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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】単結晶育成方法および単結晶育成装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/26 20060101AFI20230502BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C30B15/26
C30B29/06 502Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019217781
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088467
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】色川 真弘
(72)【発明者】
【氏名】木原 亜由美
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-069780(JP,A)
【文献】特開2017-057097(JP,A)
【文献】特開平03-285888(JP,A)
【文献】国際公開第01/083859(WO,A1)
【文献】特開2000-264779(JP,A)
【文献】特開2009-067624(JP,A)
【文献】特開2005-170773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶育成方法であって、
光源から出射したレーザ光を、上方からルツボに収容された原料融液の液面に対して照射し、前記原料融液の液面で反射したレーザ光をパルス状に受光する照射受光工程と、
前記照射受光工程における単位時間当たりの前記レーザ光の受光量に基づいて、前記原料融液の液面の形態が正常か否かを判定する判定工程と、を有することを特徴とする単結晶育成方法。
【請求項2】
前記受光量は、前記パルス状に受光したレーザ光の単位時間当たりの受光頻度であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶育成方法。
【請求項3】
前記判定工程において、前記単位時間当たりの前記レーザ光の受光量が閾値より低くなった場合に、前記原料融液の液面の形態が正常でないと判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単結晶育成方法。
【請求項4】
前記照射受光工程において、前記単結晶の直径が大きくなった場合に、前記単結晶の縁部と前記原料融液との界面に生じるメニスカスを検知するように、前記光源から出射したレーザ光が前記原料融液の液面に照射される位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の単結晶育成方法。
【請求項5】
チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶育成装置であって、
原料融液が収容されたルツボと、
上方から前記原料融液の液面に対してレーザ光を出射する光源と、
前記原料融液の液面で反射したレーザ光をパルス状に受光する受光部と、
前記受光部における単位時間当たりの前記レーザ光の受光量に基づいて、前記原料融液の液面の形態が正常か否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする単結晶育成装置。
【請求項6】
前記受光部で受光されるパルス状のレーザ光は、前記光源からパルス状に出射されたレーザ光、または、前記光源から出射された連続光のレーザ光をシャッターでパルス状にしたレーザ光であることを特徴とする請求項5に記載の単結晶育成装置。
【請求項7】
チャンバ外に配置され、上下方向に移動可能であり、前記光源から下方に出射されたレーザ光を反射して窓部を介して前記チャンバ内に導くとともに前記レーザ光を反射して前記受光部に導く可動ミラーと、
前記チャンバ内に配置され、前記可動ミラーによって前記チャンバ内に導かれた前記レーザ光を前記液面に向けて反射させるともに前記レーザ光を反射して前記窓部を介して前記チャンバ外に導くプリズムミラーと、を有する請求項5または請求項6に記載の単結晶育成装置。
【請求項8】
前記レーザ光は、前記単結晶の直径が大きくなった場合に、前記単結晶の縁部と前記原料融液との界面に生じるメニスカスを検知するように、前記可動ミラーの位置調整がされていることを特徴とする請求項に記載の単結晶育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶育成方法および単結晶育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶などの単結晶の製造方法として、チョクラルスキー法(以下、CZ法という)と呼ばれる方法が知られている。CZ法では、ルツボ内のシリコン融液の液面に種結晶を着液させ、種結晶を上方に引き上げることにより単結晶の製造が行われる。
【0003】
ところで、単結晶の育成中は、より高品質の単結晶を得るなどの目的で、熱遮蔽体とシリコン融液の液面との間のギャップ、育成されるシリコン単結晶の直径など様々なパラメータの監視が行われている。例えば、特許文献1には、シリコン融液の液面のレベルの異常を検知する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-278586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の装置では、シリコン融液の液面のレベルの異常を検知することはできるが、シリコン融液の液面の形態に何らかの異常が生じた場合は、正常な計測ができなくなる。よって、液面に異常が生じた場合に、その異常を検知できるシステムが望まれている。
【0006】
本発明は、チョクラルスキー法により単結晶を育成するにあたって、ルツボに収容された原料融液の液面の形態が正常か否かを即座に把握することができる単結晶育成方法および単結晶育成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の単結晶育成方法は、チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶育成方法であって、光源から出射した出射光を、上方からルツボに収容された原料融液の液面に対して照射し、前記原料融液の液面で反射した反射光を受光する照射受光工程と、前記照射受光工程における前記単位時間当たりの受光量に基づいて、前記原料融液の液面の形態が正常か否かを判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記判定工程において、前記単位時間当たりの受光量が低下して、閾値より低くなった場合に、前記原料融液の液面の形態が正常でないと判定することが好ましい。
【0009】
前記照射受光工程において、前記単結晶の直径が大きくなった場合に、前記単結晶の縁部と前記原料融液との界面に生じるメニスカスを検知するように、前記光源から出射した出射光が前記原料融液の液面に照射される位置を調整する構成としてもよい。
なお、メニスカスとは、単結晶の縁部と原料融液との界面において表面張力により生じる湾曲した液面形態である。
【0010】
本発明の単結晶育成装置は、チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶育成装置であって、原料融液が収容されたルツボと、上方から前記原料融液の液面に対して出射光を出射する光源と、前記原料融液の液面で反射した反射光を受光する受光部と、前記受光部における前記単位時間当たりの受光量に基づいて、前記原料融液の液面の形態が正常か否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記単結晶育成装置において、チャンバ外に配置され、上下方向に移動可能であり、前記光源から下方に出射された出射光を反射して窓部を介して前記チャンバ内に導くとともに前記反射光を反射して前記受光部に導く可動ミラーと、前記チャンバ内に配置され、前記可動ミラーによって前記チャンバ内に導かれた前記出射光を前記液面に向けて反射させるともに前記反射光を反射して前記窓部を介して前記チャンバ外に導くプリズムミラーと、を有する構成としてもよい。
【0012】
上記単結晶育成装置において、前記出射光は、前記単結晶の直径が大きくなった場合に、前記単結晶の縁部と前記原料融液との界面に生じるメニスカスを検知するように、前記可動ミラーの位置調整がされている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受光量に基づいて原料融液の液面の形態が正常か否かを判定することによって、原料融液の液面の状態を即座に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の引き上げ装置の概略断面図である。
図2】本発明の実施形態の液面形態判定装置を図1とは異なる方向から見た概略図である。
図3】可動ミラーの上下移動について説明する図である。
図4】シリコン単結晶とレーザ光との位置関係を説明する概略図である。
図5】シリコン単結晶の径の拡大により、レーザ光とメニスカスとが干渉した様子を説明する概略図である。
図6】本発明の実施形態の単結晶育成方法のフローチャートである。
図7】シリコン単結晶の直径と、受光頻度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
〔引き上げ装置〕
図1は、本発明の実施形態に係る引き上げ装置1の概略断面図である。図2は、引き上げ装置1に設けられている液面形態判定装置12を図1とは異なる方向から見た概略図である。図中には、構造の理解の容易化のため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を示す(他の図においても同様とする。)。X軸およびY軸は水平方向に対応し、Z軸は鉛直方向に対応する。
なお、図1は、液面形態判定装置12のレーザ光Lの軌跡を側方(Y軸に沿う方向)から見た図であり、図2は、レーザ光Lの軌跡を正面(X軸に沿う方向)から見た図である。また、図1においては、可動ミラー16とプリズムミラー17によりレーザ光Lが案内されているが、図2では、可動ミラー16とプリズムミラー17は省略している。
【0016】
引き上げ装置1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶Sを引き上げ、育成を行う装置である。図1に示されるように、引き上げ装置1は、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置されるルツボ3と、ヒーター4と、液面形態判定装置12と、を備えている。
【0017】
ルツボ3は、鉛直方向上方から見て円形をなし、シリコン融液M(原料融液)が貯留される容器である。ルツボ3は、内側の石英ルツボ3Aと、外側の黒鉛ルツボ3Bとから構成される二重構造である。ルツボ3は、回転および昇降が可能でZ軸に沿って延びる支持軸5の上端部に固定されている。
【0018】
ヒーター4は、ルツボ3内のシリコン融液Mを加熱する加熱装置である。ヒーター4は、円筒形状をなし、ルツボ3の外側においてルツボ3の中心軸Aと同軸状に配置されている。ヒーター4は、抵抗加熱式の所謂カーボンヒーターである。ヒーター4の外側には、チャンバ2の内面に沿って断熱材6が設けられている。
【0019】
ルツボ3の上方には、支持軸5と同軸上に引き上げ軸7が配置されている。引き上げ軸7は、ワイヤなどによって形成されている。引き上げ軸7は、軸回りに時計回りまたは反時計回りに所定の速度で回転する。引き上げ軸7の下端には種結晶SCが取り付けられている。引き上げ軸7は、種結晶SC(シリコン単結晶S)を、鉛直方向上方から見て時計回りまたは反時計回りに回転させる。
【0020】
チャンバ2内には、熱遮蔽体8が配置されている。熱遮蔽体8は、略円錐筒状をなし、ルツボ3内のシリコン融液Mの上方で育成中のシリコン単結晶Sを囲む。
熱遮蔽体8は、育成中のシリコン単結晶Sに対して、ルツボ3内のシリコン融液Mやヒーター4やルツボ3の側壁からの高温の輻射熱を遮断する。熱遮蔽体8は、結晶成長界面である固液界面の近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配を制御する役割を担う。
【0021】
チャンバ2の上部には、ガス導入口10が設けられている。ガス導入口10は、アルゴンガスなどの不活性ガスGをチャンバ2内に導入する。チャンバ2の下部には、排気口11が設けられている。排気口11は、図示しない真空ポンプの駆動により、チャンバ2内の気体を吸引して排出する。ガス導入口10からチャンバ2内に導入された不活性ガスGは、育成中のシリコン単結晶Sと熱遮蔽体8との間を下降する。次いで、不活性ガスGは、熱遮蔽体8の下端とシリコン融液Mの液面との隙間を経た後、熱遮蔽体8の外側、さらにルツボ3の外側に向けて流れる。その後、不活性ガスGは、ルツボ3の外側を下降し、排気口11から排出される。
【0022】
〔液面形態判定装置〕
液面形態判定装置12は、シリコン融液Mの液面MAの形態を判定する装置である。具体的には、液面形態判定装置12は、液面MAに波のように起伏が生じている形態など、液面MAの形態が正常ではない形態となったことを判定することができる装置である。
本発明の液面形態判定装置12は、光源から出射した出射光を液面MAで反射させ、受光装置で反射光を受光できるか否かを判定材料として液面MAの形態が正常か否かを判定する。
ここで、シリコン融液Mの液面MAの形態が正常でないとは、単結晶の育成に何らかの異常があり、正常に単結晶の育成が行われた場合には認められない液面MAの形態となっていることを言う。例えば、液面MAに波のような起伏が生じている形態が挙げられる。また、他の正常でない例としては、単結晶の育成に何らかの異常があり、正常に単結晶の育成が行われた場合には認められない、液面MAが湾曲した形態あるいは液面MAが傾斜した形態といった形態が挙げられる。また、単結晶の育成に何らかの異常がある具体的な例としては、装置の不具合により結晶直径の設定値を逸脱して結晶直径が大きくなること、ルツボ回転数の設定値を逸脱してルツボが回転すること、軸振れしてルツボが回転することが挙げられる。また、ヒューマンエラーにより作業者が設定した結晶直径の設定値や、ルツボ回転数の設定値が正しくない場合も挙げられ、さらに自然災害により単結晶の育成に支障が生じた場合、例えば、地震によりルツボ内融液が大きく揺れる場合も挙げられる。
【0023】
図1および図2に示されるように、液面形態判定装置12は、出射受光ユニット13と、可動ミラー16と、プリズムミラー17と、制御装置20と、表示装置23と、を有する。図2において液面MAへのレーザ光Lの入射角度θ1および反射角度θ2は、大きくして示しており、実際には角度θ1,θ2は5°以下の小さな角度である。すなわち、レーザ光Lは、液面MAに対して上方から垂直あるいは略垂直に照射される。
【0024】
出射受光ユニット13は、チャンバ2外に配置され、レーザ光Lを出射および受光するユニットである。出射受光ユニット13は、レーザ光L1(出射光)を出射する出射装置14と、レーザ光L2(反射光)を受光する受光装置15(受光部)と、を有する。
受光装置15は、入射してきたレーザ光L2を集光するレンズ18と、集光したレーザ光L2を検出するセンサ19と、を有する。
【0025】
出射装置14は、例えば、光源として波長が400nm~550nmのレーザ光源を用いた装置である。このように、炉内から発生する黄色、赤色、近赤外波長のゴースト光の波長とは大きく異なるレーザ光源を用いることによって、ゴースト光の影響を受けにくくすることができる。出射装置14は、連続光のみならず、パルス状のレーザ光を出射することができる。
【0026】
受光装置15のセンサ19として、CCDセンサなどの撮像素子を使用した場合、相対受光感度を向上させることができる。
レーザ光源の代替として、キセノン、水銀、ハロゲンなどの一般的な光源あるいはナトリウム線などの単一波長光源を用いることもできる。
【0027】
可動ミラー16とプリズムミラー17は、出射装置14から出射されたレーザ光L1を液面MAに導くとともに、液面MAで反射したレーザ光L2を受光装置15に導くミラーである。
可動ミラー16は、チャンバ2外に配置されており、回動および昇降が可能なミラーである。
可動ミラー16を反射面16Bに沿って水平方向に延びる軸16Aを中心に回動させる(図1の矢印R)ことによって、レーザ光Lの光路の角度を変更することができる。
【0028】
図3は、可動ミラー16の昇降(上下方向の移動)について説明する図である。図3に示されるように、可動ミラー16を上方に移動(図3の矢印U)させることによって、レーザ光Lの光路をシリコン単結晶Sの径方向外側に移動させることができる(移動前の光路を実線で、移動後の光路を二点鎖線で示す。)。
なお、本実施形態の可動ミラー16は、回動および昇降が可能な構成となっているが、光路を調整できればこれに限ることはなく、その他の機構を用いてもよい。また、光路を移動させる必要がなければ、固定のミラーを採用してもよい。
【0029】
プリズムミラー17は、チャンバ2内に配置され、窓部2Aから入射されたレーザ光L1を液面MAに向けて反射させるとともに、液面MAから反射したレーザ光L2を窓部2Aを介して炉外に導くミラーである。
【0030】
液面形態判定装置12は、出射装置14から出射されたレーザ光L1が可動ミラー16およびプリズムミラー17で反射して液面MAに照射された後、反射光がプリズムミラー17および可動ミラー16で反射して受光装置15のセンサ19に受光されるように構成されている。
具体的には、液面形態判定装置12の各構成要素は、シリコン融液Mの液面MAが略平面である場合に、出射装置14から出射されたレーザ光Lが受光装置15で受光されるように位置調整されている。液面形態判定装置12の各構成要素がこのように調整されている場合、シリコン融液Mの液面MAが、略平面状でない場合は、レーザ光Lの反射光の方向が変化して受光装置15はレーザ光Lを受光しない。略平面状でない形態は、例えば、波のように起伏が生じている形態や、シリコン単結晶Sの縁部と液面MAとの界面に形成されるメニスカスMeが生じている形態を含む。
【0031】
なお、メニスカスMeとは、シリコン単結晶Sの縁部とシリコン融液Mとの界面において表面張力により生じる湾曲した液面形態である。
また、シリコン融液Mの液面MAの傾斜が通常の傾斜でない場合、例えば、シリコン融液Mの液面MAが水平面であることが通常であり正常である場合に、液面MAが傾斜面になった場合もレーザ光Lの反射光の方向が変化して受光装置15はレーザ光Lを受光しない。
【0032】
図1に示されるように、制御装置20は、出射装置14、可動ミラー16などを制御する装置制御部21と、判定部22とを有する。
装置制御部21は、単位時間当たり所定回数(例えば、1000パルス/秒)のパルス状のレーザ光Lを出射させるよう、出射装置14を制御する機能を有する。
判定部22は、受光装置15と電気的に接続されており、例えば、単位時間当たりに受光装置15がレーザ光L(反射光)を受光する受光量を監視する機能を有する。
上記は、パルス状のレーザ光Lを用いた場合であるが、連続光のレーザ光Lを用いても構わない。また、連続光のレーザ光Lを用いる場合に、出射装置14あるいは受光装置15に高速で開閉するシャッター(例えば、1000回の開閉/秒)を設置して、受光装置15で受光されるレーザ光Lを、見かけ上、パルス状にしても構わない。
【0033】
判定部22は、監視されるレーザ光Lの単位時間当たりの受光量の低下に基づいてシリコン融液Mの液面MAの形態が正常か否かを判定する機能を有する。判定部22は、受光量が設定された閾値(例えば、レーザ光の出射量の20%)より低くなった場合に、シリコン融液Mの液面MAの形態が正常でないと判定し、表示装置23に、例えば、「受光量低下」などの文字情報を表示させて、作業者に警報を発する。
なお、受光量の閾値は、レーザ光の出射量を基準にして設定され、必ずレーザ光の出射量よりも小さな値に設定されるが、受光装置15が受光する光の中にはノイズも含まれるため、閾値をレーザ光の出射量の0%とすることは好ましくない。
【0034】
一方、パルス状のレーザ光L、あるいは、見かけ上のパルス状のレーザ光Lを用いる場合、受光したレーザ光Lの単位時間当たりの受光頻度(パルスのカウント数)を受光量としても構わない。
例えば、出射頻度が1000パルス/秒のパルス状のレーザ光Lを用いた場合、受光頻度が200回/秒より低くなった場合に「受光量低下」と表示するように設定することができる。
【0035】
本実施形態の液面形態判定装置12は、シリコン単結晶Sの縁部とシリコン融液Mとの界面に生じるメニスカスMeを検出するように構成されている。具体的には、液面形態判定装置12は、シリコン単結晶Sの直径が、作業者によって設定された設定値より大きくなった場合に、メニスカスMeを検知するように、出射装置14から出射したレーザ光Lがシリコン融液Mの液面MAに照射される位置が調整されている。
すなわち、本実施形態の液面形態判定装置12は、レーザ光Lが湾曲したメニスカスMeに照射されることにより、レーザ光Lの受光量が低下するのを利用して、シリコン単結晶Sの直径を監視する。
【0036】
図4に示されるように、作業者は、所望の直径とされたシリコン単結晶Sの径方向外側であって、所望の直径とされたシリコン単結晶Sの外周面との距離が、例えば10mmの位置にレーザ光Lが照射されるように可動ミラー16を調整する。
本実施形態の引き上げ装置1は、シリコン単結晶Sの直径が300mm(半径150mm)となるように調整されている。これに対応して、液面形態判定装置12を、レーザ光Lがシリコン単結晶Sの中心軸Aから160mm離れた液面MA上で反射するように位置調整する。シリコン単結晶Sの直径は、300mmに限らず、適宜設定を変更することができる。
【0037】
このように、引き上げ装置1および液面形態判定装置12を設定すると、図4に示されるように、シリコン単結晶Sの直径が正しく300mmであると、出射装置14から出射されたレーザ光Lは、略平面状の液面MAで反射し、受光装置15によって受光される。すなわち、レーザ光Lは、メニスカスMeの影響を受けることなく、平面状の液面MAで反射する。メニスカスMeの径方向の幅は、5mmとする。
【0038】
一方で、何らかの原因で引き上げ中にシリコン単結晶Sの直径が変動し、310mmより大きくなる(シリコン単結晶Sの直径が10mm大きくなる)と、図5に示されるように、シリコン単結晶Sの縁部とシリコン融液Mとの界面に生じるメニスカスMeが径方向外側に移動し、レーザ光LはメニスカスMeと干渉する。
これにより、レーザ光Lは通常とは異なる方向に反射し、受光装置15によって受光されなくなり、判定部22によって監視されるレーザ光Lの受光量が低下する。
【0039】
次に、具体的なシリコン単結晶Sの育成方法について説明する。
CZ法によるシリコン単結晶Sの引き上げは、ルツボ3内に投入されたシリコンを加熱して融液状態とし、シリコン融液Mに種結晶SCを着床させ、引き上げ軸7により種結晶SCを上方に引き上げることにより行われる。
【0040】
図6に示すように、本実施形態の単結晶育成方法は、レーザ光Lを照射および受光する照射受光工程S1と、液面MAの形態を判定する判定工程S2と、表示工程S3と、を有する。
【0041】
照射受光工程S1は、出射装置14から出射したレーザ光Lをミラー16,17を介してシリコン融液Mの液面MAに対して単位時間当たりに所定回数照射するとともに、液面MAで反射した反射光を受光する工程である。
判定工程S2は、照射受光工程S1における単位時間当たりの受光量に基づいて、シリコン融液Mの形態を判定する工程である。
表示工程S3では、判定部22は、受光量が設定された閾値より低くなった場合に、表示装置23に「受光量低下」と表示する。本実施形態の液面形態判定装置12は、シリコン単結晶Sの縁部とシリコン融液Mとの界面に生じるメニスカスMeを検出するように構成されているため、作業者は、シリコン単結晶Sの直径が所望の直径よりも大きくなっていることを把握することができる。
【0042】
図7は、図示しない光学式の直径測定装置によって測定されたシリコン単結晶Sの直径と、レーザ光Lの受光頻度(受光量)との関係を示すグラフである。図7において、横軸は、シリコン単結晶Sの直径の設定値(例えば、310mm)に対する相対値であり、縦軸は受光装置15の受光回数である。レーザ光Lは、1000パルス/秒のパルス状であり、受光回数は、5秒間に受光装置15がレーザ光Lを受光した回数である。従って、5秒間の出射回数は、5000パルスである。
【0043】
図7からわかるように、シリコン単結晶Sの直径が設定値(310mm)よりも小さい場合は、受光頻度が高く、設定値の前後で受光回数が1000回以下となり、受光頻度が20%以下となっていることがわかる。この結果から、液面形態判定装置12を用いてシリコン単結晶Sの直径が所定の値を超えたことを判定することができることがわかる。
【0044】
上記実施形態によれば、液面形態判定装置12を用いて、シリコン融液Mの液面MAが略平面状ではない形態となったことを判定することによって、シリコン単結晶Sの直径が所定の値を超えたことを判定することができる。
また、受光量を判定材料とすることによって、シリコン単結晶Sの直径の増加を即座に把握することができる。
【0045】
また、レーザ光Lをチャンバ2内に導くミラーとして昇降可能な可動ミラー16とプリズムミラー17を採用したことによって、レーザ光Lの光路の径方向の位置を自在に調整することができる。これにより、様々直径のシリコン単結晶Sに対応した液面形態判定装置12とすることができる。
【0046】
〔別の実施形態〕
上記実施形態では、液面形態判定装置12を用いて、シリコン単結晶Sの直径を監視しているが、これに限ることはない。例えば、液面形態判定装置12を用いて、ルツボ3の回転に伴う液面MAの揺らぎを監視する構成としてもよい。
このような構成によれば、ルツボ3の回転不良などを即座に把握することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
例えば、上記実施形態では、引き上げ装置1を用いてシリコン単結晶Sを製造したが、これに限ることはない。例えば、ルツボにゲルマニウム融液を収容してゲルマニウム単結晶を製造してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…引き上げ装置、2…チャンバ、3…ルツボ、4…ヒーター、5…支持軸、6…断熱材、7…引き上げ軸、8…熱遮蔽体、10…ガス導入口、11…排気口、12…液面形態判定装置、13…出射受光ユニット、14…出射装置(光源)、15…受光装置、16…可動ミラー、17…プリズムミラー、18…レンズ、19…センサ、20…制御装置、21…装置制御部、22…監視部、23…表示装置、A…中心軸、L…レーザ光、M…シリコン融液、MA…液面、Me…メニスカス、S…シリコン単結晶、SC…種結晶。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7