(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】生姜含有組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 9/10 20160101AFI20230508BHJP
A23C 9/154 20060101ALI20230508BHJP
A23L 19/10 20160101ALI20230508BHJP
【FI】
A23L9/10
A23C9/154
A23L19/10
(21)【出願番号】P 2019067116
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李娟
(72)【発明者】
【氏名】柳沢有哉
(72)【発明者】
【氏名】河邉唯明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤光太郎
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-024479(JP,A)
【文献】特開2009-190979(JP,A)
【文献】レシピサイトcookpadに掲載されたレシピ「ほっこり甘~い香り♪黒糖ジンジャーラテ」, レシピID : 1294357,2010年11月26日,[オンライン], 検索日:2022年11月14日,URL,https://cookpad.com/recipe/1294357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C,A23G,A23L
Google,cookpad,楽天レシピ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
45重量%以上99重量%以下の乳素材と、
0.9重量%以上3.4重量%以下の生姜パウダーと、
を含有
し、
前記乳素材の未変性ホエイタンパク質態窒素含有量が6mg/g以上であり、
0.78~2.34重量%のιカラギナンを含まず、かつ、
1.56~5.46重量%の乳酸カルシウムを含まない
ことを特徴とする
生姜プリン製造用生姜含有組成物。
【請求項2】
前記未変性ホエイタンパク質態窒素含有量と、前記生姜パウダーとの重量比が0.17:1~0.8:1であることを特徴とする請求項1に記載の
生姜プリン製造用生姜含有組成物。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の
生姜プリン製造用生姜含有組成物と、温湯と、を混合することを特徴とする生姜プリンの製造方法。
【請求項4】
前記温湯が、50℃よりも高く85℃よりも低い温度であることを特徴とする請求項
3記載の生姜プリンの製造方法。
【請求項5】
無脂肪固形分が、7.5重量%よりも高く20重量%よりも低いことを特徴とする請求項
3又は
4に記載の生姜プリンの製造方法。
【請求項6】
生姜パウダーの含有量が、前記プリンの重量基準で0.15重量%よりも高く0.38重量%よりも低いことを特徴とする請求項
3~
5のいずれか1項に記載の生姜プリンの製造方法。
【請求項7】
無水クエン酸量が、前記プリンの重量基準で0.1重量%よりも高く0.5重量%よりも低いことを特徴とする請求項
3~
6のいずれか1項に記載の生姜プリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生姜含有組成物及び生姜含有組成物を用いてつくられる食品に関する。
【背景技術】
【0002】
生姜は特有の風味があり、また風邪予防や身体を温める効果等の様々な効能があるといわれていることから、生姜を含む食品が提案されている。
特許文献1は、牛乳と混合して電子レンジで加熱することにより食感・風味がともに良好な生姜プリンを簡便に製造するための粉末組成物を提供することを改題とし、その解決手段として下記成分を含有することを特徴とする生姜プリン製造用粉末組成物:(1)乳蛋白:31.2~62.4重量%(2)小麦蛋白:7.8~15.6重量%(3)乳酸カルシウム:1.56~5.46重量%(4)生姜粉末:1.56~3.9重量%(5)ιカラギナン:0.78~2.34重量%(6)乳酸菌:0.39~1.56重量%、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したとおり、特許文献1はιカラギナン、乳酸カルシウムといった添加物を必須の原材料としている。
本発明は、添加物を必須としない従来にない生姜含有組成物、及び生姜含有組成物を用いてつくられる食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の解決手段として、以下の構成を含む発明を提供するものである。
[1]45重量%以上99重量%以下の乳素材と、0.9重量%以上3.4重量%以下の生姜パウダーと、を含有する生姜含有組成物。
[2]乳素材の未変性ホエイタンパク質態窒素含有量が6mg/g以上である[1]に記載の生姜含有組成物。
[3]未変性ホエイタンパク質態窒素含有量と、前記生姜パウダーとの重量比が0.17:1~0.8:1である[1]又は[2]に記載の生姜含有組成物。
[4][1]から[3]に記載の生姜含有組成物と、温湯と、を混合する生姜プリンの製造方法。
[5]温湯が、50℃よりも高く85℃よりも低い温度である[4]記載の生姜プリンの製造方法。
[6]無脂肪固形分が、7.5重量%よりも高く20重量%よりも低い[4]又は[5]に記載の生姜プリンの製造方法。
[7]生姜パウダーの含有量が、前記プリンの重量基準で0.15重量%よりも高く0.38重量%よりも低い[4]~[6]のいずれか1つに記載の生姜プリンの製造方法。
[8]無水クエン酸量が、前記プリンの重量基準で0.1重量%よりも高く0.5重量%よりも低い[4]~[7]のいずれか1つに記載の生姜プリンの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、添加物を必須としない従来にない生姜含有組成物、及び生姜含有組成物を用いてつくられる食品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(生姜含有組成物)
本発明の生姜含有組成物は、未変性ホエイタンパク質態窒素含有量(以下、「WPNI」とも記載する)が6(mg/g)以上の乳素材と、生姜パウダーと、を必須の成分とする。
本発明の生姜含有組成物における乳素材の含量は45重量%以上99重量%以下、生姜パウダーの含量は0.9重量%以上3.4重量%以下であればよいが、これに加えて、未変性ホエイタンパク質態窒素含有量と生姜パウダーとの重量比が0.17:1~0.8:1となるようこれらを配合する。この重量比は0.17:1~0.65:1が好ましく、0.17:1~0.5:1がより好ましく、0.18:1~0.4:1がさらに好ましい。
その他、本発明の生姜含有組成物には、食品の製造に用いられる素材のうち、本発明の効果を妨げないものであれば、どのようなものを用いてもよい。砂糖などの甘味料、フレーバー等を例示できる。
【0008】
(乳素材)
本発明の生姜含有組成物に含まれる乳素材は、牛、水牛、羊、山羊、馬等の獣乳から得られるもので、WPNIが6(mg/g)以上のものであればどのようなものを用いてもよく、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエイタンパク質分離物(WPI)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)等を例示でき、これらのひとつを用いてもよいし、2つ以上を混合したものを用いてもよい。2つ以上を混合したものを用いる場合は、混合したもののWPNIが6(mg/g)以上となればよい。
【0009】
(生姜パウダー)
本発明の生姜含有組成物に含まれる生姜パウダーは、生姜の水分が低減され、且つ、粉末状に加工されたもので、生姜を粉砕して凍結乾燥したものや、生姜を擦りおろした生姜汁を凍結乾燥したものなどが例示できるが、その方法に限定されるものではない。
【0010】
(生姜含有組成物の製造方法)
本発明の生姜含有組成物は、上記した乳素材、生姜パウダー、その他原材料を定法により混合することで得ることができる。
【0011】
(生姜含有組成物を用いてつくられる食品)
本発明の生姜含有組成物を用いてつくられる食品は、無脂乳固形分が7.5%以上20%以下、生姜パウダーが0.15%以上0.38%以下、製造直後から15分間までの、室温から5℃での硬度が10gf以上50gf以下のゲル状食品である。
【0012】
(生姜含有組成物を用いてつくられる食品の製造方法)
生姜含有組成物、水、その他原材料を、生姜含有組成物を用いてつくられる食品の無脂乳固形分が7.5%以上20%以下、生姜パウダーが0.15%以上0.38%以下となるよう調整し混合する。混合する水は、混合する直前の温度が50℃~85℃となるよう調整しておくが、60℃~80℃が好ましい。
混合したものを室温で2分~10分程度で放置するとゲル化し、生姜含有組成物を用いてつくられる食品が得られる。その他原料としてクエン酸を含有する食品、あるいはクエン酸を0.1~0.5重量%添加すると、凝固が促進される。
【実施例】
【0013】
以下に実施例を例示し本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(試験例1)
表1の実施例1、2及び参考例1~5に示した生姜含有組成物から、各温度の温湯を用いて生姜プリンを調製し、凝固時間、硬度、及び官能による評価を行った。なお、実施例1、参考例1から参考例4の脱脂粉乳はWPNI値が6.51mg/gのものを使用し、参考例5はWPNI値が1.6mg/gのものを使用した。
生姜プリンは、100mL容量のカップを使用し、温湯45mLを生姜含有組成物5.1gに加えて混合し、室温で5~15分で静置することで調製した。
硬度の測定はTexture Analyzer TA. XT plus(Stable Micro Systems)を用い測定した。プランジャーは16mm円柱型(プラスチック製)を使用した。容器のまま測定部にセットし、貫入深さ10mm、速度を1mm/secの条件で行った。WPNIは菊池ら(脱脂乳による製パン性阻害に対する乳タンパク質の熱変性の影響、日本食品保蔵科学会誌,38,211~215(2012) )の方法に準じて測定した。官能評価は研究担当者で目視による凝固性及び離水の観察、並びに食感、風味について行った。
【0014】
実施例1では軟らかく滑らかで弾性があり、食感・風味がともに良好な生姜プリンが得られた。これに対して、温湯の温度を90℃とした参考例1、45℃とした参考例2は凝固が十分ではなかった。実施例2では、実施例1より凝乳が遅いが、実施例1と同じ食感の良好な生姜プリンが得られた。これに対して、生姜パウダーが少なく、生姜パウダーに対してWPNIが大きすぎる参考例3は、温湯の温度が実施例1と同じ75℃であるにもかかわらず凝固しなかった。参考例3とは逆に、生姜パウダーが多く、生姜パウダーに対してWPNIが小さすぎる参考例4も、温湯の温度が実施例1と同じ75℃であるにもかかわらず得られたプリンはざらついており劣っている食感であった。さらに、生姜含有組成物の配合比率は実施例1と同じであるが、WPNI値が6.51mg/gのローヒート脱脂粉乳にかえて、WPNI値が1.6mg/gのハイヒート脱脂粉乳を使用した参考例5も生姜パウダーに対するWPNIが小さくなりすぎ凝固しなかった。
【0015】
【0016】
(試験例2)
表2の実施例3、及び参考例6、7に示した生姜含有組成物から、75℃の温湯を用いて試験例1と同様にプリンを調製し、凝固時間、硬度、及び官能による評価を行った。脱脂粉乳はWPNI値が6.51mg/gのものを使用した。
実施例3では、実施例1より硬い食感・濃厚な風味の良好な生姜プリンが得られた。これに対して、生姜含有組成物の量が少なく、プリンの無脂乳固形分が低い参考例6は、凝固せずプリンが得られなかった。また、生姜含有組成物の量が多く、プリンの無脂乳固形分が高い参考例7は、脱脂粉乳が完全に溶解されず、このため食感が劣っていた。
【0017】
【0018】
(試験例3)
表3の実施例4、5及び参考例8、9に示した生姜含有組成物から、75℃の温湯を用いて生姜プリンを調製し、凝固時間、硬度、及び官能による評価を行った。脱脂粉乳はWPNI値が6.51mg/gのものを使用した。
実施例4では、食感は実施例1と同様であるが、より甘みの強い好ましい風味の生姜プリンが得られた。これに対して、砂糖が多い参考例8は甘みが強すぎ好ましくなかった。
実施例5では、食感は実施例1と同様であるが、凝固時間が短縮されていた。これに対して、クエン酸が多い参考例9は離水が生じてしまい、好ましくなかった。
【0019】