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特許7273982共役ジエン系グラフト重合体、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】共役ジエン系グラフト重合体、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20230508BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20230508BHJP
   C08C 19/00 20060101ALI20230508BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C08G81/02
C08C19/25
C08C19/00
C08L15/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021546968
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035408
(87)【国際公開番号】W WO2021054428
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019172169
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 慶和
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩
(72)【発明者】
【氏名】稲富 敦
(72)【発明者】
【氏名】高井 順矢
(72)【発明者】
【氏名】馬 昭明
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-025511(JP,A)
【文献】特開昭63-205310(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034195(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043700(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/004686(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/262371(WO,A1)
【文献】Macromolecules, 1997, Vol.30, p.5602-5605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00-81/02
C08C 19/00-19/44
C08F 2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)下記式(I)で表される活性末端重合体と
P-X (I)
(式(I)中、Pは共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体鎖を示し、Xはアニオン重合の活性末端を示す)、
下記式(II)で示される官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体とを反応させて共役ジエン系グラフト重合体を作製する工程
【化1】
(式(II)中、Vは、アルコキシ基または水酸基を示し、ZはSi、またはBであり、R1は炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、又は水素原子を示し、Nは前記Zの価数を示し、nは下記式(1)を満たす整数であり
1≦n≦N-1 (1)
nが2以上の場合、Vは同一でも異なっていてもよく、N-n-1が2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよく、分岐鎖が主鎖に対し、複数含まれる場合には、Zは同一でも異なっていてもよい。);および
(B)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程;
を含む、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)に、分岐点である価数が3以上のヘテロ原子Zを介して、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)が結合した共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
【請求項2】
さらに、工程(B)の前において、
(A-2)前記共役ジエン系グラフト重合体中のアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基の少なくとも一部を不活性化する工程;
を含む、請求項1に記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
【請求項3】
前記式(II)中のZがSiである、請求項1または2に記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
【請求項4】
前記式(II)中の官能基Vがアルコキシ基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
【請求項5】
1つの分岐点に対して結合する側鎖(b)の平均本数が0.5本以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
【請求項6】
共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)に、
分岐点である価数が3以上のヘテロ原子1つを介して、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)が結合した共役ジエン系グラフト重合体であり、
前記主鎖(a)は、直接または連結鎖を通じて分岐点と結合し、
前記側鎖(b)は直接分岐点に結合しており、
前記ヘテロ原子がSi、およびBからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
ハロゲン含有量が1000ppm以下である共役ジエン系グラフト重合体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法により得られる請求項6に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
【請求項8】
前記分岐点のヘテロ原子がSiである、請求項6または7に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
【請求項9】
1つの分岐点に対して直接結合する側鎖(b)の平均本数が0.5本以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体を含有する、重合体組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の重合体組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、熱安定性および耐候性に優れる共役ジエン系グラフト重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分岐を有するポリマーは同じ分子量の線状ポリマーに比べて流動性が高く、加工性と力学特性のバランスに優れることが知られている。例えば、ヒドロシリル化によりシリルクロリド基をグラフトしたポリブタジエンとリビングアニオン重合の活性末端を有するリビングポリマーを反応させることで、共役ジエン系グラフト重合体を形成させる方法が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-252927号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Macromolecules,1997,30,5602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の共役ジエン系グラフト重合体は、重合体中に副生成物であるハロゲン化物を含有する。ハロゲン化物は、燃焼時に有害な生成物を発生する原因となる等の環境上の問題から、重合体中の含有量を低減することが求められている(特許文献1参照)。また、ハロゲン化物の含有量が多い非特許文献1に記載の共役ジエン系グラフト重合体は、透明性、耐熱性、耐候性に問題があることが判明した。上記非特許文献では、重合体中のハロゲン化物含量を低減する手段については何ら検討されていない。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、高い透明性、耐熱性、耐候性を有する共役ジエン系グラフト重合体、および該共役ジエン系グラフト重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の活性末端重合体と特定の官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体とを反応させる工程を含む製造方法により製造された共役ジエン系グラフト重合体が、高い透明性、耐熱性、耐候性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[11]を提供するものである。
[1](A-1)下記式(I)で表される活性末端重合体(以下、この重合体を活性末端重合体(I)と称する。)と
P-X (I)
(式(I)中、Pは共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体鎖を示し、Xはアニオン重合の活性末端を示す)、
下記式(II)で示される官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体(以下、この重合体を官能基変性共役ジエン系重合体(F)と称する。)とを反応させて共役ジエン系グラフト重合体を作製する工程
【0009】
【化1】
(式(II)中、Vは、アルコキシ基または水酸基を示し、ZはSi、またはBであり、R1は炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、又は水素原子を示し、Nは前記Zの価数を示し、nは下記式(1)を満たす整数であり
1≦n≦N-1 (1)
nが2以上の場合、Vは同一でも異なっていてもよく、N-n-1が2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよく、分岐鎖が主鎖に対し、複数含まれる場合には、Zは同一でも異なっていてもよい。);および
(B)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程;
を含む、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)に、分岐点である価数が3以上のヘテロ原子Zを介して、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)が結合した共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
[2]さらに、工程(B)の前において、
(A-2)前記共役ジエン系グラフト重合体中のアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基の少なくとも一部を不活性化する工程;を含む、[1]に記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
[3]前記式(II)中のZがSiである、[1]または[2]に記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
[4]前記式(II)中の官能基Vがアルコキシ基である、[1]~[3]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
[5]1つの分岐点に対して結合する側鎖(b)の平均本数が0.5本以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法。
【0010】
[6]共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)に、
分岐点である価数が3以上のヘテロ原子1つを介して、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)が結合した共役ジエン系グラフト重合体であり、
前記主鎖(a)は、直接または連結鎖を通じて分岐点と結合し、
前記側鎖(b)は直接分岐点に結合しており、
前記ヘテロ原子がSi、およびBからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
ハロゲン含有量が1000ppm以下である共役ジエン系グラフト重合体。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の製造方法により得られる[6]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[8]前記分岐点のヘテロ原子がSiである、[6]または[7]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[9]1つの分岐点に対して直接結合する側鎖(b)の平均本数が0.5本以上である、[6]~[8]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[10][6]~[9]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体を含有する、重合体組成物。
[11][10]に記載の重合体組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い透明性、熱安定性、耐候性を有する共役ジエン系グラフト重合体、および該共役ジエン系グラフト重合体の製造方法を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、下記工程(A-1)および工程(B)を含む。なお、本発明でグラフト重合体とは、高分子鎖からなる主鎖を幹、高分子鎖からなる側鎖を枝、として有する重合体をいい、主鎖となる高分子鎖を構成する単量体単位と、側鎖となる高分子鎖を構成する単量体単位とは、同一でも異なっていてもよい。
【0013】
(A-1)下記式(I)で表される活性末端重合体(I)と、下記式(II)で示される官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)とを反応させて共役ジエン系グラフト重合体を作製する工程
【0014】
P-X (I)
(式(I)中、Pは共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体鎖を示し、Xはアニオン重合の活性末端を示す。)
【0015】
【化2】
(式(II)中、Vは、アルコキシ基または水酸基を示し、ZはSi、Sn、Ge、Pb、P、B、またはAlであり、R1は炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、または水素原子を示し、Nは前記Zの価数を示し、nは下記式(1)を満たす整数であり;
1≦n≦N-1 (1)
nが2以上の場合、Vは同一でも異なっていてもよく、N-n-1が2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよく、分岐鎖が主鎖に対し、複数含まれる場合には、Zは同一でも異なっていてもよい。);および
(B)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程
【0016】
なお、官能基変性共役ジエン系重合体(F)の分岐鎖とは、官能基変性共役ジエン系重合体(F)の主鎖以外の部分を意味し、この主鎖とは、主鎖を構成する共役ジエン単位を含む全単量体単位に由来する部分全体を指す。例えば、後述する方法により官能基変性共役ジエン系重合体(F)を前駆体である未変性の共役ジエン系重合体(F')から製造する場合には、未変性の共役ジエン系重合体(F')に由来する部分全体を指す。例えば、その未変性の共役ジエン系重合体(F')にビニル結合をしたブタジエン単位が含まれる場合、重合体骨格(-(C-C)n-)中の炭素原子に接合する-CH=CH2部分(変性する化合物が付加した場合には、-CH-CH2-となる部分)までを含めて主鎖という。
【0017】
[工程(A-1)]
上記工程(A-1)で活性末端重合体(I)は、公知の重合方法を用いて製造することができる。例えば、重合末端に不活性な溶媒中、アニオン重合可能な活性金属または活性金属化合物を開始剤として、必要に応じて極性化合物の存在下で、単量体をアニオン重合させることにより、活性末端重合体(I)を得ることができる。
【0018】
活性末端重合体(I)に含まれるPは、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体鎖である。この活性末端重合体のPが本発明で得られるグラフト重合体の側鎖(b)となる。
【0019】
上記単量体単位を構成し得る共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン;2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、ファルネセン、およびクロロプレン等のブタジエンおよびイソプレン以外の共役ジエンが挙げられる。活性末端重合体(I)のPに含まれる共役ジエン単位としては、ブタジエンおよびイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位が含まれていることが好ましい。上記共役ジエンは1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0020】
上記単量体単位を構成し得る芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。これら芳香族ビニル化合物の中では、スチレン、α-メチルスチレン、および4-メチルスチレンが好ましい。上記芳香族ビニル化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0021】
活性末端重合体(I)に含まれるPはその重合体鎖の骨格が、共役ジエン単位1種若しくは芳香族ビニル化合物単位1種のみからなる単独重合体、共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる2種以上の単量体単位からなる共重合体、又は、共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる1種以上の単量体単位と共役ジエン及び芳香族ビニル化合物以外のビニル単量体の単量体単位との共重合体であってもよい。また、上記活性末端重合体のPを構成する重合体は1種単独でもよく、異なる構造を有する2種以上であってもよい。
【0022】
(共役ジエン単位の比率)
活性末端重合体(I)のPを構成し得る共役ジエン単位の比率は特に制限されず、目的に応じて設計することが可能であるが、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。共役ジエン単位の比率が50質量%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にある。
【0023】
活性末端重合体(I)のPを構成し得る芳香族ビニル化合物単位の比率は特に制限されず、目的に応じて設計することが可能であるが、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。芳香族ビニル化合物単位の比率が50質量%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の力学特性が向上する傾向にある。
【0024】
アニオン重合可能な活性金属または活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましく、有機リチウム化合物がより好ましい。上記有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウムなどが挙げられる。
【0025】
上記溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0026】
上記アニオン重合の際には、極性化合物を添加してもよい。極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン単位のミクロ構造(ビニル含量)を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
【0027】
上記アニオン重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
【0028】
活性末端重合体(I)の重量平均分子量(Mw)は1,000以上100,000未満であることが好ましい一態様であり、2,000以上80,000未満がより好ましく、3,000以上50,000未満がさらに好ましい。上記活性末端重合体(I)のMwが前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。なお、本発明において、特に断りがない限り、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0029】
活性末端重合体(I)に含まれるPのビニル含量は特に制限されないが、90モル%以下であることが好ましい一態様であり、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。上記活性末端重合体のビニル含量は、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましい。本発明において、「ビニル含量」とは、重合体に含まれる、共役ジエン単位の合計100モル%中、1,2-結合、3,4-結合(ファルネセン以外の場合)、及び3,13-結合(ファルネセンの場合)で結合をしている共役ジエン単位(1,4-結合(ファルネセン以外の場合)及び1,13-結合(ファルネセンの場合)以外で結合をしている共役ジエン単位)の合計モル%を意味する。活性末端重合体(I)のビニル含量は、その活性末端重合体の1H-NMRスペクトルにおいて、1,2-結合、3,4-結合(ファルネセン以外の場合)、及び3,13-結合(ファルネセンの場合)で結合をしている共役ジエン単位由来のピークと1,4-結合(ファルネセン以外の場合)及び1,13-結合(ファルネセンの場合)で結合をしている共役ジエン単位に由来するピークの面積比から算出する。
【0030】
活性末端重合体(I)に含まれるPのビニル含量は目的に応じて設計することが可能であり、例えば、ビニル含量が50モル%未満であると、後述する側鎖(b)のガラス転移温度(Tg)が低くなり、得られる共役ジエン系グラフト重合体の流動性や低温特性が優れる傾向がある。また、50モル%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の反応性に優れる傾向にある。
【0031】
なお、上記ビニル含量は、活性末端重合体(I)を製造する際に使用する溶媒の種類、必要に応じて使用される極性化合物、重合温度などを制御することにより所望の値とすることができる。
【0032】
活性末端重合体(I)に含まれるPのガラス転移温度(Tg)は、ブタジエン単位、イソプレン単位およびブタジエン単位、イソプレン単位以外の共役ジエン単位のビニル含量、共役ジエン単位の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。なお、本発明において、Tgは示差走査熱量測定(DSC)測定により求めた、DDSCのピークトップの値である。
【0033】
上記工程(A-1)において、官能基変性共役ジエン系重合体(F)は、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F')を後述する変性工程において官能基により変性することで得られる。前記未変性共役ジエン系重合体(F')の製造方法は特に制限されないが、例えば、乳化重合法、溶液重合法が好ましく、得られる重合体の分子量分布の観点から、溶液重合法がより好ましい。官能基変性共役ジエン系重合体(F)の官能基変性されている以外の部分が本発明の共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)となる。
【0034】
未変性共役ジエン系重合体(F')の単量体単位に含まれる共役ジエンの具体例は、活性末端重合体(I)に含まれるPの単量体単位を構成し得る共役ジエンの具体例と同一である。未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる共役ジエン単位となる共役ジエンの中でも、ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。上記共役ジエンは1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0035】
未変性共役ジエン系重合体(F')は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、50質量%以上がブタジエンおよびイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位であることが好ましい一態様である。ブタジエン単位およびイソプレン単位の合計含有量は、未変性共役ジエン系重合体(F')の全単量体単位に対して60~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましい。
【0036】
未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれ得るブタジエン単位およびイソプレン単位以外の他の単量体単位としては、前述したブタジエンおよびイソプレン以外の共役ジエン単位、芳香族ビニル化合物単位などが挙げられる。
【0037】
未変性共役ジエン系重合体(F')の単量体単位を構成し得る芳香族ビニル化合物の具体例は、活性末端重合体(I)に含まれるPの単量体単位を構成し得る芳香族ビニル化合物の具体例と同一である。芳香族ビニル化合物の中でも、スチレン、α-メチルスチレン、および4-メチルスチレンが好ましい。上記芳香族ビニル化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0038】
未変性共役ジエン系重合体(F')における、ブタジエン単位およびイソプレン単位以外の他の単量体単位の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。例えば、芳香族ビニル化合物単位が上記範囲以下であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にあり、また、後述する官能基による変性において、反応性が向上する傾向にある。
【0039】
未変性共役ジエン系重合体(F')の重量平均分子量(Mw)は1,000以上1,000,000未満であることが好ましい一態様であり、2,000以上500,000未満がより好ましく、3,000以上100,000未満がさらに好ましい。未変性共役ジエン系重合体(F')のMwが前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。
【0040】
未変性共役ジエン系重合体(F')のビニル含量は特に制限されないが、90モル%以下であることが好ましい一態様であり、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。主鎖(a)のビニル含量は、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましい。
【0041】
未変性共役ジエン系重合体(F')のビニル含量は目的に応じて設計することが可能であり、例えば、ビニル含量が50モル%未満であると、後述する共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)のガラス転移温度(Tg)が低くなり、得られる共役ジエン系グラフト重合体の流動性や低温特性が優れる傾向がある。また、50モル%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の反応性に優れる傾向にある。
【0042】
なお、未変性共役ジエン系重合体(F')のビニル含量は、未変性共役ジエン系重合体(F')を製造する際に使用する溶媒の種類、必要に応じて使用される極性化合物、重合温度などを制御することにより所望の値とすることができる。
【0043】
未変性共役ジエン系重合体(F')のガラス転移温度(Tg)は、共役ジエン単位のビニル含量、共役ジエン単位の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。
【0044】
未変性共役ジエン系重合体(F')の製造方法の一例である上記乳化重合法としては、公知または公知に準ずる方法を適用できる。例えば、所定量の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に分散媒中に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
【0045】
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及びロジン酸塩などが挙げられる。長鎖脂肪酸塩としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩またはナトリウム塩などが挙げられる。
【0046】
分散媒としては通常、水が使用される。重合時の安定性が阻害されない範囲で、分散媒はメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
【0047】
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
【0048】
得られる未変性共役ジエン系重合体(F')の分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0049】
乳化重合の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類などにより適宜設定できるが、通常0~100℃の範囲、好ましくは0~60℃の範囲である。重合様式は、連続重合、回分重合のいずれでもよい。
【0050】
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、上記未変性共役ジエン系重合体(F')を凝固させた後、分散媒を分離することによって重合体を回収する。次いで水洗、及び脱水後、乾燥することで、上記未変性共役ジエン系重合体(F')が得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展した未変性共役ジエン系重合体(F')として回収してもよい。
【0052】
未変性共役ジエン系重合体(F')の製造方法の一例である上記溶液重合法としては、公知または公知に準ずる方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、またはアニオン重合可能な活性金属もしくは活性金属化合物を開始剤として使用して、必要に応じて極性化合物の存在下で、共役ジエンを含む単量体を重合する。
【0053】
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0054】
上記開始剤としては、アニオン重合可能な活性金属または活性金属化合物が好ましく、アニオン重合可能な活性金属化合物がより好ましい。
【0055】
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
【0056】
アニオン重合可能な活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これら有機アルカリ金属化合物の中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。
【0057】
上記開始剤の使用量は、未変性共役ジエン系重合体(F')及び官能基変性共役ジエン系重合体(F)の溶融粘度、分子量などに応じて適宜設定できるが、共役ジエンを含む全単量体100質量部に対して、通常0.01~3質量部の量で使用される。
【0058】
有機アルカリ金属化合物を開始剤として用いる場合には、上記有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
【0059】
極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン単位のミクロ構造(ビニル含量)を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
【0060】
溶液重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
【0061】
上記溶液重合の重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで、未変性共役ジエン系重合体(F')を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記未変性共役ジエン系重合体(F')を単離できる。
【0062】
上記未変性共役ジエン系重合体(F')を官能基により変性することで、上記式(II)で示される官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)を製造する方法としては特に制限されないが、好ましい構造の官能基を導入する観点から、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合にメルカプト基(-SH)を有する化合物をラジカル付加反応させることにより、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法、未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合を白金化合物含有触媒および必要に応じて用いられる助触媒の存在下でヒドロシリル化することで、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法などが挙げられる。これらの製造方法の中でも、変性試薬、触媒の入手性や、製造コストの観点からは、メルカプト基(-SH)を有する化合物をラジカル付加反応させる方法が好ましく、得られる官能基変性共役ジエン系重合体(F)の安定性の観点からは、ヒドロシリル化によりアルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法が好ましい。
【0063】
上記未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合にメルカプト基(-SH)を有する化合物をラジカル付加反応させることにより、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法としては、下記式(IV)で示されるシラン化合物(IV)を未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合にラジカル付加反応する方法が好ましい。
【0064】
【化3】
(式(IV)中、R4は炭素数1~6の2価のアルキレン基を示し、R5、およびR6はそれぞれ独立に炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、または水素原子を示し、nは1~3の整数であり、nが2以上の場合、R5は同一でも異なっていてもよく、3-nが2以上の場合、R6は同一でも異なっていてもよい。)
【0065】
上記シラン化合物(IV)としては、例えば、メルカプトメチレンメチルジエトキシシラン、メルカプトメチレントリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメトキシジメチルシラン、2-メルカプトエチルエトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシエチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン、3-メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。これらシラン化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0066】
上記シラン化合物(IV)のメルカプト基(-SH)が、未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合にラジカル付加反応することにより、シラン化合物(IV)に由来する官能基、具体的には下記式(V)で示される部分構造を官能基として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)が得られる。
【0067】
【化4】
(式(V)中、R4、R5、R6、およびnの定義は式(IV)と同一である。)
【0068】
上記シラン化合物(IV)を、未変性共役ジエン系重合体(F')に付加させる方法は特に限定されず、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F')中にシラン化合物(IV)、さらに必要に応じてラジカル発生剤を加えて、有機溶媒の存在下または非存在下に加熱する方法を採用することができる。使用するラジカル発生剤には特に制限はなく、通常市販されている有機過酸化物、アゾ系化合物、過酸化水素等が使用できる。
【0069】
上記有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、25-ヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル及びその置換体、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタトルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシオクタノエート、t-ブチルパーオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレートなどが挙げられる。
【0070】
上記アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオンニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
上記ラジカル発生剤は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0071】
上記方法で使用される有機溶媒としては、一般的には炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。これら有機溶媒の中でも、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
上記有機溶媒は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0072】
さらに、上記方法により変性化合物を付加する反応を行う時には、副反応を抑制する観点等から老化防止剤を添加してもよい。
この時に用いる好ましい老化防止剤としては、例えば、2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(AO-40)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(AO-80)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox1520L)、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox1726)、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジt-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジt-ペンチルフェニルアクリレート(SumilizerGS)、2-tブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(SumilizerGM)、6-t-ブチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イルオキシ)プロピル]-2-メチルフェノール(SumilizerGP)、亜りん酸トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)(Irgafos168)、ジオクタデシル3,3'-ジチオビスプロピオネート、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(LA-77Y)、N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン(IrgastabFS042)、ビス(4-t-オクチルフェニル)アミン(Irganox5057)などが挙げられる。上記老化防止剤は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0073】
老化防止剤の添加量は、未変性共役ジエン系重合体(F')100質量部に対して0~10質量部が好ましく、0~5質量部がより好ましい。
【0074】
未変性共役ジエン系重合体(F')に上記シラン化合物(IV)を付加させる反応における温度は10~200℃が好ましく、50℃~180℃がより好ましい。また反応時間は1~200時間が好ましく、1~100時間がより好ましく、1~50時間がさらに好ましい。
【0075】
未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合を白金化合物含有触媒および必要に応じて用いられる助触媒の存在下でヒドロシリル化することで、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法としては、未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合を、白金化合物含有触媒の存在下、好ましくは白金化合物含有触媒および助触媒の存在下で、下記式(VI)で示されるシラン化合物(VI)によりヒドロシリル化する方法が好ましい。
【0076】
【化5】
(式(VI)中、R7、およびR8はそれぞれ独立に炭素数6~12のアリール基、または炭素数1~12のアルキル基を示し、nは1~3の整数であり、nが2以上の場合、R7は同一でも異なっていてもよく、3-nが2以上の場合、R8は同一でも異なっていてもよい。)
【0077】
上記シラン化合物(VI)としては、例えば、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシランなどが挙げられる。これらシラン化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0078】
上記シラン化合物(VI)により、未変性共役ジエン系重合体(F')に含まれる炭素-炭素不飽和結合がヒドロシリル化反応されることにより、シラン化合物(VI)に由来する官能基、具体的には下記式(VII)で示される部分構造を官能基として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)が得られる。
【0079】
【化6】
(式(VII)中、R7、R8、およびnの定義は式(IV)と同一である。)
【0080】
上記ヒドロシリル化反応に用いられる白金化合物含有触媒としては、特に限定されないが、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエンまたはキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等や、白金-炭素、白金-アルミナ、白金-シリカ等の担持触媒などが挙げられる。
ヒドロシリル化の際の選択性の面から、0価の白金錯体が好ましく、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエンまたはキシレン溶液がより好ましい。
【0081】
白金化合物含有触媒の使用量は特に限定されるものではないが、反応性や、生産性等の点から、上記シラン化合物(VI)1モルに対し、含有される白金原子が1×10-7~1×10-2モルとなる量が好ましく、1×10-7~1×10-3モルとなる量がより好ましい。
【0082】
上記反応における助触媒としては、無機酸のアンモニウム塩、酸アミド化合物およびカルボン酸から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0083】
無機酸のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸二水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジ亜リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウフッ化アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、pKaが2以上の無機酸のアンモニウム塩が好ましく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムがより好ましい。
【0084】
酸アミド化合物としては、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、アクリルアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、フタルアミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが挙げられる。
【0085】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、メトキシ酢酸、ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、乳酸、グリコール酸などが挙げられる。これらの中でも、ギ酸、酢酸、乳酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
【0086】
助触媒の使用量は特に限定されるものではないが、反応性、選択性、コスト等の観点から上記シラン化合物(VI)1モルに対して1×10-5~5×10-1モルが好ましく、1×10-4~5×10-1モルがより好ましい。
【0087】
なお、上記ヒドロシリル化反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。使用可能な溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いられても、2種以上混合して用いられてもよい。
【0088】
上記ヒドロシリル化反応における反応温度は特に限定されるものではなく、通常0℃以上の温度、必要に応じて加熱条件下で行うことができるが、0~200℃が好ましい。適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、このような観点から、反応温度は40~110℃がより好ましく、40~90℃がさらに好ましい。また、反応時間も特に限定されるものではなく、通常1~60時間程度であるが、1~30時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
【0089】
上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)において、上記式(V)または式(VII)で示される部分構造を有する官能基は1種単独で含まれていてもよく2種以上含まれていてもよい。したがって、官能基変性共役ジエン系重合体(F)は、上記シラン化合物(IV)およびシラン化合物(VI)からなる群から選ばれる1種の化合物により変性されたジエン系重合体であってもよく、また2種以上の化合物により変性されたジエン系重合体であってもよい。
【0090】
得られる共役ジエン系グラフト重合体の透明性、熱安定性,耐候性の観点から、上記式(II)中のZは、Si、Snであることが好ましく、Siであることがより好ましい。
【0091】
得られる共役ジエン系グラフト重合体の透明性、熱安定性,耐候性、後述するカップリング工程における反応性の観点から、上記式(II)中のVとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、およびエトキシ基が特に好ましい。
【0092】
上記式(II)中のnは上記式(1)を満たす整数であるが、後述するカップリング工程における反応性や、得られる共役ジエン系グラフト重合体の分岐点に結合する側鎖の本数の制御の観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましい
【0093】
官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)で示される部分の平均個数は、1~50個が好ましく、2~30個がより好ましく、3~20個がさらに好ましい。
【0094】
官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)中の官能基Vの平均個数は、2~150個が好ましく、4~90個がより好ましく、6~60個がさらに好ましい。
【0095】
官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)中の官能基Vの平均個数は、官能基変性共役ジエン系重合体(F)に含まれる官能基Vの官能基当量(g/eq)と標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を用いて下記式(3)より求める。
(官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)中の官能基Vの平均個数)=[(数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)×(共役ジエンおよび必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体単位の平均分子量)]/(官能基Vの官能基当量) (3)
【0096】
なお、官能基変性共役ジエン系重合体(F)に含まれる官能基Vの官能基当量は、官能基V1個あたりに結合している共役ジエンおよび必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体の質量を意味する。官能基の当量は、1H-NMRを用いて官能基由来のピークと重合体主鎖に由来するピークの面積比から算出する。なお、官能基V由来のピークとは、アルコキシ基および水酸基由来のピークを指す。
【0097】
未変性共役ジエン系重合体(F')と上記シラン化合物(IV)またはシラン化合物(VI)との混合割合は、例えば、官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子当たりの式(II)に含まれる官能基Vの平均個数が所望の値になるように適宜設定すればよいが、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F')と上記シラン化合物(IV)またはシラン化合物(VI)との質量比が0.3~100となるように混合すればよい。
【0098】
官能基変性共役ジエン系重合体(F)のMwおよびビニル含量の好適範囲は、未変性共役ジエン系重合体(F')の場合と同一である。
【0099】
上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)の38℃で測定した溶融粘度は、0.1~2,000Pa・sが好ましく、0.1~1500Pa・sがより好ましく、0.1~1000Pa・sがさらに好ましい。官能基変性共役ジエン系重合体(F)の溶融粘度が前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。なお、本発明において共役ジエン系グラフト重合体の溶融粘度は、38℃においてブルックフィールド型粘度計により測定した値である。
【0100】
工程(A-1)において、活性末端重合体(I)と上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)を反応させることで、上記式(II)で示される部分中の官能基Vと前記活性末端重合体(I)の置換反応が起こり、分岐点であるヘテロ原子Zに側鎖となる前記活性末端重合体(I)が結合した共役ジエン系グラフト重合体が形成される(以下、本反応をカップリング反応と称する)。該カップリング反応、および後述する不活性化工程において未反応であった官能基V(アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基)が共役ジエン系グラフト重合体に存在する場合には、官能基Vがそのまま残存するか、または加水分解されることで、後述する共役ジエン系グラフト重合体の分岐点に結合したアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基(c)が形成される。
【0101】
上述したような2種の重合体の反応により共役ジエン系グラフト重合体を製造する場合、非特許文献1に記載されるようなシリルクロリド基を反応性の官能基として有する重合体を原料の1つとして使用すると、副生成物としてハロゲン化物が生成する。このハロゲン化物に由来して、得られる共役ジエン系グラフト重合体の透明性、耐熱性、耐候性が低下する傾向にある。また、シリルクロリド基を反応性の官能基として有する重合体を合成するために使用するクロロシラン類は、非常に反応性が高く、また有害性も高いため、取り扱い性に問題がある。
【0102】
共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数Wは、上記カップリング反応における活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量の比により、所望の範囲に調整することができる。例えば、(活性末端重合体(I)の仕込み量(モル数))/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数))=4/1の場合、側鎖(b)の平均本数Wは4本となる。ただし、Wの上限は、官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりが有する官能基Vの個数である。
【0103】
(活性末端重合体(I)の仕込み量)/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量)のモル比は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数Wが所望の値となるように適宜設定すればよいが、例えば、1~200であることが好ましく、2~100であることがより好ましく、3~50であることがさらに好ましい。(活性末端重合体(I)の仕込み量)/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量)のモル比が1より小さいと、導入できる側鎖の本数が少なくなり、200より大きいと、後述するカップリング率が低下する傾向にある。
【0104】
上記カップリング反応は、通常、0~100℃の温度範囲で、0.5~50時間行う。官能基変性共役ジエン系重合体(F)は希釈して用いてもよく、希釈溶媒としては、活性末端に対して不活性で反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が挙げられる。
また、カップリング反応の際に添加剤としてルイス塩基を加えてもよい。ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン類などが挙げられる。これらルイス塩基は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0105】
上記カップリング反応においては、活性末端重合体(I)を合成した反応容器に上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)を添加してもよいし、逆に上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)に対して活性末端重合体(I)を添加してもよい。また、上述のように、活性末端重合体(I)、上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)のいずれも、必要に応じて溶媒で希釈して用いてもよい。また、上記活性末端重合体(I)は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよく、上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)も、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0106】
上記カップリング反応におけるカップリング率は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。上記カップリング率が50%未満では、得られる共役ジエン系グラフト重合体の力学特性が低下するため好ましくない。カップリング率は、GPC測定で得られたカップリング未反応の活性末端重合体(I)に由来する成分のピーク面積と全てのピーク面積の総和を用いて下記式(4)より求める。
(カップリング率(%))=[{(全てのピーク面積の総和)-(活性末端重合体(I)に由来する成分のピーク面積)}/(全てのピーク面積の総和)]×100 (4)
【0107】
カップリング率は官能基変性共役ジエン系重合体(F)の添加量を多くしたり、ルイス塩基の添加量を多くしたり、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたりすることによって高めることができる。カップリング反応は、カップリング率が所望の範囲になるまで行うことができる。その後、メタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を添加することで、カップリング反応を停止できる。
【0108】
上記分岐点に直接結合し得る、アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基(c)の個数は、上記カップリング反応における活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量のモル比や、後述するアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基(未反応の官能基V)の少なくとも一部を不活性化する工程における試薬の使用量や反応時間、および必要に応じて使用される極性化合物の種類や添加量により、所望の範囲に調整することができる。
【0109】
[工程(A-2)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、上記分岐点に直接結合する官能基(c)の個数を所望の範囲に調整するために、工程(A-1)の後に、
(A-2)前記共役ジエン系グラフト重合体中のアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基(未反応で存在する官能基V)の少なくとも一部を不活性化する工程(以下、不活性化工程と称する);
を含むことが好ましい一態様である。
回収工程(B)で加えられる水や酸により、得られる共役ジエン系グラフト重合体に含まれるアルコキシ基が反応して水酸基を生成し比較的多くの水酸基が含まれるようになると、これら多量の水酸基同士が縮合反応を起こしやすくなると考えられるため、不活性化工程(A-2)は、回収工程(B)よりも前に行うことが好ましい。
【0110】
アルコキシ基および水酸基を不活性化するために用いる試薬(以下、不活性化試薬と称することがある)としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム類;メチルナトリウム、エチルナトリウム、n-プロピルナトリウム、イソプロピルナトリウム、n-ブチルナトリウム、sec-ブチルナトリウム、t-ブチルナトリウム等のアルキルナトリウム類;メチルカリウム、エチルカリウム、n-プロピルカリウム、イソプロピルカリウム、n-ブチルカリウム、sec-ブチルカリウム、t-ブチルカリウム等のアルキルカリウム類;メチルマグネシウム臭化物、エチルマグネシウム臭化物、t-ブチルマグネシウム臭化物、t-ブチルマグネシウム塩化物、sec-ブチルマグネシウムヨウ化物等のアルキルマグネシウムハロゲン化物類;ジメチル銅リチウム、ジエチル銅リチウム、メチルエチル銅リチウム、メチルn-プロピル銅リチウム、エチルn-ブチル銅リチウム等のジアルキル銅リチウム類;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジイソエチルアミド、リチウムジt-ブチルアミド等のリチウムアミド類;等が挙げられる。これらの中でも、不活性化反応を速やかに進行させるには立体障害が小さいことが望ましいため、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、メチルリチウム、メチルマグネシウム臭化物、ジメチル銅リチウムが好ましい。
【0111】
工程(A-2)における不活性化試薬の使用量/工程(A-1)で得られた共役ジエン系グラフト重合体中に含まれる基Vに由来するアルコキシ基および水酸基の合計量のモル比は、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。不活性化試薬の量が少ない場合、上記分岐点に直接結合し得る官能基(c)の個数を所望の範囲に調整することができず、また、不活性化試薬の量が多い場合、経済性が悪化する傾向にある。
【0112】
上記工程(A-2)の不活性化反応は、通常、0~100℃の温度範囲で、0.1~50時間行う。不活性化試薬は希釈して用いてもよく、希釈溶媒としては、不活性化試薬に対して不活性で反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が挙げられる。また、上記不活性化反応の際に添加剤としてルイス塩基を加えてもよく、ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン類などが挙げられる。これらルイス塩基は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
【0113】
上記不活性化反応は、上記分岐点に直接結合し得る官能基(c)の個数が所望の範囲になるまで行うことができる。その後、メタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を添加することで、不活性化試薬を失活できる。
【0114】
[工程(B)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、
(B)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程;
を含む。
【0115】
工程(B)では、得られた本発明の共役ジエン系グラフト重合体を回収する。共役ジエン系グラフト重合体の回収方法は特に制限はないが、共役ジエン系グラフト重合体を含む溶液を工程(A-1)または工程(A-2)で得ている場合は、例えば、得られた溶液をメタノール等の貧溶媒に注いで、共役ジエン系グラフト重合体を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記共役ジエン系グラフト重合体を単離することにより回収できる。
【0116】
本発明の上記製造方法により得られる共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)に、分岐点である価数が3以上のヘテロ原子Zを介して、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)が結合した共役ジエン系グラフト重合体である。
【0117】
<主鎖(a)>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)を有する。なお、本発明の共役ジエン系グラフト重合体に含まれる主鎖とは、官能基変性共役ジエン系重合体(F)における主鎖と同様、主鎖を構成する共役ジエン単位を含む全単量体単位に由来する部分全体を指す。
【0118】
主鎖(a)は、その重合体鎖骨格中に、共役ジエン、芳香族ビニル化合物などのビニル単量体に由来するビニル単量体単位以外のユニット(例えば、カップリング剤の残渣に由来するSi原子やN原子を有するユニット)を含まないことが好ましい。主鎖骨格中に前記ビニル単量体単位以外のユニットが含まれると、後述する分岐点であるヘテロ原子と炭素の結合が切断されるような条件下、又はせん断や熱によって主鎖骨格が開裂するため、物性が低下しやすい傾向にある。なお、主鎖となる重合体鎖末端には、単量体単位以外の基を有していてもよい。
【0119】
上記主鎖(a)の重合体を構成する共役ジエン単位となる共役ジエンの具体例、好適例、およびその好適含有量、ならびに、その重合体を構成する単量体単位となる共役ジエン以外の他の単量体(例えば芳香族ビニル化合物)の具体例、好適例、好適含有量、重量平均分子量(Mw)、ビニル含量、Tgの好適態様等の説明は、未変性共役ジエン系重合体(F')に関する説明と同様である。
【0120】
<側鎖(b)>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)を有する。
【0121】
上記側鎖(b)の重合体を構成する共役ジエン単位となる共役ジエンの具体例、好適例、およびその好適含有量、ならびに、その重合体を構成する単量体単位となる共役ジエン以外の他の単量体(芳香族ビニル化合物)の具体例、好適例、好適含有量、重量平均分子量(Mw)、ビニル含量、Tgの好適態様等の説明は、上記活性末端重合体(I)に関する説明と同様である。
【0122】
側鎖(b)は、その重合体鎖骨格中に、共役ジエン、芳香族ビニル化合物などのビニル単量体に由来するビニル単量体単位以外のユニット(例えば、カップリング剤の残渣に由来するSi原子やN原子を有するユニット)を含まないことが好ましい。側鎖(b)の重合体鎖骨格中に前記ビニル単量体以外のユニットが含まれると、後述する分岐点であるヘテロ原子と炭素の結合が切断されるような条件下、またはせん断や熱によって側鎖(b)の重合体鎖骨格が開裂するため、物性が低下しやすい傾向にある。なお、側鎖となる重合体鎖末端には、単量体単位以外の基を有していてもよい。
【0123】
<共役ジエン系グラフト重合体>
本発明で得られる共役ジエン系グラフト重合体は、主鎖(a)に、分岐点である価数が3以上のヘテロ原子1つを介して、側鎖(b)が結合している。
【0124】
前記主鎖(a)は、直接または連結鎖を通じて分岐点と結合し、前記側鎖(b)は直接分岐点に結合している。ここで直接分岐点に結合とは、主鎖を構成する単量体単位に由来する部分に、分岐点であるヘテロ原子が直接結合していることを意味する。連結鎖を通じて分岐点と結合とは、主鎖を構成する単量体単位に由来する部分に、連結鎖となる一方の末端が結合し、その連結鎖の他方の末端に、分岐点であるヘテロ原子が直接結合していることを意味する。例えば、1,2-結合をしたブタジエン単位に分岐点が結合する場合、下記式(III-1)で示される場合が、主鎖に直接分岐点と結合している場合であり、下記式(III-2)で示される場合が、主鎖に連結鎖を通じて分岐点と結合している場合である。
【0125】
【化7】
【0126】
上記式(III-1)および(III-2)中、Z0は分岐点となるヘテロ原子であり、R2aは連結鎖である。R2aは2価の有機基であるが、ヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基が好ましい。
【0127】
前記主鎖(a)と分岐点との結合形態を含む主鎖からの分岐部分を化学式で示すと、下記式(III-3)のように主鎖(a)に直接分岐点が結合した形態を含む分岐部分、下記式(III-4)のように連結鎖を通じて分岐点と結合している形態を含む分岐部分がある。これらの分岐部分の中でも、式(III-4)のように連結鎖を通じて分岐点と結合している形態を含む分岐構造が望ましい。
【0128】
【化8】
【0129】
上記式(III-3)および(III-4)において、波線部分は主鎖(a)、Z1は分岐点、Pは側鎖(b)、R2bは連結鎖である。また、Vは、後述する本発明の共役ジエン系グラフト重合体に含まれていてもよい官能基(c)である。
【0130】
式(III-3)および(III-4)中、Z1はSi、Sn、Ge、Pb、P、B、またはAlであり、R2bはヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~12のアルキレン基を示し、R3は炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、または水素原子を示し、Pは共役ジエン単位および芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体鎖を示し、Vはアルコキシ基または水酸基を示す。Nは前記Zの価数を示し、mおよびnは各々独立して下記式(5)を満たす整数であり;
0≦m≦N-1, 0≦n≦N-1 (5)
mが2以上の場合、Pは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、Vは同一でも異なっていてもよく、N-m-n-1が2以上の場合、R3は同一でも異なっていてもよく、側鎖が主鎖に対し、複数含まれる場合には、Z1は同一でも異なっていてもよい。ただし、本発明の共役ジエン系グラフト重合体に含まれる少なくとも1つの分岐点(Z1)においてはP(側鎖(b))が結合している必要がある。この場合、共役ジエン系グラフト重合体は、後述する式(2)の関係を満たす。また、本発明の共役ジエン系グラフト重合体では、主鎖1本に対して1本以上の側鎖があればよいため、側鎖が結合していないZ1(mが0であるZ1)が含まれ得るが、その場合もZ1を分岐点と定義する。
【0131】
上記分岐点はヘテロ原子1つからなり、そのヘテロ原子は価数が3以上のヘテロ原子である。分岐点となる価数が3以上のヘテロ原子は、Si、Sn、Ge、Pb、P、B、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも1つである。これらヘテロ原子の中でも、Si、Snが好ましく、Siがより好ましい。
【0132】
上記式(III-3)および(III-4)中のR3は炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、または水素原子を示す。これらの中でも、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、n-ブチル基、sec-ブチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、エチル基、メチル基がより好ましい。R3は上記群より選ばれる1種単独でもよく、2種以上が含まれていてもよい。R3は1種単独の基であってもよく、2種以上の複数の基であってもよい。
【0133】
2bとなり得るヘテロ原子を有する炭素数1~12のアルキレン基としては、Sを有する炭素数1~12のアルキレン基が好ましく、SR2b'(R2b'は炭素数1~12のアルキレン基を示す)がより好ましい。
【0134】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体には、分岐点の少なくとも1つには、アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基(c)が結合していてもよい。したがって、上記式(III-3)および(III-4)には、基V(官能基(c))が含まれていてもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。上記官能基(c)の中では、極性材料との親和性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、および水酸基が好ましい。官能基(c)は1種単独の基であってもよく、2種以上の複数の基であってもよい。
【0135】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体では、そのグラフト重合体に含まれる分岐点であるヘテロ原子に着目した場合、そのヘテロ原子の価数をNとし、1つの分岐点に対して直接結合する側鎖(b)の平均本数をBとした場合に、下記式(2)の関係を満たしていることになる。この条件を満たすことで、分岐点は、直接または連結鎖を通じて、主鎖(a)に結合し、本発明の共役ジエン系グラフト重合体には、少なくとも側鎖(b)が含まれることになる。
N-1≧B+C, B>0 (2)
【0136】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、上述のとおり、上記分岐点にアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基(c)が結合していてもよい。その場合、1つの分岐点に結合する前記官能基(c)の平均個数をCとした場合、上記ヘテロ原子の価数Nおよび上記側鎖(b)の平均本数Bとの間で、下記式(2')の関係を満たすことが好ましい。
N-1≧B+C, B>0, C>0 (2')
【0137】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する官能基(c)の平均個数Xは、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。また上記Xは0であってもよい。
【0138】
本発明において、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する官能基(c)の平均個数Xは、共役ジエン系グラフト重合体に含まれる分岐点1つあたりの官能基(c)の平均個数と共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの分岐点の平均個数Yを用いて下記式(6)より求める。
(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する官能基(c)の平均個数X)=(共役ジエン系グラフト重合体に含まれる分岐点1つあたりの官能基(c)の平均個数)×(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの分岐点の平均個数Y) (6)
【0139】
なお、共役ジエン系グラフト重合体に含まれる分岐点1つあたりの官能基(c)の平均個数は、例えば、ZがSiの場合には、共役ジエン系グラフト重合体の29Si-NMRを測定した結果から求める。具体的には、官能基(c)が1個結合しているSi、官能基(c)が2個結合しているSiなどの積分値に官能基の個数を乗じたものを合計し、積分値の単純合計と比較することにより算出する。ZがSi以外のヘテロ原子の場合も同様にして共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの該ヘテロ原子の平均個数を求めることができる。
【0140】
本発明において、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの分岐点の平均個数Yは、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)により測定した共役ジエン系グラフト重合体中の特定のヘテロ原子(Si、Sn、Ge、Pb、P、B、およびAl)の含量(wt%)と標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を用いて下記式(7)より求める。
(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの分岐点の平均個数Y)=[(ヘテロ原子の含量(wt%))/100]×[(数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)×(共役ジエンおよび必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体単位の平均分子量)]/(ヘテロ原子の原子量) (7)
【0141】
上記Xが10を超えると、共役ジエン系グラフト重合体の熱安定性,耐候性が低下する傾向がある。
【0142】
透明性、熱安定性,耐候性により優れる観点からは、Xは0.01以上9.9以下の範囲であることが好ましく、0.02以上9以下の範囲であることがより好ましい。
【0143】
なお、上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の本数および官能基(c)の個数は、上記製造方法により共役ジエン系グラフト重合体を製造する際の工程(A-1)における上記活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量のモル比や、工程(A-2)におけるアルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基(未反応で存在する官能基V)の少なくとも一部を不活性化するために使用する試薬の使用量や反応時間、および必要に応じて使用される極性化合物の種類や添加量により、所望の範囲に調整することができる。
【0144】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数をW、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの分岐点の平均個数をYとしたとき、(W/Y)、すなわち1つの分岐点に対して結合する側鎖(b)の平均本数が0.5本以上であることが好ましく、0.6本以上であることがより好ましく、0.8本以上であることがさらに好ましい。
【0145】
本発明において、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数Wは、上記製造方法の工程(A-1)における、共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)となる活性末端重合体(I)の活性末端あたりの仕込み量(モル数)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数)を用いて下記式(8)より求める。
(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数W)=(側鎖(b)となる活性末端重合体(I)の活性末端あたりの仕込み量(モル数))/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数)) (8)
上記(W/Y)が1以下であると、共役ジエン系グラフト重合体の流動性が低下し、加工性と力学特性のバランスに劣る傾向がある。
【0146】
共役ジエン系グラフト重合体の分岐の度合いは、共役ジエン系グラフト重合体の絶対法による重量平均分子量(Mw)に対して、その回転半径(R)を両対数プロットしたときの傾き(αs)、または共役ジエン系グラフト重合体の絶対法による重量平均分子量(Mw)に対して、その固有粘度(η)を両対数プロットしたときの傾き(αη)から判断することができる。通常の直鎖状重合体のランダムコイル鎖は、αs、αηのいずれも0.6~0.8程度の値を示し、0.6未満であると分岐鎖の存在が示唆される。本発明の共役ジエン系グラフト重合体のαsまたはαηの値は、0.6未満であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましく、0.50以下であることがさらに好ましい。なお、共役ジエン系グラフト重合体の重量平均分子量(Mw)と回転半径(R)または固有粘度(η)の両対数プロットは、例えばSEC-MALS-VISCO法により取得することができる。SEC-MALS-VISCO法は、分子サイズ(流体力学的体積)の違いにより高分子鎖の分離を行う液体クロマトグラフィー(SEC)の一種であり、示差屈折率計(RI)、多角光散乱検出器(MALS)、粘度検出器(VISCO)を組み合わせることで、SECでサイズ分別された高分子溶液の分子量ごとの回転半径、固有粘度を算出できる。本発明の共役ジエン系グラフト重合体のαsまたはαηの値が上記の範囲であると、共役ジエン系グラフト重合体の流動性が向上し、加工性と力学特性のバランスに優れる傾向にある。
【0147】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数Wが1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。上記側鎖(b)の平均本数Wは、上述した方法により算出される。上記側鎖(b)の平均本数Wが1未満であると、共役ジエン系グラフト重合体の流動性が低下し、加工性と力学特性のバランスに劣る傾向がある。
【0148】
なお、上記側鎖(b)の平均本数Wは、上記製造方法の工程(A-1)における活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量の比により、所望の範囲に調整することができる。例えば、(活性末端重合体(I)の仕込み量(モル数))/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数))=4/1の場合、側鎖(b)の平均本数Wは4本となる。ただし、Wの上限は、官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりが有する官能基Vの個数である。
【0149】
共役ジエン系グラフト重合体に含まれる主鎖(a)となる重合体と側鎖(b)となる重合体の組合せは特に制限されず、同一でも異なっていてもよく、目的に応じて設計することが可能である。主鎖(a)となる重合体と側鎖(b)となる重合体が異なるとは、以下(i)~(iv)からなる群より選ばれる少なくとも1つが異なることを意味する。
(i)主鎖(a)となる重合体の分子量が、側鎖(b)となる重合体の分子量と異なる。
(ii)主鎖(a)となる重合体の単量体単位の種類または種類の組み合わせが、側鎖(b)となる重合体の単量体単位の種類または種類の組み合わせと異なる。
(iii)主鎖(a)および側鎖(b)が、それぞれ複数の同一種の単量体単位を含んでいる場合、主鎖(a)となる重合体の単量体単位組成比が側鎖(b)となる重合体の単量体単位組成比と異なる。
(iv)主鎖(a)および側鎖(b)が、それぞれ共役ジエン単位を含んでいる場合、主鎖(a)となる重合体の共役ジエン単位のビニル含量が、側鎖(b)となる重合体の共役ジエン単位のビニル含量と異なる。
【0150】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、50質量%以上がブタジエンおよびイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位であることが好ましい一態様である。ブタジエン単位およびイソプレン単位の合計含有量は、共役ジエン系グラフト重合体の全単量体単位に対して60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることがさらに好ましい。
【0151】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体における、ブタジエン単位およびイソプレン単位以外の他の単量体単位の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。例えば、芳香族ビニル化合物単位が上記範囲以下であると、本発明の共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にある。
【0152】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の重量平均分子量(Mw)は5,000以上1,000,000以下であることが好ましい一態様であり、30,000以上1,000,000以下が好ましく、100,000超1,000,000以下がより好ましい。共役ジエン系グラフト重合体のMwが前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。また、共役ジエン系グラフト重合体を含む重合体組成物の加工性が向上する傾向にある。
【0153】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.0~20.0が好ましく、1.0~10.0がより好ましく、1.0~5.0がさらに好ましく、1.0~2.0が特に好ましい。Mw/Mnが前記範囲内であると、共役ジエン系グラフト重合体の粘度のばらつきが小さく、より好ましい。なお、本発明において、Mnは数平均分子量を意味し、MnはGPCの測定から求めた標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を意味する。
【0154】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の38℃で測定した溶融粘度は、0.1~2,000Pa・sが好ましく、0.1~1500Pa・sがより好ましく、0.1~1000Pa・sがさらに好ましい。共役ジエン系グラフト重合体の溶融粘度が前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。
【0155】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量は特に制限されないが、90モル%以下であることが好ましい一態様であり、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量は、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましい。
【0156】
共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量は目的に応じて設計することが可能であり、例えば、ビニル含量が50モル%未満であると、後述する共役ジエン系グラフト重合体のガラス転移温度(Tg)が低くなり、共役ジエン系グラフト重合体の流動性や低温特性が優れる傾向がある。また、50モル%以上であると、共役ジエン系グラフト重合体の反応性に優れる傾向にある。
【0157】
共役ジエン系グラフト重合体のガラス転移温度(Tg)は、ブタジエン単位、イソプレン単位およびブタジエン単位、イソプレン単位以外の共役ジエン単位のビニル含量、共役ジエン単位の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。
【0158】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体における主鎖と側鎖の質量比は、10/90~90/10の範囲が好ましく、15/85~80/20の範囲がより好ましく、20/80~70/30の範囲がさらに好ましい。主鎖と側鎖の質量比が上記範囲であると、共役ジエン系グラフト重合体を含む重合体組成物の加工性が向上する傾向にある。
【0159】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、その製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量が、金属換算で0~200ppmの範囲にあることが好ましい。例えば、共役ジエン系グラフト重合体を製造するための重合触媒として、後述するような有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属を用いた場合には、触媒残渣量の基準となる金属は、リチウム等のアルカリ金属になる。触媒残渣量が上記範囲にあることにより、加工等する際にタックが低下せず、また本発明の共役ジエン系グラフト重合体の耐熱性が向上する。共役ジエン系グラフト重合体の製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量としては、金属換算で、より好ましくは0~150ppm、さらに好ましくは0~100ppmである。なお、触媒残渣量は、例えば誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)や偏光ゼーマン原子吸光分光光度計を用いることにより測定できる。
【0160】
共役ジエン系グラフト重合体の触媒残渣量をこのような特定の量とする方法としては、共役ジエン系グラフト重合体を精製し、触媒残渣を十分に除去する方法などが挙げられる。精製する方法としては、水若しくは温水、またはメタノール、アセトンなどに代表される有機溶媒若しくは超臨界流体二酸化炭素による洗浄が好ましい。洗浄回数としては、経済的な観点から1~20回が好ましく、1~10回がより好ましい。また、洗浄温度としては、20~100℃が好ましく、40~90℃がより好ましい。また重合反応前に、重合の阻害を行うような不純物を蒸留や吸着剤により除去し、単量体の純度を高めた後に重合を行うことによっても、必要な重合触媒量が少なくてすむため、触媒残渣量を低減することができる。
【0161】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、ハロゲン含有量が1000ppm以下であることが好ましい。例えば、共役ジエン系グラフト重合体を製造するための官能基変性共役ジエン系重合体(F)として、シリルクロリド変性共役ジエン系重合体を用いた場合には、基準となるハロゲンは塩素となる。ハロゲン含有量が上記範囲にあることにより、透明性、耐熱性、耐候性が良好となる傾向がある。共役ジエン系グラフト重合体のハロゲン含有量としては、より好ましくは0ppm以上1000ppm以下、さらに好ましくは0ppm以上500ppm以下、特に好ましくは0ppm以上100ppm以下である。なお、ハロゲン含有量は、例えば燃焼イオンクロマトグラフィーを用いることにより測定できる。
【0162】
共役ジエン系グラフト重合体のハロゲン含有量をこのような特定の量とする方法としては、共役ジエン系グラフト重合体を製造するための原料である官能基変性共役ジエン系重合体(F)として、副生成物としてハロゲン化物が生成しないアルコキシシラン変性共役ジエン系重合体を用いる方法が挙げられる。
【0163】
[重合体組成物]
本発明の重合体組成物は、本発明の共役ジエン系グラフト重合体(以下共役ジエン系グラフト重合体(α)とも称する。)を含む。また上記重合体組成物は、さらに共役ジエン系グラフト重合体(α)以外の他の重合体(β)を含んでもよい。他の重合体(β)は、熱可塑性重合体(β1)であっても、硬化性重合体(β2)であってもよい。
【0164】
上記熱可塑性重合体(β1)としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エステル重合体又は共重合体などのアクリル系樹脂;ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;スチレン-メタクリル酸メチル共重合体;スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0165】
硬化性重合体(β2)としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、エステル(メタ)アクリレート樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、イミド樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、アリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂が挙げられる。これらの中でも、入手性及び硬化物の基本物性の観点や、また、気泡の抜け性、得られる硬化物の靱性により一層優れる重合体組成物が得られるなどの観点から、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、中でも、エポキシ樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。硬化性重合体(β2)は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0166】
上記重合体組成物に、共役ジエン系グラフト重合体(α)と他の重合体(β)が含まれる場合、共役ジエン系グラフト重合体(α)と他の重合体(β)との質量比(α)/(β)が、1/99~99/1であることが好ましい。
【0167】
また、本発明の重合体組成物には、本発明の効果を損なわない程度に、種々の添加剤を添加してもよい。例えば、他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、かかる添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、クレーなどの補強剤又は充填剤、プロセスオイル、ポリエチレングリコール、グリセリン、フタル酸エステルなどの可塑剤を添加剤として用いることができる。また、その他の添加剤として、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、滑剤、界面活性剤などが挙げられる。さらに、該添加剤として発泡剤が挙げられ、発泡剤と熱可塑性重合体(β1)を含む重合体組成物からは発泡体を作製することが可能である。
例えば、他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、かかる添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、公知のゴム、熱可塑性エラストマー、コア-シェル粒子等の衝撃改質剤、充填剤(シリカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機粒子など)、難燃剤、消泡剤、顔料、染料、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、離型剤などが挙げられる。
【0168】
本発明の重合体組成物は、共役ジエン系グラフト重合体(α)と他の重合体(β)などの各成分の組成比等に応じ、通常の高分子物質の混合方法により調製できる。
【0169】
他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、例えば、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混合装置により重合体組成物が作製できる。特に本発明においては、これら混合装置を用いて、溶融混練する方法が好ましい一態様である。
【0170】
他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、例えばミキサーなどで十分混合し、次いでミキシングロール、押出し機等によって溶融混練したあと、冷却、粉砕する方法により重合体組成物は作製できる。
【0171】
本発明の重合体組成物は、従来から知られている各種の成形法により、成形品とすることが可能である。
【0172】
他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、重合体組成物を、例えば押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、カレンダー成形等により成形することにより、成形品が作製できる。これら方法によって各種形状の成形品、シート、フィルムなどが得られる。また、メルトブロー法、スパンボンド法等の方法により、不織布、繊維状物となった成形品を作製することもできる。
【0173】
他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、重合体組成物を、例えば、トランスファー成形法により、熱により硬化した成形品が作製できる。硬化性重合体(β2)を重合体組成物が含む場合のその他の成形方法としては、例えば、インジェクション成形法、圧縮成形法が挙げられる。
【0174】
他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、重合体組成物から得られる成形品の用途としては、例えば、バンパー、インパネなどの自動車用内外装品、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用のハウジング材、コネクターなどの電気・電子部品、電線ケーブル用素材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷凍食品容器等の食品包装材若しくは食品容器、工業資材等の包装材料、スポーツシューズ素材などのスポーツ用品、布帛若しくは皮革製品、玩具、サンダルなどの日用雑貨、各種フィルム、シート、成形品のラミネート材、粘・接着剤、紙おむつなどに用いられる伸縮材料、ホース、チューブ、ベルト等の各種ゴム製品、医療用品などが挙げられる。
【0175】
他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、重合体組成物、その硬化物又は成形品の硬化物の用途としては、例えば、繊維補強複合材用接着剤(コンクリート用繊維補強複合材料用接着剤、自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置用繊維補強複合材料用接着剤、各種スポーツ用品用繊維補強複合材料用接着剤等)、組み立て用接着剤(自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置における部品組み立て用接着剤等)などの各種接着剤;上下水道用防食・防水塗料、金属用防食塗料などの各種塗料;建築土木用塗装プライマー、自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置用の塗装プライマーなどの各種塗装プライマー;金属用ライニング材、コンクリート用ライニング材、タンク類用ライニング材などの各種ライニング材;コンクリート用亀裂補修材などの各種補修材;プリント配線基板、絶縁ボード、半導体封止材、パッケージ材などの各種電気電子部品などが挙げられる。
【実施例
【0176】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において共役ジエン系グラフト重合体の物性は次の方法により評価した。
【0177】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、共役ジエン系グラフト重合体、およびその製造の各段階における重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)を標準ポリスチレン換算で求めた。
装置:東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8220」
分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel SuperMultiporeHZ-M(カラム径=4.6mm、カラム長=15cm)」(2本を直列に繋いで使用)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
注入量:10μl
濃度:1mg/1cc(共役ジエン系グラフト重合体/THF)
【0178】
(2)ビニル含量、スチレン単位含有量
1H-NMRによって、共役ジエン系グラフト重合体、およびその製造の各段階における重合体のビニル含量、およびスチレン単位含有量を算出した。得られたスペクトルのビニル化された共役ジエン単位由来の二重結合のピークと、ビニル化されていない共役ジエン単位由来の二重結合のピークとの面積比からビニル含量を算出し、スチレン単位に由来する芳香環のピークと、共役ジエン単位由来の二重結合のピークとの面積比からスチレン単位含有量を算出した。
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置 「JNM-ECX400」
溶媒:重クロロホルム
測定温度:50℃
積算回数:1024回
【0179】
(3)重合体1分子あたりのSi原子(分岐点)の平均個数Y
共役ジエン系グラフト重合体、および官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりのSi原子(分岐点)の平均個数Yは、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)により測定した重合体のSi含量(質量%)と標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を用いて下式より求める。
(重合体1分子あたりのSi原子の平均個数)=[(Si含量(質量%))/100]×[(数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)×(共役ジエンおよび必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体単位の平均分子量)]/Siの原子量
実施例15に関しては、同様の手法により重合体1分子あたりのB原子(分岐点)の平均個数Yを求めた。
【0180】
(4)共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数W
共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数Wは、上述したカップリング工程における、共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)の構成要素となる活性末端重合体(I)の活性末端あたりの仕込み量(モル数)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数)を用いて下式より求める。
(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数W)=(側鎖(b)の構成要素となる活性末端重合体(I)の活性末端あたりの仕込み量(モル数))/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数))
【0181】
(5)共役ジエン系グラフト重合体に含まれる1つのSi原子(分岐点)に対する側鎖(b)の平均本数(W/Y)
共役ジエン系グラフト重合体に含まれる1つのSi原子(分岐点)に対する側鎖(b)の平均本数(W/Y)は、上記共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数Wと上記共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりのSi原子の平均個数Yを用いて下式より求める。
(共役ジエン系グラフト重合体に含まれるSi原子あたりの側鎖(b)の平均本数(W/Y))=(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数W)/(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりのSi原子の平均個数Y)
実施例15に関しては、上記共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数Wと上記共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりのB原子の平均個数Yを用いて共役ジエン系グラフト重合体に含まれるB原子(分岐点)あたりの側鎖(b)の平均本数(W/Y)を求めた。
【0182】
(6)カップリング率
共役ジエン系グラフト重合体のカップリング率は、上記GPC測定で得られたカップリング未反応のポリマー成分のピーク面積と全てのピーク面積の総和を用いて下式より求める。
(カップリング率(%))=[{((全てのピーク面積の総和)-(活性末端重合体(I)に由来する成分のピーク面積)}/(全てのピーク面積の総和)]×100
【0183】
(7)塩素の含有量
自動燃焼イオンクロマトグラフィーによって、共役ジエン系グラフト重合体に含まれる塩素の含有量を算出した。
<燃焼装置>
・装置:株式会社三菱化学アナリテック製自動試料燃焼装置 「AQF-2100H」
・燃焼温度:1000℃
・吸収液:イオン交換水
<イオンクロマトグラフィー>
・装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 イオンクロマトグラフ「ICS-2100」
・分離カラム:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 「IonPac AS20」
・溶離液:KOH水溶液
・カラム温度:40℃
【0184】
(8)透明性
共役ジエン系グラフト重合体の透明性は、曇り度(HAZE)により評価した。共役ジエン系グラフト重合体を重合体の濃度が30wt%となるようにシクロヘキサンに溶解し、光路長10mmの液体用セルを用いて、日本電色工業株式会社製分光ヘーズメーター 「SH7000」を用いて曇り度(HAZE)を測定し、以下の指標で透明性を評価した。
A:曇り度(HAZE)が80%未満
B:曇り度(HAZE)が80%以上
【0185】
(9)耐熱性
共役ジエン系グラフト重合体の熱安定性は、目視による加熱時の外観変化により評価した。共役ジエン系グラフト重合体をスライドガラスに塗工し、大気下において120℃、または100℃にて12h加熱した後の外観より、以下の指標で耐熱性を評価した。
A:外観変化無し
B:ゲル化、または黄変
【0186】
[実施例1]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1580gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)56gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、テトラヒドロフラン2.9gと、ブタジエン1250gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.3gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F'-1)を得た。
【0187】
(工程(2))
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F'-1)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。t-ブチルパーオキシピバレート0.9gと3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン51gを添加し、80℃で8時間反応させて、官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の重量平均分子量は26,000、ビニル含量は30モル%、スチレン単位含有量は0質量%、重合体1分子あたりのSi原子の平均個数は4個であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)にシクロヘキサン1750gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の希釈溶液を得た。
【0188】
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン700gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)78gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン340gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-1)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の側鎖(b)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-1)の重量平均分子量は5,000、ビニル含量は10モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
【0189】
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-1)を含む溶液に、テトラヒドロフラン7.0gおよび工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の希釈溶液1480gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)190gを添加し6時間反応させて残存するアルコキシ基の一部を封止した。その後メタノール21gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
【0190】
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-1)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の重量平均分子量は46,000、Mw/Mnは1.5、スチレン単位含有量は0質量%、カップリング率は95%、重合体1分子あたりのSi原子(分岐点)の平均個数は4個、重合体一分子あたりの側鎖(b)の平均本数は4本、Si原子(分岐点)あたりの側鎖(b)の平均本数は1本、塩素の含有量は3ppmであった。実施例1において使用した各試薬の種類、量を表1に、得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の分子仕様、物性を表3に示す。
【0191】
[実施例2~13]
工程(1)~(6)で使用する各試薬の種類、量を表1および2に記載されるように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法によって、共役ジエン系グラフト重合体(G-2)~(G-13)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-2)~(G-13)の分子仕様、物性を表3および4に示す。
【0192】
[実施例14]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1580gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)56gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、テトラヒドロフラン2.9gと、ブタジエン1250gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.3gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F'-14)を得た。
【0193】
(工程(2))
続いて、撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F'-14)700g、トルエン1400g、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として2.1×10 -5 モル)、および酢酸0.12gを仕込んだ。この中に、トリエトキシシラン34gを内温75~85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、官能基変性共役ジエン系重合体(F-14)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-14)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-14)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-14)の重量平均分子量は26,000、ビニル含量は30モル%、スチレン単位含有量は0質量%、重合体1分子あたりのSi原子の平均個数は4個であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-14)にシクロヘキサン1710gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-14)の希釈溶液を得た。
【0194】
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン700gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)78gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン340gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-14)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-14)の側鎖(b)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-14)の重量平均分子量は5,000、ビニル含量は10モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
【0195】
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-14)を含む溶液に、テトラヒドロフラン7.0gおよび工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-14)の希釈溶液1480gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)195gを添加し6時間反応させて残存するアルコキシ基の一部を封止した。その後メタノール21gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
【0196】
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-14)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-14)の重量平均分子量は46,000、Mw/Mnは1.5、スチレン単位含有量は0質量%、カップリング率は95%、重合体1分子あたりのSi原子(分岐点)の平均個数は4個、重合体一分子あたりの側鎖(b)の平均本数は4本、Si原子(分岐点)あたりの側鎖(b)の平均本数は1本、塩素の含有量は3ppmであった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-14)の分子仕様、物性を表4に示す。
【0197】
[実施例15]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1580gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)56gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、テトラヒドロフラン2.9gと、ブタジエン1250gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.3gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F'-15)を得た。
【0198】
(工程(2))
続いて、撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F'-15)700g、シクロヘキサン1400gを仕込み、窒素置換を行った。ここに、ホウ酸トリメチル22gおよびトリエチルアミンボラン1.8gを加え80℃で10時間反応を行なった。反応終了後、減圧濃縮および濾過し、官能基変性共役ジエン系重合体(F-15)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-15)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-15)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-15)の重量平均分子量は26,000、ビニル含量は30モル%、スチレン単位含有量は0質量%、重合体1分子あたりのB原子の平均個数は4個であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-15)にシクロヘキサン1680gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-15)の希釈溶液を得た。
【0199】
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン700gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)78gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン340gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-15)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-15)の側鎖(b)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-15)の重量平均分子量は5,000、ビニル含量は10モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
【0200】
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-15)を含む溶液に、テトラヒドロフラン7.0gおよび工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-15)の希釈溶液1480gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)195gを添加し6時間反応させて残存するアルコキシ基の一部を封止した。その後メタノール21gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
【0201】
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-15)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-15)の重量平均分子量は46,000、Mw/Mnは1.5、スチレン単位含有量は0質量%、カップリング率は95%、重合体1分子あたりのB原子(分岐点)の平均個数は4個、重合体一分子あたりの側鎖(b)の平均本数は4本、B原子(分岐点)あたりの側鎖(b)の平均本数は1本、塩素の含有量は3ppmであった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-15)の分子仕様、物性を表4に示す。
【0202】
[実施例16]
実施例1で得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-1)に、塩素の含有量が50ppmとなるように塩化リチウムを添加、混錬して、共役ジエン系グラフト重合体(G-16)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-16)の分子仕様、物性を表4に示す。
【0203】
[実施例17]
実施例1で得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-1)に、塩素の含有量が500ppmとなるように塩化リチウムを添加、混錬して、共役ジエン系グラフト重合体(G-17)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-17)の分子仕様、物性を表4に示す。
【0204】
[比較例1]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1580gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)56gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、テトラヒドロフラン2.9gと、ブタジエン1250gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.3gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F'-18)を得た。
【0205】
(工程(2))
続いて、撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F'-18)700g、シクロヘキサン1400g、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の2%キシレン溶液(Petrarch System社製「PC072」)5.6mL、トリメチルクロロシラン120gを仕込んで、終夜でこれらを撹拌した。その後、この中に、ジメチルクロロシラン20gを滴下した後に、内温が70℃になるまで徐々に加熱し、内温を70℃に保ったまま還流下で24時間撹拌した。撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、官能基変性共役ジエン系重合体(F-18)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-18)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-18)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-18)の重量平均分子量は26,000、ビニル含量は30モル%、スチレン単位含有量は0質量%、重合体1分子あたりのSi原子の平均個数は4個であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-18)にシクロヘキサン1680gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-18)の希釈溶液を得た。
【0206】
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン700gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)78gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン340gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-18)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-18)の側鎖(b)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-18)の重量平均分子量は5,000、ビニル含量は10モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
【0207】
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-18)を含む溶液に、テトラヒドロフラン7.0gおよび工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-18)の希釈溶液1480gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)195gを添加し6時間反応させた。その後メタノール21gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
【0208】
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-18)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-18)の重量平均分子量は46,000、Mw/Mnは1.5、スチレン単位含有量は0質量%、カップリング率は99%、重合体1分子あたりのSi原子(分岐点)の平均個数は4個、重合体一分子あたりの側鎖(b)の平均本数は4本、Si原子(分岐点)あたりの側鎖(b)の平均本数は1本、塩素の含有量は7,000ppmであった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-18)の分子仕様、物性を表4に示す。
【0209】
[比較例2]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1580gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)13gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、テトラヒドロフラン2.8gと、ブタジエン1170gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール0.8gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F'-19)を得た。
【0210】
(工程(2))
続いて、撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F'-19)700g、シクロヘキサン1400g、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の2%キシレン溶液(Petrarch System社製「PC072」)5.6mL、トリメチルクロロシラン120gを仕込んで、終夜でこれらを撹拌した。その後、この中に、ジメチルクロロシラン5.1gを滴下した後に、内温が70℃になるまで徐々に加熱し、内温を70℃に保ったまま還流下で24時間撹拌した。撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、官能基変性共役ジエン系重合体(F-19)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-19)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-19)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-19)の重量平均分子量は100,000、ビニル含量は30モル%、スチレン単位含有量は0質量%、重合体1分子あたりのSi原子の平均個数は4個であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-19)にシクロヘキサン1650gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-19)の希釈溶液を得た。
【0211】
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン850gおよびsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)8.7gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン150gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-19)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-19)の側鎖(b)の重量平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-19)の重量平均分子量は20,000、ビニル含量は10モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
【0212】
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-19)を含む溶液に、テトラヒドロフラン7.8gおよび工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-19)の希釈溶液1460gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)54gを添加し6時間反応させた。その後メタノール4.8gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
【0213】
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-19)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-19)の重量平均分子量は180,000、Mw/Mnは1.5、スチレン単位含有量は0質量%、カップリング率は99%、重合体1分子あたりのSi原子(分岐点)の平均個数は4個、重合体一分子あたりの側鎖(b)の平均本数は4本、Si原子(分岐点)あたりの側鎖(b)の平均本数は1本、塩素の含有量は1,500ppmであった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-19)の分子仕様、物性を表4に示す。
【0214】
実施例1~13における工程(1)~(5)で使用した各試薬の種類、量を以下の表1および2に、実施例1~17および比較例1、2で得られた共役ジエン系グラフト重合体の物性を表3および4に示す。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
表1および2中、略字はそれぞれ下記を示す
SBL:sec-ブチルリチウム
THF:テトラヒドロフラン
t-BPOP:t-ブチルパーオキシピバレート
Bd:1,3-ブタジエン
Ip:イソプレン
St:スチレン
MPTES:(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン
MPTMS:(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン
【0218】
【表3】
【0219】
【表4】
【0220】
表3および4より、塩素の含有量が1000ppm以下である実施例1~17の共役ジエン系グラフト重合体は、透明性や耐熱性に優れることがわかる。
一方で、塩素の含有量が1000ppmより多い比較例1~2の共役ジエン系グラフト重合体は、透明性や耐熱性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、高い透明性、耐熱性、耐候性を有することから、自動車用内外装品、電気・電子部品、包装材料、スポーツ用品、日用雑貨、ラミネート材、伸縮材料、各種ゴム製品、医療用品、各種接着剤、各種塗装プライマーなど幅広い分野に有効に使用することができる。