(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】高耐摩耗性ゼオライト成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/24 20060101AFI20230502BHJP
C04B 35/16 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C01B39/24
C04B35/16
(21)【出願番号】P 2019100631
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018104730
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大庭 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】平野 茂
(72)【発明者】
【氏名】徳永 敬助
(72)【発明者】
【氏名】清水 要樹
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-87322(JP,A)
【文献】特開平11-314913(JP,A)
【文献】特開2001-226167(JP,A)
【文献】特開平9-150056(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3738916(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/24
B01J 20/18
B01J 20/30
C04B 35/16
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部含み、かつ、耐摩耗強度が90%以上であり、当該ゼオライトが、Si/Al
2が10以上100000以下、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含むことを特徴とする高耐摩耗性ゼオライト成形体。
【請求項2】
ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部、水を120~180重量部含む混合物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を400~700℃で焼成するものであり、当該ゼオライトが、Si/Al
2が10以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の高耐摩耗性ゼオライト成形体の製造方法。
【請求項3】
当該ゼオライトが、ベータ型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項2に記載の高耐摩耗性ゼオライト成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐摩耗性ゼオライト成形体及びその製造方法に関する。本発明の高耐摩耗性ゼオライト成形体は、例えば、吸着分離剤、触媒などの用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、浮立粒子状物質や光化学オキシダントの原因物質の一つとされているVOCの排出規制が始まり、VOC排出の対策技術に注目が集まっている。VOC吸着剤としてはゼオライトが注目されている。熱に強い二酸化ケイ素からなる骨格であるため、高温でのVOCの吸脱着が容易かつ安全性が高く、高比表面積である。一方で、工場などでVOCを吸着する際、固定相または流動層の吸着塔が利用されるが、それらへの充填や吸脱着の際に吸着剤が粉化してしまい、設備トラブルや圧力損失の原因となるため、吸着剤には高い耐摩耗性が要求されているが、実用可能な高い耐摩耗性を有するゼオライト成形体の発明には至っていない。
【0003】
ゼオライト成形体の強度を強くする手段として、いくつかの方法が知られている。例えば、特許文献1には、ゼオライトとしてA型又はX型ゼオライト、バインダーとしてカオリン粘土あるいは加水ハロイサイト、増粘剤または保水剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)を混合、混練、成形する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ゼオライトとして低シリカX型ゼオライト、バインダーとしてカオリン系粘土、セピオライト系粘土、アタパルジャイト系粘土、ベントナイト系粘土を複数種類使用する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ゼオライトとして3A型ゼオライト、バインダーとしてカオリン粘土、無機系分散剤として縮合リン酸塩を混合、混練、成形する方法が開示されている。
【0006】
いずれの特許文献においても、実用性のある耐摩耗性を有するゼオライト成形体の発明には至っておらず、より高い耐摩耗性を有してゼオライト成形体の発明が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-87322号公報
【文献】特開平11-314913号公報
【文献】特開2001-226167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のゼオライト成形体よりも耐摩耗性に優れたゼオライト成形体及びその製造方法を提供するものである。高耐摩耗性ゼオライト成形体は、様々な吸着分離用途、触媒反応用途で使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゼオライト成形体を製造する時にバインダーとして繊維状粘土およびシリカゾルの二種類を使用する製造方法を見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部含み、かつ、耐摩耗強度が90%以上であり、当該ゼオライトが、Si/Al2が10以上100000以下、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含むことを特徴とする高耐摩耗性ゼオライト成形体、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部、水を120~180重量部含む混合物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を400~700℃で焼成するものであり、当該ゼオライトが、Si/Al2が10以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含むことを特徴とする高耐摩耗性ゼオライト成形体の製造方法である。
【0010】
以下、本発明について説明する。
【0011】
本発明の高耐摩耗性ゼオライト成形体は、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部含むものである。
【0012】
高耐摩耗性ゼオライト成形体に含まれるゼオライトは、Si/Al2が10以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトであり、これを一種以上含むものである。Si/Al2が10未満の場合、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)を超える場合には、摩耗強度が低下する。ゼオライトの種類としては、例えば、ベータ型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトなどが例示されるが、Y型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトが好ましい。Si/Al2は、50以上10000以下が好ましく、80以上2000以下がさらに好ましい。
【0013】
高耐摩耗性ゼオライト成形体に含まれる繊維状粘土の量は、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して35~70重量部である。35重量部未満の場合は耐摩耗性が低くなり、70重量部より多くした場合でも、耐摩耗性の向上は認められない。耐摩耗性がより高くなるため、40~60重量部が好ましく、45~55重量部がさらに好ましい。粘土の粒径は特に制限されないが、好ましくは平均粒径として0.5~30μmである。繊維状粘土としては、例えば、セピオライト粘土、アタパルジャイト粘土、パリゴルスカイト粘土などがあげられる。
【0014】
高耐摩耗性ゼオライト成形体に含まれるシリカゾルの量はゼオライト100重量部(無水換算)に対して5~40重量部である。5重量部未満の場合、耐摩耗性には効果がなく、シリカゾルの添加量を増加させるにつれて、耐摩耗性も向上していくが、40重量部を超える場合、押し出し成形性が著しく悪化する。耐摩耗性と押し出し成形性をいずれも高い水準で保持するためには10~30重量部が好ましく、15~25重量部がさらに好ましい。シリカゾルの粒径は特に制限されないが、好ましくは平均粒径として5~30nmである。
【0015】
高耐摩耗性ゼオライト成形体に含まれる水溶性ナトリウム塩の量は、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して0.5~10重量部である。0.5重量部未満ではその効果が十分でなく、10重量部より多くしてもその効果は変化しない。水溶性ナトリウム塩に由来するナトリウムの量を増やさないため、0.5~8重量部が好ましく、0.5~6重量部がさらに好ましい。水溶性ナトリウム塩としては、例えば、無機酸ナトリウム、有機酸ナトリウムなどが例示される。
【0016】
無機酸ナトリウムとしては水溶性のナトリウム塩であればよく、例えば、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどが例示される。これらのうち、リン酸ナトリウムが好ましい。リン酸ナトリウムとしては、例えば、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが例示される。
【0017】
有機酸ナトリウムとしては水溶性のナトリウム塩であればよく、例えば、一般有機カルボン酸、アミノカーボネート、エーテルカルボン酸塩、ビニル型高分子ナトリウム塩などが例示される。一般有機カルボン酸としては、例えば、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムなどが例示され、アミノカーボネートとしては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、ジエチレントリアミノ五酢酸ナトリウムなどが例示され、エーテルカルボン酸塩としては、例えば、カルボキシメチルタルトロン酸ナトリウム、カルボキシメチルオキシコハク酸ナトリウムなどが例示され、ビニル型高分子ナトリウム塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体のナトリウム塩などが例示される。
【0018】
高耐摩耗性ゼオライト成形体に含まれる成形助剤の量は、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して4~20重量部である。4重量部未満の場合は耐摩耗性が低下し、20重量部を超える場合は成形性が著しく低下する。好ましくは8~16重量部である。成形助剤としては、例えば、セルロース、アルコール、リグニン、スターチ、グァーガムなどが例示される。これらのうち、セルロース、アルコールが好ましい。セルロースとしては、例えば、結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などが例示される。アルコールとしては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレングリコールなどが例示される。
【0019】
本発明の高耐摩耗性ゼオライト成形体は、耐摩耗強度が90%以上である。耐摩耗強度が90%未満の場合は、粉化しやすく圧力損失などを引き起こしやすくなるおそれがある。ここに、耐摩耗強度の測定は、JIS-K-1474の活性炭試験法に準じて行うものである(実施例の<耐摩耗性試験>を参照)。耐摩耗強度は、92%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましく、96.5%以上が特に好ましい。
【0020】
本発明の高耐摩耗性ゼオライト成形体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を15~50重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部、水を120~180重量部含む混合物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を400~700℃で焼成することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるゼオライトは、Si/Al2が10以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含む必要がある。Si/Al2が10未満の場合、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)を超える場合には、大気中の水分を吸着しやすくなり摩耗強度が低下する。ゼオライトの種類としては、例えば、ベータ型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトなどが例示されるが、Y型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトが好ましい。Si/Al2は、50以上10000以下が好ましく、80以上2000以下がさらに好ましい。
【0022】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるのは繊維状粘土である。粘土には様々な種類があるが、繊維状粘土はゼオライト結晶に存在する細孔をふさぐことがないため性能低下がない。カオリン粘土の様な板状結晶の粘土はゼオライト結晶の細孔をふさぐ恐れがあり、好ましくない。繊維状粘土としては、例えば、セピオライト粘土、アタパルジャイト粘土、パリゴルスカイト粘土などが例示される。繊維状粘土の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して35~70重量部である。35重量部未満の場合は耐摩耗性が低くなり、70重量部より多くした場合でも、耐摩耗性の向上は認められない。耐摩耗性がより高くなるため、40~60重量部が好ましく、45~55重量部がさらに好ましい。粘土の粒径は特に制限されないが、好ましくは平均粒径として0.5~30μmである。
【0023】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるのはシリカゾルである。シリカゾルの量としてはゼオライト100重量部(無水換算)に対して5~40重量部である。5重量部未満の場合、耐摩耗性には効果がなく、シリカゾルの添加量を増加させるにつれて、耐摩耗性も向上していくが、40重量部を超える場合、押し出し成形性が著しく悪化する。耐摩耗性と押し出し成形性をいずれも高い水準で保持するためには10~30重量部が好ましく、15~25重量部がさらに好ましい。シリカゾルの粒径は特に制限されないが、好ましくは平均粒径として5~30nmである。また、pHは特に制限はされないが、好ましくは7.0~10.0である。
【0024】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるのは水溶性ナトリウム塩である。水溶性ナトリウム塩としては、例えば、無機酸ナトリウム、有機酸ナトリウムなどが例示される。水溶性ナトリウム塩としては、無機酸ナトリウム又は有機酸ナトリウムの少なくとも1種を含むことが好ましい。理由は定かではないが、水溶性ナトリウム塩を使用することで耐摩耗性は著しく高くなる。水溶性ナトリウム塩の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して、0.5~10重量部である。0.5重量部未満ではその効果が十分でなく、10重量部より多くしてもその効果は変化しない。水溶性ナトリウム塩に由来するナトリウムの量を増やさないため、0.5~8重量部が好ましく、0.5~6重量部がさらに好ましい。
【0025】
無機酸ナトリウムとしては水溶性のナトリウム塩であればよく、例えば、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどが例示される。これらのうち、取り扱いが容易のため、リン酸ナトリウムが好ましく使用できる。リン酸ナトリウムとしては、例えば、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが使用できる。
【0026】
有機酸ナトリウムとしては水溶性のナトリウム塩であればよく、例えば、一般有機カルボン酸、アミノカーボネート、エーテルカルボン酸塩、ビニル型高分子ナトリウム塩などが例示される。一般有機カルボン酸としては、例えば、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムなどが使用でき、アミノカーボネートとしては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、ジエチレントリアミノ五酢酸ナトリウムなどが使用でき、エーテルカルボン酸塩としては、例えば、カルボキシメチルタルトロン酸ナトリウム、カルボキシメチルオキシコハク酸ナトリウムなどが使用でき、ビニル型高分子ナトリウム塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体のナトリウム塩などが使用できる。
【0027】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるのは成形助剤である。成形助剤としては、成形性を改善するものであり、例えば、セルロース、アルコール、リグニン、スターチ、グァーガムなどが例示される。これらのうち、取り扱いが容易であるため、セルロース、アルコールが好ましい。セルロースとしては、例えば、結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などが例示される。アルコールとしては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレングリコールなどが例示される。成形助剤の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して、4~20重量部であり、好ましくは8~16重量部である。4重量部未満の場合は耐摩耗性が低下し、20重量部を超える場合は成形性が著しく低下する。
【0028】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれる水の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して、120~180重量部であり、140~160重量部が好ましい。120重量部未満の場合も、180重量部より多い場合も成形が困難になる場合がある。
【0029】
本発明の製造方法で使用される混合物は、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部、水を120~180重量部を混合して混練することで得られるものである。混合して混練する方法としては特に制限はなく、例えば、ロール式混練機のミックスマーラー、羽根撹拌式であるヘンシェルミキサー、バッチ式又は連続式のニーダーなどが使用できる。
【0030】
本発明の製造方法は、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を35~70重量部、シリカゾルを5~40重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を4~20重量部、水を120~180重量部含む混合物を成形するものである。成形する方法としては特に制限はなく、例えば、転動造粒、撹拌造粒、押出し成形、噴霧造粒、これらの方法を2種以上組み合わせた方法等により成形することができる。成形体の形状は特に制限ないが、球状、円柱状、楕円状、俵型、三つ葉型、リング状などが好ましく、球状、円柱状がさらに好ましい。成形体の大きさは特に制限ないが、平均粒子径として0.1~3mmが好ましい。成形体のアスペクト比(長径と短径の比)は特に制限はないが、3以下が好ましい。
【0031】
成形されたゼオライト成形体は乾燥される。乾燥方法は特に制限なく、例えば、箱型乾燥機、連続式乾燥機などが使用できる。乾燥温度は50~200℃で行うことができる。乾燥雰囲気は大気圧下で空気又は窒素雰囲気で行うことができる。乾燥されたゼオライト成形体は、所望の大きさに分級される。分級は乾燥の前に行うこともできる。
【0032】
乾燥されたゼオライト成形体は焼成される。焼成方法は特に制限なく、例えば、箱型マッフル炉、ロータリーキルン、シャフトキルンなどの装置で行うことができる。焼成温度は繊維状粘土が焼結されて強度が発現できる温度であればよく、400~700℃が好ましい。焼成雰囲気は大気圧下で空気又は窒素雰囲気で行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の高耐摩耗性ゼオライト成形体は、耐摩耗性が高い。特に、加熱再生プロセスを含む吸着分離用途、触媒反応用途で有用に使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
<水分吸着量の測定>
水分吸着量は、スプリングバランス型の吸着装置を使用して、温度25℃にて測定した。
【0036】
<耐摩耗性試験>
耐摩耗性試験における耐摩耗強度の測定は、JIS-K-1474に準じて行った。すなわち、試料を200mLのメスシリンダーの100mLの標線まで軽くたたいて充填した。メスシリンダーではかりとった試料を直径12.7mmおよび9.5mmの鋼球それぞれ15個とともに耐摩耗性試験用皿に入れた。ふるい振とう機に取り付け、30分間振とうした。最も試料が残ったふるいの半分の目の大きさのふるいおよび受け皿を用い、鋼球を除いた試料を全部いれ、ふるい振とう機に取り付けた。3分間振とうした後、ふるい上および受け皿に残った試料の質量をそれぞれ0.1gの桁まではかりとった。耐摩耗強度は次の式1によって算出した。
【0037】
H=W/S×100 …(式1)
ここで、H:耐摩耗強度(質量分率%)、W:ふるい上に残った試料の質量(g)、S:ふるい上及び受け皿に残った試料の質量の合計(g)とした。
【0038】
実施例1
Y型ゼオライト粉末(HSZ(登録商標)-385HUA:東ソー製(Si/Al2:100、水分吸着量:2g/100g))を80重量部(1627g;水分含有量2%)、MFI型ゼオライト粉末(HSZ(登録商標)-891HOA:東ソー製(Si/Al2:1500、水分吸着量:4g/100g))を20重量部(413g;水分含有量3%)、アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB:アクティブミネラルズ製)を50重量部(1253g;水分含有量22%)、カルボキシメチルセルロースナトリウムを6重量部(120g)、結晶性セルロース(セオラス(登録商標)RC-591;旭化成ケミカルズ製)を6重量部(120g)量り取り、ミックスマーラー(新東工業製)で5分間混合した。シリカゾル(スノーテックスC-30:日産化学製)1639gを添加し、5分間混合した。水1000gにリン酸二水素ナトリウム(燐化学工業製;NaH2PO4)を1.5重量部(30g)溶解した水を添加し、5分間混合した。その後、更に960gの水を添加して、10分間撹拌混練し、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して109重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数900rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は1.2であった。
【0039】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は96.7%であった。
【0040】
実施例2
カルボキシメチルセルロースナトリウムを4重量部(80g)、結晶性セルロース(セオラス(登録商標)RC-591:旭化成ケミカルズ製)を4重量部(80g)、シリカゾルの添加量を1350gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して106重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数900rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は1.2であった。
【0041】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は96.4%であった。
【0042】
実施例3
ミックスマーラーをヘンシェルミキサーに変更し、添加する水を1088gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して106重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数900rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は1.2であった。
【0043】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は96.7%であった。
【0044】
実施例4
シリカゾルを25重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して101重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数900rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は1.2であった。
【0045】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は96.8%であった。
【0046】
実施例5
シリカゾルを10重量部(653g)、添加する水を1350gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して95重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数900rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は1.2であった。
【0047】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は96.5%であった。
【0048】
実施例6
実施例4と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して101重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数600rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は2.3であった。
【0049】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は95.0%であった。
【0050】
実施例7
実施例4と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して101重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数450rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は2.5であった。
【0051】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は93.2%であった。
【0052】
実施例8
実施例4と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して101重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、マルメライザー(QJ-400:ダルトン製)で回転数300rpmで転動整粒を行い、円柱状の成形体を球状に変形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。ゼオライト成形体のアスペクト比は3であった。
【0053】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は90.9%であった。
【0054】
比較例1
シリカゾルを添加しないで、カルボキシメチルセルロースナトリウムを4重量部(80g)、結晶性セルロース(セオラス(登録商標)RC-591:旭化成ケミカルズ製)を4重量部(80g)、添加する水を1740gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して95重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。
【0055】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は84.9%であった。
【0056】
比較例2
アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB:アクティブミネラルズ製)からカオリン粘土(板状粘土)に変更し、シリカゾルを添加しないで、添加する水を1400gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して83重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。
【0057】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は45.3%であった。
【0058】
比較例3
シリカゾルを25重量部、アタパルジャイト型粘土を30重量部、添加する水を1530gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物を650℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して95重量部であった。得られた混合物を直径0.6mmの円柱状に成形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。
【0059】
耐摩耗性試験を行った後の耐摩耗強度は89.6%であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の高耐摩耗性ゼオライト成形体は、耐摩耗性に優れるため、吸着分離剤、触媒などの用途において、設備トラブルや圧力損失などを引き起こすことなく使用することができる。