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  • 特許-リング付きキャップを有する容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】リング付きキャップを有する容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20230508BHJP
   B65D 35/02 20060101ALI20230508BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20230508BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B65D41/34 110
B65D35/02 K
B65D1/02 212
B65D33/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019001652
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020111342
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 美帆子
(72)【発明者】
【氏名】小野 松太郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 陽
(72)【発明者】
【氏名】福田 耕治
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226831(JP,A)
【文献】実開昭60-123308(JP,U)
【文献】米国特許第04592475(US,A)
【文献】特開2015-009854(JP,A)
【文献】米国特許第04567993(US,A)
【文献】米国特許第04147268(US,A)
【文献】特開平10-167299(JP,A)
【文献】特開昭61-047350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00-1/48
B65D 30/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改ざん防止機能を有する環状のリングが、キャップの注出口に装着される側の端部に連結されたリング付きキャップを有する容器であって、
前記容器は、前記キャップが装着される筒部を有する注出口を備え、
前記注出口は、前記リングが保持される溝部を有し、
前記リングがゴムまたはエラストマーから構成され、
前記キャップがゴム及びエラストマーを含まない樹脂から構成され、
前記リングは、前記キャップから分離した後に、前記キャップに連結されていたときよりも縮径可能であり、
前記リングは、開封時に前記キャップから分離して、前記溝部に収容され、前記リングが、がたつくことなく保持されることを特徴とするリング付きキャップを有する容器。
【請求項2】
前記リングは薄肉部を介して前記キャップと連結されていることを特徴とする請求項1に記載のリング付きキャップを有する容器。
【請求項3】
前記リングを構成する樹脂が、前記キャップを構成する樹脂より大きい収縮率を有することを特徴とする請求項1または2に記載のリング付きキャップを有する容器。
【請求項4】
前記キャップの内面には、雌ネジ部を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のリング付きキャップを有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング付きキャップおよびこれを備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物、化粧品、薬剤、調味料などの種々の内容物を充填する容器として、チューブ容器、パウチ容器等の柔軟な容器が広く用いられている。容器の注出口を閉鎖するため、例えばキャップが用いられる(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-126203号公報
【文献】特開2015-9854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボトル等の容器の注出口に改ざん防止機能を持たせるため、キャップの下部に破断可能な環状のリングを設け、キャップを開封したときにリングがキャップから破断される構造が知られている。しかし、一度で内容物の取り出しを終えることが多い飲料などの容器に比べて、少量ずつ内容物を取り出すことが多いチューブ容器などの場合は、もし改ざん防止用のリングを付加すると、開封後にリングががたつく等して、意匠性や清潔感を損ねるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、改ざん防止用のリングが開封後も安定して保持されるリング付きキャップおよびこれを備えた容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、改ざん防止機能を有する環状のリングが、キャップの注出口に装着される側の端部に連結されたリング付きキャップであって、前記リングは、前記キャップから分離した後に、前記キャップに連結されていたときよりも縮径可能であることを特徴とするリング付きキャップを提供する。
【0007】
前記リングは薄肉部を介して前記キャップと連結されていてもよい。
前記リングを構成する樹脂が、前記キャップを構成する樹脂より大きい収縮率を有してもよい。
前記リングがゴムまたはエラストマーから構成され、前記キャップが樹脂から構成されていてもよい。
前記キャップの内面には、雌ネジ部を有してもよい。
【0008】
また、本発明は、上述のリング付きキャップを有することを特徴とする容器を提供する。
前記容器は、前記キャップが装着される筒部を有する注出口を備えてもよい。
前記注出口は、前記リングが保持される溝部を有し、前記リングは、開封時に前記キャップから分離して、前記溝部に収容されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、改ざん防止機能を有するリングが開封後に縮径可能であるので、内容物を少量ずつ使用する場合もリングががたつくことなく保持される。リングがゴミにならず、また、開封後にキャップを再び装着し直しても、開封済みであることが容易に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るリング付きキャップの開封前の状態を例示する断面図である。
図2】実施形態に係るリング付きキャップの開封時の状態を例示する断面図である。
図3】実施形態に係るリング付きキャップの組立時の状態を例示する断面図である。
図4】注出口の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0012】
図1に、本実施形態に係るリング付きキャップを備えた容器閉鎖構造を例示する。この容器閉鎖構造は、改ざん防止機能を有する環状のリング14を有するキャップ10と、キャップ10が装着される筒部22を有する注出口20と、を備えている。
【0013】
注出口20は、パウチ容器、チューブ容器、ボトル容器など種々の容器に適用可能である。容器に内容物が収容される本体部(図示せず)に対して、注出口20が一体に成形されてもよい。本体部とは別に成形された注出口20を、本体部に接合してもよい。内容物の性状は特に限定されず、例えば、液体、粉体、粒体、混合物などが挙げられる。
【0014】
注出口20の基部21は、容器の本体部に近い側の部分である。パウチ容器を構成するフィルムに別体の注出口20を接合する場合は、基部21の周囲をフィルムと接合してもよい。チューブ容器、ボトル容器などの場合は、基部21が本体部と筒部22との間のショルダー部として観念されてもよい。
【0015】
キャップ10は、筒部22の先端面に対向して設けられる天面部11と、筒部22の外周面に対向して設けられる周面部12と、を有する。図示する容器閉鎖構造の場合は、筒部22に対するキャップ10の装着および離脱を可能にする着脱構造の一例として、キャップ10の周面部12の内面には雌ネジ部13が形成され、筒部22の外面には雄ネジ部23が形成されている。筒部22の中心軸線に対してキャップ10を螺旋状に回転させることにより、雌ネジ部13と雄ネジ部23とが結合可能となり、キャップ10が筒部22に対して装着される。
【0016】
注出口20の内部には、本体部から注出する際に内容物が通過する流路24が形成されている。筒部22の先端には、流路24の出口となる開口25が設けられている。筒部22の先端における開口25の周縁部22aとキャップ10の天面部11との間で内容物の漏出を抑制するため、天面部11と周縁部22aとが密着する構造としてもよい。例えば、天面部11の内面にパッキン(図示せず)等を設けてもよい。パッキンは、周縁部22aに密着可能な円板状でもよく、あるいは流路24の内面に密着可能な円柱状でもよい。あるいは、筒部22の側において、開口25に中栓を装着したり、周縁部22aに開口25を閉鎖するシール用の紙またはフィルム(図示せず)を貼着したりしてもよい。
【0017】
なお、筒部22に対するキャップ10の着脱構造は、雌ネジ部13と雄ネジ部23とからなるネジ構造に限られず、例えば、アンダーカット形状の凹凸等による係止、嵌合などを用いた構造であってもよい。着脱の際に筒部22に対するキャップ10の運動の態様は、螺旋状の回転運動に限られず、中心軸線に沿った直線的な運動、筒部22の周縁部22aの一点を回転中心としたヒンジ運動なども挙げられる。
【0018】
リング14は、キャップ10の注出口20に装着される側の端部に設けられている。このリング14が設けられる端部は、周面部12のうち天面部11とは反対側の端部である。周面部12とリング14との間には、筒部22の径方向に変形可能な連結部15が設けられている。連結部15は、容易に破断することが可能な薄肉部16を含む。リング14は、キャップ10から分離した後に、キャップ10に連結されていたときよりも縮径可能である。これにより、開封後には、リング14ががたつくことなく注出口20の周囲に保持される。
【0019】
本実施形態の場合は、注出口20が、筒部22の先端側に斜面部27を有するフランジ部26を有する。フランジ部26は、雄ネジ部23と基部21との間に設けられている。フランジ部26の外径は、筒部22の外径よりも大きくされており、さらには、雄ネジ部23の外径よりも大きくされてもよい。さらに、フランジ部26と基部21との間には、リング14が保持される溝部28が形成されている。溝部28は、筒部22の径方向における内側を底とするように、外側に開口されている。
【0020】
図2に、本実施形態に係るリング付きキャップを備えた容器閉鎖構造の開封時の状態を例示する。図1に示すように、筒部22にキャップ10が装着された状態では、連結部15がフランジ部26に接触して径方向における外側に押し広げられている。開封時にキャップ10を筒部22から離脱させると、リング14がフランジ部26と接触することによりリング14の移動が阻止されて、図2に示すように、薄肉部16が破断する。これにより、リング14がキャップ10から分離される。
【0021】
なお、注出口20からフランジ部26が省略された場合も、溝部28の底面が筒部22の外径より小径であれば、溝部28と筒部22との境界でリング14の移動を阻止して、リング14をキャップ10から分離させることが可能である。
【0022】
リング14は、開封後に開封前よりも縮径可能であることが好ましい。例えば、リング14が樹脂から構成される場合は、リング14を構成する樹脂が、キャップ10を構成する樹脂と異なる収縮率を有してもよい。キャップ10またはリング14の収縮率は、例えば、リング14がキャップ10と連結されているときの径をD、リング14がキャップ10から分離されたときの径をDとして、(D-D)/D×100%として定義してもよい。この場合の収縮率は、キャップ10またはリング14が分離の際に収縮する場合は正値、分離の際に膨張する場合は負値となる。リング14の収縮率が、キャップ10の収縮率より大きいことが好ましい。例えば、リング14の収縮率を10%~50%、キャップ10の収縮率を-5%~5%のようにしてもよい。
リング14がゴム、エラストマー等の弾性的な材質から構成され、キャップ10に連結された開封前には径が広がるように弾性変形した状態であると、キャップ10から分離された開封後には復元力により径が縮小する。リング14がその収縮率を高くするような樹脂、ゴム、エラストマー等の弾性成分を含む層を少なくとも1層含む積層構造から構成されてもよい。積層構造としては、例えば内層と外層、あるいは内層と中間層と外層を含む多層が挙げられる。積層構造は、例えば二色成形、インサート成形、コンプレッション成形等で製造することができる。
あるいは、リング14が例えばC字状のように切欠を有する状態にして、周方向に沿って切欠が閉じる方向に変形することにより、開封後に縮径が可能な構造としてもよい。
【0023】
さらに、キャップ10から分離されたリング14が溝部28の奥に収容されることが好ましい。これにより、リング14がぐらつきなく保持される。キャップ10から分離されて溝部28に収容されたリング14の外径が、フランジ部26の外径よりも小さいことが好ましい。図2に示す例では、リング14の外周面は、基部21およびフランジ部26の外周から突出することなく、リング14全体が溝部28の内部に収容されている。また、特に図示しないが、別の例として、リング14の外周面が、フランジ部26の外周26aから突出していてもよい。
【0024】
薄肉部16が破断した後にキャップ10を筒部に再び装着しても、リング14がキャップ10から分離された状態が外観として確認することができ、開封済みであることが容易に判別できるので、改ざんが防止される。また、容器を廃棄する際もリング14が注出口20から分離しにくいので、リング14を紛失しにくく、使用中にリング14がゴミになりにくく、リング14の確実な廃棄が容易になる。
【0025】
キャップ10からリング14が分離した際に、フランジ部26の周面部が分離前の隠れていた状態から、露出した状態となることから、フランジ部26の周面部(外周26a、斜面部27等)には着色やデザインが施されていてもよい。これにより、リング14の分離に伴って、フランジ部26の周面部が露出し、開封済みであることの確認が一層容易になる。あるいは、リング14の形状の変化が目立つように、例えば、キャップ10の周面部12、連結部15、注出口20の基部21、フランジ部26等と異なる色となるように、リング14を着色してもよい。
【0026】
連結部15または薄肉部16は、周面部12と同様に周方向の全周にわたって連続していてもよいが、周方向の一部のみに連結部15または薄肉部16を設けて、その他の部分は予め窓状に分離した状態としておくと、薄肉部16の破断に要する力が小さく、破断が容易になるので好ましい。筒部22に対するキャップ10の着脱構造が上述のネジ構造である場合は、キャップ10を筒部22から離脱させるとき、キャップ10とリング14との間が破断するときの力よりも小さな力で、キャップ10を螺旋に沿って回転させることができるので、開封が容易になる。
【0027】
リング14以外のキャップ10の材質は、特に限定されないが、例えばゴム及びエラストマーを含まない等して、リング14のような弾性を示さない樹脂が挙げられる。キャップ10を構成する樹脂としては、例えば射出成形などで成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが例示できる。2種以上の樹脂をブレンドして、キャップ10を構成してもよい。
【0028】
注出口20の材質は、例えばパウチ容器などに別体として取り付ける注出口の場合や、チューブ容器のショルダー部に注出口20を構成する場合は、容器の本体部を構成する樹脂フィルムまたは樹脂シートに対して熱溶着が可能な、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好ましい。2種以上の樹脂をブレンドして、注出口20を構成してもよい。あるいは、注出口20が内層、外層、中間層など、2以上の層構造を有してもよい。
【0029】
図3に、本実施形態に係るリング付きキャップを備えた容器閉鎖構造の組立時の状態を例示する。リング14付きのキャップ10は、注出口20とは別に製造することができる。リング14付きのキャップ10を筒部22に装着するとき、斜面部27によりリング14が径方向に押し広げられることにより、フランジ部26上を乗り越えて、溝部28まで到達することができる。
【0030】
筒部22に対するキャップ10の着脱構造が上述のネジ構造である場合は、リング14付きのキャップ10を注出口20に装着するとき、リング14がフランジ部26の上を乗り越えるときの力よりも小さな力で、キャップ10を螺旋状に回転させることができるので、組立が容易になる。
【0031】
内容物を容器に充填する工程および場所は特に限定されないが、リング14付きのキャップ10が筒部22に装着される前に、注出口20の開口25から内容物を注入してもよい。あるいは、注出口20とは別に内容物の充填口を設けてもよい。例えば容器の本体部がフィルムからなるパウチ容器である場合は、フィルムのシールが一部を未完成とした状態でパウチ容器を構成し、シールが未完成の部分から内容物を充填した後、残りのシールを完成させてもよい。
【0032】
図4に、注出口20の一例を示す。図示するように、注出口20の筒部22が円筒状で、溝部28が円周に沿って連続した平坦な溝であってもよい。なお、筒部22は円筒状に限られるものではなく、例えば角筒状などでもよい。溝部28の底面は平坦面に限られるものではなく、周方向に沿って凹凸、波状の起伏などを有してもよい。円環状のリング14に対して、溝部28の底面が凹凸等を有することにより、一層ぐらつきを抑制することができる。
【0033】
また、溝部28の底面とリング14の内面とが密着したときに、相互の凹凸が相補的に対応すると、開封後のリング14が一層ぐらつきにくくなり、好ましい。例えば、溝部28の底面の特定の位置に1または2以上の凹部を設け、この凹部と対応する位置で、リング14の内面に1または2以上の凸部を設けてもよい。また、例えば、溝部28の底面の特定の位置に1または2以上の凸部を設け、この凸部と対応する位置で、リング14の内面に1または2以上の凹部を設けてもよい。
【0034】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0035】
内容物の種類は特に限定されず、飲料品、食料品、調味料、化粧品、医薬品、洗剤、接着剤、家庭用品、工業製品などが挙げられる。容器の本体部の材質等も特に限定されず、樹脂、金属、紙、不織布などの1種または2種以上が挙げられる。金属の箔または薄膜を樹脂フィルムと複合したラミネートフィルムまたはシートの場合、軽量でもバリア性を確保することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…キャップ、11…天面部、12…周面部、13…雌ネジ部、14…リング、15…連結部、16…薄肉部、20…注出口、21…基部、22…筒部、22a…周縁部、23…雄ネジ部、24…流路、25…開口、26…フランジ部、26a…フランジ部の外周、27…斜面部、28…溝部。
図1
図2
図3
図4