IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

特許7272945吸収性物品、清浄化用シート、及び拭取性向上組成物の使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】吸収性物品、清浄化用シート、及び拭取性向上組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20230502BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230502BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20230502BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20230502BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/15 140
A61F13/15 110
A61L15/28 200
A61L15/26 200
A61L15/44 200
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019234884
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101911
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】中下 将志
(72)【発明者】
【氏名】山口 正史
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-179969(JP,A)
【文献】特開2018-086203(JP,A)
【文献】特開2014-131994(JP,A)
【文献】特開平11-033076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面を有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品が、前記肌当接面に、体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤と、セルロースナノファイバーとを含む拭取性向上組成物を備えており、
前記拭取性向上剤が、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有する、
ことを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記拭取性向上組成物が、水を10質量%以下の比率で含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
剪断速度:n(1/s)における粘度をηnと表す場合に、前記拭取性向上組成物が、25℃において、1.1~5.0倍のη10/η100の粘度比を有する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記拭取性向上剤が、39~60mN/m(25℃)の表面張力と、30~65°(25℃)のPETプレート接触角と、0~30°(25℃)の水接触角とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記拭取性向上剤が、次の(i)及び(ii)、
(i) (i-1)炭化水素部分と、(i-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(ii) (ii-1)炭化水素部分と、(ii-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii-3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(i)及び(ii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない、
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記拭取性向上剤が、次の(i’)及び(ii’)、
(i’) (i’-1)炭化水素部分と、(i’-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(ii’) (ii’-1)炭化水素部分と、(ii’-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(ii’-3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(i’)及び(ii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記拭取性向上剤が、(A) (A1)炭化水素部分と、前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物と、(A2)ポリオキシアルキレングリコールとのエステル又はエーテルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
(A1)炭化水素部分と、前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物が、(a1)糖類、(a2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1~10個のヒドロキシル基とを有する化合物、(a3)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2~6個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸、及び(a4)それらの任意のエーテル又はエステルからなる群から選択される、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記セルロースナノファイバーが、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー及びリン酸エステル基を導入したセルロースナノファイバーからなるから選択されるアニオン変性セルロースナノファイバーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、拭取性向上組成物を含む吸収性物品、拭取性向上組成物を含む清浄化用シート、及び拭取性向上組成物の、体液の拭取性を向上させるための繊維製品への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
体液が皮膚に付着することを抑制するローション組成物を含む吸収性物品が知られている。
例えば、特許文献1及び2には、着用者によって着用されることが意図された吸収性物品であって、前記物品の身体に面する表面の少なくとも一部が、ローション組成物を含み、前記ローション組成物が、25℃で液体である少なくとも1つの第1化合物と25℃で固体である少なくとも1つの第2化合物を含み、
前記第1化合物が、液体ポリエチレングリコール誘導体又は液体ポリプロピレングリコール若しくはその誘導体であり、前記第2化合物が、固体ポリエチレングリコール誘導体又は固体ポリプロピレングリコール若しくはその誘導体であるか、あるいは、
前記第1化合物が、液体ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又は液体ポリプロピレングリコール若しくはその誘導体であり、前記第2化合物は、少なくとも10のHLB値を有する固体非イオン性界面活性剤であり、あるいは、
前記第1化合物が少なくとも1つの脂肪酸単位及び少なくとも1つのエチレングリコール単位を有する液体脂肪酸エステルであり、前記第2化合物が固体ポリエチレングリコールであるか、あるいは、
前記第1化合物が液体ポリエチレングリコール若しくはその誘導体又は液体ポリプロピレングリコール若しくはその誘導体であり、前記第2化合物が、固体脂肪酸及び固体石鹸からなる群から選択される固体脂肪族化合物であり、
前記固体非イオン性界面活性剤が、エトキシ化脂肪族アルコールである場合、HLB値は少なくとも13であり、
前記固体脂肪族化合物が、固体脂肪酸である場合、液体の総量が、固体の総量よりも多い、吸収性物品が開示されている。
【0003】
特許文献3には、ローション組成物を含む基材であって、前記ローション組成物が、
a)25℃で液体であり、液体ポリエチレングリコール、液体ポリエチレングリコール誘導体、液体ポリプロピレングリコール、液体ポリプロピレングリコール誘導体、液体多価アルコール、少なくとも1つの脂肪酸単位及び少なくとも1つのエチレングリコール単位を含む液体脂肪酸エステル、少なくとも1つの脂肪酸単位及び少なくとも1つのプロピレングリコール単位を含む液体脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物から成る群から選択される、約20~約80重量%の1つ以上の化合物Aと、
b)25℃で固体であり、固体ポリエチレングリコール誘導体、固体ポリプロピレングリコール誘導体、固体アルコキシル化非イオン性界面活性剤、固体グリセロールエステル、固体ソルビタン及び誘導体、固体スクロースエステル及びその誘導体、固体グルコースエステル及びその誘導体、並びにこれらの混合物から成る群から選択される、約5~約50重量%の1つ以上の化合物Bと、
c)C14~C22脂肪族アルコール、C12~C22脂肪酸、固体脂肪石鹸、並びにカルナウバ、オゾケライト、蜜蝋、キャンデリラ、パラフィン、セレシン、エスパルト、レゾワックス、イソパラフィン、及びこれらの混合物から成る群から選択されるワックス、から成る群から選択される、約1~約40重量%の1つ以上の結晶化促進剤Cと、
を含み、
化合物Aと結晶化促進剤(C)との重量比が、3:2~10:1である、基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-525862号公報
【文献】特表2010-526629号公報
【文献】特表2013-504408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載のローション組成物は、糞便又は経血が皮膚に付着することを軽減することを目的とするものであり、そして上記ローション組成物を含む吸収性物品が使用され、着用者から取り外された後に、糞便又は経血を容易に除去することができることが記載されている。
また、特許文献1~3に記載のローション組成物に限らず、吸収性物品の技術分野で用いられるローション組成物は、吸収性物品の吸収性を阻害しないように、親油性の性状を有しているのが一般的である。
【0006】
さらに、特許文献1~3に記載のローション組成物は、ローション組成物が吸収性物品上の所望の位置に比較的に静的に留まり、並びに物品の望ましくない位置に流動又は移行する傾向がないように、ローション組成物が、擬塑性又は塑性液体に典型的なレオロジーを有することが記載されている。
【0007】
本願発明者らは、特許文献1~3に記載のローション組成物を含む吸収性物品を着用した場合に、そもそも、糞便又は経血が皮膚に付着することを完全に防ぐことは難しく、糞便又は経血が皮膚に付着する場合があることを確認した。
【0008】
また、本願発明者らは、皮膚に付着した糞便又は経血を清浄化するために、親水性溶液(例えば、水溶液)を含浸している清浄化用シート(例えば、ウェットワイプス)を用いて、特許文献1~3に記載されるような親油性のローション組成物と、糞便又は経血とが付着した着用者の皮膚を清浄化しようとすると、親油性のローション組成物が、清浄化用シートに付着し、清浄化用シートがその機能を発揮することを阻害しうるものであることを確認した。
【0009】
以上の通り、特許文献1~3に記載のローション組成物を備える吸収性物品は、皮膚に付着してしまった粘性の高い体液(例えば、糞便、軟便及び経血、以下、「高粘性体液」と称する)を除去しやすいものではなかった。
従って、本開示は、着用前に移動しにくく、着用後に皮膚に移行しやすく、そして皮膚に付着した、高粘性体液の拭取性に優れる拭取性向上組成物を含む吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示者らは、肌当接面を有する吸収性物品であって、上記吸収性物品が、上記肌当接面に、体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤と、セルロースナノファイバーとを含む拭取性向上組成物を備えており、上記拭取性向上剤が、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有することを特徴とする吸収性物品を見出した。
【発明の効果】
【0011】
本開示の吸収性物品における拭取性向上組成物は、着用前に吸収性物品から移動しにくく、着用後に着用者の皮膚に移行しやすく、そして皮膚に付着した、高粘性体液の拭取性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
肌当接面を有する吸収性物品であって、
上記吸収性物品が、上記肌当接面に、体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤と、セルロースナノファイバーとを含む拭取性向上組成物を備えており、
上記拭取性向上剤が、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有する、
ことを特徴とする、上記吸収性物品。
【0013】
上記吸収性物品は、その肌当接面に、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有する拭取性向上剤(以下、単に「親水性を有する拭取性向上剤」と称する)と、セルロースナノファイバー(以下、「セルロースナノファイバー」を『CNF』と称する場合がある)とを含む拭取性向上組成物を備えている。従って、上記拭取性向上組成物が、CNFに由来する、チキソトロピック、擬塑性等のレオロジー特性を示し、吸収性物品の使用前(例えば、保管時等)の剪断速度が小さい状態では、拭取性向上組成物の粘度が高く、拭取性向上組成物が、液透過性シートの肌当接面から移動しにくく、そして吸収性物品の使用時の剪断速度が大きい状態では、拭取性向上組成物の粘度が低くなり、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0014】
上記吸収性物品では、拭取性向上剤が所定のIOBを有するので、拭取性向上剤、及び拭取性向上組成物が、疎水性物質及び親水性物質とある程度の親和性を有することができる。従って、拭取性向上組成物が、高粘性体液と一定の親和性(なじみやすさ)を有し、拭取性向上組成物が着用者の皮膚に形成する被膜が、高粘性体液と適度になじむことができる。
【0015】
また、上記拭取性向上剤は、所定のIOBを有するため、清浄化用シートに移動した拭取性向上組成物が、清浄化用シートから離れにくく、そして清浄化用シート上の拭取性向上剤が、高粘性体液と一定の親和性を有するため、高粘性体液を、皮膚上に形成された被膜ごと除去することができる。
【0016】
さらに、上記拭取性向上剤は、所定のIOBを有するため、拭取性向上組成物と、高粘性体液とを離れにくくすることができ、清浄化用シートが、皮膚から除去した高粘性体液を保持することができる。
【0017】
また、上記拭取性向上組成物は、親水性を有する拭取性向上剤と、CNFとを含んでいるため、着用者の皮膚に転写された上記拭取性向上組成物が水を含んでいない場合であっても、清浄化用シート(例えば、ウェットワイプス)中の親水性溶液を吸収し、その粘性が変化し、清浄化用シートにより除去されやすくなるとともに、それに合わせて、皮膚に付着してしまった高粘性体液(例えば、糞便、軟便及び経血)が除去されやすくなる。
以上の通り、上記拭取性向上組成物は、着用前に吸収性物品から移動しにくく、着用後に着用者の皮膚に移行しやすく、そして皮膚に付着した、高粘性体液の拭取性に優れる。
【0018】
[態様2]
上記拭取性向上組成物が、水を10質量%以下の比率で含む、態様1に記載の吸収性物品。
【0019】
上記吸収性物品では、拭取性向上組成物が水を所定量以下の比率で含むため、拭取性向上組成物が有する水分が、吸収性物品の吸収性を阻害しにくい。
また、上記吸収性物品では、拭取性向上組成物が水を所定量以下の比率で含むため、吸収性物品の保管が容易である。例えば、上記吸収性物品を、通常の吸収性物品の包装形態、例えば、通気性、透湿性を有する非密閉包装で保管することができ、例えば、上記吸収性物品を、通気性、透湿性の低い密閉包装にて保管する必要がない。
【0020】
一方、上記拭取性向上組成物は、水を所定量以下の比率で含むため、その粘度が高くなる傾向にあるが、着用者の皮膚に転写された上記拭取性向上組成物は、清浄化用シート(例えば、ウェットワイプス)中の親水性溶液を吸収し、その粘性が低下し、清浄化用シートにより除去されやすくなるとともに、それに合わせて、皮膚に付着してしまった高粘性体液(例えば、糞便、軟便及び経血)が除去されやすくなる。
【0021】
[態様3]
剪断速度:n(1/s)における粘度をηnとする場合に、上記拭取性向上組成物が、25℃において、1.1~5.0倍のη10/η100の粘度比を有する、態様1又は2に記載の吸収性物品。
【0022】
上記吸収性物品では、拭取性向上組成物が所定の粘度比を有するため、吸収性物品の使用前(例えば、保管時等)の剪断速度が低い状態では、拭取性向上組成物の粘度が高く、拭取性向上組成物が、液透過性シートの肌当接面から移動しにくく、そして吸収性物品の使用時の剪断速度が高い状態では、拭取性向上組成物の粘度が低くなり、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0023】
[態様4]
上記拭取性向上剤が、39~60mN/m(25℃)の表面張力と、30~65°(25℃)のPETプレート接触角と、0~30°(25℃)の水接触角とを有する、態様1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0024】
上記吸収性物品では、上記拭取性向上剤が所定の表面張力を有するので、吸収性物品の使用前(例えば、保管時等)には、拭取性向上剤、及び拭取性向上組成物が移動しにくく、そして吸収性物品の使用時には、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動しやすくなる。
【0025】
また、上記拭取性向上剤は、所定のPETプレート接触角を有するため、着用者の皮膚に移動した拭取性向上組成物が皮膚上に拡がり、皮膚上に被膜を形成しやすくなる。
また、上記拭取性向上剤は、所定の水接触角を有するため、清浄化用シート(例えば、ウェットワイプス)を用いて皮膚を清浄化する際に、皮膚上に存在する拭取性向上組成物が、清浄化用シートに移動しやすくなる。
【0026】
また、上記拭取性向上剤は、所定の表面張力、所定のPETプレート接触角及び所定の水接触角を有するため、清浄化用シートに移動した拭取性向上組成物が、清浄化用シートから離れにくく、そして清浄化用シート上の拭取性向上組成物が、高粘性体液と一定の親和性を有するため、高粘性体液を、皮膚上に形成された被膜ごと除去することができる。
【0027】
さらに、上記拭取性向上剤は、所定の表面張力、所定のPETプレート接触角及び所定の水接触角を有するため、拭取性向上組成物と、高粘性体液とを離れにくくすることができ、清浄化用シートが、皮膚から除去した高粘性体液を保持することができる。
以上により、上記拭取性向上組成物は、皮膚に付着した高粘性体液の拭取性に優れる。
【0028】
[態様5]
上記拭取性向上剤が、次の(i)及び(ii)、
(i) (i-1)炭化水素部分と、(i-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(ii) (ii-1)炭化水素部分と、(ii-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii-3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(i)及び(ii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない、
態様1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0029】
上記吸収性物品では、拭取性向上剤が所定の構造を有するため、拭取性向上組成物が、皮膚に付着した体液の拭取性に優れる。
【0030】
[態様6]
上記拭取性向上剤が、次の(i’)及び(ii’)、
(i’) (i’-1)炭化水素部分と、(i’-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(ii’) (ii’-1)炭化水素部分と、(ii’-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(ii’-3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(i’)及び(ii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、
態様1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0031】
上記吸収性物品では、拭取性向上剤が所定の構造を有するため、拭取性向上組成物が、皮膚に付着した体液の拭取性に優れる。
【0032】
[態様7]
上記拭取性向上剤が、(A) (A1)炭化水素部分と、上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物と、(A2)ポリオキシアルキレングリコールとのエステル又はエーテルである、態様1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0033】
上記吸収性物品では、拭取性向上剤が所定の構造を有するため、拭取性向上組成物が、皮膚に付着した体液の拭取性に優れる。
【0034】
[態様8]
(A1)炭化水素部分と、上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物が、(a1)糖類、(a2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1~10個のヒドロキシル基とを有する化合物、(a3)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2~6個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸、及び(a4)それらの任意のエーテル又はエステルからなる群から選択される、態様7に記載の吸収性物品。
【0035】
上記吸収性物品では、拭取性向上剤が所定の構造を有するため、拭取性向上組成物が、皮膚に付着した体液の拭取性に優れる。
【0036】
[態様9]
上記セルロースナノファイバーが、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー及びリン酸エステル基を導入したセルロースナノファイバーからなるから選択されるアニオン変性セルロースナノファイバーである、態様1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0037】
上記吸収性物品では、CNFが所定のアニオン変性CNFであるため、態様1の効果がより高くなる。
【0038】
[態様10]
体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤及びセルロースナノファイバーを含む拭取性向上組成物と、繊維シートとを含む清浄化用シートであって、
上記拭取性向上剤が、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有する、
ことを特徴とする、上記清浄化用シート。
【0039】
上記清浄化用シートは、親水性を有する拭取性向上剤と、CNFとを含む拭取性向上組成物を備えている。従って、上記拭取性向上組成物が、CNFに由来する、チキソトロピック、擬塑性等のレオロジー特性を示し、清浄化用シートの使用前(例えば、保管時等)の剪断速度が小さい状態では、拭取性向上組成物の粘度が高く、拭取性向上組成物が、清浄化用シートから移動しにくく、そして清浄化用シートの使用時の剪断速度が大きい状態では、拭取性向上組成物の粘度が低くなり、拭取性向上組成物が、清浄化すべき皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0040】
上記清浄化用シートでは、拭取性向上剤が所定のIOBを有するので、拭取性向上剤、及び拭取性向上組成物が、疎水性物質及び親水性物質とある程度の親和性を有することができる。従って、拭取性向上組成物が、高粘性体液と一定の親和性(なじみやすさ)を有し、拭取性向上組成物が着用者の皮膚に形成する被膜が、高粘性体液と適度になじむことができる。
【0041】
また、上記拭取性向上剤は、所定のIOBを有するため、清浄化用シートに移動した拭取性向上組成物が、清浄化用シートから離れにくく、そして清浄化用シート上の拭取性向上組成物が、高粘性体液と一定の親和性を有するため、高粘性体液を、皮膚上に形成された被膜ごと除去することができる。
【0042】
さらに、上記拭取性向上剤は、所定のIOBを有するため、拭取性向上組成物と、高粘性体液とを離れにくくすることができ、清浄化用シートが、皮膚から除去した高粘性体液を保持することができる。
以上の通り、上記拭取性向上組成物は、使用前に清浄化用シートから移動しにくく、使用時に清浄すべき皮膚に移行しやすく、そして清浄すべき皮膚に付着した、高粘性体液の拭取性に優れる。
【0043】
[態様11]
上記拭取性向上組成物が、水を10質量%以下の比率で含む、態様10に記載の清浄化用シート。
【0044】
上記清浄化用シートでは、拭取性向上組成物が、水を所定量以下の比率で含むため、清浄化用シートの保管が容易である。例えば、上記清浄化用シートを、例えば、通気性、透湿性を有する非密閉包装で保管することができ、例えば、上記清浄化用シートを、通気性、透湿性の低い密閉包装にて保管する必要がない。
上記清浄化用シートは、例えば、そのまま、例えば、水を含むウェット面の清浄化用、仕上げ拭き用、又は水を添加して(水の含有率を上げて)用いることができる。
【0045】
[態様12]
剪断速度:n(1/s)における粘度をηnと表す場合に、上記拭取性向上組成物が、25℃において、1.1~5.0倍のη10/η100の粘度比を有する、態様10又は11に記載の清浄化用シート。
【0046】
上記清浄化用シートでは、拭取性向上組成物が所定の粘度比を有するため、清浄化用シートの使用前(例えば、保管時等)の剪断速度が小さい状態では、拭取性向上組成物の粘度が高く、拭取性向上組成物が、清浄化用シートから移動しにくく、そして清浄化用シートの使用時の剪断速度が大きい状態では、拭取性向上組成物の粘度が低くなり、拭取性向上組成物が、清浄化すべき皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0047】
[態様13]
上記拭取性向上剤が、39~60mN/m(25℃)の表面張力と、30~65°(25℃)のPETプレート接触角と、0~30°(25℃)の水接触角とを有する、態様10~12のいずれか一項に記載の清浄化用シート。
上記清浄化用シートでは、拭取性向上組成物(拭取性向上剤)が、態様4と同様の効果を有する。
【0048】
[態様14]
体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤と、セルロースナノファイバーとを含む拭取性向上組成物の、体液の拭取性を向上させるための繊維製品への使用であって、
上記拭取性向上剤が、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有する、
ことを特徴とする、上記使用。
上記使用は、態様1、態様10等と同様の効果を有する。
【0049】
[態様15]
上記拭取性向上組成物が、水を10質量%以下の比率で含む、態様14に記載の使用。
上記使用は、態様2、態様11等と同様の効果を有する。
【0050】
[態様16]
剪断速度:n(1/s)における粘度をηnと表す場合に、上記拭取性向上組成物が、25℃において、1.1~5.0倍のη10/η100の粘度比を有する、態様14又は15に記載の使用。
上記使用は、態様3、態様12等と同様の効果を有する。
【0051】
本開示の吸収性物品は、吸収性物品の肌当接面に、体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤と、CNFとを含む拭取性向上組成物を備えている。
[拭取性向上剤]
上記拭取性向上剤は、25℃において、100gの脱イオン水に、100g以上の水溶解度を有し、好ましくは150g以上、より好ましくは200g以上、そしてさらに好ましくは250g以上の水溶解度を有する。それにより、着用者の皮膚に残存する拭取性向上組成物、特に拭取性向上剤が、新たな清浄化用シート等により除去されやすく、着用者の皮膚に残存しにくくなる。
なお、本明細書では、25℃における水溶解度(g)を、「g(25℃)」の単位で表記する場合がある。
【0052】
上記水溶解度は、25℃において、100gの脱イオン水に、所定量、例えば、100gの拭取性向上剤を添加し、1分間静置し、必要に応じて軽く攪拌し、次いで、拭取性向上剤が脱イオン水に溶解したか否か目視で評価することにより測定することができる。
なお、本明細書では、水溶解度に関して、「溶解」には、拭取性向上剤が脱イオン水に完全に溶解し、均一混合物を形成した場合と、拭取性向上剤が脱イオン水と完全に混和し、均一混合物を形成した場合と、拭取性向上剤が完全にエマルション化した場合とが含まれる。なお、「完全」とは、脱イオン水に、拭取性向上剤の相が存在しないことを意味する。
【0053】
上記拭取性向上剤は、0.6以上、好ましくは0.7以上、そしてより好ましくは0.8以上のIOBを有する。また、上記拭取性向上剤は、3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下、そしてさらにいっそう好ましくは1.5以下のIOBを有する。それにより、拭取性向上剤、及び拭取性向上組成物が、疎水性物質及び親水性物質とある程度の親和性を有し、高粘性体液と一定の親和性(なじみやすさ)を有し、高粘性体液が上記被膜と適度になじむことができる。また、親水性の高い体液、例えば、尿との親和性が高くなりすぎず、親水性の高い体液により、拭取性向上剤が流れにくくなる。
【0054】
IOB(Inorganic Organic Balance)は、親水性及び親油性のバランスを示す指標であり、本明細書では、小田らによる次式:
IOB=無機性値/有機性値
により算出される値を意味する。
【0055】
上記無機性値と、有機性値とは、藤田穆「有機化合物の予測と有機概念図」化学の領域Vol.11,No.10(1957)p.719-725)に記載される有機概念図に基づく。
藤田氏による、主要な基の有機性値及び無機性値を、下記表1にまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
上記拭取性向上剤は、25℃において、好ましくは39~60mN/m、そしてより好ましくは39~50mN/mの表面張力を有する。それにより、拭取性向上剤が、吸収性物品から着用者の皮膚に移動しやすくなる。
なお、本明細書では、25℃における表面張力を、「mN/m(25℃)」の単位で表記する場合がある。
【0058】
上記表面張力は、Wilhelmy法を用いて、25℃で測定される。
具体的には、上記表面張力は、Kibron社のEZ-Pi Plusを用い、プローブの移動速度を0.2mm/sとし、測定開始から60秒後における表面張力を採用する。
表面張力は、同一の拭取性向上剤で10回測定を行い、それらの平均値を採用する。
【0059】
上記拭取性向上剤は、25℃において、好ましくは30~65°、より好ましくは30~55°、さらに好ましくは30~45°、そしてさらにいっそう好ましくは30~40°のPETプレート接触角を有する。それにより、拭取性向上剤が、着用者の皮膚上で拡がり、被膜を形成しやすくなり、そして清浄化用シート等により、拭取性向上剤の被膜を剥離しやすくなる。
【0060】
皮膚に対する水の接触角は、82°であることが知られている(日本レオロジー学会誌,2006年,第34巻,第3号,171-175頁,「スキンケア製品の塗り心地とそのレオロジー特性」)。脱イオン水の、種々の樹脂製プレートに対する接触角を調べたところ、脱イオンの、PETプレートへの接触角が83°であり、PETプレートが、皮膚と非常に近い親水性を示すことがわかった。従って、本明細書では、皮膚に対する濡れ性を評価するために、PETプレートを用いる。
なお、本明細書では、25℃におけるPETプレート接触角を、「°(25℃)」の単位で表記する場合がある。
【0061】
上記PETプレート接触角は、以下の通り測定される。
(1)25℃の恒温室に、自動接触角計CA-V型(協和界面科学株式会社製)と、ポリエチレンテレフタラート製のプレート(以下、「PETプレート」と称する)とを準備する。なお、PETプレートは、PET-6010(タキロンシーアイ株式会社製,サイズ:41.5×80.0×1.0mm)である。
(2)PETプレートに、シリンジを用いて拭取性向上剤を約2μL滴下し、滴下から5秒後に、自動接触角計CA-V型を用いて、θ/2法により拭取性向上剤の接触角を測定する。
(3)測定を、PETプレートの異なる場所で10回行い、それらの平均値を接触角として採用する。
【0062】
上記拭取性向上剤は、25℃において、好ましくは0~30°、より好ましくは0~25°、さらに好ましくは0~20°、そしてさらにいっそう好ましくは0~15°の水接触角を有する。それにより、清浄化用シートに移動した拭取性向上剤が、清浄化用シートから離れにくくなり、そして清浄化用シート上の拭取性向上剤が、高粘性体液を、皮膚上に形成された被膜ごと除去しやすくなる。
なお、本明細書では、25℃における水接触角を、「°(25℃)」の単位で表記する場合がある。
【0063】
上記水接触角は、以下の通り測定される。
(1)25℃の恒温室に、自動接触角計CA-V型(協和界面科学株式会社製)と、ポリエチレンテレフタラート製のプレート(以下、「PETプレート」と称する)とを準備する。なお、PETプレートは、タキロンシーアイ株式会社のPET-6010(41.5×80.0×1mm)である。
(2)PETプレートに、拭取性向上剤を10g/m2の坪量で塗布する。拭取性向上剤は、PETプレートに、例えば、バーコーター(例えば、ステンレス棒に、ステンレス製の針金が巻かれているもの)により塗布することができる。
【0064】
(3)拭取性向上剤の塗布から5分後、拭取性向上剤上に、シリンジを用いて脱イオン水を約2μL滴下し、滴下から5秒後に、自動接触角計CA-V型を用いて、θ/2法により脱イオン水の接触角を測定する。
(4)測定を、拭取性向上剤の異なる場所で10回行い、それらの平均値を接触角として採用する。
【0065】
上記拭取性向上剤は、40℃において、90~500mm2/s、好ましくは150~450mm2/s、そしてより好ましくは200~400mm2/sの動粘度を有する。それにより、拭取性向上組成物が、吸収性物品の保管時等に移動しにくくなり、吸収性物品の使用時に、着用者の皮膚、次いで清浄化用シートに移動しやすくなる。
なお、本明細書では、40℃における動粘度を、「mm2/s(40℃)」の単位で表記する場合がある。
【0066】
上記動粘度は、JIS K 2283:2000の「5.動粘度試験方法」に従って、キャノンフェンスケ逆流形粘度計を用いて、40℃の試験温度で測定される。
なお、上記動粘度は、試験温度を25℃に変更することにより、25℃の動粘度を測定することもできる。
【0067】
上記拭取性向上剤は、好ましくは600~1,800、より好ましくは800~1,600、そしてさらに好ましくは1,000~1,400の重量平均分子量を有する。それにより、着用者が、拭取性向上組成物に対して、拭取性向上剤に由来するべたつきを覚えにくくなる。
【0068】
なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(例えば、逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(例えば、1種の脂肪酸と、1種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、又はi=1,2・・・)からなる系において、次の式:
w=ΣNii 2/ΣNii
により求められるMwを意味する。
【0069】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。
GPCの測定条件としては、例えば、以下が挙げられる。
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF-801、KF-803及びKF-804
溶離液:THF
流量 :1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
なお、本明細書の実施例に記載される重量平均分子量は、上記条件により測定したものである。
【0070】
上記拭取性向上剤は、その蒸気圧が低いことが好ましい。上記拭取性向上剤の蒸気圧は、25℃(1気圧)で0~200Paであることが好ましく、0~100Paであることがより好ましく、0~10Paであることがさらに好ましく、0~1Paであることがさらにいっそう好ましく、そして0.0~0.1Paであることがさらにいっそう好ましい。
【0071】
本開示の吸収性物品が、人体に接して用いられることを考慮すると、上記蒸気圧は、40℃(1気圧)で0~700Paであることが好ましく、0~100Paであることがより好ましく、0~10Paであることがさらに好ましく、0~1Paであることがさらにいっそう好ましく、そして0.0~0.1Paであることがさらにいっそう好ましい。上記拭取性向上剤の蒸気圧が高いと、保存中に気化し、その量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合があるからである。
【0072】
上記拭取性向上剤は、好ましくは、次の(i)及び(ii)、
(i) (i-1)炭化水素部分と、(i-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物(以下、「化合物(i)」と称する場合がある)、及び
(ii) (ii-1)炭化水素部分と、(ii-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(ii-3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物(以下、「化合物(ii)」と称する場合がある)、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0073】
本明細書において、「炭化水素部分」は、炭素と水素とから成る部分を意味し、鎖状炭化水素部分、例えば、パラフィン系炭化水素部分(二重結合及び三重結合を含まない、アルカンとも称される)、オレフィン系炭化水素部分(二重結合を1つ含む、アルケンとも称される)、アセチレン系炭化水素部分(三重結合を1つ含む、アルキンとも称される)、及び二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素部分、並びに環状炭化水素部分、例えば、芳香族炭化水素部分、脂環式炭化水素部分、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0074】
なお、上記鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。また、上記脂環式炭化水素部分は、二重結合を含んでいてもよい。
上記炭化水素部分は、鎖状炭化水素部分及び脂環式炭化水素部分、並びにそれらの組み合わせ(例えば、脂環式炭化水素部分と、当該脂環式炭化水素部分に連結された鎖状炭化水素部分とを備える)からなる群から選択されることができる。
【0075】
化合物(i)及び化合物(ii)において、オキシ基(-O-)が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基(-O-)は隣接していない。従って、化合物(i)及び化合物(ii)には、オキシ基が連続する化合物(いわゆる、過酸化物)は含まれない。
【0076】
上記拭取性向上剤が化合物(ii)である場合には、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子がカルボキシル基(-COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(-OH)で置換された化合物の方が好ましい。カルボキシル基が体液中の金属等と結合し、拭取性向上剤のIOB、表面張力、水溶解度等が高くなり、所定の範囲を超える場合があるからである。
【0077】
上記拭取性向上剤は、より好ましくは、次の(i’)及び(ii’)、
(i’) (i’-1)炭化水素部分と、(i’-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物(以下、「化合物(i’)」と称する場合がある)、及び
(ii’) (ii’-1)炭化水素部分と、(ii’-2)上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(ii’-3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物(以下、「化合物(ii’)」と称する場合がある)、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0078】
化合物(i’)及び化合物(ii’)において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合、すなわち、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)及びエーテル結合(-O-)から選択される2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接しておらず、各結合の間には、少なくとも、炭素原子が1つ介在する。
【0079】
上記拭取性向上剤が化合物(ii’)である場合には、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子がカルボキシル基(-COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(-OH)で置換された化合物の方が好ましい。カルボキシル基が体液中の金属等と結合し、拭取性向上剤のIOB、表面張力、水溶解度等が高くなり、所定の範囲を超える場合があるからである。
【0080】
上記拭取性向上剤は、さらに好ましくは、次の(A)、
(A) (A1)炭化水素部分と、上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物と、(A2)ポリオキシアルキレングリコールとのエステル又はエーテル(以下、「化合物A」と称する場合がある)、
である。
以下、化合物(A)について詳細に説明する。
【0081】
[化合物(A)]
化合物(A)は、(A1)炭化水素部分と、上記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物(以下、「化合物(A1)」と称する場合がある)と、(A2)ポリオキシアルキレングリコールとのエステル又はエーテルである。
【0082】
化合物(A1)は、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される基を、少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上、そしてさらに好ましくは3つ以上有する。化合物(A1)が有する上記基の数が増えることにより、例えば、上記基を3つ以上有することにより、化合物(A1)、ひいては化合物(A)が分岐ポリマーとなり、拭取性向上剤が、好ましい温度-粘性挙動を有する。
【0083】
化合物(A1)の例としては、(a1)糖類、(a2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1~10個のヒドロキシル基とを有する化合物、(a3)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、1~6個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸、及び(a4)それらの任意のエーテル又はエステルが挙げられる。
【0084】
(a1)糖類としては、例えば、単糖類(例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース)、二糖類(例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース)等が挙げられる。
【0085】
(a2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1~10個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(a2)」と称する場合がある)としては、以下が例示される。
・鎖状炭化水素デカオール、例えば、アルカンデカオール
・鎖状炭化水素ノナオール、例えば、アルカンノナオール
・鎖状炭化水素オクタオール、例えば、アルカンオクタオール、例えば、D-エリトロ-D-ガラクト-オクチトール
・鎖状炭化水素ヘプタオール、例えば、アルカンヘプタオール、例えば、ボレミトール、ペルセイトール
・鎖状炭化水素ヘキサオール、例えば、アルカンヘキサオール、例えば、D-イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D-グルシトール(ソルビトール)、マンニトール
・鎖状炭化水素ペンタオール、例えば、アルカンペンタオール、例えば、D-アラビニトール、L-アラビニトール、キシリトール、リビトール(アドニトール)
・鎖状炭化水素テトラオール、例えば、アルカンテトラオール、例えば、エリトリトール、D-トレイトール、L-トレイトール、ペンタエリトリトール
・鎖状炭化水素トリオール、例えば、アルカントリオール、例えば、グリセロール(グリセリン)
・鎖状炭化水素ジオール、例えば、アルカンジオール、例えば、C2~C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコール
・鎖状炭化水素モノオール、例えば、アルカンモノオール、例えば、C2~C6のアルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール又はヘキサノール
【0086】
化合物(a2)は、鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する3~10個のヒドロキシル基とを有する化合物であることが好ましい。それにより、拭取性向上剤が分岐ポリマーとなり、拭取性向上剤が25℃において高い粘度を有することができ、常温での保管時等に、拭取性向上剤が移動しにくくなる。
【0087】
(a3)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、1~6個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸(以下、「化合物(a3)」と称する場合がある)としては、以下が例示される。
・鎖状炭化水素ヘキサカルボン酸、例えば、アルカンヘキサカルボン酸、例えば、C30以下のアルカンヘキサカルボン酸、例えば、ブタン六酸、ペンタン六酸、ヘキサン六酸、ヘプタン六酸、オクタン六酸、ノナン六酸及びデカン六酸
・鎖状炭化水素ペンタカルボン酸、例えば、アルカンペンタカルボン酸、例えば、C30以下のアルカンペンタカルボン酸、例えば、ブタン五酸、ペンタン五酸、ヘキサン五酸、ヘプタン五酸、オクタン五酸、ノナン五酸及びデカン五酸
【0088】
・鎖状炭化水素テトラカルボン酸、例えば、アルカンテトラカルボン酸、例えば、C30以下のアルカンテトラカルボン酸、例えば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸及びデカン四酸
・鎖状炭化水素トリカルボン酸、例えば、アルカントリカルボン酸、例えば、C30以下のアルカントリカルボン酸、例えば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸及びデカン三酸
・鎖状炭化水素ジカルボン酸、例えば、アルカンジカルボン酸、例えば、C30以下のアルカンジカルボン酸、例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸及びデカン二酸
・鎖状炭化水素モノカルボン酸、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸
【0089】
上記飽和脂肪酸としては、例えば、C2~C30の飽和脂肪酸、例えば、酢酸(C2)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)及びその異性体、例えば、2-メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)及びその異性体、例えば、2-メチルブタン酸(C5)、2,2-ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)及びその異性体、例えば、2-エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、並びに列挙されていないこれらの異性体が挙げられる。
【0090】
上記不飽和脂肪酸としては、例えば、C3~C20の不飽和脂肪酸、例えば、モノ不飽和脂肪酸、例えば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、例えば、α-リノレン酸(C18)及びγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、例えば、α-エレオステアリン酸(C18)及びβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、例えば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、例えば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、並びにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
【0091】
化合物(a3)は、鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、3~6個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸であることが好ましい。それにより、拭取性向上剤が分岐ポリマーとなり、拭取性向上剤が25℃において高い粘度を有することができ、常温での保管時等に、拭取性向上剤が移動しにくくなる。
【0092】
(a4)それらの任意のエーテル又はエステル(以下、「化合物(a4)」と称する場合がある)としては、化合物(a1)から化合物(a4)の任意のエステル又はエーテル、例えば、化合物(a2)のエーテル、例えば、ポリアルカントリオール、例えば、ポリグリセロール、例えば、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリコール、ポリアルカンジオール、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0093】
また、化合物(a3)には、2~4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ヒドロキシ酸、例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等、2~4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素アルコキシ酸、例えば、O-アセチルクエン酸、及び2~4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素オキソ酸が含まれる。
【0094】
化合物(A2)の例としては、ポリオキシC2~C6アルキレングリコールが挙げられる。上記ポリオキシC2~C6アルキレングリコールは、i)オキシC2~C6アルキレン骨格、すなわち、オキシエチレン骨格、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、及びオキシヘキシレン骨格から成る群から選択されるいずれか1種の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するホモポリマー、ii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するブロックコポリマー、又はiii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するランダムコポリマーを意味する。
【0095】
上記ポリオキシC2~C6アルキレングリコールは、次の式(1):
HO-(Cm2mO)n-H (1)
(式中、mは、2~6の整数である)
により表わされる。
【0096】
化合物(A)の具体例として、以下が挙げられる。
・ユニオール HS-1600D,日油株式会社製
ソルビトール1モルに、プロピレンオキシド25モルを付加させることにより生成したポリオキシプロピレンソルビット,重量平均分子量:約1,600
・ユニルーブ DGP-700,日油株式会社製
ジグリセロール1モルに、プロピレンオキシド9モルを付加させることにより生成したポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル,重量平均分子量:約700
【0097】
・マクビオブライドMG-10P,日油株式会社製
グルコース1モルに、プロピレンオキシド10モルを付加させることにより生成したポリオキシプロピレンメチルグルコシド,重量平均分子量:約770
・マクビオブライドMG-20P,日油株式会社製
グルコース1モルに、プロピレンオキシド20モルを付加させることにより生成したポリオキシプロピレンメチルグルコシド,重量平均分子量:約1,350
【0098】
・マクビオブライドMG-10E,日油株式会社製
グルコース1モルに、エチレンオキシド10モルを付加させることにより生成したポリオキシエチレンメチルグルコシド,重量平均分子量:約630
・マクビオブライドMG-20E,日油株式会社製
グルコース1モルに、エチレンオキシド20モルを付加させることにより生成したポリオキシエチレンメチルグルコシド,重量平均分子量:約1,070
【0099】
・ウィルブライトS-753,日油株式会社製
グリセリン1モルに、エチレンオキシド8モル、プロピレンオキシド5モル、ブチレンオキシド3モルを付加することにより生成したポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリセリン,重量平均分子量:約960
【0100】
本開示の吸収性物品では、拭取性向上剤が、分岐ポリマーであることが好ましい。拭取性向上剤が25℃において高い粘度を有することができ、常温での保管時等に、拭取性向上剤が移動しにくくなる。
上記分岐ポリマーは、好ましくは3以上の分岐鎖、より好ましくは4以上の分岐鎖、さらに好ましくは5以上の分岐鎖、そしてさらにいっそう好ましくは6以上の分岐鎖を有する。
【0101】
[セルロースナノファイバー(CNF)]
上記CNFは、親水性を有することが好ましく、25℃において、100gの脱イオン水に、好ましくは0.01g以上、そしてより好ましくは0.1g以上の水分散度を有する。また、上記CNFは、好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、そしてさらに好ましくは1.0g以下の水分散度を有する。それにより、着用者の皮膚に残存する拭取性向上組成物が、新たな清浄化用シート等により除去されやすく、着用者の皮膚に残存しにくくなる。
【0102】
上記水分散度は、25℃において、100gの脱イオン水に、所定量、例えば、0.01gのCNFが添加された状態において、CNFが脱イオン水に分散しているか否か、又はCNFが脱イオン水に混和しているか否かを目視で評価することにより測定することができる。
【0103】
上記CNFとしては、特に制限されず、例えば、セルロースの6位の1級水酸基を積極的に化学変性していないもの、例えば、パルプ繊維を機械的処理する(例えば、湿式粉砕する)ことにより製造されたもの、セルロースの6位の1級水酸基を化学変性したもの等が挙げられる。
【0104】
上記セルロースの6位の1級水酸基を化学変性したCNFとしては、例えば、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー及びリン酸エステル基を導入したセルロースナノファイバー等のアニオン変性セルロースナノファイバーが挙げられる。
【0105】
上記カルボキシル化CNFは、CNFを構成するセルロース骨格(グルコピラノースモノマー)の6位の1級水酸基(-CH2OH)の少なくとも一部を、カルボキシル化(-COOH,-COO-)したCNFを意味する。上記カルボキシル化CNFは、絶乾質量1gあたり、カルボキシル基(COOH,-COO-)を、好ましくは0.1~2.0mmol/g、そしてより好ましくは0.5mmol/g~10.7mmol/gの範囲を有する。カルボキシル化CNFが、より高い水溶性を有しやすくなるともに、より高いレオロジー特性(チキソトロピック、擬塑性等)を有しやすくなる観点からである。
【0106】
上記カルボキシメチル化CNFは、CNFを構成するセルロースの水酸基(2位,3位及び6位)の少なくとも一部を、カルボキシメチル化(-CH2COOH,-CH2COO-)したCNFを意味する。上記カルボキシメチル化CNFは、絶乾質量1gあたり、カルボキシメチル基(-CH2COOH,-CH2COO-)を、好ましくは0.01~0.50mmol/g、そしてより好ましくは0.05mmol/g~0.40mmol/gの範囲を有する。カルボキシメチル化CNFが、より高い水溶性を有しやすくなるともに、より高いレオロジー特性(チキソトロピック、擬塑性等)を有しやすくなる観点からである。
【0107】
なお、本明細書では、上記絶乾質量は、JIS P 8203:2010の「紙,板紙及びパルプ-絶乾率の測定方法-乾燥器による方法」に準拠し、「試験片を105℃±2℃で乾燥し、恒量に達したときの質量」を意味する。
【0108】
[拭取性向上組成物]
上記拭取性向上組成物は、剪断速度:n(1/s)における粘度をηnと表す場合に、25℃において、1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、そしてさらに好ましくは1.3倍以上のη10/η100の粘度比を有する。また、上記拭取性向上組成物は、25℃において、5.0倍以下、より好ましくは4.0倍以下、そしてさらに好ましくは3.5倍以下のη10/η100の粘度比を有する。それにより、吸収性物品の使用前(例えば、保管時等)の剪断速度が低い状態では、拭取性向上組成物の粘度が高く、拭取性向上組成物が、液透過性シートの肌当接面から移動しにくく、そして吸収性物品の使用時の剪断速度が高い状態では、拭取性向上組成物の粘度が低くなり、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0109】
上記拭取性向上組成物は、25℃において、剪断速度100(1/s)における粘度:η100が、好ましくは1,000~5,000mPa・s、より好ましくは1,500~4,000mPa・s、そしてさらに好ましくは2,000~3,500mPa・sの範囲にある。それにより、吸収性物品の使用時の剪断速度が高い状態において、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0110】
上記拭取性向上組成物は、35℃において、1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、そしてさらに好ましくは1.3倍以上のη10/η100の粘度比を有する。また、上記拭取性向上組成物は、35℃において、5.0倍以下、より好ましくは4.0倍以下、そしてさらに好ましくは3.5倍以下のη10/η100の粘度比を有する。それにより、夏等の暑い日であっても、吸収性物品の使用前(例えば、保管時等)の剪断速度が低い状態では、拭取性向上組成物の粘度が高く、拭取性向上組成物が、液透過性シートの肌当接面から移動しにくく、そして吸収性物品の使用時の剪断速度が高い状態では、拭取性向上組成物の粘度が低くなり、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0111】
上記拭取性向上組成物は、35℃において、剪断速度100(1/s)における粘度:η100が、好ましくは500~4,500mPa・s、より好ましくは1,000~3,500mPa・s、そしてさらに好ましくは1,500~3,000mPa・sの範囲にある。それにより、夏等の暑い日であっても、吸収性物品の使用時の剪断速度が高い状態において、吸収性物品の肌当接面に存在する拭取性向上組成物が、吸収性物品の着用者の皮膚に移動し、被膜を形成しやすくなる。
【0112】
拭取性向上組成物の粘度は、以下の機器を用いて測定することができる。
・機器:Thermo Fisher SCIENTIFIC社製
HAAKE RheoStress 1
・センサー:Cone φ60mm,1°angle C60/1
・剪断速度:10.0,100.0(1/s)
・測定時間:30秒
・サンプリング;100,平均値算出
【0113】
上記拭取性向上組成物は、拭取性向上剤及びCNFを、特に制限なく任意の比率で含むことができる。上記拭取性向上組成物は、CNFを、拭取性向上剤100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.08質量部以上、そしてさらにいっそう好ましくは0.10質量部以上の比率で含む。また、上記拭取性向上組成物は、CNFを、拭取性向上剤100質量部に対して、好ましくは5.00質量部以下、より好ましくは3.00質量部以下、さらに好ましくは2.00質量部以下、そしてさらにいっそう好ましくは1.00質量部以下の比率で含む。本開示の効果の観点からである。
【0114】
上記拭取性向上組成物は、水を、任意の比率で含むことができる。
上記拭取性向上組成物は、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、そしてさらに好ましくは8.0質量%以下の水を含む(含水率を有する)。それにより、上記拭取性向上組成物が有する水分が、吸収性物品の吸収性を阻害しにくくなる。
上記含水率は、上記拭取性向上組成物を、例えば、110℃で3時間乾燥させることにより測定することができる。上記拭取性向上組成物が、水以外の揮発性成分、例えば、有機溶媒を含む場合には、揮発分を公知の方法で分析することにより、上記含水率を測定することができる。
【0115】
上記拭取性向上組成物は、25℃において、100gの脱イオン水に、好ましくは50g以上、より好ましくは100g以上、さらに好ましくは150g以上、そしてさらにいっそう好ましくは200g以上の水分散度を有する。それにより、着用者の皮膚に残存する拭取性向上組成物が、新たな清浄化用シート等により除去されやすく、着用者の皮膚に残存しにくくなる。
【0116】
上記水分散度は、25℃において、100gの脱イオン水に、所定量、例えば、50gの拭取性向上組成物を添加し、1分間静置し、必要に応じて軽く攪拌し、次いで、拭取性向上組成物が脱イオン水に分散したか否か(正確には、拭取性向上剤が水に溶解し、CNFが脱イオン水に分散したか否か)目視で評価することにより測定することができる。
【0117】
上記拭取性向上組成物は、上述の拭取性向上剤及びCNFに加え、少なくとも1種の他の成分とを含むことができる。
上記少なくとも1種の他の成分としては、本開示の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、当業界で吸収性物品、特にトップシートに慣用的に適用されるものが挙げられる。
【0118】
上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン、シリコーン系レジン等が挙げられる。
上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、酸化防止剤、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0119】
上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、ビタミン、例えば、天然ビタミン又は合成ビタミンが挙げられる。上記ビタミンとしては、例えば、水溶性ビタミン、例えば、ビタミンB群、例えば、ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB3,ビタミンB5,ビタミンB6,ビタミンB7,ビタミンB9,ビタミンB12等、ビタミンCが挙げられる。
上記ビタミンとしては、例えば、脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA群、ビタミンD群、ビタミンE群、及びビタミンK群等が挙げられる。
上記ビタミンにはまた、それらの誘導体も含まれる。
【0120】
上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、アミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリン等、並びにペプチドが挙げられる。
【0121】
上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、ゼオライト、例えば、天然ゼオライト、例えば、方沸石、菱沸石、輝沸石、ナトロライト、束沸石、及びソモソナイト、並びに、合成ゼオライトが挙げられる。
上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、コレステロール、ヒアルロン酸、レシチン、セラミド等が挙げられる。
【0122】
また、上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、薬剤、例えば、皮膚収斂剤、抗ニキビ剤、抗シワ剤、抗セルライト剤、美白剤、抗菌剤、抗カビ剤等が挙げられる。
上記皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸等、油溶性皮膚収斂剤、例えば、油溶性ポリフェノールが挙げられる。上記油溶性ポリフェノールとしては、天然の油溶性ポリフェノール、例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、ゴボウエキス、サルビアエキス、シナノキエキス、セイヨウボダイジュエキス、シラカバエキス、スギナエキス、セージエキス、サルビアエキス、テウチグルミエキス、ハイビスカスエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マロニエエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。
【0123】
上記抗ニキビ剤としては、例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、イオウ、エリスロマイシン、亜鉛等が挙げられる。
上記抗シワ剤としては、例えば、乳酸、サリチル酸、サリチル酸誘導体、グリコール酸、フィチン酸、リポ酸、リソフォスファチド酸が挙げられる。
【0124】
上記抗セルライト剤としては、例えば、キサンチン化合物、例えば、アミノフィリン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン等が挙げられる。
上記美白剤としては、例えば、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、グルコサミン及び誘導体、フィトステロール誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにクワ抽出物及び胎盤抽出物が挙げられる。
【0125】
また、上記少なくとも1種の他の成分としては、例えば、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤、香料、色素、染料、顔料、植物抽出エキス等が挙げられる。上記抗炎症成分としては、例えば、天然由来の抗炎症剤、例えば、ボタン、オオゴン、オトギリソウ、カモミール、甘草、モモノハ、ヨモギ、シソエキス等、合成抗炎症剤、例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
上記pH調整剤としては、皮膚を弱酸性に保つためのもの、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。
上記顔料としては、例えば、酸化チタンが挙げられる。
【0126】
本開示の吸収性物品において、上記拭取性向上組成物が、上記少なくとも1種の他の成分を含む場合には、上記拭取性向上組成物は、拭取性向上剤及びCNFと、少なくとも1種の他の成分とを、それぞれ、好ましくは50.0~99.9質量%及び0.1~50.0質量%、より好ましくは60.0~99.9質量%及び0.1~40.0質量%、さらに好ましくは70.0~99.9質量%及び0.1~30.0質量%、さらにいっそう好ましくは80.0~99.9質量%及び0.1~20.0質量%、さらにいっそう好ましくは90.0~99.9質量%及び0.1~10.0質量%、そしてさらにいっそう好ましくは95.0~99.9質量%及び0.1~5.0質量%含む。本開示の効果の観点からである。
【0127】
上記拭取性向上組成物は、本開示の効果を奏する範囲で、界面活性剤をさらに含んでもよい。より具体的には、上記拭取性向上組成物は、界面活性剤を、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、そしてさらにいっそう好ましくは0.1質量%以下の量で含む。
界面活性剤の量が増えると、拭取性向上剤の表面張力、PET接触角、水接触角等が所定の範囲から外れ、拭取性向上剤がその効果を発揮しにくくなる傾向がある。
【0128】
上記拭取性向上組成物は、本開示の効果を奏する範囲で、有機溶媒、特に水溶性有機溶媒を含むことができる。上記拭取性向上組成物が有機溶媒を含む場合には、上記拭取性向上組成物は、有機溶媒を、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、そしてさらに好ましくは3.0質量%以下の範囲で含む。
【0129】
上記拭取性向上組成物は、拭取性向上剤と同様に、上記拭取性向上組成物全体で、25℃において、好ましくは39~60mN/m、そしてより好ましくは39~50mN/mの表面張力を有する。それにより、拭取性向上組成物、ひいては拭取性向上剤が、吸収性物品から着用者の皮膚に移動しやすくなる。
【0130】
上記拭取性向上組成物は、拭取性向上剤と同様に、25℃において、好ましくは30~65°、より好ましくは30~55°、さらに好ましくは30~45°、そしてさらにいっそう好ましくは30~40°のPETプレート接触角を有する。それにより、拭取性向上組成物、ひいては拭取性向上剤が、着用者の皮膚上で拡がり、被膜を形成しやすくなり、そして清浄化用シート等により、拭取性向上剤の被膜を剥離しやすくなる。
【0131】
上記拭取性向上組成物は、拭取性向上剤と同様に、25℃において、好ましくは0~30°、より好ましくは0~25°、さらに好ましくは0~20°、そしてさらにいっそう好ましくは0~15°の水接触角を有する。それにより、清浄化用シートに移動した拭取性向上組成物、ひいては拭取性向上剤が、清浄化用シートから離れにくくなり、そして清浄化用シート上の拭取性向上剤が、高粘性体液を、皮膚上に形成された被膜ごと除去しやすくなる。
【0132】
本開示の吸収性物品は、吸収性物品の肌当接面に、上記拭取性向上組成物を備えている。上記吸収性物品としては、肌当接面を有する液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収体とを備えているものが挙げられる。
【0133】
上記液透過性シートとしては、当技術分野で通常用いられているものを、特に制限なく採用することができ、例えば、液体を透過する構造を有するシート状材料、例えば、開孔フィルム、織布、不織布等が挙げられる。上記織布及び不織布を構成する繊維として、天然繊維及び化学繊維が挙げられ、天然繊維としては、例えば、粉砕パルプ、コットン等のセルロースが挙げられ、化学繊維としては、例えば、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維、並びに親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維が挙げられる。
【0134】
上記熱可塑性疎水性化学繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の単繊維、PE及びPPのグラフト重合物からなる繊維が挙げられる。
上記不織布の例としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)等が挙げられる。
【0135】
本開示の吸収性物品は、当技術分野に公知の方法に従って吸収性物品を形成した後、例えば、液透過性シート、例えば、液透過性シートの排泄口当接域に、拭取性向上剤又は拭取性向上組成物を塗布することにより製造することができる。
【0136】
上記拭取性向上組成物は、所望により、揮発性溶媒、例えば、揮発性水溶性有機溶媒、例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒等を含む塗布液として塗装することができる。上記塗布液が揮発性溶媒を含むことにより、上記拭取性向上剤又は拭取性向上組成物を含む塗布液の粘度が下がるために、塗布が容易になる、塗装時の加温が不要になる等の塗布工程の簡易化が図れる。
【0137】
上記拭取性向上組成物、あるいはそれを含む塗布液の塗布方法は、特に制限されるものではなく、必要に応じて上記拭取性向上剤又は拭取性向上組成物、あるいはそれを含む塗布液を加熱し、例えば、非接触式のコーター、例えば、スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等、接触式のコーター等の塗布装置を用いて、上記拭取性向上剤又は拭取性向上組成物、あるいはそれを含む塗布液を塗布することができる。上記塗布装置としては、液滴状又は粒子状の改質剤が全体に均一に分散される点、及び資材にダメージを与えない観点から、非接触式のコーターが好ましい。
【0138】
本開示の吸収性物品では、拭取性向上組成物は、本開示の効果を奏する範囲で任意の場所に塗工することができ、例えば、吸収性物品の厚さ方向において、液透過性シートの肌当接面等に塗工することができる。
本開示の吸収性物品では、拭取性向上剤又は拭取性向上組成物は、吸収性物品の平面方向において、例えば、液透過性シートの全体、又は排泄口当接域、具体的には、肛門当接域、膣口当接域等に配置されうる。
【0139】
本開示の吸収性物品では、拭取性向上組成物を、拭取性向上剤の坪量が、好ましくは1.0~30g/m2、より好ましくは2.0~20g/m2、そしてさらに好ましくは3.0~10g/m2の坪量となるような範囲で含む。それにより、拭取性向上剤が、その機能を発揮しつつ、粘度の低い体液が吸収体に移行することを阻害しにくくなる。
【0140】
本明細書では、吸収性物品が含む拭取性向上組成物の坪量は、以下のように測定される。
(1)吸収性物品、例えば、液透過性シートの測定すべき範囲を、鋭利な刃物、例えば、カッターの替え刃を用いて、その厚さを変化させないように切り出して、サンプルを得る。
(2)サンプルの面積:SA(m2)及び質量:SM0(g)を測定する。
(3)サンプルを、拭取性向上組成物を溶解及び分散可能な溶液、例えば、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒と、水との混合溶液中で、少なくとも3分間攪拌し、拭取性向上組成物を溶媒中に溶解させる。
【0141】
(4)サンプルを、質量を測定したろ紙の上でろ過し、ろ紙上で、サンプルを溶媒で十分に洗浄する。ろ紙上のサンプルを、60℃のオーブン内で乾燥させる。
(5)ろ紙及びサンプルの質量を測定し、そこからろ紙の質量を減ずることにより、乾燥後のサンプルの質量:SM1(g)を算出する。
(6)拭取性向上剤の坪量BBS(g/m2)を、次の式:
BBS(g/m2)=[SM0(g)-SM1(g)]/SA(m2
により算出する。
なお、誤差を少なくするために、サンプルの総面積が100cm2を超えるように、複数の吸収性物品から複数のサンプルを採取し、複数回実験を繰り返し、それらの平均値を採用する。
【0142】
本開示の吸収性物品としては、使い捨ておむつ、尿取りパッド、使い捨てショーツ、生理用ナプキン、パンティーライナー、ペットシート、おむつ交換用シート等が挙げられる。
【0143】
[清浄化用シート]
本開示の清浄化用シートは、体液の拭取性を向上させる拭取性向上剤及びセルロースナノファイバーを含む拭取性向上組成物と、繊維シートとを含む。
清浄化用シート用の拭取性向上剤は、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有する。
清浄化用シート用の拭取性向上剤は、好ましくは39~60mN/m(25℃)の表面張力を有し、好ましくは30~65°(25℃)のPETプレート接触角を有し、好ましくは0~30°(25℃)の水接触角を有する。
【0144】
上記拭取性向上剤の水溶解度、IOB、表面張力及びPETプレート接触角の好ましい範囲は、「吸収性物品」の箇所で説明済みであるため、ここでの説明を省略する。
上記繊維シートとしては、「吸収性物品」の箇所で説明した液透過性シートと同様のものが挙げられる。
【0145】
[拭取性向上組成物の使用]
本開示の拭取性向上組成物の使用において、拭取性向上剤は、100gの脱イオン水に、100g(25℃)以上の水溶解度を有するとともに、0.6~3.0のIOBを有する。
清浄化用シート用の拭取性向上剤は、好ましくは39~60mN/m(25℃)の表面張力を有し、好ましくは30~65°(25℃)のPETプレート接触角を有し、好ましくは0~30°(25℃)の水接触角を有する。
【0146】
上記拭取性向上剤の水溶解度、IOB、表面張力及びPETプレート接触角の好ましい範囲は、「吸収性物品」の箇所で説明済みであるため、ここでの説明を省略する。
拭取性向上組成物が用いられる繊維製品としては、特に制限されず、上述の吸収性物品、上記清浄化用シート等が挙げられる。
【実施例
【0147】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[例1]
[便拭取率及び被膜形成性の評価]
拭取性向上剤そのものの効果を確認するため、以下の実験を行った。
表2に示される拭取性向上剤No.1~No.22を準備した。拭取性向上剤No.1~No.7については、本明細書にて説明済のため省略する。拭取性向上剤No.8~No.22の詳細は、以下の通りであるが、
<No.8>
・ユニオールD-1000,日油株式会社製
【0148】
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,000
<No.9>
・ユニオールPB-700,日油株式会社製
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール,重量平均分子量:約700
<No.10>
・ソルビュールGS-01
PPG-13-デシルテトラデセス-24,重量平均分子量:約2,160
【0149】
<No.11>
・ユニルーブMS-70K,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのステアリルエーテル,約15の繰返し単位,重量平均分子量:約1,140
<No.12>
・ユニセーフPGML,日油株式会社製
ラウリン酸プロピレングリコール,重量平均分子量:約260
<No.13>
・コムポールBL,日油株式会社製
ブチレングリコールのドデカン酸(C12)モノエステル,重量平均分子量:約270
【0150】
<No.14>
・パナセート810S,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約480
<No.15>
・ユニオール TG-1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約1,000
【0151】
<No.16>
・ユニスター H-408BRS,日油株式会社製
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール,重量平均分子量:約640
<No.17>
・パールリーム6,日油株式会社製
流動イソパラフィン、イソブテン及びn-ブテンを共重合し、次いで水素を付加することにより生成された分岐鎖炭化水素、重合度:約5~約10,重量平均分子量:約330
<No.18>
・グリセリン
【0152】
<No.19>
・ユニオールSGP-65,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約8の繰返し単位,重量平均分子量:約550
<No.20>
・アクロビュートMB-90,日油株式会社製
PPG-90ブチルエーテル,重量平均分子量:約5,300
【0153】
<No.21>
・ユニルーブ75DE-2620R,日油株式会社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(240E.O.)(60P.O.),重量平均分子量:約14,000
<No.22>
マクビオブライドMG-10Pを50質量部と、ステアリルアルコールを50質量部とを混合し、拭取性向上剤No.22とした。
なお、ステアリルアルコールは、特許文献3に、25℃で固体の固体脂肪族アルコール及び結晶化促進剤Cとして列挙されている。
拭取性向上剤No.1~No.22の特性を、表2に示す。
【0154】
[便拭取率]
便拭取率を、以下の通り測定した。
(1)25℃の恒温室に、アクリル板(サイズ:140mm×360mm)に、人工皮革(イデアテックスジャパン社製,PBZ13001,サイズ:140mm×200mm)を、アクリル板の短手方向及び人工皮革の短手方向を一致させ且つアクリル板の長手方向の中心と、人工皮革の長手方向の中心とが一致するように貼り付けた試験板を準備する。また、おもりとして、ステンレス板(50×80mm,単位面積(cm2)当たりの質量:0.74g)を準備する。
【0155】
(2)人工軟便を準備し、その粘度を、TVB10型粘度計(東機産業社製)で都度測定しながら、脱イオン水を加え、7,000mPa・sに調整する。
なお、人工軟便は、脱イオン水:71.9質量部、塩化ナトリウム:1.0質量部、グリセリン:15.0質量部、CMCナトリウム:2.0質量部、トリトンX-100:0.05質量部、赤色102号:0.05質量部、及び粉末セルロース:10.0質量部を混合することにより作成する。
(3)人工皮革の上に、拭取性向上剤No.1~No.22のそれぞれを、10g/m2の坪量で塗工する。
【0156】
(4)人工皮革の上に、人工皮革の長手方向の一方の端縁から50mm且つ短手方向の中心に、人工軟便0.5gを乗せる。
(5)ウェットワイプス(ユニ・チャーム社製,ムーニーおしりふき厚手)の初期質量:m0(g)を測定した後、ウェットワイプスを2つ折りにし、ウェットワイプスを、人工軟便の上に、ウェットワイプスの中心と、人工軟便との位置が一致するように乗せる。
(6)ステンレス板を、ウェットワイプスの上に、ステンレス板の中心と、ウェットワイプスの中心とが一致するように乗せる。
【0157】
(7)ステンレス板を乗せたまま、ウェットワイプスを、人工皮革の長手方向の他方の端縁まで、約400mm/分の速度で移動させる。
(8)ウェットワイプスの試験後質量:m1(g)を測定し、便拭取率を、次の式:
便拭取率(質量%)=100×(m1-m0)/0.5
から算出する。
(9)拭取性向上剤No.1~No.22のそれぞれにおいて測定を計3回行い、計3回の平均値を採用する。
【0158】
[被膜形成性]
被膜形成性を、以下の通り試験した。
(1)拭取性向上剤No.1~No.22のそれぞれを、被験者の前腕の皮膚に塗布して塗り広げた際に、被膜の形成性を、以下の3段階で評価する。
○:均一な被膜が形成される。
△:不均一な被膜が形成される。
×:被膜が形成されない。
【0159】
【表2】
【0160】
拭取性向上剤No.1~No.7は、便拭取率が高く、便拭取性に優れることが分かる。また、拭取性向上剤No.3は、25℃で固体の固体脂肪族アルコール及び結晶化促進剤Cとして列挙されているステアリルアルコールを含む拭取性向上剤No.22と比較して、便拭取性に優れることが分かる。拭取性向上剤No.22は、ウェットワイプスにあまり移動しておらず、人工皮革上の拭取性向上剤No.22に、人工軟便が残存していた。
【0161】
[例2]
市販の使い捨ておむつ(ユニ・チャーム株式会社製,ムーニーSサイズ)に、拭取性向上剤No.2-1~No.2-22のそれぞれを、10g/m2の坪量で、肛門当接域を中心に150×75mmの範囲で塗工し、使い捨ておむつNo.2-1~No.2-22を製造した。
ボランティアの被験者10名に使い捨ておむつNo.2-1~No.2-22のそれぞれを着用してもらい、使い捨ておむつの交換の際に、ウェットワイプス(ユニ・チャーム社製,ムーニーおしりふき厚手)を用いて、着用者の皮膚を清浄化してもらい、清浄化に必要なウェットワイプスの枚数を記録してもらった。
【0162】
その結果、被膜形成性に優れる拭取性向上剤ほど、着用者の皮膚を清浄化するために用いられるウェットワイプスの枚数が少なくなる傾向があった。また、被膜形成性に優れる拭取性向上剤を含む使い捨ておむつでは、拭取性向上剤の便拭取率が高いほど、着用者の皮膚を清浄化するために用いられるウェットワイプスの枚数が少なくなる傾向があった。
例えば、拭取性向上剤の塗工されていない使い捨ておむつのウェットワイプスの使用枚数は、3.64枚/回であったところ、拭取性向上剤No.3を含む使い捨ておむつNo.2-3のウェットワイプスの使用枚数は、2.88枚/回であった。
【0163】
[例3]
拭取性向上剤としてのマクビオブライドMG-10Pと、CNF(スギノマシン製,NMa,5質量%の水溶液)とを、表3に記載される量比で混合し、ホモジナイザーで撹拌することにより、拭取性向上組成物No.1~No.4を形成した。
拭取性向上組成物No.1~No.4の25℃及び35℃における粘度:η10[剪断速度:10(1/s)]及びη100[剪断速度:100(1/s)]を測定した。結果を表3に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
[表面残存率]
拭取性向上組成物の表面残存率を、以下の通り測定した。
(1)エアスルー不織布(坪量:24g/m2)を100mm×100mmのサイズにカットした簡易液透過性層を形成し、当該模擬トップシートの初期質量:mA0(g)を測定する。
(2)エアレイド不織布(坪量:60g/m2)を100mm×100mmのサイズにカットし、2枚積層した簡易吸収層を形成し、当該簡易吸収層の初期質量:mB0(g)を測定する。
(3)簡易吸収層の上に、簡易液透過性層を載せ、簡易吸収性物品を形成する。
【0166】
(4)簡易吸収性物品の簡易液透過性層の中央に、ピペットにて拭取性向上組成物No.1~No.4のそれぞれを約0.5g載せ、それら全体の質量:mc(g)を測定するとともに、3分間静置する。
(5)3分静置後、簡易吸収性物品から簡易液透過性層を取り出し、簡易液透過性層の試験後質量:mA1(g)を測定する。
(6)表面残存率:R(質量%)を、以下の式:
R=100×(mA1-m0)/(mC-mA0-mB0
に従って測定する。
測定を異なるサンプルにて計10回実施し、その平均値を採用する。
【0167】
[例4]
市販の使い捨ておむつ(ユニ・チャーム株式会社製,ムーニーSサイズ)に、拭取性向上組成物No.4-1~No.4-4のそれぞれを、10g/m2の坪量で、肛門当接域を中心に150×75mmの範囲で塗工し、使い捨ておむつNo.4-1~No.4-4を製造し、使い捨ておむつNo.4-1~No.4-4を、室温で密閉せずに48時間静置した。
【0168】
ボランティアの被験者10名に使い捨ておむつNo.4-1~No.4-4のそれぞれを着用してもらったところ、使い捨ておむつNo.4-1~No.4-3では、着用者の皮膚に転写される拭取性向上組成物の量が、使い捨ておむつNo.4-4よりも多いとの一方で、使い捨ておむつNo.4-1~No.4-3を用いた場合の拭取性は、使い捨ておむつNo.4-4と同等であるとの回答を得た。