(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】凍結輸送容器、極低温液化ガス吸収材ケース
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20230502BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B65D81/38 D
G01N1/42
(21)【出願番号】P 2019110855
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】馬瀬 輝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 滋弘
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165487(JP,A)
【文献】国際公開第2014/027412(WO,A1)
【文献】特開2008-285181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0325826(US,A1)
【文献】中国実用新案第205352821(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
G01N 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底で筒形であり上部の開口部と底部とが同径の断熱構造からなる本体部と、該本体部の開口部に開閉可能に設けられた蓋体と、有底筒状のケース部と該ケース部の内部に交換可能に配設された極低温液化ガス吸収材を有し、前記本体部の底部に取り出し可能に配設された極低温液化ガス吸収材ケースと、を備えたことを特徴とする凍結輸送容器。
【請求項2】
前記ケース部は、伝熱体によって形成されると共に、前記本体部の内周壁に沿って上方に延出して試料の収納部として機能する筒延出部を有していることを特徴とする請求項1記載の凍結輸送容器。
【請求項3】
前記
本体部がステンレス製の真空二重構造であり、前記ケース部がアルミニウム又は銅で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の凍結輸送容器。
【請求項4】
前記ケース部上面及び極低温液化ガス吸収材には、収納対象試料を挿入するための試料挿入孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の凍結輸送容器。
【請求項5】
有底で筒形であり上部の開口部と底部とが同径の断熱構造からなる本体部と、該本体部の開口部に開閉可能に設けられた蓋体とを有する凍結輸送容器の底部に取り出し可能に配設される極低温液化ガス吸収材ケースであって、
有底筒状のケース部と該ケース部の内部に交換可能に配設された極低温液化ガス吸収材を有することを特徴とする極低温液化ガス吸収材ケース。
【請求項6】
前記ケース部は、伝熱体によって形成されると共に、前記本体部の内周壁に沿って上方に延出して試料の収納部として機能する筒延出部を有していることを特徴とする請求項5記載の極低温液化ガス吸収材ケース。
【請求項7】
前記ケース部がアルミニウム又は銅であることを特徴とする請求項5又は6記載の極低温液化ガス吸収材ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細胞など医療・バイオ分野の生体試料等を凍結状態で収容して輸送する凍結輸送容器、及び凍結輸送容器内に配設されて容器内を低温に保持するために用いられる極低温液化ガス吸収材ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料を凍結輸送する手段として真空断熱構造のドライシッパーがある。ドライシッパー内部には極低温液化ガスである液体窒素の吸収材が配設され、液体窒素は吸収材に吸収されているので、輸送時に転倒しても液体窒素をこぼす恐れがない。
【0003】
液体窒素等の極低温液化ガスを含浸させる含浸材を用いた凍結保存容器としては、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1の凍結保存容器は、小径の試料出入口の下方に大径の円筒状の格納領域が形成された断熱容器内に、その底部及び内周壁に含浸材を配設した構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたものは共に外気温の影響を受けにくくするため、試料を格納する格納領域よりも試料出入口が小径になっている。このため、バッグ形状等の大型の試料を入れることができない。
また、試料の格納領域の周壁に含浸材を配設しているため、試料格納領域の内径が小さくなり、バイアル等の細長い試料は収納できるが、バッグ形状等の大型の試料が収納できないという問題もある。
【0006】
また、特許文献1の含浸材は、断熱容器内に固定され、取り外せない構造になっている。しかし、含浸材が次第に劣化して液体窒素の吸収量が少なくなったり、汚染されたりすることが考えられ、交換可能な構造が求められている。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、バッグ形状等の大型の試料が収納でき、液体窒素等の極低温液化ガスを含浸する極低温液化ガス吸収材の取り出し、設置が容易にできる凍結輸送容器、凍結輸送容器に設置可能な極低温液化ガス吸収材ケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る凍結輸送容器は、有底で筒形であり上部の開口部と底部とが同径の断熱構造からなる本体部と、該本体部の開口部に開閉可能に設けられた蓋体と、有底筒状のケース部と該ケース部の内部に交換可能に配設された極低温液化ガス吸収材を有し、前記本体部の底部に取り出し可能に配設された極低温液化ガス吸収材ケースと、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ケース部は、伝熱体によって形成されると共に、前記本体部の内周壁に沿って上方に延出して試料の収納部として機能する筒延出部を有していることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記本体部がステンレス製の真空二重構造であり、前記ケース部がアルミニウム又は銅で形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記ケース部上面及び極低温液化ガス吸収材には、収納対象試料を挿入するための試料挿入孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
(5)本発明に係る極低温液化ガス吸収材ケースは、有底で筒形であり上部の開口部と底部とが同径の断熱構造からなる本体部と、該本体部の開口部に開閉可能に設けられた蓋体とを有する凍結輸送容器の底部に取り出し可能に配設されるものであって、
有底筒状のケース部と該ケース部の内部に交換可能に配設された極低温液化ガス吸収材を有することを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記ケース部は、伝熱体によって形成されると共に、前記本体部の内周壁に沿って上方に延出して試料の収納部として機能する筒延出部を有していることを特徴とするものである。
【0014】
(7)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、前記ケース部がアルミニウム又は銅であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る凍結輸送容器は、有底で筒形であり上部の開口部と底部とが同径の断熱構造からなる本体部と、該本体部の開口部に開閉可能に設けられた蓋体と、有底筒状のケース部と該ケース部の内部に交換可能に配設された極低温液化ガス吸収材を有し、前記本体部の底部に取り出し可能に配設された極低温液化ガス吸収材ケースと、を備えたことにより、極低温液化ガス吸収材ケースを取り出して、極低温液化ガス吸収材を簡単に交換することができるので、極低温液化ガス吸収材の劣化や汚染に対して、これらを回復させることができる。
また、本体部が有底で筒形であり上部の開口部と底部とが同径の断熱構造からなるため、内部空間が広く、バック等の大型の試料を収容することができ、従来難しかった大型試料の輸送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る凍結輸送容器の断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る凍結輸送容器の外観を示す図である。
【
図3】本体部から液体窒素吸収材ケースとケース固定具を取り出した状態の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る凍結輸送容器に配設される液体窒素吸収材ケース平面図(a)と断面図(b)である。
【
図5】液体窒素吸収材ケースに配設される液体窒素吸収材の配設方法の説明図である。
【
図6】発明の実施の形態に係る凍結輸送容器に配設される液体窒素吸収材に設ける試料挿入穴の他の態様の説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る凍結輸送容器における液体窒素吸収材ケースの他の態様の説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る凍結輸送容器における内部の伝熱状態の説明図である。
【
図9】
図8に示した液体窒素吸収材ケースにおいて円筒延出部がない場合における凍結輸送容器における内部の伝熱状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係る凍結輸送容器を
図1~
図6に基づいて説明する。なお、以下の説明では凍結輸送容器の本体部が円筒形の寸胴型のものを例に挙げ、また極低温液化ガスとして液体窒素を例に挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本実施の形態に係る凍結輸送容器1は、
図1~
図6に示すように、試料を凍結状態に保持して輸送するためのものであって、有底で円筒形の寸胴型の断熱構造からなる本体部3と、本体部3の開口部3aに開閉可能に設けられた蓋体5と、本体部3の底部に取り出し可能に配設された液体窒素吸収材ケース7と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0019】
<試料>
試料は、主としてバイアル、血液バッグ等に収容された生体試料が対象となる。バイアル、バッグ等の容量は、例えば25、50、100mlであり、凍結輸送容器1には、これらのバイアル、バッグ等を、10本、あるいは10枚程度収容する。
【0020】
<本体部>
本体部3は、
図1~
図3に示すように、有底で円筒形であり、かつ上端の開口部3aと底部が同径となった寸胴型の断熱構造からなる。本体部3としては、ステンレス製の真空二重構造のものが好ましい。
本体部3の外形寸法の一例を示すと以下の通りである。
外寸法 :φ200×H300mm
開口部 :φ189mm
【0021】
<蓋体>
蓋体5は、本体部3の開口部3aに開閉可能に設けられるものである。また、蓋体5は、
図1に示すように、開口部3aと同径の円柱部9を有し、円柱部9が、本体部3の開口部3aに挿入される構造になっている。円柱部9は、例えば発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン製の断熱素材で形成され、開口部3aからの熱侵入を防いでいる。
【0022】
<液体窒素吸収材ケース>
液体窒素吸収材ケース7は、
図4に示すように、有底円筒状のケース部11とケース部11の内部に交換可能に配設された液体窒素吸収材13を有し、本体部3の底部に取り出し可能に配設されるものである。
液体窒素吸収材13は、複数枚の円形のシート状からなり、
図4、
図5に示すように、ケース部11の底部に積み重ねるように配置されている。
液体窒素吸収材13は、例えば、材質がポリプロピレンで、径がφ180mmで重ねた状態での厚みが50mmのものを適用できる。
【0023】
液体窒素吸収材13には内部に液体窒素が浸漬していく速度を上げるために複数の穴15が設けられている(
図5参照)。また、この複数の穴15は、バイアル状の試料を直接差すことができるものであり、試料挿入穴としても機能する。
この穴15の形状は、試料等がバイアルの場合の円形状に限らず、例えば、
図6に示すように、バッグ状の試料16が入るような矩形状でもよい。
なお、液体窒素吸収材13に設けた穴15を試料挿入穴として機能させる場合、後述するように、固定用プレート19には、液体窒素吸収材13に設けた穴15に対応する位置に同形状の開口17を設ける。
【0024】
液体窒素吸収材13の上面には、
図4、
図5に示すように、液体窒素吸収材13をケース部11に交換可能に配設するための固定用プレート19が設けられている。固定用プレート19は、積層された液体窒素吸収材13を厚み方向に貫通するように設けられるスペーサー21を介して固定用ネジ23でケース部11に固定されている。スペーサー21による固定用プレート19の固定方法をより詳細に説明すると以下の通りである。
【0025】
スペーサー21は細い円筒状の金具であり、内部にはねじ切りがしてある。スペーサー21をケース部11の底部に立設すると共にスペーサー21の上端面に固定用プレート19を配置して、ケース部11の底部の下面側及び固定用プレート19の上面側から固定用ネジ23によってネジ止めすることで、スペーサー21を介して固定用プレート19をケース部11に取り付けることができる。固定用プレート19を設置するとことで、液体窒素吸収材13は、ケース部11の底面と固定用プレート19で挟まれた状態となり、ケース部11から脱落することがない。
液体窒素吸収材13を取り換える際には、液体窒素吸収材ケース7を本体部3から取り出して、固定用プレート19を取り外せばよい。
【0026】
固定用プレート19には、固定用ネジ23の挿通孔の他に、液体窒素を液体窒素吸収材13に染み込ませる際に、液体窒素が通過する通過孔25が多数形成されている。
また、前述したように、液体窒素吸収材13に設けた穴15を、試料挿入穴として機能させる場合には、固定用プレート19に、液体窒素吸収材13に設けた穴15と対応する位置に、例えばバイエル等の試料を挿入するための、開口17が複数設けられている。
固定用プレート19は、後述のケース部11と同様に、熱伝導率の高いアルミニウム又は銅等の金属からなる伝熱体の素材を用いる。
【0027】
ケース部11は、
図4に示すように、液体窒素吸収材13を収容した部位から、本体部3の内周壁に沿って上方に延出して試料の収納部として機能する円筒延出部27を有している。円筒延出部27を含むケース部11は、熱伝導率の高いアルミニウム又は銅等の金属からなる伝熱体によって形成されている。熱伝導率の高い金属を用いることで、液体窒素の冷熱を容器上部へより早く、より低温に伝えることができる。なお、試料収納容器がステンレス製の場合は錆の発生しにくいアルミニウム製がより好ましい。
ケース部11の寸法の一例を示すと、上述した本体部3に挿入される場合として、φ183mm×200mmである。また、ケース部の厚みは0.5mmであり、円筒延出部27の内径はφ182mmである。
【0028】
ケース部11は、液体窒素吸収材13の冷熱を伝え、内部に収容される試料を効果的に冷却する機能を有している。このような機能を有するケース部11が、蓋体5の断熱素材からなる円柱部9と接触すると、断熱素材自体が持つ熱を容器内に伝えてしまうため、ケース部11と円柱部9が接触しないようにすることが好ましく、両者間には2~3mmの隙間を設定することが好ましい。
【0029】
ケース部11における円筒延出部27の高さは、本体部3の内壁面全体を覆うような高さであると、液体窒素の冷熱を高効率に本体部3の上部まで伝えるためより本体部3内を低温に保つことができる。
その一方で、開口部3aからの熱を容器内部に伝えやすくなってしまうため液体窒素の蒸発損失量が増大する。
そこで、最適な条件としては、ケース部11における円筒延出部27の上端面から蓋体5における円柱部9の底面までの高さに対して、円筒延出部27の高さが、0%以上95%以下が好ましく、70%以上90%以下がより好ましい。
【0030】
円筒延出部27の高さが0%とは、
図7に示すように、円筒延出部27が存在しないで、ケース部11の上面が固定用プレート19なるような場合である。本体部3における収納部分の高さが低いときは、円筒延出部27がなくても気化した窒素で収納スペースが十分冷やされる。また、液体窒素吸収材13の穴15に試料を挿入して、試料が固定用プレート19の上方に出っ張る部分が短い場合には、円筒延出部27がなくてもよい。
【0031】
なお、円筒延出部27は、試料収納スペースを広く確保するため、本体部3の内槽とほぼ同じ径とすることが好ましい。
また、容器内を急速に冷却、または低温にしたい場合は伝熱性能を高めるために、円筒延出部27をフィン構造にしてもよい。
【0032】
液体窒素吸収材ケース7は、本体部3内に取り出し可能に設置されるが、より簡易に取り出しが可能にすることが好ましい。このための構造として、本体部3の開口部3aの近傍に着脱可能に取り付けられる円環状のケース固定具29を用いるのが好ましい(
図1、
図3参照)。
ケース固定具29は、本体部3の開口部3aの内径よりも若干だけ外径が大きく、発泡ポリウレタンまたは発泡ポリスチレン等の、断熱性があり可撓性のある部材を用いることが好ましい。ケース固定具29は、
図1に示すように、液体窒素吸収材ケース7を本体内に配設した状態で、本体部3の開口部3a近傍に設置する。
【0033】
ケース固定具29は、その外径が本体部3の内径より若干だけ大きいため、圧縮された状態で本体部3に着脱可能に取り付けられる。このようにすれば、液体窒素吸収材ケース7の上部でケース固定具29が本体部3の内壁に対して突っ張った状態で配設されるので、凍結輸送容器1を傾けても液体窒素吸収材ケース7が抜け出すことがない。
一方、液体窒素吸収材13の交換等で液体窒素吸収材ケース7を取り出す際には、ケース固定具29を少し撓ませて取り外せばよい。
【0034】
以上のように、本実施の形態の凍結輸送容器1においては、液体窒素吸収材ケース7を取り出して、液体窒素吸収材13を簡単に交換することができるので、液体窒素吸収材13の劣化や汚染に対して、これらを回復させることができる。
【0035】
また、本体部3が寸胴型であり、ケース部11が円筒延出部27を有する場合には円筒延出部27が本体部3の内壁に沿う形状であり、本体部3の内壁及び円筒延出部27の内周壁には液体窒素吸収材13が配設されていないので、内部空間が広く、バック等の大型の試料を収容することができ、従来難しかった大型試料の輸送が可能となる。
例えば、50mlのバッグ形状の試料は95mm(縦)×85mm(横)×10mm(厚み)のスペースが必要であるが、従来の一般的なドライシッパーの多くは開口部がφ50mm~70mmで設計されているので、このような従来の一般的なドライシッパーには、バック形状の試料を収納することができない。
これに対して、本実施の形態のものでは、開口部3aがφ189mmであり、また円筒延出部27の内径がφ182mmであるため、
図6に示した態様での収納が可能である。
【0036】
また、ケース部11が伝熱性を有する円筒延出部27を有する場合には、蓋体5からの伝熱や外気温の影響を受けるため温度が下がりにくい容器収納スペース上部においても、内容容積を狭くすることなく、低温を保つことができる。
図8は、上述した形状の凍結輸送容器1の内部の温度状況を示すものであるが、円筒延出部27の上部においても約-150℃の温度状態を実現できる。
すなわち、従来例であれば、断熱容器からなる本体部3の底部及び内周壁に含浸材(液体窒素吸収材)を配設していたが、本実施の形態では、液体窒素吸収材13は底部のみに設け、本体部3の内周壁は円筒延出部27で構成することで、内容積を大きく確保しつつ低温保持を実現している。
【0037】
なお、仮に同形状の本体部3内に、液体窒素吸収材ケース7を設けることなく本体部3の底部に液体窒素吸収材13を配設した場合、液体窒素吸収材13の冷熱は本体部3のステンレス製の内壁を伝わることになるが、ステンレスは熱伝導率が低いため上部が冷えにくく、
図9に示すように上部温度は約-30℃の状態となる。このことから、円筒延出部27を設けることには、大きな効果が期待できる。
なお、
図8に示す凍結輸送容器1の場合、液体窒素吸収材ケース7を本体部3に設置してから本体部3の内部の温度が-150℃以下到達するのに約30分要し、本体部3内の温度を-150℃以下保持できるのは約300分間であった。
【0038】
上記の説明では凍結輸送容器1の本体部3が円筒形の寸胴型のものを例に挙げて説明した。この場合、本体部3内に収容される液体窒素吸収材ケース7も同様の円筒形状のものとなる。
もっとも、凍結輸送容器1の本体部3は円筒形に限られず、例えば矩形筒状のものであってもよく、この場合には、本体部3内に収容される液体窒素吸収材ケース7も同様の矩形筒状のものとするのが好ましい。
また、上記の説明では、極低温液化ガスとして液体窒素を例に挙げたが、本発明の極低温液化ガスは液体窒素に限られず、適した吸収材を用いる限り、例えば液体ヘリウムや液体アルゴン等の不活性ガスの液化ガスを用いることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 凍結輸送容器
3 本体部
3a 開口部
5 蓋体
7 液体窒素吸収材ケース
9 円柱部
11 ケース部
13 液体窒素吸収材
15 穴
16 バッグ状の試料
17 開口
19 固定用プレート
21 スペーサー
23 固定用ネジ
25 通過孔
27 円筒延出部
29 ケース固定具