(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】表面性状測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/20 20060101AFI20230502BHJP
G01B 5/20 20060101ALI20230502BHJP
G01B 5/28 20060101ALI20230502BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20230502BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20230502BHJP
G01B 21/30 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G01B21/20 C
G01B5/20 C
G01B5/28
G01B11/24 A
G01B11/30 102Z
G01B21/30 102
(21)【出願番号】P 2017170153
(22)【出願日】2017-09-05
【審査請求日】2020-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏太郎
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】中塚 直樹
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-201864(JP,A)
【文献】特開2017-21023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/20
G01B 11/24
G01B 11/30
G01B 21/30
G01B 5/20
G01B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触式あるいは非接触式のプローブで測定対象物表面を走査して測定対象物表面の形状を測定する表面性状測定装置の制御方法であって、
当該表面性状測定装置は、
予め設定された予備測定経路に沿って前記プローブで前記測定対象物表面を走査していき、
前記プローブが前記測定対象物表面を検出できないことを起因とする検出エラーが発せられた場合、前記検出エラーが発生する直前の測定値を仮エッジ点として仮登録し、
引き続き前記予備測定経路に沿って所定距離走査する間、前記検出エラーが継続したとき、前記仮登録した仮エッジ点をエッジ点とし、
前記プローブが前記測定対象物表面を検出できないことを起因とする検出エラーは、前記測定対象物表面が前記プローブ
の測定レンジから外れてオーバーレンジになったことを起因とする検出エラーである
ことを特徴とする表面性状測定装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定装置の制御方法において、
前記予備測定経路は、マシン座標系において、仮想的にセットされた仮想の測定対象物に対し、仮想測定対象面から仮想エッジを越えて、そのまま直進するように設定されている
ことを特徴とする表面性状測定装置の制御方法。
【請求項3】
接触式あるいは非接触式のプローブで測定対象物表面を走査して測定対象物表面の形状を測定する表面性状測定装置の制御方法であって、
予備測定経路を測定対象物の外側から測定対象物に向かうように予め設定しておき、
当該表面性状測定装置は、前記予備測定経路に沿って前記プローブを移動させ、前記測定対象物の外側で前記予備測定経路に沿ってプローブが走査しているときには、前記プローブが前記測定対象物表面を検出できないことを起因とする検出エラーとなり、前記プローブが前記測定対象物のエッジに到達したときに測定値を取得し、前記検出エラーで測定点が取得できない状態から測定値が得られるように変化した点をエッジ点とし、
前記プローブが前記測定対象物表面を検出できないことを起因とする検出エラーは、前記測定対象物表面が前記プローブ
の測定レンジから外れてオーバーレンジの状態にあることを起因とする検出エラーである
ことを特徴とする表面性状測定装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の表面性状測定装置の制御方法において、
前記プローブは、クロマチックポイントセンサである
ことを特徴とする表面性状測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面性状測定装置の制御方法に関する。例えば測定対象物表面を走査することでワーク(測定対象物)の形状、表面粗さなどを測定する表面性状測定装置の制御方法に関する。より具体的には、表面性状測定装置によるエッジ検出機能に関し、さらに、エッジ検出機能に基づくワーク同定機能(ワーク座標系設定機能)に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを検出するセンサとして、例えば、接触式のプローブがある。これらセンサは、ワークの法線方向に沿って測定対象物表面にアプローチし、法線上におけるワーク表面の位置(座標)を検出する。
これら、ワークを"点"で検出するセンサ(プローブ)を本明細書ではポイントセンサと称することにする。ポイントセンサでワーク表面を走査すれば、走査線上におけるワーク表面の形状、粗さ、うねりなどが詳細にわかる。
【0003】
形状測定装置でワークを測定するにあたっては、センサを測定開始点にセッティングしなければならない。オペレータが目視と手動でセンサを測定開始位置にセッティングをすることもあるが、オペレータごと、測定回ごと、に測定開始位置がばらつくと問題である。そこで、測定開始点への位置合わせ方法としていくつかの方法が採用されている。
【0004】
1つの方法は、形状測定装置に画像センサを併設しておくことである。
この場合、画像センサでワーク全体を画像測定してワーク画像を予備的に取得しておく。画像認識技術によってワーク形状を認識し、ワーク座標系を自動設定する。さらに、ワーク画像の中で測定開始点を自動認識し、測定開始点にポイントセンサを移動させて測定を開始する。これで、オペレータが意図した通りの測定が実行され、所望の測定結果が得られる。
ただし、画像センサや画像認識機能を形状測定装置に搭載するとなると、多大なコストを要するという問題がある。
【0005】
二つ目の方法は、形状測定装置がポイントセンサによってワークを予備的に測定し、ワーク座標系を自動設定する方法である(例えば、特許文献1、2)。
例えば、
図1において、ワークWの表面性状(表面の粗さやうねり)を倣い測定で測定したいとする。倣い測定で走査すべき測定ラインMLは測定パートプログラムに予め組み込まれて設定されているとする。この場合、測定パートプログラム上では、例えばワークの設計CADデータを基にして、ワーク座標系が規定され、このワーク座標系上で測定ラインMLが指定される。
図1において、手前の第1エッジEd1をワーク座標系のXw軸とし、第1エッジEd1(Xw軸)に交差する第2エッジEd2をYw軸とする。Xw軸とYw軸との交点をワーク座標系の原点Owとする。測定開始点、測定ラインML(あるいはポイントセンサの進行方向)、測定終了点などは、このワーク座標系上で設定されている。(
図1中では表現の都合上、エッジと座標軸とを少しずらして描いている。)
【0006】
実際の測定作業にあたって、ワークWを形状測定装置にセットするたびにオペレータが目視と手動でワーク座標系を設定することもできるが、形状測定装置がワークのエッジを自動認識してワーク座標系を自動設定する。例えば、特許文献1、2では、エッジ部分を予備的に検出するため、
図2に例示するようにエッジに対して交差する方向にポイントセンサを何度か走査する。
【0007】
図2の例では、手前側の第1エッジEd1に交差する向きに4回(PL11~PL14)、さらに、第2エッジに交差する向きに4回(PL15~PL18)、ポイントセンサを走査する。予備測定ラインPL11-PL14を走査するとき、急激に測定値が変化する点がある。これら変化点をCP11~CP14とすると、変化点CP11から変化点CP14を結ぶ線によって一本の直線SL1が規定される。
同じように、予備測定ラインPL15-PL18を走査するとき、急激に測定値が変化する点がある。これら変化点をCP15~CP18とすると、変化点CP15から変化点CP18を結ぶ線によって一本の直線SL2が規定される。
【0008】
直線SL1と直線SL2との交点を算出すると、ワーク座標系の原点Owが求まる。そして、直線SL1がワーク座標系のXw軸となり、直線SL2がワーク座標系のYw軸となる。Xw軸とYw軸とに直交する方向がZw軸である。(
図2中では表現の都合上、エッジと座標軸とを少しずらして描いている。)
【0009】
このようにして形状測定装置が自動的にワークを予備測定してワーク座標系を設定することにより、測定パートプログラムで指定した測定箇所(例えば測定ラインML)を測定することができるようになっている。
【0010】
なお、特許文献1、2のようなプローブでもエッジを検出するのは簡単ではない。"検出値"(測定値)に対して複数のステップからなる形状解析を行うことでエッジ等の特徴的部位を検出できる(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許4041372号
【文献】特許4359485号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ポイントセンサとして、例えば、クロマチックポイントセンサ(CPS)がある。(クロマチックポイントセンサは共焦点(コンフォーカル)顕微鏡と言われることもある。)
CPSは、測定光の焦点合わせを利用するので光の波長オーダーの極めて高い分解能を有している。また、非接触式センサであるから測定圧はゼロなのであり、測定対象物の剛性は全く問わない。
【0013】
CPSは多くの利点を有する優れたポイントセンサではあるが、測定軸が一軸のみであり、また、測定レンジが極めて短いという問題がある。例えば、CPSでエッジ検出をしようとすると、エッジを超えた瞬間にオーバーレンジしてしまって検出エラーになってしまう。そのため、CPSを搭載した形状測定装置ではワークのエッジを自動検出することができず、単純にはワーク座標系の自動設定ができないということになる。オペレータとしては、例えば、治具を使ってワークを毎回同じ位置にセットするか、あるいは、目視と手動でワーク座標系を設定するか、のどちらかしか方策がなかった。
しかし、非常に手間が掛かる上に、測定結果がばらついてしまうという問題が生じる。
【0014】
CPSに限らず、接触式でも非接触式でも、測定軸が一軸のみで、測定レンジが極短いプローブの場合、エッジ検出ができないという問題が共通する。
あるいは、仮に測定レンジが十分に長いとしても、非接触式センサの場合、光学式、静電容量式、磁気式など種々の検出方式がある。各検出方式にはそれぞれ特長があり、検出できない材質や表面性状があるため、ワークのエッジ部分そのものを検出できず、エラーになってしまうこともある。
【0015】
本発明の目的は、エッジ部分の検出ができないようなプローブを搭載した表面性状測定装置であっても自動でエッジ検出を行ってワーク座標系を自動設定できる表面性状測定装置の制御方法を提供することにある。
これにより、座標系設定時のオペレータごとのばらつきを低減するとともに、座標系設定の作業性改善を図る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表面性状測定装置の制御方法は、
接触式あるいは非接触式のプローブで測定対象物表面を走査して測定対象物表面の形状を測定する表面性状測定装置の制御方法であって、
予め設定された予備測定経路に沿って前記プローブで前記測定対象物表面を走査していき、
前記プローブの検出エラーが発せられた場合、前記検出エラーが発生する直前の測定値を仮エッジ点として仮登録し、
引き続き前記予備測定経路に沿って所定距離走査する間、前記検出エラーが継続したとき、前記仮登録した仮エッジ点をエッジ点とする
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態では、
前記予備測定経路は、マシン座標系において、仮想的にセットされた仮想の測定対象物に対し、仮想測定対象面から仮想エッジを越えて、そのまま直進するように設定されている
ことが好ましい。
【0018】
本発明の表面性状測定装置の制御方法は、
接触式あるいは非接触式のプローブで測定対象物表面を走査して測定対象物表面の形状を測定する表面性状測定装置の制御方法であって、
予備測定経路を測定対象物の外側から測定対象物に向かうように予め設定しておき、
前記測定対象物の外側で前記予備測定経路に沿ってプローブが走査しているときには検出エラーとなり、
前記プローブが前記測定対象物のエッジに到達したときに測定値を取得し、
前記検出エラーで測定点が取得できない状態から測定値が得られるように変化した点をエッジ点とする
ことを特徴とする。
【0019】
本発明の一実施形態では、
前記プローブは、クロマチックポイントセンサである
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】測定対象物を倣い測定する様子を模式的に示す図である。
【
図2】測定対象物を予備測定する様子を模式的に示す図である。
【
図4】クロマチックポイントセンサで測定対象物表面を走査する様子を模式的に示す図である。
【
図5】クロマチックポイントセンサで測定対象物表面を走査する様子を模式的に示す図である。
【
図6】ホストコンピュータの機能ブロック図である。
【
図7】原点設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】予備測定経路の設定を説明するための図である。
【
図9】予備測定経路の設定を説明するための図である。
【
図10】予備測定経路の設定を説明するための図である。
【
図11】測定対象物を移動テーブルにセットした状態を例示する図である。
【
図12】原点設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図13】原点設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図14】予備測定の動作を説明するための模式図である。
【
図15】原点設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図18】変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る表面性状測定装置100を示す図である。
表面性状測定装置100は、三次元測定機200と、三次元測定機200を駆動制御すると共に必要なデータ処理を実行する制御コンピュータユニット300と、を具備する。
【0022】
三次元測定機200は、概略、次のように構成されている。
架台210上に測定対象物であるワークWを載置する移動テーブル220が装着されている。
移動テーブル220は、図示しないY軸駆動機構によってY軸方向に駆動される。架台210の後端部には上方に延びるフレーム230が固定されている。フレーム230の上部から前面に張り出したカバー240の内部には図示しないX軸駆動機構およびZ軸駆動機構が配設されている。
これらX軸駆動機構およびZ軸駆動機構によってクロマチックポイントセンサ(CPS)260が支持されている。
Z軸駆動機構は、Z軸コラムと、Z軸コラム内に昇降自在に設けられたZスピンドル250と、を有する。CPS260は、移動テーブル220を上部から臨むように、Zスピンドル250の下端に設けられている。
【0023】
測定対象物としてのワークWは、移動テーブル220の上に載置される。
【0024】
フレーム230に内蔵されたX軸駆動機構およびZ軸駆動機構と、移動テーブル220のY軸駆動機構と、によって移動機構が構成されている。移動機構の構成としては、CPS260とワークWとを三次元的に相対移動させることができればよく、上記構成に限られない。例えば、テーブルの方を固定しておいてCPS260を三次元移動可能に支持してもよいし、その逆でもよい。
【0025】
CPS260は、白色光(測定光)を測定対象物に照射し、その反射光の軸上色収差を利用して高精度、高速度にフォーカス合わせをするセンサである。CPSの場合、光軸上に検出対象物がないと検出できないのであるから、光軸が測定軸線(検出軸線)ということになる。CPS260のトラッキングレンジは、長いもので6mm(±3mm)程度、短いものでは0.25mm(±0.125mm)程度である。
【0026】
例えば
図4に例示するようにCPS260でワーク表面を走査する。このとき、フォーカスが合うように移動機構(Z軸駆動機構)でCPS260の高さを調整する。このときのCPS260の高さ位置の変化がワークWの表面形状に相当することになる(
図5参照)。
【0027】
制御コンピュータユニット300は、ホストコンピュータ400と、入出力手段と、を有する。入出力手段としては、ディスプレイ311と、キーボード312と、マウス313と、プリンタ314と、が設けられている。なお、ディスプレイ311は、タッチパネルであってもよい。
【0028】
図6は、ホストコンピュータ400の機能ブロック図である。
ホストコンピュータ400は、CPUとメモリとを有するいわゆるコンピュータである。
ホストコンピュータ400は、制御プログラムとしての測定パートプログラム410の指示に従って三次元測定機200を駆動制御する。測定パートプログラム410には、例えば測定対象物の設計CADデータに基づいて、ワークのどこをどの順番で走査して測定するかが測定プログラムとして設定されている。このときはワークが位置指定の基準になるから、測定プログラムはワーク座標系で指定されている。また、ワーク座標系を自動設定するための予備測定プログラム411も設定されているが、この点はフローチャートを参照しながら後述する。
【0029】
ホストコンピュータ400は、さらに、駆動制御部420と、形状解析部430と、を有する。
駆動制御部420は、三次元測定機200の移動機構を駆動制御する移動機構制御部421と、CPS260の合焦判定を行う合焦判定部422と、を備える。移動機構制御部421は、測定パートプログラム410に予め設定された移動指令に従って移動機構に移動指令を与える。
【0030】
さらに、移動機構制御部421は、合焦判定部422の合焦判定に応じて移動機構(特にZ軸駆動機構)を微調整し、CPS260とワーク表面との距離が焦点距離になるようにする。合焦判定部422は、合焦判定に必要な演算処理部(例えばS字信号(フォーカス信号)算出部)や合焦判定閾値を有する。さらに、合焦判定部422には、焦点合わせに必要な光量が得られているか否かを判定するための光量閾値が設定されている。合焦判定部422は、測定光が光量閾値に達しない場合には、"検出エラー"と判断する。
【0031】
形状解析部430は、三次元測定機200で取得された測定データを処理してワークWの形状解析等の処理を実行する。
【0032】
(動作説明)
図7、
図12、
図13、
図15のフローチャートを参照しながら、原点設定方法を説明する。
自動原点設定は、予備測定プログラム411の実行によってなされる。
予備測定プログラム411によって
図12、
図13、
図15のフローチャートのステップが実行されるのであるが、その前に、オペレータは測定パートプログラム410に予め予備測定経路を設定しておく(
図7のST110)。
【0033】
例えば、
図8中の破線で例示するような平板状のワークWを想定してみる。
ワークWの設計CADデータを基にして、ワークWを移動テーブル220のほぼ中央に載置したと仮定したときに測定対象面Swが移動テーブル220上のどの位置にくるかはおおよそ決まる。ワークWを仮想的に移動テーブル220上に載置したときのワークWを"仮想測定対象物IW"とし、"仮想測定対象物"の測定対象面Swを"仮想測定対象面ISw"と称することにする。仮想測定対象面のエッジを"仮想エッジIEd"と称することにする。
【0034】
オペレータは、マシン座標系において、仮想測定対象物IWの仮想エッジIEdを跨ぐように複数本の予備測定経路PLを設定する。
ここでは、手前側の第1仮想エッジIEd1を跨ぐ方向に4本の予備測定経路PLを設定し、さらに、第1仮想エッジIEd1に交差する第2仮想エッジIEd2を跨ぐ方向に3本の予備測定経路PLを設定するとする。
【0035】
予備測定経路PLの設定にあたっては、仮想測定対象面ISw上の点から仮想エッジIEdに向かって進行する経路を設定する。そして、仮想測定対象面ISwの端にきて仮想エッジIEdを越えても、
図9に例示するように、そのまま直進するように予備測定経路PLを設定しておけばよい。言い換えると、
図10のように仮想エッジのところで測定対象物の形状に合わせて折れ曲がるような経路を設定する必要はない。
【0036】
予備測定経路の設定ができたら(ST110)、
図11のように、実際にワークWを移動テーブル220上にセットする(ST120)。
このとき、当然のことながら、実際のワークWは"仮想測定対象物IW"の位置からわずかにずれるし、わずかに回転もしているだろうが、予備測定経路PLがワークWのエッジEdを横切っていれば問題はない。この状態でオペレータは自動原点設定モードを選択し、表面性状測定装置100は予備測定プログラム411の実行によって自動原点設定を行う(ST200)。
【0037】
図12、
図13、
図15のフローチャートを参照しながら自動原点設定の動作を説明する。
まずST210において、予備測定経路PLを読み出す。設定された予備測定経路PLは複数本ある。ここでは、1つずつ順番に読み出すとする。
【0038】
次に、予備測定経路PL上のエッジ点の座標値を取得する(ST220)。
エッジ点座標の取得動作を
図13、
図15のフローチャートを参照しながら説明する。
【0039】
表面性状測定装置100は、CPS260を予備測定経路PLの開始点にアプローチし、開始点から予備測定経路PLに沿った走査を開始する。
光量が十分であって検出エラーが無ければ(ST222:NO)、通常の測定動作と同じである。フォーカス信号に基づいてフォーカスが合うようにCPS260の高さ合わせをし(ST223)、フォーカスが合ったところで測定値(xm、ym、zm)をサンプリングする(ST224)。例えば、
図14において点PP1から点PP2まではワークの測定対象面Swを通常通り倣い測定していることに等しい。
【0040】
ここで、エッジ位置である点PP2をCPS260が通過した瞬間、CPS260に反射光が戻ってこなくなる。すると、光量不足のため、検出エラーが発生する(ST222:YES)。検出エラーが発生した場合には(ST222:YES)、
図15のフローチャートに移行して、直前のサンプリング値(xm、ym、zm)を仮エッジ点として登録する(ST225)。
【0041】
引き続き、検出エラーが発生した状態を許容しながら予備測定経路PLの残りの部分を走査する(ST226)。
ここで、検出エラーが発生した状態のままで予備測定経路PLに沿って"走査"する方法として一例を挙げておく。例えば、光量不足で検出エラーが発生している状態のときには、設定された予備測定経路上に仮想的に焦点が合うようにCPS260の高さ位置を合わせるとする(
図14参照)。この状態でサンプリングピッチずつ予備測定経路に沿って走査をしていく。(もちろん、合焦しないので"測定値"の取得はなく、検出エラー信号が出力されるだけである。)
【0042】
予備測定経路PLの残りの部分を走査しても検出エラーの発生が続き(ST227:YES)、残り経路で合焦せず測定値がサンプリングできない場合、点PP2以降ではCPS260がエッジを通過してしまったということである。したがって、ST225で仮登録していた仮エッジ点が予備測定経路PL上のエッジの座標ということになる。仮エッジ点として登録していた座標値をエッジ点とする(ST228)。
【0043】
これで予備測定経路PL上のエッジ点を取得できたので、ST221からST228を設定されたすべての予備測定経路PLに対して行い(
図12のST230)、すべての予備測定経路PL上のエッジ点を取得する(
図12のST220)。エッジ点が取得できれば、あとは形状解析部430で形状解析を行う(ST240)。これにより、Xw軸、Yw軸およびZw軸が求まり、座標軸の交点をワーク座標系の原点に設定し、ワーク座標系が設定される(ST250)。
【0044】
このように、本実施形態によれば、トラッキングレンジが極めて短いようなセンサプローブを使用する場合であっても自動でワーク座標系およびワーク座標系の原点設定が可能になる。
【0045】
(補足説明)
ここで、検出エラーがあった場合に(
図13のST222:YES)、その時点で"エッジ点を取得できた"ことにしてもよいかもしれないが、本実施形態では
図15のST225からST228において、検出エラーが発生している場合であっても予備測定経路の残りの部分も走査することとしている。そして、残り経路でもずっと光量不足の検出エラーが継続した場合に(ST227:YES)、仮登録していた仮エッジ点をエッジ点として本登録することとしている(ST228)。
【0046】
これは、エッジではない穴などの縁をワークのエッジと間違えないためである。例えば、
図16のように外縁付近に孔12が穿設されたようなワークWも考えられる。
予備測定経路PLを設定する際にこのような孔12を避けることを考えるかもしれないが、実際にワークWを移動テーブル220上にセットする(
図11)際には、実際のワークは"仮想測定対象物"の位置からわずかにずれるし、わずかに回転もしているだろうから、予備測定経路上に実際に孔12が来てしまうことは避けられない。そこで、検出エラーがあったあとでも(ST222:YES)、検出エラーを許容しながら予備測定経路PLを最後まで走査し、最後の検出エラーの直前のサンプリング値をエッジ点として取得することとした。
【0047】
(変形例1)
第1実施形態において、予備測定経路PLは開始点と終点とを繋ぐ線として設定していた。
ここで、変形例1としては、予備測定経路PLを、開始点PPsの座標と、方向ベクトルVdと、で設定するようにしてもよい(
図17)。この場合、エッジ検出用の長さ閾値Ltを設定しておくとよい。すなわち、検出エラーがあったあと(
図13のST222:YES)、前記長さ閾値Ltの距離だけスキャンを継続しても検出エラーが継続する場合に、仮登録した仮エッジ点をエッジ点として本登録するようにする。
【0048】
図18のフローチャートを参照されたい。
エッジあるいは孔の縁をCPS260が通過すると、光量不足で検出エラー(
図13のST222)となり、検出エラーをトリガーとして直前のサンプリング値を仮エッジ点として登録する(
図18のST325)。
引き続き、検出エラーが発生した状態を許容し、CPS260を予備測定経路PLの方向ベクトルVdに従って1サンプリングピッチ分移動させる(ST326)。方向ベクトルVdに従って所定の長さ閾値Ltの距離分CPS260を移動させても検出エラーが継続する場合には(ST327:YES)、仮エッジ点として登録していた座標値をエッジ点とすればよい(ST319)。
【0049】
一方、途中で検出エラーが消えて(ST327:NO)、フォーカス信号でフォーカス合わせができる場合、前回のエラーはエッジではなかった(例えば孔だった)ということであるから、フローを先頭(
図13のST221)に戻って繰り返す。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
ポイントセンサとしては、CPSを例示したが、例えば、接触式のスタイラスであってもよい。
測定軸が一軸のみであって、かつ、トラッキングレンジが極めて短いセンサ(プローブ)(例えば±3mm程度や、あるいは、±0.3mm程度など)であれば本発明の課題を共通に有しているし、本発明により有効に課題を解決できる。
もちろん、本発明はプローブセンサを限定せず、エッジ検出がうまくできないという課題があれば、広く適用できるものである。
【0051】
上記の説明では、測定点を取得できる状態から、検出エラーが発生して(
図13のST222:YES)測定点が取得できなくなるように変化した点をエッジ点(
図15のST225あるいは
図18のST352)とする例を説明した。
逆に、検出エラーで測定点が取得できない状態から測定データが得られるように変化した点をエッジ点として認識するようにすることもできる。
この場合、予備測定経路PLをワークの外側からワークに向かうように設定しておく。そして、ワークの外側で予備測定経路PLに沿ってプローブ(例えばCPS260)が走査しているときには検出エラーとなるが、ワークのエッジに到達したとき、初めて測定値を得る。したがって、検出エラーで測定点が取得できない状態から測定データが得られるように変化した点をエッジ点とすればよい。
【符号の説明】
【0052】
100…表面性状測定装置、
200…三次元測定機、
210…架台、220…移動テーブル、230…フレーム、240…カバー、250…Zスピンドル、260…CPS(クロマチックポイントセンサ)、
300…制御コンピュータユニット、
400…ホストコンピュータ、
410…測定パートプログラム、411…予備測定プログラム、
420…駆動制御部、421…移動機構制御部、422…合焦判定部、
430…形状解析部。