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特許7273944レーザ用チャンバ装置、ガスレーザ装置、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】レーザ用チャンバ装置、ガスレーザ装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/038 20060101AFI20230508BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H01S3/038 Z
H01S3/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021501423
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007263
(87)【国際公開番号】W WO2020174571
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鯨 涼太
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-018910(JP,A)
【文献】特開2000-286622(JP,A)
【文献】実開昭56-131042(JP,U)
【文献】米国特許第05347531(US,A)
【文献】特開平10-341053(JP,A)
【文献】特開2001-168432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電により筐体の内部空間のレーザガスを励起してレーザ光を出力するレーザ用チャンバ装置であって、
前記内部空間内に配置される誘電体のパイプと、
前記パイプの長手方向に沿って延在し前記パイプの貫通孔内に配置される内電極と、
前記内部空間内に配置され、前記パイプの長手方向に沿って延在し前記パイプの外周面に接触する接触プレート、及び、前記接触プレートに一端が接続され前記接触プレートの長手方向に沿って並設される複数のバー部材から成るラダー部を含む外電極と、
前記内部空間内に配置され、前記パイプの長手方向に沿って延在し、前記外電極を前記パイプに押圧する板ばねと、
を備え、
前記板ばねは、前記パイプの長手方向に沿った縁から切り欠かれるスリットにより分けられる複数の板ばね片を含み、
前記複数の板ばね片は、前記縁に沿って折り曲げられる折り曲げ部を含み、前記折り曲げ部よりも前記縁側で前記複数のバー部材を個別に押圧する
レーザ用チャンバ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記パイプの長手方向に沿って延在し、前記外電極と前記板ばねとを押さえて固定する固定部材を更に備え、
前記外電極は、前記パイプの長手方向に沿って延在し、それぞれの前記バー部材の他端に接続され、前記固定部材に固定される固定プレートを含み、
前記板ばねは、前記パイプの長手方向に沿って延在し、それぞれの前記板ばね片の前記縁側と反対側に接続され、前記固定部材に固定される固定部を含み、
前記スリットは前記固定部材まで延在する。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記スリットの長手方向は、前記縁に対し垂直である。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記板ばねは、前記板ばね片における前記縁で前記バー部材を押圧する。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
それぞれの前記バー部材は、前記パイプの長手方向に垂直な面方向で、前記接触プレートに接続され前記パイプから離れる方向に延在する第1部分と、前記第1部分に接続されて曲げられる屈曲部と、前記屈曲部に接続される第2部分と、を含み、
前記板ばねは、前記屈曲部を押圧する。
【請求項6】
請求項に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記板ばねは、前記バー部材の前記屈曲部を前記板ばね片の主面で押圧する。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記板ばねは、複数の金属板が重ねられた積層構造である。
【請求項8】
請求項に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記板ばねの厚みと前記外電極の厚みとの差が、前記金属板1枚の厚み以下である。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記外電極が銅から成り、
前記板ばねが黄銅からなる。
【請求項10】
請求項1に記載のレーザ用チャンバ装置であって、
前記スリットの幅は1mm以上10mm以下である。
【請求項11】
放電により筐体の内部空間のレーザガスを励起してレーザ光を出力するレーザ用チャンバ装置を備えるガスレーザ装置であって、
前記レーザ用チャンバ装置は、
前記内部空間内に配置される誘電体のパイプと、
前記パイプの貫通孔内に配置される内電極と、
前記内部空間内に配置され、前記パイプの長手方向に沿って延在し前記パイプの外周面に接触する接触プレート、及び、前記接触プレートに一端が接続され前記接触プレートの長手方向に沿って並設される複数のバー部材から成るラダー部を含む外電極と、
前記内部空間内に配置され、前記パイプの長手方向に沿って延在し、前記外電極を前記パイプに押圧する板ばねと、
を備え、
前記板ばねは、前記パイプの長手方向に沿った縁から切り欠かれるスリットにより分けられる複数の板ばね片を含み、
前記複数の板ばね片は、前記縁に沿って折り曲げられる折り曲げ部を含み、前記折り曲げ部よりも前記縁側で前記複数のバー部材を個別に押圧する。
【請求項12】
請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
前記パイプの長手方向に沿って延在し、前記外電極と前記板ばねとを押さえて固定する固定部材を更に備え、
前記外電極は、前記パイプの長手方向に沿って延在し、それぞれの前記バー部材の他端に接続され、前記固定部材に固定される固定プレートを含み、
前記板ばねは、前記パイプの長手方向に沿って延在し、それぞれの前記板ばね片の前記縁側と反対側に接続され、前記固定部材に固定される固定部を含み、
前記スリットは前記固定部材まで延在する。
【請求項13】
請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
前記スリットの長手方向は、前記縁に対し垂直である。
【請求項14】
請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
前記板ばねは、前記板ばね片における前記縁で前記バー部材を押圧する。
【請求項15】
請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
それぞれの前記バー部材は、前記パイプの長手方向に垂直な面方向で、前記接触プレートに接続され前記パイプから離れる方向に延在する第1部分と、前記第1部分に接続されて曲げられる屈曲部と、前記屈曲部に接続される第2部分と、を含み、
前記板ばねは、前記屈曲部を押圧する。
【請求項16】
請求項15に記載のガスレーザ装置であって、
前記板ばねは、前記バー部材の前記屈曲部を前記板ばね片の主面で押圧する。
【請求項17】
請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
前記板ばねは、複数の金属板が重ねられた積層構造である。
【請求項18】
放電により筐体の内部空間のレーザガスを励起してレーザ光を出力するレーザ用チャンバ装置であって、
前記内部空間内に配置される誘電体のパイプと、
前記パイプの貫通孔内に配置される内電極と、
前記内部空間内に配置され、前記パイプの長手方向に沿って延在し前記パイプの外周面に接触する接触プレート、及び、前記接触プレートに一端が接続され前記接触プレートの長手方向に沿って並設される複数のバー部材から成るラダー部を含む外電極と、
前記内部空間内に配置され、前記パイプの長手方向に沿って延在し、前記外電極を前記パイプに押圧する板ばねと、
を備え、
前記板ばねは、前記パイプの長手方向に沿った縁から切り欠かれるスリットにより分けられる複数の板ばね片を含み、
前記複数の板ばね片は、前記縁に沿って折り曲げられる折り曲げ部を含み、前記折り曲げ部よりも前記縁側で前記複数のバー部材を個別に押圧する、
レーザ用チャンバ装置を備えるガスレーザ装置においてレーザ光を生成し、
前記レーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記レーザ光を露光する
ことを含む、
電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ用チャンバ装置、ガスレーザ装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。一般的に、露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられる。たとえば、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外光のレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長193nmの紫外光のレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
次世代の露光技術としては、露光装置側の露光用レンズとウエハとの間が液体で満たされる液浸露光が実用化されている。この液浸露光では、露光用レンズとウエハとの間の屈折率が変化するため、露光用光源の見かけの波長が短波長化する。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として液浸露光が行われた場合、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光又はArF液浸リソグラフィーという。
【0004】
KrFエキシマレーザ装置およびArFエキシマレーザ装置の自然発振幅は、約350~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外光を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、エタロン、グレーティング等の狭帯域化素子を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が備えられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9748727号明細書
【文献】米国特許第8712302号明細書
【概要】
【0006】
本開示の一態様は、レーザ用チャンバ装置であって、誘電体のパイプと、パイプの長手方向に沿って延在しパイプの貫通孔内に配置される内電極と、パイプの長手方向に沿って延在しパイプの外周面に接触する接触プレート、及び、接触プレートに一端が接続され接触プレートの長手方向に沿って並設される複数のバー部材から成るラダー部を含む外電極と、パイプの長手方向に沿って延在し、外電極をパイプに押圧する板ばねと、を備え、板ばねは、パイプの長手方向に沿った縁から切り欠かれるスリットにより分けられる複数の板ばね片を含み、板ばね片は、縁に沿って折り曲げられる折り曲げ部を含み、折り曲げ部よりも縁側でバー部材を押圧してもよい。
【0007】
本開示の他の一態様は、レーザ用チャンバ装置を備えるガスレーザ装置であって、レーザ用チャンバ装置は、誘電体のパイプと、パイプの貫通孔内に配置される内電極と、パイプの長手方向に沿って延在しパイプの外周面に接触する接触プレート、及び、接触プレートに一端が接続され接触プレートの長手方向に沿って並設される複数のバー部材から成るラダー部を含む外電極と、パイプの長手方向に沿って延在し、外電極をパイプに押圧する板ばねと、を備え、板ばねは、パイプの長手方向に沿った縁から切り欠かれるスリットにより分けられる複数の板ばね片を含み、板ばね片は、縁に沿って折り曲げられる折り曲げ部を含み、折り曲げ部よりも縁側でバー部材を押圧してもよい。
【0008】
また、本開示の更に他の一態様は、電子デバイスの製造方法であって、誘電体のパイプと、パイプの貫通孔内に配置される内電極と、パイプの長手方向に沿って延在しパイプの外周面に接触する接触プレート、及び、接触プレートに一端が接続され接触プレートの長手方向に沿って並設される複数のバー部材から成るラダー部を含む外電極と、パイプの長手方向に沿って延在し、外電極をパイプに押圧する板ばねと、を備え、板ばねは、パイプの長手方向に沿った縁から切り欠かれるスリットにより分けられる複数の板ばね片を含み、板ばね片は、縁に沿って折り曲げられる折り曲げ部を含み、折り曲げ部よりも縁側でバー部材を押圧する、レーザ用チャンバ装置を備えるガスレーザ装置においてレーザ光を生成し、レーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にレーザ光を露光してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、電子デバイスの製造の露光工程で使用される製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2図2は、ガスレーザ装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3図3は、チャンバ装置のレーザ光の進行方向に垂直な断面図である。
図4図4は、誘電体パイプ、内電極、外電極、及び板ばねを示す斜視図である。
図5図5は、誘電体パイプ、内電極、外電極、及び板ばねのレーザ光の進行方向に垂直な断面図である。
図6図6は、誘電体パイプの外周面が歪んでいる様子を示す図である。
図7図7は、外電極の一部が偏摩耗している様子を示す図である。
図8図8は、実施形態1におけるチャンバ装置の誘電体パイプ、内電極、外電極、及び板ばねを示す斜視図である。
図9図9は、実施形態1におけるチャンバ装置の誘電体パイプ、内電極、外電極、及び板ばねを示す断面図である。
図10図10は、実施形態1におけるチャンバ装置の誘電体パイプ、外電極、及び板ばねを誘電体パイプの長手方向に垂直な方向から見る図である。
図11図11は、実施形態1において、誘電体パイプの外周面が歪んでいる様子を示す図である。
図12図12は、実施形態1において、外電極の一部が偏摩耗している様子を示す図である。
図13図13は、実施形態2におけるチャンバ装置の誘電体パイプ、内電極、外電極、及び板ばねを図5と同じ方法で示す断面図である。
図14図14は、実施形態3におけるチャンバ装置の誘電体パイプ、内電極、外電極、板ばね、及び第2ガイドを示す斜視図である。
【実施形態】
【0010】
1.電子デバイスの露光工程で使用される製造装置の説明
2.比較例のガスレーザ装置の説明
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.実施形態1のチャンバ装置の説明
3.1 構成
3.2 作用・効果
4.実施形態2のチャンバ装置の説明
4.1 構成
4.2 作用・効果
5.実施形態3のチャンバ装置の説明
5.1 構成
5.2 作用・効果
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.電子デバイスの露光工程で使用される製造装置の説明
図1は、電子デバイスの製造装置の露光工程で使用される製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。図1に示すように、露光工程で使用される製造装置は、ガスレーザ装置100及び露光装置200を含む。露光装置200は、複数のミラー211,212,213を含む照明光学系210と、投影光学系220とを含む。照明光学系210は、ガスレーザ装置100から入射したレーザ光によって、レチクルステージRTのレチクルパターンを照明する。投影光学系220は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスである半導体デバイスを製造することができる。
【0013】
2.比較例のガスレーザ装置の説明
2.1 構成
比較例のガスレーザ装置について説明する。図2は、本例のガスレーザ装置の全体の概略構成例を示す模式図である。図2に示すように、本例のガスレーザ装置100は、筐体10と、レーザ発振器LOと、エネルギーモニタモジュール20と、制御部COとを主な構成として含む。本例のガスレーザ装置100は、例えば、アルゴン(Ar)、フッ素(F)、及びネオン(Ne)を含む混合ガスを使用するArFエキシマレーザ装置である。この場合、ガスレーザ装置100は、中心波長が約193nmのパルスレーザ光を出射する。なお、ガスレーザ装置100は、ArFエキシマレーザ装置以外のガスレーザ装置であってもよく、例えば、クリプトン(Kr)、フッ素(F)、及びネオン(Ne)を含む混合ガスを使用するKrFエキシマレーザ装置であってもよい。この場合、ガスレーザ装置100は、中心波長が約248nmのパルスレーザ光を出射する。レーザ媒質であるAr、F及びNeを含む混合ガスやKr、F及びNeを含む混合ガスはレーザガスと呼ばれる場合がある。
【0014】
制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。以下に説明するように、ガスレーザ装置の幾つかの構成が制御部COにより制御される。
【0015】
レーザ発振器LOは、チャンバ装置CHと、充電器BCと、狭帯域化モジュール60と、出力結合ミラーOCと、を主な構成として含む。
【0016】
図3は、チャンバ装置CHのレーザ光の進行方向に垂直な断面図である。図2図3に示すように、チャンバ装置CHは、筐体30と、一対のウィンドウ31a,31bと、一対の電極32a,32bと、絶縁部33と、パルスパワーモジュール35と、電極ホルダ36と、クロスフローファン38と、モータ38Mと、誘電体パイプ42と、内電極43と、外電極44と、板ばね45とを主な構成として備える。
【0017】
ウィンドウ31a及びウィンドウ31bは、筐体30における互いに対向する位置に設けられている。ウィンドウ31aは、筐体30におけるレーザ光の進行方向における一端に設けられ、ウィンドウ31bは、筐体30におけるレーザ光の進行方向における他端に設けられている。後述のようにガスレーザ装置100では、筐体30を含む光路上で光が発振してレーザ光が出射するため、筐体30内で発生したレーザ光は、ウィンドウ31a及びウィンドウ31bを介して筐体30の外部に出射する。ウィンドウ31a及びウィンドウ31bは、例えば、フッ化カルシウムで構成されている。なお、ウィンドウ31a及びウィンドウ31bはフッ化物や酸化物等の膜でコーティングされてもよい。
【0018】
筐体30内には、レーザガスが封入されている。一対の電極32a,32bの長手方向はレーザ光の進行方向に沿っており、一対の電極32a,32bは、筐体30内において互いに対向して配置されている。筐体30における電極32aと電極32bとの間の空間は、ウィンドウ31aとウィンドウ31bとにより挟まれている。それぞれの電極32a,32bは、グロー放電によりレーザ媒質を励起するための主放電電極である。本例では、電極32aがカソードであり、電極32bがアノードである。
【0019】
筐体30には開口が形成され、この開口は絶縁体を含んで形成される絶縁部33により塞がれている。電極32aは絶縁部33に支持されている。絶縁部33には、導電部材からなるフィードスルー34が埋め込まれている。フィードスルー34は、パルスパワーモジュール35から供給される電圧を電極32aに印加する。電極32bは電極ホルダ36に支持され、電極ホルダ36と電気的に接続されている。この電極ホルダ36は配線37を介して筐体30と電気的に接続されている。
【0020】
パルスパワーモジュール35には、筐体30の外に配置される充電器BCが接続されている。充電器BCは、パルスパワーモジュール35の中に設けられる図示しないコンデンサを所定の電圧で充電する直流電源装置である。パルスパワーモジュール35は、制御部COによって制御されるスイッチを含んでいる。スイッチがオフからオンになると、パルスパワーモジュール35は、充電器BCから印加される電圧を昇圧してパルス状の高電圧を生成し、この高電圧を電極32a及び内電極43に印加する。
【0021】
電極ホルダ36上には、第1ガイド41A、第2ガイド41B、第3ガイド41Cが設けられている。電極32bは、第1ガイド41Aと第2ガイド41Bとにより挟み込まれて電極ホルダ36上に固定されている。
【0022】
図4は、誘電体パイプ42、内電極43、外電極44、及び板ばね45を示す斜視図であり、図5は、誘電体パイプ42、内電極43、外電極44、及び板ばね45のレーザ光の進行方向に垂直な断面図である。なお、図4では、見やすさの観点から、板ばね45が外電極44から離れた状態で示されている。図4図5に示すように、誘電体パイプ42は、円筒状の形状であり、長手方向がレーザ光の進行方向に沿って配置されている。誘電体パイプ42は、酸化アルミニウム等の誘電体から成る。誘電体パイプ42の貫通孔42H内には、長手方向が誘電体パイプ42の長手方向に沿う内電極43が配置されている。図2に示すように、誘電体パイプ42の両端には、固定パイプ42a,42bが接続されている。一方の固定パイプ42aの貫通孔内には、内電極43の一端に接続される不図示の配線が配置され、他方の固定パイプ42bの貫通孔内には、内電極43の他端に接続される不図示の配線が配置されている。これら配線は、フィードスルー34に接続される。このため、フィードスルー34は、上記のようにパルスパワーモジュール35から供給される電圧を内電極43に印加する。
【0023】
誘電体パイプ42の外周面には、外電極44が接触している。外電極44は、電極ホルダ36と電気的に接続されている。従って、外電極44は、電極32bと電気的に接続されており、また、配線37を介して筐体30と電気的に接続されている。外電極44は、接触プレート44Cと、ラダー部44Lと、固定プレート44Fとを含む。接触プレート44Cは、概ね長方形の板状の形状であり、長手方向が誘電体パイプ42の長手方向に沿って延在し、誘電体パイプ42の外周面に接触している。具体的には、接触プレート44Cにおける誘電体パイプ42の長手方向に沿った縁44Eの一端から他端までが誘電体パイプ42の外周面に接触している。
【0024】
ラダー部44Lは、複数のバー部材44Bを含む。それぞれのバー部材44Bは、接触プレート44Cにおける誘電体パイプ42に接触している縁44Eと反対側に並設されている。このため、複数のバー部材44Bが接触プレート44Cの長手方向に沿って並設されている。本例では、それぞれのバー部材44Bは互いに平行である。それぞれのバー部材44Bは、第1部分44B1と、屈曲部44BCと、第2部分44B2とを含む。第1部分44B1は、接触プレート44Cに接続され、誘電体パイプ42の長手方向に垂直な面内方向において、誘電体パイプ42から離れる方向に直線状に延在している。屈曲部44BCは、第1部分44B1に接続され、誘電体パイプ42の長手方向に垂直な面内方向において曲げられている。第2部分44B2は、屈曲部44BCに接続され、誘電体パイプ42の長手方向に垂直な面内方向において延在している。
【0025】
それぞれのバー部材44Bの第2部分44B2の屈曲部44BC側と反対側は固定プレート44Fに接続されている。固定プレート44Fは概ね長方形の板状の形状であり、長手方向が誘電体パイプ42の長手方向に沿って延在している。従って、それぞれのバー部材44Bは、固定プレート44Fにおける誘電体パイプ42の長手方向に沿った縁に接続されている。固定プレート44Fには、複数のねじ孔44Hが概ね等間隔で形成されている。
【0026】
外電極44は上記構成であるため、ラダー部44Lには、接触プレート44Cと、一対のバー部材44Bと、固定プレート44Fとで囲まれる複数の開口44Aが形成されている。外電極44は、例えば、打ち抜き成型で製造され得る。具体的には、1枚の金属板を打ち抜き成型により、それぞれの開口44Aおよびねじ孔44Hを形成するとともに、ラダー部44Lのそれぞれのバー部材44Bを立体的に変形させて、第1部分44B1、屈曲部44BC、及び第2部分44B2を形成する。外電極44は、例えば黄銅から成る。この場合、上記のように筐体30内にフッ素を含むレーザガスが封入される場合であっても、表面に不働態が形成されて、レーザガスによる腐食が抑制され得る。また、外電極44の厚みは、例えば0.5mmである。
【0027】
板ばね45は、同じ形状の複数の金属板が重ねられた積層構造をしている。それぞれの金属板は、概ね長方形の形状をしている。本実施形態では、それぞれの金属板の厚みは外電極44の厚みよりも小さく、例えば0.1mmである。また、本例では、板ばね45の厚みと外電極44との厚みの差は、例えば金属板1枚の厚み以下である。例えば、板ばね45の厚みと外電極44の厚みとが互いに概ね等しくされる。上記のように、外電極44の厚みが0.5mmであれば、板ばね45は、例えば0.1mmの金属板が5枚重ねられて成る。板ばね45には、複数のねじ孔45Hが形成されている。それぞれのねじ孔45Hは、板ばね45が外電極44に重ねられた状態で、外電極44のそれぞれのねじ孔44Hと重なる位置に設けられている。板ばね45は外電極44側が凹状に形成されており、板ばね45が外電極44に重ねられ、ねじ孔44Hとねじ孔45Hとにねじが螺入されて、板ばね45と外電極44とが互いに固定されると、板ばね45の外電極44側の主面が外電極44を押圧する。この状態で、誘電体パイプ42の長手方向に沿った板ばね45の一方の縁45Eは、それぞれのバー部材44Bの屈曲部44BC上に位置している。板ばね45は、例えば黄銅から成る。この場合、外電極44と同様に、筐体30内にフッ素を含むレーザガスが封入される場合であっても、表面に不働態が形成され、腐食が抑制され得る。
【0028】
外電極44及び板ばね45は、それぞれのねじ孔44H,45Hに螺入されるねじSにより第2ガイド41Bに固定されている。従って、第2ガイド41Bは、外電極44及び板ばね45が固定される固定部材である。この状態で、板ばね45は、板ばね45のバー部材44Bと接触している主面全体で外電極44を押圧し、外電極44の接触プレート44Cの縁44Eが誘電体パイプ42の外周面に押し付けられて接触している。誘電体パイプ42の外周面における接触プレート44Cが接触する部位と概ね対向する部位は、第3ガイド41Cに接している。従って、板ばね45の弾性力により外電極44が誘電体パイプ42を押圧しても、誘電体パイプ42は第3ガイド41Cにより支えられる。
【0029】
内電極43と外電極44とは、誘電体パイプ42を介して対向している。内電極43と外電極44とに高電圧が印加されることで、誘電体パイプ42及び外電極44の近傍にコロナ放電が生じる。このコロナ放電は、電極32a,32b間に生じるグロー放電を補助する。従って、内電極43及び外電極44は、電極32a,32bが起こすグロー放電を補助するための予備電離電極である。
【0030】
図2図3に示すように、筐体10内における電極ホルダ36の電極32b側と反対側の空間にはクロスフローファン38が配置されている。筐体30内におけるクロスフローファン38が配置される空間と一対の電極32a,32b間の空間とは互いに連通している。このため、クロスフローファン38が回転することで、筐体30内に封入されたレーザガスは所定の方向に循環する。クロスフローファン38には、筐体30の外に配置されたモータ38Mが接続されている。このモータ38Mの回転で、クロスフローファン38は回転する。モータ38Mは、制御部COによる制御によりオン、オフや回転数の調節がなされる。従って、制御部COは、モータ38Mを制御することで、筐体30内を循環するレーザガスの循環速度を調節することができる。
【0031】
クロスフローファン38の脇には熱交換器39が配置されている。クロスフローファン38により循環されるレーザガスの少なくとも一部は熱交換器39を通過し、熱交換器39により温度が調節される。
【0032】
筐体30におけるウィンドウ31aが設けられる上記一端側には、光路管51が接続されている。出力結合ミラーOCは、筐体30を基準とした上記一端側に設けられ、光路管51内に配置されている。出力結合ミラーOCは、ウィンドウ31aから出射するレーザ光が入射する光学素子であり、ウィンドウ31aから出射される光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させてウィンドウ31aを介して筐体30内に戻す。出力結合ミラーOCは、例えば、フッ化カルシウムの基板に誘電体多層膜を成膜した素子で構成される。
【0033】
筐体30におけるウィンドウ31bが設けられる上記他端側には、光路管52が接続されている。狭帯域化モジュール60は、光路管52に接続されている。従って、狭帯域化モジュール60は、筐体30を基準とした上記他端側に設けられている。狭帯域化モジュール60は、筐体61と、グレーティング62と、プリズム63,64とを含む。筐体61には開口が形成されており、この開口を通じて筐体61内の空間と光路管52内の空間とが連通している。
【0034】
グレーティング62及びプリズム63,64は、筐体61内に配置されている。グレーティング62及びプリズム63,64は、ウィンドウ31bから出射するレーザ光が入射する光学素子である。グレーティング62は、波長分散面がレーザ光の伝搬方向に垂直な平面と概ね一致し、レーザ光の入射角度と回折角度とが概ね一致するようにリトロー配置されている。本例では、グレーティング62は、波長が約193nmの波長に対してブレーズドされたエシェールグレーティングであってもよい。
【0035】
プリズム63,64の少なくとも一方は回転ステージ上に固定されており、プリズム63,64のうち回転ステージ上に固定されたプリズムが僅かに回転することで、グレーティング62へ入射する光の入射角度が調節される。グレーティング62への光の入射角度が調節されることで、グレーティング62で反射する光の波長が調節される。従って、筐体30のウィンドウ31bから出射される光がプリズム63,64を介してグレーティング62で反射することで、筐体30に戻る光の波長は、所望の波長に調節される。なお、狭帯域化モジュール60に配置されるプリズムの数は、本例では2つであるが、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0036】
筐体30を挟んで設けられる出力結合ミラーOCとグレーティング62とで光共振器が構成され、筐体30は、この光共振器の光路上に配置される。従って、筐体30から出射する光は、狭帯域化モジュール60のグレーティング62と出力結合ミラーOCとの間で往復し、電極32aと電極32bとの間のレーザゲイン空間を通過する度に増幅される。増幅された光の一部が、出力結合ミラーOCを透過して、パルスレーザ光として出射される。
【0037】
エネルギーモニタモジュール20は、レーザ発振器LOの出力結合ミラーOCから出射するパルスレーザ光の光路上に配置されている。エネルギーモニタモジュール20は、筐体21と、ビームスプリッタ22と、パルスエネルギーセンサ23とを含む。筐体21は、光路管51に接続されている。ビームスプリッタ22及びパルスエネルギーセンサ23は、ウィンドウ31aから出射するレーザ光が入射する光学素子である。筐体21には開口が形成されており、この開口を通じて筐体21内の空間と光路管51内の空間とが連通している。筐体21内には、ビームスプリッタ22及びパルスエネルギーセンサ23が配置されている。
【0038】
ビームスプリッタ22は、レーザ発振器LOから出射したパルスレーザ光を高い透過率で透過させるとともに、パルスレーザ光の一部を、パルスエネルギーセンサ23の受光面に向けて反射する。パルスエネルギーセンサ23は、受光面に入射したパルスレーザ光のパルスエネルギを検出し、検出されたパルスエネルギのデータを制御部COに出力する。
【0039】
エネルギーモニタモジュール20の筐体21における光路管51が接続される側と反対側には、開口が形成されており、この開口を囲むように光路管53が接続されている。このため、光路管51内の空間と、筐体21内の空間と、光路管53内の空間とが連通している。光路管53は筐体10に接続されている。筐体10における光路管53に囲まれる位置には、レーザ光出射ウィンドウOWが設けられている。従って、エネルギーモニタモジュール20のビームスプリッタ22を透過する光は、光路管53を介して、レーザ光出射ウィンドウOWから筐体10の外部に出射される。
【0040】
なお、光路管51,52,53や、筐体21,61内にはパージガスが充填されている。パージガスには、酸素等の不純物の少ない高純度窒素等の不活性ガスが含まれる。パージガスは、筐体10の外に配置されているパージガス供給源から不図示の配管を通じて光路管51,52,53や、筐体21,61内に供給される。
【0041】
筐体10の外には、レーザガスが蓄えられているレーザガス供給源LTが更に配置されている。レーザガス供給源LTは、レーザガスとなる複数のガスを供給する。本例では、FとArとを含む混合ガスを供給する。なお、レーザガスがKrFであれば、レーザガス供給源LTは、FとKrとを含む混合ガスを供給する。レーザガス供給源LTには、配管が接続されており、当該配管が筐体10内に入り込んでいる。この配管は、レーザガス供給装置LGに接続されている。レーザガス供給装置LGには、図示しないバルブや流量調節弁が設けられており、筐体30に接続される他の配管が接続されている。レーザガス供給装置LGは、制御部COからの制御信号により、複数のガスを所望の組成比で混合してレーザガスとし、当該レーザガスをこの他の配管に出力する。従って、レーザガス供給源LTは、この他の配管を介して、筐体30内にレーザガスを供給する。この他の配管が筐体30に接続される接続部が、筐体30内にレーザガスを供給するレーザガス供給口LSPである。
【0042】
筐体10内には、排気装置EDが配置されている。排気装置EDには、筐体30に接続される配管が接続されている。排気装置EDは、筐体30内のガスをこの配管を介して筐体10内に排気する。この際、排気装置EDは、制御部COからの制御信号により排気量等を調節し、筐体30内から排気されるガスに対して所定の処理をする。この配管が筐体30に接続される接続部が、筐体30内からガスを排気するレーザガス排気口LEPである。
【0043】
筐体10には、排気ダクト11が設けられている。この排気ダクト11から筐体10内のガスが筐体10外に排気される。従って、排気装置EDから筐体10内に排気されるガスや、不図示の構成により光路管51,52,53内等から筐体10内に排気されるガスは、排気ダクト11から筐体10外に排気される。
【0044】
2.2 動作
次に、比較例のガスレーザ装置100の動作について説明する。
【0045】
ガスレーザ装置100がレーザ光を出射する前の状態で、光路管51,52,53内や、筐体21,61内には、不図示の構成によりパージガスが充填される。また、筐体30内には、レーザガス供給口LSPからレーザガス供給源LTからのレーザガスが供給され、供給されたレーザガスが循環される。具体的には、レーザガス供給口LSPから筐体30内にレーザガスが供給されるとともに、レーザガス排気口LEPから排気されるガスが排気装置EDを介して筐体10内に排気され、レーザガスが筐体30内に封入される。また、制御部COはモータ38Mを制御して、クロスフローファン38を回転させ、クロスフローファン38の回転によりレーザガスは循環される。
【0046】
ガスレーザ装置100がレーザ光を出射する際には、制御部COは、充電器BC及びパルスパワーモジュール35内のスイッチを制御して、電極32aと電極32bとの間及び内電極43と外電極44との間に高電圧を印加する。ただし、内電極43と外電極44との間に高電圧が印加されるタイミングは、電極32aと電極32bとの間に高電圧が印加されるタイミングよりも僅かに早い。内電極43と外電極44との間に高電圧が印加されると、誘電体パイプ42の近傍にコロナ放電が生じ、紫外光が放射される。次に電極32a,32b間に高電圧が印加されると、電極32a,32b間の絶縁が破壊され放電が起こる。この放電のエネルギーにより、電極32a,32b間のレーザガスに含まれるレーザ媒質は励起状態とされて、基底状態に戻る時に自然放出光を放出する。この光の一部がウィンドウ31bから出射して、プリズム63,64を介してグレーティング62で反射される。グレーティング62で反射され再びウィンドウ31bを介して筐体30内に伝搬する光は狭帯域化されている。この狭帯域化された光により、励起状態のレーザ媒質は誘導放出を起こし、光が増幅される。こうして、所定の波長の光がグレーティング62と出力結合ミラーOCとの間を共振し、レーザ発振が起こる。そして、一部のレーザ光が、出力結合ミラーOCを透過して、レーザ光出射ウィンドウOWから出射する。
【0047】
なお、このとき、ビームスプリッタ22で反射されるレーザ光は、パルスエネルギーセンサ23で受光され、パルスエネルギーセンサ23は、受光するレーザ光のエネルギーの強度に基づく信号を制御部COに出力する。制御部COは、この信号に基づいて、充電器BCやパルスパワーモジュール35を制御して、出射されるレーザ光のパワーが調節される。
【0048】
2.3 課題
上記のように、外電極44は板ばね45により誘電体パイプ42に押し付けられており、接触プレート44Cの縁44Eの一端から他端までが誘電体パイプ42に接している。しかし、誘電体パイプ42の外周面が図6に示すように歪んでいる場合がある。また、内電極43と外電極44との間に多数回にわたり高電圧が印加されると、外電極44の接触プレート44Cが図7に示すように偏摩耗する場合がある。これらの場合に、誘電体パイプ42の外周面と接触プレート44Cとの間に隙間Aが形成される場合がある。誘電体パイプ42の外周面と接触プレート44Cとの間に隙間Aが形成されると、誘電体パイプ42の長手方向に沿った均一なコロナ放電がされ難くなる。このため、電極32a,32b間においても均一なグロー放電がされ難くなる。このため電極32aと電極32bとの間の空間におけるレーザ光の増幅が不安定となり、レーザ光を安定して出射し難くなるという懸念が生じる。
【0049】
そこで、以下の実施形態では、安定してレーザ光を出射し得るガスレーザ装置を実現し得るチャンバ装置が例示される。
【0050】
3.実施形態1のチャンバ装置の説明
次に、実施形態1のチャンバ装置について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0051】
3.1 構成
図8は、本実施形態におけるチャンバ装置CHの誘電体パイプ42、内電極43、外電極44、及び板ばね45を図4と同じ方法で示す斜視図である。図9は、本実施形態におけるチャンバ装置CHの誘電体パイプ42、内電極43、外電極44、及び板ばね45を図5と同じ方法で示す断面図である。図8に示すように、本実施形態の板ばね45は、誘電体パイプ42の長手方向に沿った縁45Eから切り欠かれるスリット45Sにより分けられる複数の板ばね片45Pを含む。従って、板ばね片45は、スリット45Sで挟まれ、互いに対向する一対の主面を含む。本実施形態では、それぞれのスリット45Sの長手方向は縁45Eに垂直である。また、スリット45Sの幅は、例えば1mm以上10mm以下である。板ばね45のスリット45Sが形成されていない部位は、誘電体パイプ42の長手方向に沿って延在する固定部45Fであり、それぞれの板ばね片45Pは、縁45E側と反対側で固定部45Fに接続されている。この固定部45Fにねじ孔45Hが形成されている。
【0052】
それぞれの板ばね片45Pは、縁45Eに沿って折り曲げられる折り曲げ部45Bを含む。折り曲げ部45Bにより板ばね片45Pは、図9に示すように、外電極44側と反対側に凸形状となり、折り曲げ部45Bでは、板ばね片45Pは外電極44と離間している。また、本実施形態では、縁45Eが外電極44のそれぞれのバー部材44Bに接して、バー部材44Bを押圧している。従って、板ばね45は、折り曲げ部45Bよりも縁45E側でバー部材44Bを押圧している。本実施形態では、板ばね片45Pの縁45Eは、バー部材44Bにおける屈曲部44BCを押圧している。図9では、第1部分44B1、屈曲部44BC、及び第2部分44B2の境界を点線で示している。なお、屈曲部44BCは、第1部分44B1側からバー部材44Bが曲がり始める位置から、第1部分44B1の長手方向に沿って見る場合における第1部分44B1からバー部材44Bの厚みTの5倍離れた位置までをいう。図9では、第1部分44B1の長手方向に沿って見る場合における第1部分44B1からバー部材44Bの厚みTの5倍離れた位置までが5Tで示されている。例えば、上記のように外電極の厚みが0.5mmである場合、屈曲部44BCは、第1部分44B1側からバー部材44Bが曲がり始める位置から、第1部分44B1の長手方向に沿って見る場合における第1部分44B1から2.5mm離れた位置までとなる。板ばね片45Pの縁45Eは、この屈曲部44BCのいずれかの領域を押圧する。
【0053】
図10は、本実施形態におけるチャンバ装置CHの誘電体パイプ42、外電極44、及び板ばね45を誘電体パイプ42の長手方向に垂直な方向から見る図である。図10に示すように、本実施形態の板ばね45のスリット45Sは、それぞれのバー部材44Bの間に設けられる。従って、それぞれの板ばね片45Pは、バー部材44Bを個別に押圧している。
【0054】
3.2 作用・効果
図11は、図6のように、誘電体パイプ42の外周面が歪んでいる様子を示す図であり、図12は、図7のように、外電極44の一部が偏摩耗している様子を示す図である。本実施形態のチャンバ装置CHでは、板ばね45は、誘電体パイプ42の長手方向に沿った縁45Eから切り欠かれるスリット45Sにより分けられる複数の板ばね片45Pを含む。それぞれの板ばね片45Pは、個別に外電極44を押圧することができる。従って、図11に示すように誘電体パイプ42の外周面が歪んでいる場合であっても、比較例の板ばね45が用いられる場合と比べて、外電極44の誘電体パイプ42に対する表面追随性が向上し得る。なお、図11では、誘電体パイプ42の歪んでいる部分に板ばね片45Pが追随していないときの様子が破線で示されている。また、図12に示すように外電極44の一部が偏摩耗している場合であっても、比較例の板ばね45が用いられる場合と比べて、外電極44の誘電体パイプ42に対する表面追随性が向上し得る。なお、図12では、板ばね片45Pが外電極44の偏摩耗している部分に板ばね片45Pが追随していないときの様子が破線で示されている。このため、誘電体パイプ42と外電極44との間に隙間ができること抑制し得る。また、本実施形態のチャンバ装置CHでは、板ばね片45Pは、縁45Eに沿って折り曲げられる折り曲げ部45Bを含み、折り曲げ部45Bよりも縁45E側でバー部材44Bを押圧する。このような構成により、板ばね片45Pが撓むことが抑制され得、安定して板ばね片45Pがバー部材44Bを押圧し得る。このため、板ばね45は、安定して外電極44を誘電体パイプ42に押し付けることができ、上記のように誘電体パイプ42と外電極44との間に隙間ができることを抑制し得る。従って、本実施形態のチャンバ装置CHによれば、安定してレーザ光を出射し得るガスレーザ装置を実現し得る。このため、本実施形態のガスレーザ装置100は、安定してレーザ光を出射し得る。
【0055】
また、本実施形態のチャンバ装置CHでは、板ばね45に形成されるスリット45Sは、それぞれのバー部材44Bの間に設けられ、それぞれの板ばね片45Pがバー部材44Bを個別に押圧する。つまり、バー部材44Bと板ばね片45Pとが一対一で対応する。このため、一つの板ばね片45Pが複数のバー部材44Bを押圧する場合と比べて、外電極44の誘電体パイプ42に対する表面追随性が向上し得る。このため、誘電体パイプ42と外電極44との間に隙間ができることより抑制し得る。なお、本実施形態と異なり、一つの板ばね片45Pが複数のバー部材44Bを押圧してもよい。
【0056】
また、本実施形態のチャンバ装置CHでは、スリット45Sの長手方向は、縁45Eに対し垂直である。従って、板ばね片45Pにおける縁45Eに沿った位置により、板ばね片45Pがバー部材44Bに与える押圧力が変化することを抑制し得る。なお、本実施形態と異なり、スリット45Sの長手方向は、縁45Eに対し非垂直であってもよい。
【0057】
また、本実施形態のチャンバ装置CHでは、板ばね45は、板ばね片45Pにおける縁45Eでバー部材44Bを押圧する。このため、板ばね片45Pが不要に大きくなることを抑制し得る。
【0058】
また、本実施形態のチャンバ装置CHでは、板ばね45は、バー部材44Bの屈曲部44BCを押圧している。従って、板ばね45の弾性力を外電極44の接触プレート44Cに効率よく伝え得る。このため、板ばね45がバー部材44Bの第2部分44B2を押圧する場合と比べて、外電極44の誘電体パイプ42に対する表面追随性がより向上し得る。このため、誘電体パイプ42と外電極44との間に隙間ができることをより抑制し得る。なお、本実施形態と異なり、板ばね45がバー部材44Bの第2部分44B2を押圧してもよい。
【0059】
また、本実施形態のチャンバ装置CHでは、板ばね45は、複数の金属板が重ねられた積層構造である。このため、板ばね45が一枚の金属板から成る場合と比べて、板ばね45の弾性変形する範囲が広がり、板ばね45は、弾性力を出しつつ塑性変形されることを抑制し得る。なお、本実施形態と異なり、板ばね45が一枚の金属板から成ってもよい。
【0060】
4.実施形態2のチャンバ装置の説明
次に、実施形態2のチャンバ装置について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0061】
4.1 構成
図13は、本実施形態におけるチャンバ装置CHの誘電体パイプ42、内電極43、外電極44、及び板ばね45を図5と同じ方法で示す断面図である。図13に示すように、本実施形態の板ばね45は、板ばね片45Pが第1部分44B1と重なる位置まで延在している。このため、本実施形態の板ばね45は、バー部材44Bの屈曲部44BCを板ばね片45Pの主面で押圧している。
【0062】
4.2 作用・効果
本実施形態のチャンバ装置CHによれば、板ばね45がバー部材44Bの屈曲部44BCを板ばね片45Pの主面で押圧しているため、バー部材44Bと板ばね45との接触面積を広くし得る。従って、板ばね45から受ける力により外電極44に傷等が生じることを抑制し得る。
【0063】
5.実施形態3のチャンバ装置の説明
次に、実施形態3のチャンバ装置について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0064】
5.1 構成
図14は、本実施形態におけるチャンバ装置CHの誘電体パイプ42、内電極43、外電極44、板ばね45、及び第2ガイド41Bを示す斜視図である。本実施形態の板ばね45は、スリット45Sが第2ガイド41Bまで延在している点において、実施形態1の板ばね45と異なる。上記のように第2ガイド41Bは、外電極44及び板ばね45が固定される固定部材である。従って、本実施形態の板ばね45では、スリット45Sが外電極44及び板ばね45が固定される固定部材まで延在している。
【0065】
5.2 作用・効果
本実施形態のチャンバ装置CHによれば、板ばね45のスリット45Sが固定部材である第2ガイド41Bまで延在しているため、スリット45Sが第2ガイド41Bまで延在していない場合と比べて、それぞれの板ばね片45Pの可動範囲が大きい。従って、誘電体パイプ42の外周面の歪みが大きい場合や、外電極44の偏摩耗の度合いが大きい場合であっても、外電極44を誘電体パイプ42の外周面に押し付け得る。従って、これらの場合であっても、誘電体パイプ42と外電極44との間に隙間ができることを抑制し得る。
【0066】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14