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特許7273726表面特性検査装置及び表面特性検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】表面特性検査装置及び表面特性検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/57 20060101AFI20230508BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N21/57
G01B11/30 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019559232
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046161
(87)【国際公開番号】W WO2019117301
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2017240832
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】長岡 英一
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-270238(JP,A)
【文献】特開2010-066273(JP,A)
【文献】特開2010-127661(JP,A)
【文献】特開2016-038222(JP,A)
【文献】特開2015-125621(JP,A)
【文献】特開2006-284550(JP,A)
【文献】米国特許第05838451(US,A)
【文献】特開2000-131243(JP,A)
【文献】特開2009-080044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0030542(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0157278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01B 11/00-G01B 11/30
G01J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物から離間して非接触で被検査物の表面特性を検査する携帯型の表面特性検査装置であって、
被検物に光を照射して当該被検物からの反射光を検出する検出機器と、
前記検出機器からのデータを処理して前記被検物の表面特性を算出する処理部と、
前記被検物に対する前記検出機器の距離及び/又は姿勢に関する情報を生成するガイダンス情報生成部と、
前記ガイダンス情報生成部により生成された前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を報知する報知部とを備え、
前記処理部が、前記検出機器において検出された反射光に基づいて計測される前記被検物から前記検出機器までの複数の距離に基づいて、前記被検物から前記検出機器までの距離を算出するものであり、
前記ガイダンス情報生成部が、前記処理部によって算出された前記距離に基づいて、前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を生成するものであり、
前記表面特性が、光沢度であり、
前記報知部は、前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報として、ユーザーが前記検出機器を現在の距離から移動させる方向及び/又はユーザーが前記検出機器を現在の角度から回転移動させる方向をディスプレイ上に表示する、若しくは
前記検出機器が測定に適した位置にあるか否かを示す表示をディスプレイ上に表示する、ことを特徴とする表面特性検査装置。
【請求項2】
前記報知部は、ユーザーが前記検出機器を現在の距離から移動させる方向を示す表示として、前記検出機器と前記被検物との間の現在の距離が、前記距離に関するしきい値よりも大きい若しくは小さいことを表示する、又は前記検出機器を前記被検物に近づける又は前記検出機器を前記被検物から遠ざけることを表示する、及び/又は
ユーザーが前記検出機器を現在の角度から回転移動させる方向を示す表示として、前記検出機器の前記被検物の法線ベクトルに対して設定されたX軸周り若しくはY軸周りの現在の回転角度が、前記X軸周り若しくは前記Y軸周りの回転角度に関する各しきい値よりも大きい若しくは小さいことを表示する、又は前記検出機器を前記X軸周り若しくは前記Y軸周りのそれぞれにおいて正の方向若しくは負の方向に回転させることを表示する、請求項1に記載の表面特性検査装置。
【請求項3】
前記ガイダンス情報生成部は、前記検出機器が前記被検物に光を照射して前記被検物において表面の法線方向に対して所定角度で反射した反射光を前記検出機器が受光する姿勢となるように、前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を生成する、請求項1記載の表面特性検査装置。
【請求項4】
前記反射光は正反射光である、請求項3記載の表面特性検査装置。
【請求項5】
前記検出機器は、二次元的に配置された複数の受光素子を有する撮像部を有しており、
前記処理部は、前記撮像部からのデータを用いて前記被検物の表面形状を認識し、当該表面形状に応じて前記表面特性を補正する、請求項1記載の表面特性検査装置。
【請求項6】
前記検出機器は、前記被検物に光を照射する光源と、前記光源の発光強度を所定の周波数で変調させる光源制御部とをさらに備え、
前記処理部は、前記発光強度の変調周波数に同期した光強度信号を用いて前記被検物の表面特性を算出する、請求項1記載の表面特性検査装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記発光強度の変調周波数に同期した前記光強度信号から前記被検物の反射率を算出する、請求項6記載の表面特性検査装置。
【請求項8】
前記検出機器は、前記被検物の距離情報と前記被検物の輝度情報とを含むデータを生成するものである、請求項1記載の表面特性検査装置。
【請求項9】
前記被検物からの正反射光を受光する第1受光モードと、前記被検物からの拡散反射光を受光する第2受光モードとを有する、請求項1記載の表面特性検査装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記第1受光モードにおける前記検出機器からのデータと前記第2受光モードにおける前記検出機器からのデータとを用いて前記被検物の表面特性を算出する、請求項9記載の表面特性検査装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記検出機器からのデータを用いて前記被検物の輝度分布を算出して、当該輝度分布をディスプレイ上に表示する、請求項1記載の表面特性検査装置。
【請求項12】
被検物から離間して非接触で被検査物の表面特性として光沢度を検査する携帯型の表面特性装置に用いられる表面検査プログラムであって、
被検物に光を照射して当該被検物からの反射光を検出する検出機器と、
前記検出機器からのデータを処理して前記被検物の表面特性を算出する処理部と、
前記被検物に対する前記検出機器の距離及び/又は姿勢に関する情報を生成するガイダンス情報生成部と、
前記ガイダンス情報生成部により生成された前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を報知する報知部と、としての機能をコンピュータに発揮させる表面特性検査プログラムであり、
前記処理部が、前記検出機器において検出された反射光に基づいて計測される前記被検物から前記検出機器までの複数の距離に基づいて、前記被検物から前記検出機器までの距離を算出するものであり、
前記ガイダンス情報生成部が、前記処理部によって算出された前記距離に基づいて、前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を生成するものであり、
前記報知部は、前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報として、ユーザーが前記検出機器を現在の距離から移動させる方向及び/又はユーザーが前記検出機器を現在の角度から回転移動させる方向をディスプレイ上に表示する、若しくは
前記検出機器が測定に適した位置にあるか否かを示す表示をディスプレイ上に表示するものである、ことを特徴とする表面特性検査プログラム。
【請求項13】
被検物から離間して非接触で被検査物の表面特性として光沢度を検査する携帯型の表面特性検査装置を用いた表面特性検査方法であって、
被検物に光を照射してその反射光を検出する検出機器からデータを受け付け、
受け付けられた前記データを処理して前記被検物の表面特性と前記被検物から前記検出機器までの距離を算出し、
算出された前記距離に基づいて、前記被検物に対する前記検出機器の距離及び/又は姿勢に関するガイダンス情報を生成し、
前記ガイダンス情報を報知する表面特性検査装置を用いる表面特性検査方法であり、
前記検出機器において検出された反射光に基づいて計測される前記被検物から前記検出機器までの複数の距離に基づいて、前記被検物から前記検出機器までの前記距離を算出し、
前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報として、ユーザーが前記検出機器を現在の距離から移動させる方向及び/又はユーザーが前記検出機器を現在の角度から回転移動させる方向をディスプレイ上に表示する、若しくは
前記検出機器が測定に適した位置にあるか否かを示す表示をディスプレイ上に表示することによって報知する表面特性検査装置を用いることを特徴とする表面特性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物からの反射光を検出して当該被検物の表面特性を算出する表面特性検査装置及び表面特性検査プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検物の表面特性として、その反射率又は光沢度を測定する光沢計がある(特許文献1)。
【0003】
この光沢計は携帯型のものであり、光源及び光検出器を収容するケーシングを被検物に接触させることによって、被検物に対する光源及び光検出器の距離及び姿勢を測定に適した状態となるように構成されている。
【0004】
しかしながら、被検物の表面が平坦面ではない場合や被検物が柔らかいものや液体の場合には、前記ケーシングを接触させても、被検物に対する光源及び光検出器の距離及び姿勢を測定に適した状態にすることが難しい。
【0005】
また、これらの被検物の場合には、被検物に接触させずに表面特性を測定することが考えられるが、被検物に接触させずに、当該被検物に対する光源及び光検出器の距離及び姿勢を位置決めすることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-127661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、被検物の表面特性を検出する際の検出機器の位置決めを容易にすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る表面特性検査装置は、被検物に光を照射して当該被検物からの反射光を検出する検出機器と、前記検出機器からのデータを処理して前記被検物の表面特性を算出する処理部と、前記被検物に対する前記検出機器の距離及び/又は姿勢に関する情報を生成するガイダンス情報生成部と、前記ガイダンス情報生成部により生成された前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を報知する報知部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、被検物に対する検出機器の距離及び/又は姿勢に関する情報を報知する報知部を有するので、ユーザはその情報を基づいて検出機器の位置を調整することができ、被検物の表面特性を検出する際の検出機器の位置決めを容易にすることができる。
【0010】
被検物に対する検出機器の距離及び/又は姿勢に関する情報を一見して認識できるようにするためには、前記報知部は、前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報をディスプレイ上に表示することが望ましい。
【0011】
前記ガイダンス情報生成部は、前記検出機器が前記被検物に光を照射して前記被検物において表面の法線方向に対して所定角度で反射した反射光を前記検出機器が受光する姿勢となるように前記距離及び/又は前記姿勢に関する情報を生成することが望ましい。ここで、前記反射光が正反射光であることが望ましい。
この構成であれば、被検物の表面で反射した反射光を精度良く検出することができ、例えば被検物までの距離や被検物の反射率などを精度良く算出することができる。
【0012】
被検物の表面形状に応じて、検出機器が検出する反射光が変化して算出される表面特性も変化する恐れがある。
ここで検出機器が二次元的に配置された複数の受光素子を有する撮像部を有する場合には、処理部は、前記撮像部からのデータを用いて前記被検物の表面形状を認識することができる。そのため、処理部は、認識した表面形状に応じて前記表面特性を補正することが望ましい。
例えば、被検物の表面形状が曲面の場合には、その曲率の大小が正反射光の分布状態に及ぼす影響を補正することが考えられる。
【0013】
前記検出機器は、前記被検物に光を照射する光源と、前記光源の発光強度を所定の周波数で変調させる光源制御部とをさらに備え、前記処理部は、前記発光強度の変調周波数に同期した前記検出データを用いて前記被検物の表面特性を算出することが望ましい。
この構成であれば、外乱光の影響やマルチパス反射の影響を低減することができる。
具体的に前記処理部は、前記発光強度の変調周波数に同期した前記検出データから前記被検物の反射率を算出することが考えられる。
【0014】
検出機器の具体的な実施の態様としては、前記被検物の距離画像と前記被検物の輝度画像とを含むデータを生成するものであることが望ましい。
この場合、検出機器としては、TOF(Time of flight)カメラを用いることが考えられる。
【0015】
正反射光は拡散反射光に対して2桁以上の光強度を有することから、正反射光と拡散反射との受光条件(例えば照射光強度や露光時間など)を同一にしてしまうと、正反射光又は拡散反射光の少なくとも一方の検出感度が不十分となってしまう。
そのため、本発明の表面特性検査装置は、前記被検物からの正反射光を受光する第1受光モードと、前記被検物からの拡散反射光を受光する第2受光モードとを有することが望ましい。具体的には、前記第1受光モードは、前記検出機器による露光時間が短く設定されており、前記第2受光モードは、前記検出機器による露光時間が長く設定されていることが望ましい。
この構成であれば、第1受光モードでは正反射光を受光するのに適した条件とし、第2受光モードでは拡散反射光を受光するのに適した条件とすることができる。その結果、輝度測定におけるダイナミックレンジ(測定レンジ)を広くすることができる。
【0016】
ここで、前記処理部は、前記第1受光モードにおける前記検出機器からのデータと前記第2受光モードにおける前記検出機器からのデータとを用いて前記被検物の表面特性を算出することが望ましい。
この構成であれば、正反射光と拡散反射光との両方を用いて被検物の表面特性を算出するので、表面特性の測定精度を向上させることができる。また、前記処理部が距離画像を含むデータを取得する場合には、被検物までの距離の測定精度を向上させることができる。
【0017】
被検物の表面状態によってその反射特性が異なる。この反射特性は輝度分布に表れる。
そのため、前記処理部は、前記検出機器からのデータを用いて前記被検物の輝度分布を算出して、当該輝度分布をディスプレイ上に表示することが望ましい。
このように輝度分布を表示することによって、被検物の表面状態を評価できるようになる。
【0018】
また本発明に係る表面特性検査プログラムは、被検物に光を照射してその反射光を検出する検出機器からのデータを受け付ける受付部と、前記受付部により受け付けられたデータを処理して前記被検物の表面特性を算出する処理部と、前記被検物に対する前記検出機器の距離及び/又は姿勢に関する情報を生成するガイダンス情報生成部と、前記ガイダンス情報生成部により生成された前記距離及び/又は前記姿勢を報知する報知部と、としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする。その他、当該表面特性検査プログラムを格納した記録媒体も本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、被検物に対する検出部の距離及び/又は姿勢に関する情報を報知する報知部を有するので、被検物の表面特性を検出する際の検出機器の位置決めを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る表面特性検査装置の全体模式図である。
図2】同実施形態の表面特性検査装置の機能ブロック図である。
図3】同実施形態の二次元的な輝度分布を示す図である。
図4】同実施形態の三次元的な輝度分布を示す図である。
図5】同実施形態の表面特性検査装置においてガイダンス機能(距離が遠い場合)を示す図である。
図6】同実施形態の表面特性検査装置においてガイダンス機能(距離が近い場合)を示す図である。
図7】同実施形態の表面特性検査装置においてガイダンス機能(X軸周りの正回転がある場合)を示す図である。
図8】同実施形態の表面特性検査装置においてガイダンス機能(X軸周りの逆回転がある場合)を示す図である。
図9】同実施形態の表面特性検査装置においてガイダンス機能(測定可能な状態の場合)を示す図である。
図10】同実施形態の表面特性検査装置の撮影方法のフローチャートである。
図11】同実施形態の表面特性検査装置のデータ処理方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0021】
100・・・表面特性検査装置
W・・・被検物
2・・・検出機器
21・・・光源部
21a・・・光源
21b・・・光源制御部
22・・・撮像部
22a・・・撮像素子
22b・・・輝度画像生成部
22c・・・距離画像生成部
3・・・装置本体
31・・・ディスプレイ
32~34・・・操作ボタン
3a・・・受付部
3b・・・処理部
3c・・・表示制御部(ガイダンス情報生成部、報知部)
31a~31f・・・ガイダンス部
31g・・・準備完了部
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る表面特性検査装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<全体構成>
本実施形態の表面特性検査装置100は、被検物Wから離間して非接触で被検物Wの表面特性を検査する携帯型のものである。ここで、表面特性とは、被検物Wの外観や表面状態の指標となるものであり、例えば表面W1の反射率や輝度分布などの光学特性、或いは、表面粗さ、うねりなどの機械的な加工状態の良し悪しを表す尺度、ヘアライン加工のような特殊な加工状態の良否判定を行うための指標を含む。
【0024】
具体的に表面特性検査装置100は、図1に示すように、被検物Wに光を照射して反射光を検出する検出機器2と、当該検出機器2からのデータを処理する装置本体3とを備えている。本実施形態では、検出機器2は装置本体3に保持された一体筐体の構成としているが、検出機器2及び装置本体3が別々の筐体であり有線又は無線によりデータ通信可能に接続されたものであってもよい。
【0025】
検出機器2は、図2に示すように、被検物Wに光を照射する光源部21と、被検物Wにより反射した光を検出して被検物Wの表面を撮像する撮像部22とを有している。本実施形態の検出機器2は、被検物Wの距離画像データ及び輝度画像データを含むデータを生成できるように構成されている。
【0026】
具体的に光源部21は、例えば赤外光を射出する光源21aと、当該光源21aの発光強度を所定の周波数で変調させる光源制御部21bとを有している。本実施形態の光源制御部21bは、例えば10MHzの高周波の正弦波又は矩形波などで高速に発光強度を変調するものである。また、光源部21は、撮像部22の撮像範囲に向けて光を射出するものである。
【0027】
そして、撮像部22は、光源21の変調周波数に同期した撮像データを出力するように構成されている。具体的に撮像部22は、TOF(Time of flight)方式により、被検物Wの距離画像データ及び輝度画像データを出力するものである。
【0028】
撮像部22の構成は、二次元状に配列された複数の画素を有する撮像素子22aと、当該撮像素子22aにおける各画素の蓄積電荷量に基づいて、被検物Wの輝度画像データを生成する輝度画像生成部22bと、撮像素子22aにおける各画素の蓄積電荷量に基づいて、被検物Wの距離画像データを生成する距離画像生成部22cとを有している。
【0029】
撮像素子22aは、各画素に光強度に関係して生成した電荷の蓄積電荷量を外部から読み出し可能に構成されている。本実施形態の撮像素子22aは電荷振り分け方式のCMOSを用いたPMD素子(光電変調混合素子)であり、各画素は1つのフォトダイオード(受光素子)に対して2つの電荷蓄積部が設けられている。そして、この撮像素子22aでは、光源21aの変調周波数に同期して、入射した光による電荷が2つの電荷蓄積部に振り分けられる。また、撮像素子22aの露光時間Tは調整可能に構成されている。
【0030】
なお撮像素子22aは、光源21aの発光する光の波長(たとえば赤外線であれば880nm)付近の光だけを受光するように、波長フィルタを備えることが望ましい。また、撮像素子22aの露光時間Tが長くなると、各画素の光電変換部に生じた暗電流による電荷(光が照射されなくても発生する電荷)の蓄積が無視できない量となる。このような光源21aの変調周波数と同期しない成分は、2つの電荷蓄積部に同量蓄積することになるので、これを補償する(相殺する)回路を撮像素子22aが有する構成が望ましい。これらの工夫によって、外乱光の影響を排除しつつ、より長い範囲の露光時間Tでの撮影が可能となる。
【0031】
距離画像生成部22cは、各画素に設けられた2つの電荷蓄積部に振り分けられた電荷を読み出して、その読み出した結果に基づいて光源21aの出射光と反射光との位相差を算出し、その算出結果に基づいて距離画像データを生成する。
【0032】
この撮像部22により、複数の画素P(x、y)に対する被検物Wまでの距離D(x、y)と、被検物Wからの反射光の強度I(x、y)とを計測できる。なお、xは、横方向(x方向)の画素の番号(1~m)であり、yは、縦方向(y方向)の画素の番号(1~n)である。また、撮像素子22aは光源21aの変調周波数に同期した成分のみが読み出し可能に構成されているので、外乱光やマルチパス反射の影響を受けにくい。
【0033】
装置本体3は、検出機器2からの距離画像データ及び輝度画像データを処理して、被検物の表面特性を算出するものである。具体的に装置本体3は、構造としては、CPU、メモリ、入出力インターフェース、AD変換器、ディスプレイ31、入力手段(操作ボタン32~34)などを有する汎用乃至専用のコンピュータである。そして、装置本体3は、メモリに格納された表面特性検査プログラムに基づいて、CPU及びその周辺機器が作動することにより、図2に示すように、受付部3a、処理部3b、表示制御部3c等としての機能を少なくとも発揮する。その他、装置本体3は、表面特性検査装置100の測定開始から測定終了までの情報処理を制御するメイン制御部を有している。なお、メイン制御部は、装置本体3とは別に設けられた上位コンピュータに設けられたものであってもよい。また、ディスプレイ31は、装置本体3とは別に設けられたものであってもよい。
【0034】
受付部3aは、検出機器2の輝度画像生成部22bから輝度画像データを受け付けるとともに、距離画像生成部22cから距離画像データを受け付けるものである。この受付部3aにより受け付けられた輝度画像データ及び距離画像データは、表示制御部3cによりディスプレイ31上に表示される。
【0035】
処理部3bは、受付部3aが受け付けた輝度画像データ及び距離画像データを用いて被検物Wの表面特性及び表面特性に関連する値を算出する表面特性算出部として機能するものである。具体的に処理部3bは、輝度画像データに含まれる正反射光の光強度を用いて被検物Wの反射特性(例えば反射率)を算出する。また、処理部3bは、輝度画像データを用いて被検物Wの二次元的な輝度分布(図3参照)又は三次元的な輝度分布(図4参照)を算出する。ここで、輝度は、被検物Wからの反射光の強度I(x、y)の対数をとった値である。なお、図3では、表示制御部3cが輝度画像に輝度分布を重ね合わせて表示した例を示しているが、それぞれ個別に表示してもよい。また、表示制御部3cは、三次元的な輝度分布において、その断面形状(等高線)を表示してもよい。輝度分布の断面形状を表示することで、ユーザはその断面形状やアスペクト比により、被検物Wの反射率の異方性を評価したり、被検物Wの表面状態を評価することができる。また、処理部3bが、標準サンプルの輝度分布データを持っており、被検物Wを撮像して得られた輝度分布データと標準サンプルの輝度分布データと比較することで、被検物Wの表面状態などを評価するようにしてもよい。あるいは、両者(被検物Wと標準サンプル)の輝度値の差分をとって表示してもよい。
【0036】
また、処理部3bは、受付部3aが受け付けた輝度画像データを非線形変換して変換画像を示す変換画像データを生成しても良い。ここで、非線形変換としては、ウェーバー・フェヒナーの法則(Weber-Fechner law)により人間の明るさに対する感覚量は明るさの対数に比例することから、対数変換を用いている。この対数変換にあたり、輝度画像データは対数変換に耐えられるダイナミックレンジを有する画像であることが必要である。具体的には、撮像部2がHDR(ハイダイナミックレンジ)合成により輝度画像データを生成することが望ましい。なお、その他の非線形変換として、指数変換やガンマ変換等を用いても良い。
【0037】
表示制御部3cは、上述したように輝度画像及び距離画像をディスプレイ31上に表示するだけでなく、処理部3bにより得られたデータをディスプレイ31上に表示するものである。
【0038】
また、表示制御部3cは、被検物Wに対する検出機器2の距離及び姿勢に関する情報(以下、ガイダンス情報ともいう。)を生成して、ディスプレイ31上に表示するものである。このように表示制御部3cがディスプレイ31上にガイダンス情報を生成して表示することによって、当該表示制御部3cはユーザが検出機器2を測定に適した位置にするためのガイダンス情報生成部及び報知部として機能する。
【0039】
ここで、ガイダンス情報とは、被検物Wに対する距離を測定に適した所定値にするために検出機器2を移動させる向きの情報や、被検物Wに対する姿勢を測定に適した姿勢にするために検出機器2を回転移動させる向きの情報である。また、ガイダンス情報には、検出機器2により得られた輝度画像又は距離画像自体をディスプレイ31上に表示することも含む。さらに、ガイダンス情報には、検出機器2により得られた被検物Wに対する距離自体、被検物Wに対する角度や向きなどの姿勢自体をディスプレイ31上に表示することも含む。このガイダンス情報は、被検物Wに対する距離や姿勢に基づいて生成されるものの他に、処理部により得られた表面特性に基づいて生成されるものであってもよい。
【0040】
具体的に表示制御部3cは、検出機器2が被検物Wからの正反射光を受光する距離及び姿勢となるようにガイダンス情報をディスプレイ31上に表示する。具体的なガイダンス情報については後述する。
【0041】
<ガイダンス機能>
本実施形態の表面特性検査装置100では、距離画像データにより、距離D(x,y)の2次元的な分布状態が分かり、輝度画像データにより、反射光の強度I(x,y)の2次元的な分布状態が分かる。そして、反射光の強度I(x,y)の2次元的な分布状態から被検物Wの表面状態を評価することができる。
【0042】
このように表面状態を評価するためには、被検物Wからの正反射光や拡散反射光などの2次元的な分布状態を計測する必要がある。特に、正反射光の周辺に存在する正反射光とは異なる方向に反射する成分が、どのような強度で、どのように分布しているのかが重要なポイントとなる。ここで正反射光とは、巨視的に見た被検物Wの表面の法線方向に対して、入射角と出射角が等しい反射光を指す。
【0043】
そのため、光源部21から射出されて被検物Wで反射された反射光のうち、少なくとも正反射光が撮像部22に入射することが必要であり、望ましくは撮像部22の2次元的に配置された画素P(x,y)の中央部に入射するほうがよい。すなわち、横方向にxc=m/2番目、縦方向にyc=n/2番目の画素付近に入射することが望ましい。以下、この中央部の画素をPc(xc,yc)と呼ぶ。
【0044】
中央部の画素Pc(xc,yc)の周辺に正反射光が入射するためには、被検物Wまでの距離や、被検物Wに対する姿勢を適切な状態に保つ必要がある。本実施形態では、以下の方法により、被検物Wに接触させることなく、距離や姿勢を適切な状態に保つことができる。
【0045】
装置本体3の開始ボタン32をユーザが押すと、撮像部22は複数の画素P(x,y)に対する被検物Wまでの距離D(x,y)及び被検物Wからの反射光の強度I(x,y)を計測し、処理部3bは以下の判定処理を行って、表示制御部3cはディスプレイ31上に種々の情報を表示する。なお、図1では、ディスプレイ31上に、測定軸であるZ軸に垂直な2方向X軸及びY軸を仮想的に記載しているが、これらは、撮像部22の画素の配置方向と一致しても良い。同様に測定軸であるZ軸は撮像部22の光軸方向と一致していても良い。
【0046】
<<判定1>>
処理部3bは、被検物Wまでの距離D(x,y)のうち、中央部の画素Pc(xc,yc)の周辺部における被検物Wまでの距離を求める。このように処理部3bは距離算出部として機能する。ここで、距離は、1つの画素の距離D(x,y)を用いても良いし、複数の画素における距離の平均値を用いてもよい。その他、複数の画素における距離D(x,y)の測定結果を用いて、多項式等で表現される平面又は曲面に近似して、その結果から距離を求めてもよい。
【0047】
表示制御部3c(ガイダンス情報生成部)は、処理部3bが求めた距離と所定の第1距離しきい値とを比較する。比較した結果、第1距離しきい値より遠い場合、例えば表面特性検査装置100が被検物Wから1m以上離れている場合には、表面特性検査装置100を被検物Wに近づける方向に移動させるガイダンス情報を生成する。そして表示制御部3c(報知部)は、図5に示すように、ディスプレイ31上にそのことを示すガイダンス表示を行い、ユーザに報知する。例えば、表示制御部3c(報知部)は、ディスプレイ31上に、第1距離しきい値よりも遠いことを示すガイダンス部(矢印表示)31aを表示し、それを点灯(点滅)などしてユーザに報知し、ユーザが表面特性検査装置100を被検物Wに近づける方向に移動させることを促す。
【0048】
また、表示制御部3c(ガイダンス情報生成部)は、処理部3bが求めた距離と所定の第2距離しきい値とを比較する。比較した結果、第2距離しきい値よりも近い場合、例えば表面特性検査装置100が被検物Wから0.05m以下に近づいた場合には、表面特性検査装置100を被検物Wから遠ざける方向に移動させるガイダンス情報を生成する。そして表示制御部3c(報知部)は、図6に示すように、ディスプレイ31上にそのことを示すガイダンス表示を行い、ユーザに報知する。例えば、表示制御部3c(報知部)は、ディスプレイ31上に、第2距離しきい値よりも近いことを示すガイダンス部(矢印表示)31bを表示し、それを点灯(点滅)などしてユーザに報知し、ユーザが表面特性検査装置100を被検物Wから遠ざける方向に移動させることを促す。
【0049】
このようにディスプレイ31上にガイダンス表示することによって、ユーザは、ガイダンス部31a、31bが点灯しないように、表面特性検査装置100を移動させることで、被検物Wに対して表面特性検査装置100を測定に適した距離に容易に調整できる。
【0050】
<<判定2>>
処理部3bは、被検物Wまでの距離D(x,y)を複数の画素について比較することにより、被検物Wの表面の法線ベクトルNに対して、表面特性検査装置100のX軸周りの回転角度を求める。このように処理部3bは姿勢算出部として機能する。その他、複数の画素に対する距離D(x,y)の測定結果を用いて、多項式等で表現される平面又は曲面に近似して、その結果からX軸周りの回転角度を求めてもよい。
【0051】
表示制御部3c(ガイダンス情報生成部)は、処理部3bが求めたX軸周りの回転角度と所定の第1角度しきい値とを比較する。比較した結果、第1角度しきい値よりも正の方向に大きい場合、例えば5°以上傾いていた場合には、表面特性検査装置100の姿勢をX軸周りに負の方向に回転移動させるガイダンス情報を生成する。そして表示制御部3c(報知部)は、図7に示すように、ディスプレイ31上にそのことを示すガイダンス表示を行い、ユーザに報知する。例えば、表示制御部3c(報知部)は、ディスプレイ31上に、第1角度しきい値よりも正の方向に傾いていることを示すガイダンス部(矢印表示)31cを表示し、それを点灯(点滅)などしてユーザに報知し、ユーザが表面特性検査装置100の姿勢をX軸周りに負の方向に回転移動させることを促す。なお、X軸周りの回転角度は、測定軸であるZ軸が被検物Wの法線方向に一致する角度をゼロとしている。
【0052】
また、表示制御部3c(ガイダンス情報生成部)は、処理部3bが求めたX軸周りの回転角度と、所定の第2角度しきい値とを比較する。比較した結果、第2角度しきい値より負の方向に(その絶対値が)大きい場合、例えば-5°以上傾いていた場合には、表面特性検査装置100の姿勢をX軸周りに正の方向に回転移動させるガイダンス情報を生成する。そして表示制御部3c(報知部)は、図8に示すように、ディスプレイ31上にそのことを示すガイダンス表示を行い、ユーザに報知する。例えば、表示制御部3c(報知部)は、ディスプレイ31上に、第2角度しきい値よりも負の方向に傾いていることを示すガイダンス部(矢印表示)31dを表示し、それを点灯(点滅)などしてユーザに報知し、ユーザが表面特性検査装置100の姿勢をX軸周りに正の方向に回転移動させることを促す。
【0053】
このようにディスプレイ31上にガイダンス表示することによって、ユーザは、ガイダンス部31c、31dが点灯しないように、表面特性検査装置100を移動させることで、被検物Wに対して表面特性検査装置100のX軸周りの姿勢を容易に調整できる。
【0054】
<<判定3>>
判定2と同様に、処理部3bは、表面特性検査装置100のY軸周りの回転角度を求める。なお、Y軸周りの回転角度は、測定軸であるZ軸が被検物Wの法線方向に一致する角度をゼロとしている。表示制御部3c(ガイダンス情報生成部)は、処理部3bが求めたY軸周りの回転角度を、Y軸周りの正の方向及び負の方向それぞれに設定された所定の角度しきい値と比較する。比較結果に応じて、表面特性検査装置100の姿勢をY軸周りに正または負の方向に回転移動させるガイダンス情報を生成する。そして表示制御部3c(報知部)は、必要に応じてガイダンス部(矢印表示)31e、31fを表示し、それを点灯(点滅)などしてユーザに報知し、ユーザが表面特性検査装置100の姿勢をY軸周りに正または負の方向に回転移動させることを促す。
【0055】
このようにディスプレイ31上にガイダンス表示することによって、ユーザは、ガイダンス部31e、31fが点灯しないように、表面特性検査装置100を移動させることで、被検物Wに対して表面特性検査装置100のY軸周りの姿勢を容易に調整できる。
【0056】
<<判定4>>
以上のようにして判定1~3を行った結果、ガイダンス部31a~31fの全てが点灯(点滅)しない状態になった場合、表示制御部3c(ガイダンス情報生成部)は表面特性検査装置100の被検物Wに対する距離や姿勢が適正範囲内に収まったことを示すガイダンス情報を生成する。そして表示制御部3c(報知部)は、ディスプレイ31上にそのことを示す準備完了表示を行い、ユーザに報知する。例えば、表示制御部3cは、ディスプレイ31上に、図9に示すように、準備が完了したことを示す準備完了部31gを表示し、それを点灯(点滅)などしてユーザに測定可能であることを報知し、ユーザに表面特性検査の実行開始を促す。この状態において、ユーザが測定ボタン33を押すと、本来の表面特性検査を行う。
【0057】
以上の判定1~4は、望ましくは撮像部22のフレームレートに連動して毎フレーム実施する。ユーザ操作に対する表示遅れを少なくするためである。
【0058】
また、判定1~3において、被検物Wまでの距離や姿勢を求める際には、被検物Wからの反射光の強度I(x,y)を参照して、利用する画素を選択することができる。すなわち、反射光の強度I(x,y)が所定の範囲内にある画素だけを判定1~3に利用する方が良い。多項式等で表現される平面又は曲面に近似する場合も同様で、最小二乗法などに用いるのは、反射光の強度I(x,y)が所定の範囲内にある画素だけにする。反射光の強度I(x,y)が大きすぎる場合には、オーバーフロー状態であるので、距離D(x,y)の測定結果は信頼度が低い。逆に反射光の強度I(x,y)が小さすぎる場合には、ノイズが支配的となるので測定精度が劣化するからである。
【0059】
<画像処理機能>
次に、この撮像部22を用いた好適な撮影方法について説明する。
撮像部22において撮像素子22aの露光時間Tは調整可能に構成されている。従って、被検物Wまでの距離や光源部21の発光強度などに応じて、露光時間Tを調整することにより、常に適切な出力を撮像部22から得ることができる。
【0060】
ところで、被検物Wからの反射光には、正反射光と拡散反射光が含まれているが、両者は強度が2ケタ以上も異なる。このため、正反射光が入射した画素を基準に露光時間を設定すると、拡散反射光しか入射しない画素では露光時間が不足し、ノイズの影響を多く受けることになる。逆に、拡散反射光のみが入射する画素を基準に露光時間Tを設定すると、正反射光が入射した画素では露光時間Tが過剰になって、オーバーフロー状態となる。
【0061】
そこで、本実施形態では、図10に示すように、以下の手順による撮影方法を採用している。
【0062】
(S11)初期化
撮像部22は、カウンターJを初期値に設定する。
ここで、初期値はJ=1である。
【0063】
(S12)露光時間T(1)の初期化
また、撮像部22は、1回目の撮影における露光時間T(1)を初期値T1に設定する。
ここで、初期値T1は、例えば500マイクロ秒とする。
【0064】
(S13)J回目の撮影
そして、撮像部22は、設定された露光時間T(J)でJ回目の撮影を実施する。
【0065】
(S14)結果の保存
撮影結果を撮像部22に設けられたJ番目のメモリ領域M(J)に保存する。
そして、被検物Wまでの距離D(x、y)と、反射光の強度I(x、y)を記録する。
【0066】
(S15)露光時間更新
次の撮影における露光時間T(J+1)を設定する。
具体的には、T(J+1)=T(J)×Kとする。
ここで、係数Kは、例えば0.1とする。これにより、露光時間T(J+1)は短くなる。
【0067】
(S16)露光時間の判定
露光時間T(J+1)をしきい値T2と比較する。
既に露光時間T(J+1)が条件を満足している場合には(S18)に進み撮影を終了する。
ここで条件とは、露光時間を短くする場合には、例えばT<T2である。
また、しきい値T2は例えば5マイクロ秒とする。
【0068】
(S17)J=J+1
そして撮像部22は、カウンターJを増加(J=J+1)して、(S13)に戻り、次の撮影を行う。
【0069】
(S18)撮影終了
以上のようにして撮影を行うことによって、各画素P(x、y)について、少なくとも2種類の露光時間T(J)で撮影した結果をメモリ領域M(J)に保存する。
【0070】
例えば、J=1回目の撮影では、T(1)=500マイクロ秒の露光時間で撮影した結果が、メモリ領域M(1)に保存される。J=2回目の撮影では、T(2)=50マイクロ秒の露光時間で撮影した結果が、メモリ領域M(2)に保存される。さらに、J=3回目の撮影では、T(3)=5マイクロ秒の露光時間で撮影した結果が、メモリ領域M(3)に保存される。
【0071】
そこで、保存されたメモリ領域M(1)、M(2)、M(3)から反射光の強度I(x、y)が適切なものを優先的に選択すればよい。しかも、強度I(x、y)が適切な条件で測定した距離D(x、y)も、同時に選択することができるので、距離D(x、y)の測定精度をさらに高めることができる。
【0072】
露光時間T(J)が過剰な状態では、オーバーフロー状態となるので、被検物Wまでの正確な距離を計測できない。しかしながら、図10に示すフローチャートで撮影すれば、露光時間T(J)を十分に短くした条件(例えば、T(3)=5マイクロ秒、第1受光モード)でも撮影しているので、正反射光が入射する画素においても、オーバーフロー状態とはならず、正確な距離を計測できる。
【0073】
また、拡散光しか入射しない画素においては、露光時間T(J)が不足するとノイズが支配的となるので正確な距離を計測できない。しかしながら、図10に示すフローチャートで撮影すれば、露光時間T(J)を適切にした条件(例えば、T(1)=500マイクロ秒、第2受光モード)でも撮影しているので、拡散反射光しか入射しない画素においても、正確な距離を計測できる。
【0074】
なお、図10のフローチャートにおいては、(S16)において撮影時間T(J)を判定基準としたが、反射光の強度I(x、y)の全画素における最大値を判定基準としても良い。すなわち、J回目の撮影結果における反射光の強度I(x、y)の最大値Imaxが所定の値より小さければ撮影を終了する方法でもよい。例えば、被検物が完全拡散面と想定される場合には、正反射光が入射することはないので、1回の撮影を行うだけで全ての画素で反射光の強度I(x、y)が適切な状態にでき、結果、全ての画素で測定した距離D(x、y)の測定精度も高いものとなる。このとき2回目の撮影を行う必要はない。
【0075】
また、J回目における反射光の強度I(x、y)の最小値Iminを所定の値と比較してもよい。この場合には、反射光の強度I(x、y)が小さい画素では、露光時間が不足するので、露光時間(J)を増やした撮影が必要になるからであり、(S15)における係数Kを1より大きい値とする(露光時間を長くする)。
【0076】
なお、(S15)における係数Kの値は固定とする必要はなく、カウンターJの値に応じて変化させてもよい。例えば、J=1の時は、K=0.1、J=2の時はK=0.2、などとすればよい。撮影回数を減らして測定時間を短縮するためには、露光時間T(J)を大きく変えた方がよい。しかしながら、露光時間T(J)の変化が大きくなると、どっちつかずの画素が生じる可能性がある。例えば、K=0.01とすると、J=1回目ではオーバーフロー状態であるが、J=2回目では露光時間が不足する画素が生じる。撮影回数を減らしつつ、どっちつかずの画素が生じないように係数Kの値を設定することが肝要であり、そのためにKの値を動的に変化させてもよい。
【0077】
例えば、J=1回目の撮影を行った後、K=0.01としてJ=2回目の撮影を行う。このJ=2回目の撮影結果として、反射光の強度I(x、y)の最大値Imaxが所定の値より大きい場合には、K=0.1としてJ=3回目の撮影を行う。そして、J=3回目の撮影結果として、反射光の強度I(x、y)の最小値Iminが所定の値より小さい場合には、K=1.5として、逆に露光時間(J)を増やして、J=4回目の撮影を行う。
【0078】
このようにKの値は動的に変化させてもよい。また、各画素について露光時間(J)を個別に設定できるように、Kの値を画素毎又は所定の小領域(一部の画素)毎に変化させてもよい。
【0079】
なお、上記の説明においては、撮像部22の露光時間T(J)を変化させたが、光源部21の発光強度を変化させても良い。あるいは、両者を組み合わせて変化させても良い。光源部21の発光強度は、光源21aの出力自体を変化させても良いし、減光フィルタなどを挿抜しても良い。あるいは、撮像部22に可変絞りを設けても良い。
【0080】
その他、露光時間T(J)を細かく変化させながら、できるだけ多くの回数撮影を行って、より多くのメモリ領域M(J)から、より適切な結果を選択した方が、より精度の高い強度I(x、y)、距離D(x、y)の測定結果が得られる。ところが、撮影回数の増加に伴って計測時間が長くなることのデメリットとの相反問題となる。この相反問題を考慮して、本実施形態の撮影回数は3回としている。
【0081】
被検物までの距離D(x、y)については、「全ての画素で適切な状態」が得られるようにする必要はない。全ての画素に被検物Wが撮影されているわけではなく、通常は背景部が存在するからである。背景は遠方にあるので、設定可能な最大露光時間に設定しても、反射光は全く帰ってこない。そこで、「全ての画素で適切な状態」が得られるように、露光時間T(J)を変えるのではなく、固定回数で打ち切るようにしてもよい。
【0082】
以上の撮影方法では、露光時間T(J)を変えながらJe回の撮影を行っている(Jeは例えばJe=3)。本実施形態の撮像部22では1回の撮影で、複数の画素P(x、y)に対する被検物Wまでの距離D(x、y)と、被検物Wからの反射光の強度I(x、y)が計測できる。したがって、各画素P(x、y)についてJe個の距離D(x、y)と反射光の強度I(x、y)の測定結果がメモリ領域M(1)~M(Je)に保存されている。この中から、各画素P(x、y)について適切な距離D(x、y)と反射光の強度I(x、y)を選択する方法について説明する。簡単のため、ここでは選択した結果を別のメモリ領域M(Je+1)に改めて格納するものとして説明を続ける。
【0083】
まず初めにメモリ領域M(J)を並べ替える。露光時間T(J)の長い撮影結果から、短い撮影結果へと順に並ぶように、メモリ領域M(J)を各撮影結果単位で入れ替え(スワップ)する。この結果、メモリ領域M(J)の露光時間T(J)が、T(1)>T(2)>T(3)・・・、となるようにする。当然のことながら、M(Je+1)の領域は結果を格納する領域であるので、入れ替えの対象には含めない。また、図10に示すフローチャートにおいて、例えばK=0.1に固定して露光時間T(J)を短くしながら撮影した場合には、この並べ替え自体が不要である。
【0084】
次に、図11に示すフローチャートの方法にしたがって、各画素について適切な距離D(x,y)と反射光の強度I(x,y)を選択する。
【0085】
(S21)初期化
撮像部22は、カウンターJを初期値に設定する。
ここで、初期値はJ=1である。
【0086】
(S22)格納領域の初期化
また、選択結果を格納するメモリ領域M(Je+1)を全てリセットする。
つまり、メモリ領域M(Je+1)に初期値(たとえばゼロ)を代入しておく。
【0087】
(S23)ループ開始
各画素P(x,y)について、以下のS24~S26を繰り返す。
【0088】
(S24)格納領域の状態判定
撮像部22は、選択結果を格納する領域M(Je+1)の反射光の強度I(x,y)の状態を調べる。
既に反射光の強度が設定済みであれば、(S27)に進む。
ここで、設定済みでなければ、反射光の強度I(x、y)は初期値(たとえばゼロ)である。
【0089】
(S25)撮影結果の状態判定
J回目の撮影結果であるメモリ領域M(J)の反射光の強度I(x,y)を所定のしきい値I1と比較して条件を満足している場合には、(S27)に進む。
ここで上記の条件とは、例えばI(x,y)≧I1である。
【0090】
(S26)選択結果の格納
J回目の撮影結果が適切な結果であると判定して、撮像部22は、距離D(x,y)と反射光の強度I(x,y)の値をメモリ領域M(Je+1)に格納する。
この際、距離D(x,y)は、そのままの値を格納するが、反射光の強度I(x,y)は、1回目の露光時間とJ回目の露光時間の比T(1)/T(J)を乗じたものを格納する。
【0091】
(S27)ループ終了
全画素について処理が終わっている場合は(S28)に進む。
そうでない場合には、(S23)に戻る。
【0092】
(S28)撮影回数の判定
カウンターJがJeである場合には、(S30)に進み終了する。
そうでない場合には、(S29)においてカウンターJを増加(J=J+1)して、(S23)に戻る。
【0093】
一般に、撮影時における露光時間T(J)が長くなるほど、ノイズの影響が少ない測定結果が得られる。図11示すフローチャートにおいては、露光時間T(J)が最も長い測定結果を最優先に、露光時間T(J)が短くなる方向に測定結果を探索しているので、より長い露光時間T(J)で測定した距離D(x,y)と反射光の強度I(x,y)を選択することができる。しかも、いったん選択された画素については、(S24)において設定済みかどうかを判定しているので、露光時間T(J)の短い場合の測定結果で上書きされることがない。
【0094】
一方で、露光時間T(J)が過剰な場合にはオーバーフロー状態となり、測定結果の精度が劣化する。しかしながら、図11に示すフローチャートにおいては、(S25)において反射光の強度I(x,y)を閾値I1と比較しているので、画素がオーバーフロー状態にあるかどうかを検出することができ、オーバーフロー状態における距離D(x,y)と反射光の強度I(x,y)を選択しないという特長がある。そして、(S29)においてカウンターJの値を増加させて、再びS23~S27のループを実施するので、より露光時間T(J)の短い撮影結果の距離D(x,y)と反射光の強度I(x,y)を選択できるという特長がある。
【0095】
ここで、しきい値I1の具体的な値は、次のような値を設定すれば良い。撮像部22が出力する反射光の強度I(x,y)が、例えば8ビットの整数に正規化されている場合、I(x,y)は、0~255の範囲の値をとる。この場合、取りうる値の最大値255をしきい値I1としても良い。また、例えば90%程度の値I1=230をしきい値I1としても良い。
【0096】
また、図11に示すフローチャートにおいては、(S26)において、反射光の強度I(x,y)には、1回目の露光時間T(1)とJ回目の露光時間T(J)の比T(1)/T(J)を乗じたものを、メモリ領域M(Je+1)に格納している。例えば、1回目にT(1)=500マイクロ秒の露光時間で撮影した後、T(2)=5マイクロ秒の露光時間で2回目の撮影を実施した場合には、両者の比T(1)/T(2)は100倍となる。すなわち、2回目の撮影では、露光時間が1/100になるので、2回目に測定した反射光の強度I(x,y)を100倍したものをメモリ領域M(Je+1)に格納するのである。この結果、露光時間T(J)の比の分だけ、反射光の強度I(x、y)のDレンジ(ダイナミックレンジ)を拡大(HDR合成)できるという特長がある。
【0097】
さらに、(S25)においては、反射光の強度I(x,y)をしきい値I1と比較しているが、その他の方法によってオーバーフロー状態を検出してもよい。本実施形態の撮像部22では、露光開始から露光終了までの電荷蓄積状態を監視して、被検物Wまでの距離D(x,y)や反射光の強度I(x,y)の信頼度を判定することができる。この信頼度を用いて、(S25)における判定を実施しても良い。
すなわち、適切な露光状態にあるなら、電荷蓄積量の時間変化量(電荷蓄積量の微分値)は一定となる。しかしながら、オーバーフロー状態になれば、電荷蓄積量の時間変化量は急激に小さくなるので、これを検出して信頼度を判定すればよい。
その他、オーバーフロー状態だけでなく、露光時間T(J)の不足判定にも信頼度の評価を利用することができる。この場合には、電荷蓄積量の時間変化量が毎時変動するので、その分散値を見て判定すれば良い。
【0098】
<本実施形態の効果>
本実施形態の表面特性検査装置100によれば、被検物Wに対する検出機器2の距離及び姿勢に関するガイダンス情報を生成して報知する表示制御部3c(ガイダンス情報生成部及び報知部)を有するので、ユーザはその情報を基づいて検出機器2の位置を調整することができ、被検物Wの表面特性を検出する際の検出機器2の位置決めを容易にすることができる。ここで、表示制御部3cは、ディスプレイ31上にガイダンス情報を表示するので、ユーザが一見してガイダンス情報を認識することができる。
【0099】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0100】
例えば、前記実施形態の表示制御部3cは、ガイダンス情報として移動すべき方向をディスプレイ31上に表示するものであったが、その他、検出機器2が測定に適した位置に移動されたときに、そのことを示す表示を行ってもよいし、検出機器2が測定に適した位置に無い場合に、そのことを示す表示を行ってもよい。
【0101】
また表示制御部3cは、輝度画像自体、距離画像自体、被検物Wに対する距離自体、又は被検物Wに対する角度や向きなどの姿勢自体をガイダンス情報としてディスプレイ31上に表示してもよい。この構成であれば、ディスプレイ31に表示された内容から、被検物Wに対して検出機器2をどのように動かすか(例えば速く動かすのか、大雑把に動かすのか、慎重に動かすのかなど)を認識することができる。
【0102】
また、ディスプレイ31上に表示される正反射光の画像がディスプレイ31上で所定の位置及び所定のサイズになった場合に、検出機器2が測定に適した位置にあると判断することもできる。このため、表示制御部3cは、ディスプレイ31上での正反射光の画像が所定の位置及びサイズであることを示す表示を行ってもよい。
【0103】
さらに、前記実施形態では、表示制御部3cにより、検出機器2の距離及び姿勢に関する情報を報知する報知部を構成しているが、その他、報知部をスピーカなどの音出力手段やLEDなどの光出力手段などを用いて構成してもよい。また、表示制御部3cがガイダンス情報を生成する機能を有さず、表示制御部3cとは別にガイダンス情報生成部を設けてもよい。また、ガイダンス情報生成部は、処理部3b(距離算出部)が求めた距離や処理部3b(姿勢算出部)が求めた回転角度をそのまま表示制御部3c(報知部)に出力してもよい。
【0104】
その上、処理部3bは、撮像部22からのデータを用いて被検物Wの表面形状(例えば平面又は曲面など)を認識し、当該表面形状に応じて、例えば輝度分布や反射率などの表面特性を補正してもよい。具体的には、処理部3bは、撮像部22からの距離画像データから被検物Wの表面形状を認識する。そして、処理部3bは、その認識した表面形状に応じて、撮像部22からの輝度画像データを補正し、輝度分布や反射率などを求める。
【0105】
また、前記実施形態の表面特性検査装置100が、処理部3bにより得られた変換画像を用いて被検物Wの表面特性を算出する表面特性算出部と、撮像部22の撮像画像を非線形変換して得られた変換画像及び当該変換画像に対応する表面特性ラベルからなる学習データセットを用いた機械学習により学習モデルを生成する機械学習部をさらに備え、表面特性算出部が学習モデルに基づいて被検物の表面特性を算出するものであっても良い。ここで、表面特性算出部は、変換画像における所定方向の輝度分布を用いて被検物の表面特性を算出する。具体的に表面特性算出部は、変換画像における輝度が延びる方向の輝度分布を用いて前記被検物の表面特性を算出する。
【0106】
加えて、前記実施形態の撮像部は、TOFカメラを用いたものであったが、距離画像を取得するものとしては、ステレオカメラを用いたものであってもよいし、パターン投影するものであってもよし、超音波を照射するものであってもよい。
【0107】
更に加えて、前記実施形態では装置本体にスマートフォンなどの携帯端末を用い、当該携帯端末に検出機器を装着するとともに、携帯端末にアプリケーションプログラムをインストールすることによって、表面特性検査装置を構成してもよい。
【0108】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、被検物の表面特性を検出する際の検出機器の位置決めを容易にすることができる。
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