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特許7273541透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡
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  • 特許-透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡 図1
  • 特許-透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡 図2A
  • 特許-透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡 図2B
  • 特許-透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡 図3
  • 特許-透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡 図4
  • 特許-透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】透過荷電粒子顕微鏡における動的試料の調査法および透過荷電粒子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/26 20060101AFI20230508BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20230508BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20230508BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20230508BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230508BHJP
【FI】
H01J37/26
H01J37/09 A
H01J37/147 A
H01J37/244
G01N23/04
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019037196
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2019186197
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】18165886.5
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン ランベルタス マルティネス ヘンドリクセン
(72)【発明者】
【氏名】エリック レネ キーフト
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0025887(US,A1)
【文献】特開2005-100911(JP,A)
【文献】実開昭56-131663(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過荷電粒子顕微鏡を使用して動的試料を検査する方法であって、前記透過荷電粒子顕微鏡が、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-前記動的試料を動的試料平面内に保持するための試料ホルダと、
-前記荷電粒子ビームを前記動的試料に向けるための照明システムと、
-前記動的試料を透過する荷電粒子を検出器平面内の検出器に向けるための撮像システムと
を備え、
-少なくとも選択された走査経路に沿って、互いから相互に隔離されているサブ画像の分布を含む画像を検出器レベルで生成するように前記荷電粒子ビームを希薄化することと、
-各サブ画像を前記検出器上の検出縞に塗りつぶすために、走査アセンブリを使用して、時間間隔Δtの間に、前記走査経路に沿って前記画像および前記検出器の相対運動を引き起こし、このような各縞が、前記時間間隔Δtの間に、その関連するサブ画像の一時的な放出を捕捉することと、
前記希薄化することが、マイクロレンズ群を使用して、
-前記荷電粒子ビームをビームレットの行列に細分することであって、各ビームレットが、前記マイクロレンズ群の平面内に入射幅を有する、ことと、
-各ビームレットを、前記入射幅よりも小さいウエスト幅に集束させることと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記マイクロレンズ群が、以下の位置:
-前記ビームレットを前記動的試料平面に集束させるために、前記ソースと前記動的試料との間、
-前記ビームレットを前記検出器平面に集束させるために、前記動的試料と前記検出器との間
のうちの少なくとも1つに配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希薄化することが、空間フィルタを使用して、前記荷電粒子ビームの一部を選択的にブロックしつつ、他の部分を通過させることによって、前記荷電粒子ビームのフットプリントを操作することを含み、前記通過した部分が、前記サブ画像を形成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記空間フィルタが、以下の位置:
-前記ソースと前記動的試料との間、
-前記動的試料と前記検出器との間
のうちの少なくとも1つに配置されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記走査アセンブリが、
-前記画像を前記検出器上で変位させるためのビーム偏向モジュール、
-前記画像に対して前記検出器を変位させるために、前記検出器に接続されたアクチュエータモジュール、
およびその組み合わせ
を含む群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記走査経路が、実質的に線状の形態である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記走査経路が、実質的に螺旋状の形態である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
各検出縞が、実質的に当接する配置において、連続した一連の、実質的に瞬間的なスナップショットを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
-前記時間間隔Δtが、離散的な数の成分時間量に細分され、
-前記時間量のうちの所与の1つに対応するサブ画像の前記分布が、その時間量の画像全体を再構成するために使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
-前記動的試料が、前記動的試料平面内の連続したサブ領域のタイル状アレイに概念的に細分され、
-前記希薄化が、前記タイル状アレイに希薄化変換を適用することと、結果として生じる画像を前記検出器上に投影することと、を含み、各前記サブ画像が、前記動的試料内の前記サブ領域のうちの特定の1つに対応する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
透過荷電粒子顕微鏡であって、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-動的試料を動的試料平面内に保持するための試料ホルダと、
-前記荷電粒子ビームを前記動的試料に向けるための照明システムと、
-前記動的試料内を透過する荷電粒子を検出器平面内の検出器に向けるための撮像システムと、
-前記透過荷電粒子顕微鏡の少なくとも幾つかの動作態様を制御するためのコントローラと
を備え、
前記コントローラが、
-少なくとも選択された走査経路に沿って、互いから相互に隔離されているサブ画像の分布を含む画像を検出器レベルで生成するように前記荷電粒子ビームを希薄化することと、
-各サブ画像を前記検出器上の検出縞に塗りつぶすために、走査アセンブリを起動して、時間間隔Δtの間に、前記走査経路に沿って前記画像および前記検出器の相対運動を引き起こすことと
を行うように構成され、このような各縞が、前記時間間隔Δtの間に、その関連するサブ画像の一時的な放出を捕捉することを含み、
前記希薄化することが、マイクロレンズ群を使用して、
-前記荷電粒子ビームをビームレットの行列に細分することであって、各ビームレットが、前記マイクロレンズ群の平面内に入射幅を有する、ことと、
-各ビームレットを、前記入射幅よりも小さいウエスト幅に集束させることと、を含む、透過荷電粒子顕微鏡。
【請求項12】
前記マイクロレンズ群が、以下の位置:
-前記ビームレットを前記動的試料平面に集束させるために、前記ソースと前記動的試料との間、
-前記ビームレットを前記検出器平面に集束させるために、前記動的試料と前記検出器との間
のうちの少なくとも1つに配置されている、請求項11に記載の透過荷電粒子顕微鏡。
【請求項13】
前記コントローラが、
-前記動的試料上の前記荷電粒子ビームのフットプリントを、前記動的試料平面内の連続したサブ領域のタイル状アレイに概念的に細分することと、
-前記タイル状アレイに希薄化変換を適用し、結果として生じる画像を前記検出器上に投影することと
を行うように構成されており、
各前記サブ画像が、前記動的試料面内の前記サブ領域のうちの特定の1つに対応する、請求項11又は12に記載の透過荷電粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過荷電粒子顕微鏡(TCPM)を使用して動的試料を検査する方法に関し、顕微鏡は、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-試料を試料平面内に保持するための試料ホルダと、
-ビームを試料に向けるための照明システムと、
-試料を透過した荷電粒子を検出器平面の検出器に向けるための撮像システムと、を備える。
【0002】
本明細書で採用される「動的」という用語は、顕微鏡での検査の過程で観察可能な変化(進化および/または運動)を受ける試料を指すことを意図している。多くの場合、そのような変化は非常に短いタイムスケール、例えばμs、ns、またはpsのオーダーで起こることになる。本発明はまた、このような方法を実施することができる荷電粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0003】
荷電粒子顕微鏡法は、周知であり、特に電子顕微鏡法の形態で微視的対象物を画像化するために、ますます重要になっている技術である。これまで、基本的な種類の電子顕微鏡は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、および走査透過電子顕微鏡(STEM)のような、幾つかの周知の装置類に進化してきており、さらには、例えばイオンビームミリングまたはイオンビーム誘導蒸着(IBID)のような支援作用を可能にする「機械加工」集束イオンビーム(FIB)をさらに採用した、いわゆる「デュアルビーム」装置(例えば、FIB-SEM)のような様々な補助装置類に進化してきている。より具体的には、
-SEMにおいては、走査電子ビームを試料に照射すると、試料から、例えば二次電子、後方散乱電子、X線、ならびにカソード発光(赤外線光子、可視光子、および/または紫外線光子)の形態の「補助」放射線の放出が開始され、次に、この放出される放射線の1種類以上の放射線成分が、検出され、画像を蓄積するために使用される。
-TEMにおいては、試料に照射するために使用される電子ビームは、(この目的のために、一般的に、SEM試料の場合よりも薄くなる)試料に貫通するために十分高いエネルギーとなるように選択され、次に、試料から放出される透過電子を使用して画像を生成することができる。このようなTEMを走査モードで動作させる(したがってSTEMになる)と、照射される電子ビームの走査動作中に当該画像が蓄積される。
-SEMは、比較的薄いサンプルと比較的高い入射ビームエネルギーを使用する場合など、「透過モード」で使用することもできる。そのようなツールはしばしば「TSEM」(透過型SEM)と呼ばれ、それは通常、試料と試料後検出器との間に配置された比較的初歩的な撮像システム(例えば単一レンズおよび偏向器)を有する。
【0004】
照射ビームとして電子を使用する代わりに、荷電粒子顕微鏡法は、荷電粒子の他の種を使用して実行することもできる。この点に関して、「荷電粒子」という句は、例えば電子、正イオン(例えば、GaイオンまたはHeイオン)、負イオン、陽子、および陽電子を含むものとして広く解釈される必要がある。電子顕微鏡法以外の荷電粒子顕微鏡法に関しては、幾つかの別の情報を、以下の参考文献から収集することができる:非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;および非特許文献4。
【0005】
撮像、および(局所的な)表面改質(例えば、ミリング、エッチング、蒸着など)の実行に加えて、荷電粒子顕微鏡はまた、分光法の実行、回折図の検査など他の機能を有していてもよいことに留意されたい。
【0006】
全ての場合において、荷電粒子顕微鏡(CPM)は、少なくとも以下の構成要素を含む。
-例えば、電子の場合のWソースもしくはLaBソース、ショットキー銃もしくは低温電界放出銃(CFEG)のような粒子ソース、またはイオンの場合の液体金属イオンソース(LMIS)もしくはナノ開口イオンソース(NAIS)。
-ソースからの「素の」放射線ビームを操作し、集束させる、収差を緩和する、(ダイヤフラムで)トリミングする、フィルタリングするなどのように、一定の動作を放射線ビームに対して実行するのに役立つ照明システム/照明器。それは、一般的に1つ以上の(荷電粒子)レンズを備え、他の種類の(粒子)光学構成要素も備えることができる。所望される場合、照明器には、偏向システムを設けることができ、偏向システムは、調査中の試料にわたってその出射ビームに走査運動を実行させることができる。
-試料ホルダであり、一般的に、位置決めシステムに接続されており、その上に調査中の試料を保持し、位置決め(例えば、変位、傾斜、回転)することができる。所望される場合、このホルダを移動して、ビームに関して試料の走査運動をすることができる。極低温試料を保持するように設計される場合、試料ホルダは、例えば適切に接続される極低温槽を使用して、上記試料を極低温に維持するための手段を備えることができる。
-検出器(照射された試料から放出される放射線を検出する)であり、本質的に単体とするか、または複合/分散させることができ、かつ検出されている放射線に応じて多くの異なる形態を採ることができる。例として、フォトダイオード、CMOS検出器、CCD検出器、光起電力セル、X線検出器(シリコンドリフト検出器およびSi(Li)検出器など)などを挙げることができる。一般に、CPMは、幾つかの異なる種類の検出器を含むことができ、検出器の選択は、異なる状況において実行することができる。
【0007】
透過型顕微鏡(例えば、(S)TEMまたはTSEMなど)の場合、CPMはさらに以下を含む。
-撮像システムであり、試料(平面)内を透過する荷電粒子を本質的に捉え、かつ検出器、撮像デバイス、分光装置(例えば、EELSデバイス:EELS=電子エネルギー損失分析器)などのような検出装置にそれらを向ける(集束させる)。上に言及した照明器の場合と同様に、撮像システムは、収差緩和、トリミング、フィルタリングなどのような他の機能を実行することもでき、撮像システムは、一般的に、1つ以上の荷電粒子レンズおよび/または他の種類の粒子光学構成要素を備える。
【0008】
以下に、本発明は、例として、電子顕微鏡法の具体的な状況において説明される場合がある。しかしながら、このような簡略化は、単に明瞭性/例示を意図したものであり、限定的に解釈されるべきではない。
【0009】
TEMにおける動的試料挙動を調査する既知の方法は、パルス(紫外線)レーザビームによって「駆動される」カソードを含む電子ソースを使用することであり、それによってカソードがレーザパルスに当たるとき電子のシャワーを放射する。このようにしてパルス電子ソースを使用すると、ストロボ画像の形態を効果的に可能にし、それによって一連の「フリーズフレーム」画像を短時間で連続して作ることができる。このようなTEMはしばしば動的TEM(DTEM)と呼ばれる。しかしながら、この手法は、採用された検出器がパルス列内の個々の画像を別々に位置合わせするのに十分速いことを仮定している。残念なことに、非常に短い時間スケールの動的プロセスの多くでは、従来利用可能なカメラは十分な捕捉速度/フレームリフレッシュレートを提供していない。
【0010】
代わりの既知の手法は、画像のフットプリントよりもはるかに大きい面積を有する検出器を使用し、連続する画像を検出器の異なる領域に偏向すること、読み出し/リフレッシュの前に、検出器上に個々の画像の「コラージュ(collage)」を作成することである。しかしながら、このような手法は以下の点で不利である。
-それは非常に大きな検出器面積を必要とし、および/または比較的小さな画像(小さな倍率)しか扱えない。
-各連続画像を検出器の異なる面積に位置決めするためには、比較的大きな偏向振幅が必要である。採用される偏向システムが本質的に光学的であるか機械的であるかにかかわらず、像のぼけを回避しようとするならば、比較的大きい偏向振幅はその後一般に比較的長い設定時間を必要とする。これはスループットを犠牲にし、かつ急速に変化する試料の場合には「見逃した作用」を招き得る。
-結像ビームは、概して、画像偏向ステップ中に遮断されなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/Focused_ion_beam
【文献】http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_Helium_Ion_Microscope
【文献】-W.H.Escovitz,T.R.Fox and R.Levi-Setti,「Scanning Transmission Ion Microscope with a Field Ion Source」、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 72(5),pp.1826-1828(1975).
【文献】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22472444
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、これらの問題に対処することである。特に、本発明の目的は、比較的遅い検出器と互換性のある動的/発展中の試料のTCPMベースの時間分解調査のための方法/装置を提供することである。さらに、本発明の目的は、上記方法/装置が、大きな検出器および/または大きな振幅の画像/検出器の偏向の使用に頼るべきではないことである。
【0013】
これらのおよび他の目的は、上記冒頭の段落に記載された方法を実現することであり、本方法は、
-少なくとも選択された走査経路に沿って互いから相互に隔離されたサブ画像の分布を含む画像を検出器レベルで生成するように上記ビームを希薄化することと、
-走査アセンブリを使用して、時間間隔Δtの間に、上記走査経路に沿って上記画像と上記検出器との相対運動を引き起こし、各サブ画像を上記検出器上の検出縞に塗りつぶすことであって、このような各縞は、上記時間間隔Δtの間にその関連するサブ画像の一時的な放出を捕捉することと、を特徴とする。
【0014】
本発明は、画像間偏向ではなく画像内偏向を利用するために上記希薄化を使用し、それによって偏向が画像自体の(比較的小さい)フットプリント内で起こるので、大きな検出器および/または大きな振幅の画像/検出器偏向を使用する必要性を回避する。この目的のために、本発明は、隣接サブ領域が隣接する試料レベルのサブ領域の密集アレイを、隣接サブ画像が、事前に選択された走査軌跡に少なくとも沿って、介在する間隙により互いに隔離されている、検出器レベルのサブ画像の希薄/希少アレイに変換する。上記走査軌跡に沿ったサブ画像の最小分離Yでの相互隔離は、所与のアレイセル/ユニットを走査方向に沿って距離Y(またはそれ未満)で塗りつぶし(変位させ/広げ)、それによって当該セル/ユニットのコマ落とし縞画像を作成する。以下のことに留意されたい:
-基本形態では、本発明は、全体画像/従来画像ではなく、サブ画像の上記分布についてそのようなコマ落とし画像を捕捉するだけであるが、それにもかかわらず、これは様々な状況において有用な撮像情報を提供する。なぜなら、
・多くの場合、試料はほぼ均質であるため、試料全体(または試料の特定の領域)を監視する必要はなく、試料のサブ領域のサンプリングを調査することで十分であるからである。例えば、水和、結晶構造などの一般的な試料特性を調査することに関心があるかもしれず、それは(大いに)位置依存性である場合がある。
・鉱物ナゲット、特定の分子、生物学的実体(例えば、ウイルス、プリオン、ミトコンドリア)など、試料が不均質で周囲の多量の物質に埋め込まれた具体的な調査対象を含んでいる場合、所望される場合、採用される希薄化のパラメータを調整して、関心のある調査対象がサブ画像のうちの1つに入るようにする。これについては、以下でより詳細に考察する。
-より高度な形態においては、本発明は、サブ画像の上記分布から画像全体を再構成する可能性を提供する。これについては、以下でより詳細に考察する。
【0015】
本発明の実施形態において、上記希薄化することは、空間フィルタを使用して、他の部分を通過させながらその一部を選択的にブロックすることによって、荷電粒子ビームのフットプリントを操作することを含み、通過した部分が上記サブ画像を形成する。空間フィルタは、例えば、適切な開口が設けられた(金属)プレートを含み、それは試料の上流および/または下流に配置されてもよい(それぞれ衝突ビームおよび/または射出ビームの希薄化が結果として生じる)。所望される場合、空間フィルタは、それをビーム経路の内外に交換することができ、(随意に)ビームに対するその位置/姿勢を調整することができる(カルーセルまたはロボットアームなど)交換機機構に保持することができ、このような交換機機構は、例えば、ラックのような、異なる空間フィルタのライブラリを格納することができる格納ユニットと協働することができる。開口パターンの具体的な(非限定的な)例としては、(例えば、デカルト座標系に関して)以下が挙げられる。
-各々がX方向に沿って延び、Y方向に沿って互いに分離している複数の細長いスリット(またはそのような単一のスリット)。Yと平行に走査すると、各スリットを(比較的広い)検出縞に塗りつぶす。隣接するスリット(最小)分離Yを有する場合、各縞の長さは≦Yを有することになる。
-比較的小さな(正方形)ウィンドウの偏った分布であり、その中で、
・任意の所与の行において、隣接するウィンドウは、(最小)分離Yを有し、
・連続した列(Xと平行)は、互いに対して(Y方向に)互い違いに配置されている。
-比較的小さな(正方形)窓の(準)ランダム分布。
【0016】
当業者は、所与の状況の詳細に最も適した開口パターン/形態/分布を選択することができるだろう。例えば、図2A、2B、4、および5を参照されたい。
【0017】
本発明の別の実施形態では、上記希薄化することは、マイクロレンズ群を使用して以下のことを行うことを含む。
-ビームを、試料面平内の上記タイル状アレイに対応するビームレットの行列に細分し、各ビームレットはマイクロレンズ群の平面内に入射幅を有する。
-各ビームレットを上記の入射幅より小さいウエスト幅に集束させる。
【0018】
前の段落とは対照的に、この手法の重要な利点は、フラックスが選択的にブロックされるのではなく再分布(集中)されるため、かなりの量のビームフラックスが画像の希薄化で破棄されないことである。このようなマイクロレンズ群の比較的簡単な実施形態は、(円形の)孔の行列配置が設けられている導電プレートを含み、プレートが帯電しているとき、各孔の端部/周囲は集束作用を有する電界を生成する。当業者は、群内の全てのマイクロレンズが、必ずしも相互に同一である必要はないことを理解するであろう。前の段落の実施形態とやや類似しているが、本明細書に記載されているように、マイクロレンズ群を以下の少なくとも1つの位置に配置することが可能である。
(a)上記ビームレットを試料平面に集束させるために、ソースと試料との間、
(b)上記ビームレットを検出器平面に集束させるために、試料と検出器との間。
【0019】
シナリオ(a)においては、各試料サブ領域の(上記ウエスト幅に対応する)小さな区間のみが照明され、次いで、試料の下流の集束アセンブリを使用して、検出器平面上に投影されたときに上記ゾーンが相対的に収縮したままであり、かつその近傍から隔離されたままであることを確実にすることができる。シナリオ(b)においては、試料レベルのサブ領域がマイクロレンズ群によって検出器レベルの(上記ウエスト幅に対応する)はるかに小さいゾーンに収縮され、この収縮の結果として、そのような各区間はその隣接区間から比較的遠位にある。例えば、図3を参照されたい。当業者は、ここで言及される「ウエスト」がビームの最小幅(焦点平面幅)に対応する必要がなく、代わりに、電子顕微鏡法でよく見られるように、ある程度の焦点ずれが存在する可能性があることを理解するであろう。
【0020】
各サブ領域を塗りつぶすために使用される走査アセンブリは、例えば、以下を含む群から選択することができる。
(i)上記画像を検出器上に変位させるためのビーム偏向モジュール(例えば、偏向コイル/電極を含む)、
(ii)画像に対して検出器を変位させるために、検出器に接続されたアクチュエータモジュール(例えば、可動ステージ)、
およびこれらの組み合わせ。ビーム走査(技術(i))は、(SEMおよびSTEMなど)走査型CPMで使用される伝統的な手法であり、本発明を容易にするために、試料の前/上ではなく後/下で起こるように比較的容易に改変することができる。手法(ii)は、CPMにおいてはあまり一般的ではないが、高度な走査ステージは既にリソグラフィなどの分野で使用されており、多くの異なる実装で利用可能であるため、技術的ハードルを提示する必要はない。計画された走査経路が実質的に線状の形態である場合、名目上は単一方向に平行な偏向を生成させるだけでよいので、走査アセンブリは、その構造において比較的基本的であり得る。しかしながら、走査経路は線状である必要はなく、代わりに、例えば、螺旋形/コイル形/巻き形態を有することができ、例えば、そのような場合(および他の関連する場合)において、採用される走査アセンブリは、2つの成分方向に沿って合成/複合偏向を生成するように具体化することができる。走査経路は、円、長円、楕円などのような閉曲線でさえあり得、このような閉曲線の利点は、一致する始点と終点を有することができることであり、これは、(上記の(i)および(ii)の両方の運動手法に関する、ヒステリシス、反転、ジャークなどのようなビス効果を介して)走査機構の観点から有利であり得る。
【0021】
画像/検出器の相対的な走査運動によって生成される検出縞は連続的であり得るが、所望される場合、不連続的でもあり得、後者の場合、各検出縞は、実質的に当接する(ストロボ写真シリーズに似た個々のサブ画像の「スタッカート(staccato)」列に似ている)配置で、連続した一連の実質的に瞬間的なスナップショットを含む。このような実施形態は、例えば、スナップショット間で撮像ビームをマスクする振動シャッタの助けを借りて実現することができる。このような配置は、例えば、検出縞に対して数学的再構成を実行したい場合に有利であり得る(次の段落を参照)。
【0022】
本発明で採用される希薄化を理解/遂行するための有用な方法は以下の通りである。
-試料上(または試料自体)に入射するビームのフットプリントを、試料平面内の連続したサブ領域のタイル状アレイに概念的に細分する。
-上記アレイに希薄化変換を適用し、結果として生じる画像を検出器上に投影し、各サブ画像(上記参照)は試料平面内の上記サブ領域のうちの特定の1つに対応する。
【0023】
以下の実施形態は、このような(数学的)変換の幾つかの例を示す。
【0024】
上述したように、本発明は検出器レベルでサブ画像の希少分布を生成し、これらサブ画像の各々は検出縞に塗りつぶされる。走査時間間隔Δtを離散的な数の成分時間量に細分する場合、本発明は、それらの時間量の各々について、サブ画像の分布を効果的に生成する。本発明の実施形態においては、上記時間量のうちの所与の1つに対応するサブ画像の分布を使用して、その時間量の全体(または少なくともより大きい)画像を再構成する。そのような再構成は、様々な方法で起こり得る。例えば、
(I)上記のシナリオ(b)に示されるようにマイクロレンズ群を使用するとき、各マイクロレンズは、試料上のサブ領域/タイルのうちの1つに効果的に収縮変換を適用する。この変換の逆(逆拡張)が、所与の時間量に対応するサブ画像の各々に適用される場合、このように拡張されたサブ画像の適切な「ステッチング」の後、画像全体を組み立てる/回復/再構成することができる。
(II)開口の(準)ランダム分布を有する空間フィルタを使用するとき、圧縮感知技術から知られている数学的再構成技術を適用することができる。例えば、そのような技術の考察については、以下の参考文献を参照されたい。
https://cfwebprod.sandia.gov/cfdocs/CompResearch/docs/1210508c.pdf
【0025】
上記で示唆したように、採用された希薄化は、試料内の関心のある所与の調査対象が意図せずにサブ画像の分布から欠如している状況をもたらす可能性がある。これは、例えば、次の場合に発生する可能性がある。
-希薄化が空間フィルタを使用して実行され、関連する調査対象はフィルタの開口の1つのフットプリント内に(完全に)収まらない。
-希薄化が上記のマイクロレンズシナリオ(a)を使用して実行され、関連する調査対象が(ビームレットウエストに関連付けられた)試料上の照明ゾーンの1つ内に(完全に)収まらない。
【0026】
このような場合、検出器と所望の希薄化を生成するために使用されるデバイス(空間フィルタおよび/またはマイクロレンズ群)との相対位置/姿勢、例えば(わずかな)変位および/または回転の修正調整をすることが可能である。あるいは、交換機機構と組み合わせて使用される空間フィルタのライブラリの場合、異なる開口構成を有する第2の空間フィルタと第1の空間フィルタとを交換することができる。
【0027】
当業者は、本発明で使用される(画素化された)検出器が、例えばCCD(電荷結合デバイス)またはCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサを含むことができることを理解するであろう。
【0028】
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1]
透過荷電粒子顕微鏡を使用して動的試料を検査する方法であって、前記顕微鏡が、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-前記試料を試料平面内に保持するための試料ホルダと、
-前記ビームを前記試料に向けるための照明システムと、
-前記試料を透過する荷電粒子を検出器平面内の検出器に向けるための撮像システムと
を備え、
-少なくとも選択された走査経路に沿って、互いから相互に隔離されているサブ画像の分布を含む画像を検出器レベルで生成するように前記ビームを希薄化することと、
-各サブ画像を前記検出器上の検出縞に塗りつぶすために、走査アセンブリを使用して、時間間隔Δtの間に、前記走査経路に沿って前記画像および前記検出器の相対運動を引き起こし、このような各縞が、前記時間間隔Δtの間に、その関連するサブ画像の一時的な放出を捕捉することと
を特徴とする、方法;
[2]
前記希薄化することが、空間フィルタを使用して、前記ビームの一部を選択的にブロックしつつ、他の部分を通過させることによって、前記ビームのフットプリントを操作することを含み、前記通過した部分が、前記サブ画像を形成する、[1]に記載の方法;
[3]
前記空間フィルタが、以下の位置:
-前記ソースと前記試料との間、
-前記試料と前記検出器との間
のうちの少なくとも1つに配置されている、[2]に記載の方法;
[4]
前記希薄化することが、マイクロレンズ群を使用して、
-前記ビームをビームレットの行列に細分することであって、各ビームレットが、前記マイクロレンズ群の平面内に入射幅を有する、ことと、
-各ビームレットを、前記入射幅よりも小さいウエスト幅に集束させることと、を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法;
[5]
前記マイクロレンズ群が、以下の位置:
-前記ビームレットを前記試料平面に集束させるために、前記ソースと前記試料との間、
-前記ビームレットを前記検出器平面に集束させるために、前記試料と前記検出器との間
のうちの少なくとも1つに配置されている、[4]に記載の方法;
[6]
前記走査アセンブリが、
-前記画像を前記検出器上で変位させるためのビーム偏向モジュール、
-前記画像に対して前記検出器を変位させるために、前記検出器に接続されたアクチュエータモジュール、
およびその組み合わせ
を含む群から選択される、[1]~[5]のいずれかに記載の方法;
[7]
前記走査経路が、実質的に線状の形態である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法;
[8]
前記走査経路が、実質的に螺旋状の形態である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法;
[9]
各検出縞が、実質的に当接する配置において、連続した一連の、実質的に瞬間的なスナップショットを含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法;
[10]
-前記時間間隔Δtが、離散的な数の成分時間量に細分され、
-前記時間量のうちの所与の1つに対応するサブ画像の前記分布が、その時間量の画像全体を再構成するために使用される、[1]~[9]のいずれかに記載の方法;
[11]
-前記試料が、前記試料平面内の連続したサブ領域のタイル状アレイに概念的に細分され、
-前記希薄化が、前記アレイに希薄化変換を適用することと、結果として生じる画像を前記検出器上に投影することと、を含み、各前記サブ画像が、前記試料内の前記サブ領域のうちの特定の1つに対応する、[1]~[10]のいずれかに記載の方法;
[12]
透過荷電粒子顕微鏡であって、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-試料を試料平面内に保持するための試料ホルダと、
-前記ビームを前記試料に向けるための照明システムと、
-前記試料内を透過する荷電粒子を検出器平面内の検出器に向けるための撮像システムと、
-前記顕微鏡の少なくとも幾つかの動作態様を制御するためのコントローラと
を備え、
前記コントローラが、
-少なくとも選択された走査経路に沿って、互いから相互に隔離されているサブ画像の分布を含む画像を検出器レベルで生成するように前記ビームを希薄化することと、
-各サブ画像を前記検出器上の検出縞に塗りつぶすために、走査アセンブリを起動して、時間間隔Δtの間に、前記走査経路に沿って前記画像および前記検出器の相対運動を引き起こすことと
を行うように構成され、このような各縞が、前記時間間隔Δtの間に、その関連するサブ画像の一時的な放出を捕捉することを特徴とする、顕微鏡;
[13]
前記コントローラが、
-前記試料上の前記ビームのフットプリントを、前記試料平面内の連続したサブ領域のタイル状アレイに概念的に細分することと、
-前記アレイに希薄化変換を適用し、結果として生じる画像を前記検出器上に投影することと
を行うように構成されており、
各前記サブ画像が、前記試料面内の前記サブ領域のうちの特定の1つに対応する、[12]に記載の顕微鏡。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本発明は、例示的な実施形態および添付の(一定の比率ではない)概略図に基づいてより詳細に説明される。
【0030】
図1】本発明が実装されるTCPMの実施形態の縦断面図を描写する。
図2A】本発明の第1の実施形態に係る、図1の主題の一部の詳細斜視図を描写する。
図2B図1の試料の詳細平面図であり、図2Aで利用される態様を描写する。
図3】本発明の第2実施形態に係る、図1の一部の詳細を示す。
図4】本発明のさらに別の実施形態の一定の詳細を示す。
図5図4に示した構成に対する代替の設定を示す。
【0031】
図面において、適切な場合、対応する部分は対応する参照記号を使用して示される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態1
(一定の比率ではない)図1は、本発明が実装されるTCPM Mの実施形態の非常に概略的な図であり、特に、それは、TEM/STEMの実施形態を示す(ただし、本発明の文脈では、それは、ちょうど例えばTSEMまたはイオンベースの顕微鏡と同じように有効であり得る。)図において、真空筐体2内では、電子ソース4は、電子-光軸B’に沿って伝搬し、電子-光学照明器(荷電粒子ビーム列)6を横断する電子ビームBを生成して、(例えば、(局所的に)薄くされ/平坦化されていてもよい)試料Sの選択された部分上に電子を向ける/集束させるのに役立つ。更に図示されるのは偏向器8であり、偏向器8は(とりわけ)、ビームBの走査運動をするために使用することができる。
【0033】
試料Sは、ホルダHが(取り外し可能に)固定されているクレードルA’を移動させる、位置決めデバイス/ステージAによって複数の自由度で位置決めすることができる試料ホルダHに保持されており、例えば、試料ホルダHは、(とりわけ)X-Y平面内で移動することができるフィンガを備えることができる(示されたデカルト座標系を参照されたい。通常は、Zに平行およびX/Yを中心に傾く移動も可能である)。このような移動により、試料Sの異なる部分が、軸B’に沿って(Z方向に)進む電子ビームBによって、照明/撮像/検査されることを可能し、かつ/またはビーム走査の代替/補足として走査運動が行われることを可能にする。所望される場合、随意の冷却デバイス(図示せず)を、試料ホルダHと密に熱的に接触させて、試料ホルダH(および、試料ホルダ上の試料S)を、例えば極低温に維持することができる。
【0034】
電子ビームBは、試料Sと相互作用して、(例えば)二次電子、後方散乱電子、X線、および光放射線(カソード発光)を含む様々な種類の「励起(stimulated)」放射線が試料Sから放出されるようになる。所望される場合、例えば、シンチレータ/光電子増倍管またはEDX(エネルギー分散型X線分光)モジュールを組み合わせた分析デバイス22の助けを借りて、これらの放射線の種類のうちの1つ以上を検出することができ、このような場合には、SEMと基本的に同じ原理を使用して画像を構築することができる。しかしながら、試料Sを横断(通過)し、試料から放射/放出され軸線B’に沿って(実質的には、一般的に、ある程度偏向/散乱しながら)伝搬し続ける電子を代替的に、または補足的に調査することができる。このような透過電子フラックスは、撮像システム(投影レンズ)24に入射し、撮像システム24は一般的に、多種多様な静電レンズ/磁気レンズ、偏向器、補正器(例えばスティグメータのような)などを備えている。通常の(非走査)TEMモードでは、この撮像システム24は、透過電子フラックスを蛍光スクリーン26に集束させることができ、蛍光スクリーン26は、所望される場合、それを軸B’の邪魔にならないように(矢印26’で概略に示すように)撤回/回収することができる。試料S(の一部)の画像または、回折図は、撮像システム24によってスクリーン26上に形成され、この画像は、筐体2の壁の好適な部分に位置する視認ポート28を通して視認することができる。スクリーン26の撤回機構は、例えば本質的に機械的および/また電気的な機構であり、ここには図示されていない。
【0035】
スクリーン26上の画像/回折図を視認することの代替として、代わりに、撮像システム24から出ていく電子フラックスの焦点深度が一般的に極めて深い(例えば、約1メートル)という事実を利用することができる。その結果、様々な他の種類の分析装置をスクリーン26の下流で使用することができる。
-TEMカメラ30カメラ(検出器)30において、電子フラックスは、静止画像または回折図を形成することができ、静止画像または回折図は、コントローラ/プロセッサ20により処理され、例えばフラットパネルディスプレイのような表示デバイス(図示せず)に表示することができる。必要ではない場合、カメラ30は、(矢印30’で概略に示すように)撤回/回収させて、カメラを軸線B’から外れるようにすることができる。
-STEMカメラ32カメラ32からの出力は、試料S上のビームBの(X、Y)走査位置の関数として記録することができ、カメラ32からの出力の「マップ(map)」である画像は、X、Yの関数として構築することができる。カメラ32は、カメラ30に特徴的に存在する画素行列とは異なり、例えば直径が20mmの1個の画素を含むことができる。さらに、カメラ32は一般的に、カメラ30(例えば、10画像/秒)よりもはるかに高い取得レート(例えば、10ポイント/秒)を有する。この場合も同じく、必要でない場合、カメラ32は、(矢印32’で概略に示すように)撤回/回収させて、カメラを軸線B’から外れるようにすることができる(このような撤回は、例えばドーナツ形の環状暗視野カメラ32の場合には必要とされないが、このようなカメラでは、中心孔により、カメラが使用されていなかった場合にフラックスを通過させることができる)。
-カメラ30または32を使用して撮像を行うことの代替として、例えばEELSモジュールとすることができる分光装置34を起動することもできる。部品30、32、および34の順序/位置は厳密ではなく、多くの可能な変形が考えられることに留意されたい。例えば、分光装置34は、撮像システム24と一体化することもできる。
【0036】
コントローラ(コンピュータプロセッサ)20は、図示される様々な構成要素に、制御線(バス)20’を介して接続されることに留意されたい。このコントローラ20は、作用を同期させる、設定値を提供する、信号を処理する、計算を実行する、およびメッセージ/情報を表示デバイス(図示せず)に表示するといった様々な機能を提供することができる。言うまでもなく、(模式的に描かれる)コントローラ20は、筐体2の内側または外側に(部分的に)位置させることができ、所望に応じて、単体構造または複合構造を有することができる。
【0037】
当業者であれば、筐体2の内部が気密な真空状態に保持される必要はないことを理解できるであろう。例えば、いわゆる「環境制御型TEM/STEM」では、所与のガスの背景雰囲気が、筐体2内に意図的に導入される/維持される。当業者はまた、実際には、筐体2の容積を閉じ込めて、可能であれば、筐体2が、軸線B’を本質的に包み込むようになって、採用する電子ビームが小径管内を通過し、しかも広がってソース4、試料ホルダH、スクリーン26、カメラ30、カメラ32、分光装置34などのような構造を収容する小径管(例えば、直径約1cm)の形態を採ると有利となり得ることを理解できるであろう。
【0038】
本発明の文脈において、試料Sは、それをタイル状の連続した小領域(例えば、線状、直交、極/同心、または六角形の配置の単位/セル)に概念的に細分する(XY平面に平行に延びる)、概念的/抽象的格子によって重ねられていると見なすことができる。本発明を実行するためにこのアレイを「操作する」ことができるようにするために、顕微鏡Mは、上記アレイに希薄化変換を適用するための装置40を備える。上で考察されるように、装置40は、例えば、(可変/格納式)空間フィルタおよび/またはマイクロレンズ群を含むことができる。本明細書に示されるように、それは試料Sと検出器(TEMカメラ)30との間に位置されるが、代替的/補足的に試料Sの上流(例えば照明器6と試料Sとの間)に設けられ得る。デバイス40の最終的な効果は、検出器30上に形成された画像に、少なくとも選択された走査経路に沿って(例えばYに平行に)、互いから相互に隔離されたサブ画像の分布を含ませることであり、各サブ画像は試料S内の上記サブ領域のうちの特定の1つに対応する(の変換である)。
【0039】
また、走査アセンブリ42も示されており、これは、例えば、ビームBをXY平面に平行に横方向に変位させるために、光軸B’をまたぐ一対の(または二対の)偏向電極を含むことができる[上記の選択肢(i)を参照されたい]。代替的/補足的に、検出器30は、XY平面に対して平行に横方向に変位させることを可能にする機械的ステージ(図示せず)に接続することができる[上記の選択肢(ii)]。いずれの場合も、検出器30とそれに衝突する電子フラックス(撮像ビーム;画像)のこのような相対運動は、各サブ画像を検出器30上の検出縞(検出軌跡)に塗りつぶしの効果を有し、このような各縞は、上記時間間隔Δtの間にその関連するサブ画像の一時的な放出を捕捉する(下記参照)。
【0040】
ここで図2Aを参照すると、これは図1の主題の一部の詳細な斜視図を示し、部品40が空間フィルタ/開口プレートである本発明の具体的な実施形態を示す。図2Bは、図2Aに示されたものと同じシナリオに対応するが、試料Sの平面図を描写する。図2Bから始めて、これは、試料Sを(XY平面に平行な)試料平面内の連続したサブ領域のタイル状の配列に概念的に細分するグリッドGによって、試料S(のフットプリント)が、どのようにして概念上重ねられたかを示す。この特定の場合において、これは、多くの異なる可能なアレイ構成のうちの1つにすぎないが、各サブ領域は、Xに平行な長辺とYに平行な短辺とを有する細長い長方形である。図2Aにおいては、開口プレート40は、図2Bの白い長方形G’に対応する3つの開口40’を含む。したがって、開口プレート40の効果は、格子G(の画像)を希薄化することであり、Yと平行に相互に隔離された格子位置G’を通る電子のみを受け入れ、格子位置G”に衝突する電子をブロックする。開格子位置G’は、Yに沿って5つの格子位置の間隔で起こるので、開口プレート40は、格子Gによって画定されるアレイに以下の希薄化(数学的)変換を効果的に適用することに留意されたい。
[式1]
(A)=A
i=5nの場合、A(ΔY)=A(ΔY)であり、ここで、nは、整数0であり、iの他の値に対して、
ここで、A、Aはそれぞれ入力アレイと出力アレイであり、ΔYは、Y軸に沿った位置/序数iの矩形であって、位置/序数0にあるものとして左側のハッチングされた矩形を採る。
【0041】
ここで図2Aに戻ると、偏向電極42a、42bを使用して、開口40’を通過する電子を横方向に偏向し、それらをY方向に平行に変位させることができる。破線40”は、開口40’と検出器30上の対応するサブ画像30’との間で電子がたどる経路(簡略化のため、可能なスケーリング/倍率効果は無視される)と、(偏向器42a、42bを適切に起動することによって)時間間隔Δtの間にこれらのサブ画像30’をY軸に沿ってどのように塗りつぶすことができるかを示す、左向き矢印30”とを示し、Yに平行な開口40’の分離は、そのような塗りつぶし/偏向縞のそれぞれの最大長を決定する。既に上で考察されるように、各このような塗りつぶしは、例えば、連続的な偏向、または一連の連続した離散的瞬間的なスナップショットのスタッカートであり得る。
【0042】
実施形態2
図3は、本発明の第2の実施形態に係る図1の一部の詳細図を示す。この実施形態においては、図1の部品40は、図3の上部に立面図で、図3の下部に、対応する平面図で示されるマイクロレンズ群であるように選択されている。図の下部から始めて、これは、試料Sを(XY平面に平行な)試料平面内の連続したサブ領域G’のタイル状アレイに概念的に細分するグリッドGによって、試料本S(のフットプリント)がどのように抽象的に重ねられているかを示しており、この特定の場合においては、各サブ領域G’は正方形であるが、他の可能なアレイ構成もある。以下に重ね合わされるのは、マイクロレンズ群40の平面図(簡略化のため、可能なスケーリング/倍率効果は無視される)であり、それは好適な電位が適用され得る導電性(例えば金属)プレートの(円形)開口部40’の行列配置を含む。好適に帯電すると、マイクロレンズ群40は、以下の効果を有する。
-グリッドGによって作成されたタイル状アレイに対応するビームレットB”の行列に、ビームBを細分すること。これらのビームレットB”の各々は、マイクロレンズ群40の(XY平面に平行な)平面内に入射幅wを有する。
-ウエスト幅w<wiを有するサブ画像30’を形成するように、各ビームレットB”を検出器30上に集束させる。
【0043】
サブ画像30’は、Yに平行に(かつXにも平行に)相互に隔離されていることに留意されたい。したがって、マイクロレンズ群40の効果は、グリッドG(の画像)を以下の式によって希薄化することである。
-開口部40’を通過する電子のみを入れる。
-受け入れられた電子の各ビームレットB”を初期幅wから検出器レベル幅wまで「圧縮する」。
【0044】
したがって、マイクロレンズ群40は、グリッドGによって作成されたアレイの各セル/ユニットG’に以下の希薄化(数学的)変換を効果的に適用する。
[式2]
(A)=A’
A’(X、Y)=a・A(a・X,a・Y)、ただしRi<w/2、0、それ以外の場合、
ここで、a=w/w>1であり、X、Yは、i番目のサブ領域G’内のデカルト座標であり、そのサブ領域の中心ではX、Y=0であり、Rはその中心からの距離である。
【0045】
図3の上部に戻ると、偏向電極42a、42bを使用してビームレットB”を横方向に偏向させ、それらをY方向に平行に変位させることができる(この特定の場合において、Xに平行な変位は別の一対の電極で行うことができ、複合(対角)変位はY電極とX電極の両方を使用して達成することができ、これはより効率的な空間充填を達成する可能性がある)。破線40”および矢印42’は、そのような偏向の結果としてビームレットB”がたどる可能性のある経路を概略的に示しており、これは、時間間隔Δtの間に、サブ副画像30’をY軸(または他の方向)に沿って塗りつぶすために使用することができる)。Yに平行なサブ画像30’の分離は、そのような塗りつぶし/偏向縞のそれぞれの最大長さを決定する(Yに平行な偏向の場合)。やはり、各そのような塗りつぶしは、例えば、連続的な偏向、または一連の連続した離散的瞬間的なスナップショットのスタッカートであり得る。
【0046】
実施形態3
図4は、本発明のさらに別の実施形態の詳細を示す図である。特に、図2Bに示されたものに代わる格子構造Gを示す。ここで、格子Gは、暗い正方形G”の直交配置における明るい正方形G’の偏った(希薄な)アレイを含む。対応する開口プレートにおいて、この効果は、明るい正方形G’を他の閉じたプレートの開口に対応させることによって模倣することができる。長い矢印30’は、-X方向に沿った潜在的な走査/偏向を示し、10個の時間量/時間スタンプt1、t2、~t10を含む。
【0047】
実施形態4
図5は、図4に示した状況に対する代替案を示している。
-明るい正方形G’は、通常の(偏っていない)正方形アレイに配備されている。
-走査/偏向経路30’は、(例えば、Xと平行に互いに向かい合った一対の偏向器と、Yと平行に互いに向かい合った同様の対との協調励起を使用して達成される)螺旋状の形態である。
-時間量/時間スタンプt1、t2、~t9は、巻かれた/コイル状の配置で進行する。
【符号の説明】
【0048】
30’ サブ画像
30” 左向き矢印
40 開口
40’ 開口
40” 破線
42a 偏向電極
42b 偏向電極
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5