IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千葉 正毅の特許一覧 ▶ 和氣 美紀夫の特許一覧 ▶ 共立マテリアル株式会社の特許一覧 ▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

特許7272801誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法
<>
  • 特許-誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法 図1
  • 特許-誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法 図2
  • 特許-誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法 図3
  • 特許-誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20230502BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20230502BHJP
   C01B 32/174 20170101ALI20230502BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
C01B32/168
C01B32/174
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019007012
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020120423
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】514285911
【氏名又は名称】千葉 正毅
(73)【特許権者】
【識別番号】510244754
【氏名又は名称】和氣 美紀夫
(73)【特許権者】
【識別番号】000162205
【氏名又は名称】共立マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正毅
(72)【発明者】
【氏名】和氣 美紀夫
(72)【発明者】
【氏名】大屋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
(72)【発明者】
【氏名】上島 貢
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146254(WO,A1)
【文献】特許第4999031(JP,B1)
【文献】特許第4383505(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/029656(WO,A1)
【文献】特開2015-200501(JP,A)
【文献】特開2016-069456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00 - 1/12
H02N 3/00 -99/00
C01B 32/168
C01B 32/174
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電エラストマー層と
前記誘電エラストマー層を挟む一対の電極層と、
を備える、誘電エラストマートランスデューサーであって、
前記電極層は、カーボンナノチューブ由来の粉砕炭素粒子を含み、
前記粉砕炭素粒子は、動的光散乱法によって計測された粒度が0.5μm以上1.5μm以下であり、且つレーザー散乱法によって計測された粒度が15μm以上70μm以下であることを特徴とする、誘電エラストマートランスデューサー。
【請求項2】
前記粉砕炭素粒子は、動的光散乱法によって計測された粒度とレーザー散乱法によって計測された粒度との差が、15μm以上である、請求項に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
【請求項3】
前記粉砕炭素粒子は、レーザー散乱法によって計測された粒度と動的光散乱法によって計測された粒度との比が、15以上である、請求項に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
【請求項4】
誘電エラストマー層と
前記誘電エラストマー層を挟む一対の電極層と、
を備える、誘電エラストマートランスデューサーの製造方法であって、
カーボンナノチューブを粉砕することにより粉砕炭素粒子を生成する工程と、
前記粉砕炭素粒子を用いて形成された前記一対の電極層を前記誘電エラストマー層上に配置する工程と、を備え
前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、動的光散乱法によって計測された粒度が0.5μm以上1.5μm以下であり、且つレーザー散乱法によって計測された粒度が15μm以上70μm以下である前記粉砕炭素粒子を生成することを特徴とする、誘電エラストマートランスデューサーの製造方法。
【請求項5】
前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、動的光散乱法によって計測された粒度とレーザー散乱法によって計測された粒度との差が、15μm以上である前記粉砕炭素粒子を生成する、請求項に記載の誘電エラストマートランスデューサーの製造方法。
【請求項6】
前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、レーザー散乱法によって計測された粒度と動的光散乱法によって計測された粒度との比が、15以上である前記粉砕炭素粒子を生成する、請求項に記載の誘電エラストマートランスデューサーの製造方法。
【請求項7】
誘電エラストマー層と
前記誘電エラストマー層を挟む一対の電極層と、
を備える、誘電エラストマートランスデューサーの製造方法であって、
カーボンナノチューブを粉砕することにより粉砕炭素粒子を生成する工程と、
前記粉砕炭素粒子を用いて形成された前記一対の電極層を前記誘電エラストマー層上に配置する工程と、を備え、
前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、
カーボンナノチューブを溶媒に混ぜて分散させカーボンナノチューブの第1分散液を得た後に、前記溶媒を除去することにより粉末状のカーボンナノチューブを得る前処理と、
前記粉末状のカーボンナノチューブを粉砕し、粉砕したカーボンナノチューブを溶媒に混ぜてカーボンナノチューブの第2分散液を得る粉砕処理と、
前記カーボンナノチューブの第2分散液を放置し、液面近くの部位を抽出する抽出処理と、を行うことを特徴とする、誘電エラストマートランスデューサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電エラストマー層と当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層とを有する誘電エラストマートランスデューサーは、駆動用途、発電用途、センサ用途等の様々な分野での活用が期待されている。特許文献1には、従来の誘電エラストマートランスデューサーの一例が開示されている。同文献では、電極層の構成材料として、銀ナノワイヤ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィラー等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-34923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘電エラストマートランスデューサーは、誘電エラストマー層の顕著な伸縮性を前提として用いられる場合が一般的である。このため、電極層としても、誘電エラストマー層に十分に追従可能な程度の伸縮性を有することが求められる。一方、電極層には、電荷の付与(電圧の印加)がなされるため、伸縮によって絶縁状態となることは避ける必要がある。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、伸縮性および導電性の両立を図ることが可能な誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される誘電エラストマートランスデューサーは、誘電エラストマー層と前記誘電エラストマー層を挟む一対の電極層と、を備える、誘電エラストマートランスデューサーであって、前記電極層は、カーボンナノチューブ由来の粉砕炭素粒子を含むことを特徴とする、誘電エラストマートランスデューサーである。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子は、動的光散乱法によって計測された粒度が0.5μm以上1.5μm以下であり、且つレーザー散乱法によって計測された粒度が15μm以上70μm以下である。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子は、動的光散乱法によって計測された粒度とレーザー散乱法によって計測された粒度との差が、15μm以上である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子は、レーザー散乱法によって計測された粒度と動的光散乱法によって計測された粒度との比が、15以上である。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供される誘電エラストマートランスデューサーの製造方法は、誘電エラストマー層と前記誘電エラストマー層を挟む一対の電極層と、を備える、誘電エラストマートランスデューサーの製造方法であって、カーボンナノチューブを粉砕することにより粉砕炭素粒子を生成する工程と、前記粉砕炭素粒子を用いて形成された前記一対の電極層を前記誘電エラストマー層上に配置する工程と、を備えることを特徴とする、誘電エラストマートランスデューサーの製造方法である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、動的光散乱法によって計測された粒度が0.5μm以上1.5μm以下であり、且つレーザー散乱法によって計測された粒度が15μm以上である前記粉砕炭素粒子を生成する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、動的光散乱法によって計測された粒度とレーザー散乱法によって計測された粒度との差が、15μm以上である前記粉砕炭素粒子を生成する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、レーザー散乱法によって計測された粒度と動的光散乱法によって計測された粒度との比が、15以上である前記粉砕炭素粒子を生成する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記粉砕炭素粒子を生成する工程においては、カーボンナノチューブを溶媒に混ぜて分散させカーボンナノチューブの第1分散液を得た後に、前記溶媒を除去することにより粉末状のカーボンナノチューブを得る前処理と、前記粉末状のカーボンナノチューブを粉砕し、粉砕したカーボンナノチューブを溶媒に混ぜてカーボンナノチューブの第2分散液を得る粉砕処理と、前記カーボンナノチューブの第2分散液を放置し、液面近くの部位を抽出する抽出処理と、を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、伸縮性および導電性の両立を図ることができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーの一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーの製造方法の一例を示すフロー図である。
図3】本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーの一例の電極層の分最短素粒子の粒度の測定結果を示すグラフである。
図4】本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーの一例の電極層の分最短素粒子の粒度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーの一例を示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA1は、誘電エラストマー層11および一対の電極層12を有する。
【0020】
誘電エラストマートランスデューサーA1の用途は特に限定されず、たとえば駆動用途、発電用途、センサ用途等の様々な分野で活用される。たとえば、誘電エラストマートランスデューサーA1が駆動用途のアクチュエータとして用いられる場合、一対の電極層12に電荷の付与(電圧の印加)が電気回路装置3によってなされる。この際の電圧は、たとえば数百Vを超える高圧の電圧である。
【0021】
誘電エラストマー層11は、エラストマー(ゴム状弾性を有する高分子化合物)のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。エラストマーの種類は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー等である。
【0022】
熱硬化性エラストマーの種類は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム系エラストマー、ウレタンゴム系エラストマー及びフッ素ゴム系エラストマー等である。
【0023】
熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体が挙げられる。具体的には、例えば芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロックポリマー等のジブロック型ブロックポリマー;スチレン-ブタジエン-スチレンブロックポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-イソプレンブロックポリマー、スチレン-イソブチレン-スチレンブロックポリマー(SIBS)等のトリブロック型ブロックポリマー;スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエンブロックポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン-イソプレンブロックポリマー、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロックポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレン-イソプレンブロックポリマー、スチレン-イソブチレン-ブタジエン-スチレンなどのようなマルチブロック型スチレン含有ブロックポリマーおよびこれらの水素添加物または部分水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、SISなどのブロックポリマーがより好ましく用いられる。
【0024】
但し、誘電エラストマー層11は、上記したエラストマーと共に、他の材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。この他の材料は、例えば、各種の添加剤等である。
【0025】
誘電エラストマー層11の形状は特に限定されず、誘電エラストマートランスデューサーA1の構成要素として形成される前の外力等が加えられていない状態において平面視円環形状であるものや、筒状に巻回されたもの等が適宜挙げられる。
【0026】
一対の電極層12は、誘電エラストマー層11を挟んでいる。電極層12は、導電性を有するとともに、誘電エラストマー層11の弾性変形に追従しうる弾性変形が可能な材質によって形成される。このような材質としては、弾性変形可能な主材に導電性を付与するフィラーが混入された材質が挙げられる。本実施形態においては、前記フィラーとして、カーボンナノチューブ由来の粉砕炭素粒子を含む。
【0027】
図2は、誘電エラストマートランスデューサーA1の製造方法の一例を示している。本実施形態の製造方法は、粉砕炭素粒子生成工程と、電極配置工程と、を備える。粉砕炭素粒子生成工程は、カーボンナノチューブを粉砕することにより、カーボンナノチューブに由来した粉砕炭素粒子を生成する工程である。電極配置工程は、誘電エラストマー層の両面に粉砕炭素粒子を含む電極層を配置する工程である。
【0028】
<実施例>
以下に、粉砕炭素粒子生成工程の実施例について述べる。なお、本発明の粉砕炭素粒子生成工程は、何ら限定されず、後述する条件を満たす粉砕炭素粒子を生成可能な様々な手法を採用できる。
【0029】
(前処理)
まず、単層カーボンナノチューブ(以下、SWCNT:たとえば日本ゼオン社製SG101)の含有量が0.35wt%となるように溶媒に混ぜ分散させる。この際の溶媒は、MEK(メチルエチルケトン)を用いた。この溶液を、高圧ホモジナイザーを用いて分散し、SWCNT分散液(第1分散液)を得た。次に、このSWCNT分散液を液温20~40℃で放置し、溶媒を除去した。その後、ガラス攪拌棒等を用いて、粉末状となるまで撹拌した。
【0030】
(粉砕処理)
粉末状としたSWCNTを遊星型ボールミルによって、粉砕した。粉砕したSWCNTの粉末に溶媒を加え、再度、高圧ホモジナイザーを用いて分散した。この際の溶媒は、CyH(シクロヘキサン)を用いた。また、SWCNT含有量は、0.07~0.15wt%であった。再分散されたSWCNT分散液(第2分散液)をガラス容器等に移し、超音波振動を加えた。その後、24時間放置し、SWCNTが溶媒と分離しないことを確認した。分離が認められる場合、再度、超音波振動を加えた。
【0031】
(抽出処理)
SWCNTと溶媒との分離が認められないことを確認した後に、さらに超音波振動を加えた。その後、30分程度放置し、SWCNT分散液の液面近くの上部をスポイト等によって吸い上げ、別容器に抽出した。
【0032】
<比較例>
比較例1は、溶媒としてCyHを用い、未粉砕状態のSWCNTを分散させたSWCNT分散液を用意した。比較例2,3として、一般的なカーボンブラックを用意した。カーボンブラック製造メーカーによって公表された粒子径は、15nm~55nmであった。比較例2は、実施例と同じくCyHを溶媒としたカーボンブラック分散液を用意した。比較例3は、MEKを溶媒としたカーボンブラック分散液を用意した。
【0033】
(粒度測定前の予備希釈)
(1-1)ガラス容器に実施例および比較例1~3の分散液をそれぞれ2ml採取し、これにIPA(イソプロピルアルコール:関東化学 鹿1級)を加え予備希釈液を得た。
(1-2)前記容器の予備希釈液をマグネットスターラ等で撹拌した後に、超音波処理を行った。超音波条件は、周波数:39kHz、出力100W、照射時間3分であった。
(1-3)超音波処理後、10分以内に以下の粒度測定を行った。
【0034】
<動的光散乱法>
(2-1)動的光散乱法による測定装置に、マルバーン社製:ゼータサイザーナノシリーズを用いた。当該装置は、粒子径標準粒子(LTX3060A,LTX3200A)にて、たとえば測定誤差が2%以下となる程度に予め適切に校正されていた。
(2-2)前記予備希釈液1mlを、12mm角ガラスセル(PCS1115)に入れ、前記装置にセットした。当該ガラスセルにはキャップを付けた。
(2-3)粒子情報は、屈折率=2.0、虚数部0.850に設定した。
(2-4)溶媒情報は、2-Propanol、屈折率=1.3750、粘度=2.038に設定した。
(2-5)測定温度は、25℃に設定した。
(2-6)測定温度到達から測定までの時間は60秒に設定した。
(2-7)セル設定は、「glass cuvette」にて設定した。
(2-8)測定時のディテクタ角度は、173°とした。
(2-9)1回の測定に充てる時間は、「Automatic」とした。
(2-10)繰り返し回数は、3回とした。
(2-11)「Measurement Position」は、「Seek for measurement position」に設定し、自動とした。
(2-12)粒度分布のスムージングに関するモデルは、「General Purpose」とした。
(2-13)Z-Averageを採用し、測定3回の平均を、測定値とした。
【0035】
<レーザー散乱法>
(3-1)レーザー散乱法による測定装置に、マルバーン社製:マスターサイザー3000を用いた。
(3-2)粒子情報は、屈折率=2.0、虚数部0.850に設定した。
(3-3)溶媒情報は、エタノール、屈折率=1.3600に設定した。
(3-4)測定に使用する溶媒は、エタノール(関東化学 鹿1級)を用いた。
(3-5)前記エタノールを分散ユニットに規定量充填し、前記装置内を120秒循環させた。
【0036】
図3は、動的光散乱法およびレーザー散乱法による粒度測定の結果を示している。図3に示すように、動的光拡散法によって測定された粒度D1は、実施例が、0.5μm以上1.5μm以下の範囲に分布した。比較例1は、1.3μm~5.4μmの範囲に分布した。比較例2,3は、0.1μm~3.3μmの範囲に分布した。一方、レーザー散乱法によって測定された粒度D2は、実施例が15μm以上であり、さらに50μm以下であった。比較例1は、35μm以上であった。比較例2,3は、15μm以下であった。
【0037】
図4は、動的光散乱法およびレーザー散乱法による粒度測定の結果を以下の手法で整理したグラフである。横軸は、粒度D2と粒度D1との差(D2-D1)である。差(D2-D1)は、実施例が15μm以上であった。比較例1は32μm以上であった。比較例2、3は0.1μm~15μmの範囲に分布した。縦軸は、粒度D2と粒度D1との比(D2/D1)である。比(D2/D1)は、実施例が15以上であった。比較例1は7~63の範囲に分布した。比較例2,3は、0.3~48の範囲に分布した。
【0038】
実施例と比較例1、比較例2および比較例3とを比較すると、図3について、動的光散乱法によって計測された粒度D1が0.5μm以上1.5μm以下であり、且つレーザー散乱法によって計測された粒度D2が15μm以上であって、さらに50μm以下であるという条件を満たすものは、実施例であり、比較例1~3はいずれもこの条件(以下、条件1)を満たしていない。また、図4から理解されるように、動的光散乱法によって計測された粒度D1とレーザー散乱法によって計測された粒度D2との差(D2-D1)が、15μm以上である条件(以下、条件2)、およびレーザー散乱法によって計測された粒度D2と動的光散乱法によって計測された粒度D1との比(D2/D1)が、15以上である条件(以下、条件3)のいずれかと、条件1とを、ともに満たすものは、実施例のみであった。
【0039】
次に、誘電エラストマートランスデューサーA1および誘電エラストマートランスデューサーの製造方法の作用について説明する。
【0040】
図3および図4に示すように、カーボンナノチューブ由来の粉砕炭素粒子(実施例)と、未粉砕のカーボンナノチューブ(比較例1)や一般的なカーボンブラック(比較例2,3)とが、条件1によって明確に区別することができた。これは、カーボンブラックを粉砕することによって得られた粉砕炭素粒子は、未粉砕のカーボンナノチューブ(比較例1)やカーボンブラック(比較例2,3)とは、粒度測定の種類に応じた測定結果の傾向が異なることに起因する。すなわち、カーボンナノチューブは、本来細長い筒状をなす形態であるものの、粉砕によって筒状がある程度破壊され塊として大きさが小さくなる。しかし、粉砕後であっても、複数の細かい粒子から構成されるものである。このため、実施例は、粒度D1について比較例2,3との大小は不明確であるものの、粒度D2については比較例2,3よりも明確に大きい。また、実施例は、粒度D1について比較例1よりも小さい傾向であった。この関係を、差(D2-D1)や比(D2/D1)で比較すると、さらに優位な区別が可能であった。
【0041】
条件1によって区別される粉砕炭素粒子が用いられた電極層は、カーボンナノチューブに由来する良好な導電性を有しつつ、粉砕による小粒化(比較例2との粒度D1の差)によって、伸縮性が高められる。これにより、電極層の伸縮性向上および導電性向上の両立を図ることができる。条件1に加えて、条件2および条件3を適宜組合せて区別することにより、電極層の伸縮性向上および導電性向上の両立に適した粉砕炭素粒子をより確実に選別することができる。
【0042】
本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマートランスデューサーの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0043】
A1 :誘電エラストマートランスデューサー
3 :電気回路装置
11 :誘電エラストマー層
12 :電極層
図1
図2
図3
図4