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特許7274178流体中の渦をアクティブ制御するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】流体中の渦をアクティブ制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
F04D29/66 F
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020544360
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018059980
(87)【国際公開番号】W WO2019094691
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】62/583,538
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520159710
【氏名又は名称】フロリダ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】平 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】リュー、チョウン
(72)【発明者】
【氏名】アン ビョンジン
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】大渕 真志
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-089479(JP,A)
【文献】米国特許第06119987(US,A)
【文献】特開昭60-067798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁から生じた、流体中の渦を変化させるための渦制御装置であって、
前記壁の開口部内に配置され、前記渦を中心に回転可能なハブと、
前記回転可能なハブ内に位置する入口ポートおよび出口ポートと、を備え、
前記入口ポートは、前記渦またはその周りから前記流体を吸い込むように構成された吸込みポートを形成しており、前記出口ポートは、前記渦の中または前記渦の周辺に前記流体を吹き出すように構成された吹き出しポートを形成しており、前記流体の吸込みと吹き出しは、前記渦を崩壊させるのに効果的である、渦制御装置。
【請求項2】
前記ハブの表面は、前記壁の表面と同一平面内にある、請求項1に記載の渦制御装置。
【請求項3】
前記入口ポートおよび前記出口ポートは、前記渦の中心またはその近傍に位置している、請求項1に記載の渦制御装置。
【請求項4】
前記入口ポートおよび前記出口ポートは、前記渦の外周の周りに配置されている、請求項1に記載の渦制御装置。
【請求項5】
前記ハブは、前記渦と同方向に回転するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の渦制御装置。
【請求項6】
前記ハブは、前記渦と逆方向に回転するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の渦制御装置。
【請求項7】
前記入口ポートが、前記渦またはその周りから流体を吸い込むように構成されており、同時に、前記出口ポートが、前記渦の中または前記渦の周辺に流体を吹き出すように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の渦制御装置。
【請求項8】
前記入口ポートおよび/または前記出口ポートの角度、回転速度/回転方向、および吹き出し流量/吸込み流量が制御可能である、請求項7に記載の渦制御装置。
【請求項9】
前記ハブと連通しているポンプをさらに備える、請求項1に記載の渦制御装置。
【請求項10】
前記入口ポートからの流体の質量流量、および前記出口ポートへの流体の質量流量を制御するように構成されたバルブをさらに備える、請求項9に記載の渦制御装置。
【請求項11】
前記渦の中心からずれるように構成される、請求項1に記載の渦制御装置。
【請求項12】
流体中の渦を崩壊させる方法であって、
前記渦またはその周りから前記流体を吸い込み、
前記渦の中または前記渦の周辺に前記流体を吹き出し、
前記流体の吸込みの入口の位置を、前記渦を中心に回転させ、
前記流体の吹き出しの出口の位置を、前記渦を中心に回転させる、方法。
【請求項13】
前記吸込みおよび吹き出しの位置は、前記渦と同方向に回転する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記吸込みおよび吹き出しの位置は、前記渦と逆方向に回転する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記流体は、水槽内の水である、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
流体中の渦を変化させる方法であって、
前記渦を中心に吸込みポートおよび吹き出しポートを回転させ、
前記渦またはその周りからに前記流体を吸い込み、
前記渦の中または前記渦の周辺に前記流体を吹き出す、方法。
【請求項17】
前記吸込みポートおよび前記吹き出しポートは、前記渦と同方向に回転するか、または前記渦と逆方向に回転するように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記吸込みポートの入口の位置を、前記渦を中心に回転させ、
前記吹き出しポートの出口の位置を、前記渦を中心に回転させることをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記流体が液体である、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記流体の吸込みおよび吹き出しが前記渦を崩壊させるのに効果的である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
壁板から生じた、液体中の渦を変化させる方法であって、
請求項1に記載の前記渦制御装置を動作させて前記渦を効果的に変化させ、崩壊させる、方法。
【請求項22】
前記吸込みポートの位置を、前記渦を中心に回転させ、
前記吹き出しポートの位置を、前記渦を中心に回転させる動作を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記吸込みポートおよび前記吹き出しポートは、前記渦と同方向に回転するか、または前記渦と逆方向に回転するように構成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
液体中の渦を崩壊させるためのシステムであって、
前記システムは、入口ポートおよび出口ポートを有する、前記渦を中心に回転可能なハブを備えており、前記入口ポートは、前記渦の周辺から前記液体を吸い込むための吸込みポートとして動作可能であり、前記出口ポートは、前記渦の中または前記渦の周辺に前記液体を吹き出すための吹き出しポートとして動作可能であり、
前記システムは、
前記ハブと連通しているポンプと、
前記入口ポートからの液体の質量流量、および前記出口ポートへの液体の質量流量を制御するように構成されたバルブと、
前記ポンプおよび前記バルブに動作可能に接続され、前記入口ポートへの前記液体の吸込み流量および/または前記出口ポートへの前記液体の吹き出し流量を制御するコントローラと、をさらに備える、システム。
【請求項25】
前記コントローラは、前記ハブに動作可能に接続され、前記ハブの角度、回転速度、および/または回転方向を制御する、請求項24に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本明細書は、2017年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/583,538号の優先権および利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、一般に、渦に関し、より詳細には、流体中の渦をアクティブ制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
壁面近傍の渦は、自然界および様々な工学アプリケーションの双方で発生する。渦の動的特性を理解し、渦の挙動を変化させる技術を開発する努力がなされてきた。流れの制御は、渦の出現を減少させたり、液体中の渦の特性を変化させたりするために、しばしば用いられる。例えば、排水ポンプでは、液体中の渦が発生するとポンプの性能が低下することがある。液体中の渦が十分に強い場合には、渦中心圧力が低下し、渦中心に沿って空気/蒸気を巻き込むことがある。そのような中空状の中心を持つ渦がポンプに飲み込まれると、非対称な負荷と振動を引き起こし、望ましくないノイズと構造的な故障につながる可能性がある。多くの流体ベースの機械の内部および外部においても、自然環境における竜巻やハリケーンなどと同様に、壁に垂直な強い渦が現れる。
【0004】
前述した渦の発生を防止するため、またはそれらの圧力分布を変えるために、パッシブ渦制御技術を導入する多くの試みがなされてきた。しかし、パッシブ制御技術は、(設計条件を超えて)不規則な流動条件に合わせて制御作用を調整する機能を備えていない。さらに、いくつかのパッシブ制御装置の中には製造が困難なものもある。したがって、こうした過去の努力は、これらの渦の圧力分布を変化させるために、信頼性の高い技術を提供するには十分ではない。より効率的で柔軟な渦制御手段を設計することは、依然として課題である。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、壁から発生した、流体中の渦を変化させるための渦制御装置が示される。前記装置は、前記壁の開口部内に配置された回転可能なハブを備えている。前記装置は、さらに、前記回転可能なハブ内に位置する入口ポートおよび出口ポートを備えている。前記入口ポートは、前記渦またはその周りから流体を吸い込むための吸込みポートを形成しており、前記出口ポートは、前記渦の中または渦の周辺に流体を吹き出すための吹き出しポートを形成している。したがって、本装置は、運動量の摂動を流れに導入することにより、渦の圧力分布を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
詳細な説明を、添付の図面を参照して行う。同一の参照番号を使用する場合は、類似または同一の部材を示すことがある。図面に示されたもの以外の要素および/または構成部材を利用した様々な実施形態は可能であり、いくつかの要素および/または構成部材が存在しない様々な実施形態も可能である。図中の要素および/または構成部材は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。本明細書を通して、文脈に応じて単数形および複数形の用語は互換的に使用され得る。
【0007】
図1図1は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦制御装置を示す。
【0008】
図2図2は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦制御装置を示す。
【0009】
図3図3は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦制御装置を示す。
【0010】
図4図4は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦制御装置を示す。
【0011】
図5図5は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態におけるバーガース渦に基づく渦モデルを示す。
【0012】
図6図6は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦モデルの計算設定を示す。
【0013】
図7A図7Aは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における瞬間的な流れ場のベースライン流れ場を視覚化したものを示す。
図7B図7Bは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における瞬間的な流れ場のベースライン流れ場を視覚化したものを示す。
図7C図7Cは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における瞬間的な流れ場のベースライン流れ場を視覚化したものを示す。
図7D図7Dは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における瞬間的な流れ場のベースライン流れ場を視覚化したものを示す。
【0014】
図8図8は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦バースト構造のベースライン流れ場を視覚化したものを示す。
【0015】
図9図9は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における逆方向および同方向に回転させる質量の吹き出し制御の効果を示す。
【0016】
図10図10は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における同方向に回転させる質量の吹き出し制御の効果を示す。
【0017】
図11A図11Aは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における同方向に回転させる質量の吹き出し制御の効果を示す。
【0018】
図11B図11Bは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における逆方向に回転させる質量の吹き出し制御の効果を示す。
【0019】
図12図12は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における、中心からずれた制御装置を用いた渦モデルの計算設定を示す。
【0020】
図13A図13Aは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における逆方向回転のシミュレーションでの制御装置の位置を示す。
【0021】
図13B図13Bは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における、図13Aに示す逆方向回転のシミュレーションでの時間平均流れ場を示す。
【0022】
図14A図14Aは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における同方向回転のシミュレーションでの軸方向に沿った時間平均の渦中心圧力分布を示す。
【0023】
図14B図14Bは、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における逆方向回転のシミュレーションでの軸方向に沿った時間平均の渦中心圧力分布を示す。
【0024】
図15図15は、本明細書中の1つまたは複数の実施形態における渦制御装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書は、壁に垂直なコヒーレント渦の中心領域を拡張し、流れ場における渦中心での低圧を緩和することに関する。こうした渦は、流体力学/航空宇宙アプリケーションからハリケーンや水中渦などの自然まで、自然界や工学システムの至る所に存在する。壁垂直渦に対して多くのパッシブ制御技術が存在するが、適応しやすい方法でアクティブ流れ制御に応用できるものはない。この問題を解決するために、本明細書は、渦の中心領域またはその近くで強制入力(例えば、流体の吹き出しおよび吸込み)を行う制御装置を導入し、局所的な流れを不安定にして、中心領域を拡張する。吹き出された流体は、垂直流の動的特性を変化させ、局所的な角速度を低下させて、渦の中心圧力を増加させる。中心圧力が低いと、空気や液体中の渦が有害な工学的影響を引き起こす可能性があるため、圧力の増加には工学的な利点がある。いくつかの例では、渦を効果的に破壊するために、制御入力は、時間および同方向回転/逆方向回転の向きにおいて、正弦波の形に従う。
【0026】
本明細書は、アクティブ流体制御技術を利用して、渦中心の低圧効果を軽減するパッシブ制御よりも適応しやすい技術を提供する。すなわち、本明細書は、異なる流動条件で壁から生じる渦を制御するための渦制御技術および装置を提供する。これを達成するために、渦が存在する壁面からの同回転方向および逆回転方向への質量の吹き出しおよび吸込みに基づいて、2つの異なるタイプの制御方法が開示される。この制御方法は、渦中心が位置する壁に採用されるものであり、質量の吹き出し/吸込み装置が壁面下に配置されている。制御装置は、渦中心に配置されてもよく、または渦中心から外れて配置されてもよい。制御入力は、その周波数、振幅、および質量の吹き出し/吸込みの方向において調整される。制御装置は、渦が形成されるシステムから流体を引き込み、流体をシステム内に吹き出して戻してもよい。すなわち、渦が形成されている流体と同様の流体が、渦またはその周りで吹き出し/吸込みされる。他の例では、制御装置は、システムの外部から渦に流体を吹き出す。場合によっては、吹き出し/吸込みは、渦中心に対して回転するように複数箇所から導入される。これらの装置は、様々な強度の渦に合わせて制御入力を調整できる。
【0027】
渦制御装置
【0028】
図1乃至図4および図15は、渦制御装置100の例を示す。渦制御装置100は、渦104が固定された壁板102、またはその下部に配置されてもよい。渦104は、流体中に形成され得る。流体は液体でも気体でもよい。場合によっては、複数の渦制御装置100を用いることも可能である。すなわち、2つ、3つ、またはそれよりも多い渦制御装置100を、渦104の周りの壁板102の様々な位置に配置することができる。
【0029】
一実施形態では、渦制御装置100は、ハブ106を含む。ハブ106は、壁板102の開口部108内に配置されてもよい。いくつかの例では、ハブ106は、壁板102の表面112と同一平面内にある表面110を有する。他の例では、ハブ106の表面110は、壁板102と同一平面内になくてもよい。すなわち、ハブ106の表面110は、壁板102内にあってもよいし、またはハブ106の表面110は、壁板102から外に突出してもよい。ハブ106は、任意の適切なサイズ、形状、または構成としてもよい。ハブ106は、渦制御装置100の静止した、または回転するマニホールドとして機能することができる。
【0030】
一実施形態では、図1に示すように、ハブ106は静止している。つまり、ハブ106は回転しなくてもよい。そのような例では、ハブ106はポート109を備えていてもよい。ポート109の位置は固定されてもよい。ポンプとの連結や、制御装置の構成によっては、ポート109は、入口ポート(吸込みポート)または出口ポート(吹き出しポート)として機能することが可能である。いくつかの例では、ポート109は、渦104の中心またはその近傍に位置する。他の例では、ポート109は、渦104の外周の周りに配置される。ポート109は、渦104またはその周りの適切な位置に配置され得る。ポート109の数を増やしてもよい。すなわち、多数のポート109が渦104またはその周りに配置されてもよい。いくつかの例では、ポート109はすべて吸込みポートであってもよい。他の例では、ポート109はすべて吹き出しポートであってもよい。さらに他の例では、ポート109のいくつかは吹き出しポートとして機能し、その他のポート109は吸込みポートとして機能してもよい。いくつかの例では、ポート109は同時に稼働してもよい。他の例では、ポート109は選択的に稼働してもよい。すなわち、ある時間に、または変動しうる時間に、いくつかのポート109が「オン」にされ、他のポートが「オフ」にされてもよい。
【0031】
渦104をさらに変化させるために、ポート109の角度を制御(例えば、傾けるなど)してもよい。例えば、ポート109の吹き出し角度または吸込み角度は、ハブ106の表面110に対して調整され得る。他の例では、ハブ106自体を操作して(例えば、傾けて)、吹き出し角度および/または吸込み角度を調整してもよい。
【0032】
一実施形態では、渦制御装置100は、ハブ106と連通するポンプ120を備えている。いくつかの例では、ポンプは、2つの導管と連通してもよい。例えば、第1の導管122は、ポート109が吸込みポートとして機能するように、ポート109に流体的に連結され得る。他の例では、ポート109は、ポート109が吹き出しポートとして機能するように、第2の導管124に流体的に連結され得る。渦制御装置100はまた、渦制御装置100の質量流量を制御するためのバルブ126を備えていてもよい。この特定の実施形態では、バルブ126は回転バルブである。しかしながら、任意の適切なバルブ126が使用されてもよい。他の例では、質量流量は、ポンプ速度を制御するためのインバータを介して制御されてもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「流体的に連結する」という用語は、部品が互いに動作可能に接続され、かつ流体が部材間を流通できるように連結されることを示す。
【0034】
他の例では、図2乃至図4に示すように、ハブ106は中心軸114の周りを回転する。そのような例では、ハブ106は両方向(すなわち、時計回りまたは反時計回り)に回転することができる。渦104の回転に応じて、ハブ106は、渦104と共に回転する(すなわち、同方向に回転する)か、または渦104とは反対に回転する(すなわち、逆方向に回転する)ことが可能である。
【0035】
いくつかの例では、ハブ106は、入口ポート116および出口ポート118を含む。入口ポート116は、吸込みポートを形成してもよいし、出口ポート118は、吹き出しポートを形成してもよい。いくつかの例では、入口ポート116および出口ポート118は、渦104の中心またはその近傍に配置される。他の例では、入口ポート116および出口ポート118は、渦104の外周の周りに配置される。ポート116および出口ポート118は、渦104の周辺の適切な場所に配置されてもよい。いくつかの例では、渦制御装置100は、複数の入口ポート116および複数の出口ポート118を含んでもよい。複数の入口ポート116および複数の出口ポート118が存在する場合は、入口ポート116および出口ポート118は同時に動作してもよい。他の例では、入口ポート116および出口ポート118は、例えば、所定の順序で選択的に、例として、連続的に動作してもよい。すなわち、様々な時間において、いくつかの入口ポート116および出口ポート118は「オン」にされる一方で、他のポートは「オフ」にされてもよい。
【0036】
いずれの場合でも、例えば液体などの流体は、入口ポート116に吸い込まれ、出口ポート118から排出されてもよい。ハブ106が壁板102内で回転すると、入口ポート116および出口ポート118の位置は、中心軸114の周りを回転することができる。いくつかの例では、渦の中心は、中心軸114と一直線上に並ぶ。他の例では、渦の中心は、中心軸114からずれてもよい。渦104を変化させるために、出口ポート118は、例えば液体などの流体を渦104の中に、または渦104の周辺に吹き出すために使用され、入口ポート116は、渦104またはその周りから流体を吸い込むために使用される。入口ポート116および出口ポート118は、同時に動作してもよい。すなわち、出口ポート118が渦104の中または渦104の周辺に流体を吹き出すのと同時に、入口ポート116は、渦104またはその周りから流体を吸い込んでもよい。他の例では、入口ポート116および出口ポート118は同時に動作しなくてもよい。すなわち、入口ポート116および出口ポート118のうちの一方だけが一時に動作してもよい。
【0037】
一実施形態では、渦104をさらに変化させるために、入口ポート116および出口ポート118の角度は制御(例えば、傾けるなど)され得る。例えば、出口ポート118の吹き出し角度は、ハブ106の表面110に対して調整することができる。同様に、入口ポート116の吸込み角度は、ハブ106の表面110に対して調整することができる。他の例では、ハブ106自体を操作(例えば、傾けるなど)して、吹き出し角度および/または吸込み角度を調整してもよい。
【0038】
一実施形態では、渦制御装置100は、ハブ106と連通するポンプ120を含む。例えば、第1の導管122は、入口ポート116をポンプ120に流体的に連結し、第2の導管124は、出口ポート118をポンプ120に流体的に連結する。渦制御装置100はまた、渦制御装置100の質量流量を制御するためのバルブ126を含んでもよい。この特定の実施形態では、バルブ126は、回転バルブである。しかしながら、任意の適切なバルブ126が使用されてもよい。他の例では、質量流量は、ポンプ速度を制御するためのインバータを介して制御されてもよい。
【0039】
図15に示すように、渦制御装置100は、渦制御装置100の様々な構成要素と電気通信するコントローラ128を含むことができる。コントローラ128は、渦制御装置100の動作を制御可能な任意の演算装置としてもよい。コントローラ128は、1つまたは複数のメモリと通信する1つまたは複数のプロセッサを含む。場合によっては、コントローラ128は、無線通信機能を含んでいてもよい。すなわち、コントローラ128は、渦制御装置100の様々な構成要素、またはコンピュータまたはサーバなどの他の外部装置と無線で通信するように構成されてもよい。
【0040】
コントローラ128は、ハブ106と電気的および/または機械的に通信可能である少なくとも1つのハブアクチュエータ130と通信してもよい。このようにして、ハブアクチュエータ130は、ハブ106の動作を制御するように構成してもよい。例えば、ハブアクチュエータ130は、ハブ106またはそれに関連するポートの回転または傾きを制御してもよい。コントローラ128はまた、バルブ126と電気的および/または機械的に通信可能である少なくとも1つのバルブアクチュエータ132と通信してもよい。このようにして、バルブアクチュエータ132は、バルブ126の動作を制御するように構成してもよい。さらに、コントローラ128は、ポンプ120と通信してもよい。このようにして、コントローラ128は、ポンプ120の動作を制御するように構成してもよい。
【0041】
渦モデル
【0042】
広範な数値シミュレーションと実験的な調査を渦制御装置に対して行った。例えば、図5は、バーガース渦を使用した渦モデルを示している。バーガース渦は、一定のひずみ速度γの軸方向のひずみ場による軸対称渦である。速度場は、循環座標(r,θ,z)としたときに以下で表される。
【数1】
ここで、渦中心の大きさa=1,循環:Γ=9.848,uθ,max=1,そしてRe=Γ/v=5000である。
【0043】
一例では、水中渦モデルは、対称面に沿った滑りなしの境界条件によるバーガース渦の変形であった。図6に示すように、滑りなしの境界条件が対称面に沿って含まれていた。下部制御領域における非定常的な質量の吹き出しによる渦制御装置の有効性を調べるために、バーガース渦の速度プロファイルによって生成された水中渦モデルに対して、非圧縮性3D直接数値シミュレーション(「DNS」)を実行した。このように、図6は、バーガース渦タイプの速度プロファイルによって生成された水中渦モデルの3D直接数値シミュレーションの計算設定を示している。この計算では、幾何学的な設定は、r半径u、θ方位角uθ、z軸uとした。境界条件は次のように定義した。
入口:(u,uθ,u
出口:
【数2】
底部:u=0
制御入力は、下面からの非定常的な質量の吹き出しで構成され、ここで、
【数3】
ここで、ωは制御周波数、Aは振幅である。制御努力は以下を使用して評価した。
【数4】
【数5】
【0044】
図7A乃至図7Dおよび図8は、計算設定のベースライン流れ場を視覚化したものを表している。図7A乃至図7Dは、計算設定の瞬間的な流れ場を示し、図8は、計算設定の渦バースト構造を示している。
【0045】
質量の吹き出し
【0046】
本明細書に開示された渦制御装置は、単相渦の変化に効果的な非定常強制を提供する。同方向への回転および逆方向への回転の強制は、渦の後流と不安定さをそれぞれ促進する。同方向回転の渦制御の場合には、図9および図11Aに示すように、中心の圧力は壁近傍領域でより均一になる傾向がある。低圧領域は拡大するが、渦中心軸に沿って圧力が増加し、渦の挙動を変化させる。同方向へ回転させる質量の吹き出し制御では、図11Aに示すように、トロイダル構造は円柱渦を囲み、より薄い渦輪に分割して、上方に掃引する。一方、逆方向回転による渦制御の場合には、図10および図11Bに示すように、低中心圧力が下部中心領域ですぐに増加し、渦が拡散し、流体力学的不安定性を利用して、制御された渦から小規模のらせん状垂直構造が取り除かれる。図13Bに示すように、逆方向回転制御中、円柱渦は、特により高い領域において、もはや垂直ではない波状構造を示す。多数の小規模な短波長のらせん波が、円柱状の渦から取り除かれ、拡散する。同方向への回転および逆方向への回転の双方の強制技術により、渦の時間平均中心圧力が十分に増加した。
【0047】
図9図10、および図A図11Bに示すように、2つの異なる制御アプローチは、回転する態様で経時的な質量の吹き出し/吸込み変動を含む。全体的な概念は、排水ポンプだけでなく、広範な工学や自然環境の流体に現れる一般的な壁垂直渦にも適用可能である。
【0048】
偏心した渦制御
【0049】
渦制御のロバスト性は、偏心アプローチを使用して評価した。すなわち、渦制御装置は、渦の中心からずらして配置した。図12に示すように、作用入力は、ベースライン渦中心からRだけ離れた位置に配置した。Rは渦の中心半径で正規化した。同方向回転および逆方向回転の双方の制御入力について調査した。特に、中心圧力を増加させる制御のロバスト性は、数値シミュレーションを介して調査した。表1に示すように、6つのシミュレーションを偏心制御入力を用いて実行した。
【表1】
【0050】
図13Aに示す矢印は、逆方向回転のシミュレーションにおける制御装置の位置を示す。このシミュレーションでは、A=1、fc=0.08、Q-criterion=2、そして||ω||=2である。図13Bは、図13Aに示す逆方向回転のシミュレーションの対応する時間平均流れ場を示す。表2は、同方向回転および逆方向回転のシミュレーションの軸方向に沿った時間平均の渦中心圧力分布を示す。
【数6】
である。
【表2】
【0051】
図14Aは、同方向回転シミュレーションにおける軸方向に沿った時間平均の渦の中心圧力分布を示し、そして図14Bは、逆方向回転シミュレーションにおける軸方向に沿った時間平均の渦の中心圧力分布を示す。制御のロバスト性は、渦の中心から動作をシフトすることによって評価した。同方向回転および逆方向回転の双方の偏心制御により、渦の中心圧力の大幅な増加が達成された。偏心制御の設定は、上述した渦の圧力増加装置のロバスト性を裏付ける。
【0052】
開示された装置/技術は、渦中心の周りの循環配置(例えば、中心および偏心)の表面上のポートに質量のアクティブな吹き出し/吸込みを導入することにより、渦の変化を可能にし、低圧中心を減少させる。吹き出し方向は調整可能だが、通常は表面に対して垂直になるように方向付けされる。異なるポートで、吹き出しと同時に吸込みも導入される。吹き出しと吸込みの強さは、円形に配列されたポートに従って経時変化する。この装置は、壁垂直渦に対して同方向または逆方向に回転するように質量の吹き出しおよび吸込みを導入することができる。
【0053】
本明細書中の特定の実施形態が説明されてきたが、多数の他の変更および代替される実施形態は本明細書の範囲内である。例えば、特定の装置または部品に関して説明された機能のいずれかは、他の装置または部品によって実行され得る。さらに、特定の装置特性が説明されてきたが、本明細書の実施形態は、多数の他の装置特性に関連し得る。さらに、実施形態は、構造的特徴および/または方法論的行為について特定の言語で説明されているが、本明細書は、説明された特定の特徴または行為に必ずしも限定されないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴および行為は、実施形態を実施する例示的な形態として開示されている。とりわけ、「できる」、「し得る」、「かもしれない」、「してもよい」などの条件付き言語は、特に明記されていない限り、または使用されている文脈内で理解されていない限り、他の実施形態において特定の特徴、要素、および/またはステップを含まない場合であっても、一般に、特定の実施形態に含んでもよいと伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、および/またはステップが、1つまたは複数の実施形態に必要な手段であると示唆することを意図したものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15