(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ステージ装置及び荷電粒子ビーム処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230502BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230502BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H01L21/30 541L
G03F7/20 504
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2019018903
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石田 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】中曽 潔
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-122476(JP,A)
【文献】特開2000-343357(JP,A)
【文献】特開昭60-050921(JP,A)
【文献】特開平07-181276(JP,A)
【文献】特表2015-537239(JP,A)
【文献】特開2005-257030(JP,A)
【文献】特開平3-50819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/00 - 37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるステージ装置であって、
水平方向に移動可能なXYステージと、
鉛直方向に移動可能であり、前記基板が載置されるZステージと、
を備え、
前記Zステージは、
前記XYステージ上に設置されるベースと、
前記ベースから垂設された固定部と、
前記ベースの上方に設置されたテーブルと、
前記テーブルを押さえつけて前記固定部に連結して固定する板バネと、
前記板バネに取り付けられ、前記XYステージの加速度に基づき
外部から電圧
を印加される
ことにより、伸長又は収縮を生じる圧電素子と、
前記テーブル上に設置され、前記基板が載置される台座と、
を有することを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記ベース上に設置され、傾斜面を有する傾斜台と、
前記傾斜面と前記テーブルとの間に配置されたローラと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記圧電素子が取り付けられた前記板バネは、矩形状の前記テーブルの各辺に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記圧電素子は、前記板バネの両面に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のステージ装置を有しており、
前記基板を前記XYステージにより移動させながら荷電粒子ビームを照射し、
前記XYステージの加速度に基づく電圧を前記圧電素子に印加すること
により、前記圧電素子に伸長又は収縮を生じさせる、荷電粒子ビーム処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置及び荷電粒子ビーム処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
従来の電子ビーム描画装置は、パターンが描画される試料を載置するステージと、このステージを収納するチャンバと、このチャンバの天板に配置され、電子ビームを射出する電子ビーム発生源及び、試料上の所望の位置に所望のパターンを描画するために電子ビームを形成する電子ビーム制御系を有する電子光学鏡筒とを有している。
【0004】
試料を載置するステージは、電子ビームの光軸方向と直交する方向に移動可能なXYステージと、このXYステージ上に搭載され、光軸方向に移動可能なZステージとを有する。例えば、Zステージは、傾斜面を有する傾斜台と、ローラを介して傾斜面上に設置されたテーブルと、テーブル上に設置され試料が載置される台座とを有する。ローラが回転し、傾斜面とローラとの接触点が変化すると、テーブルの高さ方向の位置が変わるように構成されている。
【0005】
Zステージのテーブルは、板バネで押さえつけられている。そのため、XYステージが加減速する際に台座にピッチング方向の力が作用して台座が傾くことがあった。台座が傾くと、電子ビームのフォーカス位置と、試料の高さ方向の位置とがずれて、描画精度が劣化する。
【0006】
台座の傾きを抑えるために、XYステージの動作加速度を下げると、描画スループットが低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-25695号公報
【文献】特開2007-142292号公報
【文献】特開2001-116867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、スループットの低下を抑制しつつ、Zステージの台座が傾くことを防止するステージ装置及び荷電粒子ビーム処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるステージ装置は、基板が載置されるステージ装置であって、水平方向に移動可能なXYステージと、鉛直方向に移動可能であり、前記基板が載置されるZステージと、を備え、前記Zステージは、前記XYステージ上に設置されるベースと、前記ベースから垂設された固定部と、前記ベースの上方に設置されたテーブルと、前記テーブルを押さえつけて前記固定部に連結して固定する板バネと、前記板バネに取り付けられ、前記XYステージの加速度に基づき電圧が印加される圧電素子と、前記テーブル上に設置され、前記基板が載置される台座と、を有するものである。
【0010】
本発明の一態様によるステージ装置は、前記ベース上に設置され、傾斜面を有する傾斜台と、前記傾斜面と前記テーブルとの間に配置されたローラと、をさらに備える。
【0011】
本発明の一態様によるステージ装置において、前記圧電素子が取り付けられた前記板バネは、矩形状の前記テーブルの各辺に設置されている。
【0012】
本発明の一態様によるステージ装置において、前記圧電素子は、前記板バネの両面に取り付けられている。
【0013】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム処理装置は、前記基板を前記XYステージにより移動させながら荷電粒子ビームを照射し、前記XYステージの加速度に基づく電圧を前記圧電素子に印加するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スループットの低下を抑制しつつ、Zステージの台座が傾くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による描画装置の概略図である。
【
図2】同実施形態に係るステージ装置の概略図である。
【
図3】(a)(b)は板バネに設けたアクチュエータを示す図である。
【
図4】板バネ及びアクチュエータの設置例を示す図である。
【
図5】板バネ及びアクチュエータの設置例を示す図である。
【
図6】アクチュエータへの指令電圧の指令方法の例を示す図である。
【
図7】アクチュエータへの指令電圧の指令方法の例を示す図である。
【
図8】板バネへのアクチュエータの取り付け例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における描画装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、描画装置100は、描画部150、制御回路160、ステージ制御回路170、及び変位制御回路180を備えている。描画装置100は、電子ビーム200を用いてレジストが塗布された基板101にパターンを描画する。描画部150は、電子光学鏡筒102とチャンバ(描画室)103を有している。電子光学鏡筒102は、チャンバ103上に配置される。
【0018】
電子光学鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1アパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2アパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が設けられている。電子光学鏡筒102内の各部の動作は、制御回路160によって制御される。チャンバ103内には、ステージ装置が配置される。ステージ装置は、XYステージ20と、XYステージ上に搭載されたZステージ30とを備える。XYステージ20は、電子ビーム200の光軸方向と直交する方向(水平方向)に移動可能であり、Zステージ30は、鉛直方向である光軸方向に移動可能である。Zステージ30上には、描画対象となる基板101が載置される。基板101には、マスク基板やウェーハ等が含まれる。ステージ制御回路170は、XYステージ20の加速度やZステージ30の高さを制御する。
【0019】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により、開口を有する第1アパーチャ203全体に照射される。第1アパーチャ203の開口を通過することで、電子ビーム200は例えば矩形に成形される。
【0020】
第1アパーチャ203を通過した電子ビーム200は、投影レンズ204により、開口を有した第2アパーチャ206上に投影される。その際、偏向器205によって、第2アパーチャ206上に投影されるビーム位置が偏向制御され、電子ビームの形状と寸法を変化させる(可変成形を行う)ことができる。
【0021】
第2アパーチャ206を通過した電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208によって偏向され、連続的に移動するXYステージ20に搭載されたZステージ30上の基板101の目標位置に照射される。これにより、基板101に所望のパターンが描画される。
【0022】
図2に示すように、Zステージ30は、XYステージ20上に設置されたベース31と、ベース31の周縁部から垂設された固定部32と、傾斜面を有する傾斜台33と、ローラ34を介して傾斜台33の傾斜面上に設置されたテーブル35と、テーブル35上に設置され基板101が載置される台座36とを有する。ローラ34が回転し、傾斜台33の傾斜面とローラ34との接触点が変化すると、テーブル35の高さ方向の位置が変わり、基板101の高さを調整できるように構成されている。
【0023】
なお、基板101の高さを調整する機構は
図2に示すものに限定されない。例えば、傾斜台33及びローラ34の代わりに、
図9に示すように、上下に駆動するアクチュエータ(圧電素子)37と、可動子38とでテーブル35を支持し、アクチュエータ37により可動子38を上下させることによりテーブル35の高さを変え、基板101の高さを調整してもよい。
【0024】
テーブル35は、板バネ40を含むダンパにより押さえつけられ、固定部32の上端部に連結して固定されている。板バネ40には、マクロファイバーコンポジット(MFC)等のアクチュエータ(圧電素子)50が取り付けられている。変位制御回路180はアクチュエータ50に電圧を印加し、変位(圧縮・伸長)を生じさせる。
【0025】
Zステージ30を搭載するXYステージ20が加減速する際に、台座36にピッチング方向の力が作用して板バネ40が屈曲し(反り曲がり)、台座36が傾くことがある。そこで、本実施形態では、XYステージ20の加速度に基づいて台座36に作用する力を推定し、アクチュエータ50により逆向きの力を与えて、台座36を水平に保つ。
【0026】
変位制御回路180は、ステージ制御回路170がXYステージ20へ出力する制御信号からXYステージ20の加速度情報を取得し、台座36が水平を保つようにアクチュエータ50に電圧を印加する。
図3(a)に示すように、アクチュエータ50が圧縮するような電圧を印加すると、板バネ40には上向きの力が与えられる。
図3(b)に示すように、アクチュエータ50が伸長するような電圧を印加すると、板バネ40には下向きの力が与えられる。
【0027】
台座36には、ステージ進行方向(例えばX方向)に対してピッチング及びローリングの揺れが生じ得るため、これらを抑制できるように板バネ40及びアクチュエータ50を設置することが好ましい。
【0028】
例えば、
図4に示すように、矩形状のテーブル35の4辺(X方向の対向する2辺と、Y方向の対向する2辺)のそれぞれに板バネ40及びアクチュエータ50を設置する。あるいはまた、
図5に示すように、板バネ40及びアクチュエータ50を、X方向の対向する2辺のうちの一方の辺の2ヶ所、他方の辺の1ヶ所に設置してもよい。
【0029】
変位制御回路180がアクチュエータ50に印加する電圧(指令電圧)の制御方法は特に限定されず、例えば、
図6に示すように、アクチュエータ50の変位をセンサ190で測定し、変位の目標値と現在値との差分、及びステージ加速度情報に基づいて印加電圧を制御するような、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを併用したものを適用できる。
【0030】
また、
図7に示すように、レーザ干渉計192を用いてステージ位置を測定し、ステージピッチング量を外乱オブザーバとして利用して、印加電圧を制御してもよい。
【0031】
このように、本実施形態によれば、XYステージ20の加速度に基づいてアクチュエータ50に電圧を印加し、板バネ40に力を付与することで、台座36を水平に保つことができる。そのため、電子ビームのフォーカス位置と、基板101の高さ方向の位置とが合わせやすくなり、描画精度が向上する。また、XYステージ20の動作加速度を下げる必要がないため、描画スループットの低下を防止できる。
【0032】
上記実施形態では、アクチュエータ50を板バネ40の一方の面に取り付ける例について説明したが、
図8に示すように、アクチュエータ50を板バネ40の両面に取り付けてもよい。
【0033】
また、これら実施形態においては、電子ビーム描画装置を例にして説明したが、ビームが磁場の影響を受ける装置であれば、同様の効果を得ることができる。描画装置以外にも検査装置等の処理装置に用いることができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
20 XYステージ
30 Zステージ
40 板バネ
50 アクチュエータ
100 描画装置
101 基板
102 電子光学鏡筒
103 チャンバ
150 描画部
160 制御回路
170 ステージ制御回路
180 変位制御回路