。駆動ワイヤ13a,13bは、可撓性および導電性を有するワイヤであり、表面にはそれぞれ絶縁性の被覆が設けられて、互いに絶縁されている。駆動ワイヤ13a,13bは、一対の鉗子片31を開閉するためのスライド力を伝達するための動力伝達部材であるとともに、一対の鉗子片31に高周波電力を供給するための電気回路を構成する部材(電線)でもある。
【0025】
操作部2において、ベース21は指輪部21aおよびガイド溝を有するガイド部21bを有している。スライダ22はベース21のガイド部21bに沿って前後(
図1Aにおいて上下)に摺動(スライド)可能に取り付けられている。ベース21の先端(遠位端)には先端キャップ23が当接されている。ベース21、スライダ22および先端キャップ23は、主として絶縁性の樹脂から形成されている。
【0026】
先端キャップ23には、アウターシース11の近位端が固定されており、その内側に形成された貫通孔を、駆動ワイヤ13が挿通されたインナーシース12が貫通して配置されている。先端キャップ23は、ベース21の先端部から分離されており、ベース21に対して回動可能となっている。インナーシース12の近位端はベース22の遠位端に固定されており、一対の駆動ワイヤ13a,13bの近位端はスライダ22にそれぞれ固定されている。
【0027】
スライダ22をベース21に対して前後(
図1Aにおいて上下)にスライドさせることにより、インナーシース12内で駆動ワイヤ13a,13bをその軸線方向にスライドさせることができる。先端キャップ23に対して、ベース21およびスライダ22を回動させることにより、アウターシース11に対して、インナーシース12および駆動ワイヤ13をその軸線周りに回動させることができる。
【0028】
処置部3は止血すべき体内組織を把持するために鉗子状であり、
図2A~
図2Dに示されているように、把持した体内組織に高周波電流を通電して焼灼するための一対の電極である鉗子片31を有する鉗子部、樹脂枠(支持部材)32、および絶縁スペーサ33等を概略備えて構成されている。
【0029】
樹脂枠32は、フランジ部を有する略円筒状の基端部32bと、基端部32bからZ軸方向に突出してX軸方向に互いに対向する一対のアーム部32aとを有する。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直である。
【0030】
一対のアーム部32aの先端部近傍には、内外(X軸方向)に貫通する嵌合穴32cがそれぞれ形成されている(
図2B、
図2D参照)。樹脂枠32の基端部32bは、インナーシース12の遠位端に,樹脂等からなる略円筒状の固定部材34を介して固定されている。具体的には、固定部材34の内腔の先端側から樹脂枠32の基端部32bが挿入され、固定部材34の内腔の基端側からインナーシース12の遠位端部が挿入されて、これらが接着剤により互いに接着固定されている。
【0031】
樹脂枠32の基端部32bの内腔を貫通して、駆動ワイヤ13a,13bが配置されており、一方の駆動ワイヤ13aの遠位端は一方の鉗子片31の貫通穴31c1に接続されており、他方の駆動ワイヤ13bの遠位端は他方の鉗子片31の貫通穴31c1に接続されている。
【0032】
駆動ワイヤ13aの遠位端は、絶縁被覆が除去されて、一方の鉗子片31に電気的に導通され、駆動ワイヤ13bの遠位端も同様に、絶縁被覆が除去されて、他方の鉗子片31に電気的に導通されている。したがって、一方の鉗子片31は駆動ワイヤ13aを介して電線24a(
図1A参照)に電気的に接続されており、また、他方の鉗子片31は駆動ワイヤ13bを介して電線24b(
図1A参照)に電気的に接続されている。
【0033】
一対のアーム部32aのそれぞれの嵌合穴32cの形状は、後述する絶縁スペーサ33の軸部33aの先端部が嵌合可能なように、略円形状となっている。
【0034】
一対の鉗子片31は、互いに交差するように(略X字状となるように)、絶縁性を有する樹脂(たとえば、ポリカーボネート)からなる絶縁スペーサ33により互いに電気的に絶縁された状態で回動可能に支持され、この状態で、樹脂枠32の一対のアーム部32a間に配置される。
【0035】
本実施形態では、一対の鉗子片31は、互いに実質的に同一形状となっている。鉗子片31は、
図3Aおよび
図3Bにも示されているように、把持部31a、軸支部31bおよび接続部31cを一体的に有する部材であり、ステンレス鋼等の導電性金属材料から形成されている。
【0036】
軸支部31bは、樹脂枠32のアーム部32aに対する回動中心軸を構成する軸穴31b1が設けられた部位である。接続部31cは、軸支部31bよりも基端側に設けられ、駆動ワイヤ13aまたは13bの遠位端部が機械的におよび電気的に接続される部位であり、駆動ワイヤ13aまたは13bを取り付けるための貫通穴31c1が形成されている。駆動ワイヤ13a,13bの遠位端部は、適宜に折り曲げ等されて、それぞれ対応する鉗子片31の貫通穴31c1に通されることにより、接続部31cに係止される。
【0037】
把持部31aは、軸支部31bよりも先端側に設けられ、把持対象部位としての生体組織を把持するための部位である。把持部31aは、平坦に形成された平面部31a1と、平面部31a1の先端部に設けられた一対の先端凸歯31a2とを有している。各先端凸歯31a2は、内側(相対する鉗子片側)を指向して立設されている。平面部31a1には、一対の先端凸歯31a2を除き、山歯やその他の突起部等は一切設けられていない平坦面となっている。
【0038】
把持部31aの平面部31a1は、一対の鉗子片31を閉じた状態で(
図2A、
図2B参照)、一方の鉗子片31の平面部31a1と他方の鉗子片31の平面部31a1とが、互いに略平行して所定の間隔をもって離間して対面するように構成されている。この場合における、一方の鉗子片31の平面部31a1と他方の鉗子片31の平面部31a1との間隔は、焼灼すべき生体組織の部位に応じて設定され、たとえば0.3~0.6mmの範囲で設定される。
【0039】
把持部31aの一対の先端凸歯31a2は、一対の鉗子片31を閉じた状態で(
図2A、
図2B参照)、一方の鉗子片31の先端凸歯31a2の先端面と他方の鉗子片31の先端凸歯31a2の先端面とが、互いに当接または近接するように構成されている。
【0040】
また、把持部31aの平面部31a1は、基端部側(軸支部31b側)に設けられ、互いに略平行に設定された一対の側辺を有する幅広部31a3と、先端部側に設けられ、互いに略平行に設定された一対の側辺を有し、該幅広部31a3の幅(X軸方向の幅)よりも狭い幅に設定された幅狭部31a4とを有している。このため、把持部31aの先端側の両側部には、切込部31a5がそれぞれ形成されている。先端凸歯31a2は、幅狭部31a4の先端部に設けられている。
【0041】
鉗子片31の軸支部31bに形成された軸穴31b1は、断面が略円形であり、軸穴31b1の内周面の一部には、軸心から半径方向の外側に広がる切欠部31b2が形成されている。切欠部31b2には、絶縁スペーサ33の軸部33aに形成された突起部33fが遊嵌され(
図2A、
図2C、
図4A、
図4B参照)、鉗子片31が回動された際に、該突起部33fが切欠部31b2の周方向の一側の内面または他側の内面に当接することにより、鉗子片31の回動角度が規定されるようになっている。
【0042】
絶縁スペーサ33は、一対の鉗子片31を、互いに電気的に絶縁した状態で、回動可能に軸支する部材であり、
図4Aおよび
図4Bに示されているように、略板状のスペーサ部33cと、スペーサ部33cの両側にそれぞれ突出する略円筒状の一対の軸部33aとを概略有している。一対の軸部33aは、互いに対称形状となっており、同軸上に配置されている。一対の軸部33aの中央部の貫通穴33dは、スペーサ部33cを貫通して互いに連通されている。
【0043】
軸部33aは、鉗子片31の軸穴31b1に回転可能に挿入されるように、その外径が鉗子片31の軸穴31b1の内径よりも僅かに小さい値に設定されている。軸部33aの軸方向の寸法(高さ)は、軸部33aの先端部が樹脂枠32のアーム部32aの嵌合穴32cに嵌合されるように設定されている。
【0044】
また、軸部33aは、該軸部33aの軸線に直交する断面において径方向外側に突出する突起部33fを有している。この突起部33fは軸部33aが鉗子片31の軸穴31b1に挿入された際に、該軸穴31b1に形成された切欠部31b2内で移動可能に配置されるように形成されている。
【0045】
スペーサ部33cには、その一方の面に突出する支持突起33gおよびその他方の面に突出する支持突起33gが一体的に設けられている。これらの支持突起33gは、樹脂枠32の一対のアーム部32a間の間隔を規定するためのものであり、スペーサ部33cの縁部の一部において、対応する鉗子片31の回転の支障とならない位置に設けられている。
【0046】
上述した実施形態では、インナーシース12を構成するコイルシースは、体内に挿入される遠位端側の一部の初張力よりも、体外に配置される近位端側のその余の部分の初張力が大きい値に設定されている。このため、体内に挿入される遠位端側の一部を、必要な湾曲性を確保し得るように比較的に低い初張力とし、体外に配置される近位端側のその余の部分を、比較的に高い初張力とすることにより、体内における必要な湾曲性を実現しつつ、一対の鉗子片31を開く際の応答性や開き角度不足を改善することができる。
【0047】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0048】
1…シース部
11…アウターシース
12…インナーシース(コイルシース)
13a,13b…駆動ワイヤ
2…操作部
21…ベース
22…スライダ
23…先端キャップ
24…プラグ
24a,24b…電線
3…処置部
31…鉗子片
31a…把持部
31a1…平面部
31a2…先端凸歯
31a3…幅広部
31a4…幅狭部
31a5…切込部
31b…軸支部
31b1…軸穴
31b2…切欠部
31c…接続部
31c1…貫通穴
32…樹脂枠(支持部材)
32a…アーム部
32b…基端部
32c…嵌合穴
33…絶縁スペーサ
33a…軸部
33c…スペーサ部
33d…貫通穴
33f…突起部
33g…支持突起