(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】環状アジン化合物、有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子用電子輸送材料、および有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
C07D 401/10 20060101AFI20230502BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230502BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230502BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230502BHJP
【FI】
C07D401/10 CSP
C09K11/06 690
H05B33/22 B
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021537002
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028488
(87)【国際公開番号】W WO2021020285
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019139746
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】山縣 拓也
(72)【発明者】
【氏名】早川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】服部 一希
(72)【発明者】
【氏名】上原 史成
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅也
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕太
(72)【発明者】
【氏名】野村 桂甫
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】荘野 智宏
(72)【発明者】
【氏名】尾池 華奈
(72)【発明者】
【氏名】林 和史
(72)【発明者】
【氏名】青柳 圭哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】西浦 利紀
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179809(WO,A1)
【文献】特開2008-280330(JP,A)
【文献】特開2009-224512(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021689(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0120875(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
C07B
C09K
H10K
H10L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される環状アジン化合物。
【化1】
式(1)中、
Ar
1は
、4-ビフェニリル基である;
Ar
2は、式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
【化2】
Ar
3は、式(3)で示される基である;
【化3】
式(3)中、
Ar
31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である。
【請求項2】
Ar
2が、式(2-1)、(2-2a)、(2-2b)、(2-3a)、または(2-3b)で示される基である、請求項1に記載の環状アジン化合物。
【化4】
【請求項3】
Ar
3が、式(3-1)から(3-9)のいずれか1つで示される基である、請求項1または2に記載の環状アジン化合物。
【化5】
【請求項4】
式(1-48)、(1-49)、(1-51)、(1-52)、(1-54)、(1-64)、(1-65)、(1-66)、(1-67)、(1-71)、(1-73)または(1-82)で示される環状アジン化合物である、請求項1から3のいずれか1項に記載の環状アジン化合物。
【化6】
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用電子輸送材料。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の環状アジン化合物を含む有機電界発光素子。
【請求項8】
式(1)で示される環状アジン化合物の製造方法であって、
式(4)で示される化合物と、式(5)で示される化合物と、を反応させることを含む、製造方法。
【化7】
式中、
Ar
1は
、4-ビフェニリル基である;
Ar
2は、式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
【化8】
Ar
3は、式(3)で示される基である;
【化9】
Ar
31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
X
4は、脱離基である;
Y
4は、ハロゲン原子、金属含有基、またはホウ素含有基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環状アジン化合物、有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子用電子輸送材料、および有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、小型のディスプレイだけでなく大型テレビや照明等の用途へ用いられており、その開発が精力的に行われている。
例えば特許文献1は、有機電界発光素子用材料として、耐熱性に優れ、駆動電圧が低く、長寿命な有機電界発光素子の提供に資する、特定の置換基を有する環状アジン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年の有機電界発光素子に対する市場からの要求は益々高くなり、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する材料の開発が求められている。
ここで、特許文献1で開示された環状アジン化合物を用いた有機電界発光素子は、優れた長寿命特性、および電流効率特性を発揮するものの、駆動電圧特性についてはさらなる改善が求められている。
【0005】
本開示の一態様は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する環状アジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料を提供することに向けられている。
さらに、本開示の他の態様は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する有機電界発光素子を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、式(1)で示される環状アジン化合物が提供される:
【0007】
【0008】
式(1)中、
Ar1は、フェニル基、または4-ビフェニリル基である;
Ar2は、式(2-1)から(2-3)で示される基のいずれか1つである;
【0009】
【0010】
Ar3は、式(3)で示される基である;
【0011】
【0012】
式(3)中、
Ar31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)で示される基のいずれか1つである。
【0013】
本開示の他の態様によれば、上記環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料が提供される。
本開示の他の態様によれば、上記環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用電子輸送材料が提供される。
本開示の他の態様によれば、上記環状アジン化合物を含む有機電界発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する環状アジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料が得られる。
本開示の他の態様によれば、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する有機電界発光素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例(素子実施例-1)を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例(素子実施例-2)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物について詳細に説明する。
【0017】
<環状アジン化合物>
本開示の一態様にかかる環状アジン化合物は、式(1)で示される:
【0018】
【0019】
式(1)中、
Ar1は、フェニル基、または4-ビフェニリル基である;
Ar2は、式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
【0020】
【0021】
Ar3は、式(3)で示される基である;
【0022】
【0023】
式(3)中、
Ar31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である。
【0024】
以下、式(1)で示される環状アジン化合物を、環状アジン化合物(1)と称することもある。環状アジン化合物(1)における置換基の定義、およびその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりである。
【0025】
[Ar2について]
Ar2は、式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である。
【0026】
【0027】
Ar2は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する点で、式(2-1)、(2-2a)、(2-2b)、(2-3a)、または(2-3b)で示される基であることがより好ましい。
【0028】
【0029】
[Ar3について]
Ar3は、式(3)で示される基であり;
【0030】
【0031】
Ar31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である。
【0032】
Ar3は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する点で、式(3-1)から(3-9)のいずれか1つで示される基であることが好ましい。
【0033】
【0034】
環状アジン化合物(1)は、有機電界発光素子(OLED;Organic Light Emitting Diode)の構成成分の一部として用いると、高電流効率化、低駆動電圧化等の効果が得られる。特に、環状アジン化合物(1)を電子輸送層として用いた場合にこれらの効果がより一層発現する。
【0035】
[環状アジン化合物(1)の好ましい例]
優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する点で、表1~表3に示される、化合物(1-1)から(1-90)のいずれか1つで表される環状アジン化合物がより好ましい。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
表1~表3に示される環状アジン化合物の中でも、式(1-6)、(1-15)、(1-48)、(1-49)、(1-51)、(1-52)、(1-54)、(1-64)、(1-65)、(1-66)、(1-67)、(1-71)、(1-73)または(1-82)で示される環状アジン化合物は、特に素子の優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する点で好ましい。
【0040】
【0041】
以下、環状アジン化合物(1)の用途について説明する。
<有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子用電子輸送材料>
環状アジン化合物(1)は、特に限定されるものではないが、例えば、有機電界発光素子用材料として用いることができる。また、環状アジン化合物(1)は、例えば、有機電界発光素子用電子輸送材料として用いることができる。
【0042】
すなわち、本開示の一態様にかかる有機電界発光素子用材料は、環状アジン化合物(1)を含む。また、本開示の一態様にかかる有機電界発光素子用電子輸送材料は、環状アジン化合物(1)を含む。環状アジン化合物(1)を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する有機電界発光素子の作製に資するものである。
【0043】
<有機電界発光素子>
本開示の一態様にかかる有機電界発光素子は、環状アジン化合物(1)を含む。
有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(vii)の構成が挙げられる。
(i):陽極/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii):陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi):陽極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(vii):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0044】
以下、本開示の一態様にかかる有機電界発光素子を、上記(vi)の構成を例に挙げて、
図1を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【0045】
なお、
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有したものであるが、本開示の一態様にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、本開示の一態様にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、トップエミッション型の素子構成であってもよく、その他の公知の素子構成であってもよい。
【0046】
有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔注入層3、電荷発生層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、および陰極8をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、電子輸送層7と陰極8との間に電子注入層が設けられていてもよく、電荷発生層4が省略され、正孔注入層3上に正孔輸送層5が直接設けられていてもよい。
【0047】
また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層5、単層の電子輸送層7が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
【0048】
[式(1)で表される環状アジン化合物を含む層]
有機電界発光素子は、発光層、および、該発光層と陰極との間の層からなる群より選ばれる1層以上に上記式(1)で示される環状アジン化合物を含む。したがって、
図1に示される構成例において有機電界発光素子100は、発光層6および電子輸送層7からなる群より選ばれる少なくとも1層に環状アジン化合物(1)を含む。特に、電子輸送層7が環状アジン化合物(1)を含むことが好ましい。
【0049】
なお、環状アジン化合物(1)は、有機電界発光素子が備える複数の層に含まれていてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層が設けられている場合、電子注入層が環状アジン化合物(1)を含んでいてもよい。
以下においては、電子輸送層7が環状アジン化合物(1)を含む有機電界発光素子100について説明する。
【0050】
[基板1]
基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板などが挙げられる。また、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は光の波長に対して透明である。
【0051】
光透過性を有するプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0052】
[陽極2]
基板1上(正孔注入層3側)には陽極2が設けられている。
発光が陽極を通過して取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陽極は当該発光を通すかまたは実質的に通す材料で形成される。
【0053】
陽極に用いられる透明材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物などが挙げられる。
【0054】
なお、陰極側のみから光を取り出す構成の有機電界発光素子の場合、陽極の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の陽極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
陽極上には、バッファー層(電極界面層)を設けてもよい。
【0055】
[正孔注入層3、正孔輸送層5]
陽極2と後述する発光層6との間には、陽極2側から、正孔注入層3、後述する電荷発生層4、正孔輸送層5がこの順で設けられている。
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入される。
【0056】
また、正孔注入層、正孔輸送層は、電子障壁性の層としても機能する。すなわち、陰極から注入され、電子注入層および/または電子輸送層から発光層に輸送された電子は、発光層と正孔注入層および/または正孔輸送層との界面に存在する電子の障壁により、正孔注入層および/または正孔輸送層に漏れることが抑制される。その結果、該電子が発光層内の界面に累積され、電流効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0057】
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、正孔注入性、正孔輸送性、電子障壁性の少なくともいずれかを有するものである。正孔注入層、正孔輸送層の材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0058】
正孔注入層、正孔輸送層の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0059】
芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
また、p型-Si、p型-SiCなどの無機化合物も正孔注入層の材料、正孔輸送層の材料の一例として挙げることができる。
【0060】
正孔注入層、正孔輸送層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0061】
[電荷発生層4]
正孔注入層3と正孔輸送層5との間には、電荷発生層4が設けられていてもよい。
電荷発生層の材料としては特に制限はないが、例えば、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)が挙げられる。
電荷発生層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0062】
[発光層6]
正孔輸送層5と後述する電子輸送層7との間には、発光層6が設けられている。
発光層の材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層では電子・正孔対が再結合し、その結果として発光が生じる。
【0063】
発光層は、単一の低分子材料または単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
【0064】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、アントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャルブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0065】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0066】
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体、パラジウム錯体、オスミウム錯体等の金属錯体が挙げられる。
【0067】
蛍光ドーパント、燐光ドーパントの具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)3(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、およびFIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0068】
熱活性化遅延蛍光発光材料は、前述のホスト材料またはゲスト材料いずれとしても用いることができる。また、熱活性化遅延蛍光発光材料は、それ自身が発光せず、熱活性化遅延蛍光発光材料と同時に発光層を形成する蛍光ドーパントに効率的に励起エネルギーを受け渡す役割を担うこともできる。
【0069】
熱活性化遅延蛍光発光の具体例としては、4Cz-IPN(2,4,5,6-テトラ(9-カルバゾリル)-イソフタロニトリル)、5Cz-BN(2,3,4,5,6-ペンタ(9-カルバゾリル)-ベンゾニトリル)、DACTII(2-[3,6-ビス(ジフェニルアミノ)カルバゾール-9-イルフェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)等が挙げられる。
【0070】
また、発光材料は発光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、発光材料は、発光層に隣接した層(正孔輸送層5、または電子輸送層7)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子の電流効率を高めることができる。
【0071】
発光層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0072】
[電子輸送層7]
発光層6と後述する陰極8との間には、電子輸送層7が設けられている。
電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層を陰極と発光層との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層に注入される。
【0073】
電子輸送層は、前述したとおり、上記式(1)で表される環状アジン化合物を含むことが好ましい。
【0074】
また、電子輸送層は、環状アジン化合物(1)に加えてさらに従来公知の電子輸送材料を含んでいてもよい。従来公知の電子輸送材料としては、例えば、8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)-1-ナフトラートアルミニウム、またはビス(2-メチル-8-キノリノラト)-2-ナフトラートガリウム、2-[3-(9-フェナントレニル)-5-(3-ピリジニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、および2-(4,’’-ジ-2-ピリジニル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、およびビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラト)ベリリウム)等が挙げられる。
【0075】
電子輸送層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
電子輸送層が、発光層側を第一電子輸送層、陰極側を第二電子輸送層とする二層構造である場合、第二電子輸送層が環状アジン化合物(1)を含むことが好ましい。
【0076】
[陰極8]
電子輸送層7上には陰極8が設けられている。
陽極を通過した発光のみが取り出される構成の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、陰極は任意の導電性材料から形成することができる。
陰極の材料としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
陰極上(電子輸送層側)には、バッファー層(電極界面層)を設けてもよい。
【0077】
[各層の形成方法]
以上説明した電極(陽極、陰極)を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm~5μmの範囲である。
【0078】
陽極および陰極は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0079】
陽極および陰極の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0080】
本開示の一態様にかかる有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本態様の有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0081】
なお、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物(1)は、既知の反応(例えば、鈴木-宮浦クロスカップリング反応など)を適切に組み合わせることにより合成可能である。
例えば、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物(1)は、以下に示す反応式(a)~(f)のいずれか1つで示される製法に従って合成可能であるが、これらの例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
反応式(a)~(f)中、Ar1、Ar2、およびAr3は、式(1)と同じ定義である。
【0089】
X2およびX3は、各々独立して、脱離基を表す。脱離基としては、特に限定されるものではないが、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。このうち、反応収率がよい点で臭素原子または塩素原子が好ましい。但し、原料の入手性からトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を用いた方が好ましい場合もある。
【0090】
Y2およびY3は、各々独立して、金属含有基であるZnR1、MgR2、もしくはSn(R3)3;または、ホウ素含有基であるB(OR4)2;を表す。但し、R1およびR2は、各々独立に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し;R3は、炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を表し;R4は水素原子、炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を表し;B(OR4)2の2つのR4は同一または異なっていてもよい。また、2つのR4は一体となって酸素原子およびホウ素原子を含んで環を形成することもできる。
【0091】
ZnR1、MgR2としては、ZnCl、ZnBr、ZnI、MgCl、MgBr、MgI等が例示できる。
Sn(R3)3としては、Sn(Me)3、Sn(Bu)3等が例示できる。
B(OR4)2としては、B(OH)2、B(OMe)2、B(OiPr)2、B(OBu)2等が例示できる。また、2つのR4が一体となって酸素原子およびホウ素原子を含んで環を形成した場合のB(OR4)2の例としては、特に限定されるものではないが、次の(I)~(VI)で表される基が例示でき、収率がよい点で(II)で表される基が望ましい。
【0092】
【0093】
反応式(a)~(d)で示される製法について、反応式(a)で示される製法を例に挙げて、より詳細に説明する。反応式(a)で示される製法は、パラジウム触媒存在下、Y2-Ar2、およびY3-Ar3を順次反応に用いることで環状アジン化合物(1)を得ることを表している。ここで反応に用いるY2-Ar2およびY3-Ar3は同時に用いて反応することも可能であり、またY2-Ar2を用いて反応することで得られる中間生成物を一度単離し、その後、パラジウム触媒存在下、Y3-Ar3を用いて反応することで環状アジン化合物(1)を得ることもできる。また、Y3-Ar3を先に反応に用いることでも環状アジン化合物(1)を得ることもできる。
【0094】
反応式(e)および(f)で示される製法について、反応式(e)で示される製法を例に挙げて説明する。反応式(e)で示される製法は、パラジウム触媒存在下、X3-Ar3を反応に用いることで環状アジン化合物(1)を得ることを表している。また反応式(e)および(f)で示される製法で用いられる原料の環状アジン化合物は、例えば国際公開2017/025164号に従い、製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0095】
これらの反応式(a)~(f)で示される製法のうち、得られる環状アジン化合物(1)の純度が高い点で、反応式(e)または(f)で示される製法が好ましい。
【0096】
[環状アジン化合物の製造方法]
本開示の一態様にかかる製造方法は、式(1)で示される環状アジン化合物の製造方法であって、
式(4)で示される化合物と、式(5)で示される化合物と、を反応させることを含む:
【0097】
【0098】
式中、
Ar1は、フェニル基、または4-ビフェニリル基である;
Ar2は、式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
【0099】
【化20】
Ar
3は、式(3)で示される基である;
【0100】
【0101】
Ar31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
X4は、脱離基である;
Y4は、ハロゲン原子、金属含有基、またはホウ素含有基である。
【0102】
ここで、式(4)における脱離基の定義は、上述した反応式(a)~(f)における脱離基の定義と同じである。また、式(5)における金属含有基、またはホウ素含有基の定義は、上述した反応式(a)~(f)における脱離基の定義と同じである。
【0103】
以上の本態様によれば、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する環状アジン化合物を製造することができる環状アジン化合物の製造方法を提供することができる。
【0104】
[ピリジン化合物]
本開示の一態様にかかるピリジン化合物は、式(5)で示されるピリジン化合物である:
【0105】
【0106】
式中、
Ar2は、式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
【0107】
【0108】
Ar3は、式(3)で示される基である;
【0109】
【0110】
Ar31は、
水素原子、または、
式(2-1)から(2-3)のいずれか1つで示される基である;
Y4は、ハロゲン原子、金属含有基、またはホウ素含有基である。
【0111】
ここで、式(5)における金属含有基、またはホウ素含有基の定義は、上述した反応式(a)~(f)における脱離基の定義と同じである。
【0112】
式(5)で示されるピリジン化合物は、式(5-1)、(5-2)または(5-3)で示されるピリジン化合物であることが好ましい:
【0113】
【0114】
式中、
Ar2およびY4は、式(5)と同義であり;
Ar31は、式(3)と同義である。
【0115】
以上の本態様によれば、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する環状アジン化合物の製造に資するピリジン化合物を提供することができる。
【実施例】
【0116】
以下、本開示を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0117】
1H-NMRスペクトルの測定は、Gemini200(バリアン社製)またはBruker ASCEND 400(400MHz;BRUKER製)を用いて行った。
有機電界発光素子の発光特性は、室温下、作製した素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9,トプコンテクノハウス社製)を用いて評価した。
【0118】
合成実施例-1
【0119】
【0120】
アルゴン雰囲気下、2-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-6-[5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(2.60g,4.4mmol)、6-(2-ビフェニリル)-3-クロロピリジン(1.25g,4.9mmol)、2M-リン酸カリウム水溶液(6.6mL)、酢酸パラジウム(30mg,0.13mmol)および2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(RuPhos,124mg,0.27mmol)をジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム,40mL)に懸濁し、150℃で27時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加えて固体をろ取し、水およびメタノールで洗浄した。得られた固体を熱トルエンに溶かして活性炭を加えてセライトろ過を行った。得られた溶液を室温まで放冷後、析出した白色固体を集めることで2-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-6-{5-[6-(2-ビフェニリル)-ピリジル-3-イル]-ビフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(1-6)を得た(収量2.62g,収率85%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ9.14(dd,J=2.3,0.7Hz,1H),9.01(dd,J=1.8,1.5Hz,2H),8.86(d,J=8.9Hz,2H),8.81(d,J=6.5Hz,2H),8.02(dd,J=1.8,1.5Hz,1H),7.84-7.86(m,2H),7.83(d,J=8.6Hz,2H),7.80(d,J=8.4Hz,2H),7.72(d,J=7.1Hz,2H),7.46-7.65(m,11H),7.43(t,J=7.3Hz,1H),7.28-7.33(m,4H),7.08-7.14(m,1H),7.06(d,J=8.1Hz,1H).
【0121】
合成実施例-2
【0122】
【0123】
アルゴン雰囲気下、2-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-6-[5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,1’:4’,1”-ターフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン、2-(2-ビフェニル)-5-クロロピリジン(731mg,2.8mmol)、酢酸パラジウム(17mg,0.075mmol)、およびRuPhos(70mg,0.15mmol)のジグリム(25mL)溶液に、2M-リン酸カリウム水溶液(3.8mL)を加え、150℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液に水、メタノールを加えて固体を濾取し、水、次いでメタノールで洗浄した。得られた固体を減圧下で乾燥した後、還流下のトルエン(450mL)に溶かし、活性炭素(0.4g)を加えた後、懸濁液から活性炭素をろ別し、熱トルエン(150mL)で洗浄した。ろ液からトルエンを留去し、得られた固体を減圧下で乾固した後に、再結晶(キシレン)により精製することで白色固体の2-(4-ビフェニリル)-4-{5-[6-(2-ビフェニリル)ピリジル-3-イル]-1,1’:4’,1”-ターフェニル-3-イル}-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1-15)を得た(1.66g,96%)。
1H-NMR(CDCl3):δ9.14(d,J=1.7Hz,1H),9.05(dd,J=1.5,1.5Hz,1H),9.00(dd,J=1.5,1.5Hz,1H),8.86(d,J=8.4Hz,2H),8.81(dd,J=8.2,1.7Hz,2H),8.06(dd,J=1.5,1.5Hz,1H),7.88(d,J=8.4Hz,2H),7.79-7.83(m,2H),7.82(d,J=8.2Hz,2H),7.79(d,J=8.2Hz,2H),7.72(d,J=7.3Hz,2H),7.70(d,J=7.3Hz,2H),7.59-7.63(m,3H),7.42-7.59(m,7H),7.42(dd,J=7.3,7.3Hz,1H),7.40(dd,J=7.3,7.3Hz,1H),7.26-7.38(m,5H),7.06(d,J=8.2Hz,1H).
【0124】
合成実施例-5
【0125】
【0126】
アルゴン雰囲気下、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(1.99g,3.0mmol)、2-(2-ビフェニリル)-3-クロロピリジン(0.88g,3.3mmol)、酢酸パラジウム(20mg,0.09mmol)およびトリシクロヘキシルホスフィンのトルエン溶液(0.6M,0.3mL,0.18mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、30mL)に懸濁した。この懸濁液に2M-リン酸カリウム水溶液(4.5mL)を加え、22時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を再結晶(トルエン)により精製することで、目的の2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-[2-(2-ビフェニリル)ピリジン-3-イル]-ビフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(1-50)を得た(1.74g,2.3mmol,76%)。
1H-NMR(CDCl3):δ8.78-8.82(m,6H),7.91(s,1H),7.90(dd,J=8.8,0.9Hz,1H),7.83(d,J=8.8Hz,4H),7.71-7.75(m,4H),7.52(dd,J=7.6Hz,4H),7.37-7.48(m,9H),7.15(dd,J=7.6,0.9Hz,4H),6.99(t,J=3.5Hz,1H),6.94(dt,J=7.3,1.3Hz,1H),6.87(t,J=7.4Hz,1H),6.55(dd,J=8.3,1.6Hz,2H)
【0127】
合成実施例-6
【0128】
【0129】
アルゴン雰囲気下、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(5.97g,9.0mmol)、2-(2-ビフェニリル)-5-クロロピリジン(2.63g,9.9mmol)、酢酸パラジウム(61mg,0.27mmol)、およびRuPhos(252mg,0.54mmol)のジグリム(90mL)溶液に、2M-リン酸カリウム水溶液(13.5mL)を加え、150℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液に水、メタノールを加えて固体を濾取し、水、次いでメタノールで洗浄した。得られた固体を減圧下で乾燥した後、還流下のトルエン(500mL)に溶かし、活性炭素(2.0g)を加えた後、懸濁液から活性炭素をろ別し、トルエン(200mL)で洗浄した。ろ液から低沸分を減圧留去した後に、再結晶(キシレン)により精製することで白色固体の2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-[6-(2-ビフェニル)ピリジン-3-イル]ビフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(1-51)を得た(4.76g,69%)。
1H-NMR(CDCl3):δ9.13(d,J=1.8Hz,1H),9.02(dd,J=1.6,1.6Hz,1H),9.00(dd,J=1.6,1.6Hz,1H),8.86(d,J=8.4Hz,4H),8.01(dd,J=1.6,1.6Hz,1H),7.88-7.80(m,2H),7.82(d,J=8.4Hz,4H),7.80(d,J=7.2Hz,2H),7.72(d,J=7.2Hz,4H),7.56(dd,J=7.3,7.3Hz,2H),7.47-7.54(m,3H),7.51(dd,J=7.3,7.3Hz,4H),7.47(d,J=7.5Hz,1H),7.42(dd,J=7.3,7.3Hz,2H),7.26-7.36(m,5H),7.05(d,J=8.1Hz,1H).
【0130】
合成実施例-9
【0131】
【0132】
アルゴン雰囲気下で、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,1’:2’,1’’-ターフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(2.22g,3.0mmol)、4-クロロ-3-フェニルピリジン(853mg,4.5mmol)、および酢酸パラジウム(14mg,0.06mmol)をDMF(30mL)に懸濁した。この懸濁液にトリシクロヘキシルホスフィンのトルエン溶液(0.6M,0.2mL,0.12mmol)、および2M-リン酸カリウム(4.5mL)を加え、130℃で終夜攪拌した。室温まで放冷後、水およびメタノールを加えて析出した固体をろ取し、水、次いでメタノールで洗浄した後、低沸分を減圧留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=3:1)、次いでトルエンによる再結晶で精製し、目的とする2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-(3-フェニルピリジン-4-イル)-1,1’:2’,1’’-ターフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(1-65)を得た(1.49g,64%)。
1H-NMR(CDCl3):δ8.69-8.71(m,5H),8.62(d,J=5.0Hz,1H),8.52(t,J=1.6Hz,1H),8.36(t,J=1.6Hz,1H),7.80(d,J=8.5Hz,4H),7.72(dd,J=7.1,1.4Hz,4H),7.41-7.54(m,9H),7.21-7.39(m,12H),7.12(d,J=4.6Hz,1H).
【0133】
合成実施例-10
【0134】
【0135】
窒素雰囲気下、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,1’:2’,1’’-ターフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(85g,115mmol)、4-ブロモピリジン塩酸塩(33.5g,172mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5.3g,4.6mmol)をTHF(1.15L)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-リン酸カリウム水溶液)345mL)を加え、5時間加熱還流した。放冷後、水及びメタノールを加え、析出物をろ過した。濾取物をトルエンによる再結晶で精製することで、目的の2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-{5-(4-ピリジル)-1,1’:2’,1’’-ターフェニル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(1-64)を得た(59.8g,75%)。
【0136】
合成実施例-11
【0137】
【0138】
アルゴン雰囲気下、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(4-ピリジル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(3.00g,4.5mmol)、1-ブロモ-4-フェニルナフタレン(1.66g,5.9mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(156mg,0.13mmol)をTHF(45mL)に懸濁した。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(6.7mL)を加え、22時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を再結晶(トルエン)により精製することで、目的の2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[3-(4-フェニル-ナフタレン-1-イル)-5-(4-ピリジル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(1-73)を得た(2.67g,80%)。
1H-NMR(CDCl3)δ9.17(t,J=1.6Hz,1H),9.05(t,J=1.6Hz,1H),8.87(dt,J=8.6,1.8Hz,4H),8.78(dd,J=4.6,1.6Hz,2H),8.04-8.07(m,3H),7.82(dt,J=8.6,1.8Hz,4H),7.77(dd,J=4.6,1.6Hz,2H),7.71(dt,J=7.0,2.0Hz,4H),7.68(d,J=7.2Hz,1H),7.47-7.62(m,12H),7.42(tt,J=7.3,2.1Hz,2H).
【0139】
合成実施例-12
【0140】
【0141】
アルゴン雰囲気下、2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(4-ピリジル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(3.50g,5.3mmol)、6-フェニル-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシナフタレン(2.41g,6.8mmol)、酢酸パラジウム(60mg,0.27mmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos,252mg,0.53mmol)をTHF中(55mL)に懸濁した。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(7.7mL)を加え、15時間加熱還流した。室温まで放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を再結晶(トルエン)により精製することで、目的の2,4-ビス(4-ビフェニリル)-6-[3-(6-フェニル-ナフタレン-2-イル)-5-(4-ピリジル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(1-92)を得た(3.21g,4.3mmol,83%)。
1H-NMR(CDCl3):δ9.22(t,1.5Hz,1H),9.08(t,1.5Hz,1H),8.91(d,J=8.4Hz,4H),8.81(dd,J=3.1,1.5Hz,2H),8.29(s,1H),8.23(t,J=1.5Hz,1H),8.15(s,1H),8.10(t,J=8.3Hz,2H),7.98(dt,J=8.9,1.7Hz,1H),7.86(dt,J=8.3,1.9Hz,4H),7.78(t,J=6.3Hz,4H),7.73(dd,J=8.4,1.4Hz,4H)7.56-7.50(m,7H),7.46-7.41(m,3H).
【0142】
合成実施例-13
【0143】
【0144】
窒素雰囲気下、3-ブロモ-5-クロロビフェニル(50g,186.9mmol)、3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2-フェニルピリジン(63g,224.3mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.3g,3.7mmol)をTHF(370mL)中、60℃で懸濁させた。この懸濁液に4M-リン酸カリウム(140mL)を加え、10時間加熱還流した。室温まで放冷後、反応混合物にトルエンを加え、有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウム及び活性炭を加え、不溶成分を濾別した。濾液を濃縮後、エタノールによる再結晶で精製することで、目的の3-クロロ-5-(2-フェニルピリジン-3-イル)ビフェニル (5-1)を得た(45.5g,71%)。
1H-NMR(CDCl3):δ8.73(dd,4.8,1.7Hz,1H),7.79(dd,t.t,1.7Hz,1H),7.46(t,1.8Hz,1H),7.42-7.30(m,9H),7.27(d,1.8Hz,1H),7.25-7.24(m,2H),7.18(t,1.6Hz,1H).
【0145】
窒素雰囲気下、化合物5-1(197.8g,578.7mmol)、ビスピナコラトジボロン(154.3g,607.7mmol)及び酢酸カリウム(170.4g,1736mmol)をTHF(1.16L)中、60℃で懸濁させた。この懸濁液に酢酸パラジウム(1.3g,5.8mmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos,5.5mg,11.6mmol)のTHF溶液(30mL)を加え、6時間加熱還流した。室温まで放冷後、反応混合物に活性炭を加えて撹拌し、不溶成分を濾別した。濾液を濃縮し、ヘキサンによる再結晶で精製することで、目的の3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2-フェニルピリジン-3-イル)ビフェニル(5-2)を得た(178g,71%)。
1H-NMR(CDCl3):δ8.70(dd,4.8,1.7Hz,1H),7.92(dd,1.8,1.0Hz,1H),7.86(dd,7.7,1.7Hz,1H),7.79(dd,1.8,1.0Hz,1H),7.41-7.38(m,2H),7.36-7.27(m,8H),7.23-7.21(m,2H),1.36(s,12H).
【0146】
合成実施例-14
【0147】
【0148】
窒素雰囲気下、2-クロロ-4,6-ジ(4-ビフェニリル)トリアジン(176.2g,420mmol)、化合物5-2(200g,462mmol)、及びテトラキス(トリフェインルホスフィン)パラジウム(4.9g,4.2mmol)をTHF(4.2L)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-リン酸カリウム水溶液(0.6L)を加え、6時間加熱還流した。室温まで放冷後、メタノールを加え、析出物を濾過した。濾取物及び活性炭をトルエン中に80度で懸濁させ、不溶分を濾別した。濾液を濃縮後、トルエンによる再結晶で精製することで、目的の4,6-ジ(4-ビフェニリル)-2-[5-(2-フェニルピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(1-48)を得た(182g,63%)。
1H-NMR(CDCl3):δ9.02(t,1.6Jz,1H),8.90(d、8.6Hz,4H),8.80(t、1.6Hz,1H),8.77(dd、4.7,1.7Hz,1H),8.09(dd、7.7,1.7Hz,1H),7.93(d、8.6Hz,4H),7.82(d、8.2Hz,4H),7.77(t、1.8Hz,1H),7.62-7.32(m、16H),7.29(tt、7.3,1.4Hz,1H).
【0149】
合成実施例-15
【0150】
【0151】
アルゴン雰囲気下、4,6-ビス(4-ビフェニリル)-2-{3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン―2―イル)ビフェニリル-5-イル}-1,3,5-トリアジン(3.0g,4.52mmol)、2-クロロ-3-フェニルピリジン(943mg,4.97mmol)、酢酸パラジウム(51mg,0.23mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(202mg,0.45mmol)をTHF(46mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(7mL)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合液に水及びメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、ヘキサンで洗浄することで、目的の4,6-ビス(4-ビフェニリル)-2-{5-(3-フェニル-ピリジル-2-イル)ビフェニリル-3-イル}-1,3,5-トリアジン(1-54)を得た(2.92g,4.23mmol,94%)
1H-NMR(CDCl3)δ7.36-7.55(m,17H),7.01-7.75(m,4H),7.80-7.88(m,6H),8.79-8.84(m,5H),8.87(dd,J=1.6,1.5Hz,1H),8.93(dd,J=1.7,1.6Hz,1H).
【0152】
また、式(1-49)、(1-52)、(1-66)、(1-67)および(1-71)で表される環状アジン化合物については、合成実施例-1~15で示される製造法と同様の手段により合成した。
【0153】
環状アジン化合物(1)を構成成分とする有機電界発光素子の作製と性能評価に用いる化合物の構造式及びその略称を以下に示した。
【0154】
【0155】
素子実施例-1(
図2参照)
(基板101、陽極102の用意)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0156】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0157】
(正孔注入層103の作製)
昇華精製したHTLとNDP-9を0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔注入層103を作製した。
【0158】
(第一正孔輸送層1051の作製)
昇華精製したHTLを0.15nm/秒の速度で85nm成膜し、第一正孔輸送層1051を作製した。
【0159】
(第二正孔輸送層1052の作製)
昇華精製したEBL-3を0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第二正孔輸送層1052を作製した。
【0160】
(発光層106の作製)
昇華精製したBH-1とBD-2とを95:5(質量比)の割合で20nm成膜し、発光層106を作製した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
【0161】
(第一電子輸送層1071の作製)
昇華精製したHBL-1を0.05nm/秒の速度で6nm成膜し、第一電子輸送層1071を作製した。
【0162】
(第二電子輸送層1072の作製)
化合物1-48およびLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、第二電子輸送層1072を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0163】
(陰極108の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極108を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0164】
以上により、
図2に示すような発光面積4mm
2有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0165】
さらに、この素子を酸素および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0166】
上記のようにして作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度10mA/cm2を流した時の電流効率(cd/A)を測定した。なお、駆動電圧は、後述の素子参考例3における結果を基準値(100)とした相対値である。得られた測定結果を表4に示す。
【0167】
素子比較例-1
素子実施例-1において、化合物1-48代わりにETL-1を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表4に示す。
【0168】
素子参考例-1
素子実施例-1において、化合物1-48の代わりに特許文献1に記載されているETL-2を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表4に示す。
【0169】
素子参考例-2
素子実施例-1において、化合物1-48の代わりに特許文献1に記載されているETL-3を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表4に示す。
【0170】
素子参考例-3
素子実施例-1において、化合物1-48の代わりに特開2017-105717号公報に記載されているETL-4を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表4に示す。
【0171】
【0172】
素子実施例-2(
図3参照)
(基板101、陽極102の用意)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0173】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0174】
(正孔注入層103の作製)
昇華精製したHILを0.15nm/秒の速度で50nm成膜し、正孔注入層103を作製した。
(電荷発生層104の作製)
昇華精製したHAT-CNを0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、電荷発生層104を作製した。
【0175】
(第一正孔輸送層1051の作製)
昇華精製したHTLを0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第一正孔輸送層1051を作製した。
【0176】
(第二正孔輸送層1052の作製)
昇華精製したEBL-2を0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第二正孔輸送層1052を作製した。
【0177】
(発光層106の作製)
昇華精製したBH-2とBD-1を95:5(質量比)の割合で25nm成膜し、発光層106を作製した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
【0178】
(第一電子輸送層1071の作製)
昇華精製したHBL-2を0.05nm/秒の速度で5nm成膜し、第一電子輸送層1071を作製した。
【0179】
(第二電子輸送層1072の作製)
化合物1-48およびLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、第二電子輸送層1072を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0180】
(陰極108の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極108を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0181】
以上により、
図3に示すような発光面積4mm
2有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0182】
さらに、この素子を酸素および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0183】
上記のようにして作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度10mA/cm2を流した時の電流効率(cd/A)を測定した。なお、駆動電圧は、後述の素子参考例2における結果を基準値(100)とした相対値である。得られた測定結果を表5に示す。
【0184】
素子実施例-3
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに、化合物1-49を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0185】
素子実施例-4
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに、合成実施例-5で合成した化合物1-50を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0186】
素子実施例-5
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに、合成実施例-6で合成した化合物1-51を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0187】
素子実施例-6
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに、化合物1-52を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0188】
素子実施例-7
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに、化合物1-64を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0189】
素子実施例-8
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに、化合物1-65を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0190】
素子参考例-4
素子実施例-2において、化合物1-48の代わりに特開2017-105717号公報に記載されているETL-4を用いた以外は、素子実施例-2と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表5に示す。
【0191】
【0192】
素子実施例-9
素子実施例-1において、EBL-3の代わりに、EBL-4を用い、BD-2の代わりにBD-3を用い、化合物1-48の代わりに、化合物1-67を用い、陰極として、イッテルビウム、銀/マグネシウム(質量比9/1)と銀とを、この順番で、それぞれ2nm、12nmと90nmとで成膜し、3層構造とした以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。ここで、イッテルビウムの成膜速度は0.02nm/秒、銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。得られた測定結果を表6に示す。
【0193】
素子参考例-5
素子実施例-9において、化合物1-67の代わりにETL-4を用いた以外は、素子実施例-9と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表6に示す。
【0194】
【0195】
素子実施例-10
素子実施例-1において、EBL-3の代わりに、EBL-4を用い、BD-2の代わりにBD-3を用い、陰極として、イッテルビウム、銀/マグネシウム(質量比9/1)と銀とを、この順番で、それぞれ2nm、12nmと90nmとで成膜し、3層構造とした以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。ここで、イッテルビウムの成膜速度は0.02nm/秒、銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。得られた測定結果を表7に示す。
【0196】
素子実施例-11
素子実施例-10において、化合物1-48の代わりに化合物1-66を用いた以外は、素子実施例-10と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表7に示す。
【0197】
素子実施例-12
素子実施例-10において、化合物1-48の代わりに化合物1-62を用いた以外は、素子実施例-10と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表7に示す。
【0198】
素子比較例-2
素子実施例-10において、化合物1-48の代わりにETL-1を用いた以外は、素子実施例-10と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表7に示す。
【0199】
【0200】
表4~7より、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物(1)は従来公知の環状アジン化合物と比べて優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する有機電界発光素子を提供することができる。
【0201】
また、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物(1)は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する有機電界発光素子用電子輸送材料として利用される。さらに、環状アジン化合物(1)によれば、低消費電力の有機電界発光素子を提供することができる。
【0202】
また、本開示の一態様にかかる環状アジン化合物(1)からなる薄膜は、電子輸送能、正孔ブロック能、酸化還元耐性、耐水性、耐酸素性、電子注入特性等に優れるため、有機電界発光素子の材料として有用であり、電子輸送材、正孔ブロック材、発光ホスト材等として有用である。とりわけ電子輸送材に用いた際に有用である。
【0203】
また本開示の一態様にかかる環状アジン化合物(1)はワイドバンドギャップであり、かつ高い三重項励起準位を有するため、従来の蛍光素子用途のみならず、燐光素子や熱活性化遅延蛍光(TADF)を利用した有機電界発光素子へ好適に用いることができる。
【0204】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の本質と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
なお、2019年7月30日に出願された日本国特許出願2019-139746号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0205】
1,101 基板
2,102 陽極
3,103 正孔注入層
4,104 電荷発生層
5,105 正孔輸送層
6,106 発光層
7,107 電子輸送層
8,108 陰極
51,1051 第一正孔輸送層
52,1052 第二正孔輸送層
71,1071 第一電子輸送層
72,1072 第二電子輸送層
100 有機電界発光素子