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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ボイラの化学洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/52 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
F22B37/52 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019031746
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020134091
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大屋 二郎
(72)【発明者】
【氏名】高尾 亮太
(72)【発明者】
【氏名】津野 昭夫
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230150(JP,A)
【文献】特開平11-141804(JP,A)
【文献】特開昭55-85898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管によって給水が導入される節炭器と、該節炭器からの水が導入される壁管を有する火炉と、該壁管が連なる汽水分離器と、汽水分離器からの蒸気を過熱するための、直列に配置された複数の過熱器を有した過熱ラインと、該過熱ラインの最下流側の過熱器に連なる主蒸気管と、該主蒸気管に設けられた主蒸気止弁と、該汽水分離器からの水を受け入れるドレンタンクと、該ドレンタンク内の水を前記給水管に循環させるポンプ及び配管とを有するボイラを化学洗浄する方法であって、
該汽水分離器及びそれよりも火炉側を化学洗浄するボイラの化学洗浄方法において、
前記過熱ラインの最上流側の過熱器に水張りを行った後、前記汽水分離器に洗浄薬液を添加して洗浄液とし、次いで該汽水分離器及びそれよりも火炉側洗浄液を循環させる循環工程と、
その後、前記主蒸気止弁を閉とし、前記主蒸気管に50℃以上の押出し用清浄水を供給し、該洗浄液をボイラ外に押出す押出工程と
を有し、
前記過熱ラインの最上流側の過熱器に水張りを行うときに、前記主蒸気管に設けられた前記主蒸気止弁の温度が100℃よりも高く、
前記押出工程を開始するときに、該主蒸気管及び該主蒸気止弁の温度が100℃よりも高く、かつ前記押出工程を行うときに、該主蒸気管と前記押出し用清浄水との温度差を75℃以下とし、前記主蒸気止弁と前記押出し用清浄水との温度差を100℃以下とすることを特徴とするボイラの化学洗浄方法。
【請求項2】
前記主蒸気管に供給する押出し用清浄水を60℃以上に加熱する請求項1のボイラの化学洗浄方法。
【請求項3】
前記過熱ラインに前記過熱器として一次過熱器、二次過熱器及び三次過熱器が設けられており、
前記最上流側の過熱器は該一次過熱器である請求項1のボイラの化学洗浄方法。
【請求項4】
前記一次過熱器に供給する水と前記主蒸気管に供給する水とが共通のタンク(66)から供給される水であり、
該タンク(66)から前記一次過熱器に水を供給することにより該一次過熱器に水張りを行った後、前記汽水分離器に前記洗浄薬液を添加して前記循環工程を行い、
この循環工程を行っている間に該タンク(66)内の水を50℃以上に加熱する
請求項3のボイラの化学洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラの化学洗浄方法に係り、特に汽水分離器やそれよりも火炉側を化学洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電ボイラの蒸気系の一例を図4に示す。バーナ151により火炉152で燃料を燃焼させることにより発生した蒸気は、蒸気ドラム153、飽和蒸気管154、過熱器155、主蒸気管156、主蒸気止弁156aを通って高圧タービン157に供給される。そして、高圧タービン157で仕事をした蒸気は、低温再熱蒸気管158を通って再熱器159に送られて加熱され、高温再熱蒸気管160を通って中圧タービン161及び低圧タービン162に供給されて仕事を行う。また、低圧タービン162で仕事をした蒸気は復水器163で復水された後、脱気管164、ボイラ給水ポンプ165を通って再び火炉152に戻される。
【0003】
なお、主蒸気管156にはドレン弁を有したドレン管156bが接続されている。
【0004】
このような火力発電ボイラの蒸気系において、蒸発管、蒸気ドラム、降水管、集合管寄せなどに洗浄薬液を循環させて化学洗浄する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
ボイラの汽水分離器及びそれよりも火炉側のみを化学洗浄する場合、過熱器側へ洗浄薬液のベーパーや飛沫が流入することを防止するために、過熱器及び主蒸気管に水張りし、その後、汽水分離器及び火炉側を薬液洗浄することが行われている。
【0006】
過熱器及び主蒸気管に水張りを行う場合、主蒸気管および主蒸気止弁の温度が100℃以下となるまで降温させてから水張りを行う必要があった。これは、主蒸気管および主蒸気止弁の温度と張り込み水の温度差が75℃超の場合に水張りを行うと、母材が急冷されて母材に対して悪影響が生じるおそれがあるからである。
【0007】
上記のように、汽水分離器及びそれよりも火炉側を化学洗浄するに際し、過熱器及び主蒸気管に水張りを行う場合、主蒸気管および主蒸気止弁が100℃以下にまで冷却するまで待機する必要があるため、洗浄工期が長くなっていた。
【0008】
この洗浄工期を短くするためのボイラの化学洗浄方法が特許文献2に記載されている。
【0009】
特許文献2には、給水管によって給水が導入される節炭器と、該節炭器からの水が導入される壁管を有する火炉と、該壁管が連なる汽水分離器と、汽水分離器からの蒸気を過熱する過熱器と、汽水分離器からの水を受け入れるドレンタンクと、該ドレンタンク内の水を前記給水管に循環させるポンプ及び配管とを有するボイラを化学洗浄する方法であって、該汽水分離器及びそれよりも火炉側を化学洗浄する方法において、過熱ラインの最上流部に水張りを行うために、該汽水分離器及びそれよりも火炉側に先に水張りを行って、前記過熱ラインの最上流部に水張りを行うときに、前記主蒸気管に設けられた主蒸気止弁の温度が100℃よりも高い条件でのボイラの化学洗浄方法において、前記過熱器水張り工程において前記過熱器水張り水として加熱した水張り水を前記主蒸気管に供給することを特徴とするボイラの化学洗浄方法が開示されている。
【0010】
この特許文献2では、前記過熱ラインの最上流部に水張りを行うときに、前記主蒸気管および主蒸気止弁の温度が100℃よりも高く、前記水張り工程を行うときに、水張り水を加熱することで、該主蒸気管および主蒸気止弁の温度と水張り水の温度の差が75℃以下であるようにすることにより、主蒸気管および主蒸気止弁が100℃以下にまで降温するまで待機することなく化学洗浄を開始することができ、洗浄工期を短縮することができる。しかしながら、洗浄工期をさらに短縮することが望まれている。(緊急洗浄時の場合では、洗浄工期を1時間でも短くすることが望まれている。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭55-46350号公報
【文献】特開2015-230150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、化学洗浄をする場合のボイラ停止から非洗浄部である主蒸気管に水を張るまでの冷却工程を短縮することができるボイラの化学洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のボイラの化学洗浄方法は、給水管によって給水が導入される節炭器と、該節炭器からの水が導入される壁管を有する火炉と、該壁管が連なる汽水分離器と、汽水分離器からの蒸気を過熱するための、直列に配置された複数の過熱器を有した過熱ラインと、該過熱ラインの最下流側の過熱器に連なる主蒸気管と、該主蒸気管に設けられた主蒸気止弁と、該汽水分離器からの水を受け入れるドレンタンクと、該ドレンタンク内の水を前記給水管に循環させるポンプ及び配管とを有するボイラを化学洗浄する方法であって、
該汽水分離器及びそれよりも火炉側を化学洗浄するボイラの化学洗浄方法において、
前記過熱ラインの最上流側の過熱器に水張りを行った後、前記汽水分離器に洗浄薬液を添加して洗浄液とし、次いで該汽水分離器及びそれよりも火炉側に該洗浄液を循環させる循環工程と、
その後、前記主蒸気止弁を閉とし、前記主蒸気管に50℃以上の押出し用清浄水を供給し、該洗浄液をボイラ外に押出す押出工程と
を有し、
前記過熱ラインの最上流側の過熱器に水張りを行うときに、前記主蒸気管に設けられた前記主蒸気止弁の温度が100℃よりも高く、
前記押出工程を開始するときに、該主蒸気管及び該主蒸気止弁の温度が100℃よりも高く、かつ前記押出工程を行うときに、該主蒸気管と前記押出し用清浄水との温度差を75℃以下とし、前記主蒸気止弁と前記押出し用清浄水との温度差を100℃以下とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のボイラの化学洗浄方法では、過熱器ラインの最上流部に水張りを行った後、汽水分離器及びそれよりも火炉側を化学洗浄するので、主蒸気管および主蒸気止弁が100℃以下にまで降温するまで待機することなく化学洗浄を開始することができ、洗浄工期を短縮することができる。
【0018】
また、本発明のボイラの化学洗浄方法では、押出工程において、加熱したを主蒸気管に供給するので、主蒸気管や主蒸気弁が100℃以下にまで降温するまで待機することなく押出工程を早期に開始することができる。これにより、洗浄工期がさらに短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係るボイラの化学洗浄方法を説明するブロック図である。
図2】実施の形態に係るボイラの化学洗浄方法を説明するブロック図である。
図3】ボイラの断面図である。
図4】ボイラ装置の系統図である。
図5】押出し用清浄水の供給部の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る洗浄方法が適用されるボイラの構成図を図3に示す。ボイラは、火炉9と、下流側排ガス流路(後部煙道)と、火炉9の上部と下流側排ガス流路とを接続する上流側排ガス流路を備えている。
【0021】
火炉9の下部に設けられた複数のバーナ80から発生した高温の燃焼ガスは、火炉9内を上昇する。燃焼ガスは上流側排ガス流路および下流側排ガス流路を通って、流路出口93から低温の排ガスとしてボイラ外部に排出される。火炉9内には水冷壁下部周壁管10と上部水冷壁管12とノーズ壁管105が設けられている。水冷壁下部周壁管10は、火炉9内を螺旋状に火炉9下部から上方に伸びている。複数の管からなっている上部水冷壁管12は、それぞれが火炉9内を垂直に火炉9上部に向かって伸びている。ノーズ管105も複数の管からなっている。
【0022】
後部煙道は複数の管からなる後部伝熱壁33などによって画定されている。後部煙道は排ガスの流れに沿って伸びる分割壁120によって、2つのガス流路に分割されている。分割壁120も複数の管よりなる。
【0023】
後部煙道の一方の分割ガス流路には再熱器71が配設されていて、他方の分割ガス流路には一次過熱器40と節炭器2とが配設されている。また、必要に応じて分割ガス流路に蒸発器を設けても良い。
【0024】
後部煙道は複数の管からなる天井壁30と側壁などによって画定されている。上流側排ガス流路には二次過熱器50および三次過熱器60が配設されている。さらに四次過熱器が設置されてもよい。
【0025】
次に、このボイラの給水系について説明する。ボイラへの給水は、まず、給水弁1aを有した給水管1から節炭器2に供給される。節炭器2では節炭器入口管寄せ100から供給された水が、節炭器2内を通る間に排ガス流から熱吸収を行った後、節炭器出口管寄せ101から水冷壁下降管3に供給される。水冷壁下降管3を経た水は、水冷壁下部管寄せ103に分配され、火炉9を螺旋状に囲む水冷壁下部周壁管10を火炉9内の熱を吸収しながら上昇する。水は飽和温度近くまで加熱される。
【0026】
水冷壁下部周壁管10を昇り詰めた高温水は、火炉9中間流体混合管寄せ11に流入して、ここで、その温度が均一化された後、火炉9の上部に設けられた上部水冷壁管12またはノーズ壁管105を上昇する間に火炉9内の熱を吸収し、液相の高温水と気相の蒸気の混合流体となる。この混合流体は、水冷壁上部管寄せ104またはノーズ壁管寄せ106から火炉9上部流体混合管寄せ13に流入して、流体温度の均一化が行われ、さらに、ボイラの缶前部上方に設けた汽水分離器20に流入し、蒸気と水に分離される。このうち分離された水は、ドレンタンク21からボイラ循環ポンプ24及び弁23,25を有した循環配管22を介して、再度、給水管1に循環される。また、汽水分離器20で分離された蒸気は、天井壁入口管寄せ107に供給される。
【0027】
前記天井壁入口管寄せ107に供給された蒸気は、火炉9の上部から下流側排ガス流路上部に亙って設けられた天井壁30を構成する天井壁管を経て、天井壁出口管寄せ108に至る間に、熱吸収により加熱されて過熱蒸気になる。
【0028】
天井壁出口管寄せ108に集まった過熱蒸気は、後部伝熱壁下降管31、後部伝熱壁入口連絡管109を経て、後部伝熱壁入口管寄せ110に分配され、さらに後部伝熱壁33で加熱された後、後部伝熱壁出口管寄せ111および後部伝熱壁出口連絡管112を介して、または後部伝熱壁33から後部伝熱壁後壁出口管寄せ34に集まる。
【0029】
後部伝熱壁後壁出口管寄せ34に集まった過熱蒸気は、一次過熱器連絡管35を介して、後部煙道内に設置された一次過熱器40に流入し、その後、火炉9上部に設けた二次過熱器50及び三次過熱器60を順に経て過熱された後、主蒸気管61及び主蒸気止弁62を介して高圧タービンに送られる。
【0030】
高圧蒸気タービンで仕事をした排気蒸気は、図示していない低温再熱蒸気管により、後部煙道に設置された再熱器71に導かれ、所定の温度の再熱蒸気温度に加熱された後、中圧タービンに送られる。後部煙道の出口にはガス分配ダンパ90が設けられ、通過するガス流量を調整することにより、再熱器71での全熱吸収量が調整され、所定の再熱蒸気温度に制御できる。
【0031】
このボイラの汽水分離器20及びそれよりも上流側を化学洗浄するに際しては、ボイラの運転を停止した後、図1,2にも示すように、循環配管22のうち循環ポンプ24及び弁23,25を迂回するように仮設配管26を設け、仮設配管26に仮設循環ポンプ27を設ける。仮設配管26は、給水配管1のうち給水弁1aよりも下流側に接続されている。
【0032】
また、連絡管35に仮設の水張り用配管41を接続すると共に、連絡管35に、一次過熱器40内の水位を検出するための仮設水位計42を設ける。
【0033】
汽水分離器20に仮設の洗浄薬液供給管を介して薬液タンク(図示略)から薬液を供給可能とする。
【0034】
また、主蒸気止弁62よりも上流側の主蒸気管61に、弁63を有した洗浄水(純水などの清水)の仮設供給管64を接続する。さらに、給水弁1aよりも下流側の給水管1に弁1bを有した仮設排水管1cを接続する。
【0035】
図5に示すように、仮設水張り用配管41及び仮設供給管64には、仮設タンク66からの清水が供給される。仮設水張り用配管41及び仮設供給管64には、ポンプ41a,64a及び弁41b,41c,64b,64cが設けられている。
【0036】
また、仮設タンク66内の水を加熱するために、循環配管67が設けられており、該循環配管67にポンプ67a及び弁67b,67cと蒸気吹込部68とが設けられている。蒸気吹込部68には、弁68aを介して蒸気配管68bから蒸気が供給される。仮設タンク66内の水をポンプ67aによって循環配管67に循環させながら、蒸気を吹き込むことにより、水が加熱される。
【0037】
ボイラの運転停止後、後部煙道内の一次過熱器40の温度が100℃以下程度にまで降温した後、仮設タンク66内の水を仮設水張り用配管41及びポンプ41aによって送水し、図1のように一次過熱器40に水張りする。なお、この時、主蒸気止弁62は100℃よりも高温となっている。
【0038】
次いで、弁1a,23,25及び排水管1cの弁1bを閉とし、汽水分離器20に洗浄薬液を添加した後、仮設循環ポンプ27を作動させる。そうすると、図1の通り、汽水分離器20内の洗浄液は、ドレンタンク21、仮設配管26、給水管1、節炭器2、火炉9の周壁管10及び上部水冷管壁12又はノーズ壁管105、管寄せ104又は106、管寄せ13を介して汽水分離器20に循環され(循環工程)、この間の汽水分離器20、ドレンタンク21、節炭器2、壁管10,12,105及び各管寄せが化学洗浄される。
【0039】
この化学洗浄を行っている間に、仮設タンク66内の水をポンプ67aによって循環配管67を循環させると共に、蒸気を蒸気吹込部68に供給し、仮設タンク66内の水を好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上(好ましくは100℃以下特に90℃以下)に加熱しておく。
【0040】
該循環工程が終了後、押出工程を行う。即ち、仮設循環ポンプ27を停止し、主蒸気止弁62を閉とし、図2の通り、主蒸気管61にポンプ64a及び供給管64を介して、仮設タンク66内の加熱された洗浄水(清水)を供給し、過熱管60,50,40、壁管33、天井壁30を介して洗浄水を汽水分離器20に逆流させる。汽水分離器20に逆流してきた洗浄水の一部は、汽水分離器20からドレンタンク21を経て排水管1cへ流出する。また、汽水分離器20に逆流した洗浄水の残部は、火炉9の壁管12,10、ノーズ壁管105、管寄せ103、下降管3、節炭器2、給水管1を介して排水管1cから流出する。
【0041】
ボイラ化学洗浄作業が終了した後は、仮設配管を撤去し、通常の水洗及び起動操作を行ってボイラの運転を再開する。
【0042】
この押出工程にあっては、仮設タンク66内の加熱された水を供給するので、押出工程の開始時における主蒸気管61及び主蒸気弁62の温度が100℃以上であっても、主蒸気管61と押出し用清浄水との温度差をボイラメーカ指針値の75℃以下とし、主蒸気弁62と押出し用清浄水との温度差をボイラメーカ指針値の100℃以下にすることができる。
【0043】
従って、主蒸気管61及び主蒸気弁62の温度が100℃未満に降温するまで待機することなく、押出工程を開始することができる。
【0044】
この洗浄方法によると、主蒸気止弁62が100℃以下となる前に、汽水分離器20、ドレンタンク21、火炉9の壁管、節炭器2などの化学洗浄を開始することができ、その分だけ工期短縮が可能である。本発明者が実際に作業を行ったところ、従来は主蒸気止弁が100℃に冷却するまで5日を要し、化学洗浄作業はボイラ停止後、6日目以降開始となっていたのが、本発明方法によると、4日目には化学洗浄を開始することができ、工期を2日短縮でき、ボイラ再稼働を1日早くすることができた。
【0045】
また、この洗浄方法では、上記の通り、押出工程を、主蒸気管61及び主蒸気弁62の温度が100℃以上(好ましくは110℃以上、特に120℃以上)であるうちに開始することができるので、その分だけ、押出工程を早期に終了させることができ、化学洗浄工期が短縮される。
【0046】
押出工程を、主蒸気管61及び主蒸気弁62が100℃以下になってから開始するようにしていたボイラにおいて、仮設タンク66内の水を50℃に加熱し、主蒸気管61及び主蒸気弁62の温度が125℃になった時点で押出工程を開始するようにしたところ、押出工程開始を約34時間早めることができ、その分だけ化学洗浄工期が短縮された。
【0047】
上記実施の形態では、一次過熱器40に水張りを行うものとしているが、一次過熱器40以外の後部煙道管であってもよい。また、蒸気吹込以外の手段によって仮設タンク66内の水を加熱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 給水管
2 節炭器
9 火炉
20 汽水分離器
21 ドレンタンク
24 再循環ポンプ
27 仮設再循環ポンプ
40,50,60 過熱器
41 仮設水張り用配管
42 仮設水位計
61 主蒸気管
62 主蒸気止弁
64 仮設供給管
66 仮設タンク
68 蒸気吹込部
図1
図2
図3
図4
図5